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第2編   文教施策の動向と展開 第2編 文教施設
第6章  学術研究の振興
第6節  基礎研究の重点的な推進
6  生命の神秘に迫る―生命科学―


生命現象を科学的に解明しようとする生命科学研究は,組換えDNA実験をはじめとする新たな技法の導入により飛躍的な発展を続けており,21世紀に向けて,医療,農業等の分野で豊かな応用成果を人類にもたらすものとして期待されている。

文部省では,昭和61年2月の学術審議会建議「大学等におけるバイオサイエンス研究について」などに基づき,大学等における研究の推進を図っているところであるが,近年のバイオサイエンスの急速な進展に伴い,バイオサイエンスの今後の在り方が学術政策上重要課題となっている現状にかんがみ,現在,学術審議会バイオサイエンス部会において,今後のバイオサイエンス研究の推進方策について検討を行っており,平成11年6月には,中間取りまとめを行った。


(1) ゲノム研究

ゲノムとは,生物の個体を形づくる遺伝情報とこれを担うDNAの総体のことであり,生命の設計図とも呼ばれるものである。ゲノム研究の成果は,生命科学における共通の基盤として大きな意義を有するだけでなく,難治疾患の治療法の開発等,様々な分野への応用が期待されている。

文部省では,数年内にもヒトゲノム全塩基配列が決定されるとの見通しから,ヒトゲノム多様性や多様性生物ゲノム研究が重要な課題として認識されるようになった。このことを踏まえ,学術審議会バイオサイエンス部会において,従来の「ヒト・ゲノムプログラム推進小委員会」を「ゲノム研究推進小委員会」へ改組し,大学等におけるゲノム研究の推進について平成10年7月以来審議を行い,その成果を11年6月,「大学等におけるゲノム研究の推進について(報告)」を部会から総会に報告した。


(2) 脳研究

脳研究は,ヒトの知能と心のメカニズムの解明を通じてヒトのヒトたるゆえんを理解し,さらには老化,脳神経疾患の治療・予防,革新的なコンピュータ創造などの面でも人類に大きな恩恵をもたらすことが予想される。近年,この脳研究をめぐり,欧米においては国家的なプロジェクトが推進されており,我が国においても学術的のみならず社会的にも常に大きな期待と注目が寄せられている。大学等における脳研究の推進方策については,学術審議会バイオサイエンス部会が,推進すべき研究領域,研究推進体制の構築などについて,平成9年3月に,「大学等における脳研究の推進について(報告)」をまとめており,文部省では,同報告に沿って脳研究を推進している。


(3) がん・エイズ研究

我が国の死亡原因の第1位を占めるがんの病態を明らかにし,その予防,診断方法を確立するためには,大学等における基礎研究の推進が不可欠である。文部省では,昭和59年に科学技術庁,厚生省との共同事業として開始された」対がん10か年総合戦略」等により得られた多くの成果を踏まえ,科学研究費補助金等により,引き続きがん研究の推進を図っている。

また,エイズについても,科学研究費補助金等により,病態,予防・治療等に関する基礎研究を重点的に推進している。


(4) クローン研究

1997年(平成9年)2月,イギリスで成体の体細胞を元にした,同じ遺伝子組成を持つクローン羊が誕生し,生命倫理に関する新たな問題が提起されることとなった。これを受け,学術審議会においては,ヒトのクローンに関する研究について,科学研究費補助金の採択を当面差し控えることとしている。また,同審議会バイオサイエンス部会においては,大学等のクローン研究における新たな倫理的問題等について,科学的・専門的な見地から調査審議を行い,その報告を受けて文部省では,平成10年8月に,「大学等におけるヒトのクローン個体の作製についての研究に関する指針」の告示を行った。

同指針は,ヒトクローン個体の作製に関する研究は行わないとするもので,禁止の研究技法,審査手続き,見直し手順等を示した。また,ヒトのあらゆる組織に分化する全能性を持つ胚性幹細胞(ES細胞)の研究を大学等において行おうとする場合の取扱いについては,クローン指針を準用する旨を10年12月に文部省から大学等の関係機関に通知した。


(5) 遺伝子治療臨床研究

遺伝子治療とは,遺伝子又は遺伝子を導入した細胞を人の体内に導入することにより疾病の治療を行うものであり,現在有効な治療法の乏しい疾患に対する画期的な治療法として期待されている。

文部省では,厚生省と連携を図りながら,「大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン」(平成6年6月告示)に基づき,学術審議会遺伝子治療臨床研究専門委員会において,大学等の遺伝子治療臨床研究実施計画について審議を行っている。平成11年5月には,同委員会の審議を受けてガイドラインの改正を行い,遺伝子治療臨床研究の対象疾患を「生命を脅かすか又は生活の質を著しく損なう難治疾患」に拡大した。


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