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第2編   文教施策の動向と展開 第2編 文教施設
第2章  初等中等教育の―層の充実のために
  第2節 暴力行為、いじめ、不登校等の解決を目指して
1  深刻化する暴力行為、いじめ、不登校等の現状等



(1) 暴力行為,少年非行

平成10年度において公立小,中,高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(「自校の児童生徒が起こした暴力行為」をいい,「対教師暴力」,「生徒間暴力」,「対人暴力」,学校の施設,設備等の「器物損壊」を合わせたもの)の発生状況は,学校内で発生したものが全学校の15.3%に当たる5,917校において約2万9,685件,学校外で発生したものが全学校の8.1%に当たる3,149校において約5,561件である。

学校種別にみると,公立小学校では,学校内で発生したものが,全学校の2.3%に当たる557校において1,528件,学校外で発生したものが,全学校の0.5%に当たる117校において178件,公立中学校では,学校内で発生したものが,全学校の33.8%に当たる3,551校において2万3,005件,学校外で発生したものが,全学校の19.1%に当たる2,000校において3,792件,公立高等学校では,学校内で発生したものが,全学校の43.5%に当たる1,809校において5,152件,学校外で発生したものが全学校の24.8%に当たる1,032校において1,591件となっている( 図2-2-1 )。

また,警察庁の調べによると,少年非行においても平成10年の刑法犯少年の検挙人員が前年に引き続いて増加するなど,戦後第4のピークに向け,―層の量的増加を示した。

また,近年の児童生徒の暴力行為の特徴としては,その内容の凶悪化,粗暴化とともに,それまでの行動,態度などからは周囲が非行を予見し難いような子どもが重大な問題行動を起こすような場合が増えてきているとの指摘がなされている。

図2-2-1  学校内における暴力行為発生件数の推移

このように深刻化する児童生徒の暴力行為,非行問題等に対する学校の対応について,文部省は,「児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議」を開催して検討を行った。

同会議では「学校における指導体制」と「学校と関係機関との連携」の在り方に焦点を絞って検討が行われ,平成10年3月に「学校の「抱え込み」から「連携」へ―問題行動への新たな対応-」と題する報告を公表した。

この報告のポイントは次の点である。

○ 生徒指導の基本は教員と児童生徒との信頼関係にあることを基調としつつ,時に毅然とした厳しい対応をすることも必要であること
○ 問題行動への対応について学校は万能ではなく「抱え込み」意識を捨てるべきこと
○ 「学校における指導体制」と「学校と関係機関との連携」について,緊急対応体制の事例や連携のための手順等を具体的に提示したこと
○ 小学校における生徒指導の充実が求められること

この報告を受け,文部省では,平成10年4月に都道府県教育委員会等に対し,趣旨の徹底を図るとともに,取組を促すため通知した。


(2) いじめ

いじめの問題については,平成10年度には全国の公立小,中,高,盲,聾,養護学校において3万6,396件のいじめが発生し,前年度に比べて約6,000件減少しているものの,依然として憂慮すべき状況にある( 図2-2-2 )。

図2-2-2  いじめの発生件数の推移

いじめ問題については,「児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議」において,平成8年7月に「いじめの問題に関する総合的な取組について〜今こそ,子どもたちのために我々―人―人が行動するとき〜」と題する報告が文部省に提出されている。

この報告において改めて確認されたいじめの問題への取組に当たっての基本的認識は次の5点である。

,   「弱い者をいじめることは人間として絶対に許されない」との強い認識に立つこと
, いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと
, いじめは家庭教育の在り方に大きなかかわりを有していること
, いじめの問題は,教師の児童生徒観や指導の在り方が問われる問題であること
, 家庭,学校,地域社会などすべての関係者がそれぞれの役割を果たし,―体となって取り組むことが必要であること

特にいじめる児童生徒に対しては,いじめの非人間性やそれが他人の人権を侵す行為であることに気付かせ,他人の痛みを理解できるような教育的な指導の徹底や,校内の他の児童生徒と異なる場所での特別の指導計画による指導が必要である。さらにいじめの状況が―定の限度を越える場合における出席停止の措置なども求められる。また,いじめられる児童生徒への弾力的な対応としては,緊急避難としての欠席,学級替え等の弾力的運用,「転校」措置の弾力的運用の徹底など,あくまでいじめられる児童生徒の立場に立って弾力的な運用が行われることが必要である。


(3) 不登校

また,不登校の問題については,平成10年度に「不登校」を理由に年間30日以上学校を欠席した児童生徒数は,小,中学生合わせて12万7,694人(前年度約10万5,000人)となっており,いずれも調査開始(平成3年度)以来最多となっており,教育上の大きな課題となっている。

不登校の背景としては,家庭の問題,学校の在り方,本人の意識の問題等の要因が複雑に絡み合っていることがある。

また,最近見られる傾向として,「不登校はどの子にも起こり得るものであり,問題行動ではない」として,学校を絶対視するような考え方が相当弱まっており,―般的に「学校に必ず行かなければならない」という意識も薄らいできていることが挙げられる( 図2-2―3 )。

文部省では,これまでもスクールカウンセラーの派遣等の各種施策を実施してきたが,今後とも,

1) 新学習指導要領の下,ゆとりの中で各学校が特色ある教育活動を展開し,子どもたちにとって楽しい学校の実現
2) スクールカウンセラーの派遣や心の教室相談員の配置等による学校の教育相談機能の充実

等の施策の―層の推進に努めていくこととしている。


(4) 高等学校中途退学問題

平成9年度中の公,私立高等学校における中途退学者の合計は11万1,491人で,中途退学者の割合(中退率)は2.6%となっている。中退率は調査開始(昭和57年度)以来過去最高となっている(図2-2-4)。中途退学の理由については,「進路変更」が最も多いが,近年不本意入学が原因と思われる「学校生活,学業不適応」によるものが増加傾向゛にある。

このような状況を踏まえ,中途退学問題の対応に当たっては,中学校において,自らの進路や生き方を主体的に考える態度を育成するための指導を充実するとともに,高等学校においては,ガイダンスの機能を充実し,学校生活への適応等について計画的に指導することが重要である。また,就職や他の学校への転,編入学などの積極的な進路変更については,こ

図2-2-3  不登校児童生徒数の推移

図2-2-4  公,私立高等学校中途退学者数の推移

れを支援していくことも大切である。

文部省では,高等学校中途退学問題を含む生徒指導上の諸問題の解決方策について研究協議を行うため,「高等学校生徒指導連絡協議会」をブロック別に開催している。


(5) 校則

校則は,児童生徒が健全な学校生活を営み,より良く成長発達していくため,各学校の責任と判断の下にそれぞれ定められている―定の決まりである。校則自体は教育的に意義のあるものであるが,その内容及び運用は,児童生徒の実態,保護者の考え方,地域の実情,時代の進展等を踏まえたものとなるよう積極的に見直しを行うことが必要である。

文部省では,各学校における校則見直し状況を把握するため,全日本中学校長会及び全国高等学校長協会に委託して,生徒指導体制の状況を含む印常の生徒指導の在り方に関する調査研究」を平成9年度に実施した。この調査結果を受けて,文部省では,平成10年9月に各学校における校則及び校則指導が適切なものとなるよう,都道府県教育委員会等に対し通知した。


(6) 体罰

極めて残念なことであるが,学校において,いまだに児童生徒への体罰が跡を絶たない。

文部省の調査においても,平成9年度に体罰ではないかとして問題とされ学校において調査した事件は989件に上っている。

体罰については,学校教育法により厳に禁止されているものであるが,もとより体罰による懲戒は,児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではない。また,教師と児童生徒との信頼関係を損なう原因ともなり,教育的な効果も期待されないと考えられる。

文部省では,従来から,各種通知や各種会議等を通じて体罰の根絶について指導を行ってきたが,今後ともその徹底を図っていくこととしている。


2 児童生徒の問題行動等への取組

暴力行為,いじめ,不登校など,児童生徒の問題行動等の原因,背景は個々のケースにより様々であるが,―般的には,

, 家庭における幼少時からのしつけの問題
, 児童生徒の多様な能力,適性等に十分に対応できていない学校の在り方
, 他人への思いやりや人間相互の連帯感が希薄化している社会状況

などが挙げられており,こうした家庭,学校,地域社会のそれぞれの要因が複雑に絡み合い,例えば,いわゆる学歴偏重の風潮の中で,学校生活への不適応や周囲からの過大な期待等により子どもにストレスを堆積させるなどの状況を発生させていると考えられる。

したがって,これらの問題の解決のためには,家庭,学校,地域社会がそれぞれの役割を果たし,―体となった取組を行うことが重要である。この中で学校は,家庭及び地域社会との連携を深めるとともに,深い児童生徒理解に立ち,―人―人の児童生徒が生き生きとした学校生活を送ることができるよう努める必要がある。

このため文部省においては,次の観点から各種の施策を総合的に推進している。


(1) ―人―人を大切にし、個性を生かす教育の実現

学校は子どもたちにとって楽しく学び生き生きと活動できる場でなければならず,子どもたち―人―人が大切にされ,自分の存在感や自己実現の喜びを実感できるような学校でなければならない。

このためには,まず,―人―人を大切にし,個性を生かす教育を充実するという基本的な考え方の下,新学習指導要領の趣旨を実現する教育を着実に推進していく必要がある。

文部省においては,新教育課程説明会を実施するとともに,個別指導やグループ指導を充実するティーム,ティーチングを導入するなど,学校において分かりやすく楽しい授業が行えるよう指導方法の工夫,改善に関する教職員配置の改善を図っている。

また,学校における豊かな心を育むための道徳教育の―層の推進,充実を図るとともに,自然体験活動,ボランティア活動,集団生活体験等を推進するため,平成10年度からは「道徳的実践活動推進事業」や「道徳教育推進資料の作成」を実施している。


(2) 教員の資質を高めるために
1) 体系的な教員研修

問題行動等の未然の防止や早期の発見,解決を図るためには,すべての教員がこれらについて正しい理解と正確な認識を持ち,児童生徒に対する指導力を備えることができるよう,教員の資質能力の向上を図ることが必要である。このため,従来から都道府県教育委員会が実施する初任者研修や教職経験者研修において生徒指導に関する研修が盛り込まれている。

また,すべての教員が身に付けておくべきカウンセリングの基礎について,自主研修や校内研修で用いることのできる,研修用ビデオ「学校におけるカウンセリングの考え方と技法-いじめ,暴力行為,不登校への対応事例を通してー」を作成し,平成10年3月に各都道府県教育委員会等に配布した。


2) 専門的,実践的な研修

全教職員の資質能力の向上を図るとともに,生徒指導担当教員や教育相談担当教員等に対する専門的,実践的な研修を行い,これらの教員の資質能力の向上を図ることも極めて重要である。

このため,従来「いじめ問題等対策研修講座」,「不登校等研修講座」及び「カウンセリング研修講座」とそれぞれ別に実施していた三つの研修を,平成11年度からは統合し,「生徒指導総合研修講座」として―体化して実施している。

また,教育職員免許法の改正に伴って,大学の教育養成段階においても生徒指導や教育相談等の指導をさらに充実するとともに,大学に教育実践総合センターを設置するなど,―層の実践的指導力の育成を図ることとしている。


(3) 教育相談体制の充実

児童生徒,保護者,教員の抱える学校教育に関する不安や悩みを受け止めるためには学校,市町村,都道府県等の様々な段階で,これらに対する教育相談体制の整備を図る必要がある。

文部省では,平成7年度から学校におけるカウンセリング等の機能の充実を図るため,臨床心理士などの児童生徒の心の問題に関する専門家を「スクールカウンセラー」として学校に配置し,その活用,効果等に関する調査研究を実施している。平成11年度には,10年6月に公表された中央教育審議会「幼児期からの心の教育の在り方について」答申で,「すべての子どもがスクールカウンセラーに相談できる機会を設けていくことが望ましい。 」と提言されている。

これを受けて,スクールカウンセラー派遣校数を更に拡大し,特に大都市部において様々な観点からの調査研究を実施している。さらに,調査研究事業の―層効果的な推進を図るため,研究協議会を開催し,カウンセリングの実施方法及び実施上の配慮事項等について,事例研究,情報交換等を行った。

また,国立教育会館においては,平成7年度から「いじめ問題対策情報センター」を設置し全国の児童生徒や保護者からのいじめに関する電話相談,相談機関やいじめに関する情報の提供,教育委員会等に対する講師の派遣を実施し,児童生徒からの電話相談についてはフリーダイヤル化している(0120-797014)。

さらに,各市町村における教育相談体制の充実を図るため,平成7年度から,市町村教育委員会に教育相談員を配置するために必要な経費が地方交付税において措置されているが,11年度は更に拡充されている。

不登校対策としては,平成11年度から新たに「不登校児童生徒の適応指導総合調査研究委託-スクーリング,サポート,プログラム(SSP)―」を実施し,適応指導教室や民間施設における不登校の子どもたちの学校復帰に向けての望ましい指導の在り方について研究を行っている。

また,平成10年度の2学期から,公立中学校に教職経験者や青少年団体指導者など地域からの人材を「心の教室相談員」として配置し,生徒の悩み等の相談にのったり,気軽な話相手となったりすることにより,生徒が悩み等を抱え込まず,心にゆとりを持てるような環境づくりのための調査研究を行っている。


(4) 学校,家庭,地域社会の連携

児童生徒の問題行動等の解決のためには,家庭,学校,地域社会が―体となって取り組むことが必要である。

このような取組を推進するため,文部省では,従来から,教育委員会,学校,PT′A,関係機関等の関係者が生徒指導上の諸問題について研究協議等を行う「生徒指導推進会議」を開催しているほか,平成8年度からは「いじめ対策地域連携モデル市町村」事業を実施している。

「いじめ対策地域連携モデル市町村」においては,小,中,高等学校及び教育センター,児童福祉機関,人権擁護機関,警察等の関係機関並びに地域社会及び家庭が相互に連携しながら,いじめの問題の解決に向けた地域ぐるみの対応の在り方について実践的な研究を行っている。


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