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  付属資料
2.  科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)
第2章  重要政策
1.  科学技術の戦略的重点化


 国際競争力の維持・強化,少子高齢化や地球環境問題への対応等,我が国が直面する国家的・社会的課題を解決し,豊かで安心・安全な社会を構築・維持できるよう,取り組むべき研究開発を重点化して推進する。また,将来急速に発展し得る科学技術の領域に対して先見性と機動性をもって的確に対応する。

 同時に,研究開発は常に新たな発見から大きな飛躍が生まれるものであること,及び基礎研究と産業化との結びつきが急速に強まっていることから,基礎研究について,一定の資源を確保して進める。


1. 基礎研究の推進

 研究者の自由な発想に基づき,新しい法則・原理の発見,独創的な理論の構築,未知の現象の予測・発見などを目指す基礎研究は,人類の知的資産の拡充に貢献し,同時に,世界最高水準の研究成果や経済を支える革新的技術などのブレークスルーをもたらすものである。このような基礎研究を一層重視し,幅広く,着実に,かつ持続的に推進していく。

 特に,大学等においては,広範な分野で,優れた研究者・技術者等の人材養成と一体になって基礎研究を推進する必要がある。

 研究水準を高めていくために,公正で透明性の高い評価により,競争的な研究開発環境の中で研究が行われるようにする。また,これらの研究については,第一に科学的な観点から成果を評価する。

 研究者の自由な発想に基づく研究の中でも,特に大きな資源の投入を必要とするプロジェクトについては,国際的に卓越した研究の推進,革新的な知見の開拓,国際的な役割分担等の観点からも評価を行い,競争的資金も含めた基礎研究全体のバランス及び幅広い研究者の意見を踏まえつつ,資源を集中し,効果的・効率的に推進する。その際,国民に対しプロジェクトの意義や成果を積極的に説明し,理解を求めるよう努める。

 なお,研究成果の取扱いについては,論文の発表だけに留まらず,知的財産権の獲得・活用を念頭に置くよう研究者に求めることが重要である。


2. 国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化

 経済や産業の活性化により持続的に経済発展を遂げていくため,また,国民が安心して安全な生活を送るためには,重点分野に積極的,戦略的に投資を行い,研究開発の推進を図らねばならない。重点化の方針としては,我が国が目指すべき国の姿の実現に向けて必要となる科学技術分野の中から,

●新たな発展の源泉となる知識の創出(知的資産の増大)
●世界市場での持続的成長,産業技術力の向上,新産業・雇用の創出(経済的効果)
●国民の健康や生活の質の向上,国の安全保障及び災害防止等(社会的効果)

について,特に寄与の大きいものを評価し,

{1} 少子高齢社会における疾病の予防・治療や食料問題の解決に寄与するライフサイエンス分野
{2} 急速に進展し,高度情報通信社会の構築と情報通信産業やハイテク産業の拡大に直結する情報通信分野
{3} 人の健康の維持や生活環境の保全に加え,人類の生存基盤の維持に不可欠な環境分野
{4} 広範な分野に大きな波及効果を及ぼす基盤であり,我が国が優勢であるナノテクノロジー・材料分野

 の4分野に対して,特に重点を置き,優先的に研究開発資源を配分することとする。

 また,科学技術の発展が急速であり,かつ知識が細分化されてきている中で,新しい科学技術は異なる分野の手法や考え方の間の触発や融合の中から生まれることが多いので,研究開発の推進に当たって,境界領域や異分野の融合領域に特に留意する必要がある。

 国家的・社会的課題に対応した研究開発は,官民が協力して推進すべきものであるが,以下では特に官の果たすべき役割を中心に示す。


(1) ライフサイエンス分野

 21世紀は「生命の世紀」と言われるように,生命への理解が深まることによって,医学の飛躍的な発展や食料・環境問題の解決に寄与することが期待できる。この分野は,我が国で今後本格化する少子高齢社会において,健康で活力に満ちた安心できる生活を実現するために重要な分野である。

 ライフサイエンス分野の研究開発水準については,我が国は,イネゲノム,特定の微生物ゲノムの解読・研究,家畜のクローン技術では欧米と競っているなど一部は高い水準にあるが,全般的に欧米に比して遅れを取っている。米国は,NIH(国立衛生院)に代表される国家的取組とベンチャービジネスの活動の両面において,世界をリードしている。欧州は,遺伝性のアルツハイマー病研究,ゲノム情報などのデータベース構築技術などで,米国に劣らない実力を持つ。

 本年2月にヒトゲノムのDNA概要解析結果が公表されるなど,近時,多様な生物種の遺伝情報が急速に解明されつつあり,これをもとに今後,広範な研究が発展するものと期待される。こうしたポストゲノム科学をはじめとする先端生命科学研究が急速に進展する中,我が国の国情を踏まえ,重点的・戦略的に取り組むこととする。具体的には,

●プロテオミクス,たんぱく質の立体構造や疾患・薬物反応性遺伝子の解明,それらを基礎とした新薬の開発とオーダーメイド医療や機能性食品の開発等の実現に向けたゲノム科学
●移植・再生医療の高度化のための細胞生物学
●研究開発成果を実用化する臨床医学・医療技術
●食料安全保障や豊かな食生活の確保に貢献するバイオテクノロジーや持続的な生産技術等の食料科学・技術
●脳機能の解明,脳の発達障害や老化の制御,神経関連疾患の克服,脳の原理を利用した情報処理・通信システム開発等の脳科学
●上記の技術革新を支えるとともに,膨大な遺伝子情報等を解析するための情報通信技術との融合によるバイオインフォマティクス

等の推進に重点を置く。

 ライフサイエンス分野の推進に当たって,国は,基礎的・基盤的な研究開発の実施に加え,融合領域等で必要となる研究者・技術者の養成・確保,生物遺伝資源等の知的基盤の整備と幅広い利用の促進,特許を巡る国際的な課題への対応,科学的知見に基づく安全性の確保とそのための基盤の整備,国民の理解の増進,倫理面のルール整備等を推進する。


(2) 情報通信分野

 情報通信分野における研究開発の進展は,情報通信産業やハイテク産業など知識集約的な産業の創出・拡大や,ものづくり技術の新たな展開など既存産業の革新のために重要である。また,電子商取引,電子政府,在宅勤務,遠隔医療及び遠隔教育の実現・普及など,産業のみならず日常生活までの幅広い社会経済活動に大きな変革をもたらすもので,国民が安心して安全な生活を送るための重要な基盤となりつつある。

 情報通信分野の研究開発水準については,我が国は,携帯電話,光通信技術,情報通信端末などで欧米より優位であると言われているが,米国は,パーソナルコンピュータ関連技術等での標準化戦略で先行し,またソフトウェア技術で我が国より優位である。

 特に,この分野はニーズが多様で,技術革新が急速に進行しているため,機動的な研究開発を推進する。また,誰もが,自由な情報の発信・共有を通じて,個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となる高度な情報通信社会の実現に必要な基盤技術に関する研究開発を推進することが重要である。具体的には,

●ネットワーク上であらゆる活動をストレスなく時間と場所を問わず安全に行うことのできるネットワーク高度化技術
●社会で流通する膨大な情報を高速に分析・処理し,蓄積し,検索できる高度コンピューティング技術
●利用者が複雑な操作やストレスを感じることなく,誰もが情報通信社会の恩恵を受けることができるヒューマンインターフェース技術
●上記を支える共通基盤となるデバイス技術,ソフトウェア技術

等の推進に重点を置く。

 情報通信分野の推進に当たって,国は,この分野は多様性と技術革新の速さといった特性を持つことを踏まえつつ,市場原理のみでは戦略的・効果的に達成し得ない基礎的・先導的な領域の研究開発に重点を置く。さらに,革新的なアイディアを有する研究者個人に着目した研究開発にも重点を置くとともに,民間の優れた人材の教育現場での活用などにより,優れた研究者・技術者の養成・確保を図る。また,ネットワーク上での安全・安心な活動を担保するための制度等の整備,技術開発のためのテストベッドの提供,標準化等の国際的な取組,国民が情報通信技術を活用することができるようにするための教育及び学習の振興等に取り組む。さらに,コンピュータの誤作動・機能不全による災害,ネットワークを介した不正行為による社会システムの機能停止への対策や,プライバシー等の情報管理の在り方の検討,情報格差の是正について留意する。


(3) 環境分野

 環境分野は,多様な生物種を有する生態系を含む自然環境を保全し,人の健康の維持や生活環境の保全を図るとともに,人類の将来的な生存基盤を維持していくために不可欠な分野である。

 環境分野の研究開発水準については,我が国は,地球温暖化対策技術では,全般的に欧米と同等の水準である。地球科学の領域では,観測の量などは欧米(特に米国)より劣るが,測定技術そのものは同等である。我が国は,化学物質総合評価管理技術などでは,欧米とほぼ同等の水準である。

 国土が狭隘で資源にも乏しい我が国にとって,環境分野の重要性は高く,他国に先駆けて取り組むことは極めて重要である。具体的には,

●資源の投入,廃棄物等の排出を極小化する生産システムの導入,自然循環機能や生物資源の活用等により,資源の有効利用と廃棄物等の発生抑制を行いつつ資源循環を図る循環型社会を実現する技術
●人の健康や生態系に有害な化学物質のリスクを極小化する技術及び評価・管理する技術
●人類の生存基盤や自然生態系にかかわる地球変動予測及びその成果を活用した社会経済等への影響評価,温室効果ガスの排出最小化・回収などの地球温暖化対策技術

 等の推進に重点を置く。その際,環境負荷の低減に配慮して総合的に技術評価を行う必要があり,ライフサイクルアセスメント手法の開発,データベースの整備,消費者等への情報提供を推進することが重要である。

 環境分野の推進に当たって,環境対策自体は経済的な付加価値を評価しにくいものであるため,国は,環境対策が経済社会に適切に組み込まれるよう,地球規模の観測や共通基盤技術開発,知的基盤整備,標準化の取組,モデル的な実証評価等を推進するとともに,環境対策の制度設計,初期需要創出のための各種導入促進策,消費者等への環境教育等を行う。


(4) ナノテクノロジー・材料分野

 ナノテクノロジー・材料分野は,上記3分野を含め,広範な科学技術分野の飛躍的な発展の基盤を支える重要分野であるとともに,特にナノテクノロジーは,21世紀においてあらゆる科学技術の基幹をなすものとして期待される。

○物質・材料

 物質・材料の研究開発水準については,我が国は,既存材料技術では欧米より優勢である。

 物質・材料は,広範な分野での飛躍的発展の鍵を握るという意味において重要であり,かつ,これまで我が国は高い研究開発水準を維持してきており,今後とも重点的に投資を行うことにより積極的に研究開発を進め,世界に先駆け技術革新を先導していくこととする。具体的には,

●情報通信や医療等の基盤となる原子・分子サイズでの物質の構造及び形状の解明・制御や,表面,界面等の制御等の物質・材料技術
●省エネルギー・リサイクル・省資源に応える付加価値の高いエネルギー・環境用物質・材料技術
●安全な生活空間を保障するための安全空間創成材料技術
  等の推進に重点を置く。  なお,材料は,使われてこそその真価を発揮するものであり,研究者の生み出すシーズが利用者側のニーズに的確に応えるものとなるように十分に配慮しつつ研究開発を推進する。また,シミュレーション技術等の情報通信技術との融合による革新的材料開発,国際標準化の促進,知的基盤の充実,環境・安全等の総合的評価技術等の確立に取り組む。  材料技術の推進に当たって,国は,基礎的・先導的な研究開発や産業化をも視野に入れた基盤的技術の研究開発といった,市場原理のみでは戦略的・効果的に達成し得ない領域の研究開発を重点的に推進する。
○ナノテクノロジー  ナノテクノロジーは,情報通信,環境,ライフサイエンス,材料等広範な分野にわたる融合的かつ総合的な科学技術であり,ナノ(10億分の1)メートルのオーダーで原子・分子を操作・制御すること等により,ナノサイズ特有の物質特性等を利用して全く新しい機能を発現させ,科学技術の新たな領域を切り拓くとともに,幅広い産業の技術革新を先導するものである。ナノテクノロジーの活用により,情報通信,エネルギー,バイオテクノロジー,医療などに新しい材料,デバイス,革新的システム等を提供することが可能となる。  ナノテクノロジーの研究開発水準については,我が国は,欧米と対等ないしリードしているが,米国等諸外国の国策的取組が急速に進みつつある。このため,我が国における産学官の英知を結集した戦略的な取組が急務である。ナノテクノロジーの具体的な課題としては,例えば,ナノレベルで物質構造等を制御することで,超高強度化,超軽量化,超高効率発光等の革新的機能を有するナノ物質・材料,超微細化技術や量子効果の活用等により,次世代の超高速通信,超高速情報処理を実現するナノ情報デバイス,体内の患部に極小のシステムを直接送達し,診断・治療する医療技術,様々な生物現象をナノメートルレベルで観察し,そのメカニズムを活用し制御するナノバイオロジーなどの研究開発が挙げられる。  ナノテクノロジーの推進に当たっては,基礎的・先導的な研究開発と産業化を視野に入れた研究開発をバランス良くかつ重点的に推進することが重要である。また,異分野間や研究者間の融合及び情報交換を促進する研究ネットワークの構築や新たな融合領域における人材養成などが重要である。

 上記4分野以外にエネルギー,製造技術,社会基盤,フロンティアの4分野があるが,これらの分野においても,国の存立にとって基盤的であり,国として取り組むことが不可欠な領域を重視して研究開発を推進する。


(5) エネルギー分野

 エネルギー分野では,将来的に懸念されるエネルギー供給不安に備え,エネルギー・セキュリティを確保する観点から現在の主力である化石燃料への依存の低下を目指すとともに,地球温暖化防止等の地球環境保全や効率化の要請に対応しつつ,安全で安定したエネルギー需給構造の実現を目指す。

 具体的には,燃料電池,太陽光発電,バイオマス等の新エネルギー技術,省エネルギー・エネルギー利用高度化技術,核融合技術,次世代の革新的原子力技術,原子力安全技術等が挙げられる。


(6) 製造技術分野

 製造技術は,我が国の生命線ともいうべき経済力の源泉であり,我が国でしかできない高精度加工技術が存在するなど,世界的にも最高水準にある。今後,これらの高度な技術を基に,革新的な技術の開発を行うことが重要である。

 具体的には,高精度技術,精密部品加工技術,マイクロマシン等の高付加価値極限技術,環境負荷最小化技術,品質管理・製造現場安全確保技術,先進的ものづくり技術(特に情報通信技術・生物原理に立脚したものづくり革新に資する次世代技術),医療・福祉機器技術等が挙げられる。


(7) 社会基盤分野

 社会基盤分野は,防災科学技術,危機管理に関する技術,自動車・船舶・航空機・鉄道等の輸送機器,地理情報システム,淡水製造・管理技術等,国民生活を支える基盤的分野であり,豊かで安心・安全で快適な社会を実現するために,社会の抱えているリスクを軽減する研究開発や国民の利便性を向上させ,質の高い生活を実現するための研究開発を推進する。

 具体的には,地震防災科学技術,非常時・防災通信技術等の防災・危機管理関連技術,ITS(高度道路交通システム)等の情報通信技術を利用した社会基盤技術等が挙げられる。


(8) フロンティア分野

 新たな活用領域として更なる展開が期待される宇宙,海洋等のフロンティア開拓型の研究開発に取り組む。人工衛星による通信・地球観測等の宇宙利用,多様な資源・空間を有する海洋利用等により,国民生活の質の向上など経済社会への貢献を目指す。

 具体的には,高度情報通信社会に貢献する宇宙開発,新たな有用資源の利用を目指した海洋開発が挙げられる。


3. 急速に発展し得る領域への対応

 機動性,スピードの要求される時代にあって,重点化の対象・内容については,総合科学技術会議が継続的に精査し,適時の見直しを行っていく。近年,急速な知識の蓄積や新しい考え方,技術の発展によって,異分野間の融合や,新たな科学技術の領域が現れることが多くなっている。最近の例では,ナノメートルオーダーでの観察や制御技術が可能となったことから,材料,情報通信,ライフサイエンス,環境等にまたがる分野として登場したナノテクノロジー,ゲノムを始め,様々な情報の蓄積と情報通信技術の発展によって両分野が融合して生まれたバイオインフォマティクス,芽を出し始めたシステム生物学,ナノバイオロジーなどの領域が誕生してきた。今後とも新たな領域が現れてくるものと予想される。その時点における取組は小規模ながらも将来著しい成長が予想される領域が先見的に抽出された場合は,機動性を持って的確に対応する。


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