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第1部   これからの日本に求められる科学技術人材
第1章  科学技術創造立国に向けた科学技術人材の育成・確保
第2節  期待される科学技術人材
[1]  「知の創造者」としての研究者


(知の創造過程と研究者に求められる能力)

 「知」の創造に主な役割を果たすのが「研究者」である。「知」には,学術研究に代表されるような,そのものが価値を有するというような「知」と,企業で行われる研究のように将来の製品化など社会的経済的価値の付与を目指した「知」とがあるが,どちらにしても「知」は創造されるものである。研究者には,その本分として,創造力を発揮することが求められていると言えよう。

 「知」は,どのようにして創造され,その創造者には,どのような能力が必要となるのであろうか。

  第1-1-11図 に知の創造過程を単純化した模式図を示す。知の創造のためには,まず,専門的な知見を背景とした課題設定を行うことが基点となる。この時点で的確な仮説や課題の設定ができるか否かが,創造の成否の決め手となることが多いため,研究者には優れた課題設定能力や構想力が求められる。一方で,「知の創造」というゴールは,幾多の困難を乗り越えた先にある。ゴールに至るまでには,様々な試行錯誤が行われるが,一般的に成功の裏には数多くの失敗が伴うものである。失敗から教訓を得て,更なる次のステップに進んでいくためには,目標の達成に向けた意欲とその持続力,さらにチームでの研究開発の場合にはリーダーシップが必要とされる。また,創造の過程においては,漸進的な進展だけでなく,ブレークスルーが生じる場面があり,そこにはセレンディピティ( )と言われる偶然を見逃さない洞察力が求められることが多い。また,的確な課題設定やブレークスルーを生み出すに当たっては,他の機関や海外で生み出された新たな知見や他分野で蓄積された知見が重要な要素となることも多いため,視野の広さや俯瞰力なども優れた成果を出すために研究者に求められる能力のひとつである。このように,知の創造に携わる研究者に求められる能力は,非常に多様なものである。

第1-1-11図 知の創造過程の模式図


■注 セレンディピティとは,H.ウォルポールという18世紀の英国の著作家が「セレンディップの3人の王子」という物語にちなんで造った言葉であり,偶然に思いがけない幸運な発見をする才能を意味する。セレンディピティは偶然のみに基づくものではなく,それを見逃さない洞察力を必要とする(「平成12年度科学技術の振興に関する年次報告」参照)。

(先駆者としての研究者に求められるもの)

 欧米追従型の研究開発が主流であった時代には,日本人の創造力は,既存の技術の改良,製造技術の高度化,生産管理の高度化などといった側面で発揮されてきたと言えよう。しかし,これからの時代は先駆者として,追従型とは異なった創造性の発揮が求められている。

 文部科学省科学技術・学術審議会では,科学技術創造立国を実現するために必要な人材に関して,幅広い観点から調査検討を行うため,平成13年10月に人材委員会を設置し検討を進めている。平成14年7月には,第一次提言として,「世界トップレベルの研究者の養成を目指して」が取りまとめられた。同提言においては,これからの研究者にとっては,自らの専門分野にいたずらに閉じ込もるような蛸壺的な専門性ではなく,周辺の専門分野や全く異なる専門分野を含む多様なものに関心を有し,既存の専門の枠にとらわれないものの見方をしながら自らの研究を行っていく能力が重要であり,一般論として,欧米のトップクラスの研究者と比較して,このような能力が日本の研究者に不足していることを指摘している。そこで,同提言では,「幅広い広い知識を基盤とした高い専門性」こそが,これからの時代の研究者に必要とされる「真の専門性」であると指摘している。こうしたことから,一つの分野の専門性にのみ秀でた「I型」の人材だけでなく,「T型」や「π型」と呼ばれるような,専門性の深さと幅広い専門性を兼ね備えた人材を育成していくことが重要であることを指摘している( 第1-1-12図 )。

第1-1-12図 I型,T型,π型人材のイメージ


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