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第4章 初等中等教育の充実

総論

 教育は,子供たち一人一人の人格の完成を目指すものであり,子供たちが将来にわたって幸福な生活を営んでいく上で不可欠です。また,将来この国や社会を担っていく人材を育てていくという使命もあり,このような教育の重要性はどのような時代にあっても変わることはありません。特に,昨今では,グローバル化や知識基盤社会の到来,少子高齢化の進展など,社会が急速な変化を遂げており,教育の重要性はますます高まっています。
 このような時代の中で子供たちへの教育を一層充実していくよう,文部科学省では,教育機会の確保や教育水準の維持向上のため,学習指導要領が目指す教育の実現,科学技術系人材を育成するための理数教育の推進,グローバル人材の育成に向けた教育の充実,キャリア教育・職業教育の推進,高等学校教育改革の推進,教科書の充実,いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応,道徳教育の充実,人権教育の推進,子供の健康と安全の確保,きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員の資質能力向上や指導体制の整備,生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興,障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育の推進,地方教育行政の在り方と地域とともにある学校づくり及び幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実など,様々な施策を実施しています。

第1節 学習指導要領が目指す教育の実現

 学習指導要領は,子供たちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするために,学校が編成する教育課程の大綱的基準として,国が学校教育法等に基づいて定めるものです。これまで,おおむね10年ごとに改訂してきています。現行の学習指導要領では,「確かな学力」,「豊かな心」,「健やかな体」の知・徳・体のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指しています。

1 新学習指導要領について

 近年,情報技術の飛躍的な進化等を背景とした人工知能(AI)の急速な進化やグローバル化の進展などに伴い,社会の変化は加速度を増し,複雑で予測困難となってきています。そのような社会の中で,子供たち一人一人が,直面する様々な変化を柔軟に受け止め,感性を豊かに働かせながらどのような未来を創っていくのか,どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え,予測できない変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,その過程を通して,自らの可能性を発揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが必要です。
 このような時代において,子供たちが未来を切り拓(ひら)くために必要な資質・能力を確実に育成するため,平成29年3月に幼稚園教育要領及び小・中学校学習指導要領を,30年3月に高等学校学習指導要領を改訂しました。

(1)改訂のスケジュール

 学習指導要領改訂に向けては,平成26年11月に文部科学大臣から「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問が行われたことを受け,中央教育審議会において議論を重ね,28年12月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を取りまとめました。本答申の内容を踏まえ,29年3月には新しい幼稚園教育要領及び小・中学校学習指導要領が,30年3月には新しい高等学校学習指導要領が公示されました。また,特別支援学校幼稚部教育要領,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領は29年4月に公示されました。特別支援学校高等部学習指導要領についても現在改訂に向けた作業を進めているところです。
 幼稚園では,周知・徹底期間を経て,平成30年度から全面実施されます。
 小・中学校では,周知・徹底期間を経て,平成30年度から移行期間が始まります。移行期間中においては,円滑な移行のため内容の一部を加える等の特例を設けるとともに,教科書等の対応を要しない場合などには,積極的に新学習指導要領による取組ができるようにしています。また,小学校の新学習指導要領において,小学校3年生から6年生で外国語科及び外国語活動の標準授業時数が増加することを踏まえて,標準授業時数に関する特例も設けています。
 今後は,教科書の作成・検定・採択・供給等を経て,平成32年度から小学校より順次,新学習指導要領を実施することとしています。

 図表2‐4‐1 学習指導要領改訂に関するスケジュール

(2)改訂の基本的な考え方

 新学習指導要領では,教育基本法,学校教育法などを踏まえ,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活(い)かし,子供たちが未来社会を切り拓(ひら)くための資質・能力を一層確実に育成することを目指します。その際,子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に開かれた教育課程」を重視しています。
 また,知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を更に高め,確かな学力を育成することとしています。
 加えて,先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな心や健やかな体を育成することとしています。

(3)知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」

1.「何ができるようになるか」を明確化

 知・徳・体にわたる「生きる力」を子供たちに育むため,「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していけるよう,全ての教科等を,1.知識及び技能,2.思考力,判断力,表現力等,3.学びに向かう力,人間性等の三つの柱で再整理しています。
 例えば,中学校理科の生命領域においては,前述の三つの柱に沿って,1.生物の体のつくりと働き,生命の連続性などについて理解させるとともに,2.観察,実験など科学的に探究する活動を通して,生物の多様性に気付くとともに規則性を見いだしたり表現したりする力を養い,3.科学的に探究しようとする態度や生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養うことを目標としています。

2.我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善

 我が国のこれまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化により,子供たちの知識の理解の質の向上を図り,これからの時代に求められる資質・能力を育んでいくことが重要です。
 小・中学校においては,これまでと全く異なる指導方法を導入するということではなく,地域や学校によっては年齢構成の不均衡により,30代,40代の教員の数が少なくなっている中,これまでの教育実践の蓄積を若手教員にもしっかり引き継ぎつつ,授業を工夫・改善する必要があります。
 学校における喫緊の課題に対応するため,平成29年3月に「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」が改正されました。これにより,16年ぶりの計画的な教職員定数の改善が図られています。教員が授業準備などを行う時間や子供と向き合う時間を確保するための条件整備や「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」の策定などによる業務負担の軽減などを一層推進しました。
 また,既に行われている優れた教育実践の教材,指導案などを集約・共有化し,各種研修や授業研究,授業準備での活用のために提供するなどの支援の充実も図ることとしています。

(4)各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立

 教科等の目標や内容を見渡し,特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等)や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには,教科等横断的な学習を充実する必要があります。また,「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善においては,単元など数コマ程度の授業のまとまりの中で,習得・活用・探究のバランスを工夫することが重要です。
 そのため,学校全体として,教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的体制の確保,実施状況に基づく改善などを通して,教育課程に基づく教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを確立することを目指します。

(5)教育内容の主な改善事項

1.言語能力の確実な育成

 言葉は,学校という場において子供が行う学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものです。したがって,言語能力の向上は,学校における学びの質や,教育課程全体における資質・能力の育成の在り方に関わる課題であり,文章で表された情報の的確な理解に課題があると指摘される中,ますます重視していく必要があります。現行学習指導要領では,児童生徒一人一人の思考力・判断力・表現力等を育むために,国語科をはじめ各教科等で記録,説明,要約,論述,話合いなどの言語活動の充実を図っています。新学習指導要領においても,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,発達の段階に応じた語彙いの確実な習得や,情報を正確に理解し適切に表現する力の育成など,言語能力の確実な育成を進めることとしています。

2.理数教育の充実

 次代を担う科学技術系人材の育成や国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上を図るため,理数好きな子供の裾野の拡大や子供の才能を見いだし伸ばしていくことが重要です。現行学習指導要領では,算数・数学,理科の授業時数や内容が充実され,観察・実験などの充実を図っています。新学習指導要領においては,育成を目指す資質・能力を明確化し,日常生活等から問題を見いだす活動や見通しを持った観察・実験などの充実により更に学習の質を向上させることとしています。

3.伝統や文化に関する教育の充実

 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国や郷土の伝統や文化を受け止め,その良さを継承・発展させるための教育を充実することが必要です。このため,新学習指導要領においては,我が国の言語文化,県内の主な文化財や年中行事の理解,我が国や郷土の音楽,和楽器,武道,和食や和服などの指導を通して,我が国の伝統や文化についての理解を深める学習の充実を図っています。

4.道徳教育の充実

 学校教育では,調和のとれた人間の育成を目指して,子供たちの発達段階に応じた道徳教育を展開することとしています。
 小学校では平成30年度,中学校では31年度から「特別の教科 道徳」が全面実施されます。高等学校では,30年3月に公示した新学習指導要領において,校長のリーダーシップの下,道徳教育推進教師を中心に,全ての教師が協力して道徳教育を展開することを新たに規定するとともに,公民の「公共」,「倫理」,特別活動が,人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることを明記しました。
 これを見据え,文部科学省では,各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため,研修の実施や地域教材の作成など,各学校や地方公共団体等の多様な取組を支援するとともに,映像資料等を紹介する「道徳教育アーカイブ」の内容の充実を図っています。

5.体験活動の充実

 生命や自然を大切にする心や他を思いやる優しさ,社会性,規範意識などを育てるため,学校において,自然体験活動や集団宿泊体験,奉仕体験活動といった様々な体験活動を行うことは極めて有意義です。現行学習指導要領では,自然や文化などに親しむとともに,人間関係などの集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験等を行うために,特別活動の時間等において,体験活動の充実を図っています。新学習指導要領においても,生命の有限性や自然の大切さなどを実感するための体験活動の充実や自然の中での集団体験活動,職場体験を重視するといった体験活動の充実を進めることとしています。

6.外国語教育の充実

 グローバル化が急速に進展する中で,外国語によるコミュニケーション能力は,これまでのように一部の業種や職種だけではなく,生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され,その能力の向上が課題となっています。現行学習指導要領では,外国語を通して,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や,情報や考えなどを理解したり伝えたりする力の育成を目標として掲げ,小学校高学年における外国語活動の導入や,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」,「書くこと」の英語力を総合的に育成することを狙いとした改訂が行われ,学校現場においては,指導改善による成果が認められています。しかし,学年が上がるにつれて学習意欲に課題が生じるといった状況や,学校種間の接続が十分とは言えず,児童生徒が進級や進学をした後に,それまでの学習内容を発展的に生かすことができないといった状況も指摘されていました。また,中・高等学校における生徒の英語力では,習得した知識や経験を生かし,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて適切に表現することなどに課題があるとされています。
 これらの成果や課題を踏まえ,次期学習指導要領においては,外国語教育の更なる改善・充実のため,国際的な基準であるCEFR(※1)などを参考にして,小・中・高等学校で一貫した,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと[やり取り・発表]」,「書くこと」の五つの領域により示す,領域別の目標を設定することとしました。
 各学校段階においては,小学校では,中学年から「聞くこと」,「話すこと」を中心とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ,外国語学習への動機付けを高めた上で(年間35単位時間程度),高学年から発達段階に応じて段階的に「読むこと」,「書くこと」を加え,総合的・系統的に教科として学習を行うこと(年間70単位時間程度)としています。これを踏まえ,中学校では,互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う対話的な言語活動を重視し,授業を外国語で行うことを基本とし,具体的な課題等を設定するなどして,学習した語彙い,表現などを実際に活用する言語活動を改善・充実することなどを中心として改訂を行いました。また,高等学校では,複数の領域を結び付けた統合的な言語活動を通じて,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと[やり取り・発表]」,「書くこと」の力をバランスよく育成するための科目群として「英語コミュニケーション1・2・3」を設定し,「英語コミュニケーション1」を共通必履修科目とするとともに,発信力の強化に特化した科目群として「論理・表現1・2・3」を新設する等の改訂を行っています。

7.国旗・国歌の指導

 学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために,学習指導要領等に基づいて行っているものです。
 平成11年8月には「国旗及び国歌に関する法律」が施行され,国旗・国歌の根拠について慣習として定着していたものが成文法としてより明確に位置付けられ,学校教育における国旗・国歌に対する正しい理解が更に進められました。
 現行の学習指導要領では,小・中学校の社会科において我が国及び諸外国の国旗と国歌の意義を理解させ,これらを尊重する態度を育てるよう指導することとしているとともに,小学校の音楽科において,国歌を「歌えるよう指導すること」としています。加えて,小・中・高等学校の特別活動において「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定しています。この位置づけは,新学習指導要領においても引き続き維持しています。
 また,平成30年4月から実施される新幼稚園教育要領においては,「国旗に親しむ」ことに加え,国歌などに親しんだりすることを新たに規定しています。なお,幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び保育所保育指針においても幼稚園教育要領と同様の内容が定められました。
 文部科学省では,引き続き,全ての学校において学習指導要領に基づいた国旗・国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導することとしています。


  • ※1 CEFR(Common European Framework of Reference for languages):シラバスやカリキュラム手引の作成,学習指導教材の編集のために,透明性が高くて分かりやすく参照できるものとして,2001(平成13)年に欧州評議会(Council of Europe)が発表したもの。

(6)新学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けた取組

 新学習指導要領の理念を確実に実現するためには,その趣旨を広く周知するとともに,その実施に必要な人材や予算,時間,情報,施設・設備といった資源をどのように整えていくのかという条件整備等が必要不可欠です。
 文部科学省では,趣旨の周知・徹底の取組として,文部科学省主催の説明会の開催や各都道府県教育委員会等が開催する説明会への講師の派遣,各教科等の改訂のポイントを解説する動画の作成などを行っており,平成30年度以降もそうした取組を更に進めていくこととしています。
 また,新学習指導要領の円滑な実施に必要な指導体制の整備のため,平成30年度予算においては,新学習指導要領における小学校外国語教育の早期化・教科化に伴う,質の高い英語教育を行う専科指導教員の充実などに必要な教職員定数の改善を計上しています。他にも,学校現場における業務改善の推進,教科書など教材の改善充実,全国の優れた教育実践の収集・共有,研修に係る指導・助言などひとつひとつの施策にしっかりと取り組んでいくこととしています。

(7)教育課程の改善等に向けた取組

 文部科学省では,今後の教育課程の基準の改善に資する実証的資料を得るため,昭和51年から研究開発学校制度を設けています。この制度は,学校における教育実践の中から提起されてくる教育上の課題や急激な社会の変化・発展に伴って生じた学校教育に対する多様な要請に対応するため,研究開発を行おうとする学校を「研究開発学校」として指定します。学習指導要領等の現行の教育課程の基準によらない特別の教育課程の編成・実施を認め,その実践研究を通して新しい教育課程・指導方法等を開発していこうとするものです。
 これまでの研究開発の成果は,学習指導要領の改訂に関する中央教育審議会における審議等の中で,具体的な実証的資料として生かされてきています。例えば,今回の学習指導要領改訂においても,育成を目指す資質・能力,小学校における外国語教育,高等学校における「歴史総合」,「公共」の新設等を検討するに当たって,研究成果が活用されています。
 また,学校が,地域の実態に照らしたより効果的な教育を実施できるよう,学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程の編成・実施を認める「教育課程特例校」制度を設けています。具体的には,東京都品川区の「市民科」,世田谷区の「日本語科」など,学校の創意工夫を生かした教育課程が編成・実施されています。

2 我が国の子供たちの学力・学習状況

 子供たちの学力・学習状況を調査するため,我が国では「全国学力・学習状況調査」を実施するとともに,「OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)」,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)」に参加しています。これらの調査結果を踏まえ,世界トップレベルの学力・規範意識を育むための取組を一層推進することが重要です。文部科学省では,1.言語活動や理数教育の充実などを図った学習指導要領の着実な実施とフォローアップ,2.教職員定数の改善や,教職員の資質向上によるきめ細かな指導体制の整備,3.「全国学力・学習状況調査」の継続的な実施による教育の検証改善サイクルの確立などに取り組んでいます。

(1)全国学力・学習状況調査の実施

 文部科学省では,平成19年度から,全国の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒の学力状況などを把握する「全国学力・学習状況調査」を毎年4月に実施しています。この調査は,1.義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図ること,2.学校における個々の児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てること,3.以上のような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することを目的として実施しています。教科は国語と算数・数学で,それぞれ主として「知識」に関する問題(A問題)と主として知識・技能の「活用」に関する問題(B問題)を出題しています(24年度,27年度及び30年度調査では理科も実施)。また,学力を問う教科の調査だけでなく,児童生徒の生活習慣や学習環境,学校の指導方法等の調査も行い,学力との関連を分析しています。
 調査結果を活用することで,各教育委員会や学校は自らの教育の成果と課題を検証し,教育施策や教育指導の改善・充実に生かすことができ,教育に関する継続的な検証改善サイクルの構築が着実に進むことが期待できます。文部科学省としては,各教育委員会や学校に積極的な調査結果の活用を促しています。文部科学省及び国立教育政策研究所では,調査結果を踏まえた教育指導の充実や学習状況の改善に向けた取組への支援として,1.設問ごとに分析結果や指導改善のポイントを示した「報告書」の作成,2.課題が見られた事項について,授業の改善・充実を図る際の参考となるよう授業のアイディアの一例を示した「授業アイディア例」の作成,3.調査結果を活用した指導改善に向けた説明会の開催,4.都道府県教育委員会等の要請に応じて助言を行うための学力調査官等の派遣,5.教育委員会・学校における調査結果を活用した優れた学校改善の取組事例の収集・普及,6.専門家等による追加的な分析・検証などを行っています。また,調査実施から調査結果を提供するまでの間も,各教育委員会や学校において教育施策や教育指導の改善・充実に資するよう,問題ごとに出題の趣旨や学習指導の改善・充実を図る際のポイントなどを示した「解説資料」を配布しています。

(2)平成29年度全国学力・学習状況調査の概要

 平成29年度は,国語,算数・数学の2教科での悉(しっ)皆調査を4月18日に実施しました。29年度の調査結果の特徴としては,中学校数学の一部の問題(多角形の内角の和の求め方の理解,二元一次方程式と一次関数のグラフの関係の理解,相対度数を求めること)について,改善の傾向が見られました。一方で,各教科を通じ,特にB問題において,与えられた情報から目的や意図,事象の関係性等を的確に把握し,説明することなどに課題が見られました。課題が見られたものとして,例えば,「目的や意図に応じ,中学生からの助言を基に必要な内容を整理して,協力を依頼する文章を書くこと」(小学校国語),「2つの図形の関係を回転移動に着目して捉え,数学的な表現を用いて説明すること」(中学校数学)などが挙げられます。
 質問紙調査では,児童生徒に対する調査と学校に対する調査を実施しています。平成29年度の調査においては,新学習指導要領を見据え,28年度に引き続き「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善」に関する状況等について調査を行ったほか,部活動に関する質問等について,新たに質問項目を設け調査を行いました。継続的に調査している項目については,経年での推移を示すとともに,教科に関する調査とのクロス分析を行っています。
 その結果,主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に向けた取組状況については,平成28年度同様,児童生徒・学校共に,肯定的な回答を選択した方が,教科の平均正答率が高い傾向にあることが分かったことに加え,就学援助を受けている児童生徒の割合を統制変数とした三重クロス分析の結果でも,就学援助率にかかわらず,同様の傾向が見られました。また,児童生徒の自己肯定感に関する状況では,「自分にはよいところがあると思う」や「先生は,あなたのよいところを認めてくれていると思う」と回答している児童生徒の割合に増加傾向が見られました。回答別に平均正答率を比較してみると,「自分には,よいところがあると思いますか」との質問では,小学校においては,「当てはまる」と回答した児童の平均正答率が最も高い一方,中学校においては,「どちらかといえば,当てはまる」と回答した生徒の平均正答率が最も高いなどの状況でした。さらに,中学校調査において,普段(月曜日から金曜日)の1日当たりの部活動の時間を問う新規の質問項目を設けたところ,1日当たり,2時間以上,3時間より少ない時間,部活動をしている生徒の割合が約4割と最も高く,1時間以上,2時間より少ない時間,部活動をしている生徒の割合が約3割とその次に高い状況にありました。部活動の時間別に平均正答率を比較してみると,1日当たり,1時間以上,2時間より少ない時間,部活動をしている生徒の平均正答率が最も高い状況にありました(図表2‐4‐2)。

 図表2‐4‐2 部活動の状況【中学校】

(3)OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)

 OECDでは,義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生)が,自らの知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するため,「生徒の学習到達度調査(PISA)」を実施しています。調査は,2000(平成12)年から3年ごとに読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野について行われており,直近では2015(平成27)年に調査が実施されました。
 2015(平成27)年調査からは,従来の筆記型調査からコンピュータ使用型調査へ移行しました。2015(平成27)年調査の結果からは,日本は,科学的リテラシー,読解力,数学的リテラシーの各分野において,国際的に見ると前回調査に引き続き,平均得点が高い上位グループに位置していることが分かりました。一方,読解力は前回調査と比較すると,平均得点が有意に低下しています(図表2‐4‐3)。また,生徒の科学に対する態度については,OECD平均と比較すると指標の値が依然として小さいものの,例えば,自分の将来に理科の学習が役立つと感じている生徒の割合が,2006(平成18)年調査と比較すると増加するなどの改善が見られました。読解力においては,コンピュータ使用型調査に対する生徒の戸惑いが見られましたが,解答状況の分析などからは,子供たちを取り巻く情報環境が大きく変化する中で,学習指導要領改訂に向けた検討においても指摘された諸課題が,具体的に見られたものと考えられます。文部科学省では,こうした結果を踏まえながら,学習指導要領の改訂により国語教育の改善・充実を図り,学習基盤となる言語能力や情報活用能力を育成するとともに,読解力の向上に関する調査研究の充実や学校ICT環境整備の加速化を推進することとしています。

 図表2‐4‐3 PISA平均得点及び順位の推移

(4)国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)

 国際教育到達度評価学会(IEA)では,小学校4年生,中学校2年生を対象とし,初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学と理科の教育到達度を測定し,学校のカリキュラムで学んだ基本的な知識や技能がどの程度習得されているかを評価するため,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」を4年ごとに実施しています。直近では,2015(平成27)年に調査が実施されました。
 2015(平成27)年調査の結果からは,日本は,教育到達度の平均得点については,小・中学校の算数・数学,理科の全てにおいて,国際的に見て引き続き上位に位置しており,前回調査と比較して,平均得点が有意に上昇したことが明らかになりました(図表2‐4‐4)。さらに,成績下位の児童生徒が減少し,成績上位の児童生徒が増加している傾向も見られました。算数・数学,理科に対する意識については,小学生の「理科は楽しい」を除いて国際平均を下回っている項目が多いものの,「算数・数学,理科は楽しい」と思う児童生徒の割合が増加しており,中学校においては国際平均との差が縮まっている傾向が見られました。

 図表2‐4‐4 TIMSS平均得点及び順位の推移

第2節 科学技術系人材を育成するための理数教育の推進

(1)理数好きな子供の裾野の拡大

 文部科学省では,理数教育を着実に実施するため,教員によって負担の大きい実験の準備・調整等の業務を軽減するための理科観察実験アシスタントの配置支援や,「理科教育振興法」に基づいた,公・私立の小・中・高等学校等における観察・実験に係る実験用機器をはじめとした理科,算数・数学教育に使用する設備の計画的な整備を進めています。
 科学技術振興機構では,学校・教育委員会と大学等が連携・協働し,中高生自ら課題を発見し,科学的な手法に従って継続的・自立的な実践活動を進める「中高生の科学研究実践活動推進プログラム」等の取組を実施しています。また科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者,女子学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室,出前授業の実施等を通して女子中高生の理系分野に対する興味・関心を喚起し,理系進路選択の支援を行う「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施しています。

(2)子供の才能を見いだし伸ばす取組の充実

 文部科学省では,平成14年度から,先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し,科学技術振興機構を通じて支援を行うことで,生徒の科学的能力や科学的思考力を培い,将来の国際的な科学技術人材の育成を図っています。30年度においては,全国204校の高等学校等が特色ある取組を進めることとしています。
 科学技術振興機構では,平成29年度から,理数分野で特に突出した能力のある小中学生を対象に,その能力の更なる伸長を図るため,大学等が特別な教育プログラムを提供する「ジュニアドクター育成塾」を開始しています。また,意欲・能力のある高校生を対象とした,国際的な科学技術人材を育成するプログラムの開発・実施を行う大学を「グローバルサイエンスキャンパス」において選定し,支援しています。
 さらに,全国の高校生等が学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として,「第7回科学の甲子園」が埼玉県さいたま市において開催され,神奈川県代表チームが優勝しました。中学生を対象に茨城県つくば市で開催された「第5回科学の甲子園ジュニア」では東京都代表チームが優勝しました。
 このほか,科学技術振興機構では,数学・化学・生物学・物理・情報・地学・地理等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や,国際大会への日本代表選手の派遣,国際大会の日本開催に対する支援を行っています。国際科学オリンピックの国内大会の参加者数は,年々増加し,平成29年度は2万1,033人となっています。同年度の国際科学オリンピックの日本代表選手は,金メダル10個,銀メダル16個,銅メダル3個の合計29個のメダルを獲得しました。

第3節 グローバル人材の育成に向けた教育の充実

 初等中等教育段階から国際的な視野を持つグローバル人材を育成するため,文部科学省では,小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化,高校生の海外留学の促進,スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また,海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。

1 グローバル社会の中で特に求められる力

 グローバル化が進行する社会においては,多様な人と関わり様々な経験を積み重ねるなど「社会を生き抜く力」を身に付ける過程の中で,未来への飛躍を担うための創造性やチャレンジ精神,強い意志を持って迅速に決断し組織を統率するリーダーシップ,国境を越えて人々と協働するための英語等の語学力・コミュニケーション能力,異文化に対する理解,日本人としてのアイデンティティーなどを培っていくことが,一層重要になってきます。
 これらを踏まえ,文部科学省では以下に述べるように小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化,高校生の海外留学の促進,スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組むとともに,海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。
 また,国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国の歴史や伝統文化,国語に関する教育を推進していくことも重要です。このため,新学習指導要領においては,我が国の言語文化,県内の主な文化財や年中行事の理解,我が国や郷土の音楽,和楽器,武道,和食や和服などの指導を通して,我が国の伝統や文化についての理解を深める学習の充実を図っています。また,平成27年度から,地域の伝統や文化に関する教材の作成や指導方法の開発等を行う地方公共団体等の取組を支援しています。

2 英語をはじめとした外国語教育の強化

(1)学習指導要領における外国語教育

 文部科学省では,外国語教育の更なる改善・充実を図るため,これまで次期学習指導要領等について議論を重ねてきました。平成28年12月21日には,中央教育審議会より次期学習指導要領の方向性として,小学校外国語教育の早期化・教科化,中・高等学校における更なる改善・充実等が提言され,29年3月には小・中学校学習指導要領が,30年3月には高等学校学習指導要領が改訂されました(※2)。


  • ※2 参照:第2部第4章第1節1(5)6

(2)外国語教育の改善・充実

 文部科学省では,外国語教育の更なる改善・充実を図るため,学習指導要領の改訂を行うとともに,教育環境の整備にも努めています。小学校外国語教育の早期化・教科化に対応するための小学校中学年・高学年用の新教材については,平成29年9月に高学年用教材“WeCan!”を,同年12月に中学年用教材“Let’s Try!”を公表し,29年度中には,30年度に使用する3年生から6年生の児童用冊子,教師用指導書,デジタル教材を,希望する全ての学校に配布しました。
 あわせて,平成30年度から,民間機関を活用した小学校外国語の効果的な指導法等の開発を行い,その成果を他の学校等へ普及することを予定しています。
 また,平成26年度から,小学校教員や中・高等学校の英語担当教員の英語力・指導力向上のため,各地域で研修講師や助言者としての役割を担う「英語教育推進リーダー」を養成する中央研修を行うとともに,「英語教育推進リーダー」が各地で講師となって行う研修等の取組を支援しています。この取組は29年度で4年目を迎え,合計約2,000人の英語教育推進リーダーを養成しています。
 加えて,平成28年度からは現職の小学校教員が教科としての外国語科の指導に対応するため,中学校教諭免許状も取得可能となる「小学校英語教科化に向けた専門性向上のための講習の開発・実施事業」を36大学に委託し,実施しています。
 さらに,小学校英語教科化等に対応した教員養成・採用について,小学校教諭の養成課程における外国語の指導法の必修化や外国語(英語)コアカリキュラムの活用により小・中・高等学校教諭の養成課程について,さらなる改善や充実を図るとともに,専門性を考慮した採用選考を促進し,平成35年度から新課程を修了した教員の採用を開始できるよう取り組んでいます。
 加えて,平成30年度予算において,一定の英語力を有し,質の高い外国語教育を行う専科教員を確保するため,教員定数1,000人の加配を盛り込みました。
 このほか,文部科学省は,総務省及び外務省と共に「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を推進しています。本プログラムは,外国語教育の充実や地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進するとともに,我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。本プログラムに外国語指導助手(ALT)として活躍する参加者は,児童生徒が生きた外国語に触れたり,実際に外国語を使ったりする機会の充実に貢献しています。平成29年度は,本プログラムにより招致した4,712人のALTが,学校などで語学指導,国際理解のための活動に従事しています。さらに,28年度からは,市町村におけるJET-ALTの生活支援,緊急事態対応や学校との連絡調整等の業務を担う「JETプログラムコーディネーター」の活用に対する支援も行っています。

3 高校生の国際交流

(1)高校生留学の促進等

 文部科学省では,グローバル化が加速する中で,日本人としてのアイデンティティーや日本の文化に対する深い理解を前提として,豊かな語学力・コミュニケーション能力,主体性・積極性,異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材を育成するため,「第2期教育振興基本計画」等を踏まえ,海外に留学する高校生に対して留学費用の一部を支援する事業(支援対象者数1,500人)を実施しています。
 また,都道府県が海外勤務や海外留学等の経験者を「グローバル語り部」として高等学校等へ派遣して,国際理解教育や国際的な職業,海外留学への関心を高めるための授業等を行えるようにしたり,高校生留学を推進するためのフェア等を開催したりすることにより,安心・安全な留学への関心を喚起し,留学への機運を醸成するための支援を行っています。
 このほか,著名な科学者による講義や他国からの参加高校生との交流を深めることを目的とする「オーストラリア科学奨学生(ハリー・メッセル国際科学学校)事業」に高校生を派遣するための選考及び支援を行っています。同事業は,オーストラリア・シドニー大学内物理学財団が隔年で約2週間にわたり実施するものです。平成29年度はその開催年であり,9人の高校生を派遣しました。

(2)外国人高校生の受入れ

 文化や伝統,生活習慣の異なる同世代の若者が交流を深めることは,広い視野を持ち,異文化を理解し,これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく資質・能力を育成する上で重要です。
 文部科学省では,民間の高校生留学・交流を扱っている団体を通じて,海外で日本語を学習している外国人高校生を6週間程度日本に招致し,日本の高等学校への体験入学等を行う「異文化理解ステップアップ事業」を実施しています。平成29年度は14か国115人の高校生を招致しました。
 また,平成30年度から,アジアで日本語を学ぶ高校生を日本全国の高校に招へいする「アジア高校生架け橋プロジェクト」を実施する予定です。

4 スーパーグローバルハイスクール

 文部科学省では,平成26年度から,社会課題に対する関心と深い教養,コミュニケーション能力,問題解決力等の国際的素養を身に付け,将来,国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成に資する教育課程等の研究開発及び実践を行う高等学校等を「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定し支援しています。29年度においては,全国の123校を支援しています。また,29年度には「2017年度SGH全国高校生フォーラム」を初めて開催し,全国のSGH高校生が自分たちの学びを英語で発信しました。

 「2017年度SGH全国高校生フォーラム」ポスターセッションの様子
 「2017年度SGH全国高校生フォーラム」ポスターセッションの様子

 「2017年度SGH全国高校生フォーラム」文部科学大臣賞受賞者等
 「2017年度SGH全国高校生フォーラム」文部科学大臣賞受賞者等

5 国際バカロレアの推進

 国際バカロレア(IB)は,国際バカロレア機構が提供する世界標準の教育プログラムであり,国際的に活躍できる人材を育成する上で優れたプログラムとして評価されています。国際バカロレアの教育理念や手法は,学習指導要領の目指す方向性と軌を一にし,語学力のみならず課題発見・解決能力,論理的思考力,コミュニケーション能力など,グローバル化に対応した素養・能力を育む上で適したものです。
 国際バカロレアには,生徒の発達段階や目的に応じて,次のようなプログラムがあります。

  1. プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)(対象:3歳から12歳)
  2. ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)(対象:11歳から16歳)
  3. ディプロマ・プログラム(DP)(対象:16歳から19歳)
  4. キャリア関連プログラム(CP)(対象:16歳から19歳)

 これらの中でも高校レベルのDPは,2年間のカリキュラムを履修し,最終試験を経て所定の成績を収めることで,国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得できます。この資格は,世界の主要な大学の入学者選抜等で広く活用されています。
 国際バカロレアの導入が進むことによって,日本の生徒の進路・進学先が国内だけでなく海外の大学に拡大することや国際バカロレアの特徴的な手法やカリキュラムが日本の初等中等教育改革に積極的な波及効果を与えること等も期待されます。政府は,「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017年改訂版)」(平成29年12月22日閣議決定)において,32年までに日本の国際バカロレア認定校等を200校以上に増加させる目標を掲げて普及拡大に取り組んでいます。30年1月現在で国際バカロレア認定校等はPYP認定校等45校,MYP認定校等22校,DP認定校等51校の延べ118校となっています。
 日本における国際バカロレアの普及拡大に向けては,特に,DPでは母語を除く全ての科目を原則として英語で教える必要があったことから,指導可能な教員(外国人指導者等)の確保が大きな課題でした。このため,文部科学省では,平成25年度から国際バカロレア機構との協力の下で,DPの一部の科目を日本語でも実施可能とする「日本語デュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム」(日本語DP)の開発・導入を進めています。日本語DPの活用によって国際バカロレア認定校で指導することができる優秀な日本人教員の確保が以前と比べて容易になります。さらに,27年8月に「国際バカロレア・ディプロマ・プログラムの導入を促進するための教育課程の特例措置」を新設しました。これにより,日本の学習指導要領と国際バカロレアとのカリキュラムの整合性を保ちながら,生徒が無理なく双方を履修できるようになりました。加えて,同年9月に,DPの導入に当たり必要な経費や設備の要件,認定までのプロセス等を日本語によりまとめた「国際バカロレア認定のための手引き」を作成しました。これらの取組によって日本の高等学校等に国際バカロレアの導入が進むことが期待されます。
 加えて,日本国内における国際バカロレアの普及に当たっては,国内の大学入学者選抜において国際バカロレア資格やその成績の活用を促進することも重要です。このため,大学に対して積極的な情報提供や様々な情報交換を進めており,国際バカロレアを活用した大学入試が大きく広がりつつあります。平成29年10月現在で国際バカロレアを活用した大学入学者選抜を導入している国公私立大学は54大学となっています。
 また,文部科学省では,「文部科学省・国際バカロレア普及拡大広報ページ(※3)」において,国際バカロレアに係る最新情報を広く周知するなど,積極的な広報活動にも取り組んでいます。


  • ※3 参照:http://www.facebook.com/mextib

6 在外教育施設における教育の充実

 我が国の国際化の進展に伴って多くの日本人が子供を海外に同伴しており,平成29年4月現在,海外に在留している義務教育段階の子供の数は8万2,571人となっています。
 文部科学省では,海外子女教育の重要性を考慮し,日本人学校や補習授業校の教育の充実・向上を図るため,日本国内の義務教育諸学校の教師を派遣するとともに,退職教師をシニア派遣教師として派遣するなど,高い資質・能力を有する派遣教師の一層の確保に努めています。平成29年度は教師1,026人,シニア派遣教師229人が50カ国1地域で活躍しました。
 また,教育環境の整備として,義務教育教科書の無償給与,教材の整備,通信教育の支援などを行っています。
 さらに,平成28年5月19日に「在外教育施設グローバル人材育成強化戦略」を策定しました。本戦略に基づき,29年度は,在外教育施設における課題対応や高度なグローバル人材育成に取り組む「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」の実施や派遣教師の魅力を高める「トビタテ!教師プロジェクト」の立ち上げなど教育環境の更なる整備・充実に取り組んでいます。
 このほか,外国における災害,テロ,感染症などに対応するため,在外教育施設派遣教師のための安全対策資料の作成などを行うほか,有事の際には,関係省庁や現地の在外教育施設などと緊密な連携を図り,教職員や子供の安全確保に努めています。
 なお,海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する情報は,総合ウェブサイト(通称「CLARINET:クラリネット(※4)」)に掲載しています。


  • ※4 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

7 帰国児童生徒・外国人の子供等に対する教育の充実

(1)公立学校に在籍する帰国・外国人児童生徒等の現状

 平成28年4月1日から29年3月31日までの1年間で,海外に1年以上在留した後に帰国した児童生徒は,公立の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校及び中等教育学校を合計して,9,684人です。また,公立学校に在籍する外国人児童生徒は29年5月1日現在8万6,015人です。28年5月現在,日本語指導が必要な外国人児童生徒は3万4,335人であり,26年度と比べて5,137人増加しています。さらに,日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒(帰国児童生徒のほか,本人が重国籍又は保護者の一人が外国籍である等の理由から,日本語以外の言語を家庭内言語として使用しており,日本語能力が十分でない児童生徒が含まれる。)は9,612人であり,26年度と比べて1,715人増加しています。

(2)帰国児童生徒・外国人の子供等への支援施策

 文部科学省では,このような児童生徒について,国内の学校生活への円滑な適応を図るだけでなく,児童生徒の特性の伸長・活用など,海外における学習・生活体験を尊重した教育を推進するため,以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 公立義務教育諸学校の教員定数について,平成29年3月の「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の改正により,これまで毎年度の予算の範囲内で措置してきた加配定数を基礎定数化し,29年度以降,日本語能力に応じた特別の指導を行う児童生徒の数に応じて教員の定数を算定することとした。
  2. 受入れから卒業後の進路まで一貫した指導・支援体制を構築するため,各地方公共団体が行う帰国・外国人児童生徒等の受入れ促進,日本語指導の充実,指導・支援体制の整備に関する取組を支援する補助事業を実施
  3. 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施を促進(「学校教育法施行規則」を一部改正,平成26年4月1日施行)
  4. 学校において児童生徒の日本語能力を把握し,その後の指導方針を検討する際の参考となる「外国人児童生徒のためのJSL(※5)対話型アセスメント~DLA(※6)~」及び教育委員会等が帰国・外国人児童生徒等教育に関する研修会を計画する際の参考となる「外国人児童生徒教育研修マニュアル」を普及
  5. 教職員支援機構により,外国人児童生徒等教育に携わる教員や学校管理職及び指導主事等を対象として,日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を実施
  6. 平成27年度から,就学に課題を抱える外国人の子供を対象に,公立学校や外国人学校等への就学に必要な支援を学校外において実施する地方公共団体の取組を支援する補助事業を実施
  7. 「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」において今後取り組むべき施策の方向性について議論を行い,平成28年6月に「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援の充実方策について(報告)」を公表

  • ※5 JSL(Japanese as a Second Language):第2言語としての日本語
  • ※6 DLA(Dialogic Language Assessment):対話型アセスメント

第4節 キャリア教育・職業教育の推進

1 キャリア教育の推進

(1)初等中等教育におけるキャリア教育の推進

 今日,日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しており,特に,産業や経済の分野においてその変容の度合いが著しく大きく,雇用形態の多様化・流動化に直結しています。このような中で現在の若者と呼ばれる世代は,例えば,若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ,無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないという点において大きな困難に直面していると言われています。
 こうした状況に鑑み,子供たちが,「働くことの喜び」や「世の中の実態や厳しさ」などを知った上で,将来の生き方や進路に夢や希望を持ち,その実現を目指して,学校での生活や学びに意欲的に取り組めるようになることが必要です。そのためには,「学校から社会・職業への移行」を円滑にし,社会的・職業的自立に必要な能力や態度を身に付けることができるようにするキャリア教育を推進していくことが重要です。小・中・高等学校の新学習指導要領においても,キャリア教育の充実を図ることについて明示されました。このようなキャリア教育を推進するため,文部科学省では,キャリア教育の実践の普及・促進に向けて様々な施策を展開しています。

〈平成29年度実施施策〉
  1. 児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し振り返ることのできるポートフォリオ的な教材「キャリア・パスポート(仮称)」の導入に向け,その活用方法等に関する調査研究を行い,その成果や課題等の実証的なデータを得るための「キャリア・パスポート(仮称)普及・定着事業」の実施
  2. チャレンジ精神や他者と協働しながら新しい価値を創造する力など,これからの時代に求められる資質・能力の育成を目指した「小・中学校等における起業体験推進事業」の実施
  3. 都道府県等にキャリアプランニングスーパーバイザーを配置し,地域を担う人材育成・就労支援を促進するための「地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業」の実施
  4. 学校側が望む支援と地域・社会や産業界等が提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」を運営
  5. 厚生労働省,経済産業省と連携して「キャリア教育推進連携シンポジウム」を合同開催(平成30年1月11日)
  6. キャリア教育の充実・発展に尽力し,顕著な功績が認められた学校,教育委員会等に対する「文部科学大臣表彰」,また,学校,地域,産業界,地方公共団体等の関係者が連携・協働して行うキャリア教育の取組に対する「キャリア教育推進連携表彰」(経済産業省と共同実施)を実施

(2)職場体験,インターンシップ(就業体験)等の体験活動の推進

 職場体験やインターンシップ(就業体験)は,生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり,1.異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること,2.生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,3.学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し学習意欲を喚起すること,4.職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど,極めて高い教育効果が期待されます。このため,キャリア教育の中核的な取組の一つとして,学校現場における職場体験,インターンシップの普及・促進に努めています。
 公立小学校では,多くの学校において職場見学が実施されています。公立中学校における職場体験は,平成28年度の実施率が98.1%と,ほとんどの中学校において実施されています。こうした職場体験を一過性の行事として終わらせることのないよう,学校における事前指導や事後指導の実践に当たっては,日常の教育活動と関連付けて職場体験の狙いや効果を高めることを目的とした実践にするなど更なる工夫が求められます。
 公立高等学校(全日制及び定時制)におけるインターンシップの実施率は83.7%となっています。しかし,参加が希望制となっている学校が多いため,在学中にインターンシップを体験した生徒の割合は,全体で34.4%,普通科では22.0%となっており,参加率の向上が今後の課題となります。

2 職業教育の推進

(1)専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は,農業,工業,商業,水産,家庭,看護,情報,福祉の専門高校を中心に,我が国の産業経済や医療・福祉の発展を担う人材を育成する上で,大きな役割を果たしています。平成29年5月現在,専門高校の数は1,522校,生徒数は約60万人であり,高等学校の生徒数全体の約18.4%を占めています。また,生徒の進路状況は,29年3月卒業者のうち,大学などへの進学者約21.3%,専門学校などへの進学者約22.5%,就職者約53.1%と多様です。

(2)専門高校における教育内容の充実

1.学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けた取組

 現行の高等学校学習指導要領(職業に関する教科)の円滑かつ着実な実施に向け,文部科学省においては趣旨や内容の広報・周知に努めるとともに,先進事例の共有や課題の協議を行うなどの取組を実施しています。
 また,平成30年3月末には,高等学校学習指導要領の全面改訂を行いました。職業に関する教科については,地域や社会の発展を担う職業人を育成するため,社会や産業の変化の状況等を踏まえ,持続可能な社会の構築,情報化の一層の進展,グローバル化などへの対応の視点から各教科の教育内容を改善しました。特に,職業に関する教科全てに共通して職業人に求められる倫理観に関する指導を引き続き重視することとしたほか,教科の特質に応じて,六次産業化など経営感覚の醸成に関わる内容,技術の高度化や情報技術の進展に対応する内容,環境保全に関する内容などを充実しています。今後は,34年度入学生からの年次進行による円滑な実施に向け,新高等学校学習指導要領の趣旨や内容についての説明や周知を図っていきます。

2.特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及

 近年の科学技術の進展等に伴い,産業界で必要な専門知識や技術は高度化し,従来の産業分類を越えた複合的な産業が発展しています。これに対応した高度な知識・技能を身に付け,社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため,先進的で卓越した取組を行う専門高校を「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」に指定し,実践研究を行っています。
 また,「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」においては,産業界や大学等と連携して人材育成を行う専門高校に対する支援も行いました。

(3)専門高校活性化に資する取組

1.全国産業教育フェア

 全国産業教育フェアは,専門高校等の生徒の学習成果を全国的な規模で総合的に発表することで,新しい時代に即した専門高校等における産業教育の活性化を図り,その振興に資することを目的として開催しています。平成29年度は秋田県において開催し,2日間を通して約10万7千人の来場があり,産業教育の魅力を全国に発信するフェアとなりました。なお,30年度のフェアは山口県で開催します。

2.教員研修の充実

 教職員支援機構等では,教員等の資質を向上し,その指導力の強化を図るため,産業教育担当の教員などを対象として,情報化・技術革新その他社会情勢の変化に適切に対応した最新の知識・技術を習得させる研修や,大学や企業等の産業教育に関わる施設に派遣する研修などを行っています。

3.施設・設備の補助

 産業教育振興のため,産業教育施設・設備基準に基づき,公立及び私立高等学校に必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を支援しています。

(4)専修学校高等課程(高等専修学校)における取組

 専修学校高等課程(高等専修学校)は,その柔軟な制度的特性を生かして社会的要請に弾力的に応える教育を行うことによって,中学校卒業段階で職業に対する目的意識を持った生徒等を対象に,実践的な職業教育・専門技術教育の機会を提供しています。
 また,実学を重視する専修学校高等課程は,不登校や中途退学を経験している生徒等,高等学校等の教育になじまない生徒にも教育の機会を与えており,その社会的・職業的自立に向けて積極的に対応しています。
 専修学校高等課程は,高等学校等と並び,多様な教育の選択肢を提供する後期中等教育機関の一つとしてその役割を果たしていくことが今後とも期待されています。

3 高等学校卒業後の就職の状況

 高校生の就職については,平成30年3月新規高等学校卒業者の就職率(就職希望者に対する就職者の割合)は98.1%(30年3月末現在)となり,前年同期から0.1ポイント上昇しました。就職率は8年連続で前年同期を上回りました。
 しかし,卒業までに就職に至らなかった生徒も数多く存在し,それらの生徒は,卒業後もハローワーク等の支援を得て就職活動を継続してきました。
 文部科学省では,学校とハローワークが連携した就職支援を促すなど,厚生労働省・関連経済団体等と連携して,高等学校卒業者の就職支援に取り組んでいます。

第5節 新しい時代にふさわしい教育制度の柔軟化の推進

1 小中一貫教育について

(1)小中一貫教育の制度化の経緯

 小中一貫教育とは,小・中学校が目指す子供像を共有して9年間を通じた教育課程を編成し,系統的な教育を目指す教育であり,

  • 「教育基本法」,「学校教育法」の改正による義務教育の目的・目標規定の新設
  • 近年の教育内容の量的・質的充実への対応
  • 児童生徒の発達の早期化等に関わる現象
  • 中学校進学時の不登校,いじめ等の急増など,いわゆる「中一ギャップ」への対応
  • 学校の社会性育成機能の強化の必要性

 などを背景として,全国各地において,地域の実情に応じた取組が蓄積されてきました。平成26年に文部科学省が行った「小中一貫教育等についての実態調査」(※7)によると,小中一貫教育の取組は,全国211市町村において1,130件の取組が実施され,既に全国的に広がりつつある状況でした。これらの既存の取組の多くからは学力の向上,中一ギャップの緩和,教員の意識向上など,様々な面において大きな成果が見られる一方,小中一貫教育を推進する上で解消を図っていくべき課題が明らかとなりました。


  • ※7 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1369584_01.pdf

(2)小中一貫教育の制度化

 これまで運用上行われてきた小中一貫教育の取組では,小・中学校が別々の組織として設置されていることから,教育主体・教育活動・学校マネジメントの一貫性の確保等に課題があり,小中一貫教育を効果的・継続的に実施していく上で一定の限界が存在するため,現場からも義務教育学校の制度化の要望が国に対して寄せられていました。
 こうした現場からの要望を踏まえ,文部科学省では,地域の実情に応じた柔軟な取組を可能とするために制度改正を行い,平成28年4月1日から,小中一貫教育として以下の形態の学校が設置可能となりました。

【義務教育学校】
 一人の校長の下,一つの教職員集団が9年間一貫した教育を行う新たな学校の種類を「学校教育法」に位置付ける。

【中学校併設型小学校・小学校併設型中学校】
 独立した小・中学校が同一設置者の下で,義務教育学校に準じた形で一貫した教育を施すことができるようにする。

【中学校連携型小学校・小学校連携型中学校】
 設置者が異なる小学校と中学校が一貫性に配慮した教育を行うために連携して教育課程を実施する学校を制度化する。

 図表2‐4‐5 小中一貫教育に関する制度の類型

 義務教育学校については,平成27年6月17日に成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」において,現行の小・中学校に加え,小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う新たな学校の種類として整備しました。また併せて,政令において義務教育学校が就学指定の対象となる旨を規定し,省令・告示において一貫教育の軸となる新教科の創設や,学校段階間での指導内容の入替え等,一貫教育の実施に必要な教育課程の特例が認められる旨を規定しました。
 中学校併設型小学校及び小学校併設型中学校については,既存の小学校及び中学校の枠組みは残したまま,義務教育学校に準じた形で9年間の教育目標を設定し,9年間の系統性を確保した教育課程を編成する学校として,省令において整備しました。これらの学校においては,学校間の総合調整を担う者をあらかじめ任命したり,学校運営協議会を合同で設置したり,全教職員を併任させたりするなど,小中一貫教育を行うためにふさわしい運営上の仕組みを整える必要があります。また,義務教育学校と同様に,一貫教育の実施に必要な科目・教科の設定などを行うこともできます。

(3)小中一貫教育の導入状況等

 文部科学省では,平成29年に義務教育学校等を制度化した後,約一年が経過した時点の実際の導入状況等を把握するため,「小中一貫教育の導入状況調査」(※8)を実施しました。
 本調査結果によると,義務教育学校は全国に48校,小中一貫型小学校・中学校は253件を数え,平成26年に文部科学省が実施した調査と比較すると,義務教育学校や小中一貫型小学校・中学校の設置が各地で進んでいることが明らかとなりました。また,小中一貫教育を導入したほぼすべての市区町村から,学習指導や生徒指導上の成果が認められるとの回答が得られました。


  • ※8 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/__icsFiles/afieldfile/2017/09/08/1395183_01.pdf

(4)小中一貫した教育課程の編成・実施に向けた取組

 文部科学省においては,小中一貫教育の制度化を契機として,より質の高い取組を推進する観点から,小中一貫教育の核となる教育課程や指導計画の作成・実施を中心に,全国各地の多様な工夫の例や留意事項を盛り込んだ手引を平成28年12月に作成しました。その後の小中一貫教育の一層の充実が図られるとともに,新たな取組の参考となるよう,全国各地の特色ある学校の取組の概要や工夫を盛り込んだ事例集を30年1月に作成し,手引とともに文部科学省のウェブサイトで公表しています。

(5)今後の推進方策について

 文部科学省においては,小中一貫教育の一層の推進に資するため,平成27年度から都道府県教育委員会の積極的な指導助言等の下,市町村教育委員会が管下全域での小中一貫教育の導入に向けた取組を行う委託研究事業を実施しています。今後も小中一貫教育の好事例の収集や普及,成果や課題の継続的な把握などを行うことを通じて,各地方公共団体における小中一貫教育の取組を支援してまいります。

2 夜間中学について

(1)夜間中学の現状

 夜間中学は,戦後の混乱期の中で,生活困窮などの理由から昼間に就労又は家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから,これらの生徒に対し,義務教育の機会を提供するため,昭和20年代初頭から設けられてきました。30年ごろには,設置数は80校以上を数えましたが,就学援助策の充実や社会情勢の変化に伴って減少し,現在は8都府県25市区に31校の設置に止まっています。平成29年7月に文部科学省が実施した調査結果によると,1,687名の生徒が夜間中学に通っています。

(2)夜間中学の(潜在的)入学希望者

 平成22年の「国勢調査」では,未就学者(※9)が全ての都道府県(※10)に存在し,少なくとも12万人以上いることが明らかとなっており,夜間中学には潜在的なニーズがあると考えられます(※11)。
 このような中,文部科学省においては,平成27年7月に,不登校など様々な事情から実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮等により卒業した者で,中学校で学び直すことを希望する者(入学希望既卒者)について,夜間中学での受入れを可能とすることが適当であることを示しました。このことにより,29年7月に文部科学省が実施した調査において,73名の入学希望既卒者が夜間中学に通っていることが明らかとなりました。
 さらに,不登校児童生徒の多様な教育機会の確保という観点から,必要な教育整備を図りつつ,不登校となっている学齢生徒の夜間中学での受入れが行われるも考えられる旨の通知を平成28年9月に発出しました。
 このように,現在,夜間中学には,義務教育を修了しないまま学齢期を経過した者(義務教育未修了者)や,不登校など様々な事情により十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した者(入学希望既卒者),外国籍の者などの,義務教育を受ける機会を実質的に保障するための様々な役割が期待されています。


  • ※9 在学したことのない人又は小学校を中途退学した人
  • ※10 全市町村の約96%
  • ※11 未就学者の定義について,小学校を卒業したが中学校を卒業していない者が含まれていないことから,文部科学省としては「国勢調査」の調査方法の改善を総務省に要望しています。

(3)夜間中学の設置・充実

 平成28年12月7日に成立した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)に基づき,文部科学省においては,29年3月に同法に基づく基本指針を策定しました。
 このことを受け,文部科学省においては,夜間中学の設置・充実のため以下の取組を実施しました。

  • 夜間中学を新たに設置する際に都道府県立も含めた検討が進むよう義務教育費国庫負担法の一部を改正し,都道府県が設置する夜間中学等の教職員給与に要する経費を国庫補助の対象に追加
  • 平成29年3月に告示した中学校学習指導要領の総則に指導方法等の工夫改善に努めることなど学齢経過者への配慮を明記するとともに,学齢経過者への指導の際,実情に応じた特別の教育課程を編成できるよう制度を整備
  • 平成29年1月に夜間中学の設置・充実を通じた教育機会の確保に向け各地方公共団体において参考となるよう作成した手引に,最新の動向や制度改正を含め夜間中学の設置に必要な情報を反映するため29年4月に改訂
  • 教育委員会の担当者を対象として教育機会確保法の趣旨や基本指針の内容,夜間中学等の活動実態等を周知する説明会を平成29年8月に初めて開催
  • 教育機会確保法の内容も踏まえた夜間中学の現状等についての詳細な実態調査を実施し,平成29年11月に公表

 文部科学省においては,今後も基本指針に基づき各都道府県に少なくとも1校は夜間中学が設置され,また夜間中学において多様な生徒の受入れが促進されるよう,必要な取組を行ってまいります。

第6節 高等学校教育改革の推進

1 高等学校教育をめぐる現状とこれまでの取組

 新制高等学校発足当初の昭和23年には約42%であった高等学校進学率は,現在では約99%に達しており,高等学校は国民的な教育機関となっています(図表2‐4‐6)。高等学校進学率の上昇に伴い,生徒の能力・適性,興味・関心,進路などが多様化しており,生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育が求められています。

 図表2‐4‐6 高等学校等への進学率[推移]

 一方,高等学校の生徒数は,最も多かった平成元年の約580万人から29年度には約346万人に減少しており,高等学校の適正配置・適正規模の在り方が課題となっています。このため,各都道府県では,高等学校の適正配置・適正規模に留意しつつ,生徒一人一人の個性を伸ばし,知・徳・体の調和の取れた充実した高等学校教育を実現するため,各学校においてそれぞれの特色を生かして創意工夫に富んだ魅力ある学校づくりが進められています。
 文部科学省においても,これまで,多様な生徒の能力,興味,関心,進路希望等に対応するため,中高一貫教育,総合学科や単位制高等学校をはじめ,生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりを可能とするための改革を進めてきました。一方,義務教育段階での学習内容の学び直しや,生徒の学習意欲をめぐる問題などへの対応が一層求められるようになってきています。また,現在の高等学校教育については,生徒の幅広い学習ニーズに柔軟に応えることが可能となった一方,その実態が多様化する中で,高等学校というものを一くくりにすることが次第に難しくなっている状況にあります。

2 高等学校教育の質の確保・向上に向けた取組

 高等学校教育をめぐる状況に鑑み,中央教育審議会高等学校教育部会において平成26年6月,高等学校教育の現状と課題や今後の高等学校教育の在り方等についての「審議まとめ」が取りまとめられました。
 この「審議まとめ」では,社会で生きていくために必要となる力や社会の発展に貢献し得る力を共通して身に付けられるよう,「共通性の確保」を図りつつ,生徒や高校の実態を踏まえた「多様化への対応」も併せて進めることにより,高等学校教育の質の確保・向上を目指すこととしています。
 具体的施策として,達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の導入や,幅広い資質の多面的な評価など学習成果や教育活動の把握・検証の推進,学校から社会・職業への円滑な移行の推進,多様な生徒の学習形態や進路希望に対応した教育活動の推進,広域通信制課程の在り方の検討などを進めて行くことが重要であることが示されました。
 このうち,達成度テスト(基礎レベル)(仮称)については,平成26年12月の中央教育審議会「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」及び文部科学省に置かれた高大接続システム改革会議が28年3月に取りまとめた「最終報告」において高等学校基礎学力テスト(仮称)として考え方が提言され,有識者による検討・準備グループにおける検討や実践研究校の協力を得て実施された試行調査の成果等を踏まえ,29年7月に名称も新たに「高校生のための学びの基礎診断」として実施方針を策定・公表しました。その後,有識者によるワーキング・グループにおける専門的な検討を加え,高校・教育委員会等の関係者,民間事業者等の意見やパブリック・コメントによって得られた意見等を考慮しつつ,30年3月に認定基準等を策定・公表しました(※12)。
 また,多様化する生徒の学習ニーズに対応するため,定時制課程や通信制課程等における困難を抱える生徒等への支援・相談体制の充実を図るための事業を実施しています。
 さらに,離島や過疎地等における教育機会の確保や多様かつ高度な教育に触れる機会の提供を目的として,全日制・定時制課程の高等学校における遠隔教育を一定の要件の下に可能とする制度が平成27年度から導入されました。この遠隔教育の普及促進を図るため,先導的に取り組んでいる教育委員会等に対し財政的な支援を行い,そこで得られた実践事例をもとに成果と課題の検証を行っています。
 また,一部に不適切な教育運営の実態が明らかとなり,質の確保・向上が強く求められた高等学校通信教育については,文部科学省において,平成28年3月に「広域通信制高校に関する集中改革プログラム」を取りまとめ,30年度までの約2年間を「広域通信制高校の質の確保・向上に向けた集中点検期間」と位置付けました。この集中改革プログラムに基づき,同年9月には,「広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」における議論を経て,「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン」を策定しました。これらを踏まえ,文部科学省として所轄庁に全面的に協力しつつ,広域通信制高等学校に対して,実地による点検調査等を実施しているところです。
 平成29年7月,点検調査等を通じて明らかになった課題を踏まえ,調査研究協力者会議において「高等学校通信教育の質の確保・向上方策について(審議のまとめ)」が取りまとめられ,今後更に講ずべき方策について提言がなされました。この「審議のまとめ」を踏まえ,学校の運営改善や所轄庁の指導監督等に資するため,30年3月,ガイドラインの改訂や,面接指導等実施施設を学則の記載事項とする学校教育法施行規則の改正(30年4月1日施行)などの施策を行ったところです。
 文部科学省としては,今後,更なる改善方策を実施することにより,高等学校通信教育の質の確保・向上に努めてまいります。


  • ※12 参照:第1部教育再生の着実な推進第2節2(1)3(ア)

第7節 教科書の充実

 教科書は,学校における教科の主たる教材として,児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たすものです。教育の機会均等を実質的に保障し,全国的な教育水準の維持向上を図るため,小・中・高等学校,特別支援学校などにおいては,教科書を使用しなければならないとされています。教科書は,次のような過程を経て,児童生徒の元に届けられ,使用されています。

 図表2‐4‐7 教科書が使用されるまで

 図表2‐4‐8 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

1 教科書検定

 教科書検定制度は,民間の発行者の創意工夫による多様な教科書の発行を期待するとともに,1.全国的な教育水準の維持向上,2.教育の機会均等の保障,3.適正な教育内容の維持,4.教育の中立性の確保などの要請に応えるため実施しているものです。
 教科書検定は,学習指導要領や教科用図書検定基準に基づき,各分野の専門的な知見を有する教科用図書検定調査審議会の委員によって,専門的・学術的な審議に基づいて厳正に行われています。
 国民の教科書に対する高い関心に応え,教科書への信頼を確保するとともに,検定への一層の理解を得るため,検定結果の公開を行い,透明性の確保を図っています。平成29年度は,28年度に行った小学校(特別の教科 道徳)及び高等学校(主として中学年)用教科書の検定結果を公開しました(※13)。
 また,平成29年5月に取りまとめられた教科用図書検定調査審議会報告「教科書の改善について」を踏まえ,新学習指導要領の実施等に向けた検定基準等の改正を順次行っているところです。


  • ※13 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1383598.htm
     http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1386005.htm

2 教科書採択

 教科書採択は,地域や児童生徒の実情に応じて,学校で使用する教科書を決定することであり,公立学校(公立大学法人が設置する学校を除く。)では設置者である都道府県や市町村の教育委員会,国立学校・公立大学法人が設置する学校・私立学校では校長が行っています。公立の小・中学校等において使用される教科書の採択については,都道府県教育委員会が,市町村教育委員会の意見を聴いて採択地区を設定します。複数の市町村から構成される採択地区では,地区内の市町村教育委員会は,規約を定めて採択地区協議会を設け,その協議の結果に基づいて種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
 教科書採択においては,採択権者の判断と責任の下,1.教科書の内容に関する十分な調査研究,2.静ひつな採択環境の確保,3.採択結果・理由等の公表などが求められています。文部科学省では,各教育委員会に対して,調査研究のより一層の充実,採択事務のルール化などの採択手続の明確化,採択地区の適正規模化など,採択のより一層の改善に努めるように指導しています。
 また,平成27年度から28年度にかけて,複数の教科書発行者による,教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせる行為が相次いで発覚したことを受けて,文部科学省は,教科書発行者に対する指導を行うとともに,再発防止に向けた取組を行いました。平成29年度には,「特別の教科 道徳」の小学校用教科書の初めての採択が行われました。

3 義務教育教科書無償給与

 義務教育教科書無償給与制度は,「日本国憲法」第26条が掲げる義務教育無償の精神をより広く実現する制度として,昭和38年度以来50年以上にわたって実施され,国民の間に広く定着しています。この制度は,次代を担う児童生徒に国民的自覚を深めてほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり,同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。教科書無償給与の対象となるのは,全ての義務教育諸学校の児童生徒が使用する全教科の教科書であり,本制度の実施のため,平成29年度には約416億円の予算が計上され,約990万人の児童生徒に対して,合計約9,300万冊の教科書が給与されました。

4 教科用特定図書等の普及充実

 平成20年の「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の制定を受け,拡大教科書など障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図っています。
 具体的には,できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるような拡大教科書の標準的な規格を定めるなど,教科書発行者による拡大教科書の発行を促しているほか,全国5ブロックで,都道府県教育委員会等を対象とした音声教材の普及推進のための会議を開催しています。
 平成29年度に使用される小・中学校用の検定教科書のほぼ全点について標準規格に適合する拡大教科書が,必要な児童生徒に供給されています。また,教科書発行者が発行する拡大教科書では対応できない児童生徒のために,児童生徒一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して,教科書デジタルデータの提供を行っています。
 このほか,発達障害等の障害により検定教科書において一般的に使用されている文字や図形などを認識することが困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等として音声教材の整備充実を図るため,ボランティア団体の協力等を得ながら,調査研究などを行っています。

 図表2‐4‐9 拡大教科書の発行点数(平成29年度)

5 デジタル教科書の制度化に向けた検討

 平成28年12月に取りまとめられた「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の最終まとめや,29年10月の中央教育審議会初等中等教育分科会の議論において,紙の教科書を主たる教材として使用することを基本としつつ,必要に応じて,デジタル教科書を併用することが適当とされました。これを踏まえ,新学習指導要領の実施を見据えてデジタル教科書を導入することができるよう,30年通常国会に「学校教育法等の一部を改正する法律案」を提出し,同年5月25日に成立しました。

第8節 いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応

1 生徒指導上の諸課題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は,全ての児童生徒を対象として,学校のあらゆる教育活動の中で,それぞれの人格の健全な発達・成長を目指すとともに,現在及び将来における自己実現を図っていくために,児童生徒が自らを導いていく能力を育成すること,そして,学校生活が有意義で興味深く,充実したものになることを目指して行われるものです。生徒指導の積極的な意義を考慮し,児童生徒に社会的な資質や能力,態度などを修得・発達させるような指導・援助が行われています。
 一方,いじめの問題や少年による重大事件などは教育上の大きな課題となっています。文部科学省では,毎年度,各都道府県教育委員会などを通じて調査を行い,暴力行為,いじめ,不登校などの生徒指導上の諸課題の実態把握に努めています。平成28年度の調査結果では,小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約5万9,000件,小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約32万3,000件,小・中・高等学校における不登校児童生徒数は約18万2,000人となっています。
 学校においては,日常的な指導の中で,教師と児童生徒との信頼関係を築き,全ての教育活動を通じて規範意識や社会性を育むきめ細かな指導を行うとともに,問題行動の未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また,問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応を取るとともに,問題を隠すことなく,教職員が一体となって対応する必要があります。さらに,教育委員会は学校を適切にサポートする体制を整備すること,そして,家庭や地域社会,警察・法務局・児童相談所等の関係機関の理解と協力を得て地域ぐるみで取り組む体制づくりを進めていくことが重要です。
 文部科学省では小学校段階から高等学校段階までの組織的・体系的な取組を進めるため,生徒指導の概念・取組の方向性等を整理した学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し,各教育委員会及び学校などに配布するとともに,指導や研修での活用を促し,生徒指導の一層の充実を図っています。

(2)いじめ

 「いじめ防止対策推進法」(以下,「法」という。)においては,いじめは「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」(第2条第1項)と定義されています。個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は,表面的・形式的にすることなく,いじめられた児童生徒の立場に立つことが必要です。
 いじめ問題については,まず,「いじめは絶対に許されない」との意識を社会全体で共有し,子供を「加害者にも,被害者にも,傍観者にもしない」教育を実現することが必要です。また,いじめ問題に適切に対処するためには,子供たちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることも大切です。
 平成24年度には,いじめの問題を背景として生徒が自らその命を絶つという痛ましい事案をきっかけに,大きな社会問題となりました。25年6月に法が成立したことを受け,文部科学省では,同年10月に「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下,「基本方針」という。)を策定しました。
 文部科学省では,法や基本方針の策定を受け,教育委員会関係者や教職員に内容の周知を図り,いじめの防止等への取組を徹底するため,「いじめの問題に関する指導者養成研修」や「いじめの防止等のための普及啓発協議会」を開催しています。加えて,平成28年度においては,法施行後3年を経過したことを受け,「いじめ防止対策協議会」において法の施行状況の検証を行いました。この検証の結果を踏まえ,国の基本方針の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定を行いました。
 また,平成28年度,全国の国公私立の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約32万3,000件,いじめを認知した学校数は約2万6,000校で学校総数に占める割合は約68.3%となっています(図表2‐4‐10)。
 いじめは,どの子供にも,どの学校にも起こり得るものですが,いじめの認知件数については,問題行動等調査における1,000人当たりの認知件数の都道府県間の差が大きく,実態を正確に反映しているとは言い難い状況にあります。このため,文部科学省としては,いじめの認知件数が多い学校について,「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し,その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価し,いじめの積極的な認知を徹底するよう促しています。

 図表2‐4‐10 いじめの認知(発生)件数の推移

1.いじめ対策・不登校支援等総合推進事業

 いじめの未然防止,早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため,「いじめ対策・不登校支援等総合推進事業」を拡充し,地方公共団体におけるいじめの問題等への対応を支援しています。

2.いじめ防止対策協議会の開催

 文部科学省では,学校関係者や各種職能団体等の関係団体から有識者の参画を得た「いじめ防止対策協議会」を開催し,法に基づく取組状況の把握と検証を的確に行うとともに,いじめの問題に取り組む関係者間の連携強化を図っています。平成29年度においては,同協議会の下に「SNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築に係るワーキンググループ」を設置し,ソーシャルネットワークサービス(SNS)等を活用する利点・課題等について検討を行いました(※14)。

3.全国いじめ問題子供サミットの開催

 いじめを未然に防止するためには,子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み,解決につなげていく意識を高め,実行していくことが効果的です。このため,子供自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成するとともに,全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため,平成28年度に引き続き,30年1月に「全国いじめ問題子供サミット」を開催しました。

4.「ネットいじめ」への対応

 近年,インターネットや携帯電話を利用したいじめ(いわゆる「ネットいじめ」)が深刻な問題になっています。また,「ネットいじめ」のうち,SNSでのいじめについては,第三者が閲覧できないため従来の取組で対応できない場合もあります。こうしたいじめの未然防止のためには,子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み,解決につなげていく意識を高め,実行していくことや情報モラルを身に付けさせることが重要です(※15)。また,改定後の基本方針に,インターネット上のいじめは,「刑法」上の名誉毀損罪や侮辱罪,民事上の損害賠償請求の対象となり得ることや,インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり,被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取組を行うことを盛り込みました。
 文部科学省では平成26年度から,ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールなど都道府県・指定都市における取組への支援を行っています。

5.東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒に対するいじめへの対応

 文部科学省では,原子力発電所事故により避難している児童生徒がいじめに遭い,学校等が適切な対応を行わなかった事案について,平成28年12月,被災児童生徒を受け入れる学校に対して,被災児童生徒がいじめを受けていないかどうか確認を行うことなどの対応を求める「東日本大震災により被災した児童生徒を受け入れる学校の対応について」(平成28年12月16日付け 初等中等教育局長通知)を発出しました。また,29年3月,基本方針を改定して,原子力発電所事故の避難者である児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組むことを新たに盛り込み,教職員に対して適切な対応を求めています。さらに,同年4月に,被災児童生徒へのいじめの防止について,全国の児童生徒等に向けて,文部科学大臣からメッセージを発表するとともに,上記28年12月に発出した通知により各教育委員会に求めたいじめの状況等の確認について,フォローアップ結果を公表しました。


  • ※14 参照:第2部第4章第8節2
  • ※15 参照:第2部第11章第1節

(3)暴力行為

 平成28年度,全国の国公私立の小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は,学校の管理下で発生したものが,全学校の30.6%に当たる約1万1,000校において約5万6,000件,学校の管理下以外で発生したものが,全学校の5.9%に当たる約2,100校において約3,200件となっており,依然として相当数に上っています(図表2‐4‐11)。

 図表2‐4‐11 学校の管理下・管理下以外における暴力行為発生件数の推移

(4)不登校

 平成28年度の全国の国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約13万4,000人,高等学校は約4万9,000人と,依然として相当数に上っています(図表2‐4‐12)。
 文部科学省では,総合的な不登校施策について検討を行うため,平成27年1月から「不登校に関する調査研究協力者会議」を開催し,28年7月に最終報告を公表しました。この最終報告を受け,「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平成28年9月14日付け 初等中等教育局長通知)を発出し,不登校は多様な要因や背景から結果として不登校状態となっており,問題行動と判断してはならないことや,不登校児童生徒への支援は,学校に登校するという結果のみを目標とするのではなく,児童生徒の社会的自立を目指すことなど,新たな不登校児童生徒への支援の在り方を示しました。
 また,フリースクール等で学ぶ子供たちの現状を踏まえ,平成27年1月から「フリースクール等に関する検討会議」を開催し,29年2月に,教育委員会・学校と民間の団体等が連携した支援を推進することなど,不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援の充実等について提言した報告を公表しました。
 さらに,平成28年12月には,不登校児童生徒が学校以外の場で行う多様で適切な学習活動の重要性や,個々の不登校児童生徒の休養の必要性等を規定した,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立し,不登校児童生徒への支援について,初めて体系的に法律で規定されました。同法に基づき,文部科学省では,29年3月に不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針として,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」を策定しました。
 本基本指針では,全ての児童生徒にとって,魅力あるより良い学校づくりを目指すとともに,いじめ,暴力行為等の問題行動を許さないなど,安心して教育を受けられる学校づくりについても推進するとともに,不登校児童生徒への支援は,児童生徒が社会的に自立することを目指し,個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援を行うことなどを基本的な考え方とし,不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を定めています。
 これらを踏まえ,平成29年度予算において,教育支援センターの設置促進やフリースクールなど民間団体との連携による支援を推進するため,学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究を実施し,30年度予算においても引き続き,同調査研究を実施するなど,個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援の推進を図ることとしています。

 図表2‐4‐12 不登校児童生徒数の推移

(5)高等学校中途退学

 平成28年度の全国の国公私立の高等学校における中途退学者数は約4万7,000人,在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は1.4%となっています(図表2‐4‐13)。中途退学の理由としては,「学校生活・学業不適応」(33.6%),「進路変更」(33.8%)などが挙げられます。
 高等学校中途退学への対応については,各高等学校において,一人一人の生徒が主体的に目標や意欲を持って学ぶことができるよう,生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに,キャリア教育の充実や一層きめ細かな教育相談を実施することなどが重要です。また,就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。
 文部科学省では,教育相談体制の充実を図るため,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を拡充しているほか,中途退学者に対する学校段階からの切れ目のない支援のため,地域若者サポートステーション等の関係機関と学校との連携を促進しています。
 また,文部科学省において,全国の公立高等学校における妊娠を理由とした退学等の実態把握を行いました。その結果,平成27年4月から29年3月までの2年度間に生徒の妊娠の事実を学校が把握した件数(2,098件)のうち,妊娠を理由に懲戒として退学の処分を行った事案は認められなかったものの,生徒又は保護者が引き続きの通学を希望していた等の事情があるにもかかわらず学校が退学を勧めた事案が32件認められました。これを踏まえ,30年3月,「公立の高等学校における妊娠を理由とした退学等に係る実態把握の結果等を踏まえた妊娠した生徒への対応等について」(平成30年3月29日付け 初等中等教育局児童生徒課長・初等中等教育局健康教育・食育課長通知)を発出しました。同通知では,生徒が妊娠した場合には,関係者間で十分に話し合い,母体の保護を最優先としつつ,教育上必要な配慮を行うべきこと,その際,生徒に学業継続の意思がある場合は,安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処を行わないという対応も十分考えられることなど,基本的な考え方を示しました。同通知の趣旨を徹底するよう,全国の生徒指導担当者を対象とした会議等において周知を図っています。

 図表2‐4‐13 高等学校における中途退学者数及び中途退学率の推移

(6)自殺

 厚生労働省・警察庁「平成29年中における自殺の状況」(平成30年3月)によると,29年中の小・中・高等学校の児童生徒の自殺者数は357人となっています。また,29年には人の目の届きにくいSNSを利用し,自殺願望を投稿するなどした高校生等の心の叫びに付け込んで,言葉巧みに誘い出し殺害するという極めて卑劣な事件が発生し,これを受けて,平成29年12月19日に,座間市における事件の再発防止に関する関係閣僚会議において「座間市における事件の再発防止策」が取りまとめられました。
 文部科学省では,命の大切さを学ぶ教育などを通じて児童生徒の自殺の防止に取り組むとともに,その特徴や傾向などを考慮した対策を検討するため,平成20年度から有識者会議を開催しています。また,児童生徒の自殺予防や,不幸にして自殺が起きたときの緊急対応に必要な学校・教職員向けの資料を作成し,各教育委員会や学校に配布してきました。26年度には,学校における自殺予防教育導入の手引である「子供に伝えたい自殺予防」,「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」を作成しました。29年度も引き続き,各教育委員会等の生徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会」を開催し,児童生徒の自殺対策について周知を図っています。
 また,平成30年1月には,文部科学省・厚生労働省の連名で「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態,強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育の推進について」(平成30年1月23日付け 初等中等教育局児童生徒課長・厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)通知)を発出し,新たな自殺総合対策大綱(平成29年7月25日閣議決定)に定められた「SOSの出し方に関する教育」の推進を求めました。
 さらに,18歳以下の自殺は,学校の長期休業明けに掛けて急増する傾向があることから,長期休業前から期間中,長期休業明けの時期に掛けて学校における早期発見に向けた取組,保護者に対する家庭における見守りの促進,学校内外における集中的な見守り活動,ネットパトロールの強化を実施するよう,夏休み等の長期休業前にそれぞれ対応を求めたところです。

2 教育相談体制の整備・充実

 児童生徒のいじめの問題などに適切に対処するためには,児童生徒の悩みや不安などを受け止めて,速やかに相談できるよう教育相談体制を整備することが重要です。
 文部科学省では,平成27年12月に「教育相談等に関する調査研究協力者会議」を開催し,29年1月に,今後の教育相談の在り方,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの職務内容,学校及び教育委員会における体制の在り方など,児童生徒の教育相談の充実について提言した報告を公表しました。
 さらに,平成27年12月の中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」等を踏まえ,「学校教育法施行規則」の一部を改正し,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーについて,「スクールカウンセラーは,学校における児童の心理に関する支援に従事する」,「スクールソーシャルワーカーは,学校における児童の福祉に関する支援に従事する」と同規則に職務内容を規定したところです(29年4月1日施行)。
 また,学校等における教育相談体制を整備するために,スクールカウンセラーや,スクールソーシャルワーカーを配置する都道府県等に対して補助を行っています。
 平成29年度は公立中学校及び公立小学校にスクールカウンセラーを配置するために必要な経費の補助を行ったほか,貧困・虐待対策のための重点加配を行いました。30年度予算では,全公立中学校に対するスクールカウンセラーの配置に加えて,引き続き,生徒指導上の大きな課題を抱える公立中学校等でスクールカウンセラーによる週5日の相談体制を実施し,常時生徒が相談できる体制づくりを推進することとしています。また,公立小学校については,小中連携型配置の拡充を含む1万6,700校への配置の拡充を行います。さらに,貧困・虐待対策のための重点加配(1,000校)に必要な経費を計上しています。
 また,平成29年度は,小・中学校等にスクールソーシャルワーカーを配置するために必要な経費の補助を行ったほか,貧困・虐待対策のための重点加配を行いました。30年度予算では,配置する人数を拡充し7,547人とするとともに,貧困・虐待対策のための重点加配(1,000人)と質向上のためのスーパーバイザー配置(47人)に必要な経費を計上しています。
 さらに,文部科学省では,夜間・休日を含め24時間いつでも子供のSOSを受け止めることができるよう,「24時間子供SOSダイヤル」を整備しています。なお,平成28年度からは同ダイヤルが無料化され,電話番号が「0120-0‐78310」に改められています。
 加えて,近年,若年層の多くが,SNSを主なコミュニケーション手段として用いているとともに,SNS上のいじめへの対応も大きな課題となっている状況を受け,文部科学省では,いじめを含む様々な悩みに関する児童生徒の相談に関して,SNS等を活用する利点・課題等について検討を行うため,平成29年7月に有識者会議を開催し,30年3月,「SNS等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)」を取りまとめました。また,30年から地方公共団体に対し,SNS等を活用した児童生徒向けの相談体制の構築を支援しています。
 さらに,平成25年度から,都道府県や市区町村における,第三者的立場からいじめ問題等を調整・解決する取組や,外部専門家を活用して学校を支援する取組に対して補助を行っています。

3 体罰の禁止

 体罰は,「学校教育法」により厳に禁止されており,児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また,体罰は,違法行為であるのみならず,児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え,教員等及び学校への信頼を失墜させる行為であり,児童生徒に力による解決への志向を助長させ,いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがあります。
 しかし,平成24年度には,部活動中の体罰が背景にある生徒の自殺事案が発生し,大きな社会問題となりました。この事案や教育再生実行会議の第一次提言「いじめ問題等への対応について」を踏まえ,懲戒と体罰の区別等についてより一層適切な理解促進を図るとともに,教育現場において,児童生徒理解に基づく指導が行われるよう,「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成25年3月13日付け 初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出しました。同通知では,懲戒と体罰の区別について,具体例を示して分かりやすく説明するとともに,部活動指導に当たっての留意事項を示しています。さらに,「体罰根絶に向けた取組の徹底について」(平成25年8月9日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出し,厳しい指導の名の下で,若しくは保護者や児童生徒の理解を理由として,体罰や体罰につながりかねない不適切な指導を見過ごしてこなかったか,これまでの取組を検証し,体罰を未然に防止する組織的な取組,徹底した実態把握,体罰が起きた場合の早期対応及び再発防止策,事案に応じた厳正な処分など,体罰防止に関する取組の抜本的な強化を図るよう求めました。
 平成24年度以降は,国公私立学校における処分が行われた体罰の状況についてまとめた調査結果を毎年度公表し,体罰の実態を把握するとともに,その禁止の徹底に努めています。
 運動部活動における体罰禁止の徹底については,平成25年3月に「運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催しました。同年5月には運動部活動の指導者が,指導に当たって萎縮しないよう,また,体罰に頼らない指導の充実が図られるよう「運動部活動での指導のガイドライン」を策定しました。このガイドラインにおいては,運動部活動における指導と許されない指導の一定の考え方を示すとともに,運動部活動の指導に係る運営,体制等についても必要事項を掲載しています。
 文部科学省では,このガイドラインを各学校等に周知し,運動部活動の現場から体罰を根絶するよう努めています。

第9節 道徳教育の充実

 学校教育では,調和のとれた人間の育成を目指して,子供たちの発達の段階に応じた道徳教育を展開することとしています。幼稚園では,各領域を通して総合的な指導を行い,道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では,道徳の時間(週当たり1単位時間)を要として,各教科,総合的な学習の時間,特別活動などそれぞれの特質に応じて適切な指導を行い,学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では,人間としての在り方生き方に関する教育を,学校の教育活動全体を通じて行うことにより,その充実を図ることとしています。
 他方,小・中学校に道徳の時間が設置されてから約70年がたちますが,これまで学習指導要領の趣旨を踏まえ,学校の創意工夫を生かした素晴らしい実践が行われている一方で,道徳教育が本来の役割を果たしきれていないのではないかという指摘もなされてきました。また,今後,人工知能をはじめとする技術革新が進むなど,将来を予測することがますます困難な時代になると予想されます。このような時代を前に,私たち人間に求められるのは,感性を豊かに働かせながら,自分なりに試行錯誤したり,多様な他者と協働したりして,新しい価値を生み出していくことであり,こうした中で,より良く生きるための基盤となる資質・能力を養う道徳教育の役割はますます重要となっています。
 文部科学省では,このような状況を踏まえ,道徳教育の更なる充実のため,道徳の時間を「特別の教科 道徳」(道徳科)として位置付けることなどに係る学習指導要領の一部改正等を行いました。このことにより,答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童生徒が自分自身の問題と捉え,向き合う,「考える道徳」,「議論する道徳」へと転換が図られるものと考えています。
 今回の改正の主なポイントは次のとおりです。

  1. 内容について,いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものに改善
  2. 問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れ,指導方法を工夫
  3. 数値評価は引き続き実施せず,児童生徒の道徳性に係る成長の様子を継続的に把握
  4. 道徳科に検定教科書を導入

 今回の改正を踏まえ,小学校では平成30年度から,中学校では31年度からそれぞれ道徳科が全面実施されます。また,27年度から小・中学校それぞれの実施年度までの間は移行措置として,改正学習指導要領の趣旨を踏まえた取組が可能となっています。
 また,評価や指導要録の在り方等については,平成28年7月の「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」の報告を踏まえ,同月に文部科学省から「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成28年7月29日付け 初等中等教育局長通知)を発出し,道徳科の評価の在り方や指導要録の参考様式について周知・徹底を図りました。
 その中では,従来どおり数値による評価は行わないことを前提として,以下のとおり基本的な考え方を示しています。

  1. 他の児童生徒との比較による評価ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として記述式で行うこと
  2. 個々の内容項目ごとではなく,大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること
  3. 児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか,道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること
  4. 道徳科の評価は,入学者選抜の合否判定に活用することのないようにすること

 また,高等学校では,平成30年3月に告示した新学習指導要領において,校長のリーダーシップの下,道徳教育推進教師を中心に,全ての教師が協力して道徳教育を展開することを新たに規定するとともに,公民の「公共」,「倫理」,特別活動が,人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることを明記しました。
 さらに,文部科学省では,道徳科の全面実施に向け,道徳教育の充実のための資料等をホームページ上で公開する「道徳教育アーカイブ」を平成29年5月に開設し,各学校の児童生徒の実態に応じた多様な創意工夫を生かした授業づくりを支援しています。このほかにも,各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため,研修の充実や外部講師の活用,郷土の歴史や偉人などを取り上げた地域教材の作成,家庭・地域との連携を強化する取組など地方公共団体等における多様な取組を支援する「道徳教育の抜本的改善・充実に係る支援事業」を実施しています。

第10節 人権教育の推進

 「日本国憲法」及び「教育基本法」の精神にのっとり,学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することは重要なことです。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」及び「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定,23年4月1日一部変更)に基づき,政府全体として人権教育・啓発を推進しています。学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じて,学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高めるための指導を進めており,一人一人を大切にする教育の推進に努めています。
 文部科学省では,学校教育の分野において,「人権教育の指導方法等の在り方について[第3次まとめ]」(平成20年3月)等を踏まえつつ,学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や学校における指導方法の改善充実について実践的な研究を行う「人権教育研究推進事業」を実施し,人権教育の先進的な取組の普及に努めています。
 また,平成23年度から27年度まで人権教育の全国的な推進を図るため,人権教育の実践事例の収集・公表を実施しました。28年度においては,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(平成28年法律第68号)が施行されたことを踏まえ,学校における人権教育の一層の推進に資するため,外国人の人権尊重に関する実践事例を収集し公開しました。
 さらに,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」(平成27年4月30日付け 初等中等教育局児童生徒課長通知)を発出するとともに,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」を28年4月に作成し,学校へ周知しました。
 そのほか,平成22年度から開始した都道府県等の人権教育担当指導主事等を対象とする「人権教育担当指導主事連絡協議会」を引き続き開催しており,人権教育の重要性について改めて認識を共有するとともに,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」及び「部落差別の解消の推進に関する法律」(平成28年法律第109号),北朝鮮による日本人拉致問題や「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」等について引き続き周知を図っています。

第11節 子供の健康と安全

 学校は,子供の健やかな成長を目指して教育活動を行う場であり,子供の健康と安全を保つことは重要です。文部科学省では,学校における食育の推進,心と体の健康問題への対応,学校における子供の安全確保に向けて,様々な施策に取り組んでいます。
 また,学校における食育の推進並びに安全に関する指導及び心身の健康の保持増進に関する指導については,これまでも学校の教育活動全体として取り組むことが重要であるとされてきましたが,平成29年3月に公示された新たな学習指導要領の総則においては,体育科(保健体育科),家庭科(技術・家庭科)及び特別活動の時間はもとより,それ以外の各教科や総合的な学習の時間等においても適切に行うよう示しています。さらに,教育課程の編成及び実施にあたっては,学校保健計画,学校安全計画,食に関する指導の全体計画等,各分野における学校の全体計画等と関連づけながら効果的な指導を行うこととしています。

1 食育,学校給食の推進

(1)栄養教諭を中心とした食育の推進について

 近年の子供の食を取り巻く環境の変化に対応するためには,学校において,栄養教諭が中心となって各教職員が連携・協力して食育を推進する体制を整備し,学校の教育活動全体を通じて体系的・継続的に食に関する指導を行うことが重要です。新たな学習指導要領の総則においても,学校における食育の推進は,食に関する指導の全体計画と関連付けながら,各教科等においてそれぞれの特質に応じて適切に行うことし,学校の教育活動全体を通じて食育を推進することを示しています。
 さらに,文部科学省では,平成29年度から,栄養教諭と養護教諭等が連携した家庭へのアプローチや,体験活動を通した食への理解促進など,学校を核として家庭を巻き込んだ取組を推進し,子供の日常生活の基盤である家庭における食に関する理解を深めることにより,効果的に子供の食に関する自己管理能力の育成を目指す「つながる食育推進事業」を実施しています。

(2)学校給食の充実について

 学校給食は,栄養バランスの取れた食事を子供に提供することによって子供の健康の保持増進を図ることに加え,食に関する指導を効果的に進めるための教材として活用することができるなど大きな教育的意義を持っています。平成28年5月現在,小学校では1万9,510校(全小学校の99.2%),中学校では9,000校(全中学校の89.0%)が学校給食を実施しています(図表2‐4‐14)。

 図表2‐4‐14 学校給食実施状況(国公私立)

 各学校では,学校給食の食材として地場産物を活用したり,地域の郷土料理・伝統料理などを献立に活用したりする取組が進められています。「第3次食育推進基本計画」では,平成32年度までに,学校給食における地場産物の使用割合を30%以上(28年度の使用割合は25.8%),学校給食における国産食材の使用割合を80%以上(同75.2%)とすることを目指すこととされています。
 文部科学省では,平成28年度から,学校給食において,食品ロスの削減,地産地消の推進,伝統的食文化の継承などの社会的課題に対応するため,食品の生産・加工・流通等の関係者と連携しつつ,学校給食をより効果的かつ効率的に運用するための手法を開発する「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」を実施しています。
 その他,学校におけるアレルギー対応の改善・充実のための資料として,「学校給食におけるアレルギー対応指針」,「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン要約版」,「学校におけるアレルギー疾患対応資料(DVD)」を作成し,全国の教育委員会や学校等へ配布し,全教職員に対する理解の促進と事故防止の徹底を図っています。

2 学校保健の充実

(1)子供の健康課題に対する総合的な取組

 現代の多様化・深刻化する子供の健康課題に対応するため,心の健康や性に関する問題,喫煙,飲酒,薬物乱用防止について記述した「児童生徒の心と体を守る啓発教材」を作成し,全国の小学校,中学校,高等学校等に配布しました。
 また,退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして派遣する事業の実施や,メンタルヘルスの問題,各種感染症,アレルギー疾患など学校だけでは解決することができない児童生徒の現代的な健康問題について地域検討委員会を設置し地域の医療機関等と連携して解決を図る事業を実施するなど様々な施策を講じています。そして,学校におけるアレルギー疾患の対応の充実を図るため,教職員や指導主事などを対象とする講習会を毎年全国6か所で開催しており,「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」などの普及啓発を一層推進しています。
 さらに,学校,家庭,地域の専門機関等が連携し,学校における健康課題を協議することによって児童生徒等の健康づくりを推進する学校保健委員会の設置を推進しており,平成28年度の設置率は96%と高い水準を実現しています。

(2)がん教育の推進

 がん対策については,厚生労働省が中心となって,「がん対策基本法」の下で政府が策定する「がん対策推進基本計画」に基づいて行われており,現在は平成29年度から34年度までの第三期の計画期間となっています。同計画では,がん教育に関する個別目標として,国は,全国の実施状況を把握した上で,地域の実情に応じた外部講師の活用体制を整備し,がん教育の充実に努めるとされています。文部科学省では,同計画の達成に向けて,がん教育の実施状況に関する調査を実施し,各都道府県等が主体的に行うがん教育に関する取組に対して支援を行うことによって各地域におけるがん教育の充実を図っています。

(3)薬物乱用防止教育の充実

 近年の青少年の薬物乱用問題については,これまでの諸対策によって,薬物は絶対に使うべきではないと考える児童生徒の割合が高くなるなど規範意識の向上が見られ,一定の成果が認められています。一方,平成28年中の大麻事犯の検挙人員については,全体の約45%を少年及び20歳代までが占めており,依然として若者を中心に乱用されている状況がうかがえることが指摘されているほか,若者による危険ドラッグの乱用がいまだに確認されています。
 文部科学省では,全ての中学校及び高等学校において,年に1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに,地域の実情に応じて小学校においても薬物乱用防止教室の開催に努めるなど,薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう都道府県教育委員会等を指導しています。また,高等学校学習指導要領「保健体育」において新たに大麻を扱うこととし,大麻の有害性・危険性に関する指導を充実するなど,薬物乱用防止教育の推進に努めています。
 さらに,薬物乱用防止教室の指導者を対象とした講習会等の開催や,大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレットの作成・配布等を通して,薬物乱用防止に関する啓発の強化を図っています。

3 学校安全の推進(※16)

(1)子供の安全に関する総合的な取組

 平成21年4月に施行された「学校保健安全法」に基づき,学校安全を取り巻く様々な課題に対して学校全体としての取組体制を整備充実させるため,文部科学省では,29年3月,「第2次学校安全の推進に関する計画」(※17)を策定しました。同計画には,学校安全の推進の方向性として目指すべき姿や施策目標を明示した上で,新たに,学習指導要領の改訂等を踏まえた安全教育の充実方策や,第1次計画策定後の新たな安全上の課題への対応等を盛り込んでおり,今後は,同計画に基づき,学校安全の取組を推進することとしています。


  • ※16 防災教育については参照:第2部第2章第4節1
  • ※17 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1383652.htm

(2)学校での子供の安全確保の充実

 学校は児童生徒等が安心して学習を行うことが求められる場所であり,学校においてその安全な環境を整備し,事件・事故を防止するための取組を進める必要があります。
 このため,安全対策として実施する監視カメラや非常通報装置,自動体外式除細動器(AED)の設置などに関する経費に対して地方財政措置が講じられています。また,文部科学省では,学校における安全教育や安全管理の充実に資するため,教職員向け学校安全資料を作成しています。平成30年2月には,近年の様々な安全上の課題等を踏まえ,学校が危機管理マニュアルを作成する際に参考となる「学校の危機管理マニュアルの作成の手引」を改訂しました。このほか,学校,教育委員会,道路管理者,警察などの関係機関が連携して実施する通学路の交通安全対策を促すとともに,各地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等の継続的な取組を促すなど,通学路における交通安全の確保に向けた取組を推進しています。
 また,学校の管理下で発生した様々な事故の教訓を踏まえ,平成26年度から27年度にかけて開催された「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議での議論に基づき,事故後の対応の在り方や再発防止に関する「学校事故対応に関する指針」を28年3月に取りまとめました(※18)。
 さらに,現下の国際情勢に鑑み,ミサイル・テロ等,突発的に大規模な災害をもたらし得る危険が発生するような状況に対しては,各地方公共団体の国民保護計画の方向性に沿って,学校の安全管理の一環として進めていくことができるよう,教育委員会等に対し,危機管理マニュアルの見直しや地方公共団体の危機管理部局との連携強化,訓練の実施などの取組を促しています。


  • ※18 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm

(3)地域ぐるみで子供の安全を守る環境整備

 学校内のみでなく登下校時を含めた子供の安全を確保するためには,地域社会全体で子供の安全を見守る体制の整備が必要です。先進事例として,例えば,セーフティプロモーションスクール(※19)の取組が挙げられます。
 また,文部科学省では,平成17年度から学校安全ボランティアを活用した地域ぐるみでの学校内外における子供の安全を見守る体制の整備に努めています。例えば,元警察官等がスクールガード・リーダー(※20)として学校を巡回したり,学校安全ボランティアに対して警備のポイントなどを指導したりするなどの各地域における子供の見守り活動に関する取組を支援しています。


  • ※19 セーフティプロモーションスクール:学校が地域の学校安全関係者や関係機関等と連携・協力し,PDCAサイクルに基づく学校安全計画の評価と次年度計画への反映等,安全推進の取組を継続的に実践する学校を認証する大阪教育大学による取組
  • ※20 スクールガード・リーダー:学校等を巡回し,学校安全体制及び学校安全ボランティアの活動に対して専門的な指導を行う者

(4)実践的な安全教育の充実

 学校における安全教育においては,児童生徒等が自他の生命を尊重し,日常生活全般における安全のために必要な事柄を実践的に理解し,生涯を通じて安全な生活を送ることができるような態度や能力を養う安全教育を,生活安全・交通安全・災害安全のそれぞれの分野において行うことが重要です。特に,子供の安全を確保するためには,子供自身に危険を予測し,危険を回避する能力を育成するよう実践的な安全教育を推進する必要があります。このため文部科学省では,学習指導要領などを踏まえ,学校における安全教育の教職員用の参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」(平成22年3月改訂),「『生きる力』を育む防災教育の展開」(25年3月改訂)のほか,各種の教職員用の資料や教材を作成し,これらの活用を促しています。また,「防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業」において,各学校における交通安全や防犯を含めた実践的な安全教育を支援しています。
 さらに,各地方公共団体や学校において,学校安全を推進する上で必要な情報や優れた取組事例を参考にできるよう,文部科学省や各地方公共団体が作成した資料等を掲載した学校安全ポータルサイト(※21)を開設し,平成28年4月から運用しています。


  • ※21 参照:https://anzenkyouiku.mext.go.jp/

第12節 きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員等の指導体制の整備

1 教師の資質能力の向上

(1)教師の養成・採用・研修の一体的な取組

 我が国の未来を担う子供たちへの教育の充実には,教育の直接の担い手である教師の資質の向上が不可欠です。教師には,これからの時代に求められる質の高い学びを実現するとともに,複雑化する教育課題に適切に対処するための指導力の向上が求められており,そのためには,教師自身が教職生涯にわたり学び続けていくことが必要です。一方で,近年,教師の大量退職・大量採用等によって教師の年齢構成や経験年数に不均衡が生じていることや,主に教師の養成を担う大学と主に研修を担う教育委員会等の連携が不十分であることなどの課題が挙げられていました。
 こうした状況を受け,平成28年11月に教育公務員特例法等の一部改正を行い,教育委員会と大学等の連携・協働を強化しつつ,教師の養成・採用・研修の各段階を通じてキャリアステージに応じた資質の向上を図る体制の整備に取り組んだところです。

1.教師の養成における取組

 教師の資質能力の向上において,教員免許状を得るための教職課程の在り方は大変重要です。文部科学省では教育職員免許法施行規則の改正を平成29年11月に実施し,新たな教育課題を大学等の教職課程において扱うことを定めました。具体的には,小中高の教職課程において総合的な学習の時間の指導法を独立して設けることや,全ての免許種の教職課程において特別支援教育に関する事項を独立して設け,1単位以上必修化することとしました。また,学生が長期間にわたり継続的に学校現場等で体験的な活動を行う機会を充実させるために新たに学校体験活動を設け,教育実習の単位の一部として含むことを認めることとしました。さらに,小学校の教職課程における外国語の教科に関する専門的事項や指導法を必修とするとともに,情報機器及び教材の活用,チーム学校運営への対応,学校と地域との連携,学校安全への対応,カリキュラム・マネジメント,キャリア教育等の内容を盛り込むこととで,教職課程全体の内容の充実を図りました。
 加えて,教職課程で共通的に身に付けるべき最低限の学修内容,達成目標について,教職課程コアカリキュラムの検討を行い,平成29年11月に制定しました。教職課程コアカリキュラムでは,施行規則に定められた事項ごとに全体目標,一般目標,到達目標を設定し,詳細な教育内容を規定しています。
 平成30年度中に大学等はこれらに対応する新しい教職課程について文部科学省の認定を受け,31年4月以降に入学する学生は,改正後の新しいカリキュラムを大学等で学び,教員免許状を取得することとなります。
 また,「教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」を実施しており,新たな教育課題に対応するための科目を教職課程に位置付けるための枠組みの構築に向けた取組や,教科教育に関して修得すべき資質能力の詳細を明らかにするためのコアカリキュラムの研究等を支援しています。

 図表2‐4‐15 教職課程コアカリキュラム例

2.教師の採用における取組

 文部科学省では,真に教師としての適性を有する人材の確保の観点から,各都道府県教育委員会等における採用選考の改善を促しています。都道府県教育委員会等では,学力試験の成績だけでなく,面接試験や実技試験の実施,受験年齢制限の緩和,様々な社会経験を適切に評価する特別の選考等を通じて,人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されています。個性豊かで多様な人材を確保するため,教職経験や民間企業等での勤務経験を有する者,英語に関する資格を持つ者,スポーツ・芸術での技能や実績を持つ者等を対象とした特別の選考などが実施されており,平成29年度に実施された採用選考では,学習指導要領の改訂を踏まえ,外国語に関する選考の充実等が行われています。(図表2‐4‐16)。

 図表2‐4‐16 平成29年度実施公立学校教員採用選考 実施方法等

 また,試験問題,解答,配点,選考基準の公表や,成績の本人開示など,採用選考の透明性を高めるための取組,不正を防止するための取組については,全ての県市で行われています。
 なお,条件付採用期間制度(※22)を適正に運用し,新規採用者の教師としての適格性を見極めるよう,各教育委員会の取組を促進しています。
 加えて,幅広い経験を持ち,優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,様々な形で学校教育に参加することも,学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。現在,教員免許状を取得していなくとも,各教科や総合的な学習の時間の一部などを担当することができる特別非常勤講師制度の活用が広がっており,平成28年度の活用件数は,全国で2万771件となっています。
 さらに,優れた社会経験のある者を学校現場に迎え入れるため,特別免許状を授与し,教諭の職に就くことができる制度が整備されています。都道府県教育委員会等が行う採用選考において,特別免許状の授与を前提とした社会人選考も行われています。
 特別非常勤講師や特別免許状の利用を促すため,各都道府県での活用事例を集めた「特別免許状等の活用に関する事例集」を平成29年3月に作成し,各都道府県に配布しています。
 このほか,「教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」において,特別免許状などの制度を活用した専門人材の登用を支える仕組みの構築を支援するとともに,新規採用の教師の円滑な入職のため,都道府県教育委員会等が教師志望者を対象として,入職前に実践的な研修や学校現場体験の機会を設ける,いわゆる「教師塾」を実施し,大学と連携したプログラムの開発や効果検証を行う取組を支援しています。

3.教師の研修における取組

 教師には,その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており,様々な研修が実施されています。
 教職員支援機構(NITS)では,各地域で学校教育において中心的な役割を担う校長・教頭・中堅教師・事務職員等に対する学校経営研修や,いじめ・道徳教育などの喫緊の重要課題について地方公共団体が行う研修の講師や企画・立案などを担う指導者を養成するための研修等により,地域の中核となるリーダーを養成しています。平成29年度には,その研修成果の活用の促進や,実践活動の好事例の共有を目的として,学校をとりまく課題の解決に向けて実践した取組を広く募集し,表彰・公開することにより,教育現場に優れた取組を普及していく表彰事業(NITS大賞)を実施するとともに,職務多忙等から,職場を離れての研修参加が困難な教師等に多様な研修の機会を提供することを目的として,校内研修でも活用できる20分程度のオンライン講義動画を新たに50タイトル提供しました。
 また,同機構では,平成29年4月に施行された「教育公務員特例法等の一部を改正する法律」により機能が強化され,任命権者が校長及び教員としての資質の向上に関する指標を定めようとする際の助言を行うこととなったことを受け,都道府県・指定都市教育委員会を対象としたアンケート調査を実施し指標の内容等に関する情報提供を行うとともに,指標等に関する相談窓口を新たに設置しています。加えて,29年度は12の教職大学院との間で連携協力協定を締結(累計31教職大学院)するとともに,教職大学院を中心に,養成・研修の関係機関と現職の教師等が指標等について語り合うワークショップを支援する「NITS_CAFE」事業を実施するなど,行政や大学等との強固なネットワーク構築を推進しました。
 さらに,平成27年度に同機構に設置した「次世代型教育推進センター」においては,「新たな学びに関する教員の資質能力向上のためのプロジェクト」による調査研究を実施し,「主体的・対話的で深い学び」に関する授業実践事例や研修プログラムモデルを構築・公開するとともに,セミナーを全国22か所で開催するなど,成果の普及に努めています。
 これらに加えて都道府県教育委員会等においては,教師がその経験,能力,専門分野等に応じて必要な研修を受けることができるよう,初任者研修,中堅教諭等資質向上研修,長期社会体験研修,大学院等派遣研修等が行われています。


  • ※22 採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり,児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・講師については,その職務の専門性等から特に,条件付採用期間が1 年間とされ,かつ,その間に初任者研修を受けることとなっている。

(2)人事評価と優秀教職員表彰,指導が不適切な教員への対応

1.人事評価に関する取組

 人事評価については,組織的な取組,業務改善,地域との協働について評価するなど学校組織全体の総合力を向上させる工夫や,教職員自身による特長や課題の認識,面談等における管理職との認識共有を通じて人材育成に資する工夫を行うなど,一層の改善充実に努めることが重要です。
 平成26年5月,地方公務員について,人事評価制度の導入等によって能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図ること等を目的として,「地方公務員法」の一部が改正され,28年4月1日から施行されました。
 従来,教育公務員を含む地方公務員の勤務評定については,「地方公務員法」第40条等に基づき,任命権者たる教育委員会が,職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応じた措置を講ずることとされていましたが,この法改正により,勤務成績の評定に代わり,職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる人事評価制度が導入されることになったものです。人事評価制度においては,能力・業績の両面からの評価により実施され,評価基準の明示や自己申告,面談,評価結果の開示などの仕組みにより客観性等を確保しつつ,評価結果が任用,給与,分限その他の人事管理にも活用されることとなりました。
 文部科学省では,これまでも,評価結果を人事,給与,優秀教職員表彰,当該教職員の資質向上に必要な研修機会の付与等に活用するよう促してきました。現在も各教育委員会において,既に能力評価や業績評価等による人事評価が実施され,評価結果が適切に活用されています。文部科学省では,各教育委員会に対して,地方公務員法の趣旨にのっとり,教職員評価を活用した人事管理に一層努めるよう促しています。

2.優秀教職員表彰に関する取組

 優秀な教職員を表彰することは,当該教職員の意欲の向上とさらなる活躍につながるとともに,教職員の模範となることを通して,他の教職員の意欲及び資質能力の向上に資するものであり,学校教育全体の活性化を図るための重要な取組の一つです。文部科学省においても,平成18年度から文部科学大臣優秀教職員表彰を実施してきました。28年度には,個人に加え教職員組織も表彰の対象に加えたほか,勤務環境の改善等における顕著な成果についても表彰することとしました。29年度の被表彰者については,全国の国公私立学校の現職の教職員のうち,学校教育における教育実践等に顕著な成果を上げた者や教職員組織の中から,都道府県・指定都市教育委員会などが候補者を推薦し,734人の教職員と38の教職員組織が表彰されました。

3.指導が不適切な教員への対応

 教員の指導は,心身ともに発達段階にある児童生徒に大きな影響を及ぼすものであることから,指導が不適切な教員が児童生徒の指導に当たることがないようにしなければなりません。指導が不適切な教員の認定及び指導改善研修等の実施に当たっては,人事評価の結果を活用するとともに,文部科学省が取りまとめた「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(平成20年2月8日)」などを踏まえて,公正かつ適正に実施するよう,引き続き各教育委員会を促していきます。
 また,指導が不適切であるとの認定までには至らないものの,指導に課題があるとされた教員については,その資質・能力の向上のための対策に取り組むほか,条件附採用制度を適切に運用するなどして,人事管理システムの公正かつ適正な運用に努めるよう,各教育委員会を促しています。(図表2‐4‐17)

 図表2‐4‐17 指導が不適切な教員の認定者数等について(平成28年度)

(3)非違行為を行う教職員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰などの非違行為は,それ自体許されないものであるだけでなく,教職員に対する信頼,ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
 体罰事案については,各教育委員会において引き続き,体罰の未然防止,徹底した実態把握及び早期対応に努めるとともに,体罰を行ったと判断された教職員については,客観的な事実関係に基づき厳正な処分などを行うよう促しています。特に,児童生徒に傷害を負わせるような体罰を行った場合,児童生徒への体罰を常習的に行っていた場合,体罰を起こした教職員が体罰を行った事実を隠蔽した場合,特別な支援を要する児童生徒に体罰を行った場合などについては,より厳重な処分を行うよう各教育委員会に対し指導しています。
 また,児童生徒に対するわいせつ行為などについては,教職員として絶対に許されないものであり,各教育委員会において対策を強化するとともに,こうした非違行為があった場合には,原則として懲戒免職とするなど,厳正な対応をするよう指導しています。あわせて,文部科学省では,各教育委員会に対して,懲戒処分全般の基準を作成することや,処分事案について,児童生徒などのプライバシー保護に十分配慮しつつ,できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し,教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2‐4‐18)。

 図表2‐4‐18 公立学校教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成28年度)

(4)教職員のメンタルヘルスの保持

 学校教育は教職員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであり,教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることが重要です。しかし,公立学校の教職員の精神疾患による病気休職者数は,平成28年度においては4,891人と,19年度以降,5,000人前後で推移しており,依然として高水準であることから,教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進を図ることが喫緊の課題です(図表2‐4‐19)。
 文部科学省では,有識者による「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」を開催し,平成25年3月に最終まとめを取りまとめました。最終まとめでは,教職員のメンタルヘルス対策は,人事や学校運営と関連付けて,効果的・効率的に取り組むことが重要であり,教職員本人のセルフケア,校長等のラインによるケア,教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるような良好な職場環境・雰囲気の醸成等も含めた予防的な取組を推進することが必要であるとされています。それとともに,教職員が復職する際に,心身の快復状況に加え,授業等の業務を滞りなく行えるか等の本人の状況,産業医・嘱託精神科医等の意見などを踏まえ,教育委員会において慎重に判断することや,復職後の経過措置も含めた復職支援の充実を連携させて取り組むことが必要であるとされています。
 文部科学省では,最終まとめを参考にしつつ,教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進について一層積極的に取り組むよう,各教育委員会に対して指導しています。

 図表2‐4‐19 公立学校教育職員の病気休職者数の推移

(5)民間人校長,民間人副校長・教頭制度の活用

 文部科学省では,地域や学校の実情に応じ,学校の内外から幅広く優秀な管理職を登用することができるよう,平成12年に校長の資格要件を緩和し,教員免許を持たず,教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとしています(副校長については20年の設置時から,教頭については18年からそれぞれ可能となっています。)。
 これらの資格要件の緩和により,平成29年4月1日現在,全国の公立学校における教員出身でない校長の在職者数は123人,教員出身でない副校長・教頭の在職者数は115人となっています。

2 新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築

(1)学級編制と教職員定数

 国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため,公立の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校における1学級の児童生徒数(学級編制)や教職員の配置(教職員定数)の「標準」を法律で定めています。公立の小・中学校の学級編制の標準は,現在,1学級40人(平成23年度から小学校第1学年は35人)となっており,各都道府県教育委員会は,これを標準として学級編制の基準を定めています。
 なお,地域の実情や児童生徒の実態に応じた柔軟な対応が可能となるよう,各都道府県教育委員会の判断で,国の標準よりも少人数の学級編制基準を定めることが可能となっています。
 平成29年度は,全ての都道府県・指定都市において国の標準を下回る学級編制の取組が実施されています(図表2‐4‐20)。

 図表2‐4‐20 平成29年度において国の標準を下回る学級編制を実施する都道府県・指定都市の状況について

 文部科学省では,少人数教育の推進,いじめ問題や特別支援教育の充実といった様々な教育上の課題に対応するため,これまで幾次にもわたって学級編制の標準や教職員定数の改善を重ねてきました。平成29年度予算では,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の改正に伴い,これまで加配定数で措置していた部分の基礎定数化を次のとおり実施しています。

  1. 障害に応じた特別の指導(通級による指導)の対象児童生徒13人に1人
  2. 外国人児童生徒等教育の対象児童生徒18人に1人
  3. 初任者研修の対象教員6人に対して1人
  4. 指導方法工夫改善加配のうち少人数教育の取組が定着している部分の約9,500人

 このうち,1.から3.については,平成38年度までの10年間で計画的に進めていくこととしており,この基礎定数化により,地方公共団体は,安定的・計画的な採用・研修・配置が行いやすくなるとともに,発達障害や日本語に課題のある児童生徒に対するきめ細かな指導の充実や,教員の質の向上に必要な研修体制の充実が図られるものと考えています。
 また,平成30年度予算においては,新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革を目指し,学校における指導・運営体制の効果的な強化・充実を図るため,小学校外国語教育の早期化・教科化に伴い,一定の英語力を有し,質の高い教育を行う専科指導教員の充実や中学校における生徒指導体制の強化に必要な教員の充実などに必要な教職員定数の改善(1,595人)を計上しています。
 さらに,いじめ・不登校,子供の貧困等の学校の課題に対応するための指導体制の在り方など,教育政策の効果を評価するため,平成28年度から,有識者や意欲ある地方公共団体の協力を得つつ,教育政策の形成に関する実証研究を実施しています。
 このほか,退職教職員や教員志望の大学生など多彩な人材がサポートスタッフとして学校の教育活動に参画する取組を支援する「補習等のための指導員等派遣事業」に,従来から行っている「学力向上を目的とした学校教育活動支援」(約7,700人)に加え,「スクール・サポート・スタッフ」の配置(約3,000人)や「中学校における部活動指導員」の配置(約4,500人)に係る予算を新たに盛り込み,学校全体として指導体制を充実することとしています。

(2)義務教育費国庫負担制度

1.義務教育費国庫負担制度

 国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため,「義務教育費国庫負担法」に基づき,義務教育に必要な経費の大半を占める教職員給与費について,原則,都道府県が負担した実支出額の3分の1を負担しています(義務教育費国庫負担制度)。これによって,地方公共団体の財政状況にかかわらず,全国どの地域においても,教職員給与費を安定的に確保することが可能となっています。また,義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で給与額や教職員配置に関する地方の自由度を大幅に拡大した「総額裁量制」の下で,各都道府県においては,教員を増員して少人数学級を導入するなど地域や学校の実情を踏まえた特色ある教育がより一層展開できるようになっています。

2.教員の給与

 教員の給与は,「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(いわゆる「人材確保法」)によって,一般の公務員の給与より優遇されています。昭和55年の時点では,教員の給与は,一般行政職の公務員の給与と月額で比較して7%以上優遇されていましたが,その後,この優位性は年々減少しています。文部科学省では,人材確保法の初心に立ち返り,教員の処遇を確保するとともに,勤務状況を踏まえた処遇の在り方について検討してまいります。
 なお,平成29年度の義務教育費国庫負担金においては,休養日の設定など部活動運営の適正化に向けた取組を進めつつ,部活動指導手当の増額等を確保しました。

(3)チーム学校の実現に向けて

 子供を取り巻く課題は複雑化・多様化しており,こうした課題に対応していくためには,組織として教育活動に取り組む「チーム学校」体制を創り上げ,学校の機能を強化していくことが必要です。文部科学省では,平成27年12月に中央教育審議会で取りまとめられた「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」で提言された三つの視点に沿って,引き続き,「チーム学校」の実現に取り組んでまいります。
 教師が,学校や子供たちの実態を踏まえ,学習指導や生徒指導等に取り組むためには,指導体制の充実が必要です。加えて,心理や福祉等の専門性を有するスタッフについて,学校の職員として,職務内容等を明確化し,質の確保と配置の充実を進める必要があります。具体的には,新学習指導要領の円滑な実施や,いじめ・不登校への対応強化などに必要な教職員定数の拡充を進めてまいります。また,平成29年4月からスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー,部活動の引率等を単独で行うことができる部活動指導員を法令上に位置付けました。文部科学省としては,その配置に係る支援を行うことで,配置を促進していくこととしております。
 専門性に基づく「チーム学校」が機能するためには,校長のリーダーシップが重要であり,学校のマネジメント機能を今まで以上に強化していくことが求められます。そのためには,優秀な管理職を確保するための取組や,事務機能の強化など校長のマネジメント体制を支える仕組みを充実することが求められており,引き続き,取組を進めてまいります。また,平成29年4月には,学校事務職員がより主体的・積極的に校務運営に参画することを目指し,その職務規定を見直したほか,学校の事務機能強化を推進するため,共同学校事務室の制度を法令上明確化しました。
 教職員がそれぞれの力を発揮し,伸ばしていくことができるようにするためには,人材育成の充実や業務改善の取組を進めることが重要です。具体的には,人事評価結果の処遇や研修への適切な反映や,小規模市町村において,専門的な指導・助言を行う指導主事の配置充実等に取り組んでまいります。また,平成29年12月に中央教育審議会で取りまとめられた「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」等を踏まえ,業務の役割分担・適正化に着実に取り組んでまいります。

第13節 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興

1 幼稚園教育の現状

 幼児期は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期であり,このような時期に行われる幼児教育は非常に重要なものです。
 幼稚園は,満3歳から小学校就学前までの幼児であれば,誰でも入園することができる学校であり,我が国の幼児教育の中核としての役割を担っています。平成29年5月1日現在,全国で1万878園の幼稚園があり,満3歳以上の小学校就学前の幼児のうち約半数となる約127万人の幼児が在園しています(図表2‐4‐21,図表2‐4‐22,図表2‐4‐23)。

 図表2‐4‐21 幼稚園数及び幼稚園児数等

 図表2‐4‐22 幼保連携型認定こども園数及び園児数等

 図表2‐4‐23 幼稚園(※23)就園率の推移


  • ※23 幼稚園のほか,幼保連携型認定こども園を含む(平成27年度以降)。

2 幼稚園の教育活動・教育環境の充実

(1)幼児教育の質の向上

 幼児教育の重要性にかんがみ,平成18年に改正された「教育基本法」においては,国や地方が幼児期の教育の振興に努めることが定められ,19年に改正された「学校教育法」においては,幼稚園が義務教育及びその後の教育の基礎を培う学校であることが明記されました。
 幼稚園教育要領は,全国的に一定の教育水準を確保するとともに,幼稚園が編成する教育課程等の大綱基準として,国が「学校教育法」に基づいて定めるものです。子供の育ちの変化や社会の変化に対応して,おおむね10年ごとに見直しが行われており平成29年3月に新しい幼稚園教育要領が公示され,30年4月から実施されています。新しい幼稚園教育要領においては,5領域(「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」)のねらい及び内容に基づく活動全体によって育む幼稚園教育において育みたい資質・能力(「知識及び技能の基礎」,「思考力,判断力,表現力の基礎」,「学びに向かう力,人間性等」)を明確化しました。また「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を明確化し,小学校の教師と共有することにより,幼児期の教育と小学校教育の接続の更なる推進を目指しています。その他,幼児一人一人のよさや可能性を把握するなど幼児理解に基づいた評価の実施や,障害のある幼児や海外から帰国した幼児など特別な配慮を必要とする幼児への指導の充実などが図られています。29年度においては,新しい幼稚園教育要領について国及び都道府県における説明会で周知を図ったほか,新しい幼稚園教育要領の内容を踏まえた指導方法等に関する調査研究事業などを実施しました。
 また,文部科学省では,「幼稚園における学校評価ガイドライン〔平成23年11月改訂〕」を示し,幼稚園の特性に応じた学校評価を推進することによって幼稚園教育の質の向上を図っています。
 さらに,幼児教育の質の向上に向けた体制を整備するため,平成28年4月,国・地方公共団体が幼児教育振興策の政策立案を行う上で必要となる基礎データの収集・分析や政策効果に関する研究を行うための国の調査研究拠点として,国立教育政策研究所内に「幼児教育研究センター」を設置しました。また,同年度から,都道府県や市町村において研修等の拠点となる幼児教育センターの設置や,各園を巡回して助言等にあたる幼児教育アドバイザーの配置などにより,地方公共団体における幼児教育の推進体制を構築するためのモデル事業を実施しています。

(2)幼児教育無償化に向けた取組の推進(幼稚園就園奨励事業の充実)

 文部科学省では,幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や公私立幼稚園間における保護者負担の較差の是正を図ることを目的として,保育料(入園料を含む。)を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,幼稚園就園奨励費補助金によりその所要経費の一部を国庫補助しています。就園奨励費補助対象の拡大を通じた幼児教育無償化については,これまで段階的に進めており,平成29年度においては,年収約270万円未満相当世帯(市町村民税非課税世帯)の第2子の保育料を無償化するとともに,年収約270万円から360万円未満相当(市町村民税所得割課税額77,100円以下)のひとり親世帯等の第1子に係る保護者負担について,年収約270万円未満相当世帯の第1子と同じく月額3,000円となるよう保護者負担の軽減措置を拡充しました。また,年収約270万円から約360万円未満相当のその他の世帯についても,第1子の保育料を月額1万6,100円から月額1万4,100円,第2子の保育料を月額8,050円から月額7,050円に引き下げにより補助対象を拡大しました。
 平成29年6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針)」において,「幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消に向け,財政の効率化,税,新たな社会保険方式の活用を含め,安定的な財源確保の進め方を検討し,年内に結論を得」るとされ,「幼児教育について財源を確保しながら段階的無償化を進める」こととされました。また,「幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議」(29年7月31日)においては,「平成30年度においても家庭の経済状況にかかわらず,すべての子供に質の高い幼児教育を保障するため,「環境整備」と「財源確保」を図りつつ,段階的に幼児教育無償化に向けた取組を進めることとし,その対象範囲や内容等については予算編成過程において検討することとする。」とされました。
 こうした方針等を踏まえ,平成30年度予算においても,年収約270万円から360万円未満相当世帯における第1子の保育料を月額1万4,100円から月額1万100円に,第2子の保育料を月額7,050円から月額5,050円に引き下げられるよう,更なる保護者負担軽減を図ることとしています。
 平成29年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」においては,「広く国民が利用している3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園,保育所,認定こども園の費用を無償化する」とされ,その実施時期については,「消費税率引上げの時期との関係で増収額に合わせて,2019年4月から一部スタートし,2020年4月から全面的に実施する」とされたところです。また,幼稚園における預かり保育の無償化についても,「新しい経済政策パッケージ」に基づき,「幼稚園,保育所,認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会」において検討され,30年夏までに結論を得ることとされています。
 なお,幼稚園就園奨励費補助事業と同様に,子ども・子育て支援新制度においても,保護者の所得状況に応じた負担軽減が図られてきました。

3 子ども・子育て支援新制度の施行

(1)子ども・子育て支援新制度の概要

 子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)は,「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指すという考え方の下,全ての子ども・子育て家庭を対象に,幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援の「量の拡充」と「質の向上」を進めていくために創設され,平成27年4月に開始しました。
 この制度のポイントは,次のとおりです。

  1. 幼稚園・保育所・認定こども園に対する財政支援の仕組みを統一(「施設型給付」を創設)し,施設の類型や規模にかかわらず安定した経営となるようにしたこと
  2. 幼保連携型認定こども園について認可・指導監督を一本化するなど認定こども園制度を改善したこと
  3. 地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ったこと(13の支援メニューを設定)
  4. 住民に最も身近な市町村を実施主体としたこと
  5. 消費税率の引上げによる増収分を活用し,量・質の両面から社会全体で子育てを支えること
  6. 内閣府に「子ども・子育て本部」を設置し,新制度の所管を一元化していること

(2)私立幼稚園と新制度

 新制度は,従前の私立幼稚園に関する諸制度(私学助成等)と大きく異なる部分もあることから,私立幼稚園については,地域の実情や収支の見通し等を踏まえて,自由に新制度への移行を選択できることになっています。また,私立幼稚園が新制度に移行する際には,1.幼稚園のまま移行するか,2.保育機能を付加した認定こども園(「幼保連携型」又は「幼稚園型))となって移行するかを選ぶことになります。(図表2‐4‐24)。
 平成29年度までに,全私立幼稚園(8,058園)中,36.4%(2,931園)が新制度に移行し,30年度までには更に581園増の,44.5%(3,512園)の幼稚園が移行する見込みです。(図表2‐4‐25)
 文部科学省では,内閣府等と連携しつつ,移行を希望する園が円滑に移行できるよう環境整備を行うこととしており,幼稚園が有する移行への懸案事項を踏まえて様々な取組を行ってきました。例えば,1.移行後の収入面の不安への対応として,大規模園における加算の充実や公定価格試算ソフトの改善等,2.事務負担の増大への懸念への対応として,移行準備に係る事務経費の補助の創設や大規模園における事務職員の配置の充実等,3.人材不足への対応として,幼稚園における預かり保育に対する補助制度である「一時預かり事業(幼稚園型)」に係る職員配置要件の緩和等,円滑な移行に向けた環境を整えてきました。
 これらの取組により,移行した園からは,「収入が増加し経営面でも安定した」,「職員数の増加や職員の処遇改善につながった」等の声も多く聞こえています。
 さらに,平成29年度においては,より質の高い幼児教育の実現に向けて,一人ひとりの幼稚園教諭等が自らのキャリアパスを描きながら長く働くことができるよう,1.全職員を対象とした更なる「質の向上」の一環としての2%の処遇改善,2.技能・経験を積んだ職員に対する追加的な処遇改善(中核リーダー・専門リーダー:4万円,若手リーダー:5千円)3.人事院勧告を踏まえた待遇改善(幼稚園教諭:1.1%の処遇改善)を実施しました。
 また,幼稚園における待機児童の受入れ促進等を図るため,「一時預かり事業(幼稚園型)」について,長時間・長期休業期間中の預かりに対する補助の増額も実施してきました。

 図表2‐4‐24 新制度実施後の私立幼稚園の選択肢

 図表2‐4‐25 平成30年度までに新制度に移行する私立幼稚園の施設類型

(3)平成30年度予算の内容と今後の対応方針

 平成30年度予算においても,消費税の引上げが延期され,厳しい財政事情の中,子ども・子育て支援に関する「社会保障の充実」として,6,942億円を確保し,引き続き0.7兆円ベースの量の充実・質の向上を全て実施するとともに,29年度から実施している追加的な処遇改善について定着を図ります。また,29年度に引き続き,人事院勧告を踏まえ,1.1%の待遇改善を行っています。
 また,平成30年度においては,29年6月に策定された「子育て安心プラン」を実現するため,「一時預かり事業(幼稚園型)」による2歳児定期利用の制度を創設するとともに,3歳から5歳に対する一時預かり事業(幼稚園型)について,長時間の預かりに対する補助を更に増額します。併せて,長時間・長期休業中の預かりなどを行う施設を対象として,事務負担に対応するための加算を創設し,待機児童解消につながる受入れを更に進める予定です。
 文部科学省では,移行を希望する園が円滑に移行することができるよう,今後とも,制度全般やこれまでの対応等に関する周知を継続するとともに,事業者・地方公共団体の意見・要望を丁寧に受け止めながら,必要な制度・運用の改善に努めていきます。

第14節 障害のある子供一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進

1 特別支援教育をめぐる現状

 障害のある子供については,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の教育的ニーズに応じ,多様な学びの場において適切な指導を行うとともに,必要な支援を行う必要があります。現在,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級,障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導(※24)」)においては,特別の教育課程や少人数の学級編制の下,特別な配慮により作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われています。また,近年,特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり,一層きめ細かな支援体制の整備が求められています。特別支援教育は,発達障害も含めて,特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものであり,通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対しても,合理的配慮の提供を行いながら,必要な支援を行う必要があります。
 平成29年5月1日現在,特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒の総数は約49万人です。このうち,義務教育段階の児童生徒は約41万7,000人であり,これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約4.2%に当たります(図表2‐4‐26)。特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒は年々増加しています。

 図表2‐4‐26 特別支援教育の概念図(義務教育段階)


  • ※24 通級による指導:小・中学校において,学習障害・注意欠陥多動性障害・自閉症等の児童生徒を対象として,通常の学級に在籍し,主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら,障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態。なお,平成30年度から,高等学校等においても通級による指導が開始される。

2 多様な学びの場の整備

(1)特別支援教育に関する指導の充実

 障害のある子供には,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級,通級による指導といった多様な学びの場が提供されています。
 このうち通級による指導については,高等学校段階において,小・中学校等のような通級による指導が制度化されていなかったことから,高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議において高等学校における通級による指導の制度化に向けた検討を行い,平成28年に関係する省令改正等を行った上で,30年度から開始することとしました。また,30年3月に高校標準法施行令を改正し,公立高等学校における通級による指導のための加配定数措置を可能としました。
 幼稚園,小・中・高等学校における特別支援教育については,学習指導要領等において,個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的・組織的に行うこととしています。
 また,平成29年3月31日に告示した新小学校学習指導要領等においては,1.特別支援学級や通級による指導等において特別な教育課程を編成する際の配慮事項,2.特別支援学級に在籍する児童生徒や通級による指導を受ける児童生徒については,個別の教育支援計画や個別の指導計画を全員作成し,活用すること,3.各教科等において,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を行うことなどの充実を図ったところです。
 さらに,平成29年4月28日に告示した新特別支援学校小学部・中学部学習指導要領等においては,1.重複障害者である子供や知的障害者である子供の学びの連続性,2.障害の特性等に応じた指導上の配慮の充実,3.キャリア教育の充実や生涯学習への意欲向上など自立と社会参加に向けた教育等を充実させました。
 また,新特別支援学校学習指導要領等の円滑な実施のため,学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編制や,一人一人の障害の状態等に応じた指導方法の改善・充実について,先導的な実践研究を実施しました。

(2)交流及び共同学習の充実

 障害のある子供と,障害のない子供や地域の人々が活動を共にすることは,全ての子供の社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく,地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっています。このため,幼稚園,小・中・高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等において,交流及び共同学習の機会を設ける旨が規定されているとともに,教育委員会が主体となり,学校において,各教科やスポーツ,文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより,障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っています。また,「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)に基づき,「心のバリアフリー学習推進会議」を開催し,30年2月に交流及び共同学習の推進方策について提言を取りまとめました。提言を踏まえ,交流及び共同学習を通じた障害者理解を推進するなど更なる施策の充実を図るとともに,教育委員会や学校等に対して積極的な取組を促すこととしています。

(3)障害のある児童生徒の教材の充実

 障害のある児童生徒について,将来の自立と社会参加に向けた学びの充実を図るためには,障害の状態や特性を踏まえた教材を効果的に活用し,適切な指導を行うことが大切です。文部科学省では,学習上の支援機器等教材の活用について,平成26年度から実施している児童生徒の障害の状態等に応じた使いやすい支援機器等教材の研究開発支援事業に加え,29年度から,支援機器等教材の選定・活用に必要な指標及び学習評価方法の研究事業も開始しました。また,支援機器等教材を活用した指導方法に関する実践的な研究を実施しています。

(4)教師の専門性の向上

 平成29年5月1日現在,特別支援学校の教師の特別支援学校教諭免許状等の保有率は全体で77.7%となっており,全体として前年度と比べ1.9ポイント増加しているが,特別支援教育に関する教師の専門性の向上が一層求められている中で,専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっています。
 このため,文部科学省では,各都道府県教育委員会等に対して,特別支援学校教諭免許状等の保有率の向上に向けて,採用,研修,配置等に当たっては免許状の保有状況を考慮することなどを要請しています。また,特別支援学校の教師の専門性を向上させることを目的として,各都道府県の教師等を対象とした研修を実施するなどの取組を行っています。

(5)自立と社会参加を推進するための職業教育等の充実

 障害者が,生涯にわたって自立し社会参加していくためには,企業などへの就労を支援し,職業的な自立を果たすことが重要です。しかし,平成29年5月1日現在,特別支援学校高等部卒業者のうち,福祉施設等入所者の割合が約62%に達する一方で,就職者の割合は約30%となっており,職業自立を図る上で厳しい状況が続いています(図表2‐4‐27)。この背景には,特別支援学校高等部卒業後の就職者数は増加しているものの,特別支援学校高等部在籍者数も大幅に増加しており,就職者の割合が微増にとどまっていることなどが挙げられます。
 障害者の就労を促進するためには,教育,福祉,医療,労働などの関係機関が一体となった施策を行う必要があります。文部科学省では,厚生労働省と連携して,都道府県教育委員会等に対し,就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用したり,福祉関係機関と連携を図り就労への円滑な移行を図ったりするといった取組の充実を促しています。
 また,特別支援学校高等部や高等学校等において,労働等の関係機関と連携し障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実するための研究に取り組んでいます。

 図表2‐4‐27 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

(6)国立特別支援教育総合研究所における取組

 国立特別支援教育総合研究所は,我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして,国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動や,各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に専門的な研修を行っています。また,インターネットを通じて,通常の学級の教師を含め,障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教師の資質向上の取組を支援するため,研修講義の配信や特別支援学校教師の免許状保有率向上に資する免許法認定通信教育を実施しています。また,全ての学校をはじめとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため,発達障害に関する情報の発信,学校における合理的配慮の実践事例の提供及び障害の状態や特性等に応じた教材や支援機器等の活用の促進のため,以下の取組を推進し,情報発信を行っています。

1.発達障害教育推進センター(※25)

 教育関係者や保護者等にウェブサイトを通じて発達障害に関する各種教育情報を提供したり教師向けの研修講義を配信したりしています。

2.インクルーシブ教育システム構築支援データベース(※26)

 学校における合理的配慮の提供に係る実践事例を公表し,特別支援教育の一層の推進につなげています。

3.特別支援教育教材ポータルサイト(※27)

 基礎的環境整備(合理的配慮の基礎となる環境整備)の一環として,教材や支援機器等の活用に関する様々な情報を集約・管理し,発信するためのポータルサイトです。
 このほか,平成28年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し,地域や学校が直面する課題を研究テーマとし,その解決を目指す「地域実践研究」や,諸外国の最新情報の発信等を通して,地域や学校における取組を強力に支援しています。


  • ※25 参照:http://icedd.nise.go.jp/
  • ※26 参照:http://inclusive.nise.go.jp/
  • ※27 参照:http://kyozai.nise.go.jp/

3 地域・学校における支援体制の整備―発達障害を含む障害のある子供たちへの支援―

(1)特別支援教育の充実のための体制整備

 文部科学省では,障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため,学校における体制の整備や留意事項などを示し,学校や教育委員会などの取組を促進しています(※28)。また,障害のある幼児児童生徒への支援体制の整備,巡回相談や専門家チームによる支援,研修体制の整備・実施,関係機関との連携など,支援体制整備の推進に係る経費の一部を補助しています。
 平成29年度特別支援教育体制整備状況調査によると,小・中学校においては,「校内委員会」の設置,「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており,「個別の指導計画」の作成,「個別の教育支援計画」の作成についても着実な取組が進んでいます。また,幼稚園・高等学校における体制整備は進みつつあるものの,小・中学校に比べると課題が見られます。このため,文部科学省では,幼稚園段階からの支援の強化に向け,障害のある子供に対する早期からの教育相談及び支援体制の構築を推進するため,教育と保育,福祉,保健,医療等の連携推進,情報提供等の取組に対する支援を実施しています。
 また,発達障害をはじめ障害のある子供たちへの支援における教育と福祉の連携については,学校と障害福祉サービス事業者との相互理解の促進や,保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されていることから,文部科学省と厚生労働省では,平成29年12月に,両省による「トライアングル」プロジェクトを立ち上げ,各地方公共団体の教育委員会や福祉部局の主動の下,支援が必要な子供やその保護者が,乳幼児期から学齢期,社会参加に至るまで,地域で切れ目なく支援が受けられるよう,家庭と教育と福祉のより一層の連携を推進するための方策について検討し,30年3月に報告を取りまとめました。

 図表2‐4‐28 特別支援教育の現状~学校における支援体制の整備状況・課題~


  • ※28 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm

(2)公立幼稚園,小・中・高等学校における特別支援教育支援員の配置

 各教育委員会では公立幼稚園,小・中・高等学校に,障害のある児童生徒に対する学校生活上の介助や学習活動上の支援などを行う特別支援教育支援員の配置を行っています。特別支援教育支援員の配置に係る経費については,地方財政措置が講じられています。文部科学省では,特別支援教育支援員の活用事例などの参考情報をまとめたパンフレットを各教育委員会に配布するなど,特別支援教育支援員の配置を促進しています。
 各教育委員会においては,こうした財政措置などを有効に活用し,全国的に特別支援教育支援員の配置数増加が図られています。平成29年5月1日現在の全国の配置数は,公立幼稚園7,139人で,公立小・中学校52,065人で,公立高等学校510人となっています。

(3)発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援

 文部科学省では,発達障害の可能性のある児童生徒を支援するため,平成28年度から,学校と福祉機関との連携支援,支援内容の共有方法に関する調査研究事業や,通級による指導の担当教師に対する研修体制を構築し,必要な指導方法を研究する事業を実施しています。
 また,平成29年3月には,教育委員会や学校,保護者等に向けた「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」を策定し,公表しました。

(4)医療的ケアが必要な子供に対する支援

 特別支援学校等には,日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており,学習や生活を行う上で適切に対応することが必要です。
 現在,「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき,特別支援学校等の教師も一定の条件の下でたんの吸引等の医療的ケアをすることができることとされています。文部科学省では,特別支援学校などにおいて,医療的ケアを必要とする児童生徒などの健康と安全を確保するに当たり留意すべき点などについて整理した通知を平成23年に発出しています。
 また,制度の開始から5年を経て,人工呼吸器の管理をはじめとした高度な医療的ケアへの対応や訪問看護師の活用など,新たな課題も見られるようになってきていることから,平成29年10月に「学校における医療的ケア実施に関する検討会議」を設置し,医療的ケアをより安全かつ適切に実施できるよう,更なる検討を行っています。
 平成29年度現在,医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が公立特別支援学校に8,218人,公立小・中学校に858人在籍しています。文部科学省では,特別支援学校等における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため,看護師の配置に必要な経費の一部を補助しています。また,学校において高度な医療的ケアに対応するため,医師と連携した校内支援体制の構築や,医療的ケア実施マニュアル等の作成など,医療的ケアの実施体制の充実を図るモデル事業を実施しています。

(5)就学支援

 文部科学省及び都道府県・市町村教育委員会では,障害のある児童生徒などの就学を支援するため,「特別支援学校への就学奨励に関する法律」などに基づき,特別支援教育就学奨励制度を実施しています。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などの就学に関する特殊事情を考慮して,保護者などの経済的負担を軽減することを目的とし,保護者等の負担能力に応じて,通学費や教科用図書購入費,寄宿舎費など特別支援学校等の就学に必要な経費の全部又は一部を負担しています。

第15節 地方教育行政の在り方と地域とともにある学校づくり

1 教育委員会制度

 教育委員会は,地方教育行政の中心的な担い手であり,地域の学校教育,社会教育,文化,スポーツなどに関する事務を担当する機関として,地域の教育行政における重要事項や基本方針を決定しています。教育委員会は,教育における政治的中立性,継続性・安定性の確保や,地域住民の多様な意向の反映を実現するため,地方公共団体の長から独立した合議制の執行機関として,全ての地方公共団体(都道府県及び市町村)に置かれています。
 従来,教育委員会制度に対しては,教育委員長と教育長の間で責任の所在が不明確であることなどの課題が指摘されており,教育再生実行会議の提言や中央教育審議会の答申を踏まえて,平成26年6月,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し,教育委員会制度を刷新しました。
 新教育委員会制度では,教育行政の責任の明確化を図るため,教育委員会を代表する委員長と事務局を指揮監督する教育長を一本化した新たな責任者(新教育長)を設置しました。また,教育委員による新教育長へのチェック機能を強化したほか,地方公共団体の長が,教育,学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めることとするとともに,地方公共団体の長と教育委員会によって構成される総合教育会議を設けることとしました(図表2‐4‐29)。このほか,いじめによる自殺の防止等,児童生徒等の生命又は身体への被害の拡大又は発生を防止する必要がある場合に,文部科学大臣が教育委員会に対して指示ができることを明確にしました。改正法は,平成27年4月1日から施行されています。
 新教育長の任命状況は,平成29年9月1日時点で全体の約8割程度であり,平成30年度中には全ての地方公共団体で新教育長が任命されることとなります。
 文部科学省では,新制度への移行を踏まえ,新教育長,教育委員の資質・能力の向上を図るための研修機会の拡充等に努めているところです。

 図表2‐4‐29 教育委員会の組織

2 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の推進

(1)地域とともにある学校づくり

 社会総掛かりでの教育の実現を図る上で,学校は,地域社会の中でその役割を果たし,地域とともに発展していくことが重要です。学校と地域がパートナーとして連携・協働するために,これからの公立学校は「地域に開かれた学校」から一歩踏み出し,地域でどのような子供たちを育てるのか,何を実現していくのかという目標やビジョンを保護者や地域住民等と共有し,地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していく必要があります。
 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は,学校と地域住民等が力を合わせて学校運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」に転換するための有効な仕組みです。コミュニティ・スクールは,平成16年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正によって導入されました。また,27年12月の中央教育審議会答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」において,全ての公立学校において,コミュニティ・スクールの導入を目指すとされており,こうした議論を踏まえ,29年3月,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部が改正され,コミュニティ・スクールの導入が努力義務化されました。コミュニティ・スクールには,保護者や地域住民等を委員とした学校運営協議会が教育委員会により設置されます。学校運営協議会は,校長が作成する学校運営の基本的な方針について承認を行うこと,学校運営全般について教育委員会・校長に意見を述べること,教職員の任用に関して,教育委員会規則で定める事項について,教育委員会に意見を述べることができます。この制度を導入することにより,地域の声を学校運営に生かし,地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことができます(図表2‐4‐30)。

 図表2‐4‐30 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の仕組み

(2)コミュニティ・スクールの推進体制構築

 平成29年4月1日現在において,学校運営協議会を設置している公立学校数は46都道府県内3,600校となっています。小・中学校,義務教育学校数で見ると,全体の11.7%(3,398校)がコミュニティ・スクールを導入しており,「第2期教育振興基本計画」における目標(公立小・中学校の1割:約3,000校)を達成するなど,全国でコミュニティ・スクールの導入が着実に進んでいます(図表2‐4‐31)。文部科学省では,コミュニティ・スクールを一層推進していくため,以下の取組を実施しています。

  1. コミュニティ・スクール導入時の運営体制づくりへの支援及び補助事業の実施
  2. 導入の実践経験があるコミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)の派遣
  3. 「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」や制度等説明会の実施

 なお,文部科学省ウェブサイト及びFacebookには,コミュニティ・スクールに関する情報を掲載しています(※29)。

 図表2‐4‐31 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入状況


  • ※29 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/index.htm
     https://www.facebook.com/community.school.mext/

第16節 少子化に対応した活力ある学校づくりの推進

 学校教育においては,児童生徒が集団の中で,多様な考えに触れ,認め合い,協力し合い,切磋琢磨(せっさたくま)することを通じて一人一人の資質や能力を伸ばしていくことが重要であり,小・中学校では一定の集団規模が確保されていることが望まれます。そのため,文部科学省では「学校教育法施行規則」及び「義務教育施設費負担法施行令」に基づき,公立小・中学校の適正規模を12学級から18学級とし,適正配置については通学距離を小学校4km以内,中学校6km以内としています。
 少子化の流れを受けて,この10年で公立小・中学校数はその1割に当たる約3,000が減少するとともに,標準規模に満たない学校が約半数存在しているのが現状です。今後,少子化の更なる進展により,学校の小規模化に伴う教育的デメリットの顕在化が懸念されています。一方,統合が困難な地理的特性や地域コミュニティの核としての学校の重要性への配慮も求められています。

1 公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引

 文部科学省では,市区町村の様々な取組を総合的に支援する一環として,学校統合により魅力ある学校づくりを行う場合,小規模校のデメリットの克服を図りつつ学校の存続を選択する場合,一旦休校とした学校を再開する場合のそれぞれの場合の検討に際しての基本的方向性や考慮すべき要素,留意点等をまとめた「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」を平成27年1月27日に公表し,全国の都道府県に通知するとともに,文部科学省ウェブサイトで公表しました(※30)。
 各市区町村において,少子化に伴う学校の小規模化という課題に正面から向き合い,地域コミュニティの核となる魅力ある学校づくりが主体的に検討されることが期待されます。


  • ※30 参照:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/07/24/1354768_1.pdf

2 学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査の概要

 文部科学省においては,平成26年に引き続き,28年5月に全ての地方公共団体を対象に,「学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査」(※31)を行いました。
 その結果,8割以上の市区町村が域内の小・中学校の適正規模に課題があると認識していることが明らかとなる一方で,そのうち課題解消への検討の予定が立っていないと回答した市区町村が42%に上っています。


  • ※31 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tekisei/__icsFiles/afieldfile/2017/04/03/1384138_1.pdf

3 少子化に対応した活力ある学校づくりの推進

 文部科学省においては,「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」にのっとり改革を着実に推進するため,個別政策ごとに進捗状況及び今後の取組の進め方等を取りまとめた最新の改革工程表に基づき,平成30年度中に「学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査」を実施し,学校の小規模化について検討を着手している地方公共団体の割合を再度把握することとしています。
 このため,市区町村の主体的な検討や具体的な取組をきめ細かに支援するため,引き続き,統合による魅力ある学校づくりや,統合困難な地域における教育環境の充実の取組モデルを創出するための調査研究を実施するとともに,その好事例を分析し,各地方公共団体に発信していきます。

 図表2‐4‐32 少子化に対応した活力ある学校教育への支援策

第17節 幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実

1 小学校就学前教育段階における経済的支援

 文部科学省では,幼稚園の入園料や保育料に関する経済的負担を軽減する就園奨励事業を実施している地方公共団体に対して,幼稚園就園奨励費補助金によって所要経費の一部を補助しています(※32)。


  • ※32 参照:第2部第4章第13節

2 義務教育に係る教育費負担軽減

 義務教育段階では,国公立学校の授業料,国公私立学校の教科書が無償となっていますが,これら以外にも学校生活を送るためには多くの費用が必要です。例えば,「平成28年度子供の学習費調査」によると,学用品費・遠足費・修学旅行費などの学校教育費や給食費などは,それぞれ公立小学校で年間約10万円と,公立中学校で年間約18万円となっています。
 このような費用を負担することが困難な児童生徒の保護者を経済的に支援するために,市町村が行う就学援助制度があります。
 就学援助制度とは,「学校教育法」の実施義務に基づき,各市町村が,経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して,学用品の給与などの援助を行う制度です。就学援助制度の対象者は,「生活保護法」に規定する要保護者と,これに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者となっています。
 就学援助を受けている児童生徒の割合は依然として高止まり傾向にあり,就学援助制度の重要性はますます高まっています。平成29年3月には,「新入学児童生徒学用品費等」の予算単価をほぼ2倍に増額するなどの見直しを行い,さらに,小学校等についても「新入学児童生徒学用品費等」を入学前に支給できるよう要綱の改正を行いました。なお,就学援助制度は市町村において実施されるものですが,要保護者に対する就学援助に係る所要の経費については,国が補助を行っています。また,要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者の就学援助に関する所要の経費については,地方財政措置が講じられています。
 平成30年10月に予定されている生活保護基準の見直しによる影響への対応については,30年1月19日の閣僚懇談会の場で,他の制度に影響ができる限り及ばないように対応することを基本とする政府の方針が示されました。就学援助制度についても,政府の対応方針を十分に踏まえ,生活保護基準額が減額される場合は,できる限り影響が及ばないよう,適切に対応していく予定です。
 また,平成29年度から33年度までの5年間,私立学校に通う年収400万円未満の世帯に属する児童生徒について,原則として年額10万円の授業料負担の軽減を行いつつ,義務教育において私立学校を選択している理由や家庭の経済状況などについて実態把握のための調査を行うため,「私立小中学校に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」を開始しました。

3 高等学校段階に係る教育費負担軽減

 高校生等の修学支援として,まず,高等学校等の授業料を高等学校等就学支援金(以下,「就学支援金」という。)により支援しています。
 就学支援金は,国公私立を問わず,市町村民税所得割額が30万4,200円(年収約910万円(※33))未満の世帯の生徒で,受給資格(※34)を認められた者には,公立高校の授業料相当の年額11万8,800円が就学支援金として支給されています。また,私立高校等に通う生徒の場合は,世帯所得に応じて最大2.5倍(年額29万7,000円)まで加算した額が支給されています。平成29年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」には,消費税使途変更後の32年度までに,現行制度の平年度化等に伴い確保される財源など,政府全体として安定的な財源を確保しつつ,家庭の経済状況にかかわらず,幅広く教育を受けられるようにする観点から,年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現する旨が盛り込まれました。
 また,低所得世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため,高校生等奨学給付金により支援をしています。平成29年度は,非課税世帯における給付額の増額など制度の充実を図ったほか,新たに中学3年生向けのリーフレットを作成して全中学校に配布し,さらなる周知と活用促進に向け取り組みました。

 図表2‐4‐33 高校生等奨学給付金の給付額(平成29年度)

 このほか,高等学校等を中途退学した者が再び学び直す場合に就学支援金の支給期間を超えても継続して支援することや,保護者等の失職・倒産などの家計急変により収入が激減した場合の支援,在外教育施設の日本人高校生への支援等も行っています。


  • ※33 市町村民税所得割額は両親の合算。平成30年7月以降分の支給については,道府県民税所得割額と市町村民税所得割額とを合算した額が50万7,000円未満の世帯が対象。また,年収は両親のうちどちらか一方が働き,高校生1人,中学生1人の4人世帯の場合の目安。
  • ※34 高等学校等に在学し,日本国内に住所を有する者で,1.高等学校等を卒業又は修了していない者,2.高等学校等に在学した期間が通算して一定期間を超えない者(全日制の場合36月)。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成30年12月 --