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2 独創的・先端的研究を推進する研究機関・拠点の整備

 大学における独創的・先端的研究は,学部,大学院,研究所,研究施設などに加え,特定の大学に属さず,全国の大学等の研究者が共同で利用し,研究を行う大学共同利用機関を中心に進められています。
 近年における研究手法の高度化や研究プロジェクトの大型化に伴い,多くの研究分野で研究者が共同して研究を進める必要性と有用性が増大しています。このため,大学共同利用機関及び国立大学に附置されている研究所(附置研究所)などの共同利用体制の強化や特色ある基礎研究に必要な研究費の充実を図っています(図表2-6-7)。

図表2-6-7 我が国の学術研究の中核的研究拠点(大学共同利用機関法人,附置研究所・研究施設)

(1)大学共同利用機関
 大学共同利用機関は,全国の大学等の研究者が共同研究を推進する拠点として,また,特色ある大型の施設・設備や大量の有用な資料・データの共同利用の場として,各分野の発展に大きく貢献するとともに,世界最先端の研究についても国際的な競争と協調の中で推進しています。また,大学教育の一環として,大学院学生の受入れを行うなど,研究と教育を一体的に実施しています。平成16年4月の法人化に伴い,既存の16研究所を四つの機構に再編しました(参照:第2部第3章第1節)。各々の機構の役割は以下のとおりです。
1人間文化研究機構
 文化にかかわる基礎的研究及び自然科学との連携も含めた研究領域の開拓に努め,文化の総合的学術研究拠点を目指しています。地球環境問題の解決に向けて,人文・社会科学から自然科学までの幅広い研究分野を総合化する「総合地球環境学研究所」などの五つの研究所があり,(参照:本章第2節4(2)2(ア))現在,機構では,五つの研究所の研究基盤を結び付けて新たな成果を生み出すことを目指して,国内外の大学・研究機関の研究者の参画を得て「連携研究」を推進しています。
2自然科学研究機構
 宇宙,物質,エネルギー,生命などの自然科学分野の基盤的な研究の推進及び各分野の連携による新たな研究領域の開拓,育成等を目的としています。天文学に関する観測的・理論的研究を実施する「国立天文台」などの五つの研究所があり,欧米との協力による「アルマ計画」の推進など(参照:本章第3節5),国際的研究拠点として研究活動を展開しています。
3高エネルギー加速器研究機構
 高エネルギー加速器(注1)に関する開発研究などを行い,素粒子から生命体にわたる広範な実験・理論研究を展開するとともに,加速器科学の拠点として国内外の大学等との連携・協力を推進することを目的としています。物質の究極の構造と相互作用について研究を行う「素粒子原子核研究所」などの二つの研究所があり,現在推進しているBファクトリー計画(注2)では,平成17年6月に新しいタイプの素粒子反応を確認するなどの成果を上げています(参照:本章第4節4(1))。
4情報・システム研究機構
 情報とシステムの観点から分野を超えた総合的な研究を推進し,新たな研究パラダイムの構築と新分野の開拓を目的としています。情報学に関する総合的研究及び学術情報の流通のための基盤の開発・整備を行う「国立情報学研究所」などの四つの研究所があり,機構では,四つの研究所が連携して,システムとしてとらえられる生命,地球環境の分野と,情報の分野の各分野間の新領域融合研究を進めています(参照:第2部第7章第5節3)。
(2)附置研究所
 附置研究所は,特定の専門分野の研究に専念し継続性をもって長期的に研究を進める組織であり,学問の動向や社会の変化に対応しながら高い研究水準を維持しています。また,学部・大学院における教育研究との連携の下で,優れた若手研究者の養成にも貢献しています。国立大学法人には,平成17年度現在,59の附置研究所(うち20は全国共同利用型の研究所)が設置されています。主な研究所としては,以下のものがあります。

  1京都大学東南アジア研究所
   東南アジアを中心とした総合的な地域研究を行っています。人文科学の観点に自然科学の観点も加味し,自然環境の現状と変遷の過程を視野に入れつつ,変動する地域を総合的にとらえようとするところに特徴があります。平成16年度からは,研究施設という組織形態から附置研究所に改組し,より継続的・長期的視野で研究を行うための体制が整備されました。近隣のアジア諸国と我が国の学術文化の交流が深まる中,本研究所が地域研究の研究拠点の一つとしてより重要な役割を果たすことが期待されています。
  2富山大学和漢医薬学総合研究所
   和漢薬(和薬〈日本の民間薬〉と漢薬〈漢方用薬〉)をはじめ,中国医学における伝統薬物や世界各地の天然薬物の研究を行っており,伝統医学で使われる生薬(しょうやく)の標本の保有資料数は世界第一を誇っています。諸外国において,伝統医薬の価値が再認識されてきている中で,本研究所の研究分野はますます注目を浴びており,海外との共同研究も増えています。今後は,西洋医学との融合による和漢医薬学の総合的な研究を行うなど,新たな研究展開を図っていく予定です。

(3)研究施設
 国立大学には,学部や研究科において,特定目的の研究を推進する研究施設や,学内の共同利用に供するために学部等から独立した研究施設,さらには大学の枠を超えて全国の研究者の共同利用に供する全国共同利用施設が設置されています。主な研究施設としては,以下のものがあります。

  1岡山大学地球物質科学研究センター
   全国共同利用施設として,地球深部の状態を再現する超高圧・高温実験,極微小試料に含まれる物質の組成や特性に関する解析の共同研究プロジェクト等を通して,地球や太陽系における化学・物理的な進化の解明の研究を行っています。今後は,研究対象範囲を地球物質だけではなく地球外物質へと拡大し,国際共同研究を重点的に実施していく予定です。
  2東北大学ニュートリノ科学研究センター
   宇宙からのニュートリノ観測でノーベル賞をもたらした「カミオカンデ」を改造して建設したニュートリノ検出器「カムランド」を用い,ニュートリノの観測研究を行っています。素粒子反応が起きると光を出す特殊な油を使用することにより観測精度を上げ(スーパーカミオカンデでは超純水を使用),より低エネルギーのニュートリノの検出を可能としています。平成17年7月には,地球内部から発生するニュートリノを世界で初めて検出したことを発表しました。地球ニュートリノの観測の実現は,地球内部エネルギー生成機構や地球内部構造,地球生成史の解明につながる可能性があり,新たな学術研究の展開が期待されます。
 また,国立大学法人化後は自由な組織再編が可能になり,大学が地域・社会からの要請や大学の個性に応じて,より自由な研究展開を行えるようになりました。平成17年度に新たに設置された研究施設の例として,以下のものがあります。
  3北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター
   鳥インフルエンザやBSEなどの人獣共通感染症が世界各地で多発している問題に対応するため,平成17年度においては,全国の大学において,人獣共通感染症について研究する組織やプロジェクト研究が立ち上がり,研究者のネットワークの整備等,感染症研究体制の整備が行われました。そのような枠組みの中で,本センターは,人獣共通感染症の予防,診断,治療法の開発や専門家養成を行う人獣共通感染症の総合研究の中核的機関としての役割が期待されています。
  4広島大学宇宙科学センター
   中国,四国,九州地方の大学の天文学研究の拠点を形成することを目指して本センターが設置されました。自然科学研究機構国立天文台のすばる望遠鏡の試作機として製作された1.5メートル光学望遠鏡を移管し,それを用いて,国立天文台岡山観測所や学外の研究者との連携の下,共同研究や,全国の学生を対象とした公開教育プログラムの実施,地域における生涯学習への貢献に努めています。

(注1)高エネルギー加速器
 電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速して,高いエネルギー状態にする装置を高エネルギー加速器と呼び,物質の構造,粒子の性質や反応の研究,新しい粒子の探索に用いられる。
(注2)2Bファクトリー計画
 高エネルギー加速器研究機構にある加速器を用いて電子と陽電子を衝突させ,大量の「B中間子」とその反粒子である「反B中間子」を作り,B中間子と反B中間子の崩壊現象を精密に測定することにより,粒子と反粒子の性質の違いを明らかにし,新たな物理法則を探求する計画。

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