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1部   未来を拓く学術研究
第2章   学術振興の基本施策
第1節   学術研究を支える基盤を整備・強化するために
1   研究人材の養成・確保



(1) 我が国における研究者の現状

我が国全体の研究者の現状については、総務庁の科学技術研究調査によれば、平成8年4月1日現在で、研究者の総数は、約67万3,000人となっている。組織別では、「会社等」が約38万4,000人で半数以上を占めており、次いで「大学等」約24万3,000人、「研究機関」約4万6,000人となっている。また、分野別では、自然科学が約58万8,000人と9割近くを占めており、特に「会社等」においては、99%が自然科学の分野となっている。人文・社会科学等の分野の研究者は、9割以上が「大学等」に集中している(1-2-1 )。

これらの研究者数の年次推移を見ると、平成8年度の研究者総数は、昭和50年、60年との比較では、それぞれ2倍、1.5倍で、着実に増加している。組織別では、いずれの組織においても増加しているが、「研究機関」及び「大学等」に比較して「会社等」における増加の割合が高い(1-2-1 )。

1-2-1 組織別・分野別研究者数(平成8年4月1日現在)

1-2-1 研究者数の年次推移


(2) 大学における研究者の現状と課題

学術研究推進の中心的な担い手は、大学や大学共同利用機関( コラム参照)等の教員である。これらの教員数は、平成8年4月1日現在、約16万人である(1-2-2 )。

また、大学や大学共同利用機関は、大学院学生の教育などにより若手研究者の養成に中心的な役割を果たしている。

ただ、教員の年齢構成の推移を見ると、20歳代の研究者が減少傾向にあり、大学等における研究活力を維持していく上での問題点の一つとなっている(1-2-2 )。

若手研究者が責任ある立場で研究する機会の減少や、次代を担う研究者層の減少を招来することがないよう、若手研究者の養成を充実していくことが必要である。

1-2-2 大学・大学共同利用機関等における教員数

大学共同利用機関とはどのようなものか

(大学の研究所)

平成9年7月現在、我が国には587の大学がある。これらの大学には、学部や大学院に加え、それぞれの専門分野の研究を行うことを目的とする研究所や研究施設が附置されている。国立大学には、附置研究所62(うち20は全国の大学等の研究者が共同で利用する研究所)、学部等に附属する研究施設が422設置されており、学部や大学院における教育研究と連携しながら、特色ある研究を進めている。

さらに、特定の大学に附置されない独立した大学共同利用機関が14設置されている。

(大学共同利用機関)

特定分野の研究を行うことを目的とする研究所は、従来、最も関係の深い大学に附置する形で設置されていたが、学術研究の発展に伴い、一大学の枠を超えて、全国的に研究者を結集し研究を進める組織が求められるようになった。そのため、昭和46年4月に初めて、特定の大学に附置されない文部省直轄の研究機関として、高エネルギー物理学研究所(平成9年4月に高エネルギー加速器研究機構に改組)が設置された。

このような大学共同利用機関は、広く全国の大学の研究者が結集して、一つの大学では運営が困難な大型の施設設備や大量のデータ・資料を利用した共同研究を行うことなどにより、各分野の学術研究の発展に大きく貢献するとともに、大学における教育にも協力している。

大学共同利用機関一覧(平成9年度)


国立歴史民俗博物館の展示


(3) 次代を担う若手研究者の養成

学術研究は、基本的には、個々の研究者の自由な発想と研究意欲を源泉とし、優れた研究者の存在があって初めて成果が期待できるものである。将来の学術研究の水準は、研究遂行の主体である研究者をどのように養成・確保するかにかかっている。

特に、将来の研究の中核となることが期待される若手研究者の多くは、現在の研究の重要な担い手でもあり、柔軟な発想により、研究の新しい展開を生み出す可能性を持っている。したがって、優れた若手研究者の養成・確保は、学術研究の基盤の強化とその発展にとって最も重要な課題であり、次のような観点に立った施策を推進していく必要がある。

1-2-2 大学教員年齢構成の推移


1) 独創性

本来、優れた研究者の多くは、個性的で独創性にあふれ、鋭い洞察力、旺盛な好奇心を持つと同時に、豊かな基礎知識に裏付けられた広い視野と柔軟な思考力を備えている。このような優れた能力とともに、常に新しい分野に積極的に挑戦していく活力を兼ね備えた若手研究者をはぐくんでいかなければならない。


2) 国際性

近年の国際学術協力や交流の重要性、及び日本の学術研究に対する国際的期待の高まりにかんがみるなら、世界の学術研究の潮流を常時把握し、海外の研究者とも活発な交流を行うことが、これからの研究者にとって大切である。


3) 新しい研究分野への積極的な対応

研究の高度化、専門化が急速に進むとともに、伝統的な学問分野にとらわれない学際的あるいは全く新しい学問分野の展開が、学術の進歩にとってますます重要となっている。このような学問の動向に積極的に対応できる若手研究者の育成が必要である。


4) 豊かな人間性

細分化が進む学問領域に閉じこもることなく、社会や学問全体を視野に入れながら、社会に果たす役割や使命を自覚するとともに、科学や技術と人間、社会あるいは地球環境との調和を図ることが、研究者に求められている。そのため、研究者が、このような社会的役割や責任を正しく理解できる豊かな人間性を持つことが必要となっている。


(4) 「ポストドクター等1万人支援計画」の推進

次代を担う独創的で優れた若手研究者を養成・確保するため、ポストドクター(博士課程修了者)等の若手研究者を平成12年度までに約1万人支援する「ポストドクター等1万人支援計画」を、文部省をはじめ関係省庁が8年度から推進している。

平成8年7月に閣議決定された科学技術基本計画には、「ポストドクター等1万人支援計画」を平成12年度までに達成することが盛り込まれており、9年度においては、文部省、科学技術庁、通商産業省及び農林水産省において対前年度1,809人増の7,926人のポストドクター等を支援することとしている。このうち、文部省では、全体の7割以上に当たる5,701人(対前年度1,145人増)を支援することとしており、「ポストドクター等1万人支援計画」の推進に大きな役割を果たしている。

文部省では、以下の事業を「ポストドクター等1万人支援計画」に位置付け、その推進を図っている(1-2-3 1-2-3 )。


(ア) 日本学術振興会特別研究員

優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想の下に主体的に研究課題、研究の場等を選びながら研究に専念する機会を与えるため、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する博士課程在学者、修了者を2年間又は3年間採用して、研究奨励金及び研究費を支給している。特別研究員制度は、昭和60年度に日本学術振興会の事業として創設されて以来、年々拡充が図られており、「ポストドクター等1万人支援計画」の中心となる制度である。本制度は、創設以来、我が国の学術研究を支える若手研究者の養成・確保のための方策として定着し、高く評価されている(図1-2-4)。

平成9年度においては、博士課程在学者を対象とする特別研究員(DC)及び博士課程修了者を対象とする特別研究員(PD)を合わせて3,570人(対前年度400人増)を支援することとしている。

南極地域で採取した生物試料を倒立顕微鏡で観察する特別研究員


(イ) 日本学術振興会特別研究員(がん、新プロ、COE)

博士課程修了者を対象として、がん研究、新プログラム方式による研究、中核的拠点形成プログラムCOE)による研究に参画する若手研究者を支援するため、平成9年度においては、80人(対前年度10人増)を支援することとしている。


(ウ) 日本学術振興会海外特別研究員

我が国の若手研究者を対象として、滞在費・研究費等を支給し、海外における特定の大学等学術研究機関において長期間研究に専念させ、国際的視野に富む有能な研究者を養成・確保するため、平成9年度においては、125人(対前年度25人増)を支援することとしている。


(エ) 日本学術振興会外国人特別研究員

博士号取得直後の外国人若手研究者に滞在費等を支給し、我が国の大学等に受け入れて、当該国の研究者養成に貢献すると同時に、これら外国人研究者との交流を通じて我が国の若手研究者を育成するため、平成9年度においては、680人(対前年度260人増)を支援することとしている。


(オ) 未来開拓学術研究推進事業におけるリサーチ・アソシエイト

平成8年度に創設された日本学術振興会の未来開拓学術研究推進事業の研究プロジェクトに、博士課程修了の若手研究者を研究実施機関が雇用し、参画させるもので、9年度においては、640人(対前年度200人増)を見込んでいる。


(カ) 非常勤研究員制度

国立大学や大学共同利用機関が行う研究プロジェクト等にポストドクター段階の若手研究者を非常勤研究員として参画させて、当該プロジェクト等の円滑な遂行、及び研究者としての資質向上など、若手研究者の養成・確保を図るもので、平成9年度においては、486人(対前年度160人増)を支援することとしている。

また、国立大学大学院における、ベンチャービジネスの萌芽(ほうが)となる独創的な研究開発の推進などを目的とする「ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)」により、平成9年度においては、200人(対前年度100人増)を支援することとしている。

1-2-3 ポストドクター等1万人支援計画文部省施策の概要

1-2-3 文部省のポストドクター等1万人支援計画関連事業による支援者数

1-2-4 日本学術振興会特別研究員の就職状況

南極地域で採取した生物資料を倒立顕微鏡で観察する特別研究員


(5) 研究支援者の確保

研究支援者については、研究組織や研究プロジェクト等における研究活動への関与の態様によって、

1) 研究者を補佐し、研究を直接支援する者(研究補助職員)、
2) 主として研究に必要な技術的業務に従事する者(技術支援職員)、
3) 主として研究に関する庶務・会計等に従事する者(事務支援職員)

に大別できる。これらの職員が、大学等の基本的な構成員であり、必要不可欠な人材であることは言うまでもない。

文部省の「研究環境調査」( 第2章第1節2(6)(ア)参照 )の研究支援者に関する調査結果によれば、大学等における常勤の研究補助職員、技術支援職員、事務支援職員は、一人当たり、それぞれ約11人、約9人、約8人の研究者を支援しており、また、非常勤一人当たりでは、約14人、約25人、約13人となっている(1-2-5 )。さらに、研究支援者が不足していると回答した研究者は、全回答者の約70%に達している。

また、科学技術基本計画においては、国立大学等において、研究者一人当たりの研究支援者数がイギリス、ドイツ、フランス並みの約1人となることを目標としつつ、研究者二人当たりの研究支援者数をできるだけ早期に約1人とすることとされている。

このようなことから、文部省では、国立大学等が行う研究プロジェクト等の効果的な促進を図る上で不可欠な研究支援策として、平成9年度において、

1) リサーチ・アシスタント(RA)経費、
2) 研究支援推進経費、
3) 非常勤研究員経費

の大幅な拡充を図った(1-2-4 )。

1-2-5 研究支援職員一人当たりの支援研究者数

1-2-4 研究支援体制の整備


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