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第3章 生涯学習社会の実現

総論

 「生涯学習」とは,一般には人々が生涯に行うあらゆる学習,すなわち,学校教育,家庭教育,社会教育,文化活動,スポーツ活動,レクリエーション活動,ボランティア活動,企業内教育,趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。また,人々が,生涯のいつでも,自由に学習機会を選択し学ぶことができ,その成果が適切に評価される社会を指すものとして「生涯学習社会」という言葉も用いられます。
 文部科学省では,「教育基本法」の精神にのっとり,国民一人一人が自己の人格を磨き,豊かな人生を送ることができるよう,生涯にわたって,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の実現を目指しています。
 現在,「第2期教育振興基本計画」に基づき,「自立」,「協働」,「創造」の三つをキーワードとする生涯学習社会の実現に向けて,学校教育における学習の充実はもとより,社会教育,家庭教育,その他様々な場や機会における学習の充実と環境整備に取り組んでいます。

第1節 国民一人一人の生涯を通じた学習の支援

 「人生100年時代」,「超スマート社会(Society 5.0)(※1)」に向けて社会が大きな転換点を迎える中にあって,生涯学習の重要性は一層高まっています。文部科学省では,国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備,多様な学習機会の提供,学習した成果が適切に評価され,それを生かして様々な分野で活動できるようにするための仕組みづくりなど,生涯学習社会の実現のための取組を進めています。


  • ※1 参照:第2部第7章第1節1

1 第9期中央教育審議会生涯学習分科会での議論

 我が国は少子化による人口減少の局面に入るとともに,高齢化が急速な勢いで進んでいます。人口移動の面では,東京一極集中が継続しており,若者を中心に人口が大幅に減少する深刻な事態を迎えている地域も多く,このまま推移すると,少なからぬ地域が将来消滅しかねないとの指摘もなされているところです。
 こうした中,地域経済の縮小や商店街の衰退,医療・介護の需給逼(ひっ)迫,一人親世帯の増加等を背景とした貧困問題,地域の伝統行事等の担い手の減少,財政の悪化など,地域社会は様々な課題に直面しています。その中には,人と人とのつながりの希薄化や,それに伴う高齢者や若者の社会的孤立という課題もあります。今後の地域社会を持続可能なものとする上でも,人生100年時代における個人の充実した人生を実現する上でも,こうした課題の解決を図ることが急務です。
 また,人工知能(AI)やIoTの進展等の急速な技術革新によって,「Society 5.0」が到来し,国民生活や社会の在り方が大きく変化していくことが予想される中で,こうした変化に対応する力を一人一人が身に付けることや,新しい技術を使いこなし,地域における学習や活動に生かすことも重要な課題となっています。
 さらに,近年,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設には,従来の役割に加え,地域活性化・街づくりの拠点,地域の防災拠点などとしてのより幅広い役割も期待されるようになっています。特に,博物館については観光資源としての観点から期待が高まっていることもあり,地方公共団体からは,博物館の運営について,まちづくり行政等の他の分野との一体的な取組を総合的に行いたいという要望も高まっています。
 このような状況も踏まえつつ,これからの時代に求められる公民館,図書館,博物館等の役割と,役割を実現するために必要な方策について,施設としての所管の在り方も含め検討することが求められています。
 これらの課題について検討するため,平成30年3月2日に文部科学大臣から中央教育審議会に対して「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」諮問を行いました。今後,中央教育審議会生涯学習分科会を中心に議論を深め,新たな政策につなげることとしています。

2 社会人の学びの推進

 社会の変化の激しい今後の時代においては,学校を卒業し,社会人となった後も,大学等で更に学びを重ね,新たな知識や技能,教養を身に付けることが必要です。また,出産や子育て等,女性のライフステージに対応した活躍支援や,若者の活躍促進等の観点からも,社会人の学び直し(リカレント教育)がより一層求められています。政府としても,平成29年9月に設置した「人生100年時代構想会議」において,「何歳になっても学び直しができるリカレント教育」を主要テーマの一つとして取り上げ,その推進に向けて検討を実施しています。
 社会人が大学等で学ぶにあたっては,社会人のニーズに合った実践的なプログラムが大学等にないことや,学ぶための時間がないこと,学費負担の問題等があることが指摘されており,大学等における社会人の学びはこれまで低調な状況が続いてきました。
 このことを踏まえ,文部科学省は,社会人の学びを推進し,多様なニーズに対応する教育機会の拡充を図るために,大学・大学院・短期大学・高等専門学校における社会人や企業等のニーズに応じた実践的かつ専門的なプログラムを文部科学大臣が認定する「職業実践力育成プログラム」(平成30年4月現在で222件を認定)や専門学校における産学連携による実践的な職業教育の充実を図る専門課程を文部科学大臣が認定する「職業実践専門課程」(30年2月現在で954校,2,885学科を認定)を制度化しています。
 また,地域や産業界の人材ニーズに対応した,社会人等が学びやすい教育プログラムを開発し実証する取組を推進する「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」の実施や,社会人特別入学者選抜,長期履修学生制度などの大学における社会人受入れの推進に資する制度の導入,放送大学における社会人や女性のキャリアアップに向けたオンライン授業科目等の開設などを通じて,社会人が学びやすい環境を整備するとともに,学び直しの支援のための奨学金制度の弾力的運用等を行っています。
 さらに,社会人の学びを主要な機能と位置づけ,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として専門職大学及び専門職短期大学(※2)等を制度化したところであり,平成31年度から順次開学が予定されています。
 今後,「人生100年時代構想会議」における議論の成果も踏まえつつ,社会人の学びの一層の充実強化に取り組むこととしています。

 大学における社会人向け講座の様子
 大学における社会人向け講座の様子


  • ※2 参照:第2部第5章第1節1

3 障害者の生涯を通じた学習の支援

 障害者が,生涯にわたり自らの可能性を追求できる環境を整え,地域の一員として豊かな人生を送ることができるようにすることは重要です。一方,現状では,特別支援学校高等部を卒業した後の障害者の学びの機会は十分ではないことが指摘されており,その改善が求められています。このような認識のもと,文部科学省内に「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置するとともに,平成29年4月,生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」を新設しました。29年4月には「特別支援教育の生涯学習化に向けて」と題する大臣メッセージを公表しました。また,公益社団法人日本青年会議所とタイアップして「みんなのNIPPON共生社会プロジェクト」を全国で展開するとともに,各界で活躍する障害者や支援者8名を「スペシャルサポート大使」に委嘱し,障害者の生涯学習の推進に関する広報への協力をお願いしています。さらに,29年度から新たに,障害者の生涯を通じた多様な学習を支える活動を行う個人又は団体への文部科学大臣表彰を行うこととし,29年度は61件の対象者を決定し,12月に表彰式と事例発表会を開催しました。これらの取組により,障害者の生涯学習に関する各方面への周知・機運醸成を進めています。

 平成29年度「障害者の生涯学習支援活動」に係る文部科学大臣表彰式典
 平成29年度「障害者の生涯学習支援活動」に係る文部科学大臣表彰式典

 表彰団体事例発表会「瑞宝太鼓」
 表彰団体事例発表会「瑞宝太鼓」

 また,平成30年3月から「学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議」を開催し,文化,スポーツ活動を含めた学校卒業後の障害者の学びに係る現状と課題を総合的に分析するとともに,その推進方策について検討を行っています。
 これと並行して,平成30年度から新たに「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」を実施し,学校から社会への移行期や人生の各ステージにおける効果的な学習プログラムや実施体制,関係機関・団体等との連携等に関する実証的な研究等に取り組むこととしています。
 あわせて,障害者が一般の生涯学習活動に参加する際の阻害要因や促進要因を把握・分析する調査研究の実施や,人材育成のための研修会や障害者参加型フォーラムの開催等も予定しています。
 今後も,教育,スポーツ,文化の施策全体にわたり,障害者の生涯を通じた多様な学びを支援するため,横断的・総合的に取組を推進することとしています。

4 専修学校教育の振興

 専修学校は,昭和50年7月の「学校教育法」の改正において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し,又は教養の向上を図る」ことを目的とする学校であるとされ,平成27年度に制度創設40周年を迎えました。多様な分野において,社会の変化に即応した実践的な職業教育を行う中核的機関として,地域産業を支える専門職業人を養成しており,29年5月現在で3,172校が設置され,65万5,254人の生徒が学んでいます。

 図表2‐3‐1 専修学校の目的,課程及び主な要件

 専修学校は,入学資格の違いによって,高等学校卒業程度を入学資格とする「専門課程」(専門学校),中学校卒業程度を入学資格とする「高等課程」(高等専修学校),入学資格を問わない「一般課程」の三つの課程があります。文部科学大臣の指定を受けた高等課程を修了すれば大学入学資格が,文部科学大臣の指定を受けた専門課程を修了すれば大学院入学資格が得られます。専門学校修了者については,修業年限が2年以上,総授業時数が1,700時間以上といった要件を満たしていると文部科学大臣が認定した課程の修了者には「専門士」の称号が付与されます。また,修業年限が4年以上,総授業時数が3,400時間以上といった要件を満たしていると文部科学大臣が認定した課程の修了者には「高度専門士」の称号が付与されます。
 平成24年度からは単位制及び通信制の教育が可能となり,また,26年度には企業等との密接な連携によって実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程を「職業実践専門課程」として認定する制度が創設されました。30年2月27日現在の認定学校数は954校,認定学科数は2,885学科となっています。
 教育費負担の軽減を目的として,高等課程は,高等学校等就学支援金や高等学校等奨学給付金の支給対象とされています。また,専門課程のうち希望する者は,日本学生支援機構による奨学金(平成29年度から実施された給付型奨学金を含む)の支給対象とされています。
 グローバル化の進展や産業の高度化・複雑化が進展していく中,専修学校は,その柔軟な特性を生かし,今後ますますその役割を果たしていくとともに,社会人の学び直しの推進にも更に貢献していくことが期待されています。

5 多様な学習機会の提供

(1)放送大学の充実・整備

 放送大学は,いつでも誰でも学ぶことができるよう,テレビ・ラジオの放送やインターネット等を活用して大学教育の機会を幅広く国民に提供しています。また,全国に「学習センター」等を設置して学生の学習を支援するとともに,地域の生涯学習の振興にも寄与しています。平成29年度第2学期現在で約9万人が学んでおり,これまでに150万人以上の学生が学び,10万人を超える卒業生を送り出しています。放送大学の学生は職業・年齢・地域を問わず多様であり,学生の有職率は約7割,身体に障害を有する学生も約800人在籍しています。このように放送大学は我が国の生涯学習の中核的機関として大きな役割を果たしており,社会人等が学びやすい環境の整備等を一層進めています。
 放送大学は,学部・大学院を合わせて300を超える科目を開設しており,学生は既存の学問分野にとらわれず学習の目的に合わせて科目を自由に選択することができます。また,特別支援学校教諭免許状をはじめとした各種資格に対応する科目の開講や特定分野の授業科目群を設定して学位以外の履修証明を与える「科目群履修認証制度(放送大学エキスパート)」などの実施によって,多様な学習需要に応えています。さらに近年,より社会のニーズに対応した学習の充実を図るため,女性のキャリアアップにつながる科目や幼保連携型認定こども園の特例制度に定められた科目をはじめとするオンライン授業の配信の拡充を進めています。今後,人生100年時代を見据えた社会人の学びの一層の充実に取り組むこととしています。

(2)大学における生涯学習機会の提供

 生涯学習社会の実現に向けて,各大学(短期大学を含む。)は,社会人入試,夜間・昼夜開講制,科目等履修生,通信教育,履修証明制度,公開講座などを実施しています。このうち公開講座は多くの大学で開講され,大学における教育と研究の成果を直接,地域住民などに学習機会として提供する役割を担っています。平成26年度は968大学で4万5講座が開講され,172万8,387人が受講しました。

(3)社会通信教育

 文部科学省は,学校又は一般社団法人若しくは一般財団法人の行う通信教育のうち社会教育上奨励すべきものを認定し,その普及・奨励を図っています。平成30年3月末現在,文部科学省認定社会通信教育は25団体109課程であり,29年における1年間の延べ受講者数は約7万4,000人となっています。

(4)民間教育事業者,NPO法人等との連携

 民間教育事業者や教育分野で活動を行うNPO法人などの民間団体は,社会づくりや地域づくりの重要な担い手として,国民の多様な学習活動を支える上で大きな役割を果たしており,ますます重要なものになっています。文部科学省は,民間団体と行政の協働による取組の充実を図るとともに,民間教育事業の後援等を行うほか,民間団体の取組を紹介するなど,民間団体の取組の活性化や官民のネットワーク形成を支援しています。

6 学習成果の評価・活用

(1)学校外における学修の単位認定

 高等学校では,生徒の能力・適性,興味・関心などが多様化している実態を考慮し,選択の幅を広げる観点から,生徒の在学する高等学校での学習の成果に加えて,1.大学,高等専門学校,専修学校などにおける学修,2.知識・技能審査の成果に関する学修,3.ボランティア活動,就業体験活動(インターンシップ)等,4.高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修など,在学する高等学校以外の場における学修の成果について,各高等学校の判断によって学校の科目の履修とみなし,単位を与えることが可能となっています。平成28年度は,1.大学,高等専門学校,専修学校などにおける学修については350校,2.知識・技能審査の成果に関する学修については1,304校,3.ボランティア活動,就業体験活動(インターンシップ)等については416校,4.高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修については327校が単位認定を行っています。
 また,大学等(大学,高等専門学校,専門学校)は,教育内容の充実に資するため,大学等における教育に相当する学修など大学等以外の教育施設などにおける学修について,当該大学等における単位として認定できることとされており,平成27年度は517大学(全体の69.3%)がこれを活用しています。

(2)高等学校卒業程度認定試験

 高等学校卒業程度認定試験は,高等学校を卒業していない者などに対して高等学校卒業者と同程度以上の学力があることを認定する試験です。この試験の合格者には,大学等の入学資格が付与されます。平成29年度における延べ出願者数は2万4,713人,受験者数は2万1,744人,合格者数は9,479人となっています(図表2‐3‐2)。出願者のうち約半数となる49.2%を高等学校中途退学者が占めており,高等学校卒業程度認定試験が高等学校等の中途退学者などの再挑戦の機会となっていることが分かります。試験合格者のおよそ半数は大学等に進学していますが,この試験は,就職などの機会に学力を証明する手段としても活用されています。文部科学省は,採用試験や採用後の処遇において高等学校の卒業者と同等に扱われるよう,パンフレットやポスターの配布などによって制度の周知に努めています。

 図表2‐3‐2 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

(3)大学改革支援・学位授与機構による学位授与

 大学改革支援・学位授与機構は,大学・大学院の正規の課程を修了してはいないものの,大学・大学院を卒業又は修了した者と同等以上の学力を有すると認められる者に対して,高等教育段階の様々な学習成果を評価し,学位を授与しています。平成27年度からは,大学と同等の教育課程において学修指導が行われていると同機構が認定した短期大学・高等専門学校の専攻科の修了見込み者に対して学位(学士)を授与する新たな制度を設けました。29年度末までに,1.短期大学,高等専門学校卒業者などが大学,専攻科において更に一定の学習を行った場合に当たる者として延べ5万1,104人に,2.同機構が認定する教育施設(省庁大学校)の課程の修了者に当たる者として延べ2万8,778人に学位を授与しています。

(4)検定試験の質の向上等

 民間の団体(検定事業者)が,受検者の学習成果を測るために行う検定試験は,法令等に基づくものではありませんが,全国で実施され多数の受検者が参加するものや,専門的な知識・技能を測るために特定の受検者を対象に実施されるもの,各地域における文化活動や観光産業などの活性化を目的としたものなど,様々な規模・内容で実施されています。こうした検定試験によって測られる学習成果が適切に評価され,学校や職場,地域社会などで生かされるためには,検定試験の質の向上と信頼性の確保が重要です。
 文部科学省は,検定試験に関する評価や情報公開の取組を促進するため,「検定試験の評価等の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催し,その成果を平成29年10月に「検定事業者による自己評価・情報公開・第三者評価ガイドライン」として取りまとめて公表しました。ガイドラインでは,検定試験の評価手法,評価の視点や内容,情報公開が望まれる項目などが検定事業者の自主的な取組の目安として示されています。
 また,本ガイドラインを踏まえた自己評価や第三者評価の普及・定着を促進するための第三者評価に関する調査研究を実施しています。

第2節 現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進

1 少子化対策

 我が国で急速に進行している少子化問題に関し,政府は「次世代育成支援対策推進法」や「少子化社会対策基本法」及び同法に基づく「少子化社会対策大綱」などを踏まえ対策を推進しています。文部科学省では,1.教育の無償化・負担軽減,2.認定こども園の設置促進や幼稚園における預かり保育・子育て支援の充実,3.地域住民等の参画による放課後等における子供たちの学習や体験・交流の機会の提供等,地域と学校の連携・協働による取組や,親の学習機会の提供などによる家庭教育の支援など地域の実情に応じた教育支援活動の推進等に取り組んでいます。
 特に1.については,平成29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」において,31年10月に予定されている消費税率10%への引上げに伴う税収の増加分を活用し幼児教育や高等教育の無償化等が盛り込まれたところです。文部科学省は,関係府省と十分に連携を図りつつ施策の具体化に向けた検討を進めています。

2 意欲ある高齢者の能力発揮を可能とする高齢社会への対応

 高齢社会においては,価値観が多様化する中で,学習活動や社会参加活動を通じての心の豊かさや生きがいの充足の機会が求められるとともに,就業を継続したり日常生活を送ったりする上でも社会の変化に対応して絶えず新たな知識や技術を習得する機会が必要となります。また,一人暮らし高齢者の増加も背景に,地域社会において多世代が交流することの意義が再認識されています。文部科学省は,学びを通じて高齢者が地域の課題解決のために自主的かつ継続的に活躍できる環境を整備するために,行政,大学,NPO法人及び企業等が参画する研究協議会である「長寿社会における生涯学習政策フォーラム」を開催しています。平成29年度は,11月から12月にかけて北海道釧路市,北海道富良野市,愛媛県新居浜市及び東京都文京区でネットワークづくりのノウハウ共有や,地域参画に意欲を持つ高齢者と活動の場を結びつけるための環境整備の促進等を行いました。

3 人権教育の推進

 文部科学省は,「日本国憲法」及び「教育基本法」の精神にのっとり,学校教育及び社会教育を通じて,人権尊重の意識を高める教育の推進に努めています。平成28年度には,6月に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(平成28年法律第68号)が施行されたことを踏まえ,「「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の施行について」(平成28年6月20日付け 生涯学習政策局社会教育課長,初等中等教育局児童生徒課長及び高等教育局高等教育企画課長連名通知)を,また,同年12月に「部落差別の解消の推進に関する法律」(平成28年法律第109号)が施行されたことを踏まえ,「「部落差別の解消の推進に関する法律」の施行について」(平成29年2月6日付け 生涯学習政策局社会教育課長,初等中等教育局児童生徒課長,高等教育局大学振興課長及び高等教育局専門教育課長連名通知)を教育委員会等に発出し,これらの法律の施行及び理解促進のための周知を図りました。
 学校教育については,学校における人権教育の在り方等に関する調査研究とその成果の普及等によって,教育委員会・学校における人権教育の取組の改善・充実を支援しています。
 平成28年度には,前述の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行されたことを踏まえ,学校における人権教育の一層の推進に資するため,外国人の人権尊重に関する実践事例を収集し公開しました。また,29年度には,学校現場において拉致問題への理解促進を図るため,「北朝鮮当局による拉致問題に関する映像作品の活用促進について」(平成30年3月7日付け 拉致問題担当大臣及び文部科学大臣連名通知)を教育委員会等に発出しました。
 社会教育については,社会教育主事の養成講習等において,人権問題などの現代的課題を取り上げ,指導者の育成及び資質の向上を図っています。

4 男女共同参画社会の形成に向けた取組

 男女共同参画社会の実現は,社会全体で取り組むべき最重要課題であり,「男女共同参画社会基本法」や「男女共同参画基本計画」等に基づき,政府において総合的かつ計画的な取組を進めています。文部科学省は,「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月25日閣議決定)に示された施策の方向性等に基づき,男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実を推進しています。

(1)男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

 男女共同参画社会の形成に向けて,学校・家庭・地域などにおいて男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実などを図っています。
 学校教育については,小・中・高等学校において,児童生徒の発達段階に応じて男女の平等や相互の理解と協力について適切に指導が行われるとともに,男女が共に各人の生き方,能力,適性を考え,主体的に進路を選択する能力と態度を身に付けられるような進路指導が行われるよう努めています。また,都道府県教育委員会等に対し,各種会議をはじめ様々な機会において,女性の校長・教頭等の管理職への積極的な登用を働きかけています。高等教育機関に対しては,各種会議をはじめ様々な機会において,女性の国公私立大学及び高等専門学校の教授等への登用に関する事例等を紹介することにより各高等教育機関の取組を促しています。

 社会教育については,男女が各人の個性と能力を十分に発揮し,社会のあらゆる分野に参画していくための学習機会の充実を図っています。
 平成29年度から「男女共同参画推進のための女性の学び・キャリア形成支援事業」を開始し,大学等,地方公共団体及び男女共同参画センター等の関係機関が連携し,子育て等により離職した女性の学びと再就職・社会参画支援を地域の中で一体的に行う仕組みづくりに関するモデルを構築するための実証事業を行いました。また,取組の普及啓発を図るため,徳島と東京で研究協議会を開催しました。

(2)国立女性教育会館における活動

 我が国唯一の女性教育のナショナルセンターである国立女性教育会館(NWEC:ヌエック)は,「研修」,「調査研究」,「広報・情報発信」,「国際貢献」の四つを有機的に連携させながら,国内の男女共同参画を推進するための事業を展開しています。
 平成29年度には,女性団体,男女共同参画センター,地方公共団体,大学,高等専門学校,初等中等教育機関,教育委員会及び企業等に対し,それぞれの分野での男女共同参画を進めていくためのリーダー等に対する研修を実施するとともに,これらの機関や組織のネットワークの形成を支援しました。国際的な取組としては,アジア地域における男女共同参画推進のための人材育成と国際的なネットワークの形成を図るため,「アジア地域における男女共同参画推進官・リーダーセミナー」を実施しました。
 これらの研修等の土台となる調査研究や関連する専門情報の収集・提供の充実を図るために,企業における男女の初期キャリア形成過程についての追跡調査を継続するとともに,企業や大学等の男女共同参画の取組に資する情報収集・発信を施設内の女性教育情報センターや広報媒体(メールマガジン,SNS等)等で重点的に行いました。
 また,全国から抽出した公立小学校・中学校の本務教員を対象に,「仕事」や「職場環境」に関わる意識など,学校教員のキャリアと生活に関するアンケート調査を行いました。また,放送大学と連携して,女性のキャリアデザインに関するオンライン講座を運用するとともに,eラーニングを活用し,これまでに実施した研修やセミナーの様子をウェブサイトで配信しました。
 さらに,国立女性教育会館の開館40周年,国立女性教育会館女性アーカイブセンターの開設10周年を記念し,女性アーカイブセンター特別展示「国立女性教育会館開館40周年展」,「女性アーカイブセンター10周年展」を開催しました。

5 児童虐待の防止

 児童虐待の防止については,政府全体で様々な施策の推進を図っていますが,痛ましい事件は後を絶ちません。全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数が平成28年度には12万2,575件と過去最多になるなど,児童虐待は依然として社会全体で早急に取り組むべき課題です。
 児童虐待の未然防止や,早期発見・早期対応や虐待を受けた児童生徒の支援については,家庭・学校・地域社会・関係機関が緊密に連携する必要があります。文部科学省は,これまでも都道府県などを通じて,学校教育関係者や社会教育関係者に対して児童相談所への通告義務や関係機関との連携等を図る上での留意点等について周知してきました。また,家庭教育支援チームの組織化などによる相談対応,保護者への学習機会の提供などの家庭教育支援の充実を図っています。
 平成28年6月には,教育委員会等に通知を発出し,児童虐待防止対策として,1.児童虐待の早期発見,2.児童虐待への早期対応,3.関係機関との連携の強化,4.学校等から児童相談所への情報提供,5.学校等の間の情報共有,6.児童虐待等に係る研修の実施を行うことを周知しました(平成28年6月20日付け 生涯学習政策局長・初等中等教育局長・高等教育局長連名通知「児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について」)。
 政府は,関係府省庁連携の下,「児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議」を開催するなど,政府全体としての児童虐待防止対策について強化を図っています。文部科学省としても,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの外部の専門家を活用した学校の相談体制の充実や,訪問型家庭教育支援の充実に一層努めることとしています。

6 子供の貧困対策の推進

 子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう,貧困の状況にある子供が健やかに育成される環境を整備するとともに,教育の機会均等を図るため,平成25年6月に国会の全会一致で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立し,翌26年1月に施行されました。
 また,平成26年8月には,同法に基づき政府として総合的に子供の貧困対策を推進するための基本的な施策を定めた「子供の貧困対策に関する大綱」(以下,「大綱」という。)が閣議決定されました。
 大綱では,子供の貧困対策を総合的に推進するに当たり,関係施策の実施状況や対策の効果等を検証し評価するため,生活保護世帯に属する子供の高等学校等進学率や,スクールソーシャルワーカーの配置人数,子供の貧困率(※3)等,25の指標を設定しています。あわせて,これらの指標の改善に向けては,1.教育の支援,2.生活の支援,3.保護者に対する就労の支援,4.経済的支援,5.子供の貧困に関する調査研究等,6.施策の推進体制等といった事項ごとに,当面取り組むべき重点施策を掲げています。
 大綱を踏まえて,文部科学省は,まず,以下のような取組を通じて,幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形での教育費負担軽減を進めています。

  • 幼児教育無償化の段階的推進(※4)
  • 義務教育段階における就学援助の充実(※5)
  • 高等学校等就学支援金,高校生等奨学給付金の充実(※6)
  • 大学生等における給付型奨学金制度の本格的な実施や無利子奨学金制度の着実な実施(※7)

 また,学校を貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付け,以下のような取組を推進しています。

  • 貧困による教育格差の解消のための教員定数の加配(※8)
  • スクールソーシャルワーカーの配置の拡充や貧困対策のための重点加配(※9)

 このほか,地域の教育資源を活用した子供の貧困対策として,以下のような取組を推進しています。

  • 困難を抱える親子が共に学び育つことを支援する「地域の教育資源を活用した教育格差解消プラン」の実施(※10)
  • 学習が遅れがちな中学生・高校生等を対象とする原則無料の学習支援(地域未来塾)の充実(※11)

 なお,平成31年10月に予定している消費税率の引上げによる増収分を活用した教育の無償化・負担軽減等については,「人生100年時代構想会議」(※12)の議論を踏まえ,29年12月に「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定されています。


  • ※3 子供の貧困率:17歳以下の子供全体に占める,貧困線(等価可処分所得(世帯可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額)に満たない17歳以下の子供の割合であり,OECD(経済協力開発機構)の作成基準に基づく。
  • ※4 参照:第2部第4章第13節2(2)
  • ※5 参照:第2部第4章第17節2
  • ※6 参照:第2部第4章第17節3
  • ※7 参照:第2部第5章第5節1(2)
  • ※8 参照:第2部第4章第12節2(1)
  • ※9 参照:第2部第4章第8節2
  • ※10 参照:第2部第3章第2節10(2)
  • ※11 参照:第2部第3章第3節3(1)3
  • ※12 参照:第1部教育再生の着実な推進第3節コラムNo.11

7 主権者教育の推進

 平成27年6月に「公職選挙法等の一部を改正する法律」が成立し,選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられました。これにより,未来の日本の在り方を決める政治に,より多くの世代の声を反映することが可能となりました。一方で,若年層に国家・社会の形成者としての意識を醸成するとともに,自身が課題を多面的・多角的に捉え,自分なりの考えを作っていく力を育むことがこれまで以上に重要となりました。
 文部科学省は平成27年11月に設置した「主権者教育の推進に関する検討チーム」の取りまとめを踏まえ,単に政治の仕組みについての知識の習得のみならず,主権者として社会の中で自立し,他者と連携・協働しながら,社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担う力を育む主権者教育を推進しています。
 具体的には,総務省と連携して,政治や選挙等に関する副教材等を全国の全ての高等学校等に配付するとともに,高等学校における主権者教育(政治的教養の教育)の実施状況を調査し,各都道府県等による一層効果的な取組が進められるよう,調査結果を公表しました。
 また,平成28年12月の中央教育審議会答申を踏まえ,29年3月に小・中学校学習指導要領を改訂し,社会科,家庭科,特別活動など関連する教科等において主権者教育の充実を図りました。さらに,30年3月に高等学校学習指導要領を改訂し,現代の諸課題に関わる学習課題の解決に向け,自己と社会との関わりを踏まえ,社会に参画する主体として自立することや,他者と協働してよりよい社会を形成すること等を目指す必履修科目として「公共」を新設しています。
 大学等においても,各地方公共団体の選挙管理委員会と連携したキャンパス内における期日前投票所の設置や,インターンシップなどを通じた学生等への啓発活動等が充実するよう,平成29年に実施された衆議院議員総選挙の際には,大学等における先進的な取組を「第48回衆議院議員総選挙に係る選挙啓発について(依頼)」(平成29年10月5日付け 高等教育企画課長事務連絡),「第48回衆議院議員総選挙に係る選挙啓発について(依頼)」(平成29年10月4日付け 生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室事務連絡)を通じて大学等に周知しました。また,各大学の学長や担当者が集まる会議において,キャンパス内における期日前投票所の設置や住民票異動の必要性,インターンシップ等を通じた学生への啓発活動等の取組の充実について周知を行いました。

8 消費者教育の推進

 消費者をめぐる問題が複雑化・高度化する中,消費者被害防止の観点だけでなく,様々な情報の中から必要なものを取捨選択し,適切な意思決定や消費行動を選択し,意見を表明し行動することができる自立した消費者を育成する教育が求められています。文部科学省は,「消費者教育の推進に関する法律」及びこれに基づく「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成30年3月閣議決定)並びに「消費者基本計画」(27年3月24日閣議決定)を踏まえ,学校教育や社会教育における消費者教育を推進しています。
 学校教育では,小・中・高等学校等において,学習指導要領に基づき消費者教育を推進しています。中央教育審議会答申(平成28年12月)を踏まえ,29年3月には小・中学校,30年3月には高等学校の学習指導要領を改訂し,関連する教科等において消費者教育に関する内容の更なる充実を図っています。また,各学校の指導の改善に資するよう,都道府県教育委員会等に委託して,消費生活や経済に関する内容などを含めた体験的・実践的な学習プログラムの開発について調査研究を行っています。
 社会教育では,文部科学省の消費者教育に関する取組の成果を広く還元するとともに,多様な主体の連携と協働を促進する場として「消費者教育フェスタ」を開催しています。平成29年度は,国立女性教育会館,千葉県柏市,北海道札幌市の3か所で開催し,有識者による基調講演やパネルディスカッション,実践者による事例報告や授業公開などを実施しました。また,消費者教育の指導者用啓発資料を配布し,消費者教育を通じて育むべき力と指導者の役割,指導者が消費者教育を行う上でのヒントや関係者が相互に連携して取り組む手法等について啓発を行っています。加えて,地域における消費者教育が連携・協働により一層推進されるよう,消費者教育アドバイザーを8か所に派遣するとともに,消費者教育の効果的な体制づくりの実証的共同研究を3大学で実施しました。

9 環境教育・環境学習の推進

 地球温暖化や自然環境の破壊,資源エネルギー問題など地球規模での様々な課題がある中,エネルギーの効率的な利用など環境に対する負荷を軽減し,持続可能な社会を構築するため,国民一人一人が様々な機会を通じて環境問題について学習し,自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが重要です。
 また,平成23年6月には「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」が成立しました。文部科学省は,国民がその発達段階に応じて,あらゆる機会に環境の保全についての理解と関心を深めることができるよう,学校教育や社会教育における環境教育の推進のために必要な施策に取り組んでいます。
 学校における環境教育については,これまでも,小・中・高等学校を通じ,児童生徒の発達の段階に応じて,社会科や理科など教科等横断的な学習が行われています。また平成29年3月には,小・中学校,30年3月には高等学校の学習指導要領を改訂し,環境教育については,社会科や理科,技術・家庭科など関連の深い教科を中心にその内容を充実しています。
 文部科学省は,環境教育を一層推進するための施策として,米国が提唱し,平成30年時点で世界120の国・地域が参加している「環境のための地球規模の学習及び観測プログラム(GLOBE)」に参加する協力校の指定や,環境省との連携・協力による教員等をはじめとする環境教育・環境学習の指導者に対する研修(環境教育リーダー研修)などを実施しています。また,「健全育成のための体験活動推進事業」において,児童生徒の健全育成を目的とした自然体験活動や農林漁業体験など農山漁村等における様々な創意工夫のある宿泊体験活動を支援しています。
 学校の施設については,環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を関係省庁と連携して推進しています。
 社会教育については,公民館等の社会教育施設を中心として,地域における社会教育関係団体等が連携し,環境保全等の地域の課題を解決していくための取組について情報提供するなど,地域の教育力の向上を図っています。
 さらに,青少年の自然体験活動などを一層推進するため,全国的な普及啓発事業,青少年の体験活動推進に関する調査研究,企業の取組を推進する教育CSRシンポジウム等を実施するとともに,地域で持続可能な体験活動推進の仕組みづくりを支援しています。国立青少年教育振興機構は,全国28か所の国立青少年教育施設の立地条件や特色を生かした自然体験活動などの機会と場所を提供しているほか,民間団体が実施する自然体験活動などに対して「子どもゆめ基金」事業(※13)による助成を行っています。


  • ※13 参照:第2部第3章第4節2(2)

10 読書活動の推進

 読書は,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身に付ける上で欠かせないものです。文部科学省は,「子どもの読書活動の推進に関する法律」及び「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(平成25年5月17日閣議決定)(以下,「第三次基本計画」という。)を踏まえ,1.市町村における「子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」の策定率の増加(市にあっては100%,町村にあっては70%以上),2.「不読率」(1か月に1冊も本を読まない子供の割合)の今後10年間での半減などを目指して,広く読書活動に対する国民の関心と理解を深めるため,様々な施策を実施しています。
 一方で,第三次基本計画の策定後,情報通信技術の普及による中高生のスマートフォン保有率の増加といった,子供を取り巻く環境の変化が見受けられることや,依然として特に高校生の不読率が高いこと等を踏まえつつ,次期(第四次)の基本計画が子供の読書活動にとって一層意義のあるものとなるよう,平成29年度には「子供の読書活動推進に関する有識者会議」において議論が行われ,「論点まとめ」が取りまとめられました。そして,この論点まとめを参考にしつつ,30年4月に「第四次子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」(以下,「第四次基本計画」という。)が閣議決定されました。今回の改訂では,特に高校生の不読率を改善するために,1.読書習慣の形成に向けて,発達段階ごとの効果的な取組を推進すること,2.友人同士で本を薦め合うなど,読書への関心を高める取組を充実すること,3.情報環境の変化が子供の読書環境に与える影響に関する実態把握・分析を進めることとしています。国,都道府県,市町村がそれぞれの役割を踏まえ,学校・図書館・民間団体・民間企業等の様々な機関と連携し,各種取組を充実・促進していきます。

(1)学校における読書活動の推進

1.学校における読書活動の推進

 子供の読書習慣を形成していく上で,学校は掛け替えのない大きな役割を担っています。
 「学校教育法」には,義務教育として行われる普通教育の目標の一つとして,「読書に親しませ,生活に必要な国語を正しく理解し,使用する基礎的な能力を養うこと」が規定されています。また,学習指導要領では,学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,児童生徒の自主的,自発的な読書活動を充実することとしています。
 小学校,中学校,高等学校の各学校段階において,児童生徒が生涯にわたる読書習慣を身に付け,読書の幅を広げるため,読書の機会の拡充や図書の紹介,読書経験の共有によって様々な図書に触れる機会を確保することが重要です。
 文部科学省の調査によると,平成28年3月現在,全校一斉の読書活動(いわゆる「朝読」を含む。)を実施している公立学校の割合は,小学校で97.1%(26年96.8%),中学校で88.5%(26年88.5%),高等学校で42.7%(26年42.9%)となっています。ボランティアなどの協力を得ている学校や公立図書館との連携を実施している学校も増加しており,各学校において積極的な取組が行われています。

2.学校図書館資料の整備・充実

 学校図書館には読書活動を推進する「読書センター」,教育課程の展開に寄与する「学習センター」や「情報センター」としての機能が期待されています。
 文部科学省は,公立義務教育諸学校における学校図書館の図書を充実するため,学校の規模に応じた蔵書数の目標を定めた「学校図書館図書標準」の達成と計画的な図書の更新に向けて,平成29年度から33年度までの「学校図書館図書整備等5か年計画」を策定しています。
 この計画の策定に伴い,公立義務教育諸学校の計画的な学校図書館図書の整備に必要な経費として,新たな図書等の購入に加えて,情報が古くなった図書等の更新を行うため,単年度約220億円,5か年総額約1,100億円の地方財政措置が講じられることとなっています。
 平成27年度末時点で「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は,小学校66.4%,中学校55.3%にとどまっており,文部科学省は,「学校図書館図書標準」の達成に向けて,各教育委員会に対して蔵書の計画的な整備を促しています。
 また,「学校図書館図書整備等5か年計画」の策定に伴い,学校図書館に新聞を配備するため,単年度約30億円,総額約150億円の地方財政措置が講じられることとなっています。平成27年度末現在で学校図書館に新聞を配備している学校の割合は,小学校41.1%,中学校37.7%にとどまっており,文部科学省は,各教育委員会に対して学校図書館への新聞の配備を促しています。

3.学校図書館の活用を推進するための人的配置の推進

 「学校図書館法」では,12学級以上の学校には学校図書館を活用した教育活動や読書活動の中心的な役割を担う司書教諭を必ず置かなければならないこととしています。文部科学省は,司書教諭の養成のための講習会を実施し有資格者の養成に努めるとともに,司書教諭の配置が促進されるよう周知を図っています。
 また,学校図書館活動を充実するためには,専ら学校図書館に関する業務を担当する学校司書を配置して,司書教諭との連携による多様な読書活動の計画・実施を推進したり,学校図書館サービスの改善・充実を図ったりすることが有効です。平成26年6月に議員立法によって「学校図書館法」が改正され,それまで法律に規定のなかった「学校司書」について,学校図書館の運営の改善及び向上を図り,学校図書館の利用の一層の促進に資するため,学校に置くよう努めることとされました。学校司書を配置する公立小・中学校の割合は近年一貫して増加しており(28年4月現在:小学校59.3%,中学校57.3%),児童生徒と本をつなぐ役割を果たす学校司書の必要性が強く認識されていることが分かります。こうしたことを踏まえ,公立小・中学校に学校司書を配置するための経費として,24年度から28年度まで単年度毎に約150億円の地方財政措置が講じられてきたところです。さらに,29年度からの「学校図書館図書整備等5か年計画」に新たに学校司書の配置を位置づけたことに伴い,単年度約220億円,総額約1,100億円の地方財政措置が講じられることとなっています。

4.学校図書館の更なる整備充実に向けて

 文部科学省は,「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」において,学校図書館の運営に係る基本的な視点や学校司書の資格の在り方,その養成等の在り方に関する検討を行い,平成28年10月,「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」を取りまとめました。これを踏まえ,文部科学省は,学校図書館の運営上の重要な事項について,教育委員会や学校等にとって参考となるよう,その望ましい在り方を示す「学校図書館ガイドライン」を作成しました。また,学校司書に求められる知識・技能を整理した上で,それらの専門的知識・技能を習得できる望ましい科目・単位数等を示す「学校司書のモデルカリキュラム」を作成し,各教育委員会や大学等に周知を図りました。

(2)地域における読書活動の推進

 文部科学省は,第三次基本計画に基づき,「読書コミュニティ拠点形成支援事業」,子供の読書に関する調査研究の実施,「子ども読書の日」(4月23日)を記念した「子どもの読書活動推進フォーラム」の開催,優れた読書活動を行っている図書館・学校・団体(個人)の文部科学大臣表彰を行っています。平成29年度は,「学校ブックフェスティバル」等の学校と連携し様々な工夫をこらした取組を行っています。平成29年度は,「学校ブックフェスティバル」等の学校と連携し様々な工夫をこらした取組を積極的に実施している北海道せたな町大成図書館等,図書館50館・学校134校・団体(個人)54団体(名)の合計238件が表彰し,受賞事例については「子ども読書の情報館」を活用した情報提供(※14)を行っています。第四次基本計画においても,これらの取組を進めていきます。
 また,図書館が「地域の知の拠点」として住民にとって利用しやすく,身近な施設となるための環境の整備を進めています。読書活動をはじめとする図書館の機能やサービスを一層充実させるため,「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日文部科学省告示第172号)に基づき,子供のための施設・設備や読み聞かせ等のサービスの充実に努めています。
 さらに,図書館資源を活用した読書格差の解消に向けた活動を推進するため,「地域の教育資源を活用した教育格差解消プラン」の中で困難を抱えた親子等を対象とした「図書館資源を活用した困難地域等における読書・学習機会提供事業」を実施し,ブックリストの作成や指導法の開発等を通じて読書機会の充実を図っています。

 「子ども読書の日」普及啓発ポスター
 「子ども読書の日」普及啓発ポスター


  • ※14 参照:http://www.kodomodokusyo.go.jp/

第3節 社会教育の振興と地域全体で子供を育む環境づくり

1 社会教育の振興

(1)これからの社会教育行政の在り方

 誰もが生涯にわたって豊かに生き生きと暮らし,互いを認め支え合い,活力ある持続可能な社会を築いていくためには,社会教育の一層の振興が必要です。
 平成25年1月に取りまとめられた「第6期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理」では,今後の社会教育行政の方向性として,従来の「自前主義」から脱却し,首長部局・大学・民間団体・企業等の多様な主体と積極的に連携・協働して現代的・社会的課題に対応した取組を進める「ネットワーク型行政」の推進を通じて「社会教育行政の再構築」を目指していくことが示されました。
 これを踏まえ,「第2期教育振興基本計画」においては,社会教育推進の基本的考え方として,地域における学習を活力あるコミュニティ形成・絆(きずな)づくりに積極的に貢献できるものとすることや,社会教育行政が地域の多様な主体とより積極的に連携・協働して取組を進めていく「社会教育行政の再構築」を実施するための環境整備を図ることが明記されています。また,中央教育審議会の「第3期教育推進基本計画について(答申)」においては,平成30年度から5年間の計画期間において,住民一人一人の人生を豊かにする学習,少子高齢化・人口減少など地域が直面する課題の解決や,地域活性化のための学習などを推進し,新しい地域づくりなどの活動につなげていくため社会教育行政の在り方について具体的な検討を進めることが提言されています。
 平成30年3月2日には文部科学大臣から中央教育審議会に対して「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」諮問を行いました。今後,新しい時代に求められる社会教育の在り方について,中央教育審議会生涯学習分科会を中心に議論を進めることとなっています。

(2)社会教育に関する専門的職員の充実

 教育委員会に置かれる社会教育に関する専門的職員である社会教育主事は,地域の学習課題を把握し,関係各機関との効果的なネットワークを活用しつつ,社会教育事業の企画・実施や,関係者への専門的技術的な助言と指導を行うことによって,地域住民の自発的な学習活動や学習を通じた地域づくりの活動を支援する役割を果たしています。また,図書館及び博物館に置かれる専門的職員である司書及び学芸員は,利用者や地域住民の学習機会の充実を図り,学習活動の支援を行っています。
 文部科学省は,現職の社会教育主事,司書,学芸員に対して,地域が抱える課題や学習ニーズに対応した実践的な研修を実施することによって,これらの専門的職員の資質向上を図っています。また,社会の変化や地域住民の高度化・多様化する学習ニーズに対応する社会教育主事や司書を養成するため,大学等に委嘱して社会教育主事講習や司書講習を実施するほか,学芸員資格認定試験による資格付与を行っています。
 社会教育主事の養成については,学習及びその成果を実際の地域課題の解決につなげていくという視点が十分でなく,より実践的な能力の育成が必要であると指摘されてきました。
 このことを踏まえ,平成29年度には,「社会教育主事養成の見直しに関する基本的な考え方について」(29年8月 社会教育主事養成等の改善・充実に関する検討会)等の提言内容を踏まえ,社会教育主事講習及び社会教育主事養成課程の科目の改善を図ることとし,「社会教育主事講習等規程の一部を改正する省令」(平成30年文部科学省令第5号)を30年2月28日に公布しました。この省令については32年4月1日から施行されることになっています。
 本改正では,学習者の多様な特性に応じた学習支援に関する知識及び技能の習得を図る科目である「生涯学習支援論」と,多様な主体と連携・協働を図りながら学習成果を地域課題解決等につなげていくための知識及び技能の習得を図る科目である「社会教育経営論」を新設しました。これらを含む全ての科目を修得した者は,新たに「社会教育士」と称することができます。
 社会教育主事の講習や養成課程で習得した知識や能力は,社会教育行政はもちろんのこと,関連する行政分野や民間の活動などにおいても幅広く生かすことができるものであり,修了者には,例えば,地域と学校との連絡調整や情報共有,活動の企画,調整,運営などのコーディネーターの役割を担う地域学校協働活動推進員として活躍するなど,様々な場面でその力を発揮することが期待されます。

2 社会教育施設を通じた様々な施策の展開

 公民館,図書館,博物館等の社会教育施設は,地域における学びの拠点であり,よりよい地域づくりに向けた課題を適切に把握するとともに,施設利用者である地域住民の意向を十分にくみ取った運営を行うことが重要です。さらに,その活動内容を客観的に評価・検証し,地域住民にも公開することを通じて施設の運営の質の向上を図ることも求められます。
 文部科学省は,「第2期教育振興基本計画」を踏まえ,公民館等の社会教育施設を拠点とする地域の課題解決に向けた講座等の学習や地域活動等が地域コミュニティの形成につながっていくよう,様々な取組を行っています。平成29年度には,「学びによる地域力活性化プログラム普及・啓発事業」において,各地域が共有する課題の解決に向けて協議を行う「学びを通じた地方創生コンファレンス」を全国7か所で実施しました。このような取組を通じ,関係部局や関係機関の連携・協働により,公民館等地域の「学びの場」を拠点として実施される地域課題解決の活動が促進され,地域力活性化に資することとなるよう支援していきます。

(1)公民館

 公民館は,地域住民にとって最も身近な学習拠点であるだけでなく,交流の場,地域コミュニティの形成の場として重要な役割を果たしています。平成27年10月現在,公民館は全国に約1万4,200館設置され,住民の学習ニーズや地域の実情に応じた学級・講座の開設など様々な学習機会を提供しています。
 文部科学省は,公民館職員専門講座や社会教育主事講習等において,地域課題を解決するための活動の事例提供等により,公民館における取組が一層充実するよう努めています。
 また,文部科学省では,特に事業内容・方法等に工夫をこらし,地域住民の学習活動に大きく貢献していると認められる公民館(公民館と同等の社会教育活動を行う施設を含む)を優良公民館として表彰しており,第70回(平成29年度)優良公民館表彰においては,76館を表彰館として決定しました。

 公民館のない地域の移動式屋台型公民館「パーラー公民館」(沖縄県那覇市若狭公民館)
 公民館のない地域の移動式屋台型公民館「パーラー公民館」(沖縄県那覇市若狭公民館)

(2)図書館

 図書館は,人々の学習に必要な図書や様々な情報を収集・整理・提供する身近な社会教育施設です。平成27年10月現在の図書館数は,公立図書館が3,308館,私立図書館が23館となっています。文部科学省は,24年4月に「図書館法施行規則」の一部改正を行い,図書館を支える司書が地域社会の課題や人々の情報要求に対して的確に対応できるよう,大学における司書養成課程等の改善・充実を図ったところです。また,図書館職員の資質向上に向けて,司書等の研修の充実に努めています。
 図書館には「地域の知の拠点」として,子供や高齢者など多様な利用者や住民の学習活動を支え,地域が抱える様々な課題解決の支援や地域の実情に応じた情報サービスの提供など幅広い観点から社会貢献や地域発展のために寄与することが期待されます。

(3)博物館

 博物館は,資料収集・保存,調査研究,展示,教育普及などの活動を一体的に行い,教育,学術及び文化の発展並びに地域の活性化に貢献する施設です。平成27年10月現在,登録博物館が895館,博物館相当施設が361館,博物館と類似の事業を行う施設が4,434館設置されています。文部科学省は,地域の教育力の向上や,博物館職員の資質向上を目的として,博物館長や中堅の学芸員を対象とした専門的な研修を実施するとともに,学芸員を外国の博物館に派遣し,その成果を全国に普及することなどにより,博物館振興施策の充実に取り組んでいます。また,博物館を支える学芸員が,人々の生涯学習の支援を含め,博物館に期待されている諸機能を強化し,国際的にも遜そん色ない高い専門性と実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう,大学などにおける学芸員養成課程などの充実を図っています。
 なお,2019(平成31)年9月にはICOM(国際博物館会議)京都大会2019が開催されることが決定しています。こうした国際大会は諸外国に対し我が国の文化を発信する絶好の機会であり,国内外の博物館ネットワークの活用・強化を図るとともに,開催に向けて関係機関と連携しながら必要な協力を行うこととしています。

(4)国立科学博物館

 国立科学博物館は,国内唯一の総合科学博物館であり,自然史,科学技術史に関する調査研究,標本資料の収集・保管とその継承を進めるとともに,調査研究の成果や標本資料を生かして展示や学習支援活動を実施しています。
 平成29年度は,展示活動については,展示を活用した学習支援活動に体系的に取り組み活性化を図るとともに,今後の常設展示の将来構想と改修計画に関する調査検討を行い,地球館を中心とした改修に関する基本計画を立案しました。また,入館者の要望に応え資料解説を改善及び追加するなどにより,展示の魅力を一層感じられる観覧環境を整えました。
 さらに,「大英自然史博物館展」「深海2017」「古代アンデス文明展」等の特別展のほか,企画展として,国立科学博物館としては初めて発生生物学に焦点を当て,この分野の最先端の研究成果やこれまでの歴史等を通じ,生きものの形づくりを紹介した「卵からはじまる形づくり-発生生物学への誘い-」,日本の豊かな植物多様性を,日本人画家が描いた植物画や英国の植物学専門誌『カーティスのボタニカルマガジン』に掲載されたイラストレーションの原画等で紹介した「フローラヤポニカ-日本人画家が描いた日本の植物-」,南方熊楠生誕150周年にあたり,森羅万象を探求した「研究者」として捉えられてきた南方熊楠を,あらゆる情報を広く収集し蓄積した「情報提供者」として新たな視点でとらえた「南方熊楠-100年早かった智の人-」等を開催しました。
 学習支援活動においては,青少年から成人まで幅広い世代に自然や科学の面白さを伝え共に考える機会を提供するため,展示を活用したコミュニケーション活動や利用者の特性に応じた講座・観察会等を実施するとともに,全国約30か所での博物館・教育委員会と協働した「教員のための博物館の日」の実施,自然科学系博物館等に勤務する中堅学芸員を対象にした専門的研修や大学院生等を対象にしたサイエンスコミュニケータ(※15)の養成を行っています。
 加えて,国立科学博物館の有する知的・人的・物的資源を活(い)かし,全国各地の科学系博物館等と連携協同して,巡回展示や学習支援活動,研修等を実施しています。例えば平成29年度には,沖縄県立博物館・美術館を中心とした沖縄県内での巡回展示,研修,ホテルを会場とした博物館外でのミニ展示実施や,長野と島根の博物館における広域連携による巡回展示,研修,観光に関するシンポジウムなどを実施しました。

 調査研究の成果や標本資料を生かした常設展
 調査研究の成果や標本資料を生かした常設展


  • ※15 サイエンスコミュニケータ:人と自然と科学が共存する持続可能な社会を育むため,誰もが科学について主体的に考え行動するきっかけを提供し,人と人あるいは科学と社会をつなげる人材。

3 社会全体で子供たちの学びを支援する取組の推進

(1)地域学校協働活動の推進

 文部科学省は,幅広い地域住民や企業・団体等の参画により,地域と学校が連携・協働して,学びによるまちづくり,地域人材育成,郷土学習,放課後等における学習・体験活動などを通じて地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え,地域を創生する「地域学校協働活動」を推進しています。平成29年3月には「社会教育法」の改正により,地域学校協働活動を推進するため,教育委員会による連携協力体制の整備や,地域住民と学校との情報共有を行う「地域学校協働活動推進員」の委嘱に関する規定の整備が行われました。
 これを踏まえ,文部科学省は,教育委員会が地域学校協働活動を推進していく際の参考の手引となるよう,「地域学校協働活動の推進に向けたガイドライン(参考の手引)」を平成29年4月に策定しました。
 地域学校協働活動の推進を通じて,地域の将来を担う人材が育成されるとともに,学校を核とした地域住民のつながりが深まり,自立した地域社会の構築・活性化につながっていくことが期待されています。また,地域学校協働活動を推進することは,「社会に開かれた教育課程」の実現や,学校における働き方改革にも資するものです。
 今後も地域学校協働活動が円滑かつ効果的に実施されるよう支援するとともに,好事例の収集・普及等により,地域学校協働活動を全国的に推進することとしています。

 滋賀県竜王町(りゅうおうちょう)で公民館と連携した地域学校協働活動の事例 公民館で活躍している水墨画グループによる学習支援 (竜王中学校1年生・美術)
 滋賀県竜王町(りゅうおうちょう)で公民館と連携した地域学校協働活動の事例
 公民館で活躍している水墨画グループによる学習支援
 (竜王中学校1年生・美術)

1.地域学校協働本部

 従来の学校支援地域本部等の地域と学校の連携体制を基盤として,より多くのより幅広い層の地域住民,団体等が参画し,緩やかなネットワークを形成することにより,地域学校協働活動を推進する地域学校協働本部を推進しています。平成29年度は全国で5,168本部が整備されています。

2.放課後子供教室

 保護者や地域住民の協力を得て,放課後などに子供たちに学習や様々な体験・交流活動等の機会を提供するため,放課後子供教室を推進しています。平成29年度は全国で1万7,615教室が開設されています。
 放課後子供教室は,文部科学省が厚生労働省と共同で策定した「放課後子ども総合プラン」の下で,共働き家庭等の小学校に就学している児童を対象とした厚生労働省の放課後児童クラブと連携しつつ,実施されています。

3.地域未来塾

 平成27年度から,経済的な理由や家庭の事情により,家庭での学習が困難である,学習習慣が十分に身に付いていないなどの状況にある中学生・高校生等に対して,地域住民の協力等による原則無料の学習支援である「地域未来塾」の取組を推進しています。29年度は全国で2,813箇所実施されています。

4.外部人材を活用した教育活動の推進

 文部科学省は,子供たちの休日,放課後等における教育活動の充実を図るため,平成26年度から,民間企業・団体等を中心として多様な経験や技能を持つ外部人材の協力により,特色・魅力のある教育プログラムを実施する地方公共団体や学校の取組を支援しています。
 さらに,子供たちが社会で活躍する多くの大人に出会い,将来の夢や希望を持って学ぶ機会が充実するよう,趣旨に賛同する多様な企業・団体等を「土曜学習応援団」として位置付け,実社会での経験や専門知識,技術等を生かした出前授業や施設見学等の教育プログラムの提供を受ける取組の充実を図っています。

 東京ガスの社員が講師となり,中学校の公開授業で燃料電池の実験を行い,環境に優しいエネルギーについて学び,これからの社会づくりを考える環境学習の事例(東京都大田区)
 東京ガスの社員が講師となり,中学校の公開授業で燃料電池の実験を行い,環境に優しいエネルギーについて学び,これからの社会づくりを考える環境学習の事例(東京都大田区)

(2)高校生等による地域課題解決型学習の推進

 学びを通じた地方創生・地域振興の観点から,「地元」を学び,地域の活性化やまちづくりを担う人材を育む方策の一つとして,「地域ビジネス創出事業(SBP:Social Business Project)」を推進しています。
 SBPとは,地域における次代の担い手となる高校生等の若者が,ソーシャル・ビジネス(※16)の手法を学ぶことにより,周囲の大人と共に地域課題の解決に取り組む活動です。
 静岡県立静岡農業高等学校では,枯れ松の廃棄問題に悩む地方公共団体と連携し,抗酸化作用等の松葉の有用性を科学的に検証して開発した緑茶や入浴剤等の商品を販売し,その収益の一部を松の保全活動に充てる取組を行っており,その取組の独自性とモデル性が評価され,全国のSBPに取り組む実践校の交流の機会として年に一度開催される「全国高校生SBP交流フェア(主催:一般社団法人未来の大人応援プロジェクト実行委員会,共催:文部科学省)」において文部科学大臣賞を受賞しました。このような,先進事例の紹介等を通して,全国への普及活動を展開しています。

 静岡県立静岡農業高等学校における取組の様子
 静岡県立静岡農業高等学校における取組の様子

 第2回全国高校生SBP交流フェアの様子
 第2回全国高校生SBP交流フェアの様子


  • ※16 ソーシャル・ビジネス:社会的課題への取組を,継続的な事業活動として進めていくこと。地域の自立的支援や雇用創出につながる活動として有望視されている。

(3)PTAや青少年教育団体等の実施する共済事業

 PTAや青少年教育団体等は,「PTA・青少年教育団体共済法」に基づき,行政庁の認可を受けて,その主催する活動等における災害について共済事業を実施することができます。
 平成29年度末までに,全国で27団体が本法に基づく共済事業の認可を受けています。文部科学省は,共済契約者等を保護する観点から,共済事業が適切かつ健全に実施されるよう,行政庁である都道府県教育委員会や団体に対する研修会の実施や情報提供などの支援に努めています。

第4節 家庭教育支援の推進と青少年の健やかな成長

1 豊かなつながりの中での家庭教育支援の充実

(1)家庭教育の現状と課題

 現在,多くの家庭が家庭教育の充実に努めている一方で,家庭環境の多様化や地域社会の変化により,親子の育ちを支える人間関係が弱まる中,子育てについての悩みや不安を抱える家庭も多くなっています(図表2‐3‐3)。

 図表2‐3‐3 子育てについての悩みや不安

 同時に,地域社会で子育てを支えることの重要性が認識されています(図表2‐3‐4)。

 図表2‐3‐4 子育てする人にとっての地域の支えの重要性

 「第2期教育振興基本計画」では,基本施策に「豊かなつながりの中での家庭教育支援の充実」が掲げられており,文部科学省では,身近な地域や学校をはじめとする豊かなつながりの中で家庭教育が行われるよう,コミュニティの協働による家庭教育支援体制を強化に努めています。

(2)コミュニティの協働による家庭教育支援の推進

 文部科学省は,「地域における家庭教育支援総合推進事業」により,身近な地域において保護者が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう,家庭教育支援チームの組織化などによる相談対応や,保護者への学習機会の企画・提供などの家庭教育支援を行う地方公共団体の取組への助成を行っています(平成29年度:5,098か所)。また,家庭教育支援チーム等による訪問型の家庭教育支援体制構築を図るため,「先駆的家庭教育支援推進事業(訪問型家庭教育支援の実施)」を地方公共団体に委託して実施しました(29年度:6府県)。
 このほか,地域における家庭教育支援活動の一層の推進を図るため,平成29年度は新たに「家庭教育支援チーム」の活動の推進に係る文部科学大臣表彰を実施しました。

(3)子供から大人までの生活習慣づくりの推進

1.子供の基本的な生活習慣の現状

 基本的な生活習慣の乱れが,子供たちの学習意欲や体力,気力の低下の要因の一つとして指摘されています。
 平成29年度「全国学力・学習状況調査」によると,子供の睡眠習慣については,毎日,同じくらいの時刻に寝ている小学校6年生の割合は約80%,中学校3年生の割合は約76%,毎日,同じくらいの時刻に起きている小学校6年生の割合は約91%,中学校3年生の割合は約92%となっています。
 また,同調査において,子供の朝食摂取については,朝食を食べないことがある小学校6年生の割合は約13%,中学校3年生の割合は約17%となっているほか,毎日朝食を食べる子供の方が,同調査の平均正答率が高い傾向にあることが分かっています(図表2‐3‐5)。

 図表2‐3‐5 朝食摂取と学力調査の平均正答率との関係

 このほか,中高生の生活習慣については,中学校3年生の6割以上が夜11時以降に寝ているなど,朝食摂取も含め,まだ大きな改善が必要な状況となっています(図表2‐3‐6)。

 図表2‐3‐6 夜11時以降に寝る中学3年生の割合

2.「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進

 子供の生活習慣づくりについて,社会全体の問題として子供たちの生活リズムの向上を図っていくため,平成18年4月に「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が発足し,同協議会と文部科学省の連携により「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進してきました。その結果,PTAをはじめ,経済界,メディア,有識者,市民活動団体,教育・スポーツ・文化関係団体,読書・食育推進団体,行政などの参加を得て,全国において,子供の基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動が展開されています。同協議会では,ウェブサイトによる情報提供も行っています(※17)。29年度は,幼児期から「早寝早起き朝ごはん」をはじめとした規則正しい生活習慣について楽しみながら理解し,実践してもらうことを目的に,絵本「にこにこげんきのおまじない」を作成し,全国の図書館,教育委員会,幼稚園,保育所等に配布しました。
 また,平成29年度から,国立青少年教育振興機構と連携協力し,「早寝早起き朝ごはん」国民運動を促進するための「早寝早起き朝ごはん」フォーラム事業を実施するとともに,中学生の基本的な生活習慣の維持・定着・向上を図るための「早寝早起き朝ごはん」推進校事業を実施しました。
 さらに,平成28年度に引き続き,全国の小学1年生とその保護者を対象とした「早寝早起き朝ごはん」リーフレットを作成し配布しました。
 中高生の段階では,生活圏の拡大や行動の多様化等により生活習慣が乱れやすい時期であり,子供たちが自ら主体的に生活をコントロールする力を身に付けることは,将来の自立のために極めて重要です。
 このため,文部科学省は,家庭と学校,地域の連携による中高生を中心とした子供の生活習慣改善のための実証研究として,平成27年度から29年度にかけて「中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業」を実施しました。同事業においては,文部科学省が作成した中高生などを対象とする普及啓発資料や指導者用資料を活用しつつ,睡眠チェックシートを用いた地域における先進的な取組を支援し,その効果を検証・分析した上で,全国に周知することで,効果的かつ実践的な生活習慣改善の取組を推進しています。


  • ※17 参照:http://www.hayanehayaoki.jp/

2 青少年の健全育成の推進

(1)青少年の体験活動の推進

1.学校・家庭・地域における体験活動の推進

 青少年の体験活動は人づくりの「原点」であり,学校・家庭・地域が連携して社会総ぐるみでその機会を意図的・計画的に創出していくことが必要です。
 本答申などを踏まえ,文部科学省は,家庭や企業などに対して体験活動の重要性等について普及啓発を行うとともに学校・家庭・地域における体験活動を推進しています。具体的には,シンポジウムの開催や青少年の体験活動の評価・顕彰制度に関する調査研究,企業が社会貢献活動の一環として行う青少年の体験活動の表彰と事例集を作成し,実践事例の紹介を行っています。また,青少年の自然体験活動等に関連する地域の機関・団体・関係者等が連携した持続可能な体験活動推進の仕組みづくりとして「子供と自然をつなぐ地域プラットフォーム」を形成する取組を支援しています。
 さらに,児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むため,「健全育成のための体験活動推進事業」を実施し,学校による宿泊体験活動の取組を支援するとともに,内閣官房,総務省,農林水産省,環境省と連携して子供の農山漁村宿泊体験などを推進しています。

2.青少年の国際交流の推進

 文部科学省は,青少年の国際的視野の醸成などを図るため,諸外国への派遣及び受入を行う「青少年国際交流推進事業」や,海外の青少年との共同生活を体験する「地域における青少年の国際交流推進事業」等を実施しています。「青少年国際交流推進事業」では,日独及び日韓の青少年が,インクルーシブ教育や子供の居場所づくり等,様々なテーマにおいて交流を行い,相互理解の促進を図っています。「地域における青少年の国際交流推進事業」では,異なる文化的背景を持つ青少年と共同生活を行いながら,地域文化の体験やグループワーク等を通じて,青少年の国際交流を推進しています。
 また,国立青少年教育振興機構においても,日中韓の小学4年生から6年生を対象とした「日中韓子ども童話交流事業」など,様々な青少年の国際交流事業が実施されています(※18)。


  • ※18 参照:第2部第10章第1節2(2)

(2)国立青少年教育振興機構を中心とした体験活動の推進

1.青少年教育施設における体験活動の推進

 国立青少年教育振興機構は,青少年教育のナショナルセンターとして,全国28の国立青少年教育施設において,不登校,発達障害,非行,子供の貧困など青少年の現代的課題に対応した教育的プログラムを企画・実施するとともに,基礎的・専門的な調査研究,学校や青少年団体等の活動に対する指導・助言などを行っています。また,青少年団体などと連携して,社会全体で体験活動を推進する気運を高めるため,毎年10月を「体験の風をおこそう推進月間」として集中的に事業を実施するなど,体験活動の重要性を広く家庭や社会に伝える活動を進めています。

 カヤックを漕ぐ子どもたち 国立三瓶青少年交流の家
 カヤックを漕ぐ子どもたち 国立三瓶青少年交流の家

2.「子どもゆめ基金」事業

 国立青少年教育振興機構は,未来を担う夢を持った子供の健全育成を進めるため,「子どもゆめ基金」事業を通じて民間団体による様々な体験活動や読書活動などを助成し,草の根レベルの体験活動等を支援しています。平成29年度は,6,942件の応募に対して4,905件の活動を採択しました。

(3)青少年を有害情報から守るための取組の推進(※19)

 近年,スマートフォン等をはじめとした様々なインターネット接続機器の普及に伴い,長時間利用による生活リズムの乱れやSNS等を利用した犯罪等が深刻な問題となっています。
 文部科学省は,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」などに基づいて,地域・民間団体・関係府省庁等と連携しつつ,保護者及び青少年に対する啓発や教育活動を推進しています。


  • ※19 参照:第2部第11章第1節7

(4)依存症予防教育の推進

 近年,喫煙,飲酒,薬物,インターネット,ギャンブル等に関する依存症が社会的な問題となっており,将来的な依存症患者数の逓てい減や青少年の健全育成を図る観点から,国,学校,地域が一体となって予防教育を行っていくことが必要となっています。
 文部科学省は平成28年度から「依存症予防教育推進事業」を実施しており,厚生労働省との共催による全国的なシンポジウムを開催するとともに,社会教育施設等を活用した児童生徒,学生,保護者,地域住民向けの「依存症予防教室」等の取組を支援しています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成30年12月 --