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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第6節  科学技術振興のための基盤の整備
[6]  ものづくりの基盤の整備


 近年,就業構造の変化,海外の地域における工業化の進展等による競争条件の変化その他の経済の多様かつ構造的な変化による影響を受け,国内総生産に占める製造業の割合が低下し,その衰退が懸念されるとともに,ものづくり基盤技術の継承が困難になりつつある。

 このような事態に対処して,我が国の国民経済が国の基幹的な産業である製造業の発展を通じて今後とも健全に発展していくためには,ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的気運を醸成しつつ,ものづくり基盤技術の積極的な振興を図ることが不可欠である。

 こうした状況を踏まえて平成11年3月に制定された「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づき,政府は平成12年9月に「ものづくり基盤技術基本計画」を策定し,同計画に沿って,ものづくり基盤技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図っている。


(1) ものづくりにかかわる人材の養成・確保

 ものづくりを担うのは「人」であり,かかる人材を養成・確保するため,ものづくり教育の充実やものづくりに係る生涯学習の振興等を図っている。

 初等中等教育においては,ものづくりに関する学習の振興を図るため,「ものづくり学習指導者」のデータベース構築,「ものづくり学習指導者」のための研修会の実施等を内容とするものづくり学習振興支援事業を平成12年度から実施しているほか,中学生の職場体験や高校生のインターンシップの推進や産業教育のための実験・実習設備の整備等を図った。

 高等教育においては,{1}理工系学部等における実験実習設備の高度化等,{2}生産現場等におけるインターンシップの推進,{3}工学関係学部等におけるものづくりを中心に据えた実践的教育の推進,{4}学生の創造性を育成するための「創造教育プログラム」や実践的な人材を養成するための「産学共同教育プログラム」の開発の推進などを図った。また,平成14年度補正予算においては,共同研究や技術者等の再教育を通じて地域産業のものづくり技術の高度化に資する「地域共同テクノセンター」を整備した。

 専修学校においては,社会のニーズに対応した高度職業人を育成するため,産学連携による先導的な教育プログラム開発等の事業を推進した。

 各地域においては,学生が夏休み等を利用して企業で就業体験を行うインターンシップ事業(受入企業・派遣学校の開拓,学生と企業のマッチング等)や,インターンシップ制度の普及を目的としたセミナー等を実施した。

 また,若年者を中心としたものづくり離れや熟練技能者の高齢化による後継者不足,生産拠点の海外移転と機械化・自動化による技能活用機会の減少等を背景に,産業界の各分野で我が国の経済発展に重要な役割を担ってきた優れた熟練技能者の確保が難しくなってきているとともに,その後継者の育成が困難となってきている。

 これらの一因として,若年期において,ものづくり体験に乏しいこと,ものづくりの現場を見る機会が少ないこと等から若年者がものづくりの楽しさ,素晴らしさなどを知る機会が不足していることが考えられる。

 このため,次世代を担う若者に,ものづくりの楽しさ,素晴らしさなどを認識してもらうための体験教育・学習等の効果的な施策の実施について研究・検討を行うため,文部科学省と厚生労働省の共同により平成11年度から平成12年度にかけて「ものづくり教育・学習に関する懇談会」を開催し,ものづくりの技能・技術に熟練した者を活用したものづくり教育・学習の在り方について検討を行い,その結果を報告書「若年者に対する熟練技能者によるものづくり教育・学習の在り方について」にまとめ公表した。厚生労働省では,この報告書を踏まえ,熟練技能者を活用して若年者を対象としたものづくり教育・学習を実施したほか,当該教育・学習に利用した教材・カリキュラム等についてインターネット等により情報提供を行った。平成14年度におけるものづくり教育・学習の例として,小中学校等を対象とした,北海道の巣箱,本棚,木製ハードテーブル,木製花置台等の製作,岩手県のブックエンド,花台,木製椅子,木製パズル等の製作,千葉県のコンテナガーデン,石こう細工,ミニ畳等の製作,東京都のてん刻,パソコン,ペンダント等の製作,三重県の本立て等の製作,奈良県のプランターボックス,ゆめミラー等の製作,広島県の本立て,折りたたみ椅子,トランジスタラジオ等の製作,香川県の植木鉢置き台等の製作,熊本県の浴衣,ラック,ペン立て等の製作,大分県の銅版工芸,竹工芸,和菓子の製作等がある。

 これらの6道府県では,中学校8校において,地域の熟練技能者を講師としてベンチ・テーブル,銅板レリーフ,木製組立てパズル,てん刻,アンティックミラー,椅子座布団及びタイルモザイクなどの製作を行い,また,高等学校8校では,地域の高度熟練技能者や熟練技能者などを講師として,ねじ切り,六面体の切削,鉄板加工と溶接,鋳型,アーク溶接などをそれぞれ正規の授業として行った。その後のアンケート調査では,いずれの中学校,高等学校においても,9割近い生徒が,「ものづくりに非常に興味を持った」,「達成感があった」と回答するなど授業に高い満足感や達成感が得られている。

 また,このほかにも,小中学校の児童生徒を対象に,休日のイベントとして,保護者を交えて巣箱の製作,折りたたみ椅子の製作,銅版画の製作,スライド本棚製作など,多種の教材を課題にものづくり体験教室を実施した。


(2) 情報通信技術(IT)と製造技術(MT)の融合による生産システムの革新

 我が国経済の基盤である製造業がIT技術を用いて,その競争力の維持強化を図るため,熟練者が持つ技能・ノウハウ・経験等を科学的に分析し,デジタル化する手法を確立するとともに,これを活用できる情報システム(ソフトウエア,データベース等)の開発を行うこととした。

 文部科学省では,ものづくりの現場における新技術開発・新製品開発の高度化・効率化に資するとともに,あらゆる技術体系の共通基盤として我が国の情報技術革命を先導することを目指して,理化学研究所において「先端的ITによる技術情報総合化システムの構築に関する研究開発」を実施している。新たな概念であるボリュームデータ( )の利用技術を基盤として,ものづくりのための各種シミュレーション技術や製品の測定・評価技術(CAT),機械加工技術(CAM)などを完全に統一して扱うことができる,新しい概念に基づくシステムの開発が進展中である。

 経済産業省では,我が国製造業の競争力の維持・強化のため,競争力の源泉である熟練技術者の「技能」を可能な限り客観化し,再現性のある「技術」に置き換えることが必要との認識から,設計・製造現場に「暗黙知」として存在している熟練者の技能,ノウハウ,経験を科学的に分析することにより「形式知」化し,ITを活用してソフトウエア化,データベース化する手法等を開発する「デジタルマイスタープロジェクト」を実施している。

 さらに,中小企業におけるものづくりとITの融合を促進するため,平成12年度に都道府県の公設試験研究機関等へ導入した3次元CAD/CAM機器等を活用し,引き続き中小企業に対するCAD/CAM研修を行った。


■注 ボリュームデータ:計算機上で物体の内部構造や密度,温度,弾性などの物理的性質を統一的に表現することができるデータ形式


(3) ものづくりに関する情報の蓄積

 経済産業省は,大学,独立行政法人産業技術総合研究所等と協力し,地域の公設試験研究機関を中心とした全国的なネットワークを構築し,ものづくりに関する成功事例や公設試験研究機関の技術相談事例等の技術情報をデータベースとして蓄積し,それをインターネットを通じて提供する(テクノナレッジネットワーク)ことにより,中小企業に対する的確かつ効率的な技術支援を行った。

 また,高齢者等の視点に立った創意工夫のある製品等の開発を支援するため,人体の3次元形状計測データから自動的に寸法を算出するシステムの開発を開始し,寸法計測の高速・簡易・低コスト化を推進している。


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