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第2編   文教施策の動向と展開 第2編 文教施設
第9章  教育・文化・スポーツの国際化に向けて
第4節  相互理解を進める国際交流
1  留学生交流の推進



(1) 留学生受入れの現状と課誤

21世紀に向かって,我が国に対する国際的期待は一層強まり,我が国の国際的に果たすべき役割もますます重要度を増してきている。特に,その存立と繁栄を諸外国との円滑な関係の維持・発展に依存している我が国としては,各分野における国際交流や広報活動を通じて諸外国との間に相互理解を増進し,相互信頼に基づいた友好関係を築いていくことが極めて重要である。また,国家・社会の発展にとって,人的能力の開発はその基盤となるものであり,開発途上国における人材養成への協力は,今日ますます重要性を帯びてきている。

留学生を通じた国際交流は,我が国と諸外国相互の教育・研究の国際化・活性化を促すとともに,国際理解の推進と国際協調の精神の醸成に寄与し,さらに開発途上国の場合には,その人材養成に協力するところにその重要な意義を持つ。また,帰国留学生が我が国とそれぞれの母国との友好信頼関係の発展・強化のための重要な架け橋となることも期待される。


1) 留学生受入れ10万人計画

文部省では,昭和58年8月の「21世紀への留学生政策に関する提言」等を踏まえた,21世紀初頭における10万人の留学生受入れを目指す「留学生受入れ10万人計画」に基づき,渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進している。


2) 留学生受入れの課題

我が国の留学生受入れの現状については,経済危機にひんしたアジアからの留学生への緊急支援措置が功を奏するなど,近年の減少傾向に一定の歯止めが見られたが,依然として5万人程度であり,近年中に10万人の留学生を受け入れることは難しい状況となっている。

しかしながら,我が国の高等教育機関の在籍者数に占める留学生の割合が著しく低いことからも分かるよ

図2-9-1  留学生数の推移

うに,「10万人」という受入れの目標は,我が国の国際社会における立場や高等教育の規模から見ると決して過大なものとは言えない。したがって,当面は「留学生受入れ10万人計画」実現に向けて,今後の留学生受入れの状況等を踏まえながら,留学環境の充実を図ることとしている( 図2-9-1 , 表2-9-2 )。

表2-9-2  在学段階別留学生数 (平成10年5月1日現在)


3) 留学生受入れの現状

我が国の大学等で学ぶ外国人留学生の数は,平成10年5月1日現在で5万1,298人に上っている。これらの留学生のうち,国費留学生は8,323人で,外国政府がそれぞれの国の人材養成を図るため自国の費用で派遣している留学生が1,585人,それ以外の4万1,390人が私費留学生である( 図2-9-1 )。

これらの留学生はその9割以上がアジア地域の出身であり,中でも中国・韓国・台湾の3か国(地域)で全体の約75%を占めている( 図2-9-2 , 表2-9-3 )。


4) アジア通貨危機への対応
図2-9-2  外国人留学生数(出身地域別)

平成9年来の東南アジア諸国及び韓国の通貨・金融危機の影響により,学業継続が困難な状況にある留学生に対する支援措置として,文部省では,9年度末に進学のための一時金5万円の支給を行った。また,10年度においては,当初予算による8,540人分とは別に,補正予算において通貨危機関係国の留学生約6,000人に対し同年7月から,学習奨励費(奨学金)を支給した(学部生等,月額4万9,000円,大学院生,月額7万円)。

また,外務省では,マレーシア政府及びタイ政府による我が国への留学生派遣事業の継続を支援するため,平成10年度については緊急無償援助を行った。また,9年12月以降については優遇された条件による円借款の活用が可能となった。

さらに,法務省では留学生のアルバイトのための資格外活動許可に関する時間制限(従来は1日4時間まで)を弾力化(1週間28時間まで)した。


(2) 留学生受入体制の整備充実
1) 留学生のための教育プログラムの充実

現在,我が国への留学は,大学院レベルの留学数が増加する一方で,一年以内の短期留学が盛んになっており,留学の形態は,より多様化してきている。

このため,一部の大学では,このような様々な留学形態に対応し,留学生のニーズに応じた魅力ある教育プログラムを実施している。具体的には,31の国立大学大学院では,留学生のために英語により,学位取得が可能な43のコースを開設している。中でも,九州大学大学院法学研究科では,英語による修士の学位の取得が1年間で可能な「国際経済ビジネス法特別コース」を開設している。また,全国17の国立大学では,短期留学生のために英語によるプログラム(学部レベル)を開設している。私立大学の中においても,このような,英語による特別コースを開設しているほか,大学の授業の 一部を英語により行うなどの取組が行われている。


2) 留学情報提供体制等の整備

文部省では,従来から(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて,国内外からの問い合わせに対応し,併せて外務省では在外公館を通じ,海外の日本留学希望者に対し,各種の情報提供を行ってきた。また,日本の各大学等の参加を得て,海外において「日本留学説明会」を開催しており,平成11年度には,韓国,中国,シンガポール等において行う。また,海外留学を希望する日本人学生等が効果的に留学準備を進められるよう,11年度より「海外留学説明会」を開催した。

さらに,日本留学希望者や,留学関係者に包括的な情報を迅速かつ効率的に提供するために,(財)日本国際教育協会において,インターネット上に留学情報を提供するホームページを開設している。今後,更に大学その他の関係機関が保有するホームページとの接続を増やすなど,内容を充実させることとしている(アドレスhttp:〃www.aiej.or.jp/)。


3) 留学生に対する支援措置
(ア) 国費留学生受入れの計画的整備

国費留学生事業は,諸外国の次代を担う優秀な若者を我が国の高等教育機関に招へいし,教育・研究を行わせる事業として,昭和29年に開始された。現在,研究留学生(大学院レベル),学部留学生など6種類のプログラムにより実施されている。

表2-9-3  出身国別留学生数 (平成10年5月1日現在)

平成11年度予算においては,新規受入れで前年度比250人増の4,795人分の予算を計上している。


(イ) 私費留学生への援助
留学生に対する進学説明会

私費留学生に対しては,従来から,学習奨励費の給付,授業料減免措置,優秀な私費留学生の国費留学生への採用,医療費の80%補助等の施策を実施するなど,私費留学生が安定した生活の中で勉学に励める環境の整備に努めている。

また,(財)日本国際教育協会では,平成10年4月から個々の支援企業名や個人名を冠した「顔の見える」留学生への支援事業とじて「冠留学生奨学金事業」を開始した。


(ウ) 宿舎の安定的確保

文部省では,国立大学に留学生宿舎の建設(平成10年度末までに6,326戸を整備)を進めるほか,―般学生寮への入居の促進,(財)日本国際教育協会による留学生宿舎建設事業を行う地方公共団体等に対する奨励金の交付,(財)留学生支援企業協力推進協会による企業が保有する社員寮への留学生受入れに対する助成,(財)内外学生センターによる指定宿舎制度 【用語解説】 等の施策を実施している。


4) 大学等における受入体制の整備

文部省では,大学における指導援助体制の整備のため,国立大学に対して,留学生センター及び留学生課の設置をはじめとする人員・経費面での特別の措置をとっている。

一方,私立大学等に対しては,各大学等の受入留学生数等を考慮した私立大学等経常費補助金の特別補助を行っている。

なお,平成9年7月より,専修学校専門課程を卒業し,「専門士」の称号を付与された留学生の我が国での就職は,一定の要件を満たせば,認められることとなった。


5) 地域における留学生支援

地域における留学生支援に当たっては,留学生及びその同伴家族を地域の住民すなわち社会の構成員として迎え入れ,併せて異文化を積極的に受け入れる意識が重要であり,具体的には,ホームステイなど留学生と地域住民との交流,留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進することが必要である。


用語解説〈(財)内外学生センターによる指定宿舎制度〉外国人留学生の宿舎の安定的確保を目的に,(財)内外学生センターが適切な民間宿舎を開拓し,家主との間に外国人留学生専用の指定宿舎契約を締結するとともに,家主に対して協力金(指定契約金)を交付する制度である。

留学生に対する進学説明会このためには,各地域における官民一体となった推進体制づくりが重要であり,その組織として,現在までに全都道府県に,地域の大学,地方公共団体,経済団体,民間団体等によって構成される留学生交流推進会議が開催されている。

また,地域における官民一体となった留学生交流を更に推進するため,平成10年度から(財)日本国際教育協会による「留学生交流モデル地域推進事業」 【用語解説】 を開始し,現在北海道をはじめとする8道府県を「留学生交流モデル地域」に指定している。


6) 短期留学の推進

近年,諸外国において,留学先の大学における学位の取得を目的とせず,母国の大学等に在籍したまま1年以内の留学を行う,いわゆる短期留学が活発化している。例えば,アメリカのジュニア・イヤー・アブロード 【用語解説】 ,EU諸国のエラスムス・プログラム 【用語解説】 ,アジア・太平洋地域のUMAP 【用語解説】 などがある。

このため文部省では,大学問交流協定等に基づき,母国の大学に在籍したまま,1年間以内の短期間,諸外国から我が国に留学する者及び我が国から諸外国に留学する者を支援する,「短期留学推進制度」を設けている。この制度によって,平成10年度は1,437人の外用語解説


〈留学生交遼モデル地域推進事業〉留学生交流に積極的に取り組む地域を「留学生交流モデル地域」として指定し,そこで実施される留学生交流事業に要する経費を助成することにより,当該地域の留学生受入れの総合的環境整備を推進するとともに,他の地域への波及効果を期待するものである。現在,北海道,石川県,京都府,兵庫県,広島県,高知県,福岡県及び大分県が「留学生交流モデル地域」に指定されている。


〈ジュニア・イヤー・アブロード(Junior Year Abroad)〉アメリカの大学において既に歴史のある短期留学プログラムの総称である。その形態は大学により様々であるが,―般に,主に大学学部3年次を対象として,3か月ないし1学年程度の短期間,外国に留学させることによって,異文化体験を深め,視野を広くし,異なる価値観や視点から勉学する経験を与えることを目的とし,留学先で修得した単位は自国の大学での単位に加えることができるように工夫されている。


〈エラスムス(The Europian Community Acstion Scheme for the Mobility of Unive sity Student=ERASMUS)・プログラム〉EU加盟国及び非加盟欧州諸国を含む,大学問の学生交流推進計画であり,1987(昭和62)年に創設され,実験プログラムを経て,1995(平成7)年にはEUの教育分野の行動計画であるソクラテス計画の一部として統合された。


〈UMAP(University Mobility in Asia and the Paciflc)〉1991 (平成3)年にオーストラリア大学長会議によって提唱されたもので,EUにおける「エラスムス・プログラム」をモデルとして,アジア・太平洋地域の大学問の学生・教育者・研究者の交流を促進することを目的に組織された高等教育分野における政府及び非政府の両代表から成る任意の団体である。

1996(平成8)年の第5回総会(ニュージーランド)において,我が国に先行国際事務局を置くことが承認され,1998(平成10)年に都内に先行国際事務局が開設された。同年8月にタイで開かれた第6回総会では,UMAP憲章が承認されるとともに,前述の先行国際事務局が正式な国際事務局となった。また,1999(平成11)年度から,単位互換スキームを実験的に開始している。

国人短期留学生を受け入れ,499人の日本人短期留学生を派遣した。

また,我が国の国立大学において,海外から半年ないし1年間程度の短期留学を希望する学部留学生の積極的な受入れを行うため,英語による短期留学プログラムが,平成7年度以降17の国立大学に設置されている。


7) フォローアップの充実
短期留学プログラムの授業風景

図2-9-3  ユネスコ文化統計年鑑による日本人留学生の留学先国

帰国留学生が留学の成果を更に高め,母国において活躍できるように,専門誌・学会誌の送付,短期研修のための帰国留学生招聘事業,研究支援のための指導教官の派遣等,帰国留学生の希望に応じて援助している。

また,外務省においても,社会各層で活躍している元留学生を我が国に招へいする「元日本留学者の集い1等を行っている。


(3) 海外留学支援体制の整備
1) 海外留学の現状

近年,我が国の学生等で海外の大学等に留学する者が増加してきている。 「ユネスコ文化統計年鑑(1998年版)」によれば,海外に留学した日本人は,主要50か国において約6万4,000人であり,10年前と比較すると約2倍となっている。留学先別に見ると,その中の約8割が欧米諸国となっている( 図2-9-3 )。


2) 海外留学に関する施策

文部省では,大学問交流の促進,国際的視野を有する教員の育成,地域研究者の養成等の観点から,国費による日本人学生の海外派遣制度を設けている。

また,外国政府等の奨学金により,毎年約400人程度の日本人学生等が留学しており,文部省では,その募集・選考に協力している。

海外留学の大半を占めるのは私費留学であり,文部省では,(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて,留学希望者がそれぞれの目的に適した留学先の選択ができるよう,適切な留学情報の提供に努めており,同センターでは外国の大学等への留学を希望する学生等のために「海外留学の手引き」を作成・配布している。


(4) 高校生の留学交流

高校生の留学については,平成8年度に外国の高等学校へ3か月以上留学した者は4,481人,海外学習旅行者(語学等の研修や国際交流等を目的として,外国の高等学校等に3か月未満の旅行に出た者)は3万4,110人となっている。文部省では,高校生留学の教育上の意義を考慮し,以前から関係機関に対し,安全で有意義な留学ができるよう指導・助言に努めてきており,関係する団体により設立された「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」が行う諸事業の支援等を行っている。

また,高校留学関係団体の責任者が一堂に会する「高校生留学等関係団体関係者研究協議会」の開催及び「高校生留学交流研究指定制度」に対して補助している。

一方,各都道府県教育委員会等の高校留学担当者による「高校生海外留学等推進担当者会議」の開催,「高校生海外留学等研究協力校」の指定等,安全で円滑な海外留学の実施及び外国人留学生の円滑な受入れを推進するための実践的な研究を行っている。

さらに,文部省では,留学交流の推進を図るため,以下のような事業に補助を行っている。

1) (財)エイ・エフ・エス日本協会が行うASEAN諸国及び我が国の都市と姉妹提携関係にあるアジア・太平洋諸国からの日本語専攻高校生の受入れ等の事業
2) (財)ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団が行うアメリカからの日本語専攻高校生の受入事業
3) (財)日本国際教育協会が行う高校生インターナショナル・サイエンス・スクールなどの事業

また,平成10年度から(財)エイ・エフ・エス日本協会,(財)ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団が行うアジア地域に高校生を派遣する事業に対して補助している。

このほか,文部省では,アメリカ,ドイツ,シンガポール及びオーストラリアが行う高校生招致事業の募集・選考に協力している。


(5) 国際研究交流大学村の建設

21世紀に向けて,我が国が潤いや活力に満ちた社会を実現し,国際社会において自らの存立基盤を確保し,その責務を積極的に果たしていくためには,知的基盤への先行投資が不可欠である。このためには,国際交流,産学官連携,情報発信の機能を有機的に連携させ,国・公・私立大学の留学生や外国人研究者との交流も含め,国内外の産学官の融合を図り,世界に向けた知的ネットワークの形成・情報発信を行う拠点を形成する必要がある。

このようなことから,文部省,科学技術庁及び通商産業省が連携・協力して,東京都江東区の臨海副都心青海地区に留学生や研究者等の国際交流・産学官連携・情報発信の拠点となる「国際研究交流大学村(略称国際大学村)」を建設する。

文部省では,(財)日本国際教育協会を事業主体として,「国際交流」の拠点となる「留学生・研究者宿舎」と「国際交流プラザ」を建設する。

表2-9-4  国際大学村の主要施設の概要


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