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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  科学技術の重点化戦略
第2節  国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
[7]  社会基盤分野


 社会基盤分野は,国民生活を支える基盤的分野であり,豊かで安心・安全で快適な社会を実現するために,社会の抱えているリスクを軽減する研究開発や国民の利便性を向上させ,美しい国土と質の高い生活を実現するための研究開発を推進している。

 この分野は基本計画において,国の存立にとって基盤的であり,国として取り組むことが不可欠な領域とされている。総合科学技術会議において平成13年9月に策定された分野別推進戦略では「安全の構築」,「美しい日本の再生と質の高い生活の基盤創成」の2つの重点領域・項目が定められている。「安全の構築」では,異常自然現象発生メカニズム,発災時即応システム(防災IT,緊急救命システム等),過密都市圏での巨大災害被害軽減対策,中枢機能及び文化財等の防護システム,超高度防災支援システム,高度道路交通システム(ITS),陸上,海上及び航空交通安全対策,社会基盤の劣化対策,有害危険物質・犯罪対応等安全対策が項目として挙げられ,「美しい日本の再生と質の高い生活の基盤創成」では,自然と共生した美しい生活空間の再構築,広域地域課題,流域水循環系健全化・総合水管理,新しい人と物の流れに対応する交通システム,バリアフリーシステム・ユニバーサルデザイン化,社会情報基盤技術・システムが挙げられている。


(1) 防災科学技術

 我が国はこれまで数多くの自然災害を経験し,これに対し各種の防災対策を講じてきている。災害から人命・財産を守り,被害を軽減していくためには,災害の未然防止,災害発生時の被害の拡大防止,災害復旧・復興という一連の過程において,科学技術上の知見を十分活用することが重要である。このため,各研究機関において「防災に関する研究開発基本計画」(昭和56年内閣総理大臣決定,平成5年改定),「阪神・淡路大震災を踏まえた地震防災に関する研究開発の推進について」(平成7年5月科学技術会議政策委員会決定)等に沿って,防災科学技術関係省庁連絡会等により連絡調整及び連携促進を図りつつ,各省において研究開発が進められている。また,科学技術・学術審議会防災分野の研究開発に関する委員会では,防災科学技術の今後10年程度を見通した上で当面5年程度について,文部科学省において進めるべき重要研究開発課題等を示した「防災に関する研究開発の推進方策について」を平成15年3月に取りまとめた。各府省における防災科学技術分野の主な研究課題は第3-2-9表に示すとおりであり,その内容は地震防災対策,火山災害対策,雪氷災害対策,気象・水象災害対策など多岐にわたる。特に,地震防災研究については,産学官の防災研究機関が参加した「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」等を実施しているほか,防災科学技術研究所において,実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)の整備等を実施している。また,東京大学地震研究所,京都大学防災研究所等の全国の大学や,国土技術政策総合研究所,農業工学研究所等において,様々な自然災害の予防・軽減に関する研究を実施している。

第3-2-9表防災科学技術分野(自然災害を中心とした)の主な研究課題(平成14年度)


 国際協力については,米国,ロシア,イタリア等との間の科学技術協力協定,天然資源の開発利用に関する日米協力(UJNR( ))の枠組みの下で,防災科学技術に関する2国間の研究協力が進められている。特に,地震防災に関しては,1996年(平成8年)4月にコモン・アジェンダに新たに追加された自然災害軽減の分野の枠組みの下,日米地震被害軽減パートナーシップによる協力が推進されている。また,2002年(平成14年)4月には,日伊科学技術協力協定に基づく第3回日伊土砂災害防止技術会議が,東京及び広島において開催された。

 また,科学技術振興調整費により「アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減技術の開発とその体系化に関する研究」をAPEC(アジア・太平洋経済協力会議)の16地域及び1国連機関と共同で行っているほか,ユネスコ(UNESCO( 注1 ):国連教育科学文化機関)と国際地質学連合の国際協力事業として「文化遺産と地すべり災害予測」を実施している。

 このほか,国際協力事業団(JICA)を通じ,研修員の受入れや専門家の派遣等の技術協力を実施している。

 さらに,1990年代の「国際防災の10年(IDNDR( 注2 ))」に引き続き,2000年(平成12年)より国連が実施している「国際防災戦略(ISDR( 注3 ))」活動においては,防災科学技術分野の活動が積極的な役割を果たすことが期待されている。


■注 UJNR:U.S.-Japan Cooperative Program in Natural Resources


■注1 UNESCO:United Nations Educational,Scientific and Cultural


■注2 IDNDR:International Decade for Natural Disaster Reduction


■注3 ISDR:International Strategy for Disaster Reduction


(2) 地震調査研究等

 平成7年に発生した阪神・淡路大震災を契機に,全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため,「地震防災対策特別措置法」が制定され,行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし,これを政府として一元的に推進するため,同法に基づき地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣)が設置されている。

 同推進本部の下には,関係省庁の職員及び学識経験者から構成される政策委員会及び地震調査委員会が設置されており,平成11年4月に決定された「地震調査研究の推進について―地震に関する観測,測量,調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策―」に基づき,関係省庁が密接な連携・協力を行いつつ,地震調査研究を推進する体制となっている( 第3-2-10図 )。

第3-2-10図 地震調査研究推進本部の構成

 政策委員会では,関係行政機関の地震調査研究に関係する予算等の事務の調整を実施し,平成14年8月に「平成15年度の地震調査研究関係予算概算要求について」を本部決定し,内閣総理大臣をはじめとする関係各大臣に対し,同決定を尊重し政府予算に反映するよう要請した。また,同委員会の下に設置されている調査観測計画部会では,調査観測結果流通ワーキンググループにおいて,調査観測データの流通・公開を推進するため,平成14年8月に「地震に関する基盤的調査観測等の流通・公開について」を取りまとめたほか,現在,東南海・南海地震を対象とした調査観測の強化について検討を進めており,平成15年春をめどに第1次報告を取りまとめる予定である。さらに,成果を社会に活かす部会では,地震調査研究の成果を社会に活かしていくための検討を進めている。

 地震調査委員会では,毎月定例の会合及び顕著な被害地震が発生した場合などに臨時の会合を開催し,地震活動について総合的な評価を取りまとめ,防災活動に役立つよう,これを即日公表している。また,同委員会では,地震発生可能性の長期評価を順次行っており,平成15年3月までに,全国の主要98断層帯のうち33断層帯について評価結果を公表するとともに,海溝型地震のうち南海トラフの地震(東南海・南海地震),三陸沖から房総沖にかけての地震(宮城県沖地震を含む)等についての評価結果を公表した( 第3-2-11図 )。さらに,地震発生可能性が高いとされた一部の活断層や海溝型地震については,強震動評価を順次行っている。

第3-2-11図 現在までに評価を公表した主な断層帯及び周辺海域

 上記の結果を踏まえ,同委員会では,平成16年度末までをめどに「全国を概観した地震動予測地図」の作成を進めている。その第一歩として,平成14年5月には山梨県を中心とした地域に限定した地図の試作版を,平成15年3月には北日本地域に限定した地図の試作版を公表した。各府省の地震調査研究関係の主な施策は, 第3-2-12表 に示すとおりである。文部科学省では,地震調査研究推進本部の方針に基づき,活断層等の調査を推進するとともに,地震発生可能性が高い地域においてパイロット的な重点的調査観測を行っている。また,大都市大震災軽減化特別プロジェクトの一環として,大都市圏における地殻構造の調査研究をしている。国立大学においては,地震予知に関する基礎的研究を推進している。防災科学技術研究所では,高感度地震計や広帯域地震計等の整備を進めるとともに,全国に整備が進められている地震観測網からのデータ収集・処理・提供を行い,さらに,地震動予測地図作成手法の研究を実施している。また,海洋科学技術センターでは,深海底ネットワーク総合観測システムの開発・整備を進めている。

第3-2-12表 各府省の地震調査研究関係の主な施策(平成14年度)

 産業技術総合研究所では,活断層等による地震発生ポテンシャル評価の研究を推進している。国土地理院では,全国約1,200か所のGPS連続観測のほか,VLBI(超長基線電波干渉計)など最先端の測量技術を用いて地殻変動やプレート運動の観測を行うとともに,観測データを分析し,地震調査研究を推進している。気象庁では,全国における地震観測等を行うとともに観測施設の整備,地震予知研究等を推進している。海上保安庁海洋情報部では,海域における測地,海底地形や活断層等の地震調査研究を推進している。

 また,我が国の地震・火山噴火予知研究は,測地学審議会(平成13年より科学技術・学術審議会測地学分科会)が平成10年8月に建議した「地震予知のための新たな観測研究計画」及び「第6次火山噴火予知計画」(ともに平成11〜15年度の5カ年計画)に基づき,大学,防災科学技術研究所や気象庁など関係機関が,それぞれの機能と特色を生かしながら,連携して推進している。


(3) 航空科学技術

 航空科学技術は知識集約性,技術先端性が高いため,その開発は単に航空輸送の発展をもたらすのみならず,他の分野への波及効果も高く,我が国が今後とも科学技術創造立国を目指して発展していく上で大きな役割を果たすものである。

 我が国では,これまで民間輸送機YS-11等の自主開発,ボーイング777等の国際共同開発プロジェクト並びに民間航空機用ジェットエンジンV2500等の国際共同開発プロジェクトに参画することにより技術を蓄積し,世界の航空機産業の中での役割を着実に増大してきている。特に複合材料等先端材料を適用した構造の設計・製造技術は世界のトップレベルにあると評価されている。

 今後の航空機及び航空機エンジンの開発を更に積極的に推進していくためには,技術水準の一層の向上を図る必要がある。このため,文部科学省においては,平成14年度から,科学技術・学術審議会の航空科学技術委員会において,研究開発の重点化や産業界との連携方策,研究成果の普及など,時代の要請にあった研究開発の在り方について議論が続けられている。また,経済産業省においては,航空機宇宙産業分科会航空機委員会において民間航空機及びエンジンの国際共同開発をはじめとする航空機産業政策の方向につき議論がなされている。

 文部科学省の独立行政法人航空宇宙技術研究所においては,次世代超音速機の開発に貢献するために,技術的優位性のあるCFD(計算流体力学)空力設計技術等の確立を目指して,小型超音速実験機の飛行試験を中核とした研究開発を推進してきたが,平成14年7月の飛行実験失敗を受け,必要な見直しを行っている。このほか,航空安全及び環境適合性技術に関する研究並びに電子計算機による数値シミュレーション等の基礎技術の研究を進めるとともに,各種風洞,エンジン試験設備等の大型試験研究設備を整備し,関係機関の共用に供し,我が国の航空科学技術の水準の向上を図る上で主導的な役割を果たしている。

 経済産業省においては,次世代の環境ニーズに対応する「環境適合型次世代超音速機用推進システム」の研究開発を行っており,この研究開発には欧米の主要航空機エンジンメーカーも参加している。そのほか,航空機等への利用が期待される「知的材料・構造システム」の研究開発,「先端複合材料」による高効率製造技術の開発,「革新的軽量構造」に関する設計製造基盤技術の開発,「MGC材料(液融成長複合材料)」によるエンジン構造部材関連技術の開発を進めるとともに,航空機の航行技術の向上を目指した「次世代高信頼性アビオニクス」関連技術の開発,コックピットや操縦系統などの「航空機先進システム」関連技術の開発等も実施している。

 国土交通省所管の独立行政法人電子航法研究所においては,航法・管制に関する技術について,航空交通の安全性を向上させるための研究等を実施しており,これらの研究は今後の航空輸送の発展を図る上で重要なものとして期待されている。


(4) その他の社会基盤の整備

 都市化の進展,交通・運輸や通信システムの発達等社会全体が高度化・複雑化していく一方で,農山漁村地域においては,人口流出や高齢化が進展し,産業・生活両面にわたる活力の低下に加え,公共交通・輸送機能の低下,国土保全,水源かん養,自然環境保全等の多面的で重要な機能の低下等の問題が生じており,また,ゆとりと豊かさを感じられる,より質の高い国民生活を実現するためにも,社会経済基盤の整備が求められている。このため,総合的な国土の利用を図るための技術,公共的施設等の土木・建築に関する技術及び交通・輸送に係る研究開発,高度な情報通信システムの確立を目指した技術及びデータベースの構築に関する研究開発,廃棄物処理技術の研究開発並びにユニバーサルデザインの製品・システムの研究開発を推進することが必要である。また,環境に対する負荷の低減に留意しつつ,消費者要請の多様化,労働力の不足等に対応するための生産活動に関する技術の研究開発を推進することが重要である。

 本分野については,「運輸省研究計画」(国土交通省(平成12年6月運輸省)),「21世紀を展望した運輸技術施策について」(国土交通省(平成3年6月運輸省運輸技術審議会)),「21世紀初頭の交通技術開発の基本的方向について」(国土交通省(平成12年12月運輸省運輸技術審議会)),「情報通信研究開発基本計画」(総務省(平成12年2月郵政省電気通信技術審議会)),「公害の防止等に関する試験研究の重点的強化を図る必要がある事項について」(環境省(毎年度環境庁))等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。

 具体的な研究開発については,国土交通省等で先端技術を活用した国土管理技術の開発等の総合的な国土利用や,まちづくりにおける防災評価・対策技術の開発等の地域防災等に関する研究開発,超電導磁気浮上式鉄道技術開発,超音速輸送機用推進システムなどの高度な交通・輸送システムの開発のための研究開発が推進されている。総務省等では超高速ネットワーク技術や高度情報資源伝送蓄積技術の研究開発などの高度な情報・通信システムの開発のための研究開発が推進されている。また,農林水産省により農業用基幹施設の保全・防災技術に関する研究が整備されている。さらに,経済産業省では,ユニバーサルデザインの製品・システムの開発に資する人間生活工学関連の研究開発が推進されている。国土交通省では,将来の高速輸送を目的とする超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けて研究開発を促進するため,財団法人鉄道総合技術研究所への助成等を行っている。また,大深度地下を利用する各事業が横断的に必要とする汎用性の高い技術開発を推進するため,平成15年1月に,「大深度地下利用に関する技術開発ビジョン」を取りまとめた。

 平成14年度に実施された社会経済基盤の整備に関する主な研究課題及び安全の確保等に関する分野の主な研究課題をまとめると 第3-2-13表 , 第3-2-14表 のとおりである。

第3-2-13表 社会経済基盤の整備に関する主な研究課題(平成14年度)

第3-2-14表 安全の確保等に関する分野の主な研究課題(平成14年度)


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