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1部   文化の振興
第3章  文化財を守り,活かすために
第3節  文化財の保存と活用の推進
6  歴史的集落・町並み


昭和50年の文化財保護法の改正によって伝統的建造物群制度が発足し,城下町,宿場町,門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになった。すなわち,周囲の環境と一体をなして価値を形成する伝統的な建造物群を保護するために,市町村が自ら条例を定め,伝統的建造物群保存地区の範囲の決定,保存事業の実施等を行うことができることとした。そして,国は市町村の申出により,その中の価値の高い地区を重要伝統的建造物群保存地区として選定し,市町村の保存事業への財政的援助や技術的指導を行うという仕組みとし,地方公共団体の自主的な保存意思とそれに基づいた事業の上に,国の選定や援助がなされることになっている。本制度は,従前の文化財保護制度と異なり,伝統的建造物群の保存を主体としながらも,保存地区の生活文化を含む広範な内容を考慮した制度である。したがって,地域の歴史を活かした総合的な文化施策の一つとして位置付けられており,市町村の果たすべき役割は大きいといえよう。

「文化財意識調査」によれば,保護に値する歴史的集落・町並みがあると回答した市町村のうち保存制度を設けている市町村はわずか22.4%にとどまっており,さらに多くの市町村において,制度の導入を検討することか望まれる。また,保存地区決定のために「積極的に働きかけている」と回答した市町村は29.1%であり,今後,市町村において積極的に対応することが望まれる。

重要伝統的建造物群保存地区 倉敷市倉敷川畔(岡山県)


(1) 保存対策調査

歴史的な集落・町並みを保存しようとする場合,その地域が持っている固有の文化的価値や地域特性を把握することが必要である。そのため,保存が望ましい地区の保存対策調査について,市町村を事業主体として国庫補助を行っており,その成果を踏まえて保存計画や地域住民の合意形成が図られている。


(2) 保存条例の制定と保存地区の決定

保存地区の保存のためには,市町村は国の示す標準条例に基づいて保存条例を制定することが必要である。地区の決定は,当該地区が都市計画区域内にある場合は都市計画で,それ以外の区域では保存条例に基づいて決定する。

最近では,歴史的集落・町並みの保存が,潤いのある個性的なまちづくりの手法として定着しつつある。保存地区周辺地域の風致や自然環境の保全,都市の個性的な景観の形成を含めて総合的に対策を講じようとする事例も増えている。


(3) 保存計画の策定と保存の推進

保存計画は,保存地区の保存整備の指針を規定する重要なもので,市町村の保存条例に基づいて定められ,具体的内容は,市町村が当該地区の特性等に応じて策定する。


(4) 重要伝統的建造物群保存地区の選定と保存事業

国は,以上のような措置を講じた市町村から申し出があった場合,同保存地区について,我が国にとって特に価値が高いと認められる地区の全部または一部を,文化財保護審議会の諮問答申を経て重要伝統的建造物群保存地区に選定することができる。

保存地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定した場合,市町村が自ら又は補助事業として行う伝統的建造物等の保存修理,防災施設等の設置や土地・建物等の買い上げに係る事業で特に必要と認められるものについては,国はその経費の一部を補助することができる。

平成5年7月現在,重要伝統的建造物群保存地区に選定されている地区は,23府県の30市町村で35地区(合計面積約1,770ha)あり,約4,800棟の建物等が伝統的建造物として特定されている( 1-3-12 )。選定地区では,保存計画に基づく保存修理事業が進行しており,地域の住環境整備と合わせて歴史を活かしたまちづくりが実践されている。

保存修理事業は,伝統的建造物の保存修理と伝統的建造物以外の建造物を調和したものに改める修景事業とに大別されるが,これまで約1,500棟の建造物の保存修理事業が行われた。

また,防災施設の設置は,保存地区の保存にとって重要である。我が国の伝統的建造物の多くは木造であり,特に火災に弱く,市街地では木造家屋が軒を連ね,農山村では茅葺き民家等が密集しているため,過去において幾度か大火に見舞われた保存地区も少なくない。そのため,早期発見,初期消火のための防火設備の充実を図ることが必要である。

1-3-12  全国重要伝統的建造物群保存地区等一覧

これまで,長野県南木曾町妻篭宿や同県楢川村奈良井,岐阜県白川村荻町,岡山県成羽町吹屋などで消火設備の充実が図られてきた。平成3年度からは,茅葺き民家が密集する福島県下郷町大内宿で総合的な防火施設の整備事業に取り組んでいる。

さらに,保存のために特に必要のある場合に,市町村が主要建物やその敷地を買い上げる事例もあり,地区住民や来訪者のための便益施設として公開活用を図っている。

これらの保存事業の進展により,年々各地区とも伝統的で洗練された美しい町並みが整備されるに従って,最近では歴史を楽しむ生涯学習の場として社会への貢献度も高くなっている。


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