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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第4節  優れた研究者・技術者の養成・確保等
[1]  研究者・技術者の養成と大学等の改革


(大学等の学術研究の基盤としての研究者養成)

 大学等を中心として行われる学術研究は,人文・社会科学から自然科学にまで及ぶ知的創造活動であり,研究者の自由な発想と知的好奇心を源泉として真理の探究を目指して行われる営みである。

 その成果は,人類共通の知的資産を形成するとともに,産業,経済,教育,社会などの諸活動及び制度の基盤となるものであり,また,人間の精神生活の重要な構成要素を形成し,文化の発展や文明の構築に大きく貢献するものである。

 このように学術研究は,社会・国家の存続・発展の基盤であり,その振興は国の重要な責務である。特に,学術研究の推進の基本は,優れた研究者が育ち,その研究者が十分に能力を発揮し,優れた研究成果を生むことにあり,この意味で,若手研究者の養成は学術研究の基盤というべきものであり,極めて重要な意義を有している。

(若手研究者に対する支援の意義)

 若手研究者に対する支援の重要性は,例えば,ノーベル賞受賞者の受賞実績となる研究成果がおおむね30代から40代前半に集中していることからも理解できる。1981年から2000年までの自然科学系3賞(物理学賞,化学賞,医学・生理学賞)の受賞者127名のうち,受賞のきっかけとなった業績を上げた年齢が明確な者111名を対象に行った調査結果によれば,ノーベル賞につながるような優れた研究業績は,おおむね30代後半に集中しており,40代後半になると少なくなることが分かる。

 このように,若手研究者に対する支援は,研究者の研究能力が最も充実している段階における適切な支援を通じて優れた研究成果を創出するという意義を有するものである。

(大学等の若手研究者に対する支援)

 研究者養成に当たっては,優れた若手研究者がその能力を最大限発揮できるように,若手研究者に対する支援を充実させ,若手研究者の自立性を確保することが重要である。

 このため,「ポストドクター等1万人支援計画」に基づくポストドクター等に対する各種支援制度や,日本育英会の育英奨学事業,ティーチング・アシスタント(TA)経費などの充実に努めている。このほか,研究体制の充実を図るためのリサーチ・アシスタント(RA)や,競争的資金による研究の遂行上必要となる研究支援者の雇用を通じた若手研究者の支援を図っている。

(研究者養成と国際交流)

 科学技術・学術研究の発展には,経験や発想の異なる研究者との意見交換が重要であることから,国境を超えた研究者の交流や活動が不可欠である。

 第2期科学技術基本計画においても,科学技術活動の国際化という観点から,日本人研究者が若いころから国際的な研究環境での経験を積めるように,海外の研究機関における研さんの機会の充実や,海外の一流の研究者との交流機会の拡大などが盛り込まれている。

 これを指針として,文部科学省では,科学技術・学術審議会国際化推進委員会の報告において,研究者国際交流の促進に関する方策をまとめており,{1}ポストドクターレベルの若手研究者の海外派遣(海外特別研究員:日本学術振興会),{2}ポストドクターレベルの外国人研究者の我が国研究機関への受入れ(外国人特別研究員:日本学術振興会),{3}若手研究者を対象とした多国間セミナー(アジア学術セミナー:日本学術振興会)の開催,{4}大学院レベルの若手研究者の短期受入れ(文部科学省若手外国人研究者短期研究プログラム)等を実施し,国際的な視野に立った研究者の養成に努めるとともに,我が国の研究体制を国際的に開かれたものにしつつ,世界の研究水準の向上にも寄与しているところである。


(1) 大学学部・大学院等における人材の育成

(大学院に重点を置いた人材の育成)

 大学院は,基礎研究を中心として学術研究を推進するとともに,研究者及び高度の専門的能力を有する人材を養成するという役割を担っている。我が国の大学院の状況について見ると,全国国公私立686大学の約7割に当たる508大学(平成14年5月現在)に大学院が置かれ,大学院に在籍する学生数は,国公私立全体で22万3,512人(平成14年5月現在)に上っている( 第3-2-22図 )。

第3-3-22図 大学院在籍者数の推移

 これは,近年の急速な技術革新,産業構造の変化に伴い,これまで以上に先端科学技術の分野を中心に,独創的で高度な教育研究の推進が求められていることの表れであり,今後とも,特に,大学院に重点を置いて人材の養成に努めていくことが重要である。理工系の大学院については,国立大学が大きな役割を果たしており,平成14年度においては5大学で7研究科等を,18大学で39専攻を新たに設置した。

 また,我が国の研究開発力を高めるためには,学外における高度な研究水準を有する民間研究機関等の施設・設備や人的資源を活用して大学院教育を行うことも重要である。このため,大学院が教育上有益と認めるときは,学生が研究所等において必要な研究指導を受けることができる(大学院設置基準第13条)こととされており,大学院と民間の研究機関等が連携を図り,大学院学生の研究指導を行う連携大学院の活用実績も平成14年度91大学161研究科(国公私立大学)で実施しており,年々拡大している。また,国立大学においては,社会との連携の充実等の観点から民間等からの寄附で設置される寄附講座は,平成15年1月現在,19大学32研究科に57講座設置されている。また,平成14年8月の中央教育審議会答申を踏まえ,この制度を更に発展させ,高度で専門的な職業能力を有する人材の育成に特化した実践的な教育を行う専門職大学院(プロフェッショナルスクール)制度を創設したところである。

(理工系人材の育成)

 現代社会の諸課題を解決し,豊かな未来社会を切り開いていくためには,新しい科学技術の創出が必要である。また,我が国が科学技術創造立国を目指し発展していくために,今後更に先導性・独創性を発揮し,国際社会に貢献していくことが期待されており,これらを支える理工系の創造性豊かな優れた人材の養成が極めて重要である。

 それとともに,我が国の生命線ともいうべき製造業の発展を担い,ものづくりの基盤技術を支える実践的な人材の養成も推進していく必要がある。

 このような観点から,文部科学省では,平成14年度において,{1}学科の改組再編,大学院研究科専攻の設置,{2}理工系学部等における実験実習設備の高度化・現代化,{3}学生の創造性を育成するための教育プログラムの開発・実施や,理工系分野の魅力を積極的に青少年や社会に情報発信するための体験入学事業等を実施している大学等への支援,{4}学生が生産現場等で就業体験を行うインターンシップの推進,{5}起業家精神に富んだ人材を育成することを目的としたベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの整備などを行っている。

(教養教育の充実)

 社会の高度化・複雑化等が進む中で,大学においては,学生の専攻分野にかかわらず,主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力(課題探求能力)の育成を図る観点から,教養教育の充実を図ることが重要である。このため,文部科学省においては,平成14年度においても,大学における教養教育の充実のため,予算措置や情報提供など所要の措置を講じ,各大学の積極的な取組を促している。各大学においては,学際的・総合的な内容の科目や,インターンシップやボランティア活動を取り入れた授業科目の開設等,教養教育について積極的な取組が行われている。

(大学院学生に対する支援)

 大学院学生に対する支援について,文部科学省では,優れた大学院学生が安心して進学できる環境の整備のため,研究奨励金等を支給する日本学術振興会特別研究員制度や,優秀な大学院学生に対し,教育的配慮の下に教育補助業務を行わせ,学部教育におけるきめ細かい指導の実現や大学院学生が将来教員・研究者になるためのトレーニングの機会の提供等を図るためのティーチング・アシスタント(TA)制度,優れた学生で経済的理由により修学困難な者に対して奨学金の貸与等を行うことにより,次代を担う意欲と能力のある人材を育てるため,日本育英会の育英奨学事業( 第3-3-23図 )などの充実に努めている。

第3-3-23図 日本育英会奨学金貸与人員総数(大学院生)の推移

 また,国,私立大学や大学共同利用機関が行う優れた研究プロジェクト等に,大学院後期博士課程在学者を参画させ,研究遂行能力の育成とともに,研究体制の充実を図るリサーチ・アシスタント(RA)を推進している。

 さらに,競争的資金を獲得した研究者の研究を推進するため,研究費で博士課程学生等を雇用できるよう競争的資金制度の改革を行っており,若手研究者が研究に携わる中で研究者として養成されることが期待される。今後は競争的資金により雇用ができることの周知を図るとともに,競争的資金を拡充することにより一層の雇用の拡大が図られ,若手研究者の養成に資するものと考える。

(留学生に対する支援)

 現在,我が国の高等教育機関には約9万6,000人の留学生が在籍しており,そのうち,大学院には約2万6,000人が在籍している( 第3-3-24図 )。

第3-3-24図 我が国の外国人留学生の推移

 こうした留学生が安心して,継続的に教育・研究活動を行えるように,留学生に対する支援の充実を図ることが必要である。

 文部科学省においては,昭和58年8月の「21世紀への留学生政策に関する提言」などを踏まえた,21世紀初頭における10万人の受入れを目指す「留学生受入れ10万人計画」に基づき,国費留学生の受入れの計画的整備,私費留学生・就学生に対する学習奨励費の拡充や,大学院における英語による特別プログラムの設置などの留学生に対する教育指導体制の充実,留学生宿舎の確保など,留学環境の整備に努めているところである。

 このような施策の推進の結果,本年度中に「留学生受入れ10万人計画」が達成される見込みとなったことから,平成14年11月に中央教育審議会大学分科会に留学生部会(部会長:木村孟大学評価・学位授与機構長)を新設し,ポスト10万人計画を含めた新たな留学生政策の策定に向けて検討を始めているところである。


(2) 高等専門学校における人材の育成

 高等専門学校は,実践的技術者の養成を目指し5年一貫の高等教育機関として創出され,その教育成果は産業界等から高い評価を受けてきたところである。各高等専門学校が今後とも発想力豊かな実践的技術者を育成する教育機関としての重要な役割を果たしていくため,文部科学省においては,平成14年度において,{1}カリキュラム・教育方法等の改善など教育研究活動の高度化,産業界との連携促進,ロボット製作等の高度なものづくり活動のための経費の措置,{2}科学技術の高度化等に対応するための専攻科の設置,{3}社会の要請に適切に対応するための学科の改組などを進め,その整備・充実に努めている。


(3) 専修学校における人材の育成

 文部科学省では,専修学校において,キャリアアップのための先導的な教育プログラム開発や,IT関連分野に対応したスペシャリスト等を育成するため,産学連携によるプログラム開発等を実施している。このほか,大型教育装置・情報処理関係設備の整備費補助の施策を行うなど,教育内容の高度化を推進している。


(4) 高等学校における人材の育成

 理科・数学に重点を置いたカリキュラム開発等を行う「スーパーサイエンスハイスクール」を新たに指定するとともに,学校における実験用機器をはじめとした理科教育設備の計画的な整備・充実などを進めている。また,社会の変化等に適切に対応した産業教育の振興のための実験・実習の施設・設備の充実を図っている。


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