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2部   文教施策の動向と展開
第3章  初等中等教育の改善・充実
第5節  高等学校教育の改革
1  高等学校教育の改革の推進



(1) 高等学校教育の個性化・多様化の必要性

今日高等学校の進学率は96%に達し,生徒の能力・適性,興味・関心,進路等は極めて多様化している。しかし,一方では,現在の高等学校教育は,そのような生徒の実態に十分に対応したものとはなっておらず,画一的な教育課程,偏差値に過度に依存した進路指導,不本意入学や高等学校中途退学などの問題が指摘されている。

このような多様な生徒の実態に対応し,各学校が生徒それぞれの個性を最大限に伸長させるため,生徒の選択の幅をできるかぎり拡大し,多様な特色ある学校づくりを行うことが大切である。

文部省においては,これまで高等学校教育の多様化・個性化を図るため,高等学校における教育課程の基準の弾力化を図ったり,単位制高等学校の創設などの高等学校に関する制度の多様化・弾力化を図ったりするなどの施策を講じてきた。

現在,各都道府県においては,学校全体として国際化や情報化に対応した特色ある教育課程を編成している高等学校,多様な学科を設置して学科間を越えて履修を認める高等学校,大規模校の長所を生かして多様な科目を用意し,生徒の幅広い選択履修を可能としている高等学校,単位制高等学校などの新しいタイプの高等学校が設置されてきている。

今後とも,生徒がそれぞれの個性に応じて学校選択ができるよう,様々なタイプの学校が設置されることが期待される( 2-3-3 )。


(2) 中央教育審議会答申と高等学校教育改革推進の経過

平成3年4月に第14期中央教育審議会から「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」答申が行われた。この答申では,高等学校教育の改革について,生徒の多様な個性や社会の変化に柔軟に対応し,生徒の個性の伸長や学習の選択の幅を拡大するなどの観点から,広範な領域にわたり種々の改善方策の提言がなされた。

2-3-3  新しいタイプの高等学校の例

この答申を受け,文部省としては,平成3年6月に通知を発し,まずこれらの提言のうち各都道府県において早急に取り組むことができる事項,例えば,新しいタイプの高等学校の奨励,単位制の活用による選択中心の教育課程の編成,学校・学科間の移動の促進等については,その実施を指導してきた。

また,文部省では,制度化を図るためには更に専門的な検討を行う必要のある事項について検討を進めるため,平成3年6月に学識経験者からなる「高等学校教育の改革の推進に関する会議」を発足させた。同会議には,専門部会として教育部会と入試部会が設けられ,検討を重ねてきたが,これら専門部会の検討を踏まえ,4次にわたる報告を取りまとめ公表した( 2-3-4 )。

文部省では,これらの報告を受け,その趣旨の実現を図るため,平成5年2月に高等学校の入学者選抜について通知した。また,3月には全日制課程における単位制高等学校の創設,学校間連携,専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定,調査書を用いない高等学校入学者選抜の道の導入など,新制度導入のための関係省令の改正を行うとともに,総合学科についての通知及び省令改正等に関する通達をした。

2-3-4  「高等学校教育の改革の推進に関する会議」の報告

文部省では,平成5年3月に,各都道府県・指定都市の教育委員会,私立学校を主管する知事部局の担当課長・国立学校の校長等を対象とした会議を開催し,これら一連の通知,報告の内容,省令改正の内容等について説明し,指導の徹底を図った。

また,平成5年4月から省内に「高校教育改革推進室」を新設し,高等学校教育改革の推進に向けての国の体制の整備を図っている。


(3) 総合学科の創設
1) 総合学科における教育の特色

明治以来の伝統にならって,昭和23年の新制高等学校発足以来,我が国の後期中等教育は,専ら普通教育を主とする普通科と専門教育を主とする専門学科の二つの学科の下で行われてきたが,現在の高校生の能力・適性,興味・関心,進路等の多様化等を背景として,先の「高等学校教育の改革の推進に関する会議」の報告を踏まえ,平成6年度からは,新たに総合学科が創設されることとなった。

総合学科における大きな教育の特色として,将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視すること,生徒の個性を生かした主体的な学習を通して,学ぶことの楽しさや成就感を体験させる学習が可能となることが挙げられる。

このため総合学科の教育課程は既存の学科の教育課程と比べて次のような特色がある。

第一は,普通科目と専門科目の中から多くの多様な選択科目が開設されることである。すべての高校生が履修する「国語1」や「数学1」等の科目や後述の3科目を除き,生徒は開設科目の中から自己の興味・関心に基づき履修する科目を自由に選択できる。第二は,自己の進路への自覚を深めさせるとともに,将来の職業生活の基礎となる知識・技術等を修得させるために,以下の三つの科目を原則としてすべての生徒に履修させることである。

(ア)『産業社会と人間』企業見学等の様々な体験学習や討論等を通して学習し,自己の生き方在り方について認識を深め,将来の職業選択や職業生活に必要な能力・態度を育てる科目。
(イ)情報に関する基礎的科目コンピュータの活用についての基礎的な知識,技術の修得を図る科目。
(ウ)『課題研究』調査,実験,研究,作品製作等の学習から生徒の興味・関心に基づき課題を設定し,その課題の解決を図る学習を通して,問題解決能力等を育てる科目。高等学校での学習のまとめとして,卒業論文や卒業制作の役割を果たすもの。

2) 総合学科において活用されるべき制度

こうした特色を十分発揮するため,総合学科では,次のような様々な制度を活用することにより教育課程の弾力化を図ることが重要である。

第一は,原則として,卒業時までに所定の単位を修得すれば卒業を認定するという単位制を導入することである。第二は,自校では開設されない分野への学習機会の拡大を図るため,高等学校間の連携を推進することである。第三は,地域の実情や生徒の進路希望等に応じ,専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定を活用することである。


3) 教育条件等の整備

このような特色を持つ総合学科をできるだけ早期に設置するために,文部省としても教職貝定数,施設・設備の整備などへの十分な配慮を行うとともに,学校,保護者を始め大学や企業など広く関係者に対し総合学科に関する理解を深めるよう努めることとしている。


4) 総合学科への期待

総合学科において充実した教育を展開することにより,既存の学校や学科では改革への努力が更に促進され,高等学校教育が全体として生徒の多様な個性に対応できるようになり,学歴社会の弊害の除去や過度の受験競争の緩和にもつながっていくと考えられる。つまり,総合学科には今後の高等学校教育改革のパイオニア的役割が期待されているのである。


(4) 全日制課程における単位制高等学校の設置

単位制高等学校は,学年による教育課程の枠を設けず,かつ学年ごとの進級認定は行わないで,卒業までに所要の単位を修得すれば卒業を認めるものであり,昭和63年度から定時制・通信制課程の一形態として導入されている。さらに,「高等学校教育の改革の推進に関する会議」の第1次報告を受け,平成5年度からは,多様な生徒の個に応じた教育課程の履修を促進し,生徒の選択の幅を拡大するため,全日制課程についても単位制高等学校の設置を可能とした。

全日制課程の単位制高等学校では,従来,定時制・通信制課程の単位制高等学校に認められている学期ごとの入学・卒業,転・編入学の受入れ,過去に在学した高等学校において修得した単位の累積加算などの特例措置が認められている。

単位制高等学校の教育課程の編成に当たっては,その特色を生がし,できるだけ多様な教科・科目を開設し,生徒の選択の幅を拡大するよう配慮するとともに,ガイダンス等の充実が求められる。


(5) 学校間連携などによる選択学習の機会の拡大

文部省では,「高等学校教育の改革の推進に関する会議」の第1次報告を受け,他の高等学校における学習成果の単位認定(学校間連携),専修学校における学習成果の単位認定及び技能審査の成果の単位認定について,平成5年度から実施できるようにした。

その概要は次のとおりである。


1) 他の高等学校における学習成果の単位認定(学校間連携)

選択学習の機会を拡大する観点から,自らの高等学校において生徒の多様な実態に対応した教科・科目の開設が困難な場合,他の高等学校の教科・科目を受講する機会を与え,その学習の成果を自校の教科・科目の単位として認めることができる。


2) 専修学校における学習成果の単位認定

生徒の多様な実態に対応し,選択学習の機会を拡大する観点から,高等学校の校長が教育上有益と認める専修学校における学習については,自校の教育課程に位置付けられている科目の一部の履修として専修学校での履修を認め,その学習の成果を自校の科目の単位の一部として認めることができる。


3) 技能審査の成果の単位認定について

生徒の学習意欲を高め,これからの社会でますます必要となる主体的,創造的な学習態度の育成を図るとともに,優れた能力を一層伸ばす観点から,簿記や珠算等の技能審査に合格し特定の資格等を取得した場合には,成果をその技能審査とのかかわりの深い高等学校の教科,科目の増加単位として認定するものである。

なお,他の高等学校における学習成果の単位認定,専修学校における学習成果の単位認定,技能審査の成果の単位認定の三つの制度により認定できる単位数の合計は,20単位以内である。


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