二 中学校・高等学校の職業教育

中学校における職業教育

 新たに義務教育となった中学校の教育目標には「社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。」が明記されている。そこで中学校に新たに「職業科」が設けられ、農業・商業・水産・工業・家庭がおのおの一科目としてその中に置かれ、生徒はそのうち一科目または数科目を学習することになっていた。授業時数は、週当たり、必修教科としての職業科は四時間、選択教科としての職業科は一~四時間であった。その後昭和二十四年十二月局長通達で、職業科は「職業・家庭科」に改められ、その内容は、農・工・商等のわくをはずし、実生活に役だつ仕事を中心として構成されることとなったのである。授業時数は、必修・選択とも、週当たり三~四時間であった。しかし、新しく発足したこの教科の施設・設備は乏しかった。

高等学校における職業教育

 新制高等学校の目的は、中学校における教育の基礎の上に、「高等普通教育及び専門教育を施すこと。」が規定された。また、昭和二十三年一月の「高等学校設置基準」によって、高等学校の学科は、普通教育を主とする学科と専門教育を主とする学科とに分けられ、後者はさらに農業・水産・工業・商業・家庭・厚生・商船等に関する学科に分けられた。それぞれの学科には、農業科・園芸科・機械科・電気科等の多数のいわゆる小学科が含まれていた。その他編制・設備等がこの基準で規定された。

 高等学校の教育課程については、文部省は、二十二年四月「新制高等学校の教科課程に関する件」を通達し、二十三年度からの発足に備えたが「普通教育を主とする高等学校の教科課程」と「実業を主とする高等学校の教科課程」との間に趣旨が一貫しないところがあったので、これを調整するため同二十三年に「高等学校教科課程研究委員会」が設けられ、その結果が、二十四年一月「高等学校教科課程中職業教科の改正について」として発表された。その改正の内容は、教科を必修教科と選択教科とに分け、八五単位以上修得することを卒業条件とし、そのうちに共通必修教科の三八単位を含ませた。そして職業に関する学科では、職業教科目を三〇単位以上履修しなければならないことが規定された。その後これらは、二十六年七月改訂の「学習指導要領一般編(試案)」にまとめられた。

 職業教科目は、一般に種類が多く、またその単位数にも幅があって、弾力的取り扱いができるようになっていた。また教科目の内容は、農・工・商・水産・家庭別に、それぞれ「高等学校学習指導要領教科編(試案)」で示された。また、教育方法では、農業・家庭に関する学科ではホームプロジェクトや学校農業クラブ・学校家庭クラブ、工業に関する学科では職業分析に基づく作業指導票による指導など、新しい方法が導入された。

中・高校における職業指導

 教育の民主化に伴い、個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うことの必要性が強調され、学校教育法もそのことが規定された。また、先に述べた産業教育関係の会議でも、しばしばその必要性や指導者の養成計画が具申された。このため、中学校においては職業指導が特に重視され、職業科および職業・家庭科の中に位置づけて指導されたのであった。

 また二十五年ごろから、学校における職業指導を振興するため、職業指導主事の制度化を要望する声が現場から高まってきた。その結果、二十八年関係省令の改正により中学校に職業指導主事を置くことが規定されたのであった。

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