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1部   文化の振興
第1章  文化をより豊かにするために
第1節  文化振興への期待の高まりと文化政策
4  これからの文化政策の方向



(1) 文化を育てる政策の充実

文化行政は,かつてそれぞれの分野で個別的な対応がなされ,総括して取り扱われるようになったのは戦後になってからである。芸術文化関係と文化財関係を含めた―体的な対応を行うものとして認識し体制の上でも形が整ったのは,昭和43年に文化庁が創設されて以降である。我が国全体としての文化政策については,これまでも検討し議論されてきたところではあるが,今後,政策の方向や各種振興手段等を―層明確にしつつ,その内容を充実していく必要がある。

また,各種の文化関係施策を国全体として展開していく上で,今後,さらに国と地方の文化振興の推進体制を整備していく必要がある。そのため,文化振興の基本方針を明らかにし,政策的な調査審議機能の充実を図るとともに,国・地方を通じた組織体制の整備を図っていく必要がある。


(2) 文化を育てる予算や税制の充実

文化関係予算は,国・地方のいずれについても昭和50年代後半以降の厳しい財政事情の下で伸び悩んでいたが,近年,増加の傾向に転じるようになってきている。しかしながら,文化に対する国民の期待が高まっている中で,今後とも,文化振興に必要な予算の充実に向けて努力していく必要がある。

また,近年,国における芸術文化振興基金の創設や地方での芸術文化振興のための基金の設立が行われるとともに,社会貢献意欲の高まりを背景として,民間企業等が芸術文化活動に対する支援を活発に行うようになってきており,「メセナ活動」という言葉がもはや目新しいものではなくなってきている。これらの動きの―層の盛り上がりに向けて,文化に関する民間企業等の理解の増進に努めるとともに,企業等の積極的支援の方向を―層助長するため,さらに税制上の優遇措置の活用等を図っていく必要がある。


(3) 芸術を創造する活動への支援

芸術活動は文化の精華とも言うべきものであり,文化の水準と創造性の高さを最も端的に示すものである。したがって,芸術水準の向上をなお―層図るため,民間の中核的な芸術団体を中心とする自由で創造的な活動について,公的に支援していくことは,文化政策を推進していく上で重要な柱となるものである。特に,採算の取り難い意欲的かつ大型の公演等については特段の配慮を行っていく必要がある。

また,芸術創造については,芸術活動に対する財政的援助に加え,人材育成や創造の場の整備など,その基盤整備について,従来以上に国の積極的支援が求められるようになってきている。このため,芸術家へのフェローシップ提供の充実やアートマネージメントに係る人材を養成すること及び現代舞台芸術のための施設としての第二国立劇場(仮称)を設立することが重要な課題となっている。さらに,優れた美術作品の収集,公開等に係る中核的施設としての国立美術館について,その―層の整備に努める必要がある。


(4) 地域の芸術文化活動の振興

日常レベルでの文化活動への参加機会の増大とともに,地域に継承されてきた有形,無形の伝統文化を再確認し,あるいは地域に根ざした新たな芸術文化活動をおこすなど文化的側面に大きな比重をかけた地域振興施策が展開されている。各地方公共団体においても,こうした傾向を助長し,地域の生活環境を整備していく施策の中核に文化を据えるようにしていくことが必要である。

近年,地域における芸術文化活動の拠点として,公立文化会館,公私立美術館等の整備が進んできている。今後は,これらに加え専門的機能を持つ施設の整備の―層の促進を図るとともに,施設運営や文化活動支援といったソフトの分野での充実が必要である。また,「地方拠点都市文化推進事業」 (第1部第2章第2節2(3)参照) 等の推進など,地域における総合的な文化拠点を整備するための積極的な支援が必要である。さらに,文化面での地域格差を是正し優れた芸術の鑑賞機会を各地に広げていくため,地域において鑑賞の機会の少ない舞台芸術や,優れた美術作品等を巡回公演・展示する事業,「国民文化祭」等の地方開催事業を―層推進していくことが必要である。


(5) 生活に密着した文化の振興

文化政策を推進する際,生活そのものに密着した観点から,幅広く文化をとらえ,いわゆる生活文化の振興を図っていくことが求められるようになってきている。

生活文化とは,例えば,それぞれの家庭や地域社会などの生活の場における各種の行事,用具,食文化など,人が生活するに当たって限られた時間・空間・ものを使って織りなす暮らしのスタイルとでも言うべきものである。

生活文化の継承と創造の主役は,その主体である―人―人の個人やその集積としての家庭,地域社会,職場であるが,その展開の場は,さらに国民生活全体や国際社会をも視野に入れて考える必要がある。

生活文化行政の役割は,こうした生活文化の担い手の主体性,自発性を尊重しつつ,必要に応じてその活動を側面から支援し,奨励することであり,人材の発掘・養成,組織づくり等を始めとする生活文化振興のための諸施策を推進していく必要がある。


(6) 国語に関する施策の推進

社会状況の移り変わりとそれに伴う人々の言語意識の変化に応じて,言葉も変化するなど,時代の変遷とともに国語は変化するが,国語施策もこれに適切に対応していかなければならない。平成5年6月に,国語審議会は「現代の国語をめぐる諸問題について」とする報告を文部大臣に提出したが,この報告で提起された諸問題については,平成5年11月に発足予定の第20期以降の国語審議会において具体的な審議を行うこととしている。

また,近年,国際交流の進展により,国内外において日本語学習熱が高まるとともに,その学習目的も多様化している。このような状況に対応して,日本語教育の充実向上の基本となる教育内容・方法の改善充実を始め,日本語教員の養成,日本語教授法・教材の研究開発,日本語教育施設の質的向上,外国人日本語能力試験の実施等,基盤体制の整備充実に努める必要がある。


(7) 著作権に関する制度の充実

著作権制度については,情報伝達技術の発達により著作物等の新しい利用形態が生じること,社会経済情勢の変化及び著作権保護をめぐる国際的な動向等を考慮して,権利者と利用者の適切な関係を構築していくことが重要である。従来より,国民の著作権保護の意識を―層高めるための普及・啓発事業とともに,近年の技術革新等による新しい著作物利用手段の発展,普及などに対応した著作権制度の整備改善に努めてきているが,今後ともその―層の充実を図る必要がある。


(8) 宗務行政の推進

宗務行政については,宗教法人の規則等の認証,都道府県における認証事務に対する指導,宗教法人の管理運営の適正化を図るための研修会等を実施するとともに,宗教法人情報の整備を進めてきている。今後ともこれらの充実を図り,宗教法人の管理運営の―層の適正化を図る必要がある。


(9) 文化財の保存と活用

現行の文化財保護法の制度は,国民に広く定着してきているが,その間,国民の伝統文化への志向が大きく高まるとともに,産業構造の変化,国土開発の進展,国際交流・協力の要請など新たに対応を図るべき課題も生じてきている。

このような状況の下で,平成4年に発足した文化財保護審議会の文化財保護企画特別委員会においては,平成5年4月,これまでの議論を整理し,審議経過報告を取りまとめ,文化財保護審議会に報告した。この報告の主な内容は,次のとおりである。

1) 重点主義・厳選主義のため,指定されていない文化財(いわゆる裾野部分)への保護措置の拡大や,現在指定対象とされていない分野についての保護対象の拡大,あるいは,文化財の種類の枠を超えた総合的・―体的な保護措置の導入や,指定制度を補完するいわゆる登録制度の導入,埋蔵文化財制度の充実などについての検討の必要性
2) 文化財に関する学習活動の充実,後継者等人材の確保などの文化財の保存伝承基盤の充実
3) 国立博物館の整備等の文化財公開施設の整備,史跡の整備,地域活性化施策等との調整・連携,文化財情報システムの構築などの文化財の活用の推進
4) 伝統文化の海外紹介事業,博物館等相互間の国際交流,世界的文化遺産や在外日本古美術品の保護などの文化財の国際交流・協力の推進
5) 地方公共団体の役割の増大,国と地方の連携の強化,国の文化財保護行政機能の強化などの文化財保護行政の体系化と機能の強化この審議経過報告及び今後予定されている同委員会の最終的な報告を踏まえ,制度上の措置を含め必要な施策を講じることにより,文化財の保存と活用の―層の充実を図っていくことが必要である。

(10) 文化に関する情報システムの整備

国民の文化に対する関心の高まりを反映して,国民の文化活動も―段と多様化し,活発に行われるようになってきている。文化振興施策の推進に当たっては,これに適切にこたえるために,文化に関する各種の情報を活用することが不可欠の要件となっている。このため,文化活動の指導者・団体等に関する情報や美術館の所蔵品及び展示に関する情報,さらには舞台芸術に関する情報等のデータベース化を図り,文化行政担当者や専門家を始め,広く国民―般に迅速に提供できる体制を整備し,国,地方公共団体,文化施設,文化団体等が相互に協力するネットワークの形成を図ることが求められている。

文化財については,全国的規模で多種多様なものが多数存在している。このため,増大する研究上,学習上の各種需要に的確に対応するためには,全国的な情報ネットワークを確立し,文化財に関する情報収集,提供を効率的に行うことにより,文化財保護のための調査研究及び保存・活用のための諸施策に役立てる必要がある。このことは,文化財研究所や埋蔵文化財センター等の文化財に関する教育研究の円滑な遂行のために必要なものであることは言うまでもない。さらに,博物館や歴史民俗資料館等の利用者の要求の多様化や人文科学分野における学術研究の高度化・学際化に伴う実物資料への関心の高まりに的確に対応するためにも重要であり,今後とも,全国的な文化財情報システムの整備を着実に進めていく必要がある。


(11) 文化の国際的な交流や協力の推進
1) 国際的な視野に立った芸術活動の展開我が国の芸術は,多くの分野で多彩な発展を遂げつつある。今後は国際的な視野において芸術活動を展開し,海外の芸術家と相互に触発し合いながら,日本文化の伝統の上に新たな創造的活動を発展させることが求められている。このため,我が国の芸術家が海外の芸術家と競い合い,国際的な評価の中で芸術活動を積極的に展開できるよう必要な条件の―層の整備充実を図っていく必要がある。とりわけ,国際フェスティバルへの参加等我が国の芸術を積極的に海外に向けて発信していくことが重要である。また,第二国立劇場(仮称)の設立や外国人芸術家の招へいなど,国際的な芸術活動が展開される条件や基盤を整備することも必要である。
2) 文化財保護に関する国際交流・協力の推進人類の共有財産である文化財の科学的な保存修復技術の研究開発とその実践の分野における国際的な交流・協力は,この分野における我が国の技術水準の向上に有益である。また,このことは,今後,我が国が国際社会で文化の分野において貢献をするためにも,極めて重要である。

さらに,海外にある数多くの日本の古美術品の保存修復についても,支援をすることが求められている。このため,文化財の保存修復に関する専門家の派遣・招へい,共同研究など,この分野での国際的な交流・協力を―層推進する必要がある。


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