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2 家庭教育の現状とその支援上の課題

(1)家庭教育の現状
 家庭教育は,すべての教育の出発点であり,子どもが基本的な生活習慣・生活能力,豊かな情操,他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的倫理観,自立心や自制心,社会的なマナーなどを身に付ける上で重要な役割を果たすものです。
 しかしながら,近年の都市化,核家族化,少子化,地域における地縁的なつながりの希薄化など,家庭や家族を取り巻く社会状況の変化の中で,家庭の教育力の低下が指摘されています(図表1-2-6)。

図表1-2-6 家庭の教育力の低下について

1地域・家庭の変化
 かつて日本では3世代同居型の家庭が多く,親以外に多くの大人が子どもに接し,それらが全体として家庭教育を担っていました。地域の人々とのつながりも今より密接で,人々が子どもたちを「地域の子ども」として見守り,育てていました。そして,子どもたちも地域の年の違う子どもと接したり,幼い子どもの世話をしたりした経験を持つなど,子育てを支える仕組みや環境がありました。
 しかし,都市化,核家族化,地域のつながりの希薄化が進んだ結果,今日では多くの地域で,子育てを助けてくれる人や子育てについて相談できる人がそばにいないという状態が見られます。
 また,少子化が進む中で,若い世代の多くは,実生活の中で乳幼児に接したり,幼い弟妹の子守りをする機会が少ないままに大人になっています。このため,親の中には,乳幼児とはどういうものか,親として子どもにどのように接したらよいのかわからないなど,育児不安を持つ親が増えています。
2人々の意識や課題の多様化
 人々のライフスタイルや意識が多様化し,それぞれが抱える課題も一様ではありません。例えば,仕事を持つ親は子育ての時間の不足に悩み,一方,専業主婦は日々の子育ての中で孤独感に悩む傾向が見られます。また,周囲の人の助けを上手に借りながら子育てをしている親もいますが,一人で子育てを抱え込みこれ以上自分自身を追いつめてはいけないというほどがんばっている親や,子育てには無関心な親もいます。さらに,離婚等により,仕事と子育てを一人で担っている親など,周囲の支えをより必要としている親もいます。
 児童虐待の問題も深刻化しており,平成16年度の児童相談所における児童虐待の相談処理件数は,3年度と比べると約30倍の約3万3,000件に達しています(図表1-2-7)。また,近年,子どもが事故や事件に巻き込まれ,被害に遭う場合も少なくなく,子どもの安全の確保も大きな課題といえます。

図表1-2-7 児童相談所による児童虐待の相談処理件数

(2)家庭教育支援上の課題
 上記のような家庭教育の現状を踏まえ,今後,家庭教育の支援の充実を図っていく上では,次のような課題があると考えられます。
1地域や社会全体による家庭教育支援
 今日の家庭の教育力の低下は,個々の親だけの問題ではありません。上記のとおり,親や子どもを取り巻く地域や社会の大きな変化の中で,地域や社会全体で親子の学びや育ちを支える環境が崩れてきています。また,職場や仕事優先の風潮が広がり,子育てについての精神的・時間的なゆとりを確保することが難しい雇用環境があることなどにも注目しておかなければなりません。
 したがって,単に個々の親が子育てについて学んだり,相談したりする機会を提供するだけでなく,地域や企業を含めた社会全体で支えていくよりよい環境や機運をつくっていく必要があります。
 なお,最近の子どもたちを見ると,よく体を動かし,よく食べ,よく眠るという成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠な子どもの基本的生活習慣が乱れていることが指摘されています。例えば,文部科学省の「義務教育に関する意識調査」(平成17年度)によれば,朝食を食べない日がある小学生は約14パーセント,中学生は21パーセントに及んでいます(図表1-2-8)。

図表1-2-8 朝食をとらない子どもの割合

 こうした基本的生活習慣の乱れは,学習意欲や体力低下をもたらすとともに,非行の一因とも指摘されており,子どもの基本的生活習慣を育成し,生活リズムを向上させることが重要な課題となっています(「朝食の摂取とペーパーテストの得点の関係」については図表1-2-9を参照)。

図表1-2-9 朝食の摂取とペーパーテストの得点の関係

2すべての親を対象とした家庭教育支援
 これまで,家庭教育支援のための事業といえば,公民館等で希望する親を募集して,子育てについて学ぶ講座を開設するという手法が主なものでした。その結果,参加者は子育てに関心を持ち,自ら進んで学ぼうとする親が中心であり,それ以外の親,例えば,孤立しがちな親や学ぶ余裕がない親などへの支援が必ずしも容易に広がりにくい面がありました。また,父親の家庭教育への参画の促進を図ることは重要な課題です。近年,父親同士が中心となって,家庭教育の在り方を考えたり,子どもとふれあう活動などを行うおやじの会の活動が全国に広がりを見せています。
 今後は,家庭教育支援を,「学習を希望する親の支援」から「すべての親を対象とした支援」へと転換し,これまで手が届きにくかった親への働きかけも念頭に「戸口まで届く,心に迫る」取組を積極的に進めていく必要があります。
 このため,行政主導の支援にこだわらず,子育てサークルなど子育て中の親などからなる子育て支援団体との連携や,携帯電話やパソコンなどITを活用して,公民館などにわざわざ出向いて行かなくても気軽に学習や相談ができる環境づくりなどが求められます。

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