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6 社会教育の振興による地域の教育力の向上

(1)社会教育における新しい学習活動の推進
 公民館など社会教育施設等における社会教育活動については,現在,学習内容や対象者が偏る傾向があると指摘されています。例えば,実施される学級・講座の内容では,趣味やけいこ事,教養に関する内容が多数を占めているほか(図表1-2-12),利用者も,昼間に社会教育施設を利用しやすいと考えられる60代以上の層の利用が特に多くなっている(図表1-2-13)状況にあります(そのほか,各社会教育施設のデータなどについては第2部第2章第6節を参照)。

図表1-2-12 学級・講座の状況(平成13年度間)
図表1-2-13 公民館の利用状況

 平成16年3月の中央教育審議会「今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)」においては,「生涯学習を担当する行政や公民館・図書館・博物館等の社会教育施設等の関係機関の取組が,現在の社会の要請に必ずしも適合していない面がある」と指摘され,社会に共通する課題についても取り組む必要があるとしています。
 このため,文部科学省では,裁判員制度など国民や地域住民として対処が必要となっている今日的な課題についての学習内容の充実や課題解決のための活動支援を進めることとし,関係の省庁等と連携するなどして,社会教育施設における様々な学習活動の機会の充実のための支援を図っています。

  (ア)司法制度・裁判員制度の教育・啓発
 法務省及び最高裁判所と連携して,社会教育施設等を活用した裁判員制度などに関する教育・啓発活動を推進するため,平成17年7月に各都道府県・政令指定都市教育委員会教育長に対して,司法制度・裁判員制度の教育・啓発活動の推進について通知を出し,その学習活動の機会の充実に努めています。
(イ)防犯教育・防犯活動及び防犯ボランティア活動の推進
 「安全・安心なまちづくり全国展開プラン(平成17年6月・犯罪対策閣僚会議決定)」において推進が明記され,警察庁と連携して,地域における防犯教育・防犯活動及び防犯ボランティア活動の推進について支援しています。
(ウ)エネルギー教育の推進
 エネルギー教育の普及啓発については,経済産業省,電気事業連合会及び社団法人日本ガス協会,石油連盟,全国石油商業組合連合会及び石炭エネルギーセンター等の加盟企業等と連携して,公民館などの社会教育施設等を活用した地域におけるエネルギー教育活動を支援しています。
(エ)防災教育の推進
 防災教育の普及啓発については,内閣府及び国土交通省と連携して,公民館などの社会教育施設等を活用した防災教育の普及啓発を支援しています。

 このほか,厚生労働省と連携して,介護予防拠点の整備に際し,社会教育施設の有効活用について支援しています。
(2)社会教育における展示・教育普及方法の刷新
社会教育活動を支える中核的施設の一つである博物館の活動には,基本的に資料収集・保存,調査研究,展示,教育普及活動の四つがあります。地域・家庭の教育力の向上のため,その機能を生かして,地域に対する学習資源提供や地域交流の場としての役割が期待されています。
 特に近年では,市民とともに活動を行っていくなど,特色ある取組を行っている博物館が増えてきています。
1北海道旭川市における取組
 北海道の旭川市旭山動物園には,近隣からだけでなく,全国から観覧者が訪れています。同園では,「行動展示」という動物本来の動きを見せる展示の工夫や,飼育を担当する職員が観覧者に直接動物の生態を説明する活動を積極的に行っています(参照:コラム7)。また,市民によって,動物園を応援するNPO法人が設立されるなど,従来の動物園の枠を超えた地域と一体になった活動が展開されています。
2石川県金沢市における取組
 平成16年に開館した金沢21世紀美術館は,開館前から6年間にわたって,新しい美術館で展開するプログラムを,地域の小学校などを会場に,実施してきました。この積極的な準備活動を通して,美術館の存在が市民の間に浸透し,友の会やボランティア組織など支援の輪が広がりました。開館後には市内の小中学生全員を館に招くとともに,来館した子どもが,再度家族を連れて館を案内することを促進するような仕組みをつくるなど,だれもがいつでも立ち寄れる開放的な博物館活動を推進しています。

▲金沢21世紀美術館(石川県)「体験館を使った鑑賞授業」

3大阪府大阪市における取組
 大阪市立自然史博物館では,子どもに最も身近な生き物の一つクマゼミについて,毎年の発生数や移動距離などの総合調査を多くの市民の参加により展開しています。ほかにも大阪・奈良両府県を流れる大和川全流域を対象にした市民参加調査など,幅広い野外プログラムを展開する一方,館内でも親子を対象に展示された化石などをじっくりと理解し楽しんでもらうワークショップ(注1)を展開しています。また,博物館友の会を基礎として発足したNPO法人大阪自然史センターと共同して,博物館を活用した遠足や校外学習のための教員向けガイダンスやテーマ研修など,学校教育との連携も積極的に推進しています。

▲大阪市立自然史博物館(大阪府)館内でのワークショップ風景(NPOスタッフと学芸員が共同で運営)

 これからの博物館は,社会に託された資料を探求し,次世代に伝えるという博物館の基本的機能を維持しながら,上記の例のような,地域や家庭と積極的にかかわり,その存在意義,社会的な使命を明確に示し,人々に開かれた運営を行うことが求められています。
(3)社会教育における新しい施設のかたち−社会教育施設等の複合化の取組−
 近年では,学習者の利便性の向上や,学校教育と社会教育の連携,社会教育施設間相互の連携による効率的な事業展開などを目指して,図書館と生涯学習センター,公民館と図書館と学校など,複数の社会教育施設等が一体となった複合施設の整備が進んでおり,その特色を生かした取組が行われています。
1埼玉県志木市における事例
 志木市立いろは遊学館は,「児童を地域で守り,育てる」という学社融合(注2)の教育を目指し,公民館,図書館と志木小学校を一つにした複合施設で,平成15年4月に開館しました。複合施設の利点を生かし,子どもたちが自ら学び,自ら考える教育の推進を図るとともに,学習・体験活動の幅を広げる取組を展開しています。
 図書館には,小学校の授業で調べ学習を行うためのスペースが設けられていて,各学級が利用計画に基づき交替で利用しています。また,授業の内容に応じて,必要な図書を近隣市の図書館から借り受けるなど,学校教育において多様な資料の活用が可能になっているとともに,図書館と学校との連携・融合を進めるために,職員・資料・情報の交流を図っています。さらに,図書館スペースの並びに職員室が配置され,廊下と職員室の間には壁がなく,保護者や地域住民が図書館を利用した時に職員室に気軽に立ち寄れるよう配慮もなされています。なお,地域との連携を進める上で,学校安全への配慮としても,日常的に施設を利用する地域住民の適切な監視も,防犯の効果を果たしているほか,全面ガラス張りにし,死角等を防犯カメラで補い,教員と施設職員全員がPHSを携帯するなどの対応を行っています。
 このような取組により,地域住民と児童や教師との交流が図られるとともに,学校の卒業生が再び利用できる施設として,生涯学習の連続性,継続性が図られています。

▲生徒と一般利用者が共に活用する

2富山県高岡市における事例
 平成16年4月に開館した富山県西部の高岡市の複合施設「ウイング・ウイング高岡」は,公共棟(高岡市立生涯学習センター,図書館及び男女平等推進センターと,富山県立の施設である県民生涯学習カレッジ及び県立志貴野(しきの)高等学校)と,民間棟(ホテルや飲食店,企業のオフィスなど)から構成されています。
 このうち,生涯学習センターでは,学習講座の事業に関しては,内容を吟味して考案したセンター独自の自主事業のみを実施しており,中でも高岡の偉人や地域の宗教,民俗等,地域について学ぶことを目的とする「高岡学」の講座等を実施するなど,地域に根ざした学習を提供することに力点を置いています。また,県民生涯学習カレッジと連携し,生涯学習センターが開設する講座を受講した場合は,県民カレッジの生涯学習事業の単位として認定されることとなっています。
 複合施設化によるメリットとして,県と市が行う生涯学習事業を相互に把握できるようになり,事業内容や実施時間の調整が可能となりました。また,図書館の利用者が複合化前より3倍〜4倍に増加するなど,駅前立地の利便性があらわれた事例といえます。
 このように,様々な施設の連携・一体化が図られる中で,住民にとっての施設の利便性が高まることはもちろんのこと,それぞれの施設の特性やノウハウを十分に活(い)かした,従来では企画することができなかった幅広い事業が展開されることが期待されます。

 
▲ウイング・ウイング高岡   ▲ウイング・ウイング祭での合唱グループの発表風景

(注1)ワークショップ
 学習者が学習の場に積極的に参加し,相互に学び合う過程を通じて様々な気づきや発見をする参加体験型の学習方法。
(注2)学社融合
 学校教育と社会教育の融合。

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