五 大学の通信制と夜間制教育

大学の通信制教育

 勤労青年にも広く大学教育を受ける機会を与えるため、学校教育法は大学における通信制教育の制度を明文化した。旧制度においては、自学自習に便宜を与えるいわば講義録式の通信教育が行なわれていた例はあるが、これは、一般的には、特別な資格も特典も得られるわけではなかった。通信教育によって正規の大学の課程を履修し、大学を卒業するみちは、新しい学校教育法によって初めて認められたのである。

 昭和二十二年十月、法政大学に初めて開設された通信教育は社会教育として始められ、その後引き続いて同種の通信教育が慶応義塾大学、中央大学、日本女子大学、日本大学および玉川大学にも開設されたが、二十五年三月に至り、これら六大学は、すべて学校教育法に基づく大学通信教育の開設が認可された。

 大学の通信教育は、大学基準協会が二十二年十二月に決定した「大学通信教育基準」に基づいて実施されている。この基準によると、大学通信教育は通常の課程と同一水準で行なわれるものであるが、これにより大学卒業の資格を得るには、教科書、指導書の配布を受け、設題に対する解答とその添削、批評、指導を受けるいわゆる通信による教育のほか、一定期間大学に通学して授業を受ける面接授業(いわゆるスクーリング)に出席しなければならないこととされている。現在、面接授業は、卒業に必要とされる一二四単位のうち、通算一学年分に相当する三○単位が要求されているが、学生のほとんどを占める勤労者にとって、この面接授業への出席はきわめて困難であるため、卒業者数が学生数に比べて著しく少ないのが最大の問題とされている。なお、通信教育は、実験実習を主とする課程および大学院の課程を設けることは認められていない。

大学の夜間制教育

 夜間制教育は、旧制の大学、専門学校において法令上の規定のないままその実施が認められていたが、学校教育法は、「大学には、夜間において授業を行なう学部を置くことができる。」と規定し、夜間の学部を法的に制度化した。なお、夜間の学部の修業年限は学生の修学、健康上の理由から四年を越えることができるとされているが、国立大学の全部、公立大学の大部分および私立大学の一部が、五年であるのを除いて、夜間学部の大多数を占める私立大学のほとんどが昼間と同様四年にしている。

 新制大学発足後の夜間の学部は、特に大都市にある私立大学の文学、経済学、商学、法学等文科系の学部を中心として、旧制時代よりも格段の発展をみるに至っている。

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