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第5章   大 学
第7節  学術振興 まえがき
1  研究費の現状
a.  科学研究費


基礎科学の研究は、応用科学を通じ生産技術展開の基礎をなすもので、その振興は、主として文部省の責任に属 するものであるが、特に基礎的研究に支出されるものとして、文部省所管に科学研究費がある。この研究費は、 古く大正年間に有した科学研究奨励金に源を発したものであるが、昭和14年、当時準戦時体制下科学封鎖の危機 に際して今日の名称で計算され、その後幾多の変遷を経て、今口にいたつたもので、その推移は次のとおりであ る。

第126表 創設以來文部省科学研究費

上記の表によれば科学研究費は、戦前では昭和14年度が飛躍的に増加し、ふたたび19年度に至り増し、23年度― 躍2億円台を越え、27・8年度増額されてでいる。試みにこれを昭和16年度において、基礎的科学研究に対し、支 出された国庫補助金と対比すれば、当時の国庫補助金は、文部省科学研究費交付金5,000千円同自然科学奨励散150日本学術振興会研究費1,693計6,843となり、これを物価指数により27年度に引き直すと、その総額は、約11億1千万円となり、現在よりはるかに高額であつたことが知られ る。また、当時は、民間学術奨励団体の基礎的研究に対する補助も相当額に達しており、それらを合すると約15 億程度に達すると推定され、28年度の約2倍に当つていたのである。すなわち、当時の研究活働に復元するだけで も、その程度の予算が必要となるのであつて、学術会議は、科学研究費昭和28年度14億7千万円の計上を要望した のである。

次に、科学研究費の1項目「科学研究失費交付金」を一例として検討すれば昭和27年度予算額を、物価指数により 換算すれば昭和14年度の約2分の1.昭和17年度の約5分の2・昭和19年度の約8分の1はしか相当しないことになり、 この事情が、交付すべき対象と、交付金額の決定とに種々の困難をひき起していることは、昭和27年度の次の例 からも明らかに察知できる。

1 総合研究のための研究費120,000千円(☆多数の研究者が、組織的にして研究/する重要な研究課題に対して交 付する☆)申請650件に対し、交付されたものは278件・40%程度に過ぎず、交付金額は1件当り平均約42万円で、申 請金額の平均の4分の1程度である。しかも、大体、1件当り12人平均の研究者が共同しているから、1人当りの金 額は約4万円に過ぎない。
2 各個研究のための研究費150,000千円(☆1人または2・3人程度の小人数で/行う重要な研究に対して交付する☆ )交付された件数は、l,008件中2,263件,約3分の1で、交付金額の平均は、1件当り6万6千円・要求金額の4分の1に 過ぎない。
3 機関研究のための研究費 70,000千円(☆大学まては研究所が各々その特色を生/かすような大規模の研究に交 付する☆)申請件数は231件・金額は12章円余に達したが、そのうちわずか17件が選ばれた。

科学試験研究費補助金・研究成果刊行費補助金等いずれも予算額の不足に悩んでいるのは、科学研究費交付金の 場合と同様で、優秀な成果を期待できる研究でありながら、割愛しなければならないものも毎年相百数に上り、 その多くは、資金額のため着手すらできない状況にある。

しかるに、他面、科学の進歩は、専門化と総合化と相伴つて、多くの新しい研究分野を生み、過去になかつた新 しい研究設備を必要とするにいたり、かつその規模も大きくなる傾向にあり、また多数の研究者が共同する総合 研究の必要性が高まり、従来は窒内での研究活動を主としていた人文科学の一部においても直接社会の実態を調 査する必要が多くなり、研究費は、従来に比し、いちじるしく多額を要するようになつてきた。さらに、研究者 の数も急激に増加し、したがつて研究費の補助対象もそれに伴つて増加してきた。

科学研究費の増額は、いまや一つの国家的課題となりつゝあるのはた然なことといえよう。

ちなみに、この種の経費をアメリカと対比すれば、次の通りである。

第127表 研究補助金の日米比較

アメリカの国家予算の総額は、日本のそれの約26信であるのに、科学振興経費においては62倍・研究補助金にお いては実に230に及んでいる。

なお、昭和26年度(1951年度)における科学技術振興経費が国家予算に対する割合を比較すると、アメリカは2.72% ・日本は1.28%であり、また国民所得に対しては、アメリカは0.47%・日本は0.18%ときわめて低いのである。


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