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1部   生涯学習の現状と課題
第3章  社会教育の新たな展開
第3節  家庭・地域の教育機能の活性化
1  家庭教育の充実


家庭教育は,親又はそれに代わる者が子に対して行う教育であり,子どもの人間形成上重要な役割を担っている。

 親の子どもに対する教育の悩みや不安等については,例えば,昭和61年度の「家族・家庭に関する世論調査」(総理府)によれば,「子どもに対する悩みや不安がある」と答えた親は50.4%に達し,その内容も 1-24 のとおり非常に多岐にわたっており,親は子どもに対する様々な悩みを持っている。

1-24  子どもに対する悩みや不安の内容

このような状況の中で,親等が家庭教育の重要性を認識し,自らの役割や責任を自覚することはもとより,教育行政においても,親等の家庭教育を支援するとともに学校や地域と連携して家庭教育を充実させる方策を講じる必要がある。行政が私的な家庭教育に関与することについては慎重でなければならないが,国や地方公共団体は,このような家庭教育の重要性にかんがみ,学習機会や情報資料の提供等を行っている。


(1) 親等の学習機会の拡充

親等の学習機会として最も広く行われているのは家庭教育学級であり,市町村教育委員会,PTA等が中心になって行っている。

 これは,一定期間にわたって,計画的,継続的かつ集団的に行うものであり,国は,親等の家庭教育に関する学習を奨励するため,市町村教育委員会の行う家庭教育学級に対して昭和39年度から補助を行っている。この学級の開設状況は, 1-25 に示すように年々増加してきており,昭和39年度には8,323学級であったが,61年度には3倍強の2万6,341学級が開設され,約170万人が参加している。近年,特に,PTAが積極的に家庭教育学級を実施しており,全体の1割強を占めている。このほか,市町村長部局や幼稚園,保育所などにおいても家庭教育に関する学習が推進されている。

1-25  開設者別家庭教育学級開設数の推移

開設場所は,公民館,小・中学校,幼稚園,保育所,更には企業の中で行われているものもある。その学習内容は,子どもの心理的・身体的発達,基本的生活習慣の形成,家族の人間関係,親の態度・役割,妊娠・出産の基礎知識,学校教育との連携など,幅広く取り上げられている。

なお,これらの学級の参加者は圧倒的に女性が多く,今後は父親の積極的な参加を図るための工夫が望まれる。昭和61年度における男性の参加者数は全体の14.5%,父親を対象として開設された学級は全体の2.0%である。また夜間,土・日曜田こ開設した学級は約5,900(22.5%),託児を伴った学級は約1,600(6.1%)である。

近年,乳幼児に関する悩みや育児不安を持つ親が増加する傾向にあることから,文部省では,市町村教育委員会が行う従来の家庭教育学級の中に,昭和50年度から乳幼児期の子どもを持つ親を対象とした「乳幼児学級」,56年度から新婚,妊娠期のこれから親になる男女を対象とした「明日の親のための学級」の開設を奨励している。また,働く母親の増加にかんがみ,昭和61年度からは共働き家庭を対象とした「働く親のための学級」を開設するよう奨励している。今後は,性や登校拒否など多くの課題を抱える思春期の子どもを持つ親を対象とする学級の開設を推進していく必要がある。


(2) 情報の提供と相談事業

国や地方公共団体では,家庭教育学級等の学習機会を提供するほか,家庭教育に関する情報・資料の提供,育児に関する親の悩みに対応するため,家庭教育相談事業等を実施している。

文部省では,情報・資料の提供として,社会教育関係者が家庭教育学級等の事業を企画,実施する上での参考に資するため,昭和58年度から家庭教育資料「現代の家庭教育」を作成・配布している。これは,家庭教育上の諸問題を多角的に検討し,子どもの発達段階の特徴や親が配慮しなければならないことなどをまとめたもので,これまでに「乳幼児期編」,「小学校低・中学年期編」を刊行している。なお,現在「小学校高学年・中学校期編」を作成中である。

さらに,マスメディアを活用した家庭教育に関する学習情報を提供するため,昭和45年から(財)民間放送教育協会に家庭教育テレビ番組「親の目子の目」の制作,放送を委託している。全国民放32社が分担して制作し,全国ネットワークにより放送されているが,昭和62年度は「親は子に何を伝えるか〜子どものメッセージを受けとめて〜」という年間テーマの下に,例えば,「ふるさと・音楽・愛一音楽は何を伝えるのか」(南海放送),「おばあちゃん奮戦記一宝谷の家族」(山形放送),「まさる・8歳の夢-父親の存在観」(南日本放送),「単身赴任の父から……子へ一親は子に何を伝えるか」(テレビ朝日)など51本が制作,放送された。この放送による情報提供は,家庭教育学級等に参加できない人たちはもとより,家庭教育学級やグループ学習等の学習教材として活用されており,親等の学習内容を高める役割を果たしている。

また,地方公共団体においては,親の育児不安や悩みにこたえるため,専門家の協力を得て,電話,郵便,巡回等による相談事業や家庭教育資料の作成・配布,テレビ番組の制作,放送などの情報提供事業が行われている。

文部省は,都道府県教育委員会が行う「家庭教育(幼児期)相談事業」と「家庭教育総合推進事業」に対して補助を行っている。まず,「家庭教育(幼児期)相談事業」は,幼児を持つ親を対象とした事業で,家庭教育上のヒントとなる内容を取り上げたはがきによる通信のほか,医学,教育学,心理学等の専門家が県内を巡回しながら,親の個別の相談に応じている。そして,これら,はがきの返信,巡回相談の中から重要な内容,注意点などを取り上げ,テレビ放送を通じてフォローアップを図るなど親に対するきめ細かな事業を行っている。次に,「家庭教育総合推進事業」は,教育学,心理学,社会学等の専門家による企画推進委員会を組織し,県下の家庭教育上の当面する諸問題に対処し,総合的な視点から家庭教育の充実方策を推進する事業である。主な内容は,家庭教育指導資料の作成・配布,少年期の子どもを持つ親を対象とした家庭教育電話相談の実施,更には,地域の家庭教育学級等の指導者を対象とした家庭教育指導者研究協議会の開催などである。

このほか,県独自で行っている事業として,例えば岩手県等では,新聞,リーフレット,テレビ放送等による家庭教育「親子ふれあい」促進事業を,愛知県等では,家庭教育相談員設置事業などを行っている。


(3) PTA活動,家庭教育地域交流事業等
PTA活動,家庭教育地域交流事業等

子どもが,心身ともに健やかにたくましく成長を遂げていくためには,遊びや近隣社会の持つ日常的な教育機能が重要な役割を持っている。近年,都市化,地域社会の変化等により地域の教育機能は低下しており,親等が身近に気軽に育児についての情報交換や相互扶助を行う場が不足している。このため,地域における親等の交流を深め,家庭と地域の教育機能の活性化を図っていく必要が生じている。

これまで,これらの活動を担ってきたのは,PTAや婦人団体,家庭教育振興団体,青少年健全育成団体等であり,特にPTAは,その中心的な役割を果たしてきたと言えよう。PTAは,戦後新しく発足したものであり,親と教師の自主的な参加の下に,学校及び家庭における教育の理解と振興,地域の教育環境の改善などに関する幅広い活動を展開しており,現在,その団体数は約5万,会員数は約2,000万人となっている。

文部省は,PTAの全国組織が行う大会や研究協議会等の事業に助成するとともに,市町村教育委員会が行う青少年健全育成・環境浄化PTA活動など,PTA活動の充実,発展を図るための事業に対して援助を行っている。

また,臨時教育審議会では,家庭と地域の教育力の回復を図るための方策として「新井戸端会議」の推進を提言した。文部省は,これを受けて地域住民による教育環境醸成の一助となるよう,市町村が行う「家庭教育地域交流事業」に対して昭和62年度から補助している。これは,高齢者等の人材活用,親子教室,近隣グループ活動,家庭教育地域交流集会の実施を事業内容としている。


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