ここからサイトの主なメニューです

第1節 地域・家庭の教育力の現状・課題


 21世紀を迎え,世界はまさに「知識基盤社会」を迎えています。天然資源に恵まれない我が国においては,人材こそが資源であることを再認識し,「子どもは社会の宝,国の宝」であるという考えに基づき,学校や地域,家庭など社会全体で,新しい時代を切り拓ひらく心豊かでたくましい人材を守り育てていくことが重要です。
 しかし,第1章で述べたように,教育の現状に目を向けると,教育に対する信頼が揺らぎ,大きな課題に直面している状況が見受けられます。学校におけるいじめや不登校の問題に加え,学校外においても,これまででは考えられなかったような青少年による凶悪な犯罪が続発しています。また,本来,教育の原点である家庭において,児童虐待などの様々な問題が発生しています。
 こうした問題の背景として,少子化や核家族化,都市化,情報化等の経済社会の変化や,人間関係の希薄化,地域における地縁的なつな がりの希薄化などにより,地域社会や家庭における「教育力」が低下していることが指摘されています。さらには,子どもたちの学習意欲の低下や,基本的な生活習慣が身に付いていないこと,自然体験等の体験活動や読書活動の不足,学力や体力,コミュニケーション能力の低下などの子どもたちにかかわる課題も挙げられています。
 我が国社会は,今後,こうした社会的な課題や子どもにかかわる様々な憂慮すべき現状を直視し,学校,地域,家庭を含めた社会全体で,課題解決に向けた取組をより一層推進していくことが求められています。
 ここでは,まず本節において,現在指摘されている地域・家庭の教育力の現状や課題について説明します。その上で,第2節以下では,地域や家庭において,あるいは両者と学校が連携して,子どもを健やかに育てるために行われている各種取組について,具体的な事例も交じえながら紹介します。

1 地域の教育力の現状・課題

 先に述べたように,近年の度重なる青少年の凶悪犯罪や,いじめ,不登校など,青少年をめぐる様々な問題の背景の一つとして,「地域の教育力の低下」があると指摘されています。
 平成17年度に文部科学省が実施した「地域の教育力に関する実態調査」によると,こうした「地域の教育力」について,実際に子育てに携わっている保護者の55.6パーセントが,自分の子ども時代と比較して,「以前と比べて低下している」と回答しており,地域の教育力の低下について認識が高い点が見られます(図表1-2-1)。

図表1-2-1 「地域の教育力」は自身の子ども時代と比べてどのような状態にあると思われるか

 地域の教育力の低下については,経済社会の変化,人間関係や地縁的なつながりの希薄化などが要因として考えられています。同調査においても,その原因としては,

  1 個人主義が浸透してきている(他人の関与を歓迎しない),
  2 地域が安全でなくなり,子どもを他人と交流させることに対する抵抗が増している,
  3 近所の人々が親交を深められる機会が不足している,
  4 人々の居住地に対する親近感が希薄化している,

といった点が多く挙げられています(図表1-2-2)。

図表1-2-2 「地域の教育力」が低下している原因

 保護者の地域との交流状況については,子どもが通う学校や塾,習い事などを通じた知り合いなどに比べて,地域の近所の人たちとの交流が少ないという結果が出ています(図表1-2-3)。


図表1-2-3 保護者自身の交流の状況

 また,子どもたちの放課後や土日に過ごす場所についても,自分や友達の家などが多く,屋外の割合が少なくなっており,子どもの生活の様子が地域から見えにくくなっていることがうかがえます(図表1-2-4)。

図表1-2-4 平日や土日に子どもが皆と過ごす場所

 一方,地域で子どもが健やかにはぐくまれるようにするために,地域でどのようなことに力を入れるべきかという点については,

  1 地域内での子どもの安全を確保するための活動をする,
  2 異なる考えを持った人たちや年齢の人たちとの交流を推し進める,
  3 地域の歴史や文化,自然を体験したり学ぶ機会を増やす,
  4 文化やスポーツなど,子どもの個性を伸ばす教育を強化する,

といったことが多くの回答を得ています(図表1-2-5)。

図表1-2-5 地域の教育力の向上のため,地域が力を入れるべきこと

 こうした状況を踏まえ,今後は,学校,地域,家庭が相互に連携しつつ,社会全体で子どもを育てていくことが重要です。このため,異年齢の子どもや異世代の地域の人々とのかかわりの中で,様々な体験の機会を提供し,子どもの自主性・創造性・社会性を涵養(かんよう)するとともに,触れる・体験するといった感覚を通して情操を養うなど,子どもの安全を確保しつつ,地域の大人やNPO,企業などの力を結集して子どもを育てる環境を整備することが求められています。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ