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1部   文化の振興
第3章  文化財を守り,活かすために
第3節  文化財の保存と活用の推進
3  民俗文化財


民俗文化財とは衣食住,生業,信仰,年中行事等に関する風俗慣習,民俗芸能及びこれらに用いられる衣服,器具,家屋その他の物件など,人々力日常生活の中で生み出し,継承してきた有形・無形の伝承で,人々の生活の推移を示すものである。

民俗文化財は,それぞれの地域の風土や社会生活との関係の中で創造され,工夫・改善されて今日まで伝えられてきたもので,それぞれの地域の伝統文化の基層的なものが残存している場合が多く,地域文化の理解,ひいては我が国の伝統文化を理解する上で欠くことのできない文化財として位置付けられている。

しかしながら,これらは人々の生活の一部として伝承され,その間の変形や消長は現在も進みつつあることから,現代のように人々の生活様式が激しく変化しつつある時期における保護措置は,非常な困難を伴うものとなっており,適切な保護が課題となっている。


(1) 有形の民俗文化財
1) 指定

有形の民俗文化財とは,衣食住,生業,信仰,年中行事及び民俗芸能等に用いられる食器,工具,農具,漁具,漁船,家屋などである。国は,国民の日常生活の地方的特徴や時代的推移の傾向を典型的に示すもののうち,重要なものを重要有形民俗文化財に指定して保護を図っている。

衣食住の分野では山村生活用具,積雪期用具など,生業の分野では漁撈用具,焼畑農耕用具など,信仰の分野では富士塚,十三塚などの重要有形民俗文化財をこれまで指定している。平成5年4月15日現在,指定件数は181件である。

有形の民俗文化財は,一定の地域内で普遍的に存在した生活用具の類が多い。これらは,一連の収集として有機的,体系的にまとめられたときに初めて,歴史的変遷,時代的特色,地域的特色,生活階層の特色,職能の様相等を如実に示し,我が国の民俗文化の特徴を理解するための貴重な資料として価値を生じるものである。

近年,文化庁としては,特に,体系的に収集され価値が明かなコレクションの形態を持った有形民俗文化財の指定に努めており,地域の歴史民俗資料館等の関係者に対して,収集活動への指導・助言を積極的に行っている。


2) 保存・活用

有形の民俗文化財の保存のためには,収納,保管のための収蔵施設が必要であり,破損や虫食い,塩,錆などの害を受けているものについては修復・修理が,建築物の場合は修理と防災施設の設置が必要である。

収蔵施設については,これまでに山形県鶴岡市の庄内の米作り用具,岐阜県古川町の飛騨の山樵及び木工用具等92件に関し助成措置を講じて収蔵庫を建設している。また,防災施設についても,岐阜県高山市の高山祭屋台等17件に関して助成措置を講じ,施設を設置している。今後とも,これらの施設を充実していく必要がある。

修理については,これまでに京都府京都市の祇園祭山鉾(函谷鉾,八幡山等),房総半島の漁掃用具等の延べ138件について実施されてきた。

有形の民俗文化財は,地域の博物館や歴史民俗資料館等において展示されるなどして活用されている。特に,歴史民俗資料館においては,地域文化の特色やその歴史的変遷などを示す民俗文化財や歴史資料を保存し,常設展あるいは企画展,特別展などを通じて地域住民に公開している。また,平成5年度からは,指定された生活用具や生産用具などを単に博物館や資料館に保管・陳列して公開するだけでなく,その使用方法や製作の技術などを地域住民に実際に体験してもらい,有形民俗文化財の本来的な意義を認識してもらうための事業や記録作成事業に対して補助を行う「民俗文化財保存活用支援活動補助」を実施している。

重要有形民俗文化財 祇園祭山鉾


(2) 無形の民俗文化財
1) 指定

無形の民俗文化財は,衣食住,生業,信仰,年中行事等に関する風俗慣習及び民俗芸能であるが,国は,これらの無形の民俗文化財のうち特に価値の高いものを重要無形民俗文化財に指定している。

重要無形民俗文化財の指定は,地域の人々がこれを保存し,後世に継承していけるものが対象とされている。生活様式とともに変わる可能性の高いものや,人々の生活,信仰を規制することとなるおそれのある風俗慣習は指定の対象とはなりにくく,民俗芸能や年中行事が対象の中心となっている。平成5年5月末現在,民俗芸能104件,風俗慣習50件,計154件の重要無形民俗文化財が指定されている。

民俗芸能に比べて,風俗慣習については指定の拡充の必要が強く,近年は,芋競べ祭り(滋賀県),お茶講(群馬県)など,従来着手していなかった分野にかかわるものにも指定を行っているが,更なる拡充が求められている。

また,国は,指定された重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財の中から,特に必要のあるものを「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択し,国自ら記録の作成や記録作成のための国庫補助を行っている。平成5年5月末現在の選択件数は436件である。民俗芸能に関するものとしては,吹浦延年(山形県),佐伯燈籠(京都府)などがあり,また,風俗慣習に属するものとしては,木更津中島の梵天立て(千葉県),春日の婿押し(福岡県)などがある。


2) 保存・活用

無形の民俗文化財は,その伝承母体となる人々によって支えられているものであるから,伝承母体そのものが継承され維持されなければならず,後継者の育成が必須の活動となる。

国は,地方公共団体が行う無形の民俗文化財の保存・伝承事業を推進させることを目的として,風俗慣習,民俗芸能に係る資料作成・周知に関する事業及び現地公開・発表会等に関する事業に対して助成を行っている。平成5年度からは,祭礼行事や民俗芸能等に使用する用具や衣装,施設などの修理新調経費について補助を行う「民俗文化財保存活用支援活動補助」を実施し,重要無形民俗文化財の総合的な保存に努めている。

無形の民俗文化財は,本来の時・場所での公開が重要であるが,広く国民一般への啓発,広報も重要である。文化庁でも国民文化祭の中で紹介したり,全国民俗芸能大会に対して補助を行うことなどにより,その周知に努めている。さらに,近年の日本文化に対する国際的な関心の高まりの中で,能,歌舞伎等に限らず,民俗芸能についても,我が国の基層的な文化や国民性を示すものとして,海外での公開の機会が増えている。

近年は,地域における公開活動が地域振興に生かされている事例も多い。平成4年9月に,運輸省,通商産業省,農林水産省,文部省,自治省の5省所管で「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」が施行され,地域の伝統的な芸能や風俗慣習を活用した行事の実施に対する支援措置が講じられるようになった。文化庁としては,本法の施行によって当該地域伝統芸能等の文化財としての本質が損なわれないように配慮するとともに,地域伝統芸能等を活用した行事の実施を通じて,無形の民俗文化財の保護団体の活性化,国民の理解の深まりなど地域伝統芸能の振興,ひいては地域文化の振興を期待している。

無形民俗文化財を伝承し,あるいは後世に残すためには,その全体像についての正確な記録の作成が必要である。国は,重要無形民俗文化財又は記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として指定一選択されたものについて,自ら記録作成を行うほか,地方公共団体等が行う記録作成事業に対して助成している。作成された記録については,現在,文化庁,各都道府県等において保管され,保護行政の基礎資料などとして活用されている。今後は,一般の人々の利用も含め,その公開・活用がさらに進展するよう方策を講じていく必要がある。


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