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2部   文教施策の動向と展開
第4章  高等教育の改善・充実
第2節  高等教育改革の推進
1  高等教育改革の推進状況


文部省は,「大学等における教育研究の高度化,個性化及び活性化等のための具体的方策について」(文部大臣諮問)検討を進めている大学審議会の諸答申に基づき,高等教育の多様化と制度の弾力化など高等教育改革の推進に積極的に取り組んでいる。


(1) 大学設置基準等の大綱化

我が国の高等教育の枠組みを定める大学設置基準等の諸基準は,高等教育の水準の維持向上に重要な役割を果たしてきた。一方,高等教育が広く普及した現状では,その中から研究指向のもの,教育に力点を置くもの,地域における生涯学習に力を注ぐものなど様々なタイプの高等教育機関が育っていくことが期待される。また,他の先進諸国に伍して新たな世界を切り開いていく立場にある我が国において,今後,各機関が教育研究の多様な発展を図っていく必要がある。そのためには高等教育の枠組みとなる基準は可能な限り緩やかなものとし,その中で各大学等が創意工夫し,個性ある発展を遂げることが望ましいと考えられる。

平成3年2月,大学審議会は,このような観点から,大学設置基準等の諸基準の大綱化・簡素化について答申を行い,文部省は,これを踏まえて平成3年6月に諸基準を次のように大幅に改正した。

1) 各大学・短期大学に開設を義務付けていた一般教育科目,専門教育科目などの授業科目の区分を廃止する。
2) 学生の卒業要件として定められていた各科目区分ごとの最低修得単位数を廃止し,総単位数のみ規定するにとどめる。
3) 必要専任教員数を各科目区分ごとに算定する方式を廃止し,収容定員規模に応じた総数のみを算定する方式とする。また,大学の兼任教員数は,全教員数の半数以下とする制限規定を廃止する。
4) 授業方法別(講義,演習,実験等)に一律に定めていた単位の計算方法を各大学・短期大学の判断で弾力的に定められるよう,また,高い教育効果が期待できる演習等を行いやすくなるよう改める。

また,これに伴い,文部省は平成3年7月,大学設置・学校法人審議会における大学等の設置認可の審査に当たっての基本的な観点をまとめた総則的な審査内規を公表するとともに,大学の水準の維持に配慮した審査を行うことができるよう,審査制度を整備した。


(2) 自己点検・評価システムの導入

高等教育機関が,自ら教育研究活動の活性化を図り,質の向上に努めるとともに,その社会的責任を果たしていくためには,不断の自己点検と改善への努力とを行っていく必要がある。大学審議会は,このような観点から,前述の平成3年2月の答申等において,自己点検・評価システムの導入の必要性を指摘した。文部省は,これに基づく大学設置基準等の改正に当たって,各大学等の自己評価等の努力義務規定を設けた。


(3) 教育研究機能の充実

人材の養成と学術の振興を担う高等教育機関の役割はますます重要となってきている一方,我が国の高等教育の現状に対しては,国際的な比較等から厳しい批判があり,今後,何にもまして教育研究の質的充実に取り組むことが必要となっている。その際,特に重視すべき方向として,平成3年5月の大学審議会答申「平成5年度以降の高等教育の計画的整備について」は,1)教育機能の強化,2)世界的水準の教育研究の推進,3)社会人の学習ニーズへの適切な対応と地域社会への貢献,を提言している(3)については本節「(4)社会人の学習ニーズ等への対応」で記述)。このような観点から,文部省では,平成5年度予算において,種々の措置を講じている。


1) 教育機能の強化

各大学等が教育機能の充実・強化を図るための具体的取組として,先述した平成3年5月の大学審議会答申では,次のことを指摘している。

(ア)今後の高等教育においては,自ら考え,判断させる教育や,社会に出た後も常に新しい知識を獲得し,能力を磨いていけるよう,情報処理能力・外国語能力・表現能力など,学習活動に不可欠な基礎的能力の訓練等が重視される必要があること。
(イ)高等教育の規模が拡大し,多様な学生が学ぶ状況で,学生の学習意欲の向上,学習内容の着実な消化のためには,各大学等における教育プログラムの開発・提供への取組が重要であること。
(ウ)高等教育機関が,その教育機能を十分発揮するためには,各々の教員が教育指導能力,意欲の向上に努めることが基本であり,このため,教員の教授内容・方法の改善・向上への取組や,教員の教育上の業績の適切な評価方法の検討が求められること。
(エ)高等教育における国際化が進展し,外国人留学生の一層の増加が予想される中で,文化的・社会的背景の異なる外国人留学生に配慮した教育の在り方が求められること。また,日本人学生の留学の機会の拡充や帰国後の受入体制の整備等にも努める必要があること。

2) 世界的水準の教育研究の推進

我が国の大学の教育研究費,施設・設備等は,世界的水準の教育研究を支える上では必ずしも十分なものとはなっておらず,各方面からも種々の指摘を受けており,その教育研究環境の改善,質・量両面での整備充実を図ることが急務となっている。


(ア) 教育研究環境の高度化と優秀な人材の確保・育成

我が国の高等教育機関がより高度な教育研究活動を展開していくためには,まず,教育研究費,施設・設備の充実を図ること,教員に優れた人材を確保することが重要である。とりわけ,広く国公私立の大学院の充実が求められ,大学院教育に配慮した教育研究経費や施設・設備費の充実など,基盤的整備を推進するとともに,特に優れた教育研究に対して重点的な支援を行うことが重要である。

また,優れた若手研究者を養成・確保するためには,大学院の教育機能の充実,優秀な大学院学生等に対する支援策の一層の推進を図り,安定して勉学や研究に専念できる環境を用意することが重要である。


(イ) 大学院の量的整備

我が国の大学院は,伝統的に学部,学科組織に基礎を置くものが大多数であり,施設・設備や教員組織は事実上学部に依存している面がある。

また,国際的に見ても学部と比較して極めて小規模である。平成3年11月の大学審議会答申「大学院の量的整備について」は,大学院教育への需要動向として,(a)在学者数については,近年大幅な伸びが見られ,伸びそのものも高まりつつあること,(b)修了者への需要動向については,研究機関等の研究者需要,企業における高度な専門的知識・能力を有する人材の需要,社会人のリカレント教育への需要,(c)留学生受入れの拡大が見込まれること,等の基本的趨勢を指摘し,これらの諸動向や他の先進諸国との比較も考慮すれば,平成12年度時点での我が国の大学院学生数の規模については,社会人の学生及び留学生も含め,全体として少なくとも平成3年時点の2倍程度に拡大することが必要としている。


(4) 社会人の学習ニーズ等への対応

社会全体の学習ニーズが増大している中で,これに適切にこたえるためには,今後の高等教育において,有職者などのいわゆる社会人学生にも配慮した履修形態の柔軟化や多様な学習成果に対する評価の工夫が一層求められるとともに,教育研究の成果を地域社会や住民に積極的に還元していく姿勢が求められるものと考えられる。

このため,文部省では,種々の制度的改善や支援策を講じている。


1) 履修形態の柔軟化

フルタイムによる昼間の学習が困難な社会人等の学習機会を拡充するため,従来から夜間学部制度など,社会人等に配慮した履修の道が開かれていたが,平成3年6月の大学設置基準等の改正により,当該大学の学生以外の者で一部の授業科目のみを履修する者を受け入れて単位を与えることができる「科目等履修生」制度が導入された。これにより,各大学等において,科目登録制(特定の授業科目の単位修得を目的とする学生の受入れ)とコース登録制(コースとして設定された複数の授業科目の単位修得を目的とする学生の受入れ)を設定できるようになった。

また,履修形態の弾力化の一つとして,一部の大学で既に実施されていた昼夜開講制(昼夜にわたって授業を開設し,学生の生活形態に応じた履修を可能にするもの)についても,制度として位置付けた。

さらに,近年,短期大学や高等専門学校を卒業した者が,更に高度の学習機会を求めて,4年制大学への編入学を希望する例が増加していることを受け,大学設置基準を改正し,これらの希望に応じて編入学のための特別の定員枠を設定しやすいようにした。

平成5年5月には,大学審議会大学院部会から,「夜間に教育を行う博士課程について」総会に報告が行われ,社会人の再教育等のニーズに対応するため,博士課程において昼夜開講制及び専ら夜間において教育を行う大学院を開設する道を開くことが提言された。


2) 多様な学習成果に対する評価の工夫

文部省では,従来から,大学・短期大学の間で設けられているいわゆる単位互換制に加え,平成3年6月の大学設置基準の改正により,大学以外の教育施設等での学習成果でも,大学教育にふさわしい内容と水準を持つものについては,大学の判断でこれを評価し,一定の範囲内でその大学の単位として認定する制度を導入した。この制度は,短期大学及び高等専門学校にも導入された。

また,平成3年7月に学位授与機構が創設され,高等教育段階の様々な学習成果を評価することにより,大学,大学院の正規の課程を修了していないが修了者と同等の水準にあると認められる者に学位を授与できるようになった。具体的には,(a)短期大学・高等専門学校卒業者等が大学や学位授与機構の認定する短期大学・高等専門学校の専攻科で一定の学習を行った場合(平成4年4月現在22専攻科を認定),(b)学位授与機構が大学・大学院に相当する教育を行うと認める大学以外の教育施設の課程を修了した場合(平成5年1月現在9課程を認定),の二つがある。

同機構は,平成4年度末までに,この制度に基づき1,819人(学士1,715人,修士81人,博士23人)に学位を授与した。


3) 地域社会への積極的な貢献

各高等教育機関については,地域社会に積極的に貢献することが要請されているが,そのためには,まず各高等教育機関が優れた教育研究の実績を上げ,社会的な評価を一層高めるとともに,地域の文化の中心として,また地域社会の一員として,例えば,公開講座の開設,図書館・運動施設等の開放,地域の諸活動への教員の協カ,地域住民への各種情報提供サービスの実施,地域における産官学の研究協力等を通じ,地域社会に貢献することが期待されている。


(5) 大きく動き始めている大学改革

各大学では,現在,大学設置基準の大綱化等の広範な大学制度改革等を受けた種々の自主的な取組が進められつつあり,前項までに紹介したもののほか,例えば次のような動向が見られるようになっている。

第一に,自己点検・評価については,平成5年1月現在,全大学数の約4分の3に当たる402校(国立大学については全大学)で検討・実施のための全学的体制が整備され,結果を何らかの形で公表している大学が59校となっている。また,東京大学理学部においては,国内外の著名な研究者によるいわゆる外部評価を実施している。これらの結果が各大学の自主的改革に有効に生かされていくことが期待される。なお,(財)大学基準協会は,平成4年に各大学の自主的な取組の際の参考に資するための自己点検・評価の手引書を発行するとともに,平成5年に同協会の加盟大学間の相互評価システムの実施の方向を打ち出している。

第二に,カリキュラム改革については,平成5年4月現在,既に実施しているもの,今後実施予定のもの及び検討中のものを合わせ全大学数の8割を超える437校が着手している。その内容は,各大学の個性や実情により様々であるが,授業科目の区分や配分の見直しにとどまらず,実用的な語学教育や情報処理教育,少人数教育の充実などの例も見られる。さらに,米国の大学で普及しているシラバス(授業計画)の作成・提示による履修指導や学生による授業評価等の例も見られる。

第三に,平成5年4月現在,全大学数の3割強に当たる168校に新たに制度化された科目等履修生制度が導入されている(うち116校に2,119人が在学)ほか,大学以外の教育施設等における学修成果の単位認定制度の導入等も一部の大学で実施されている。

第四に,大学への3年次編入学のための特別の定員枠については,平成4年度には29大学において設定されており,編入学者数は7,728人(昭和61年度の1.7倍)となっている。

第五に,各大学において,公開講座の開設,共同研究の実施など種々の活動を通じた地域貢献に従来以上に目が向けられてきている。また,地方公共団体の代表者や地域の有識者など学外者の意見を聴いて大学運営に生かす仕組みの設定など,地域との連携協力の仕組みを新たに設ける例も見られる。

このように,多面にわたる自主的な改革への動きが従来見られなかったほど高まっている状況であるが,個性豊かな大学づくりに向け,各大学の一層の創意工夫と努力が期待されるところであり,文部省としても最大限の支援に努めていくこととしている。


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