総説

 明治五年に学制を頒布してわが国の近代教育制度を創始してから本年は百年にあたる。この間文部省は中央における教育行政機関として、教育と学術・文化についての施策を立て、これを実施して今日に至った。ここに学制による近代教育制度の発達を起点として、学制百年史を記述することとした。本書は、文部省の教育施策と行政を中心として百年にわたる教育の発展を明らかにし、将来への展望をもってまとめとした。

 わが国は近代教育制度を創始してから百年の間に多くの教育課題に当面し、これを解決して教育を整備・拡充して今日に至った。この間の道程は単純なものではなく、大きな改善を加えなければならないことも度々であった。最も大きな改革を行なったのは、第二次世界大戦後数年、占領下において断行した学制改革であった。この終戦期をもって学制百年史を前期七〇年と後期三〇年とに分けて記述することとした。

 本書においては戦後教育改革までを第一編とし、戦後の教育改革は第二編として編集した。前期は、近代教育制度を創始し、これによって学校教育を整備・拡充した時代で、近代教育史ということができる。後期は、終戦後の教育改革と独立後における教育・学術・文化の拡充・発展であって、現代教育史ともいうことができる。

 総説においては百年史全体を教育・学術・文化にわたって大観した。第一編は、近代教育制度の創始と拡充であって、幕末維新期の教育を序章とし、明治五年から昭和二十年の終戦までを四期に分け、これに学術・文化を加えた。第一期は近代教育制度の創始であり、明治五年から十八年までである。第二期は、近代教育制度の確立と整備であって、明治十九年から大正五年までとした。第三期は、教育制度の拡充であって、大正六年から昭和十一年までである。第四期は、戦時下の教育であって、昭和十二年から昭和二十年の終戦までとした。第一編の最後に学術・文化を加えたが、これは教育制度発達の時期区分によらずに、まとめて述べることとした。第二編は、戦後の教育改革と新教育制度の発展であって、これを二期に分けた。第一期は、昭和二十年の終戦から二十七年の独立までであり、第二期は、昭和二十七年以後現在までとした。終わりに学術・文化を加えて第二編をまとめた。最後に結語をしるして百年の教育発展をもととして、将来の課題と展望を論述した。

 なお、総説は八つの区分からなっており、各時期の区分は本編の編成と同じであるが、ここでは教育段階の区分によらずにその時期の性格が概略理解できるようにまとめて要点を述べた。

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