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第1部   これからの日本に求められる科学技術人材
第3章  科学技術人材の育成・確保のあり方
第3節  科学技術人材を育む社会の実現
[1]  科学技術人材の確保に必要な国民の関心・理解



(1) 科学技術への関心

 科学技術に関する問題に対する関心について日米両国を比較したところ,我が国は科学技術に関心を持つ国民( )が米国よりも少ないという結果が見られる( 第1-3-80図 )。このような国民の科学技術への関心の低さは,科学技術に対して夢と希望を持つ人材の減少を招き,チャレンジ精神と創造性にあふれた将来の科学技術人材の育成・確保を困難にする可能性がある。

第1-3-80図 科学技術関連問題への関心度の日米比較


■注 ここに言う米国の「関心度」とは,「非常に関心がある」を100点,「ある程度関心がある」を50点,「ほとんど又は全く関心がない」を0点として指数化したものを指す。

(子どもたちによる科学技術への関心・理解)

 日本放送協会の放送文化研究所の調査によると,子どものころに理科が好きだった人(どちらかと言えば好きだった人も含む)のうち77.7%は,大人になってからも科学技術情報に関心を持っているのに対し,子どものころに理科が嫌いだった人(どちらかと言えば嫌いだった人も含む)の50.9%は,科学技術に全く関心がない又はあまり関心がないと回答している。このことは,大人になってから科学技術への関心の大きさは,子どものころの理科への興味・関心に左右されることを示唆している( 第1-3-81図 )。

第1-3-81図 科学技術情報への関心と子どもの頃の理科の好き嫌い

 優れた科学技術人材を確保するためには,若い世代が科学技術に対して関心,理解を持って育つことが望まれる。文部科学省で行った「我が国の研究活動の実態に関する調査(平成14年度)」によれば,研究者という職業を選択した際に影響を与えた人物・事柄としては,「小中及び高等学校時代の先生」を挙げた者が20.0%,「理科の教科書」を挙げた者が6.1%,「授業の科学実験等の体験」をあげた者が16.3%(複数回答)であった。このように,若い世代に理科や数学への関心を持ってもらうことが必要であり,初等中等教育の役割が重要である。

 我が国の子どもの理科,算数・数学への関心に関する調査結果を見ると,成績は国際的にトップクラスであるにもかかわらず,算数・数学,理科が好きという意識は,他の国と比較して低い水準にあることが分かる( 第1-3-82表 )。

第1-3-82表 算数・数学,理科が好きな生徒の割合

(小中学生の学年ごとの理科等への関心)

 諸外国と比較すれば,我が国は理科や数学の好きな児童生徒の割合が低いと言えるが,平成13年度に実施された教育課程実施状況調査によると,特に理科については,他の教科よりも好きだと思う児童生徒は,むしろ多い。しかしながら,そのような理科好きの児童生徒の割合は中学3年生までに減少している( 第1-3-83図 )。また,各教科の重要性を尋ねる質問に対しても,学年が高くなるごとに肯定的な回答が少なくなる傾向がうかがえる。当該教科の勉強を(受験にかかわらず)大切だと思うかという設問に対し「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」と回答した児童生徒の割合を小学5年生時と中学3年生時とで比較してみると,その下落幅は,国語0.1%,社会2.3%に対し,数学18.7%,理科14.6%となっており,理科や数学において大切だと思う児童生徒の減少が著しい( 第1-3-84図 )。

第1-3-83図 各学年における各教科への「好き」と思う割合

第1-3-84図 各学年における当該教科を大切だと思う割合

 さらに,その勉強が普段の生活や社会に出て役立つかといった質問に対しても,理科,数学については,「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」と答えている割合が急激に減少しているのに対して国語,社会は下げ止まる傾向を見せる( 第1-3-85図 )。

第1-3-85図 各学年における各教科を勉強すればふだんの生活や社会に役立つと思う割合

 理科の勉強が好きかという設問に対し「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」と回答した児童生徒について着目すると,ふだんの生活や社会に出て役立つと思っている児童生徒は学年が上がるごとに減少しているが,そう思わない児童生徒はほぼ横ばいであることから,ふだんの生活や社会に出て役立つと思う児童生徒の減少が理科の好きな児童生徒の減少に影響していることも考えられる( 第1-3-86図 )。

第1-3-86図 理科を好きな児童生徒で,ふだんの生活や社会に出て役立つと思う児童生徒の全体に対する割合の変化

 学校教育において理科が好きな子どもの減少を食い止めるためには,理科に知的な興味を感じる子どもを増やす配慮を行うとともに,学校現場における様々な機会を利用して,理科の大切さや生活とのかかわりを認識できるような教育が望まれる。


(2) 科学技術に関する基礎的素養

 国民全般にとって,科学技術に関する専門的な知識は,必ずしも必要なものというわけではない。しかし,科学技術がますます高度化し,その成果が国民生活と密接なかかわりを持つようになった現状においては,科学技術と社会との関係を適切に判断し,評価できる最低限の素養が必要である。これは現代人の教養と言ってもよいだろう。また,このような基礎的素養は,単に科学に関する知識にとどまらず,「科学する心」と言われるような,様々なものごとに対して好奇心を抱き,なぜだろうと疑問を持つ態度や科学的・合理的に思考し,判断する力なども含まれるものである。

 国民の多くが科学技術に対して適切な知識と判断する能力を持つことにより,科学技術人材が我が国にとっての重要な知的資産であることへの認識が広まり,科学技術人材の創造性,独創性への適切な評価が与えられることが期待される。

(児童生徒における科学技術に関する基礎的素養)

 OECDでは,義務教育修了段階である15歳の生徒が持っている知識や技能を,実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価することを目的として,「生徒の学習到達度調査(PISA)」を行っている。同調査では,読解力,数学的リテラシー(数学が世界で果たす役割を見つけ理解し,現在及び将来の個人の生活,職業生活,友人や家族や親族との社会生活,建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において,確実な数学的根拠に基づき判断を行い,数学に携わる能力),科学的リテラシー(自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し,意思決定するために,科学的知識を使用し,課題を明確にし,証拠に基づく結論を導き出す能力)を測定するための設問がそれぞれ設定されている。

 日本を含む32か国が参加して実施された平成12年(2000年)の調査の結果によれば,我が国の生徒の数学的リテラシーが1位,科学的リテラシーが2位と,国際的に極めて高い水準にあることが明らかになっている( 第1-3-87表 )。

第1-3-87表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)

 また,我が国の全体としての科学技術に対する素養を引き上げる役割を持ち,優秀な科学技術人材になることが期待されるトップレベルの人材として,各国における上位5%の生徒に着目しても我が国の生徒は国際的に最高水準にある。

 なお,PISAの調査については,2003年に数学的リテラシー,2006年に科学的リテラシーについて詳細な調査及び解析がなされることとなっている。

 一方,平成13年度に実施された教育課程実施状況調査においては,児童生徒の学力について経年的に比較したところ,おおむね良好な状況であったものの,一部学年・教科については課題があることが示唆されており,更なる学習指導の充実が望まれている( 第1-3-88表 )。

第1-3-88表 教育課程実施状況調査における前回調査との同一問題の比較

(大人における科学技術に関する基礎的素養)

 一方で,18歳以上の成人を対象として実施された科学技術に関する基礎概念の理解度に関する国際比較調査では,我が国の正答率は,比較対象である17か国・1地域の中で低い水準であった( 第1-3-89図 )。

第1-3-89図 科学技術基礎概念の理解度(共通11問の平均正答率)

 この調査は,あくまでも基礎的概念の理解度を比較したものであり,これは科学技術に関する基礎的素養の中の一側面でしかないため,先述の児童生徒の調査結果との比較には注意を要するが,我が国の児童生徒の科学的リテラシーが国際的に高い水準であるにもかかわらず,成人の基礎的な科学技術に関する素養は国際的に低い水準となっていることは,多くの人にとって,科学的な知識や能動的に学ぶ態度が必ずしも定着しておらず,知識が学校教育の期間のみの,特に大学入試といった受験のための一時的なものにとどまっている可能性を示唆する。

COLUMN

中国における科学リテラシー調査について

 中国では,「科教興国」という目標を掲げて,国民の科学知識水準の向上させることを目指して,科学普及政策を進めてきた。

 中国科学技術協会では,2001年に,中国全土の一般国民(18歳から69歳までの成人)を対象として,科学リテラシーに関する調査を実施した。同調査では,科学技術に関する基礎的知識の理解度,科学技術への関心度,科学技術への態度などの項目について調査を行っており,特に基礎的知識の理解度については, 第1-3-89図 に掲げられた各国の調査と同じ質問項目を用いることにより国際比較を可能としている(調査数8,520人,有効回答数8,350人,回収率98.0%)。

 その結果,基礎的な科学リテラシーがある人の割合は1.4%,そのうち基礎的な科学知識を理解している人の割合は5.1%であり,先進諸国と比べて,その比率は低いものであった。しかし一方で,年齢層ごとに見ると,18〜29歳では高いリテラシーを持つ人が多く,その割合は先進諸国を上回った。

 また,中国の国民の多くは,科学者に対し高い敬意を払っており,科学者は,自分の子どもに就いてほしい職業としても,医者に次いで人気のある職業であった。また,学歴が高い層ほど,科学者,エンジニア,大学教員に敬意を払う傾向が見られた。

 以上の調査結果における中国の若い世代のリテラシーの高さや科学者への敬意の高さから鑑みて,今後,中国においては国民全体の科学リテラシーが急速に向上していくことが予想される。世界最大の人口を有する中国がこのように高い科学技術の知的水準に至るとなると,科学技術活動に関しても高い能力をつけてくることは必至であろう。

第1-3-90図 基本的な科学リテラシーの国際比較 第1-3-91図 年齢別科学リテラシーの国際比較


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