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第2編   文教施策の動向と展開 第2編 文教施設
第7章  心と体の健康とスポーツ
第1節  健康教育の充実
1  新たな心と体の健康問題への対応



(1) 教科における指導

近年,学習面,友人関係,家庭などについて様々な悩みを抱えるとともに,これらを背景として,心因性の腹痛,不快感などの種々の症状を訴える児童生徒が増加している。

こうした,児童生徒の心の健康問題に対応するため,学校では,1)小学校の教科「体育」(保健領域)で「心の発達」,2)中学校の教科「保健体育」(保健分野)で「心の健康」,3)高等学校の教科「保健体育」(科目保健)で「精神の健康」について指導を行っている。

平成10年7月の教育課程審議会答申では,心の健康に関する内容について,1)小学校の教科「体育」(保健領域)では,自他の心身の発育・発達の違いに気付き,それを肯定的に受け止めることや不安・悩みへの対処及び人とのかかわり方に重点を置く観点,2)中学校の教科「保健体育」(保健分野)では,思春期における自分らしさの形成やストレスへの対処に重点を置く観点,3)高等学校の教科「保健体育」(科目保健)では,自己の可能性を最大限に生かして自己を高めていくことの大切さや欲求,ストレスへの対処に重点を置く観点,に立って,それぞれ内容の改善を図ることの必要性が指摘された。この答申を受け,新学習指導要領において,心の健康に関する指導の充実を図った。

また,平成9年7月の教育職員養成審議会答申等を受けて,10年6月に教育職員免許法及び同法施行規則の一部改正が行われ,養護教諭の有する専門性を教科指導にも活用するため,3年以上の勤務経験を持つ養護教諭が,勤務する学校で「保健」の授業を担当する教諭又は講師となることができるようになった。

心の健康と生活習慣に関する調査研究事業近年,児童生徒について,ストレスの増大や不安・悩みなどの心の健康問題が深刻化している。こうした状況の背景の一つとして,生活習慣の乱れの問題があると考えられることから,文部省では,平成11年度から新たに,「心の健康と生活習慣に関する調査研究事業」を実施している。この事業は,同年度から3か年で行い,児童生徒の心の健康と生活習慣との関連について,学識経験者の協力を得て調査研究を行い,心の健康を保持増進するための生活習慣の在り方について取りまとめることとしている。


(2) 健康相談活動の充実

養護教諭は,児童生徒の身体的不調の背景に目を向けることを通じて,子どもの発する様々なサインに気付くことができる立場にある。薬物乱用,性の逸脱行動,いじめ,不登校などの心の健康問題の深刻化を考えると,養護教諭の健康相談活動(ヘルスカウンセリング)はますます重要となってきている。

このため,養護教諭の資質向上を目的として,実技講習会や保健室相談活動研修会を開催するとともに,新規採用養護教諭の研修の日数を拡充し,新たに経験者を対象とした研修を実施するなど,現職教育の充実に努めている。

また,平成10年の教育職員免許法等の改正により,養護教諭の養成カリキュラムに「健康相談活動の理論及び方法」が新設された。

さらに,外部の関係機関から先進的な医学知識,健康問題の現況,適切な処置対応及び指導法などをタイムリーに収集し,生徒や保護者からの相談に応じる体制を強化することが必要であることから,平成10年度以降,中学校に設置される「心の教室」などの相談室にコンピュータを置き,その活用と効果に関する調査研究を実施している。


(3) 薬物乱用防止教育の充実

近年,覚せい剤等薬物の乱用によって検挙される青少年が増加する傾向にあり,児童生徒の薬物乱用の実態は極めて憂慮すべき状況にある(第1編第2部Q&A Q11参照)。このため,政府は,内閣総理大臣を本部長,文部大臣等を副本部長とする薬物乱用対策推進本部を設置した。同本部は,平成10年5月,「薬物乱用防止五か年戦略」を策定し,早期に第3次覚せい剤乱用期を終息させるよう,政府全体として緊急に対策をとることとした。

文部省では,今後,すべての中学校及び高等学校において年1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに,地域社会が一体となってこの問題に取り組むよう,各都道府県教育委員会等を指導している。また,平成10年7月の教育課程審議会答申を踏まえ,新学習指導要領において,新たに小学校の教科「体育」(保健領域)においても,薬物乱用防止に関する指導を行うとともに,中学校及び高等学校においても,その指導内容を充実した。さらに,11年度においても薬物乱用防止教室開催マニュアルの作成・配布,児童生徒用教材の作成・配布,競技場等の大型カラーディスプレイシステムを活用した広報啓発活動の推進,シンポジウムの開催,ホームページの開設(http://www.hokenkai.or.jp/drug/)などを行い,薬物乱用防止教育の充実に努めることとしている。


(4) 性教育の充実

学校における性教育は,人間尊重の精神を基盤として,児童生徒の発達段階に応じて性に関する科学的知識を理解させるとともに,児童生徒が健全な異性観を持ち,これに基づいた望ましい行動がとれるようにすることを目標としている。このような性教育は,教科「体育,保健体育」,教科「家庭,技術・家庭」,「道徳」及び「特別活動」などを中心に学校教育活動全体を通じて行うこととしている。

学校における性教育の推進に当たっては,1)発達段階に即した内容であること,2)教育的に価値のある内容であること,3)家庭・地域の理解が得られる内容であることなどに留意する必要がある。

文部省では,新たに教師用参考資料を作成し,平成11年度に幼稚園,小学校を含めた全学校に配布したほか,学校保健担当教員や養護教諭対象の研修会における性教育に関する研修を行うなどの施策を推進している。さらに,新学習指導要領において,小学校の教科「体育」では3・4学年から保健領域の指導をすることとし,さらに中学校の教科「保健体育」(保健分野)について,体の発育・発達や性に関する内容等,性教育の充実を図った。


(5) エイズ教育の充実

エイズは近年,世界各国で爆発的に増加し,深刻な社会問題となっている。我が国でも,患者・感染者が増加しているのみならず,20歳代を中心とした若い世代にも広がりつつあることが指摘されており,今後の急激なまん延を防ぐための対策が緊急の課題となっている。

学校におけるエイズ教育は,教科「保健体育」,「道徳」及び「特別活動」を始めとする学校教育活動全体を通じて指導を行っている。エイズに関する正しい知識を習得させることによりエイズを予防する能力や態度を培うとともに,エイズに関する誤解や偏見を除き,人権尊重の精神を育てることを目標としている。

エイズ教育を推進するために,具体的には,1)小・中・高校生用エイズ教育教材の作成,2)教職員対象の研修会等の開催,3)地域におけるエイズ教育推進のための実践研究,4)エイズ教育に関する情報ネットワークの整備(http://www.hokenkai.orjp/HIV/),などの施策を推進している。

さらに,新学習指導要領では,中学校の教科「保健体育」(保健分野)において,エイズについて取り扱うことを明示するなど,指導内容の充実を図った。


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