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1部   文化の振興
第3章  文化財を守り,活かすために
第3節  文化財の保存と活用の推進
2  無形文化財


演劇,音楽,工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いものを無形文化財と言う。無形文化財は,人間の「わざ」そのものであり,具体的にはその「わざ」を体得した個人又は個人の集団によって体現される。このため,無形文化財は常にその内容,形式に変化の可能性を含みながら存在し,また,その保護は「わざ」の体得者を通じて行われるという特性を有している。

そのため,重要無形文化財の指定及び保持者の認定を行い,我が国の伝統的な「わざ」を更に錬磨向上するとともに,伝承者を養成して,当該重要無形文化財を次の世代に継承していく必要がある。


(1) 指定・選択

現在,指定が行われているのは,音楽,舞踊,演劇などの伝統的な芸能及び陶芸,染織,漆芸,金工などの工芸技術の2分野である。数多くの「わざ」の中から,1)芸術的に特に価値のあるもの,2)芸能史や工芸史において特に重要な地位を占めるもの,3)芸術的に価値が高く,又は芸能史・工芸史において重要な地位を占め,かつ,地方的又は流派的特色が際立っているものの三つの面に基準を置いて指定を行っている。現在指定が行われている分野の芸能及び工芸技術以外の技能などの分野の無形の文化財にも指定の範囲を広げることが将来的な課題となっている。

また,重要無形文化財を指定する際には,その重要無形文化財である「わざ」を具現化するために,これを保持する者を認定することになっている。保持者の認定には,「各個認定」,「総合認定」,「保持団体認定」の三つの方式がとられており,それらは 1-3-6 のとおりである。

重要無形文化財の指定に関しては,指定により伝承者の養成,公開,記録の作成等の保護方策が図られることから,指定の分野(種別)におけるバランスを配慮しつつ,その拡大を図るよう努めている。また,伝承者の減少から衰亡の危機に瀕している技芸・技術の分野にも重点的に指定を行っている。

1-3-6  保持者の認定の方式

各個認定は,昭和30年の第一次認定以来,延べ199人の保持者が認定されている。これらの保持者は,一般に「人間国宝」と称されている。

この制度による指定・認定は社会的な評価が定着し,重要無形文化財に関する社会の関心を高め,その保護に大きな成果を収めている。

このほか,重要無形文化財に指定されていないが,我が国の芸能や工芸技術の変遷を知る上で重要であり,記録作成や公開等を行う必要がある無形文化財については,「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」として選択し,国が自ら記録作成したり,地方公共団体が行う記録作成や公開事業に対して助成を行ったりしている。


(2) 伝承者の養成

重要無形文化財の保存には,単に保持者の「わざ」の保存を図るだけでは十分でなく,その「わざ」が人から人へと継承されていくことが重要である。この意味で伝承者の養成は,無形文化財の保存の根幹であり,また,緊急を要するものである。

重要無形文化財 京舞(重要無形文化財保持者 井上八千代)

芸能,工芸技術の各分野では,保持者や保持団体が,独自こ後継者の育成に努めているが,国としてもこれを積極的に奨励するため,昭和39年度から各個認定の保持者(いわゆる「人間国宝」)に対して伝承者の養成と自らの「わざ」の錬磨向上のための特別助成金(平成5年度1人年額200万円)を交付している。また,保持団体,地方公共団体等が行う伝承者養成事業に対してもその経費の一部を助成している。このほか,国立劇場においては,能楽,文楽,歌舞伎等の芸能に関して,それぞれの後継者養成のための研修事業を実施している。


(3) 公開

芸能や工芸技術などの無形文化財の保存においては,常にその時代の人々から広く支持され,国民一般に愛好されることが重要な意味を持っている。無形文化財の公開は,伝統芸能や工芸技術を鑑賞する機会を提供し,国民の理解と認識を深め,愛好者や支持層を広げることに寄与するものである。また,公開それ自体,保持者等の「わざ」の錬磨・研究に結び付き,また,伝承者の養成に資する点で重要な保存の手段となっている。


(4) 国立劇場

昭和41年7月に,我が国の伝統芸能の保存及び振興を目的として特殊法人国立劇場が設立された。同年11月に大・小劇場が開場され,以来,伝統芸能の公開,伝承者の養成,調査研究等の諸事業を行ってきた。

昭和54年には,国立演芸資料館,昭和58年9月には国立能楽堂,昭和59年3月には国立文楽劇場が相次いで開場し,我が国の伝統芸能の総合センターとしての機能を整備してきている。平成2年3月には,芸術文化振興基金の設置に伴い法人の名称を日本芸術文化振興会と改めた。同法人においては,伝統芸能の保存及び振興のため以下の諸事業を実施している。


1) 伝統芸能の公開

国立劇場における伝統芸能の自主公演は,努めて古典伝承のままの姿で,なるべく広く,各種の伝統芸能の演出や技法を尊重しながら,その正しい維持と保存を心掛けつつ行っている。平成4年度は歌舞伎,文楽で22公演を行うなど,これまでに151公演(962回)の自主公演を行った。また,昨今は,若者の間でも,歌舞伎,文楽等の伝統芸能や,三味線音楽などの邦楽に対する関心が高まってきており,国立劇場では,学生を主な対象とした「歌舞伎鑑賞教室」などの企画を設け,その理解と認識の定着を図っている。


2) 伝統芸能伝承者の養成

伝統芸能伝承者の養成は,歌舞伎俳優を昭和45年度,竹本を50年度,鳴物を56年度,文楽を47年度,寄席囃子を54年度,能楽を59年度からそれぞれ行っている。平成4年度においては,竹本第12期研修生2人,寄席囃子第8期研修生6人,能楽第3期研修生(初心者対象)4人,能楽第2期既成者研修生(既に初心者研修を受けた者対象)5人の研修修了生を出すなど,伝統芸能の保存伝承事業を行った。なお,平成4年度末現在,研修修了生がこれらの伝統芸能伝承者に占める割合は,全体で約18%(820人中147人)となっている。


3) 伝統芸能等の調査研究

伝統芸能の保存,振興の一環として,その純正な形態による公開を行うため,演出・演技の向上に資する各種の調査研究を行っている。上演資料の刊行,録画・録音,写真等による公演記録の作成,各種文献資料の復刻,演劇書の索引を始めとする目録類の作成を行っている。


4) 伝統芸能等に関する資料の収集

伝統芸能等に関する資料については,自主公演に関する視聴覚資料を始め,各種芸能資料を収集している。また,図書館,視聴覚室,資料展示室の常時公開,公演記録及び自主製作フィルムの映画会,公開講座などを定期的に開催している。


5) その他

伝統芸能の保存及び振興を目的とする事業等に対して劇場施設(大劇場,小劇場,演芸場,能楽堂,文楽劇場,稽古室等)を利用に供している。


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