五 教科書制度の整備

 教科書については新学制発足とともに、民間の創意による多様な教科書が生まれることを期待して検定制度となったが、昭和二十二年の六・三制発足には間に合 わず暫定的に文部省の著作によらざるをえないというちぐはぐな出発をした。追いかけて二十三年に検定規則と検定調査会が生まれて二十四年度から使用する教 科書の検定が開始され、同時に二十三年に「教科書の発行に関する臨時措置法」が制定されて、教科書の需給の調整、適正価格の維持を図り教科書の発行・供給 の円滑化を図った。当時、教科書発行上の大きな隘路の一つであった用紙割当制が廃止された暁には教科書の検定を都道府県教育委員会の権限とすることが規定 されていたが、これは技術的・経済的な困難性のみならず教育的にも問題点が多く、中央検定を支持する意見が多く、結局二十八年の法改正によって、教科書の 検定は文部大臣の権限とされた。新しい検定制度もしだいに定着してきたが他方、別の問題も指摘されるようになった。たとえば教科書発行者の増加に伴い売り 込み競争が激化し、採択についての不公正な競争の弊害等が現われ、公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いの警告や、特定の不正な取引方法が指定されるな どの措置がとられた。また教科書の種類が多くなるに従い検定機能がこれに追いつかず、記述の誤りや内容の偏りが指摘されるようになったので、文部省は教科 書の検定、採択、発行、供給等についての改善を内容とする「教科書法案」を三十一年、国会に提出したが審議未了となって成立しなかった。その後現行法のわ く内での充実・整備を図ることとし、検定調査にたずさわる委員の大幅増員、新たに文部省の教科書調査官の設置、全国六〇〇か所の教科書センターの設置など の措置が講ぜられた。また、義務教育無償措置の一環として教科書の無償給与が二十六年から部分的にではあるが始まり、その後種々の変遷を経て三十八年「義 務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」が制定され、以降年次計画をもって進行し、四十四年に義務教育諸学校全体について教科書の無償給与が実 現した。

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