二 教員の現職教育

 昭和二十年九月十五日文部省は「新日本建設の教育方針」を発表したが、その中で教職員に対する措置として「教育者は新事態に即応する教育方針をは握して学徒の教導に邁(まい)進することが肝要である。之(これ)が為(た)め、文部省に於(おい)ては教職員の再教育の如(ごと)き計画を策定中である。」と述べ、教育改革を実施するために先だってなされるべき緊急な問題として教職員の再教育を計画し、戦時教育の払しょくとともに新教育の普及浸透に努力した。

 二十一年十月十五・十六日の両日には全国の教員養成諸学校長および地方視学官の参集を求めて「新教育方針中央講習会」を開催してその趣旨を広く全国的に徹底させるとともに、続いてこれと全く同様の趣旨をもって各都道府県ごとに全国の幼稚園、小・中・高校の校長および教員を対象として一一日ないし「百間の再教育講習会を三か年計画で開催し、新教育の趣旨の普及浸透に努めた。「新教育方針中央講習会」においては「新教育はあくまで個性の完成を目標とすべきものであり、そのために自由を尊重し、画一主義的な教育方法を打破し各教育機関および教員の自主的、自発的な創意工夫によるべきものである。」ことが強調された。このようにして教職員の再教育はまず、新教育の理念と方法を全国的な指導の機会を通じて教職員に徹底することから始められた。

 なかでも注目すべきものは「IFFL教育指導者講習」である。二十三年七月、「教育委員会法」が制定され、教育委員会が地方教育行政機関として全国の都道府県、五大都市、二一市、二四町村に設置されたことに伴い、教育長・指導主事の養成および教員養成諸学校の教職課程担当教員の現職教育を目的とした全国的な講習が実施された。

 本講習は、開設当初「教育長等講習」と呼ばれ、総司令部の賛助を得て文部省主催のもとに開催地の各大学と協力して実施された。二十三年九月に第一期を「十二週間」の課程として開設して以来、二十七年度までに九期にわたって実施された。受講者は一定の資格のある者の中から参加者選考委員会が選考に当たった。講習は、各開催校である大学を中心にして市当局および教育委員会の協力を得て、各地区ごとに運営協議会を設けて実施され、また、文部省には各地区との連絡に当たるため本部が設けられた。二十五年度からは「教育指導者講習」と改められ、さらに、二十六年度からは大学に委託して実施することとし、文部省には各開設大学間の連絡調整のための連絡室をおいてその処理に当たるとともに開設大学では講習管理者(主として学部長)が責任者として運営の中心となった。また、教員養成大学の教官、小・中・高校の校長を対象とした三週間ないし六週間の課程も設けられ、各科教授法および学校管理等の科目が加えられた。受講者の延べ数は九、三〇〇余人、協力した米人講師一一〇余人、わが国の大学教授その他の専門家で講師となったもの八〇〇人にのぼる大規模なものであった。

 二十四年、「教育職員免許法」の施行により教員免許資格および免許状取得のための現職教育の方法等が明らかにされたので、免許法施行当時教職にある高等学校以下の校長および教員約五九万人に対し継続的、組織的に資質の向上と資格の上級化のための現職教育が行なわれることになった。この現職教育は、二十五年度から十か年計画として継続実施することとしたが、二十九年六月の免許法改正に伴ってこれを「現職教育五か年計画」に再編し、三十三年度をもって完了した。その概要は次のとおりである。

 (一)現職教育講座(公開講座) 国立大学において公開講座を開設し、三十年度まで主として夏期休暇中に実施された。

 (二)教職員通信教育講座(免許法認定通信教育) この講座は免許法に定める認定通信教育として主として教職に関する専門科目を中心として開設され、国立大学において年間(三期に分けて)を通じて実施された。

 (三)単位修得試験 この試験は、二十八年度より新たに付け加えられたもので文部大臣より委嘱を受けた国立大学が時間的・経済的理由から教職員通信講座、免許法認定講習を受講する機会に恵まれない教員を対象として行なったものである。

 (四)免許法認定講習 この講習は都道府県教育委員会が大学の指導を受けて行なったものであり、その実施に当たっては講習開設者である教育委員会が経費等を負担した。

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