二 新制大学の制度と基準

新制大学の制度

 旧制の高等教育機関としては、大学、高等学校、専門学校および高等師範学校、女子高等師範学校、師範学校、青年師範学校などの教員養成諸学校があり、それぞれ、その目的、性格に従い高等教育機関としての役割を果たしてきた。「学校教育法」は、これら旧制の高等教育諸機関をすべて単一な四年制の新制大学に再編して、学校体系の民主化、一元化の原則を貫いたのである。

 新制大学の目的は、学校教育法に「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」と規定されているように、「旧大学令」、「専門学校令」とはその趣きを異にしている。

 新制大学の特色は、1)一般教育を重視して、人文・社会・自然の諸科学にわたり豊かな教養と広い識見を備えた人材を養成することを眼目としていること、および2)学間的研究とともに専門的、職業的訓練を重視して、しかも両者を一体化しようとしていることにある。すなわち、新制大学は、一般的、人間的教養の基盤の上に、学問研究と職業人養成を一体化しようとする理念を掲げて誕生したのであった。このことにより、旧制の高等教育機関が、「普通教育を施す機会があまりに少なく、その専門化があまりに狭すぎ、そして職業的色彩があまりに強すぎる。」と米国教育使節団報告書に指摘されているような弊を是正しようとしたのである。

 なお、「学校教育法」は、新制大学には、通常の授業を行なう学部のほか、勤労青年のために大学教育を広く解放するため、いわゆる夜間に授業を行なう学部を設置すること、および通信による教育を行なうことができることを法制化した。また、大学には、新しい学校教育体系の最高段階に位するものとして、大学院を置くことができることとされた。

大学基準

 新しい大学制度を発足させるに当たっては、その設置を認可するための基準を、従来の内規的なものから新しい基準に根本的に改めることが必要になり、文部省は、昭和二十一年十一月大学設立基準設定協議会を設け、基準の改正に着手した。しかし、より広く全国の大学の意見を聞くため、二十二年五月大学設立基準に関する全国大学連合協議会を開催した。この連合協議会において、大学自体が相互に協定する自主的基準を設けるべきであるとして大学基準協会を設置することが決まり、七月にその創立総会が開かれた。そして、先に大学設立基準設定協議会が提案した案を基として協議の上、協会の方針として大学基準を採択したのである。この大学基準は、大学を設置する際の基準にとどまらず、設置後、大学の質的向上を図るためにも活用できるものとするため、単に大学基準と称され、以後、三十一年に「大学設置基準」が新たに文部省令として制定されるまで、逐次内容の改定補正を受けながら実質的には法令的基準の役割を果たしてきたのである。

 次に、大学の設置の認可に関しては、学校教育法において「文部大臣は大学設置委員会に諮問しなければならない」とされたので、二十三年一月、大学設置委員会(二十四年六月、大学設置審議会と改称)が設けられ、文部大臣の諮問に応じて新制大学の設置認可に関する審査を行なうこととなった。この委員会では、大学基準協会が二十二年に採択した大学基準をそのまま大学設置認可の基準として採用し、この基準に従って審査を行なうこととした。大学基準制定の経緯からみても大学側の意思を尊重する趣旨で大学設置審議会の委員四五人のうち約半数は、大学基準協会の推挙による者が任命されることとなっている。また、大学設置審議会の設置認可の答申は相当な理由のある場合のほか、文部大臣はこれを受け入れることが慣例となり今日に至っている。

 これより先、二十二年の末ごろ、文部省は、CIE(民間情報教育局)から総合大学を除き、国立の高等教育機関をすべて地方に委譲することについて検討するよう示唆されていた。しかし、この問題を重大視して検討を開始した教育刷新委員会、大学基準協会等が地方行政機関は大学をじゅうぶんに運営・維持する行政的・財政的能力がないこと等を理由として、大学の地方委譲は慎重を期すべきである、と結論を出すなど、各層、各団体の反対意見が盛り上がってきた中で、この方針は立ち消えとなり、実現されるに至らなかった

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