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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第1節  研究開発システムの改革
[1]  優れた成果を生み出す研究開発システムの構築



(1) 競争的な研究開発環境の整備

 第2期科学技術基本計画(平成13年3月)においては,優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革を重要政策の1つとして掲げ,競争的な研究開発環境の形成に貢献する競争的資金について,目的・役割の明確化,適切な評価の実施など制度の改革を行うとともに,基本計画期間中の倍増を目指して拡充することとしている。各省の競争的資金一覧を示す( 第3-3-1表 )。

第3-3-1表 競争的資金総括表

 平成14年度においては,総合科学技術会議において制度改革に関する検討が開始され,平成14年6月19日に「競争的研究資金制度改革について中間まとめ(意見)」が意見具申され,同意見を踏まえ,各制度において,研究費の次年度への繰越等資金の弾力的運用や競争的資金制度の業務を科学技術の側面から責任を持ち得るプログラムオフィサー等の実施体制の整備への着手,総合科学技術会議が整備した研究開発データベースへの研究者・資金等のデータ入力が進められている。

 このほか,各制度において,研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費として手当した間接経費の拡充に努めるとともに,博士課程学生・ポストドクター等の雇用ができることを周知することによる雇用の拡大,優れた成果や発展が見込まれる研究開発課題については当初の研究開発期間を超えて切れ目なく研究が継続できる仕組みの導入等が図られた。

(各省の競争的資金)

{1}総務省

 総務省では,情報通信技術の研究開発力の向上及び競争的な研究環境の形成による研究者のレベルアップを図り,世界をリードする知的財産を創出していくため,戦略的な重点目標に沿った独創性・新規性に富む研究開発を積極的に推進することを目的として,「戦略的情報通信研究開発推進制度」を平成14年度に創設し,情報通信分野における戦略的な研究開発の推進を図っている。

{2}文部科学省

 文部科学省では,大学等における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的とし,学術研究の動向に即して特に重要なものを取り上げ,研究費を助成する科学研究費補助金の拡充を図っている。科学研究費補助金の平成14年度予算は,1,703億円,対前年度比7.8%増であった。平成14年度は約8万5,000件の新規申請に対し約2万1,000件の課題を採択した。

 戦略的創造研究推進事業は,これまで科学技術振興事業団で実施してきた基礎的研究事業を再編成し,平成14年度に新たに創設したものである。本事業は,文部科学省が社会・経済ニーズ等を踏まえて設定した戦略目標の下に科学技術振興事業団が研究領域を設け,それぞれの領域において国立試験研究機関,大学等の産学官を問わず研究テーマを公募する等により,新技術の創製に資する基礎研究を推進するものである。平成14年度は,新たに,「がんやウィルス感染症に対して有効な革新的医薬品開発の実現のための糖鎖機能の解明と利用技術の確立」,「個人の遺伝情報に基づく副作用のないテーラーメイド医療実現のためのゲノム情報活用基盤技術の確立」,「非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製」,「医療・情報産業における原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計・高度治療実現のための次世代統合シミュレーション技術の確立」,「情報処理・通信における集積・機能限界の克服実現のためのナノデバイス・材料・システムの創製」及び「環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」という6つの戦略目標の下に研究領域を定め,戦略目標の達成に向けた基礎研究を推進した。

 また,総合科学技術会議の方針に沿って科学技術の振興に必要な重要業務の総合推進調整を行う科学技術振興調整費の平成14年度予算は,365億円,対前年度比6.4%増であった。

 ミレニアム・プロジェクトの一環として平成12年度に創設された「革新的な技術開発の提案公募制度」を見直し,平成14年度から,民間の有する革新性の高い独創的な技術シーズを提案公募の形式により募集し,優秀な提案を採択するとともに,大学の持つポテンシャルも活用して,より革新的かつ実用的な技術へ育成するための技術開発に対して助成を行う「独創的革新技術開発研究提案公募制度」とした。平成14年度は872件の応募に対し29件の課題を採択した。

 大学発ベンチャー創出を促進するため,ベンチャーを起こす際の技術になる成果をもたらすと期待される大学の研究者等が行う技術開発や起業に向けた事業化計画の策定等に必要な資金を助成する「大学発ベンチャー創出支援制度」を平成14年度に創設し,同年度は143件の応募に対し34件の課題を採択した。

 また,日本学術振興会においては,我が国の未来の開拓につながる知的資産の形成が期待される大学主導型の学術研究を推進する未来開拓学術研究推進事業を実施している。

{3}厚生労働省

 厚生労働省では,厚生労働科学研究費補助金により厚生労働科学研究の振興を促し,国民の保健医療,福祉,生活衛生,労働安全衛生等に関し行政施策の科学的な推進を確保し,技術水準の向上を図っている。

 厚生労働科学研究費補助金の平成14年度予算は,407億円であり,行政政策研究分野,第2次対がん10か年戦略に基づく「がん克服戦略研究」,ミレニアム・プロジェクトの一環である「ヒトゲノム・再生医療等研究」等の総合的プロジェクト研究分野,ナノテクノロジー(超微細技術)を活用した研究開発の推進を図る「萌芽的先端医療技術推進研究」,感染症対策等に取り組む「新興・再興感染症研究」等の先端的厚生科学研究分野及び「創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業」などの健康安全確保総合研究分野の4分野に分けて,研究を実施している。

{4}農林水産省

 農林水産省では,産学官連携により現場に密着した農林水産分野の試験研究の迅速な推進を図ることを目的とした「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」,新産業の創出でアグリビジネスの活性化を図ることを目的とした「民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業」を平成14年度から創設し,競争的資金の充実・強化を図っている。また,生物系特定産業技術研究推進機構において,生物機能の高度利用等を促進する基礎研究をはじめ,共同研究等の施策を実施している。

{5}経済産業省

 経済産業省では,新エネルギー・産業技術総合開発機構に助成を行い,平成12年度から若手研究者へ研究資金を助成する「産業技術研究助成事業」を実施しており,産業界のニーズや社会のニーズにこたえる産業技術シーズの発掘や産業技術研究人材の育成を図っている。

{6}国土交通省

 国土交通省では,運輸施設整備事業団に出資を行い,運輸分野における公募型基礎的研究推進制度を設けて,画期的な技術革新をもたらす可能性を有する新たな発想に立った新技術を創出するための独創性,革新性のある基礎的研究の推進を図っている。また,建設以外の他分野を含めた連携を進め,広範な学際領域における建設技術革新を促進し,それらの成果を公共事業等で活用することを目的に,平成13年度より建設技術研究開発助成制度による大学の研究者等への研究開発費の助成を実施している。

{7}環境省

 環境省では,地球環境研究総合推進費により,地球環境保全に関する関係閣僚会議において策定される地球環境保全調査研究等総合推進計画を踏まえ,地球温暖化等地球環境保全のための研究を推進している。また,環境技術開発等推進費により,環境技術の開発・普及を重点的・戦略的に推進するとともに,廃棄物処理等科学研究費補助金により,廃棄物の排出の抑制と再生利用の促進,適正処理の確保,廃棄物処理対策に関する各種研究の充実を図る。


(2) 任期制の広範な普及等による人材の流動性の向上

 創造性・独創性豊かで広い視野を有する研究者を養成し,競争的で活力ある研究開発環境を実現するためには,研究者の流動性向上を図り,研究者が様々な研究の場を経験することが重要である。

 こうした研究者の流動性向上に向けて,国立試験研究機関等においては,平成9年に成立した「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」により,任期付研究員の採用が可能となり,これまでの採用状況は 第3-3-2表 のとおりである。

第3-3-2表 「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」に基づく採用状況

 また,大学及び大学共同利用機関等においては,同じく平成9年に成立した「大学の教員等の任期に関する法律」により,各大学等の判断により任期制の導入が可能となっており,この法律に基づく任期制の導入状況は, 第3-3-3表 のとおりである。

第3-3-3表 「大学の教員等の任期に関する法律」に基づく任期制の導入状況

 一方,平成13年度には,国の研究機関等における任期制の広範な定着を目指し,科学技術振興調整費に「若手任期付研究員支援」プログラムを創設し,大学や国立試験研究機関等に所属する若手の任期付研究員が任期中に自立的研究に専念できるよう支援している。

 なお,第2期科学技術基本計画においては,「国の研究機関等は,任期制及び公募の適用方針を明示した計画を作成するよう努める」こととされており,文部科学省では,平成14年2月に「研究者の流動性向上に関する基本的指針」(平成13年12月総合科学技術会議決定)を関係機関に通知したところである。今後,国の研究機関等において任期制の導入や公募の実施など,研究者の流動性向上に向けた取組みが積極的に推進されることが期待される。


(3) 若手研究者の自立性の向上

 優れた若手研究者がその能力を最大限発揮できるように,若手研究者の自立性を確保することが重要である。

(ポストドクター等1万人支援計画)

 第1期科学技術基本計画において決定された「ポストドクター等1万人支援計画」に基づき,ポストドクター等の若手研究者の養成・確保に向けて,若手研究者が主体的に研究に専念できるよう支援の充実を図るとともに,若手研究者を積極的に登用して独創的な基礎的研究を推進する制度を創設,推進してきたところである。第2期科学技術基本計画においては,同支援計画により「ポストドクターが研究に専念できる環境が構築されてきた」と一定の評価がなされるとともに,今後は「ポストドクトラル制度等の質的充実を図る」こととされている。

 平成14年度においても,政府全体として関連施策の充実を図り,計1万1,127人のポストドクター等を支援するための予算を計上したところである( 第3-3-4図 )。

第3-3-4図 ポストドクター等1万人支援計画の推移

{1}文部科学省

 文部科学省では,政府全体のおおむね9割に当たる約9,800人のポストドクター等を支援するための予算を計上している。具体的には,日本学術振興会の特別研究員事業においては,特に優れた若手研究者を発掘し,世界最高水準の研究を行う能力を有する者を対象に「特別研究員(SPD)」を創設するなど,質的な面での充実に努めているところである。このほか,理化学研究所が独創性に富む若手研究者に同研究所において自発的かつ主体的に研究できる場を提供する基礎科学特別研究員制度など,多様な支援制度を推進している。

{2}厚生労働省

 厚生労働科学研究推進事業により,計541人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

{3}農林水産省

 生物系特定産業技術研究推進機構が実施する新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において150人の若手研究者の活用を行うなど計224人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

{4}経済産業省

 新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する産業技術フェローシップ制度により,計396人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

(若手研究者の積極的な登用による独創的な基礎研究の推進)

 世界的に優れた研究成果を上げた研究者の多くは,30歳代にその後の研究の基盤となる研究を行っているが,我が国は年功序列による処遇が一般的であり,若手研究者の能力を生かす環境は大きく立ち後れている。このため,関係府省が連携しつつ,それぞれ若手研究者を積極的に登用して,独創的な基礎研究を推進する制度を推進している。

{1}総務省

 平成14年度に創設した「戦略的情報通信研究開発推進制度」において,35歳以下の若手研究者の育成を目的とした「若手先端IT研究者育成型研究開発」を設けている。

{2}文部科学省

 科学研究費補助金において,37歳以下の研究者が1人で行う研究であって,将来の発展が期待できる優れた着想を持つ研究を対象とする若手研究を134億円措置するなど若手研究者を対象とした競争的資金の拡充に努めている。

{3}農林水産省

 生物系特定産業技術研究推進機構が実施する新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において,柔軟な発想と意欲を持った若手研究者が主体的に研究できる条件を整備するため若手研究者支援型を設け推進している。

{4}経済産業省

 新エネルギー・産業技術総合開発機構が平成12年度に若手研究者を活用して研究を推進する産業技術研究助成事業を創設し,研究を推進している。


(4) 評価システムの改革

 科学技術を振興するためには,研究者を励まし,優れた研究開発活動を奨励していくとの観点から適切な評価を実施することが必要である。適切な評価を実施することにより,研究開発活動の効率化・活性化を図り,より優れた研究開発成果の獲得,優れた研究者の養成を推進し,社会・経済への還元等を図るとともに,国民に対して説明責任を果たすことができる。

 第2期科学技術基本計画においては,優れた成果を生み出す科学技術システムを実現するための柱の1つとして,評価システムの改革が挙げられている。本基本計画に基づき,平成13年11月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」が内閣総理大臣決定され,一層の充実が図られることとなった。各府省においては,新大綱的指針に沿って評価方法等を定めた具体的な指針を策定するなど,適切に評価を実施している。

 また,内閣府は関係省庁の協力を得て,国費により実施される個々の研究開発課題についての研究者,資金,成果,評価者,評価結果等を省庁の枠を超えて一元的にまとめた政府研究開発データベース・システムを開発し,諸データを登録するとともに,内閣府及び関係省庁による分析活用を開始した。

 他方,評価にかかわる動きとして,「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号)に基づく独立行政法人研究機関の評価が実施されている。また,「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づく政策評価が平成14年4月から実施されており,研究開発については,先導的な取組が行われてきたことから,多額の費用を要することが見込まれる個々の研究開発課題について事前評価が義務付けられている。


(5) 制度の弾力的・効果的・効率的運用2

 研究開発の特性を踏まえて,制度を弾力的・効果的・効率的に運用することが必要である。このため,国立試験研究機関においては,研究実績に応じて所長等の裁量で予算を重点配分すること,研究課題に応じた研究者の配置と研究期間の設定等,研究開発の進展や変化に対応するため,機関内の措置により機動的・弾力的に改変できる組織形態を活用する取組が開始されている。

 また,文部科学省では,科学技術振興調整費を活用して,年度途中に緊急に対応を必要とするような事態に機動的に対処するための「緊急研究」を「先導的研究等の推進」の中に設定しており,平成14年度には 第3-3-5表 のとおりの緊急調査研究等を実施している。

第3-3-5表 先導的研究等の推進(緊急研究課題)

 さらに,平成10年度から,国立大学等の教官が企業等外部から委託された研究等を行う場合において,研究の進展や研究計画の変更に伴う費目の変更に柔軟に対応するため,従来3つに分かれていた費目を統合した新たな費目((目)産学連携等研究費)を創設した。

 また,研究集会における研究成果の発表に関連し,特許法第30条において,「特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもって発表する」場合を新規性の喪失の例外と定められているが,特許庁においては,大学等における研究活動についても,この例外規定を適用することとした。


(6) 人材の活用と多様なキャリア・パスの開拓

 研究活動の活性化及び研究開発の政策立案能力の向上の観点から,多様な人材の登用について,研究機関あるいは研究開発を推進する行政機関が積極的に取り組むことが重要である。

 研究機関においては,独立行政法人等において組織の活性化を図るとともに,学界及び産業界との連携を深める観点から,所長に大学教授を迎える例が多くなっており,外部人材の登用が進められている。

 また,大学においては,教員の採用方法として,人事の流動性を高め,優れた人材を確保するため,公募制を採る大学が増えている。また,多様な経歴・経験を持つ優れた人材を確保するため,社会人や外国人の採用を促進し,国立試験研究機関,民間企業の研究者をはじめとする大学外の人材が積極的に登用されている。

 なお,科学技術・学術審議会人材委員会第1次提言(平成14年7月)において,世界トップレベルの研究者を養成するための大学院組織の改革方策として,

{1}研究機関として研究能力を高めるために,多様なバックグラウンドを有する研究者を集めるとともに,相互に刺激しあい影響されるような研究環境を整える。
{2}大学院組織自体の多様性を確保し活性化を図るため,同質な研究者が多くなっていないかなど,研究者の確保に関して自己点検を行うとともに,教員の自校出身者の比率を下げる。
{3}ポストドクターに異なる研究機関において多様な経験を積ませたり,海外における研究活動を促進するとともに,助手等の教員の採用に当たって,ポストドクターからの採用を増やす。

とされている。大学院等において,同提言を念頭に人材の多様性の確保が図られることが重要である。

 一方,行政機関における研究人材の活用に関しては,内閣府総合科学技術会議事務局等において,研究者が政策の企画・立案に参画する機会を確保することとしている。

 このように科学技術関係人材が研究以外の分野での活躍が促進されたり,研究能力はあるものの制度的な障害があり,その能力が十分発揮されていない女性研究者が活躍できるような環境が整備されたりすることで研究者の多様なキャリア・パスが開拓されることも重要である。


(7) 創造的な研究開発システムの実現

 優れた成果を生み出し,新しい時代を開く研究開発システムを実現するためには,研究所等の一定の規模の組織で,機関の長の優れた構想とリーダーシップにより,研究開発機関の組織改革を進め,国際的に魅力のある卓越した研究開発拠点を創出していくことが重要である。

 このため,平成13年度から,科学技術振興調整費を活用した「戦略的研究拠点育成」を開始し,既存の研究開発機関を世界的な研究開発拠点とすることを目指して,当該機関の研究開発能力や成果を活用するための斬新な手法を組織運営に取り入れるなど,機関におけるマネジメント改革への取組を行おうとする研究開発機関を育成・支援している。

 平成14年度は, 第3-3-6表 のとおり2機関が育成対象機関として選定されている。

第3-3-6表 戦略的研究拠点育成(対象機関)


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