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第4章 初等中等教育の充実

総論

 教育は,子供たち一人一人の人格の完成を目指すものであり,子供たちが将来にわたって幸福な生活を営んでいく上で不可欠です。また,将来この国や社会を担っていく人材を育てていくという使命もあり,このような教育の重要性はどのような時代にあっても変わることはありません。特に,昨今では,グローバル化や知識基盤社会の到来,少子高齢化の進展など,社会が急速な変化を遂げており,教育の重要性はますます高まっています。
 このような時代の中で子供たちへの教育を一層充実していくよう,文部科学省では,教育機会の確保や教育水準の維持向上のため,学習指導要領が目指す教育の実現,科学技術系人材を育成するための理数教育の推進,グローバル人材の育成に向けた教育の充実,キャリア教育・職業教育の推進,高等学校教育改革の推進,教科書の充実,いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応,道徳教育の充実,人権教育の推進,子供の健康と安全の確保,きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員の資質能力向上や指導体制の整備,生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興,障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育の推進,地方教育行政の在り方と地域と共にある学校づくり及び幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実など,様々な施策を実施しています。

第1節 学習指導要領が目指す教育の実現

 学習指導要領は,子供たちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするために,学校が編成する教育課程の大綱的基準として,国が「学校教育法」等に基づいて定めるものです。これまで,おおむね10年ごとに改訂してきています。

1 現行学習指導要領について

(1)基本的な理念

 平成23年度から小学校より順次実施されている現行の学習指導要領では,「確かな学力」,「豊かな心」,「健やかな体」のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指しています。
 特に学力については,「ゆとり」か「詰め込み」かの二項対立を乗り越え,いわゆる学力の3要素,すなわち「学校教育法」第30条第2項に示された「基礎的な知識及び技能」,「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力」及び「主体的に学習に取り組む態度」から構成される「確かな学力」の育成が重視されています。教育目標や内容が見直されるとともに,習得・活用・探究という学びの過程の中で,記録,要約,説明,論述,話合いといった言語活動や,他者,社会,自然・環境と直接的に関わる体験活動等が重視されています。

(2)着実な実施とフォローアップ

 1.円滑かつ着実な実施に向けた支援策

 学習指導要領を円滑かつ着実に実施するためには,これまでに学校現場での実践を通じて明らかになってきた教育課程編成・実施上の課題の解消や優れた実践の共有等を図るとともに,教育条件の整備が必要です。
 文部科学省では,各都道府県教育委員会の指導主事などを対象とした研究協議会等の開催や学習指導に関する関係資料の作成等を行っています。また,理数教育や外国語教育など各教科等の充実に向けた支援や,教育の情報化など各教科等横断で取り組むべき重要事項の推進も図っています。
 指導環境の整備については,1.理科の実験用機器などの購入経費の補助,2.中学校武道場の整備促進,3.喫緊の課題に対応するための教職員定数の改善,4.多彩な人材が学校教育活動に参画する取組への支援などを行っています。
 教材については,平成23年4月に定めた「教材整備指針」に基づく例示教材等の整備を推進するため,「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」を策定しています。同計画においては,単年度約800億円,24年度から33年度までの10年間で約8,000億円の地方財政措置が講じられることとされています。

2.教育課程の改善等に向けた取組

 文部科学省では,今後の教育課程の基準の改善に資する実証的資料を得るため,昭和51年から研究開発学校制度を設けています。この制度は,学校における教育実践の中から提起されてくる教育上の課題や急激な社会の変化・発展に伴って生じた学校教育に対する多様な要請に対応するため,研究開発を行おうとする学校を「研究開発学校」として指定します。学習指導要領等の現行の教育課程の基準によらない特別の教育課程の編成・実施を認め,その実践研究を通して新しい教育課程・指導方法等を開発していこうとするものです。
 これまでの研究開発の成果は,学習指導要領の改訂に関する中央教育審議会における審議等の中で,具体的な実証的資料として生かされてきています。例えば,次期学習指導要領改訂に向け,育成を目指す資質・能力,小学校における外国語教育,高等学校における「歴史総合」,「公共」の新設等を検討するに当たって,研究成果が活用されています。
 また,学校が,地域の実態に照らしたより効果的な教育を実施できるよう,学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程の編成・実施を認める「教育課程特例校」制度を設けています。具体的には,東京都品川区の「市民科」,世田谷区の「日本語科」など,学校の創意工夫を生かした教育課程が編成・実施されています。

2 我が国の子供たちの学力・学習状況

 子供たちの学力・学習状況を調査するため,我が国では「全国学力・学習状況調査」を実施するとともに,「OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)」,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)」に参加しています。これらの調査結果を踏まえ,世界トップレベルの学力・規範意識を育むための取組を一層推進することが重要です。文部科学省では,1.言語活動や理数教育の充実などを図った学習指導要領の着実な実施とフォローアップ,2.教職員定数の改善や,教職員の資質向上によるきめ細かな指導体制の整備,3.「全国学力・学習状況調査」の継続的な実施による教育の検証改善サイクルの確立などに取り組んでいます。

(1)全国学力・学習状況調査の実施

 文部科学省では,平成19年度から,全国の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒の学力状況などを把握する「全国学力・学習状況調査」を毎年4月に実施しています。この調査は,1.義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図ること,2.学校における個々の児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てること,3.以上のような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することを目的として実施しています。教科は国語と算数・数学で,それぞれ主として「知識」に関する問題(A問題)と主として知識・技能の「活用」に関する問題(B問題)を出題しています(24年度及び27年度調査では理科も実施)。また,学力を問う教科の調査だけでなく,児童生徒の生活習慣や学習環境,学校の指導方法等の調査も行い,学力との関連を分析しています。
 調査結果を活用することで,各教育委員会や学校は自らの教育の成果と課題を検証し,教育施策や教育指導の改善・充実に生かすことができ,教育に関する継続的な検証改善サイクルの構築が着実に進むことが期待できます。文部科学省としては,各教育委員会や学校に積極的な調査結果の活用を促しています。文部科学省及び国立教育政策研究所では,調査結果を踏まえた教育指導の充実や学習状況の改善に向けた取組への支援として,1.設問ごとに分析結果や指導改善のポイントを示した「報告書」の作成,2.課題が見られた事項について,授業の改善・充実を図る際の参考となるよう授業のアイディアの一例を示した「授業アイディア例」の作成,3.調査結果を活用した指導改善に向けた説明会の開催,4.都道府県教育委員会等の要請に応じて助言を行うための学力調査官等の派遣,5.教育委員会・学校における調査結果を活用した優れた学校改善の取組事例の収集・普及,6.専門家等による追加的な分析・検証などを行っています。また,調査実施から調査結果を提供するまでの間も,各教育委員会や学校において教育施策や教育指導の改善・充実に資するよう,問題ごとに出題の趣旨や学習指導の改善・充実を図る際のポイントなどを示した「解説資料」を配布しています。

(2)「平成28年度全国学力・学習状況調査」結果の概要

 平成28年度は,国語,算数・数学の2教科での悉(しつ)皆調査を4月19日に実施しました。平成28年度の調査結果の特徴としては,中学校数学の一部の問題(空間における直線と直線の位置関係を理解すること,多角形の外角の和の性質を理解すること)について,改善の傾向が見られました。一方で,各教科を通じ,特にB問題における適切な根拠に基づいて説明することなどに課題が見られました。課題が見られたものとして,例えば,「式の意味や式の中の数値の意味を解釈し,説明すること」(小学校算数),「自分の考えを書く際に,根拠を示すことは意識されているが,根拠として取り上げる内容が適切かどうかを吟味したり,どの部分が根拠であるかが明確になるような表現上の工夫をしたりすること」(中学校国語)などが挙げられます。
 また,教科に関する調査結果について,都道府県別(公立学校のみ)に,平成19年度,21年度及び25年度から28年度の調査との推移を見ると,各年度で平均正答数が低い3都道府県について,一定の年度間の推移を分析できるよう平均正答数を標準化して比較すると,全国平均との差が縮小する傾向にあり,学力の底上げが図られています(図表2‐4‐1)。

 図表2‐4‐1 全国学力・学習状況調査における標準化得点(※1)の推移

 質問紙調査では,児童生徒に対する調査と学校に対する調査を実施しています。平成28年度の調査においては,次期学習指導要領改訂を見据え,「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善」や「カリキュラム・マネジメント」の取組状況などについて,新たに質問項目を設け調査を行いました。継続的に調査している項目については,経年での推移を示すとともに,教科に関する調査とのクロス分析を行っています。今年度の新たな分析としては,学校質問紙調査項目,教科に関する調査及び就学援助率の三重クロス分析などの分析を行っています。
 その結果,主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に向けた取組状況については,児童生徒・学校共に,肯定的な回答を選択した方が,教科の平均正答率が高い傾向にあることが分かりました。就学援助を受けている児童生徒の割合を統制変数とした三重クロス分析の結果では,就学援助率にかかわらず,学習規律に関わる項目に肯定的な回答をしている学校の方が,平均正答率が高い傾向にあることが明らかとなりました。さらに,今回の調査が,「全国学力・学習状況調査」が開始された平成19年度から10年目に当たることを踏まえ,19年度との回答状況の変化について検証するため,19年度と同一の質問項目について調査を実施しました。その結果,「午後10時より前に寝ている」や「家で,学校の授業の復習をしている」といった質問項目について肯定的に回答している児童生徒の割合が増加しているなど,規則的な生活習慣,学習習慣,規範意識が身に付いている児童生徒の割合が増加傾向にあることが分かりました。


  • ※1 標準化得点:各年度の調査は問題が異なることから,平均正答率による単純な比較ができないため,年度間の相対的な比較をすることが可能となるよう,各年度の調査の全国(公立)の平均正答数がそれぞれ100となるように標準化した得点

(3)OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)

 OECDでは,義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生)が,自らの知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するため,「生徒の学習到達度調査(PISA)」を実施しています。調査は,2000(平成12)年から3年ごとに読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野について行われています。
 2015(平成27)年調査からは,従来の筆記型調査からコンピュータ使用型調査へ移行しました。2015(平成27)年調査の結果からは,日本は,科学的リテラシー,読解力,数学的リテラシーの各分野において,国際的に見ると前回調査に引き続き,平均得点が高い上位グループに位置していることが分かりました。一方,読解力は前回調査と比較すると,平均得点が有意に低下しています(図表2‐4‐2)。また,生徒の科学に対する態度については,OECD平均と比較すると指標の値が依然として小さいものの,例えば,自分の将来に理科の学習が役立つと感じている生徒の割合が,2006(平成18)年調査と比較すると増加するなどの改善が見られました。読解力においては,コンピュータ使用型調査に対する生徒の戸惑いが見られましたが,解答状況の分析などからは,子供たちを取り巻く情報環境が大きく変化する中で,次期学習指導要領に向けた検討においても指摘された諸課題が,具体的に見られたものと考えられます。文部科学省では,こうした結果を踏まえながら,学習指導要領の改訂により国語教育の改善・充実を図り,学習基盤となる言語能力や情報活用能力を育成するとともに,読解力の向上に関する調査研究の充実や学校ICT環境整備の加速化を推進することとしています(※2)。

 図表2‐4‐2 PISA平均得点及び順位の推移


  • ※2 参照:第2部 第1章 第3節 3

(4)国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)

 国際教育到達度評価学会(IEA)では,小学校4年生,中学校2年生を対象とし,初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学と理科の教育到達度を測定し,学校のカリキュラムで学んだ基本的な知識や技能がどの程度習得されているかを評価するため,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」を4年ごとに実施しています。
 2015(平成27)年調査の結果からは,日本は,教育到達度の平均得点については,小・中学校の算数・数学,理科の全てにおいて,国際的に見て引き続き上位に位置しており,前回調査と比較して,平均得点が有意に上昇したことが明らかになりました(図表2‐4‐3)。さらに,成績下位の児童生徒が減少し,成績上位の児童生徒が増加している傾向も見られました。算数・数学,理科に対する意識については,小学生の「理科は楽しい」を除いて国際平均を下回っている項目が多いものの,「算数・数学,理科は楽しい」と思う児童生徒の割合が増加しており,中学校においては国際平均との差が縮まっている傾向が見られました(※3)。

 図表2‐4‐3 TIMSS平均得点及び順位の推移


  • ※3 参照:第2部 第1章 第3節 3

3 次期学習指導要領について

(1)改訂のスケジュール

 次期学習指導要領改訂に向けては,平成26年11月に文部科学大臣から「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問が行われたことを受け,中央教育審議会において議論を重ね,28年12月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を取りまとめました。本答申の内容を踏まえ,国民の皆様からの意見募集を経て,29年3月末には文部科学大臣から幼稚園,小学校,中学校の新しい学習指導要領等が公示されました。また,特別支援学校幼稚部教育要領,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領は同年4月に公示されました。高等学校学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領は29年度中に改訂する予定です。
 今後は,周知・徹底,教科書の作成・検定・採択・供給等を経て,平成32年度から小学校より順次,新学習指導要領を実施することとしています。

(2)改訂の基本的な考え方

 次期学習指導要領では,「教育基本法」,「学校教育法」などを踏まえ,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活(い)かし,子供たちが未来社会を切り拓(ひら)くための資質・能力を一層確実に育成することを目指します。その際,子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に開かれた教育課程」を重視しています。
 また,知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を更に高め,確かな学力を育成することとしています。
 加えて,先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな心や健やかな体を育成することとしています。

(3)知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」

1.「何ができるようになるか」を明確化

 知・徳・体にわたる「生きる力」を子供たちに育むため,「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していけるよう,全ての教科等を,1.知識及び技能,2.思考力,判断力,表現力等,3.学びに向かう力,人間性等の三つの柱で再整理しています。
 例えば,中学校理科の生命領域においては,前述の三つの柱に沿って,1.生物の体のつくりと働き,生命の連続性などについて理解させるとともに,2.観察,実験など科学的に探究する活動を通して,生物の多様性に気付くとともに規則性を見いだしたり表現したりする力を養い,3.科学的に探究しようとする態度や生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養うことを目標としています。

2.我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善

 我が国のこれまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化により,子供たちの知識の理解の質の向上を図り,これからの時代に求められる資質・能力を育んでいくことが重要です。
 小・中学校においては,これまでと全く異なる指導方法を導入するということではなく,地域や学校によっては年齢構成の不均衡により,30代,40代の教員の数が少なくなっている中,これまでの教育実践の蓄積を若手教員にもしっかり引き継ぎつつ,授業を工夫・改善する必要があります。
 学校における喫緊の課題に対応するため,平成29年3月に「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」が改正されました。これにより,16年ぶりの計画的な教職員定数の改善が図られます。教員が授業準備などを行う時間や子供と向き合う時間を確保するための条件整備や運動部活動ガイドラインの策定などによる業務負担の軽減などを一層推進することとしています。
 また,既に行われている優れた教育実践の教材,指導案などを集約・共有化し,各種研修や授業研究,授業準備での活用のために提供するなどの支援の充実も図ることとしています。

(4)各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立

 教科等の目標や内容を見渡し,特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等)や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには,教科等横断的な学習を充実する必要があります。また,「主体的・対話的で深い学び」の充実には単元など数コマ程度の授業のまとまりの中で,習得・活用・探究のバランスを工夫することが重要です。
 そのため,学校全体として,教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的体制の確保,実施状況に基づく改善などを通して,教育課程に基づく教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを確立することを目指します。

 図表2‐4‐4 学習指導要領改訂の方向性

(5)教育内容の主な事項

1.言語能力の確実な育成

 言葉は,学校という場において子供が行う学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものです。したがって,言語能力の向上は,学校における学びの質や,教育課程全体における資質・能力の育成の在り方に関わる課題であり,文章で表された情報の的確な理解に課題があると指摘される中,ますます重視していく必要があります。現行学習指導要領では,児童生徒一人一人の思考力・判断力・表現力等を育むために,国語科をはじめ各教科などで記録,説明,要約,論述,話合いなどの言語活動の充実を図っています。次期学習指導要領においても,国語科をはじめ各教科等において,発達段階に応じた語彙の確実な習得や,情報を正確に理解し適切に表現する力の育成など,言語能力の確実な育成を進めることとしています。

2.理数教育の充実

 次代を担う科学技術系人材の育成や国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上を図るため,理数好きな子供の裾野の拡大や子供の才能を見いだし伸ばしていくことが重要です。現行学習指導要領では,算数・数学,理科の授業時数や内容が充実され,観察・実験などの充実を図っています。次期学習指導要領においては,育成を目指す資質・能力を明確化し,日常生活等から問題を見いだす活動や見通しを持った観察・実験などの充実により更に学習の質を向上させることとしています。

3.伝統や文化に関する教育の充実

 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国や郷土の伝統や文化を受け止め,その良さを継承・発展させるための教育を充実することが必要です。このため,現行学習指導要領では,各教科等で我が国の伝統や文化についての理解を深める学習の充実を図っています。次期学習指導要領においては,我が国の言語文化,県内の主な文化財や年中行事の理解,我が国や郷土の音楽,和楽器,武道,和食や和服などの指導を充実することとしています。

4.道徳教育の充実

 学校教育では,調和の取れた人間の育成を目指して,子供たちの発達段階に応じた道徳教育を展開することとしています。
 文部科学省では,平成27年3月に学習指導要領の一部改正等を行い,道徳の時間を「特別の教科道徳」(「道徳科」)として新たに位置付けました。道徳科は,小学校では30年度から,中学校では31年度からそれぞれ全面実施されます。これを見据え,各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため,研修の充実や「道徳教育アーカイブ」の開設など,各学校や地方公共団体等の多様な取組を支援しています。

5.体験活動の充実

 生命や自然を大切にする心や他を思いやる優しさ,社会性,規範意識などを育てるため,学校において,自然体験活動や集団宿泊体験,奉仕体験活動といった様々な体験活動を行うことは極めて有意義です。現行学習指導要領では,自然や文化などに親しむとともに,人間関係などの集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験等を行うために,特別活動の時間等において,体験活動の充実を図っています。次期学習指導要領においても,生命の有限性や自然の大切さなどを実感するための体験活動の充実や自然の中での集団体験活動,職場体験を重視するといった体験活動の充実を進めることとしています。

6.外国語教育の充実

 グローバル化が急速に進展する中で,外国語によるコミュニケーション能力は,これまでのように一部の業種や職種だけではなく,生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され,その能力の向上が課題となっています。現行学習指導要領では,外国語を通して,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や,情報や考えなどを理解したり伝えたりする力の育成を目標として掲げ,小学校高学年における外国語活動の導入や,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」,「書くこと」の英語力を総合的に育成することを狙いとした改訂が行われ,学校現場においては,指導改善による成果が認められています。しかし,学年が上がるにつれて学習意欲に課題が生じるといった状況や,学校種間の接続が十分とは言えず,児童生徒が進級や進学をした後に,それまでの学習内容を発展的に生かすことができないといった状況も指摘されていました。また,中・高等学校における生徒の英語力では,習得した知識や経験を生かし,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて適切に表現することなどに課題があるとされています。
 これらの成果や課題を踏まえ,次期学習指導要領においては,外国語教育の更なる改善・充実のため,国際的な基準であるCEFR(※4)などを参考にして,小・中・高等学校で一貫した,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと(やりとり)」,「話すこと(発表)」,「書くこと」の五つの領域により示す,領域別の目標を設定することとしました。
 各学校段階においては,小学校では,中学年から「聞くこと」,「話すこと」を中心とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ,外国語学習への動機付けを高めた上で(年間35単位時間程度),高学年から発達段階に応じて段階的に「読むこと」,「書くこと」を加え,総合的・系統的に教科として学習を行うこと(年間70単位時間程度)としています。これを踏まえ,中学校では,互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う対話的な言語活動を重視し,授業を外国語で行うことを基本とし,具体的な課題等を設定するなどして,学習した語彙,表現などを実際に活用する言語活動を改善・充実することなどを中心として改訂を行いました。また,高等学校では,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」,「書くこと」を総合的に扱う科目群として「英語コミュニケーション1・2・3」を設定し,「英語コミュニケーションI」を共通必履修科目とするとともに,外国語による発信能力を高める科目群として「論理・表現I・2・3」を設定する等の改訂を行う予定です。

7.国旗・国歌の指導

 学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために,学習指導要領等に基づいて行っているものです。
 平成11年8月には「国旗及び国歌に関する法律」が施行され,国旗・国歌の根拠について慣習として定着していたものが成文法としてより明確に位置付けられ,学校教育における国旗・国歌に対する正しい理解が更に進められました。
 現行の幼稚園教育要領においては,「国旗に親しむ」ことが定められています。また,現行の学習指導要領では,小・中学校の社会科において我が国及び諸外国の国旗と国歌の意義を理解させ,これらを尊重する態度を育てるよう指導することとしているとともに,小学校の音楽科において,国歌を「歌えるよう指導すること」としています。加えて,小・中・高等学校の特別活動において「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定しています。
 次期学習指導要領においても小・中学校においては引き続きこの位置付けを維持するとともに,幼稚園教育要領において国歌などに親しんだりすることを新たに定められました。なお,幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び保育所保育指針においても幼稚園教育要領と同様の内容が定められました。
 文部科学省では,引き続き,全ての学校において学習指導要領に基づいた国旗・国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導することとしています。


  • ※4 CEFR(Common European Framework of Reference for languages):シラバスやカリキュラム手引の作成,学習指導教材の編集のために,透明性が高くて分かりやすく参照できるものとして,2001(平成13)年に欧州評議会(Council of Europe)が発表したもの

第2節 科学技術系人材を育成するための理数教育の推進

(1)理数好きな子供の裾野の拡大

 文部科学省では,理数教育を着実に実施するため,教員によって負担の大きい実験の準備・調整等の業務を軽減するための理科観察実験アシスタントの配置支援や,「理科教育振興法」に基づいた,公・私立の小・中・高等学校等における観察・実験に係る実験用機器をはじめとした理科,算数・数学教育に使用する設備の計画的な整備を進めています。
 科学技術振興機構では,学校・教育委員会と大学等が連携・協働し,中高生自ら課題を発見し,科学的な手法に従って継続的・自立的な実践活動を進める「中高生の科学研究実践活動推進プログラム」等の取組を実施しています。また科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者,女子学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室,出前授業の実施等,女子中高生の理系進路選択の支援を行う「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施しています。

(2)子供の才能を見いだし伸ばす取組の充実

 文部科学省では,平成14年度から,先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」として指定し,科学技術振興機構を通じて支援しています。生徒の科学的能力や科学的思考力等を培い,将来の国際的な科学技術人材の育成を図っています。29年度においては,全国203校の高等学校等が特色ある取組を進めることとしています。
 科学技術振興機構では,意欲や能力のある小中学生を対象として,課題研究・体系的教育プログラムを実践する大学等を支援する「次世代科学者育成プログラム」を実施しています。また,意欲や能力のある高校生を対象とし,国際的な科学技術人材の育成する取組を行う大学を「グローバルサイエンスキャンパス」として指定し,支援しています。
 さらに,全国の高校生等が学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として,「第6回科学の甲子園」が茨城県において開催され,岐阜県代表チームが優勝しました。中学生を対象に東京都江東区で開催された「第4回科学の甲子園ジュニア」では群馬県代表チームが優勝しました。
 このほか,科学技術振興機構では,数学・化学・生物学・物理・情報・地学・地理等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や,国際大会への日本代表選手の派遣,国際大会の日本開催に対する支援を行っています。国内大会の参加者数は,年々増加し,平成28年度は1万9,209人となっています。同年度の国際科学オリンピックの日本代表選手は,金メダル11個,銀メダル16個,銅メダル3個の合計30個のメダルを獲得しました。

第3節 グローバル人材の育成に向けた教育の充実

 初等中等教育段階から国際的な視野を持つグローバル人材を育成するため,文部科学省では,小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化,高校生の海外留学の促進,スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また,海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。

1 グローバル社会の中で特に求められる力

 グローバル化が進行する社会においては,多様な人と関わり様々な経験を積み重ねるなど「社会を生き抜く力」を身に付ける過程の中で,未来への飛躍を担うための創造性やチャレンジ精神,強い意志を持って迅速に決断し組織を統率するリーダーシップ,国境を越えて人々と協働するための英語等の語学力・コミュニケーション能力,異文化に対する理解,日本人としてのアイデンティティーなどを培っていくことが,一層重要になってきます。
 これらを踏まえ,文部科学省では以下に述べるように小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化,高校生の海外留学の促進,スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また,海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。
 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国の歴史や伝統文化,国語に関する教育を推進していくことも重要です。このため,現行の学習指導要領において,小・中学校の国語科や社会科の授業時数の増加や古典や歴史学習の充実を図るとともに,音楽科における民謡・長唄や保健体育科における武道の必修化など,我が国の伝統文化に関する教育についても充実を図っています。また,平成27年度から,地域の伝統や文化に関する教材の作成や指導方法の開発等を行う地方公共団体等の取組を支援しています。

2 英語をはじめとした外国語教育の強化

(1)学習指導要領における外国語教育

 文部科学省では,外国語教育の更なる改善・充実を図るため,これまで次期学習指導要領等について議論を重ねてきました。平成28年12月21日には,中央教育審議会より次期学習指導要領の方向性として,小学校外国語教育の早期化・教科化,中・高等学校における更なる改善・充実等が提言され,29年3月には小・中学校学習指導要領が改訂されました。高等学校については29年度中に改訂を行う予定です(※5)。


  • ※5 参照:第2部 第4章 第1節 3 (1) 6

(2)外国語教育の改善・充実

 文部科学省では,外国語教育の更なる改善・充実を図るため,学習指導要領の改訂を行うとともに,教育環境の整備にも努めています。小学校外国語教育の早期化・教科化に対応するための小学校中学年・高学年用の新教材については,平成30年度から始まる次期学習指導要領の先行実施に間に合うよう,28年度から開発しています。29年2月には,新教材の内容について専門的に検討を行う有識者会議において,「年間指導計画例(素案)」等が取りまとめられました(※6)。29年度中には希望する全ての教育委員会・学校に配布するとともに,開発中の新教材の内容についても適宜情報提供を行う予定です。また,教育委員会等における教員研修や校内研修に活用できる研修用資料の開発も行っており,29年6月には全国の地方公共団体に共有することも予定しています。
 あわせて,平成26年度から,小学校外国語教育の早期化・教科化に対応した指導法・学習評価等の先進的な取組の成果を普及させる「英語教育強化地域拠点事業」を行っており,28年度は29拠点の取組を支援しています。なお,29年度からは,英語以外の外国語についての取組も支援を行う予定です。
 また,平成26年度から,小学校教員や中・高等学校の英語担当教員の英語力・指導力向上のため,各地域で研修講師や助言者としての役割を担う「英語教育推進リーダー」を養成する中央研修を行うとともに,「英語教育推進リーダー」が各地で講師となって行う研修等の取組を支援しています。この取組は28年度で3年目を迎え,合計約1,500人の英語教育推進リーダーを養成しています。加えて,28年度からは現職の小学校教員が教科としての外国語科の指導に対応するため,中学校教諭免許状も取得可能となる「小学校英語教科化に向けた専門性向上のための講習の開発・実施事業」を31大学に委託し,実施しています。
 このほか,文部科学省は,総務省及び外務省と共に「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を推進しています。本プログラムは,外国語教育の充実や地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進するとともに,我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。本プログラムに外国語指導助手(ALT)として活躍する参加者は,児童生徒が生きた外国語に触れたり,実際に外国語を使ったりする機会の充実に貢献しています。平成28年度は,本プログラムにより招致した4,536人のALTが,学校などで語学指導国際理解のための活動に従事しています。さらに,28年度からは,市町村におけるJET‐ALTの生活支援,緊急事態対応や学校との連絡調整等の業務を担う「JETプログラムコーディネーター」の活用に対する支援も行っています。


  • ※6 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/123/index.htm

3 高校生の国際交流

(1)高校生留学の促進等

 文部科学省では,グローバル化が加速する中で,日本人としてのアイデンティティーや日本の文化に対する深い理解を前提として,豊かな語学力・コミュニケーション能力,主体性・積極性,異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材を育成するため,「第2期教育振興基本計画」等を踏まえ,海外に留学する高校生に対して留学費用の一部を支援する事業(支援対象者数1,300人)を実施しています。
 また,都道府県が海外勤務や海外留学等の経験者を「グローバル語り部」として高等学校等へ派遣して,国際理解教育や国際的な職業,海外留学への関心を高めるための授業等を行えるようにしたり,高校生留学を推進するためのフェア等を各都道府県内で開催したりすることにより,安心・安全な留学への関心を喚起し,留学への機運を醸成するための支援を行っています。
 このほか,著名な科学者による講義や他国からの参加高校生との交流を深めることを目的とする「オーストラリア科学奨学生(ハリー・メッセル国際科学学校)事業」に高校生を派遣するための選考及び支援を行っています。同事業は,オーストラリア・シドニー大学内物理学財団が隔年で約2週間にわたり実施するものです。平成29年度はその開催年に当たっており,9人の高校生を派遣する予定です。

(2)外国人高校生の短期受入れ

 文化や伝統,生活習慣の異なる同世代の若者が交流を深めることは,広い視野を持ち,異文化を理解し,これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく資質・能力を育成する上で重要です。
 文部科学省では,民間の高校生留学・交流を扱っている団体を通じて,海外で日本語を学習している外国人高校生を6週間程度日本に招致し,日本の高等学校への体験入学等を行う「異文化理解ステップアップ事業」を平成8年度から実施しています。28年度は14か国115人の高校生を招致しました。

4 スーパーグローバルハイスクール

 文部科学省では,平成26年度から,社会課題に対する関心と深い教養,コミュニケーション能力,問題解決力等の国際的素養を身に付け,将来,国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成に資する教育課程等の研究開発及び実践を行う高等学校等を「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定し支援しています。28年度に新たに11校計123校を支援しています。

5 国際バカロレアの推進

 国際バカロレア(IB)は,国際バカロレア機構が提供する世界標準の教育プログラムであり,国際的に活躍できる人材を育成する上で優れたプログラムとして評価されています。国際バカロレアの教育理念や手法は,学習指導要領の目指す方向性と軌を一にし,語学力のみならず課題発見・解決能力,論理的思考力,コミュニケーション能力など,グローバル化に対応した素養・能力を育む上で適したものです。
 国際バカロレアには,生徒の発達段階や目的に応じて,次のようなプログラムがあります。

  1. プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)(対象:3歳から12歳)
  2. ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)(対象:11歳から16歳)
  3. ディプロマ・プログラム(DP)(対象:16歳から19歳)
  4. キャリア関連プログラム(CP)(対象:16歳から19歳)

 これらの中でも高校レベルのDPは,2年間のカリキュラムを履修し,最終試験を経て所定の成績を収めることで,国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得できます。この資格は,世界の主要な大学の入学者選抜等で広く活用されています。
 国際バカロレアの導入が進むことによって,日本の生徒の進路・進学先が国内だけでなく海外の大学に拡大することや国際バカロレアの特徴的な手法やカリキュラムが日本の初等中等教育改革に積極的な波及効果を与えること等も期待されます。政府は,「まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成27年改訂版)」(平成27年12月24日閣議決定)において,32年までに日本の国際バカロレア認定校等を200校以上に増加させる目標を掲げて普及拡大に取り組んでいます。29年2月現在で国際バカロレア認定校等はPYP認定校等39校,MYP認定校等22校,DP認定校等43校の延べ107校となっています。
 日本における国際バカロレアの普及拡大に向けては,特に,DPでは母語を除く全ての科目を原則として英語で教える必要があったことから,指導可能な教員(外国人指導者等)の確保が大きな課題でした。このため,文部科学省では,平成25年度から国際バカロレア機構との協力の下で,DPの一部の科目を日本語でも実施可能とする「日本語デュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム」(日本語DP)の開発・導入を進めています。日本語DPの活用によって国際バカロレア認定校で指導することができる優秀な日本人教員の確保が以前と比べて容易になります。さらに,27年8月に「国際バカロレア・ディプロマ・プログラムの導入を促進するための教育課程の特例措置」を新設しました。これにより,日本の学習指導要領と国際バカロレアとのカリキュラムの整合性を保ちながら,生徒が無理なく双方を履修できるようになりました。加えて,同年9月に,DPの導入に当たり必要な経費や設備の要件,認定までのプロセス等を日本語によりまとめた「国際バカロレア認定のための手引き」を作成しました。これらの取組によって日本の高等学校等に国際バカロレアの導入が進むことが期待されます。
 加えて,日本国内における国際バカロレアの普及に当たっては,国内の大学入学者選抜において国際バカロレア資格やその成績の活用を促進することも重要です。このため,大学に対して積極的な情報提供や様々な情報交換を進めており,国際バカロレアを活用した大学入試が大きく広がりつつあります。平成28年10月現在で国際バカロレアを活用した大学入学者選抜を導入している国公私立大学は37大学となっています。
 また,文部科学省では,「文部科学省・国際バカロレア普及拡大広報ページ」(※7)において,国際バカロレアに係る最新情報を広く周知するなど,積極的な広報活動にも取り組んでいます。


  • ※7 参照:http://www.facebook.com/mextib

6 海外子女教育の充実

 我が国の国際化の進展に伴って多くの日本人が子供を海外に同伴しており,平成28年4月現在,海外に在留している義務教育段階の子供の数は7万9,251人となっています(図表2‐4‐5)。

 図表2‐4‐5 海外にいる在留している義務教育段階の子供の数

 文部科学省では,海外子女教育の重要性を考慮し,日本人学校や補習授業校の教育の充実・向上を図るため,日本国内の義務教育諸学校の教員を派遣するとともに,退職教員をシニア派遣教員として派遣するなど,高い資質・能力を有する派遣教員の一層の確保に努めています。平成28年度は教員1,098人,シニア派遣教員87人を派遣しました。
 また,教育環境の整備として,義務教育教科書の無償給与,教材の整備,通信教育などを行っています。
 さらに,平成28年5月19日に「在外教育施設グローバル人材育成強化戦略」を策定し,在外教育施設における課題対応やグローバル人材の育成に取り組むなど,教育環境の更なる充実に取り組んでいます。
 このほか,外国における災害,テロ,感染症などに対応するため,在外教育施設派遣教員のための安全対策資料の作成などを行うほか,有事の際には,関係省庁や現地の在外教育施設などと緊密な連携を図り,教職員や児童生徒の安全確保に努めるとともに,臨時休校等のため一時帰国した児童生徒の就学機会が確保されるよう,都道府県教育委員会等に周知を図っています。
 なお,海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する情報は,総合ウェブサイト(通称「CLARINET:クラリネット」)(※8)に掲載しています。


  • ※8 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

7 帰国児童生徒,外国人の子供等に対する教育の充実

(1)公立学校に在籍する帰国・外国人児童生徒等の現状

 平成27年4月1日から28年3月31日までの1年間で,海外に1年以上在留した後に帰国した児童生徒は,公立の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校及び中等教育学校を合計して,9,569人です。また,公立学校に在籍する外国人児童生徒は28年5月1日現在8万119人です。26年5月現在,日本語指導が必要な外国人児童生徒は2万9,198人であり,24年度と比べて2,185人増加しています。さらに,日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒(帰国児童生徒のほか,本人が重国籍又は保護者の一人が外国籍である等の理由から,日本語以外の言語を家庭内言語として使用しており,日本語能力が十分でない児童生徒が含まれる。)は7,897人であり,24年度と比べて1,726人増加しています。

(2)帰国児童生徒,外国人の子供等への支援施策

 文部科学省では,このような児童生徒について,国内の学校生活への円滑な適応を図るだけでなく,児童生徒の特性の伸長・活用など,海外における学習・生活体験を尊重した教育を推進するため,以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 公立義務教育諸学校の教員定数について,平成29年3月の「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の改正により,これまで毎年度の予算の範囲内で措置してきた加配定数を基礎定数化し,29年度以降,日本語能力に応じた特別の指導を行う児童生徒の数に応じて教員の定数を算定することとした。
  2. 受入れから卒業後の進路まで一貫した指導・支援体制を構築するため,各地方公共団体が行う帰国・外国人児童生徒等の受入れ促進,日本語指導の充実,支援体制の整備に関する取組を支援する補助事業を実施
  3. 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施を促進(「学校教育法施行規則」を一部改正,平成26年4月1日施行)
  4. 学校において児童生徒の日本語能力を把握し,その後の指導方針を検討する際の参考となる「外国人児童生徒のためのJSL(※9)対話型アセスメント~DLA(※10)~」及び教育委員会等が帰国・外国人児童生徒等教育に関する研修会を計画する際の参考となる「外国人児童生徒教育研修マニュアル」を普及
  5. 教職員支援機構により,外国人児童生徒等教育に携わる教員や学校管理職及び指導主事等を対象として,日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を実施
  6. 平成27年度から,就学に課題を抱える外国人の子供を対象に,公立学校や外国人学校等への就学に必要な支援を学校外において実施する地方公共団体の取組を支援する補助事業を実施
  7. 「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」において今後取り組むべき施策の方向性について議論を行い,平成28年6月に「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援の充実方策について(報告)」を公表

  • ※9 JSL:Japaneseasa Second Language:第2言語としての日本語
  • ※10 DLA:Dialogic Language Assessment:対話型アセスメント

第4節 キャリア教育・職業教育の推進

1 キャリア教育の推進

(1)初等中等教育におけるキャリア教育の推進

 今日,日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しており,特に,産業や経済の分野においてその変容の度合いが著しく大きく,雇用形態の多様化・流動化に直結しています。このような中で現在の若者と呼ばれる世代は,例えば,若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ,無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないという点において大きな困難に直面していると言われています。
 こうした状況に鑑み,子供たちが,「働くことの喜び」や「世の中の実態や厳しさ」などを知った上で,将来の生き方や進路に夢や希望を持ち,その実現を目指して,学校での生活や学びに意欲的に取り組めるようになることが必要です。そのためには,「学校から社会・職業への移行」を円滑にし,社会的・職業的自立に必要な能力や態度を身に付けることができるようにするキャリア教育を推進していくことが重要です。このようなキャリア教育を推進するため,文部科学省では,キャリア教育の実践の普及・促進に向けて様々な施策を展開しています。

平成28年度実施施策
  1. チャレンジ精神や他者と協働しながら新しい価値を創造する力など,これからの時代に求められる資質・能力の育成を目指した「小・中学校等における起業体験推進事業」の実施
  2. 都道府県等にキャリアプランニングスーパーバイザーを配置し,地域を担う人材育成・就労支援を促進するための「地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業」の実施
  3. 学校側が望む支援と地域・社会や産業界等が提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」を運営
  4. 厚生労働省,経済産業省と連携して「キャリア教育推進連携シンポジウム」を合同開催(平成29年1月17日)
  5. キャリア教育の充実・発展に尽力し,顕著な功績が認められた学校,教育委員会等に対する「文部科学大臣表彰」,また,学校,地域,産業界,地方公共団体等の関係者が連携・協働して行うキャリア教育の取組に対する「キャリア教育推進連携表彰」(経済産業省と共同実施)を実施

(2)職場体験,インターンシップ(就業体験)等の体験活動の推進

 職場体験やインターンシップ(就業体験)は,生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり,1.異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること,2.生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,3.学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し学習意欲を喚起すること,4.職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど,極めて高い教育効果が期待されます。このため,キャリア教育の中核的な取組の一つとして,学校現場における職場体験,インターンシップの普及・促進に努めています。
 公立小学校では,多くの学校において職場見学が実施されています。公立中学校における職場体験は,平成27年度の実施率が98.3%と,ほとんどの中学校において実施されています。こうした職場体験を一過性の行事として終わらせることのないよう,学校における事前指導や事後指導の実践に当たっては,日常の教育活動と関連付けて職場体験の狙いや効果を高めることを目的とした実践にするなど更なる工夫が求められます。
 公立高等学校(全日制及び定時制)におけるインターンシップの実施率は81.8%となっています。しかし,参加が希望制となっている学校が多いため,在学中にインターンシップを体験した生徒の割合は,全体で32.2%,普通科では20.1%となっており,参加率の向上が今後の課題となります。

2 職業教育の推進

(1)専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は,農業,工業,商業,水産,家庭,看護,情報,福祉の専門高校を中心に,我が国の産業経済や医療・福祉の発展を担う人材を育成する上で,大きな役割を果たしています。平成28年5月現在,専門高校の数は1,530校,生徒数は約61万人であり,高等学校の生徒数全体の約18.5%を占めています。また,生徒の進路状況は,28年3月卒業者のうち,大学などへの進学者約20.9%,専門学校などへの進学者約22.7%,就職者約53.1%と多様です。

(2)専門高校における教育内容の充実

1.学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けた取組

 平成25年度入学生から年次進行で実施されている高等学校学習指導要領(職業に関する教科)は,専門高校を取り巻く社会の状況や生徒の実態等を踏まえて,1.将来のスペシャリストの育成,2.地域産業を担う人材の育成,3.人間性豊かな職業人の育成という三つの観点を基本としています。文部科学省はその円滑かつ着実な実施に向け,趣旨や内容について広報・周知に努めるとともに,先進事例の共有や課題の協議を行うなどの取組を実施しています。
 なお,次期学習指導要領策定に向けては,教育課程の改善に関する研究の成果等も踏まえつつ,職業教育の充実の在り方等について中央教育審議会で審議が行われ,平成28年12月に答申が取りまとめられました。この答申を踏まえ,関係省庁とも連携しながら,引き続き学習指導要領改訂の検討を進めることとしています。

2.特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及

 近年の科学技術の進展等に伴い,産業界で必要な専門知識や技術は高度化し,従来の産業分類を越えた複合的な産業が発展しています。これに対応した高度な知識・技能を身に付け,社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため,先進的で卓越した取組を行う専門高校を「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」に指定し,実践研究を行っています。
 また,大学・専門学校等と連携して人材育成を行う「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」事業も実施しています。

(3)専門高校活性化に資する取組

1.全国産業教育フェア

 全国産業教育フェアは,専門高校等の生徒の学習成果を全国的な規模で総合的に発表することで,新しい時代に即した専門高校等における産業教育の活性化を図り,その振興に資することを目的として開催しています。平成28年度は石川県において開催し,2日間を通して約11万人の来場があり,産業教育の魅力を全国に発信するフェアとなりました。なお,29年度のフェアは秋田県で開催します。

2.教員研修の充実

 教員研修センター等では,教員等の資質を向上し,その指導力の強化を図るため,産業教育担当の教員などを対象として,情報化・技術革新その他社会情勢の変化に適切に対応した最新の知識・技術を習得させる研修や,大学や企業等の産業教育に関わる施設に派遣する研修などを行っています。

3.施設・設備の補助

 産業教育振興のため,産業教育施設・設備基準に基づき,公立及び私立高等学校に必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を支援しています。

(4)専修学校高等課程(高等専修学校)における取組

専修学校高等課程(高等専修学校)は,その柔軟な制度的特性を生かして社会的要請に弾力的に応える教育を行うことによって,中学校卒業段階で職業に対する目的意識を持った生徒等を対象に,実践的な職業教育・専門技術教育の機会を提供しています。
 また,実学を重視する専修学校高等課程は,不登校や中途退学を経験している生徒等,高等学校等の教育になじまない生徒にも教育の機会を与えており,その社会的・職業的自立に向けて積極的に対応しています。
 専修学校高等課程は,高等学校等と並び,多様な教育の選択肢を提供する後期中等教育機関の一つとしてその役割を果たしていくことが今後とも期待されています。

3 高等学校卒業後の就職の状況

 高校生の就職については,平成29年3月新規高等学校卒業者の就職率(就職希望者に対する就職者の割合)は98.0%(29年3月末現在)となり,前年同期から0.3ポイント上昇しました。就職率は7年連続で前年同期を上回りました。しかし,卒業までに就職に至らなかった生徒も数多く存在し,それらの生徒は,卒業後もハローワーク等の支援を得て就職活動を継続してきました。
 文部科学省では,学校とハローワークが連携した就職支援を促すなど,厚生労働省・関連経済団体等と連携して,新卒者の就職支援に取り組んでいます。

第5節 新しい時代にふさわしい教育制度の柔軟化の推進

1 小中一貫教育について

(1)小中一貫教育の現状

 小中一貫教育とは,小・中学校が目指す子供像を共有して9年間を通じた教育課程を編成し,系統的な教育を目指す教育であり,

  • 「教育基本法」,「学校教育法」の改正による義務教育の目的・目標規定の新設
  • 近年の教育内容の量的・質的充実への対応
  • 児童生徒の発達の早期化等に関わる現象
  • 中学校進学時の不登校,いじめ等の急増など,いわゆる「中一ギャップ」への対応
  • 学校の社会性育成機能の強化の必要性

 などを背景として,全国各地において,地域の実情に応じた取組が蓄積されてきました。文部科学省が行った「小中一貫教育等についての実態調査」(平成26年5月1日時点)(※11)によると,小中一貫教育の取組は,全国211市町村において1,130件の取組が実施され,既に全国的に広がりつつあります。これら既存の取組の多くからは学力の向上,中一ギャップの緩和,教員の意識向上など,様々な面において大きな成果が報告されている一方,小中一貫教育を推進する上で解消を図っていくべき課題も認識されています。


  • ※11 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

(2)小中一貫教育の制度化

 これまで運用上行われてきた小中一貫教育の取組では,小・中学校が別々の組織として設置されていることから,教育主体・教育活動・学校マネジメントの一貫性の確保等に課題があり,小中一貫教育を効果的・継続的に実施していく上で一定の限界が存在するため,現場からも義務教育学校の制度化の要望が寄せられていました。
 こうした現場からの要望を踏まえ,文部科学省では,地域の実情に応じた柔軟な取組を可能とするために制度改正を行い,平成28年4月1日から,小中一貫教育として以下の形態の学校が設置可能となりました(※12)。

義務教育学校

 一人の校長の下,一つの教職員集団が9年間一貫した教育を行う新たな学校種を「学校教育法」に位置付ける。

中学校併設型小学校・小学校併設型中学校

 独立した小・中学校が同一設置者の下で,義務教育学校に準じた形で一貫した教育を施すことができるようにする。

 図表2‐4‐6 小中一貫教育に関する制度の類型

 義務教育学校については,平成27年6月17日に成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」において,現行の小・中学校に加え,小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う新たな学校種として整備しました。また併せて,政令において義務教育学校が就学指定の対象となる旨を規定し,省令・告示において一貫教育の軸となる新教科の創設や,学校段階間での指導内容の入替え等,一貫教育の実施に必要な教育課程の特例が認められる旨を規定しました。
 中学校併設型小学校及び小学校併設型中学校については,既存の小学校及び中学校の枠組みは残したまま,義務教育学校に準じた形で9年間の教育目標を設定し,9年間の系統性を確保した教育課程を編成する学校として,省令において整備しました。これらの学校においては,学校間の総合調整を担う者をあらかじめ任命したり,学校運営協議会を合同で設置したり,校長を併任させたりするなど,小中一貫教育を行うためにふさわしい運営上の仕組みを整える必要があります。また,義務教育学校と同様に,一貫教育の実施に必要な教育課程の特例が認められます。


  • ※12 別途,設置者が異なる小学校と中学校が一貫性に配慮した教育を行うために連携して教育課程を実施する学校を,連携型小学校・中学校として制度化

(3)今後の推進方策について

 各地域において,その実態を踏まえつつ,小中一貫教育を導入しようとする場合の予算上の支援措置として,施設整備への支援,専科指導等の加配措置の活用,都道府県教育委員会の積極的な指導助言の下で学校設置者が域内全域での小中一貫教育の導入に向けた先導的な取組の創出を目指すモデル事業等,総合的な支援策を実施しています。また,小中一貫教育に適した学校施設の在り方については,平成27年7月に報告書を取りまとめ,公表(※13)しました。学校評価については,28年3月に小中一貫の観点も加味したガイドラインの改訂を行い(※14),これらに基づく指導・助言を行っています。
 さらに,平成28年12月には,小中一貫教育カリキュラムの策定や様々な実施上の課題への対応について参考となる,「小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引」を取りまとめました。手引は,各都道府県教育委員会等に周知するとともに,文部科学省ウェブサイトで公表しています(※15)。今後は,全国の好事例を集約した事例集の作成等,ソフト面での支援を充実させていきます。


  • ※13 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/07/1360198.htm
  • ※14 参照:第 2 部第 4 章第15節 3(1) http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-hyoka/1295916.htm
  • ※15 参照:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/01/05/1369749_1.pdf

2 中学校夜間学級について

(1)中学校夜間学級の役割

 中学校夜間学級(いわゆる「夜間中学」)は,戦後の混乱期の中で,生活困窮などの理由から昼間に就労又は家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから,これらの生徒に対し,義務教育の機会を提供するため,昭和20年代初頭から設けられてきました。
 現在の夜間中学は,様々な理由により義務教育未修了のまま学齢を超過した方々や,本国で義務教育を修了していない外国籍の方々等の学習ニーズに対応した幅広い教育を行うなど重要な役割を果たしています。
 また,文部科学省としては,平成27年7月には,不登校など様々な事情から実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮等により卒業した者で,中学校で学び直すことを希望する者について,夜間中学での受入れを可能とすることが適当であることを示しました。また,28年9月には,不登校となっている学齢生徒の夜間中学での受入れが可能であることを示しています。現在夜間中学には,義務教育を受ける機会を実質的に保障するための様々な役割が期待されています。

(2)中学校夜間学級のニーズ

 平成22年の「国勢調査」では,未就学者(在学したことのない人又は小学校を中途退学した人)が全国で少なくとも12万人以上いること,全都道府県(全市町村の約96%)に未就学者が存在していることなど,夜間中学で学ぶ対象となる方々が全国各地に存在していることが明らかとなっており,夜間中学には潜在的なニーズがあると考えられます(なお,未就学者の定義について,小学校を卒業したが中学校を卒業していない者が含まれていないことから,文部科学省としては「国勢調査」の調査方法の改善を総務省に要望しています)。文部科学省が27年5月に公表した(※16)調査では,約1,800人の生徒が夜間中学に通っていること,自主夜間中学や識字講座等の生徒数が約7,400人いることなどが明らかになっています。また,全国の都道府県・市区町村の議会において,夜間中学の整備と拡充を求める意見書が提出されており,夜間中学の設置を求める声は高まりを見せています。


  • ※16 参照:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/10/26/1375982_01.pdf

(3)中学校夜間学級の設置促進

 平成28年12月7日には,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立しました。この法律では,学齢期を経過した者であって小・中学校等における就学の機会が提供されなかったものの中に,就学機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ,全ての地方公共団体に,夜間中学における就学機会の提供等の措置を講ずることが義務付けられています。また,都道府県及び市町村間の役割分担に関する協議や連絡調整を行うための協議会についても規定されました。
 その一方,夜間中学は現在8都府県25市区での設置にとどまっています。文部科学省においては,全ての都道府県に少なくとも一つは夜間中学が設置されるよう,その設置を促進したいと考えています。
 そのために,平成27年度補正予算において,未設置道県の教育委員会が,域内の市町村教育委員会と連携しながら,設置に向けたニーズ調査等を行うための調査研究事業を実施しました。また,29年1月には,各地方公共団体における夜間中学の設置に向けた検討が進むよう,また既に設置されている地方公共団体においても夜間中学での一層の希望者の受入れや指導の向上等が図られるよう,「夜間中学の設置・充実に向けて【手引】(改訂版)」(※17)を作成し,各教育委員会等に周知しています。
 平成29年度予算においては,未設置道県の教育委員会が域内の市町村教育委員会と連携しながら設置に向けた検討等を行うため,また既設置の都府県の教育委員会が既存の夜間中学において教育機会の提供拡充に向けた検討を行うための必要経費を計上しました。こうした事業も活用しながら,国,都道府県,市町村が連携協力して夜間学級の設置を促進し,義務教育未修了者等の就学機会を確保できるよう取組を加速させることとしています。


  • ※17 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/yakan/1381010.htm

第6節 高等学校教育改革の推進

1 高等学校教育をめぐる現状とこれまでの取組

 新制高等学校発足当初の昭和23年には約42%であった高等学校進学率は,現在では約99%に達しており,高等学校は国民的な教育機関となっています(図表2‐4‐7)。高等学校進学率の上昇に伴い,生徒の能力・適性,興味・関心,進路などが多様化しており,生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育が求められています。

 図表2‐4‐7 高等学校等への進学率[推移]

 一方,高等学校の生徒数は,最も多かった平成元年の約560万人から28年度には約349万人に減少しており,高等学校の適正配置・適正規模の在り方が課題となっています。このため,各都道府県では,高等学校の適正配置・適正規模に留意しつつ,生徒一人一人の個性を伸ばし,知・徳・体の調和の取れた充実した高等学校教育を実現するため,各学校においてそれぞれの特色を生かして創意工夫に富んだ魅力ある学校づくりが進められています。
 文部科学省においても,これまで,多様な生徒の能力,興味,関心,進路希望等に対応するため,中高一貫教育,総合学科や単位制高等学校をはじめ,生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりを可能とするための改革を進めてきました。一方,義務教育段階での学習内容の学び直しや,生徒の学習意欲をめぐる問題などへの対応が一層求められるようになってきています。また,現在の高等学校教育については,生徒の幅広い学習ニーズに柔軟に応えることが可能となった一方,その実態が多様化する中で,高等学校というものを一くくりにすることが次第に難しくなっている状況にあります。

2 高等学校教育の質の確保・向上に向けた取組

 高等学校教育をめぐる状況に鑑み,中央教育審議会高等学校教育部会において平成26年6月,高等学校教育の現状と課題や今後の高等学校教育の在り方等についての「審議まとめ」が取りまとめられました。
 この「審議まとめ」では,社会で生きていくために必要となる力や社会の発展に貢献し得る力を共通して身に付けられるよう,「共通性の確保」を図りつつ,生徒や高校の実態を踏まえた「多様化への対応」も併せて進めることにより,高等学校教育の質の確保・向上を目指すこととしています。
 また,具体的施策として,達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の導入や,幅広い資質の多面的な評価など学習成果や教育活動の把握・検証の推進,学校から社会・職業への円滑な移行の推進,多様な生徒の学習形態や進路希望に対応した教育活動の推進,広域通信制課程の在り方の検討などを進めて行くことが重要であることが示されました。
 このうち,「共通性の確保」を図る施策の一環として示された達成度テスト(基礎レベル)(仮称)については,平成26年12月の中央教育審議会「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」及び文部科学省に置かれた高大接続システム改革会議が28年3月に取りまとめた「最終報告」において高等学校基礎学力テスト(仮称)として考え方が提言されました。同年5月からは,検討・準備グループにおいて,「最終報告」を踏まえ,具体的な検討を進め,29年3月に論点整理が取りまとめられました。これらを踏まえ,同年5月には,検討素案を公表しました。今後,関係者との意見交換等を経て,実施方針として公表することとしています(29年6月末目途)(※18)。
 「多様化への対応」に係る取組については,定時制課程や通信制課程等における困難を抱える生徒等への支援・相談体制の充実を図るための事業を実施しています。加えて,優れた才能や個性を有する生徒を支えるため,飛び入学者に対する高等学校の卒業程度認定制度を創設することとしました。また,一定の要件を満たす高等学校等の専攻科を修了した者については,大学に編入学することを認める制度が施行されました。
 さらに,離島や過疎地等における教育機会の確保や多様かつ高度な教育に触れる機会の提供を目的として,全日制・定時制課程の高等学校における遠隔教育を一定の要件の下に可能とする制度を導入し,先導的に取り組んでいる教育委員会等に対し,財政的な支援を行っています。
 また,一部に不適切な教育運営の実態が明らかとなり,高等学校通信教育の質の確保・向上が強く求められた広域通信制高等学校については,文部科学省内において,緊急タスクフォースを設置し,平成28年3月に「広域通信制高校に関する集中改革プログラム」を取りまとめました。同プログラムに基づき,同年9月に広域通信制高等学校の質の確保・向上に関するガイドラインを作成したところです。
 今後は,平成30年度までの約2年間を「広域通信制高校の集中点検期間」と位置付け,所轄庁と協力しつつ,専門家の参画も得て,徹底した実態把握,点検調査を実施していき,高等学校通信教育の更なる質の確保・向上を図ることとしてます。


  • ※18 参照:第2部 第5章 第1節 1

第7節 教科書の充実

 教科書は,学校における教科の主たる教材として,児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たすものです。教育の機会均等を実質的に保障し,全国的な教育水準の維持向上を図るため,小・中・高等学校,特別支援学校などにおいては,教科書を使用しなければならないとされています。教科書は,次のような過程を経て,児童生徒の元に届けられ,使用されています。

 図表2‐4‐8 教科書が使用されるまで

 図表2‐4‐9 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

1 教科書検定

 教科書検定制度は,民間の発行者の創意工夫による多様な教科書の発行を期待するとともに,1.全国的な教育水準の維持向上,2.教育の機会均等の保障,3.適正な教育内容の維持,4.教育の中立性の確保などの要請に応えるため実施しているものです。
 教科書検定は,学習指導要領や教科用図書検定基準に基づき,各分野の専門的な知見を有する教科用図書検定調査審議会の委員によって,専門的・学術的な審議に基づいて厳正に行われています。
 国民の教科書に対する高い関心に応え,教科書への信頼を確保するとともに,検定への一層の理解を得るため,検定結果の公開を行い,透明性の確保を図っています。平成28年度は,27年度に行った高等学校(主として低学年)用教科書の検定結果を公開しました(※19)。
 また,平成28年9月から,教科用図書検定調査審議会において教科書の改善に関する検討を行っており,今後,次期学習指導要領の実施等に向けた教科用図書検定基準等の改正を行う予定です。


  • ※19 参照:
    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1368504.htm
    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1371067.htm

2 教科書採択

 教科書採択は,地域や児童生徒の実情に応じて,学校で使用する教科書を決定することであり,公立学校では設置者である都道府県や市町村の教育委員会,国・私立学校では校長が行っています。公立の小・中学校等において使用される教科書の採択については,都道府県教育委員会が,市町村教育委員会の意見を聴いて採択地区を設定します。複数の市町村から構成される採択地区では,地区内の市町村教育委員会は,規約を定めて採択地区協議会を設け,その協議の結果に基づいて種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
 教科書採択においては,採択権者の判断と責任の下,1.教科書の内容に関する十分な調査研究,2.静ひつな採択環境の確保,3.採択結果・理由等の公表などが求められています。文部科学省では,各教育委員会に対して,調査研究のより一層の充実,採択事務のルール化などの採択手続の明確化,採択地区の適正規模化など,採択のより一層の改善に努めるように指導しています。
 また,平成27年度から28年度に掛けて,複数の教科書発行者による,教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせる行為が相次いで発覚したことを受けて,文部科学省は,教科書発行者に対する指導を行うとともに,再発防止に向けた取組を進めています。

3 義務教育教科書無償給与

 義務教育教科書無償給与制度は,「日本国憲法」第26条が掲げる義務教育無償の精神をより広く実現する制度として,昭和38年度以来50年以上にわたって実施され,国民の間に広く定着しています。この制度は,次代を担う児童生徒に国民的自覚を深めてほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり,同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。教科書無償給与の対象となるのは,全ての義務教育諸学校の児童生徒が使用する全教科の教科書であり,本制度の実施のため,平成28年度には約411億円の予算が計上され,約999万人の児童生徒に対して,合計約9,400万冊の教科書が給与されました。

4 教科用特定図書等の普及充実

 平成20年の「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の制定を受け,拡大教科書など障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図っています。
 具体的には,できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるような拡大教科書の標準的な規格を定めるなど,教科書発行者による拡大教科書の発行を促しているほか,全国5ブロックで,都道府県教育委員会等を対象とした音声教材の普及推進のための会議を開催しています。
 平成28年度に使用される小・中学校用の検定教科書のほぼ全点について標準規格に適合する拡大教科書が,必要な児童生徒に供給されています(図表2‐4‐10)。また,教科書発行者が発行する拡大教科書では対応できない児童生徒のために,児童生徒一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して,教科書デジタルデータの提供を行っています。
 このほか,発達障害等の障害により検定教科書において一般的に使用されている文字や図形などを認識することが困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等として音声教材の整備充実を図るため,調査研究などを行っています。

 図表2‐4‐10 拡大教科書の発行点数(平成28年度)

5 デジタル教科書に関する検討

 平成27年5月から開催していた「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議において,28年12月に最終まとめが取りまとめられました。最終まとめでは,紙の教科書とデジタル教科書の学習内容を同一とした上で,紙の教科書を基本としながら,教科の一部の学習に当たって,紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用することが適当とされました。次期学習指導要領の実施に合わせてデジタル教科書を導入することができるよう,引き続き必要な検討を進めています。

第8節 いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応

1 生徒指導上の諸問題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は,全ての児童生徒を対象として,学校のあらゆる教育活動の中で,それぞれの人格の健全な発達・成長を目指すとともに,現在及び将来における自己実現を図っていくために,児童生徒が自らを導いていく能力を育成すること,そして,学校生活が有意義で興味深く,充実したものになることを目指して行われるものです。生徒指導の積極的な意義を考慮し,児童生徒に社会的な資質や能力,態度などを修得・発達させるような指導・援助が行われています。
 一方,いじめの問題や少年による重大事件などは教育上の大きな課題となっています。文部科学省では,毎年度,各都道府県教育委員会などを通じて調査を行い,暴力行為,いじめ,不登校などの生徒指導上の諸課題の実態把握に努めています。平成27年度の調査結果では,小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約5万7,000件,小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約22万5,000件,小・中・高等学校における不登校児童生徒数は約17万6,000人となっています。
 学校においては,日常的な指導の中で,教師と児童生徒との信頼関係を築き,全ての教育活動を通じて規範意識や社会性を育むきめ細かな指導を行うとともに,問題行動の未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また,問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅き然とした対応を取るとともに,問題を隠すことなく,教職員が一体となって対応する必要があります。さらに,教育委員会は学校を適切にサポートする体制を整備すること,そして,家庭や地域社会,警察・法務局・児童相談所等の関係機関の理解と協力を得て地域ぐるみで取り組む体制づくりを進めていくことが重要です。
 文部科学省では小学校段階から高等学校段階までの組織的・体系的な取組を進めるため,生徒指導の概念・取組の方向性等を整理した学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し,各教育委員会及び学校などに配布するとともに,指導や研修での活用を促し,生徒指導の一層の充実を図っています。

(2)いじめ

 「いじめ防止対策推進法」(以下,「法」という。)においては,いじめは「児童等に対して,当該児童が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」(第2条第1項)と定義されています。個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は,表面的・形式的にすることなく,いじめられた児童生徒の立場に立つことが必要です。
 いじめ問題については,まず,「いじめは絶対に許されない」との意識を社会全体で共有し,子供を「加害者にも,被害者にも,傍観者にもしない」教育を実現することが必要です。また,いじめ問題に適切に対処するためには,子供たちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることも大切です。
 平成24年度には,いじめの問題を背景として生徒が自らその命を絶つという痛ましい事案をきっかけに,このことが大きな社会問題となりました。25年6月に法が成立したことを受け,文部科学省では,同年10月に「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下,「基本方針」という。)を策定しました。
 文部科学省では,法や基本方針の策定を受け,教育委員会関係者や教職員に内容の周知を図り,いじめの防止等への取組を徹底するため,「いじめの問題に関する指導者養成研修」や「いじめの防止等のための普及啓発協議会」を開催しています。
 加えて,平成28年度においては,法施行後3年を経過したことを受け,「いじめ防止対策協議会」において法の施行状況の検証を行いました。この検証の結果を踏まえ,国の基本方針の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定を行いました。
 平成27年度,全国の国公私立の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約22万5,000件,いじめを認知した学校数は約2万4,000校で学校総数に占める割合は約62.1%となっています(図表2‐4‐11)。
 いじめは,どの子供にも,どの学校にも起こり得るものであり,その早期発見に努め,いじめを認知した際には早期に対応することが大切です。
 このいじめの認知件数については,従来,問題行動等調査における1,000人当たりの認知件数の都道府県間の差が大きく,実態を正確に反映しているとは言い難い状況があります。文部科学省としては,いじめの認知件数が多い学校について,「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し,その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価し,いじめの積極的な認知を徹底するよう促しています。

 図表2‐4‐11 いじめの認知(発生)件数の推移

1.いじめ対策・不登校支援等総合推進事業

 いじめの未然防止,早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため,「いじめ対策・不登校支援等総合推進事業」を拡充し,地方公共団体におけるいじめの問題等への対応を支援しています(※20)。

2.いじめ防止対策協議会の開催

 文部科学省では,学校関係者や各種職能団体等の関係団体から有識者の参画を得た「いじめ防止対策協議会」を開催し,法に基づく取組状況の把握と検証を的確に行うとともに,いじめの問題に取り組む関係者間の連携強化を図っています。平成28年度においては,同協議会で法の施行状況等についての検証を行い,28年11月に「いじめ防止対策推進法の施行状況に関する議論のとりまとめ」が提言されたところです。同議論の取りまとめ等を踏まえ,学校におけるいじめへの組織的な対応を徹底させることや,重大事態に関する調査を適切に実施することを促すため,25年度に策定した基本方針の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定を行いました。

3.全国いじめ問題子供サミットの開催

 いじめを未然に防止するためには,子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み,解決につなげていく意識を高め,実行していくことが効果的です。このため,子供自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成するとともに,全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため,平成26年度,27年度に引き続き,29年1月に「全国いじめ問題子供サミット」を開催しました。

4.「ネットいじめ」への対応

 近年,インターネットや携帯電話を利用したいじめ(いわゆる「ネットいじめ」)が深刻な問題になっています。また,「ネットいじめ」のうち,ソーシャルネットワークサービス(SNS)でのいじめについては,第三者が閲覧できないため従来の取組で対応できない場合もあります。こうしたいじめの未然防止のためには,子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み,解決につなげていく意識を高め,実行していくことや情報モラルを身に付けさせることが重要です(※21)。
 また,改定後の基本方針に,インターネット上のいじめは,「刑法」上の名誉毀損罪や侮辱罪,民事上の損害賠償請求の対象となり得ることや,インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり,被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取組を行うことを盛り込みました。
 文部科学省では平成26年度から,ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールなど都道府県・指定都市における取組への支援を行っています。

5.東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒に対するいじめへの対応

 横浜市や新潟市などで原子力発電所事故により避難している児童生徒がいじめに遭い,学校等が適切な対応を行わなかった事案については,両市に文部科学副大臣を派遣して指導助言を行いました。また,平成28年12月,被災児童生徒を受け入れている学校に対して,1.原子力発電所事故の避難者である児童生徒を含め,被災児童生徒が,いじめを受けていないかどうか確認を行うこと,2.いまだ故郷に帰れず,不安の中,過ごしている被災児童生徒に対して,心のケアなど,日常的に格別の配慮を行うことなどの対応を求める「東日本大震災により被災した児童生徒を受け入れる学校の対応について」(平成28年12月16日付け初等中等教育局長通知)を発出しました。さらに,29年3月,基本方針を改定して,こうした児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見を新たに盛り込み,教職員に対して適切な対応を求めています。加えて,同年4月に,児童生徒に対して,「震災を経験して,故郷を離れて慣れない環境の中で生活を送る友達のことを理解し,その方に寄り添い,一緒に支えながら学校生活を送ってほしい」等と呼び掛けた被災児童生徒へのいじめの防止に関する文部科学大臣のメッセージを発表するとともに,上記28年12月16日付け通知の1.により各教育委員会に求めたいじめの状況等の確認について,フォローアップ結果を公表しました。


  • ※20 参照:第2部 第4章 第8節
  • ※21 参照:第2部 第11章 第1節 5

(3)暴力行為

 平成27年度,全国の国公私立の小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は,学校の管理下で発生したものが,全学校の28.4%に当たる約1万校において約5万3,000件,学校の管理下以外で発生したものが,全学校の6.0%に当たる約2,200校において約3,600件となっており,依然として相当数に上っています(図表2‐4‐12)。
 文部科学省では,平成25年度から,暴力行為などの未然防止や早期発見・早期対応につながる取組,サポートチームなど関係機関とのネットワークを活用した取組などを実践する調査研究を実施しています。

 図表2‐4‐12 学校の管理下・管理下以外における暴力行為発生件数の推移

(4)不登校

 平成27年度の全国の国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約12万6,000人,高等学校は約5万人と,依然として相当数に上っています(図表2‐4‐13)。
 文部科学省では不登校児童生徒に対する支援の現状と課題を検証し,学校及び学校外における不登校児童生徒への支援の改善充実を図る観点から,総合的な不登校施策について検討を行うため,平成27年1月から「不登校に関する調査研究協力者会議」を開催し,28年7月に最終報告を公表しました。最終報告では,「児童生徒理解・教育支援シート」を活用した組織的・計画的支援,教育支援センターや不登校特例校等,不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保,教育支援センターを中核とした体制整備などが提言されています。この最終報告を受け,「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平成28年9月14日付け初等中等教育局長通知)を発出し,不登校は多様な要因や背景から結果として不登校状態となっており,問題行動と判断してはならないことや,不登校児童生徒への支援は,学校に登校するという結果のみを目標とするのではなく,児童生徒の社会的自立を目指すことなど,新たな不登校児童生徒への支援の在り方を示しました。
 また,フリースクール等で学ぶ子供たちの現状を踏まえ,学校外での学習の制度上の位置付けや,子供たちへの支援策の在り方について検討を行うため,平成27年1月から「フリースクール等に関する検討会議」を開催し,29年2月に,教育委員会・学校と民間の団体等が連携した支援を推進することなど,不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援の充実等について提言した報告を公表しました。この会議の議論を進めるに当たり,民間の団体等で学ぶ不登校児童生徒の実態を把握するため,27年8月には,「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査(※22)」を初めて実施し,結果を公表しました。約9割の団体・施設が個別の学習,相談,カウンセリングを行っていること,1団体・施設当たりの子供の数は平均13人,有給・週5日以上勤務のスタッフ数は平均3人,月額の会費(授業料)の平均額は約3万3,000円であること等が明らかになりました。
 さらに,平成28年12月には「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立し,不登校児童生徒への支援について,初めて体系的に法律で規定されました。同法に基づき,文部科学省では,29年3月に不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針として,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」を策定しました。
 これらを踏まえ,平成29年度予算において,教育支援センターの設置促進やフリースクールなど民間団体との連携による支援を推進するため,学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究等を実施するなど,個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援の推進を図ることとしています。


  • ※22 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tyousa/1360614.htm

 図表2‐4‐13 不登校児童生徒数の推移

(5)高等学校中途退学

 平成27年度の全国の国公私立の高等学校における中途退学者数は約4万9,000人,在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は1.4%となっています(図表2‐4‐14)。中途退学の理由としては,「学校生活・学業不適応」(34.1%),「進路変更」(34.3%)などが挙げられます。
 高等学校中途退学への対応については,各高等学校において,一人一人の生徒が主体的に目標や意欲を持って学ぶことができるよう,生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに,キャリア教育の充実や一層きめ細かな教育相談を実施することなどが重要です。また,就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。
 文部科学省では,教育相談体制の充実を図るため,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を拡充しているほか,中途退学者に対する学校段階からの切れ目のない支援のため,地域若者サポートステーション等の関係機関と学校との連携を促進しています。

 図表2‐4‐14 高等学校における中途退学者数及び中途退学率の推移

(6)自殺

 厚生労働省・警察庁「平成28年中における自殺の状況」(平成29年3月)によると,28年中の小・中・高等学校の児童生徒の自殺者数は320人となっています。
 文部科学省では,命の大切さを学ぶ教育などを通じて児童生徒の自殺の防止に取り組むとともに,その特徴や傾向などを考慮した対策を検討するため,平成20年度から有識者会議を開催しています。また,児童生徒の自殺予防や,不幸にして自殺が起きたときの緊急対応に必要な学校・教職員向けの資料を作成し,各教育委員会や学校に配布してきました。26年度には,学校における自殺予防教育導入の手引である「子供に伝えたい自殺予防」,「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」を作成しました。28年度は,各教育委員会等の生徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会」を開催し,児童生徒の自殺対策について周知を図っています。
 また,18歳以下の自殺は,学校の長期休業明けに掛けて急増する傾向があることから,長期休業前から期間中,長期休業明けの時期に掛けて学校における早期発見・見守りに向けた取組,保護者に対する家庭における見守りの依頼,学校内外における集中的な見守り活動,ネットパトロールの強化を実施するよう,夏休み,冬休み,春休み前にそれぞれ対応を求めたところです。

2 教育相談体制の整備・充実

 児童生徒のいじめの問題などに適切に対処するためには,児童生徒の悩みや不安などを受け止めて,速やかに相談できるよう教育相談体制を整備することが重要です。
 文部科学省では,平成27年12月に「教育相談等に関する調査研究協力者会議」を開催し,29年1月に,今後の教育相談の在り方,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの職務内容,学校及び教育委員会における体制の在り方など,児童生徒の教育相談の充実について提言した報告を公表しました。
 さらに,平成27年12月の中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」等を踏まえ,「学校教育法施行規則」の一部を改正し,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーについて,「スクールカウンセラーは,学校における児童の心理に関する支援に従事する」,「スクールソーシャルワーカーは,学校における児童の福祉に関する支援に従事する」と同規則に職務内容を規定したところです(29年4月1日施行)。
 また,学校等における教育相談体制を整備するために,児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラーや,福祉の専門的な知識・技術を用いて,児童生徒を支援するスクールソーシャルワーカーを配置する都道府県等に対して補助を行っています。
 スクールカウンセラーについては,平成28年度は全公立中学校及び公立小学校1万5,500校にスクールカウンセラーを配置するために必要な経費の補助を行ったほか,貧困対策のための重点加配(1,000校)を行いました。29年度予算では,全公立中学校に対するスクールカウンセラーの配置に加えて,引き続き,生徒指導上の大きな課題を抱える公立中学校等でスクールカウンセラーによる週5日の相談体制を実施し,常時生徒が相談できる体制づくりを推進することとしています。また,公立小学校については,小中連携型配置の拡充を含む1万6,000校への配置の拡充を行います。さらに,貧困・虐待対策のための重点加配(1,000校)に必要な経費を計上しています。
 また,スクールソーシャルワーカーについては,各都道府県・指定都市,中核市に対して,平成28年度は3,047人の配置に必要な経費の補助を行いました。29年度予算では,5,047人分に拡充するとともに,貧困・虐待対策のための重点加配(1,000人)と質向上のためのスーパーバイザー配置(47人)に必要な経費を計上しています。
 さらに,文部科学省では,夜間・休日を含め24時間いつでも子供のSOSを受け止めることができるよう,「24時間子供SOSダイヤル」を整備しています。なお,平成28年度からは同ダイヤルが無料化され,電話番号が「0120‐0‐78310」に改められています。
 加えて,平成25年度から,都道府県や市区町村における,第三者的立場からいじめ問題等を調整・解決する取組や,外部専門家を活用して学校を支援する取組に対して補助を行っています。26年度からは,都道府県・指定都市における,ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールの取組への支援を行っています。

3 体罰の禁止

 体罰は,「学校教育法」により厳に禁止されており,児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また,体罰は,違法行為であるのみならず,児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え,教員等及び学校への信頼を失墜させる行為であり,児童生徒に力による解決への志向を助長させ,いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがあります。
 しかし,平成24年度には,部活動中の体罰が背景にある生徒の自殺事案が発生し,大きな社会問題となりました。この事案や教育再生実行会議の第一次提言「いじめ問題等への対応について」を踏まえ,懲戒と体罰の区別等についてより一層適切な理解促進を図るとともに,教育現場において,児童生徒理解に基づく指導が行われるよう,「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成25年3月13日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出しました。同通知では,懲戒と体罰の区別について,具体例を示して分かりやすく説明するとともに,部活動指導に当たっての留意事項を示しています。さらに,「体罰根絶に向けた取組の徹底について」(平成25年8月9日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出し,厳しい指導の名の下で,若しくは保護者や児童生徒の理解を理由として,体罰や体罰につながりかねない不適切な指導を見過ごしてこなかったか,これまでの取組を検証し,体罰を未然に防止する組織的な取組,徹底した実態把握,体罰が起きた場合の早期対応及び再発防止策,事案に応じた厳正な処分など,体罰防止に関する取組の抜本的な強化を図るよう求めました。
 平成24年度以降は,国公私立学校における処分が行われた体罰の状況についてまとめた調査結果を毎年度公表し,体罰の実態を把握するとともに,その禁止の徹底に努めています。
 運動部活動における体罰禁止の徹底については,平成25年3月に「運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催しました。同年5月には運動部活動の指導者が,指導に当たって萎縮しないよう,また,体罰に頼らない指導の充実が図られるよう「運動部活動での指導のガイドライン」を策定しました。このガイドラインにおいては,運動部活動における指導と許されない指導の一定の考え方を示すとともに,運動部活動の指導に係る運営,体制等についても必要事項を掲載しています。文部科学省では,このガイドラインを各学校等に周知し,運動部活動の現場から体罰を根絶するよう努めています。

第9節 道徳教育の充実

 学校教育では,調和の取れた人間の育成を目指して,子供たちの発達の段階に応じた道徳教育を展開することとしています。幼稚園では,各領域を通して総合的な指導を行い,道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では,道徳の時間(週当たり1単位時間)を要として,各教科,総合的な学習の時間,特別活動などそれぞれの特質に応じて適切な指導を行い,学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では,人間としての在り方生き方に関する教育を,学校の教育活動全体を通じて行うことにより,その充実を図ることとしています。
 他方,小・中学校に道徳の時間が設置されてから約70年がたちますが,これまで学習指導要領の趣旨を踏まえ,学校の創意工夫を生かした素晴らしい実践が行われている一方で,道徳教育が本来の役割を果たしきれていないのではないかという指摘もなされてきました。
 また,今後,人工知能をはじめとする技術革新が進むなど,将来を予測することがますます困難な時代になると予想されます。このような時代を前に,私たち人間に求められるのは,感性を豊かに働かせながら,自分なりに試行錯誤したり,多様な他者と協働したりして,新しい価値を生み出していくことであり,こうした中で,より良く生きるための基盤となる資質・能力を養う道徳教育の役割はますます重要となっています。
 文部科学省では,このような状況を踏まえ,道徳教育の更なる充実のため,道徳の時間を「特別の教科道徳」(道徳科)として位置付けることなどに係る学習指導要領の一部改正等を行いました。このことにより,答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童生徒が自分自身の問題と捉え,向き合う,「考える道徳」,「議論する道徳」へと転換が図られるものと考えています。
 今回の改正の主なポイントは次のとおりです。

  1. 内容について,いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものに改善
  2. 問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れ,指導方法を工夫
  3. 数値評価は引き続き実施せず,児童生徒の道徳性に係る成長の様子を継続的に把握
  4. 道徳科に検定教科書を導入

 今回の改正を踏まえ,小学校では平成30年度から,中学校では31年度からそれぞれ道徳科が全面実施されます。また,27年度から小・中学校それぞれの実施年度までの間は移行措置として,改正学習指導要領の趣旨を踏まえた取組が可能となっています。
 また,評価や指導要録の在り方等については,平成28年7月の「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」の報告を踏まえ,同月に文部科学省から「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成28年7月29日付け初等中等教育局長通知)を発出し,道徳科の評価の在り方や指導要録の参考様式について周知・徹底を図りました。その中では,従来どおり数値による評価は行わないことを前提として,以下のとおり基本的な考え方を示しています。

  1. 他の児童生徒との比較による評価ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として記述式で行うこと
  2. 個々の内容項目ごとではなく,大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること
  3. 児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか,道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること
  4. 道徳科の評価は,入学者選抜の合否判定に活用することのないようにすること

 さらに,文部科学省では,道徳科の全面実施に向け,道徳教育の充実のための資料等をホームページ上で公開する「道徳教育アーカイブ」を平成29年5月に開設し,各学校の児童生徒の実態に応じた多様な創意工夫を生かした授業づくりを支援しています。このほかにも,各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため,研修の充実や外部講師の活用,郷土の歴史や偉人などを取り上げた地域教材の作成,家庭・地域との連携を強化する取組など地方公共団体等における多様な取組を支援する「道徳教育の抜本的改善・充実に係る支援事業」を実施しています。

第10節 人権教育の推進

 「日本国憲法」及び「教育基本法」の精神にのっとり,学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することは重要なことです。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」及び「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定,23年4月1日一部変更)に基づき,政府全体として人権教育・啓発を推進しています。学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じて,学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高めるための指導を進めており,一人一人を大切にする教育の推進に努めています。
 文部科学省では,学校教育の分野において,「人権教育の指導方法等の在り方について[第3次まとめ]」(平成20年3月)等を踏まえつつ,学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や学校における指導方法の改善充実について実践的な研究を行う「人権教育研究推進事業」を実施し,人権教育の先進的な取組の普及に努めています。
 また,平成23年度から人権教育の全国的な推進を図るため,人権教育の実践事例の収集・公表を実施しており,27年度においては,49の事例を公表しました。そのほか,22年度から開始した都道府県等の人権教育担当指導主事等を対象とする「人権教育担当指導主事連絡協議会」を引き続き開催しており,人権教育の重要性について改めて認識を共有するとともに,国連「児童の権利に関する条約」等について引き続き周知を図っています。
 さらに,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」(平成27年4月30日付け初等中等教育局児童生徒課長通知)を発出するとともに,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」を28年4月に作成し,学校へ周知しました。

第11節 子供の健康と安全

 学校は,子供たちの健やかな成長と自己実現を目指して教育活動を行うところであり,子供の健康と安全を保つことは重要です。文部科学省では,学校における食育の推進,心と体の健康問題への対応,学校における子供の安全確保に向けた施策に取り組んでいます。

1 食育,学校給食の推進

(1)栄養教諭を中心とした指導の充実

 近年の子供の食を取り巻く環境の変化に対応するためには,学校において,栄養教諭が中心となって各教職員が連携・協力して食育を推進する体制を整備し,給食の時間をはじめとする特別活動や各教科,総合的な学習の時間等,学校の教育活動全体を通じて体系的・継続的に食に関する指導を行うことが重要です。
 学習指導要領では,総則に「学校における食育の推進」を明記するとともに,体育科,家庭科など関連する科目等においても食育の観点からの記述を充実しています。
 さらに,文部科学省では,平成26年度から,栄養教諭を中心に大学や企業,生産者,関係機関等と連携し,食育を通じた学力向上,健康増進,地産地消の推進,食文化理解などについて取り組む「スーパー食育スクール事業」を実施しています。

(2)学校給食について

 学校給食は,栄養バランスの取れた豊かな食事を子供に提供することによって子供の健康の保持増進を図ることに加え,食に関する指導を効果的に進めるための教材として活用することができるなど大きな教育的意義を持っています。平成27年5月現在,小学校では2万146校(全小学校の99.1%),中学校では9,184校(全中学校の88.1%)が学校給食を実施しています(図表2‐4‐15)。

 図表2‐4‐15 学校給食実施状況

 各学校では,学校給食の食材として地場産物を活用したり,地域の郷土料理・伝統料理などを献立に活用したりする取組が進められています。「第3次食育推進基本計画」では,平成32年度までに,学校給食における地場産物の使用割合を30%以上(27年度の使用割合は26.9%),学校給食における国産食材の使用割合を80%以上(同77.7%)とすることを目指すとされています。
 また,米飯給食は,伝統的な食生活の根幹であり,米飯に関する望ましい食習慣を児童生徒に身に付けさせるなどの教育的意義を持っています。平成27年度の週当たりの米飯給食の実施回数は全国平均で3.4回となっています。文部科学省では,平成28年度から,学校給食において,食品ロスの削減,地産地消の推進,伝統的食文化の継承などの社会的課題に対応するため,業務手順や実施方法等の仕組みの見直しにより,学校給食をより効果的かつ効率的に運用するための手法を検討する「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」を実施しています。
 その他,学校におけるアレルギー対応の改善・充実のための資料として,「学校給食におけるアレルギー対応指針」,「ガイドライン要約版」,「学校におけるアレルギー疾患対応資料(DVD)」を作成し,全国の教育委員会や学校等へ配布し,全教職員に対する理解の促進と事故防止の徹底を図っています。

2 学校保健の充実

(1)子供の健康課題に対する総合的な取組

 現代の多様化・深刻化する子供の健康課題に対応するため,心の健康や性に関する問題,喫煙,飲酒,薬物乱用防止について記述した「児童生徒の心と体を守る啓発教材」を作成し,全国の小学校5年生,中学校1年生,高等学校1年生等に配布しています。
 また,退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして派遣する事業を実施したり,メンタルヘルスの問題,各種感染症,アレルギー疾患など学校だけでは解決することができない児童生徒の現代的な健康問題について地域検討委員会を設置し地域の医療機関等と連携して解決を図る事業や,各地域における健康教育に関する指導者育成に係る事業を実施したりするなど様々な施策を講じています。
 さらに,学校,家庭,地域の専門機関等が連携し,学校における健康課題を協議することによって児童生徒等の健康づくりを推進する学校保健委員会の設置を推進しています。平成27年度の設置率は95.0%と高い水準を実現しています。

(2)がん教育の推進

 がん対策については,厚生労働省が中心となって,「がん対策基本法」の下で政府が策定する「がん対策推進基本計画」に基づいて行われており,現在は平成24年度から28年度までの第二期の計画期間となっています。同計画では,今後5年以内の健康教育におけるがん教育の検討や実施についても盛り込まれています。
 文部科学省では,同計画の達成に向けて,平成26年度からがん教育の推進に取り組んでいます。27年度においては,国においてがん教育教材や外部人材活用のためのガイドラインの作成を行うとともに,28年度は,引き続き各都道府県等が主体的に行うがん教育に関する取組に対して支援を行うことによって,各地域におけるがん教育の充実を図っています。

(3)児童生徒等の健康診断の充実

 学校における健康診断は,児童生徒の健康の保持増進を図り,学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資するため重要です。「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」で健康診断の在り方について検討した結果を踏まえ,座高測定及び寄生虫検査を健康診断の必須項目から削除し,四肢の状態を加えました。
 文部科学省では,平成27年に「児童生徒の健康診断マニュアル」を改訂し,具体的な実施方法等について周知しています。

(4)感染症への対応

 学校における感染症の流行予防は,教育の場・集団生活の場として望ましい学校環境を維持するとともに,児童生徒等が健康な状態で教育を受けるためにも重要です。
 平成24年には,「学校保健安全法施行規則」を改正し,髄膜炎菌性髄膜炎を新たに学校において予防すべき感染症に追加するとともに,インフルエンザ等の出席停止の期間の基準を改正しました。これらの改正等を踏まえ,教職員や医療関係者を対象とした指導参考資料「学校において予防すべき感染症の解説」を作成し,25年に公表しました。また,26年においても同規則を改正し,第一種の感染症に新たに中東呼吸器症候群及び特定鳥インフルエンザを追加しました。

(5)学校におけるアレルギー疾患への対応

 近年,アトピー性皮膚炎など児童生徒のアレルギー疾患の問題が指摘されており,学校における対応が重要となっています。平成19年に「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」及び「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」が文部科学省の監修で作成され,20年度から各学校等に配布されています。また,22年度から,学校におけるアレルギー疾患の対応の充実を図るため,教職員や指導主事などを対象とする講習会を毎年全国6か所で開催しています。26年度からは全国10か所に拡大し,同ガイドラインなどの普及啓発を一層推進しています。

(6)薬物乱用防止教育の充実

 近年の青少年の薬物乱用問題については,これまでの諸対策によって,薬物は絶対に使うべきではないと考える児童生徒の割合が高くなるなど規範意識の向上が見られ,一定の成果が見られます。しかしながら,近年,少年の薬物事犯の検挙人員及び検挙人員全体に占める割合は増加傾向にあり,大麻事犯については,平成28年中の大麻事犯全体の約46%を少年及び20歳代が占めており,27年と比較し,僅かに減少したものの,依然として,約半数を占めるなど,若者を中心に乱用されている状況がうかがえることが指摘されています。また,危険ドラッグ等,乱用される薬物が多様化していることから,今後も若者への広がりが懸念されています。
 文部科学省では,全ての中学校及び高等学校において,年に1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに,地域の実情に応じて小学校においても薬物乱用防止教室の開催に努めるなど,薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう都道府県教育委員会等を指導しています。また,薬物乱用防止教室の指導者を対象とした講習会開催の支援や,大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレットの作成・配布等,薬物乱用防止教育の推進に努めています。

(7)学校保健に関する教職員の資質の向上

 社会環境や生活環境の急激な変化が,子供の心身の健康に大きな影響を与えており,生活習慣の乱れ,心の健康や性に関する問題など子供の健康課題が深刻化・多様化しています。
 文部科学省では,学校においてこれらの健康課題に適切に対応できるよう,指導主事や教職員を対象とした講習会や全国規模の研究大会を開催するなど,学校保健に関する教職員の資質の向上を図っています。

3 学校安全の推進(※23)

(1)子供の安全に関する総合的な取組

 平成21年4月に施行された「学校保健安全法」に基づき,学校安全を取り巻く様々な課題に対して学校全体としての取組体制を整備充実させるため,文部科学省では,24年4月,「学校安全の推進に関する計画」を策定しました。この計画期間が28年度で終了することから,中央教育審議会での議論を経て,学校安全の推進の方向性として目指すべき姿や施策目標を明示した上で,新たに,学習指導要領の改訂等を踏まえた安全教育の充実方策や,第1次計画策定後の新たな安全上の課題への対応等を盛り込んだ「第2次学校安全の推進に関する計画」(※24)を策定しました(29年3月24日閣議決定)。今後は,同計画に基づき,学校安全の取組を推進することとしています。


  • ※23 防災教育については,第2部 第2章 第4節 1 参照
  • ※24 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1383652.htm

(2)学校での子供の安全確保の充実

 学校は児童生徒等が安心して学習を行うことが求められる場所であり,学校においてその安全な環境を整備し,事件・事故を防止するための取組を進める必要があります。
 このため,安全対策として実施する監視カメラや非常通報装置,自動体外式除細動器(AED)の設置などに関する経費に対して地方財政措置が講じられています。また,文部科学省では,学校における安全教育や安全管理の充実に資するため,教職員向け学校安全資料を作成しています。このほか,学校,教育委員会,道路管理者,警察などの関係機関が連携して実施する通学路の交通安全対策を促すとともに,各地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等の継続的な取組を促すなど,通学路における交通安全の確保に向けた取組を推進しています。
 また,学校の管理下で発生した様々な事故の教訓を踏まえ,平成26年度から27年度にかけて開催された「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議での議論に基づき,事故後の対応の在り方や再発防止に関する「学校事故対応に関する指針」を28年3月に取りまとめました(※25)。
 さらに,現下の国際情勢が一段と厳しさを増している中,各教育委員会等に対して,国民保護計画も踏まえた体制整備を図るとともに,これまで実施していた避難訓練と併せ,国民保護法に規定する国民の保護のための措置に係る訓練についても,各地方公共団体の危機管理担当部局と連携して推進するなど,更なる学校安全管理体制の充実を図るよう促しています。


  • ※25 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm

(3)地域ぐるみで子供の安全を守る環境整備

 学校内のみでなく登下校時を含めた子供の安全を確保するためには,地域社会全体で子供の安全を見守る体制の整備が必要です。先進事例として,例えば,セーフティプロモーションスクール(※26)の取組が挙げられます。
 また,文部科学省では,平成17年度から学校安全ボランティアを活用した地域ぐるみでの学校内外における子供の安全を見守る体制の整備に努めています。例えば,警察官OB等がスクールガード・リーダー(※27)として学校を巡回したり,学校安全ボランティアに対して警備のポイントなどを指導したりするなどの各地域における子供の見守り活動に関する取組を支援しています。


  • ※26 セーフティプロモーションスクール:学校が地域の学校安全関係者や関係機関等と連携・協力し,PDCAサイクルに基づく学校安全計画の評価と次年度計画への反映等,安全推進の取組を継続的に実践する学校を認証する大阪教育大学による取組
  • ※27 スクールガード・リーダー:学校等を巡回し,学校安全体制及び学校安全ボランティアの活動に対して専門的な指導を行う者

(4)実践的な安全教育の充実

 学校における安全教育においては,児童生徒等が自他の生命を尊重し,日常生活全般における安全のために必要な事柄を実践的に理解し,生涯を通じて安全な生活を送ることができるような態度や能力を養う安全教育を,生活安全・交通安全・災害安全のそれぞれの分野において行うことが重要です。特に,子供の安全を確保するためには,子供自身に危険を予測し,危険を回避する能力を養成するよう実践的な安全教育を推進する必要があります。このため文部科学省では,学習指導要領の改訂などを踏まえ,学校における安全教育の教職員用の参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」(平成22年3月改訂),「『生きる力』を育む防災教育の展開」(25年3月改訂)ほか,各種の教職員用の資料や教材を作成し,これらの活用を促しています。また,「防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業」において,各学校における交通安全や防犯を含めた実践的な安全教育を支援しています。
 さらに,各地方公共団体や学校において,学校安全を推進する上で必要な情報や優れた取組事例を参考にできるよう,文部科学省や各地方公共団体が作成した資料等を掲載した学校安全ポータルサイト(※28)を開設し,平成28年4月から運用しています。


  • ※28 参照:https://anzenkyouiku.mext.go.jp/

第12節 きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員等の指導体制の整備

1 教員の資質能力の向上

(1)教育公務員特例法等の一部を改正する法律

 我が国の未来を担う子供たちへの教育の充実には,教育の直接の担い手である教員の資質の向上が不可欠であり,教員が生涯にわたり学び続けられる環境を早急に整えることが必要です。一方で,近年,教員の大量退職・大量採用等による教員の年齢構成や経験年数の不均衡により,特に若手教員への知識・技能の継承が難しくなってきており,継続的な研修の充実のための環境整備を図るなど,早急な対策が不可欠です。
 また,従来,教員になる前の教育は大学,教員になった後の研修は教育委員会という,断絶した役割分担となっており,様々な課題が生じているとの指摘がなされてきました。そこで,この「断絶」から脱却するために,教育委員会と大学が,連携・協働することにより,教職生活全体を通じて,学び続ける教員を支援する仕組みが必要とされていました。
 以上のような状況や平成27年5月の教育再生実行会議第七次提言,同年12月の中央教育審議会答申を踏まえ,第192回国会に「教育公務員特例法等の一部を改正する法律案」を提出しました。同法案は国会での審議を経て28年11月に成立しました。同法では主に三つの法律を改正しています。一つ目が,公立学校の教員の採用や研修について定めている「教育公務員特例法」,二つ目が,教員として指導に当たるために必要とされる教員免許について規定している「教育職員免許法」,そして,三つ目が,学校教育関係職員の資質の向上を目的とする教員研修センターの設置根拠である「独立行政法人教員研修センター法」です。
 一つ目の「教育公務員特例法」の改正について,その主な内容は,「校長及び教員としての資質の向上に関する指標の全国的整備」と「10年経験者研修の見直し」の二点です。まず,「校長及び教員としての資質の向上に関する指標の全国的整備」については,教員の任命権者であり,採用後の教員の資質向上を担う教育委員会等が「協議会」を設け,教員の養成を担う大学との協議を経た上で,「校長及び教員としての資質の向上に関する指標」を策定し,この指標を踏まえて「教員研修計画」を策定するという制度を新たに整備しました。また,「10年経験者研修の見直し」については,新たに「中堅教諭等資質向上研修」として規定を整備することで,各任命権者が各教員の教職生活全体を通じた体系的な学びの環境を柔軟かつ適切に築けるよう実施時期を弾力化し,中堅教員として職務を遂行する上で必要な資質の向上を図ることができるようにしました。
 二つ目の「教育職員免許法」について,主な改正内容は二点あります。一点目は,普通免許状の授与におけるいわゆる教科に関する科目と教職に関する科目の大くくり化であり,二点目は,小学校の外国語の特別免許状の創設です。一点目について,現在,「教育職員免許法」においては,普通免許状の授与を受けるために,1.大学レベルの学問的・専門的内容を取り扱う「教科に関する科目」,2.児童生徒への指導法等を取り扱う「教職に関する科目」,3.教科に関する科目又は教職に関する科目を取り扱う「教科又は教職に関する科目」という科目区分が設けられています。しかし,担当する大学教員の研究分野に特化した内容の授業が行われ,必ずしも学校教育に連動した実践的な内容となっていないといった課題が指摘されてきました。そこで,「教科に関する科目」と「教職に関する科目」を統合し教職課程の大くくり化を図ることにより,教科の専門的内容と指導法を一体的に学ぶことを可能としました。また,二点目の小学校の外国語の特別免許状の創設については,次期学習指導要領において,小学校第5,6学年において教科として外国語が導入されるなど,小学校における外国語に関する指導体制の整備が喫緊の課題となっています。このような状況を踏まえ,免許状を有しないが優れた英語指導力や経験等を有する外部人材に教員となる道を拓ひらき学校に迎え入れるため,小学校の外国語の特別免許状を新たに創設しました。
 三つ目の「独立行政法人教員研修センター法」の改正は,業務に,教職員その他の学校教育関係職員に必要な資質に関する調査研究及びその成果の普及,任命権者が指標を定めようとする際の助言並びに教員免許状更新講習の認定,教員資格認定試験の実施及び教育職員免許法認定講習等の認定に関する事務を追加し,文部科学省から業務移管するとともに,その名称を「独立行政法人教職員支援機構」に改めるものです。
 このように今般の改正は,大学と教育委員会等の連携・協働を強化しつつ,教員の養成・採用・研修の各段階を通じたキャリアステージに応じた資質の向上を図る体制を整備することを目的としており,我が国の未来を担う子供たちへの教育の充実に資するものと考えています。

(2)教員の養成・採用・研修の一体的な取組

 学校教育の充実は,その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが極めて大きく,教員の資質能力の向上は子供たちの教育の充実を図る上で重要な政策課題です。子供たちに確かな学力や規範意識を身に付けさせ,社会を生き抜く力を養成する必要があるとともに,学校現場においては,アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善,ICTを用いた指導,道徳,英語,特別支援教育など新たな教育課題への対応が求められています。このため,教員としての高い使命感や倫理観とともに,こうした課題に適切に対応できる,高い専門性と実践的な指導力などを十分に備えた教員を確保する必要があります。
 このような課題を踏まえ,平成27年12月,中央教育審議会において「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い,高め合う教員養成コミュニティの構築に向けて~(答申)」が取りまとめられました。本答申等を踏まえ,第192回国会に「教育公務員特例法等の一部を改正する法律案」が提出されました。同法案は国会での審議を経て28年11月に成立しました。今後も引き続き,教職生涯にわたって資質能力を向上させていくための環境整備を図っていく必要があります。

1.教員養成における改善・充実

 上記の答申において,「大学が教職課程を編成するに当たり参考とする指針(教職課程コアカリキュラム)を関係者が共同で作成することで,教員養成の全国的な水準の確保を行っていくことが必要である」と提言されていることを踏まえ,教職課程で共通的に身に付けるべき最低限の学修内容,達成目標について,教職課程コアカリキュラムの検討を平成29年6月に行いました。
 また,平成26年度から引き続き「総合的な教師力向上のための調査研究事業」を実施しており,新たな教育課題に対応するための科目を教職課程に位置付けるための枠組みの構築に向けた取組等を支援しています。

2.教員採用における取組

 文部科学省では,真に教員としての適性を有する人材の確保の観点から,各都道府県教育委員会等における採用選考の改善を促しています。都道府県教育委員会等では,学力試験の成績だけでなく,面接試験や実技試験の実施,受験年齢制限の緩和,様々な社会経験を適切に評価する特別の選考等を通じて,人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されています。平成28年度に実施された採用選考では,個性豊かで多様な人材を確保するため,教職経験や民間企業等での勤務経験を有する者,英語に関する資格を持つ者,スポーツ・芸術での技能や実績を持つ者等を対象とした特別の選考などが実施されました(図表2‐4‐16)。

 図表2‐4‐16 平成28年度実施公立学校教員採用選考実施方法等

 また,全ての都道府県教育委員会で採用選考基準を公表するなど,採用選考の透明性や不正防止の取組を行っています。
 なお,条件附採用期間制度(※29)を適正に運用し,新規採用者の教員としての適格性を見極めるよう,各教育委員会の取組を促進しています。
 加えて,幅広い経験を持ち,優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,様々な形で学校教育に参加することも,学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。現在,教員免許状を取得していなくとも,各教科や総合的な学習の時間の一部などを担当することができる特別非常勤講師制度の活用が広がっており,平成27年度の活用件数は,全国で2万301件となっています。
 さらに,優れた社会経験のある者を学校現場に迎え入れるため,特別免許状を授与し,教諭の職に就くことができる制度が整備されています。都道府県教育委員会等が行う採用選考において,特別免許状の授与を前提とした社会人選考も行われています。また,都道府県教育委員会による特別免許状の積極的な授与に資するとともに,特別免許状所有者による教育の質を担保するため,平成26年6月に「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」を作成し,「『特別免許状の授与に係る教職員検定等に関する指針』について」(平成26年6月19日付け初等中等教育局教職員課長通知)を各都道府県教育委員会に対し発出しました。これに加えて,28年3月には特別免許状を授与する際に都道府県教育委員会が意見を聴く者について弾力化する制度改正を行いました(※30)。
 このほか,平成26年度から引き続き「総合的な教師力向上のための調査研究事業」を実施しており,特別免許状などを活用した社会人登用の仕組みの構築を支援するとともに,都道府県教育委員会等が教員志望者を対象として,新規採用教員の円滑な入職や学校における最低限の実践的指導力獲得のため行っているいわゆる「教師塾」を拡充し,学生の段階から,より実践的な指導力を育成できるよう,指導体制の検証や大学と連携したプログラム開発を行う取組を支援しています。

3.現職教員研修の充実

 教員には,その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており,様々な研修が実施されています。
 国では,各地域で学校教育において中心的な役割を担う校長・教頭・中堅教員・事務職員等に対する学校経営研修や,いじめ・道徳教育などの喫緊の重要課題について地方公共団体が行う研修の講師や企画・立案などを担う指導者を養成するための研修等により,地域の中核となるリーダーを養成しています。さらに,教員研修センターでは,「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)において,本センターの機能強化が言及されていることを受けて,新たに市町村教育委員会教育長を対象としたセミナーを開催するとともに,19の教職大学院との間で連携協力協定を締結するなど,行政や大学との強固なネットワーク構築を更に推進しました。また,27年度には「次世代型教育推進センター」を設置し,今後求められる新たな学びの指導方法等について,教員の指導力向上のための研修プログラムモデルの構築に取り組むとともに,セミナーを全国12か所で開催しています。
 なお,前述のとおり教員研修センターは,平成29年4月1日,名称を「独立行政法人教職員支援機構」に改めました。
 また,文部科学省では,平成27,28年度において,複数の学校種を通じた教育,小学校高学年における専科指導の推進,小中一貫教育の制度化に対応するため,教職大学院を活用しつつ,現職教員の研修環境の充実を図るとともに,隣接校種等の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業を実施しています。
 都道府県教育委員会等においては,教員がその経験,能力,専門分野等に応じて必要な研修を受けることができるよう,初任者研修,10年経験者研修(平成29年度からは「中堅教諭等資質向上研修」),長期社会体験研修,大学院等派遣研修等が行われています。
 加えて,教員が定期的に最新の知識技能を身に付けることで,自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得ることを目的として,平成21年4月1日から教員免許更新制が実施されています。
 更新制導入後の平成21年4月1日以降に授与される免許状(新免許状)には,10年間の有効期間が定められています。有効期間の更新は,都道府県教育委員会(免許管理者)が行い,1.大学等が行う免許状更新講習(※31)を30時間以上受講・修了した者,2.免許管理者が最新の知識技能を十分に有しており,免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者に対して認められています。
 更新制導入前の平成21年3月31日までに授与された免許状(旧免許状)については,更新制の導入後も有効期間は定められませんが,現職教員については,10年ごとの修了確認期限(※32)までに30時間以上の免許状更新講習を受講・修了することが義務付けられています。また,現職教員が,修了確認期限までに免許状更新講習を受講・修了しなかった場合は,その者が有する免許状は効力を失うこととされています。ただし,新免許状の場合と同様,免許管理者が最新の知識技能を十分に有しており,免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者は,免許状更新講習の受講義務が免除されます。なお,現職教員以外については,免許状更新講習の受講は義務付けられていません。
 当該制度は,制度施行後5年を経過した場合に制度の運用状況等について検討を加え,必要に応じ改善を行うものと法律で定められています。また教員が,グローバル化等の社会の急激な変化を受けて,現代的な教育課題に対応する指導力を身に付ける必要性が指摘されており,これに対応するため,免許状更新講習に係る枠組みや内容の見直しが求められています。このため,これまでの制度に係る諸問題を整理し,教員が職務の遂行に必要な現代的な教育課題について,その時々に応じた最新の知識・技能を修得することができるよう,専門的な見地から検討を行うとともに,今後の制度のより良い運用に向けた改善策の検討を行うため,教員免許更新制度の改善に係る検討会議を開催しました。同会議は,平成26年3月に「教員免許更新制度の改善について(報告)」を取りまとめました。本報告を踏まえ,免許状更新講習について,これまでの必修領域を精選するとともに,学校種・免許種や教職経験に応じて現代的な教育課題を適時に多くの受講者が学べ,かつ,現職研修経験に応じて履修内容を調整できる領域として選択必修領域を導入するなど,その枠組みや内容の見直しに係る省令改正を行い,28年4月から施行しています。


  • ※29 条件附採用期間制度:採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり,児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・講師については,その職務の専門性等から特に,条件附採用期間が1年間とされ,かつ,その間に初任者研修を受けることとなっている。
  • ※30 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1326555.htm
  • ※31 免許状更新講習:免許状更新講習の内容は以下の三つの領域に定められた事項となっている。
    1. 必修領域(全ての受講者が受講する領域)(6時間以上)
    2. 選択必修領域(受講者が所有する免許状の種類,勤務する学校の種類又は教育職員としての経験に応じ,選択して受講する領域)(6時間以上)
    3. 選択領域(受講者が任意に選択して受講する領域)(18時間以上)
  • ※32 修了確認期限:旧免許状所持者である現職教員等が免許状更新講習の課程を修了したことについての都道府県教育委員会の確認を受けなければならない期限。

(3)教職員評価と優秀教職員表彰,指導が不適切な教員への対応

1.人事評価に関する取組

 人事評価については,組織的な取組,業務改善,地域との協働について評価するなど学校組織全体の総合力を向上させる工夫や,教職員自身による特長や課題の認識,面談等における管理職との認識共有を通じて人材育成に資する工夫を行うなど,一層の改善充実に努めることが重要です。
 平成26年5月,地方公務員について,人事評価制度の導入等によって能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図ること等を目的として,「地方公務員法」の一部が改正され,28年4月1日から施行されました。
 従来,教育公務員を含む地方公務員の勤務評定については,「地方公務員法」等に基づき,任命権者たる教育委員会が,職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応じた措置を講ずることとされていました。今回の法改正により,勤務成績の評定に代わり,職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる人事評価制度が導入されました。人事評価制度においては,能力・業績の両面からの評価により実施され,評価基準の明示や自己申告,面談,評価結果の開示などの仕組みにより客観性等を確保しつつ,評価結果が任用,給与,分限その他の人事管理にも活用されることとなります。
 文部科学省では,これまでも,評価結果を人事,給与,優秀教職員表彰,当該教職員の資質向上に必要な研修機会の付与等に活用するよう促してきました。現在も各教育委員会において,既に能力評価や業績評価等による人事評価が実施され,評価結果が適切に活用されています。文部科学省では,各教育委員会に対して,今回の「地方公務員法」の改正の趣旨にのっとり,教職員評価を活用した人事管理に一層努めるよう促しています。

2.優秀教職員表彰に関する取組

 優秀な教職員を表彰することは,当該教職員の意欲の向上と更なる活躍につながるとともに,教職員の模範となることを通して,他の教職員の意欲及び資質能力の向上に資するものであり,学校教育全体の活性化を図るための重要な取組の一つです。平成26年度には,67都道府県・指定都市のうち59の教育委員会が優秀教員表彰の取組を実施しています。文部科学省においても,18年度から文部科学大臣優秀教職員表彰を実施してきました。28年度には,個人に加え教職員組織も表彰の対象に加えたほか,勤務環境の改善等における顕著な成果についても表彰することとしました。28年度の被表彰者については,全国の国公私立学校の現職の教職員のうち,学校教育における教育実践等に顕著な成果を上げた者や教職員組織の中から,都道府県・指定都市教育委員会などが候補者を推薦し,770人の教職員と24の教職員組織が表彰されました。

3.指導が不適切な教員への対応

 教員の指導は,心身共に発達段階にある児童生徒に大きな影響を及ぼすものであることから,指導が不適切な教員が児童生徒の指導に当たることがないようにしなければなりません。指導が不適切な教員の認定及び指導改善研修等の実施に当たっては,人事評価の結果を活用するとともに,文部科学省が取りまとめた「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(平成20年2月8日)」などを踏まえて,公正かつ適正に実施するよう,引き続き各教育委員会を促していきます。
 また,指導が不適切であるとの認定までには至らないものの,指導に課題があるとされた教員については,その資質・能力の向上のための対策に取り組むほか,条件附採用制度を適切に運用するなどして,人事管理システムの公正かつ適正な運用に努めるよう,各教育委員会に促しています(図表2‐4‐17)。

 図表2‐4‐17 指導が不適切な教員の認定者数等について(平成27年度)

(4)非違行為を行う教員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰などの非違行為は,それ自体許されないものであるだけでなく,教員に対する信頼,ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。

 体罰事案については,各教育委員会において引き続き,体罰の未然防止,徹底した実態把握及び早期対応に努めるとともに,体罰を行ったと判断された教員については,客観的な事実関係に基づき厳正な処分などを行うよう促しています。特に,児童生徒に傷害を負わせるような体罰を行った場合,児童生徒への体罰を常習的に行っていた場合,体罰を起こした教育職員が体罰を行った事実を隠蔽した場合,特別な支援を要する児童生徒に体罰を行った場合などについては,より厳重な処分を行うよう各教育委員会に対し指導しています。
 また,児童生徒に対するわいせつ行為などについては,教員として絶対に許されないものであり,各教育委員会において対策を強化するとともに,こうした非違行為があった場合には,原則として懲戒免職とするなど,厳正な対応をするよう指導しています。あわせて,文部科学省では,各教育委員会に対して,懲戒処分全般の基準を作成することや,処分事案について,児童生徒などのプライバシー保護に十分配慮しつつ,できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し,教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2‐4‐18)。

 図表2‐4‐18 公立学校教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成27年度)

(5)教職員のメンタルヘルスの保持

 学校教育は教員と児童生徒との人格的なふれあいを通じて行われるものであり,教員が心身共に健康を維持して教育に携わることが重要です。しかし,公立学校の教員の精神疾患による病気休職者数は,平成27年度においては5,009人と,19年度以降,5,000人前後で推移しており,依然として高水準であることから,教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進を図ることが喫緊の課題です(図表2‐4‐19)。
 文部科学省では,有識者による「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」を開催し,平成25年3月に最終まとめを取りまとめました。最終まとめでは,教職員のメンタルヘルス対策は,人事や学校運営と関連付けて,効果的・効率的に取り組むことが重要であり,教職員本人のセルフケア,校長等のラインによるケア,教職員が心身共に健康を維持して教育に携わることができるような良好な職場環境・雰囲気の醸成等も含めた予防的な取組を推進することが必要であるとされています。それとともに,教職員が復職する際に,心身の快復状況に加え,授業等の業務を滞りなく行えるか等の本人の状況,産業医・嘱託精神科医等の意見などを踏まえ,教育委員会において慎重に判断することや,復職後の経過措置も含めた復職支援の充実を連携させて取り組むことが必要であるとされています。
 文部科学省では,最終まとめを参考にしつつ,教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進について一層積極的に取り組むよう,各教育委員会に対して指導しています。

 図表2‐4‐19 公立学校教育職員の病気休職者数の推移

(6)民間人校長,民間人副校長・教頭制度の活用

 文部科学省では,地域や学校の実情に応じ,学校の内外から幅広く優秀な管理職を登用することができるよう,平成12年に校長の資格要件を緩和し,教員免許を持たず,教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとしています。なお,副校長については20年の設置時から,教頭については18年からそれぞれ可能となっています。
 これらの資格要件の緩和により,平成28年4月1日現在,全国の公立学校における教員出身でない校長の在職者数は140人,教員出身でない副校長・教頭の在職者数は119人となっています。

2 次世代の学校指導体制の実現に向けた取組

(1)義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善

 学校が直面する教育課題が複雑化・困難化していることに対応するため,「チーム学校」の推進や学校と地域との連携・協働については,教育再生実行会議の提言等を踏まえつつ,中央教育審議会で審議され,平成27年12月に答申(「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」,「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」,「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」)が取りまとめられました。これらの答申においては,養成・採用・研修を通じた教員の不断の資質向上とともに,学校経営を支える事務職員の役割の見直し,学校と地域の連携・協働による学校改革・地域創生など,「チーム学校」を実現し,学校の組織力・教育力を高めることの重要性が指摘されています。
 これらの提言や答申等を踏まえ,文部科学省では,平成28年1月に「『次世代の学校・地域』創生プラン」(※33)を策定しました。同プランにおいて,文部科学省の目指す方向として,一億総活躍社会の実現と地方創生の推進には,教職員定数の戦略的充実とともに,教員,事務職員,専門スタッフが適切に役割分担を行い,校長のリーダーシップの下,学校を運営すること,学校と地域が相互に関わり合い,学校を核として地域社会が活性化していくことが必要不可欠であるとの考えの下,学校と地域が一体となった体系的な取組を進めていくこととしました。
 このうち,教員の資質向上に関しては平成28年11月に「教育公務員特例法等の一部を改正する法律」(※34)が成立したところですが,さらに,29年3月には,以上を踏まえた関係法律の改正を行う「公立義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律」(以下,この節において「改正法」という。)が成立し,同年4月1日から施行されました。
 改正法のポイントは次のとおりです(※35)(図表2‐4‐20)。

1.「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の一部改正
  • 障害に応じた特別な指導(いわゆる「通級による指導」)のための基礎定数を新設
  • 日本語能力に課題のある児童生徒への指導のための基礎定数を新設
  • 初任者研修のための基礎定数を新設
  • 少人数指導等の推進のための基礎定数を新設
  • 教職員定数の加配事由に「共同学校事務室」を明示
2.「義務教育費国庫負担法」の一部改正
  • 都道府県が設置する義務教育諸学校のうち,不登校児童生徒を対象として特別の教育課程を実施するもの,夜間その他特別な時間に授業を行うもの(夜間学級)の教職員給与費を国庫負担の対象に追加
3.「学校教育法」等の一部改正
  • 学校の事務職員が主体的に校務運営に参画するよう職務規定を見直し
4.「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正
  • 学校事務を共同で処理する「共同学校事務室」の設置について制度化
  • 教育委員会に対する学校運営協議会の設置の努力義務化,学校運営の支援について協議事項に位置付け,委員に「地域学校協働活動推進員」を加えるなどの規定を見直し
5.「社会教育法」の一部改正
  • 「地域学校協働活動」に関する連携協力体制の整備や「地域学校協働活動推進員」に関する規定を整備

  • ※33 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/01/1366426.htm
  • ※34 参照:第2部 第4章 第12節 1。
  • ※35 4.については,第2部 第4章 第15節 2 参照。5.については,第2部 第3章 第3節 3 参照。

 図表2‐4‐20 「次世代の学校・地域」創生プランの実現に向けて

(2)学級編制と教職員定

 数国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため,公立の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校における1学級の児童生徒数(学級編制)や教職員の配置(教職員定数)の「標準」を定めています。公立の小・中学校等の学級編制の標準は,現在,1学級40人(平成23年度から小学校第1学年は35人)となっており,各都道府県教育委員会は,これを標準として学級編制の基準を定めることになっています。
 なお,地域の実情や児童生徒の実態に応じた柔軟な対応が可能となるよう,各都道府県教育委員会の判断で,国の標準よりも少人数の学級編制基準を定めることもできます。平成22年度以降は,全ての都道府県において国の標準を下回る学級編制の取組が実施されています(図表2‐4‐21)。

 図表2‐4‐21 平成28年度において国の標準を下回る学級編制を実施する都道府県の状況について

 文部科学省では,少人数教育の推進,いじめ問題や特別支援教育の充実といった様々な教育上の課題に対応するため,これまで幾次にもわたって学級編制の標準や教職員定数の改善を重ねてきました。平成28年度予算では,少子化等に伴い生じる教職員定数の減を見込む一方で,小学校における専科指導の充実やアクティブ・ラーニングの推進,特別支援教育や貧困による教育格差の解消など学校が抱える課題への対応,チーム学校の推進による学校の組織的な教育力の充実のため,525人の加配定数の改善を実施しました。
 平成29年度予算では,少子化に伴い生じる教職員定数の自然減等を見込む一方で,改正法の成立に伴い,これまで加配定数で措置していた部分の基礎定数化を次のとおり実施します。

  1. 障害に応じた特別の指導(通級による指導)の対象児童生徒13人に1人
  2. 外国人児童生徒等教育の対象児童生徒18人に1人
  3. 初任者研修の対象教員6人に対して1人
  4. 指導方法工夫改善加配のうち少人数教育の取組が定着している部分の約9,500人

 このうち,1.から3.については,平成38年度までの10年間で計画的に進めていくこととしており,基礎定数化に係る29年度の改善数は473人となります。この基礎定数化により,地方公共団体は,安定的・計画的な採用・研修・配置が行いやすくなるとともに,発達障害や日本語に課題のある児童生徒に対するきめ細かな指導の充実や,教員の質の向上に必要な研修体制の充実が図られるものと考えています。
 併せて小学校における専科指導やいじめ・不登校への対応,貧困等に起因する学力課題の解消,学校事務体制の強化などに必要な加配定数の増(395人)も計上しています。
 また,退職教職員や教員志望の大学生など約1万1,100人の多彩な人材がサポートスタッフとして学校の教育活動に参画する取組への支援として,「補習等のための指導員等派遣事業」を実施し,学校全体として指導体制の充実を図ることとしています。
 さらに,いじめ・不登校,子供の貧困等の学校の課題に対応するための指導体制の在り方など,教育政策の効果を評価するため,平成28年度から,有識者や意欲ある地方公共団体の協力を得つつ,教育政策の形成に関する実証研究を実施しています。

学級規模等の国際比較

 欧米諸国などと比べて,1学級当たりの児童生徒数や教員1人当たりの児童生徒数など,我が国の教育環境は依然として低い水準にあります。

(参考11学級当たり児童生徒数[国際比較])

 (参考11学級当たり児童生徒数[国際比較])

(参考2教員1人当たり児童生徒数[国際比較])

 (参考2教員1人当たり児童生徒数[国際比較])

(3)義務教育費国庫負担制度

1.義務教育費国庫負担制度

 国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため,「義務教育費国庫負担法」に基づき,義務教育に必要な経費の大半を占める教職員給与費について,原則,都道府県が負担した実支出額の3分の1を負担しています(義務教育費国庫負担制度)。これによって,地方公共団体の財政状況にかかわらず,全国どの地域においても,教職員給与費を安定的に確保することが可能となっています。
 また,義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で給与額や教職員配置に関する地方の自由度を大幅に拡大した「総額裁量制」の下で,各都道府県においては,教員を増員して少人数学級を導入するなど地域や学校の実情を踏まえた特色ある教育がより一層展開できるようになっています。

2.教員の給与

 教員の給与は,「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(いわゆる「人材確保法」)によって,一般の公務員の給与より優遇されています。昭和55年の時点では,教員の給与は,一般行政職の公務員の給与と月額で比較して7%以上優遇されていましたが,その後,この優位性は年々減少し,現在は一般行政職の公務員の給与とほぼ同水準となっています。文部科学省では,人材確保法の初心に立ち返り,教員の処遇を確保するとともに,真に頑張っている教員に報いることができるよう,めりはりのある給与体系の推進を図ることが重要と考えています。
 平成29年度の義務教育費国庫負担金においては,教員の士気を高めるためのメリハリある給与体系の推進を図る観点から,土日の部活動の適正化に向けた取組を進めつつ,部活動指導手当の増額等を確保しました。

(4)指定都市に係る県費負担教職員の給与負担等の移譲

 従来,市町村立の小学校・中学校・特別支援学校等の教職員については,都道府県が給与費を負担し,都道府県教育委員会が人事権を持っていましたが,指定都市立の学校については,これまで特例として指定都市教育委員会が人事権を持っていました。このため,指定都市においては,人事権者と給与負担者が異なるといった状態にあり,指定都市からこのような状態を解消するよう要望されていました。その後協議が行われ,平成25年11月14日には関係道府県と指定都市の間で個人住民税所得割2%の税源移譲について合意し,また,同年12月13日の中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について(答申)」においても,「指定都市に係る県費負担教職員の給与等の負担,県費負担教職員に係る定数の決定及び学級編制基準の決定については,指定都市に移譲する方向で所要の制度改正を行うことが適当である」と指摘されました。これらを背景として,「事務・権限の移譲等に対する見直し方針について」(25年12月20日閣議決定)において,指定都市に係る県費負担教職員の給与負担等を指定都市に移譲することが決定されました。
 これを踏まえ,平成26年5月に成立した「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」の中で,指定都市への給与負担等の移譲に必要な法制上の措置が講じられました。この法律を受けて,文部科学省では,28年度中に所要の法制上の整備を行ったところです。これにより29年4月1日から,指定都市に係る県費負担教職員の給与負担等が移譲されました。

(5)チーム学校の実現に向けて

 子供を取り巻く課題は複雑化・多様化しており,こうした課題に対応していくためには,組織として教育活動に取り組む「チーム学校」体制を創り上げ,学校の機能を強化していくことが必要です。文部科学省では,平成27年12月に中央教育審議会で取りまとめられた「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」で提言された三つの視点に沿って,引き続き,「チーム学校」の実現に取り組むこととしています。
 教員が,学校や子供たちの実態を踏まえ,学習指導や生徒指導等に取り組むためには,指導体制の充実が必要です。加えて,心理や福祉等の専門性を有するスタッフ(以下,「専門スタッフ」という。)について,学校の職員として,職務内容等を明確化し,質の確保と配置の充実を進める必要があります。そのため,いじめや特別支援教育等への対応のために必要な教職員定数の拡充や指導教諭の配置促進を進めることとしています。
 また,平成29年3月に「学校教育法施行規則」を改正し,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー,また,教員に加え,部活動の指導や大会への引率等を行うことを職務とする部活動指導員を専門スタッフとして法令上に位置付けました。本改正については,29年4月1日から施行されています。
 専門性に基づく「チーム学校」が機能するためには,校長のリーダーシップが重要であり,学校のマネジメント機能を今まで以上に強化していくことが求められます。そのためには,優秀な管理職を確保するための取組や,主幹教諭の配置の促進や事務機能の強化など校長のマネジメント体制を支える仕組みを充実することが求められます。平成29年3月に「学校教育法」及び「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され,事務職員の職務について,事務をつかさどることとし,その専門性を生かしてより主体的・積極的に校務運営に参画することを目指すほか,学校の機能強化を目的として事務処理の更なる効率化を図るため,共同学校事務室が法令上に位置付けられました。本改正法については,29年4月1日から施行されています。
 教職員がそれぞれの力を発揮し,伸ばしていくことができるようにするためには,人材育成の充実や業務改善の取組を進めることが重要です。そのため,人事評価の結果の処遇や研修への適切な反映や,「学校現場における業務改善のためのガイドライン」(※36)等を活用した研修の実施,小規模市町村において,専門的な指導・助言を行う指導主事の配置充実等に取り組むこととしています。

第13節 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興

1 幼稚園教育の現状

 幼児期は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期であり,このような時期に行われる幼児教育は非常に重要なものです。
 幼稚園は,満3歳から小学校就学前までの幼児であれば,誰でも入園することができる学校であり,我が国の幼児教育の中核としての役割を担っています。平成28年5月1日現在,全国で1万1,252園の幼稚園があり,約134万人の幼児が在園しています。全国の5歳児のうち,半数が幼稚園に就園しており,また,3歳児の就園率については増加傾向にあります(図表2‐4‐22,図表2‐4‐23,図表2‐4‐24)。

 図表2‐4‐22 幼稚園数及び幼稚園児数等

 図表2‐4‐23 幼保連携型認定こども園数及び園児数等

 図表2‐4‐24 幼稚園就園率の推移


  • ※36 参照:第2部 第4章 第15節 3 (2)

2 幼稚園の教育活動・教育環境の充実

(1)幼児教育の質の向上

 幼児教育の質の向上を図るため,平成18年の「教育基本法」の改正において幼児期の教育に関する規定を設け,また19年の「学校教育法」の改正において,幼稚園が義務教育及びその後の教育の基礎を培う学校であることが明確化されました。
 さらに,これらの法改正や社会状況の変化等を踏まえ,平成20年3月に幼稚園教育要領の改訂を行い,21年4月から実施しています。
 幼稚園教育要領は,全国的に一定の教育水準を確保するとともに,実質的な教育の機会均等を確保するため,幼稚園が編成する教育課程等の大綱基準として,国が「学校教育法」等に基づいて定めるものです。現行の幼稚園教育要領では,幼児期の発達の特性を踏まえて,「健康」,「人間関係」,「環境」,「言葉」,「表現」の5領域による視点から,幼児が自発的・主体的に環境と関わりながら直接的・具体的な体験を通して,幼稚園修了までに育つことが期待される生きる力の基礎となる心情,意欲,態度などを育んでいくことを目指しています。
 また,幼稚園教育要領については,子供の育ちの変化や社会の変化に対応し,おおむね10年ごとに見直しを行ってきています。平成26年11月に文部科学大臣から「初等中等教育における教育課程の基準の在り方について」諮問を受け,中央教育審議会において28年12月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」が取りまとめられました。答申の内容を踏まえ,国民の皆様からの意見募集を経て,29年3月末には文部科学大臣から新しい幼稚園教育要領が公示されました。新しい幼稚園教育要領においては,幼稚園教育において育みたい資質・能力(「知識及び技能の基礎」,「思考力,判断力,表現力の基礎」,「学びに向かう力,人間性等」)を明確化しました。また5歳児修了時までに育ってほしい具体的な姿を「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として明確化し,小学校と共有することにより幼児期の教育と小学校の教育の接続の更なる推進を目指します。その他,幼児一人一人の良さや可能性を把握するなど幼児理解に基づいた評価や障害のある幼児や海外から帰国した幼児等の幼稚園生活への適応など特別な配慮を必要とする幼児への指導の充実を図るとともに,近年の子供の育ちをめぐる環境の変化等を踏まえた内容が示されました。
 さらに,文部科学省では,「幼稚園における学校評価ガイドライン〔平成23年11月改訂〕」を示しており幼稚園の特性に応じた学校評価を推進することによって幼稚園教育の質の向上を図っています。
 29年度においては新しい幼稚園教育要領の周知・徹底のため国及び都道府県において説明会を開催するとともに,新しい幼稚園教育要領の内容を踏まえた指導方法等に関する調査研究事業などを実施します。
 さらに,平成28年度より,都道府県や市町村における,研修等の拠点となる幼児教育センターの設置や,各園を巡回して指導・助言等にあたる幼児教育アドバイザーの配置など,地方公共団体における幼児教育の推進体制の構築を推進するモデル事業を実施するとともに,国・地方公共団体の幼児教育振興策の政策立案を行う上で必要となる基礎的データの収集・分析や政策効果に関する研究を行うための国の調査研究拠点として国立教育政策研究所内に「幼児教育研究センター」を設置しました。

(2)幼児教育無償化に向けた取組の推進(幼稚園就園奨励事業の充実)

 「経済財政運営と改革の基本方針2016」(平成28年6月2日閣議決定)においては,「幼児教育の振興に取り組む」とされ,「無償化に向けた取組を財源を確保しながら段階的に進める」こととされています。
 文部科学省では,幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や公私立幼稚園間における保護者負担の較(こう)差の是正を図ることを目的として,保育料(入園料を含む。)を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,幼稚園就園奨励費補助金によりその所要経費の一部を国庫補助しています。
 平成28年度は,27年7月の「幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議」の取りまとめを踏まえ,「環境整備」と「財源確保」を図りつつ多子世帯及び低所得世帯の補助拡充を行いました。
 具体的には,市町村民税所得割課税額7万7,100円以下(年収約270万円から360万円未満相当)の世帯について,第1子の年齢にかかわらず第2子の保育料を半額,第3子以降の保育料を無償化しました。また,ひとり親世帯等の保護者負担軽減について,市町村民税非課税世帯(年収約270万円未満相当)は保育料を第1子から無償化し,年収約270万円から約360万円未満相当の世帯は第1子の保育料を半額,第2子以降の保育料を無償化とする特例措置を創設しました。
 平成29年度予算においては,年収約270万円未満相当の世帯について,第2子の保育料を無償化するとともに,年収約270万円から約360万円未満相当のひとり親世帯等の第1子に係る保護者負担について,年収約270万円未満相当の世帯の第1子と同じく月額3,000円となるよう軽減措置を拡充することとしています。また,年収約270万円から約360万円未満相当のその他の世帯についても,第1子の保育料を月額1万6,100円から月額1万4,100円,第2子の保育料を月額8,050円から7,050円に引き下げられるよう国による補助拡大を行うこととしています。
 なお,幼稚園就園奨励費補助事業と同様に,子ども・子育て支援新制度においても,保護者の所得状況に応じた負担軽減を図る措置を講じています。

3 子ども・子育て支援新制度の施行

(1)子ども・子育て支援新制度の概要

 子ども・子育て支援新制度(以下,「新制度」という。)は,「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指すという考え方の下,全ての子ども・子育て家庭を対象に,幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援の「量的拡充」と「質の向上」を進めていくために創設された制度であり,平成27年4月に開始されました。
 この制度のポイントは,次のとおりです。

  1. 幼稚園・保育所・認定こども園に対する財政支援の仕組みを統一し(「施設型給付」を創設),施設の類型や規模にかかわらず安定した経営となるようにしたこと
  2. 幼保連携型認定こども園について認可・指導監督を一本化するなど認定こども園制を改善したこと
  3. 地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ったこと(13の支援メニューを設定)
  4. 住民に最も身近な市町村を実施主体としたこと
  5. 消費税率の引上げによる増収分を活用し,量・質の両面から社会全体で子育てを支えること
  6. 内閣府に「子ども・子育て本部」を設置し,新制度の所管を一元化していること

(2)私立幼稚園と新制度

 この新制度は,従前の私立幼稚園に関する諸制度(私学助成等)と大きく異なる部分もあることから,私立幼稚園については,地域の実情や収支の見通し等を踏まえて,自由に新制度への移行を選択できることになっています。
 また,私立幼稚園が新制度に移行する際には,1.幼稚園のまま移行するか,2.保育機能を付加した認定こども園となって移行するかを選ぶことになります。なお,認定こども園となって移行する場合には「幼保連携型」と「幼稚園型」のいずれの類型となるかを選択することになります(図表2‐4‐25)。
 平成28年度までに全私立幼稚園(8,119園)中,29.2%(2,387園)が新制度に移行し,29年度までには更に637園増の,37.2%(3,024園)の幼稚園が移行する見込みとなっております。また,平成29年度に新制度への移行予定の園を含めた各園が選ぶ施設類型の割合は,図表2‐4‐26のとおりであり,各園が地域の実情等を踏まえて施設類型を選択していることが分かります。
 文部科学省では,内閣府等と連携しつつ,移行を希望する園が円滑に移行できるよう環境整備を行うこととしており,幼稚園が有する移行への懸案事項を踏まえ様々な取組を行ってきました。例えば,1.移行後の収入面の不安への対応として,大規模園における加算の充実や公定価格試算ソフトの改善等,2.事務負担の増大への懸念への対応として,移行準備に係る事務経費の補助の創設や大規模園における事務職員の配置の充実等,3.人材不足への対応として,幼稚園における預かり保育に対する補助制度である「一時預かり事業(幼稚園型)」に係る職員配置要件の緩和等を行ってきております。
 これらの取組により,円滑な移行に向けた環境を整えてきており,移行した園からは,「収入が増加し経営面でも安定した」,「職員数の増加や職員の処遇改善につながった」等の声も多く聞こえてきているところです。

 図表2‐4‐25 新制度実施後の私立幼稚園の選択肢

 図表2‐4‐26 平成29年度までに新制度に移行する私立幼稚園の施設類型

(3)平成29年度予算の内容と今後の対応方針

 平成29年度予算においては,消費税の引上げが延期され,厳しい財政事情の中,子ども・子育て支援に関する「社会保障の充実」として,6,942億円を確保し,これまでに引き続き,0.7兆円ベースの量的拡充・質の向上を全て実施します。
 これに加え,平成29年度においては,より質の高い幼児教育を実現するため,一人一人の幼稚園教諭等が自らの中長期的なキャリアの道筋を見据えながら長く働くことができるよう,1.全職員を対象とした更なる「質の向上」の一環としての2%の処遇改善,2.技能・経験を積んだ職員に対する追加的な処遇改善(中核リーダー・専門リーダー:4万円,若手リーダー:5,000円),3.人事院勧告を踏まえた待遇改善(幼稚園教諭:1.3%の処遇改善)を実施します。また,幼稚園における待機児童の受入れ促進等を図るため,一時預かり事業(幼稚園型)について,長時間・長期休業期間中の預かりへの補助の増額も併せて実施します。文部科学省では,移行を希望する園が円滑に移行することができるよう,今後とも,制度全般やこれまでの対応等に関する周知を継続するとともに,事業者・地方公共団体の意見・要望を丁寧に伺いながら,必要な制度・運用の改善に努めていきます。

第14節 障害のある子供一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進

1 特別支援教育をめぐる現状

 障害のある子供については,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の障害の状態などに応じ,特別な配慮の下で適切な教育を行う必要があります。このため,障害の状態などに応じ,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級において,特別の教育課程や少人数の学級編制の下で,特別な配慮を持って作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備などを活用して指導が行われています。また,通常の学級においては,障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」(※37))のほか,習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法,特別支援教育支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われています。
 平成28年5月1日現在,特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒の総数は約45万人です。このうち,義務教育段階の児童生徒は約38万7,000人であり,これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約3.9%に当たります(図表2‐4‐27)。特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒は年々増加しています。
 また,通常の学級においても,発達障害のある児童生徒が在籍しています。文部科学省が平成24年12月に実施した調査によると,公立小・中学校の通常の学級に在籍する,知的な遅れはないものの発達障害の可能性のある児童生徒は,6.5%程度と推計されています。そのため,発達障害のある児童生徒をめぐっては,学校生活における早期からの支援に対する要望が高まっています。

 図表2‐4‐27 特別支援教育の概念図(義務教育段階)


  • ※37 通級による指導:小・中学校において,学習障害・注意欠陥多動性障害・自閉症等のある児童生徒を対象として,通常の学級に在籍し,主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら,障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態

2 特別支援教育を推進するための取組

(1)特別支援教育の在り方に関する検討

 「障害者の権利に関する条約」は,平成18年12月に国連総会で採択され,20年5月に発効しました。日本は,19年9月に署名し,26年1月に批准しました。同条約では,「インクルーシブ教育システム」の理念が提唱されており,この理念の実現に向け,文部科学省では,24年7月の中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」等を踏まえ,障害のある児童生徒等の就学手続について,特別支援学校の就学を原則とする仕組みから,市町村の教育委員会が,障害の状態,教育上必要な支援の内容,地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して,総合的な観点から就学先を決定する仕組みに改正しました。
 また,「障害者の権利に関する条約」の批准に向けて,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が平成25年に成立し(28年4月1日施行),差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の不提供の禁止が法律上に明記されました。これを受けて,政府全体としての基本方針が策定されたほか,文部科学省においても,職員が適切に対応するための要領(「対応要領」),所管する事業者(学校法人等)が適切に対応するための指針(「対応指針」)を27年11月に策定しました。
 また,平成29年3月には,「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」が改正され,小・中学校等において,通級による指導に係る教員定数が自動的かつ確実に措置されるよう,29年度から38年度までの10年間で段階的に基礎定数化を図ることとしています。
 さらに,高等学校においても,小・中学校のように通級による指導の実施を可能とすべき旨が各種の報告書において提言されるようになりました。これを受け,協力者会議において高等学校における通級による指導の制度化について検討を行い,平成28年に関係する省令等の改正を行った上で,30年度から施行することとしました。

(2)地域・学校における支援体制の整備―発達障害を含む障害のある子供たちへの支援―

1.特別支援教育の充実のための体制整備

 文部科学省では,発達障害を含む障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため,学校における体制の整備や留意事項などを示し,学校や教育委員会などの取組を促進しています(※38)。また,障害のある幼児児童生徒への支援体制の整備,巡回相談や専門家チームによる支援,研修体制の整備・実施,関係機関との連携など,国も特別支援教育の体制整備の推進に係る経費の一部を補助しています。
 平成27年度及び28年度「特別支援教育体制整備状況調査」によると,小・中学校においては,「校内委員会」の設置,「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており,「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成についても,着実な取組が進んでいます(図表2‐4‐28)。

 図表2‐4‐28 特別支援教育の現状~学校における支援体制の整備状況・課題~

2.発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援

 発達障害の可能性のある児童生徒の多くは通常の学級に在籍しているため,早期に発見し,切れ目ない支援を行うことが大切であるとともに,全ての教職員が発達障害に関する一定の知識・技能を有していることが必要とされています。平成28年に改正された「発達障害者支援法」においても,新たに医療・福祉・教育・労働などの関係機関の連携により,切れ目なく支援を行うこと,また,教育分野についても,発達障害児に対する適切な教育的支援を行うことが規定されています。
 文部科学省では,発達障害の可能性のある児童生徒を支援するため,平成28年度から,学校と福祉機関との連携支援,支援内容の共有方法に関する調査研究事業や,障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」)の担当教員に対する研修体制を構築し,必要な指導方法を研究する事業を新たに実施しています。
 また,平成29年3月には,教育委員会や学校,保護者等に向けた「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」を策定し,公表しました。

3.自立と社会参加を推進するための職業教育等の充実

 障害者が,生涯にわたって自立し社会参加していくためには,企業などへの就労を支援し,職業的な自立を果たすことが重要です。しかし,近年,特別支援学校高等部卒業者のうち,福祉施設等入所者の割合が約63%に達する一方で,就職者の割合は約29%となっており,職業自立を図る上で厳しい状況が続いています(図表2‐4‐29)。この背景には,特別支援学校高等部卒業後の就職者数は増加しているものの,特別支援学校高等部在籍者数も大幅に増加しており,就職者の割合が微増にとどまっていることなどが挙げられます。
 障害者の就労を促進するためには,教育,福祉,医療,労働などの関係機関が一体となった施策を行う必要があります。文部科学省では,厚生労働省と連携して,都道府県教育委員会等に対し,就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用したり,福祉関係機関と連携を図り就労への円滑な移行を図ったりするといった取組の充実を促しています。

 図表2‐4‐29 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

4.障害のある児童生徒の教材の充実

 障害のある児童生徒について,将来の自立と社会参加に向けた学びの充実を図るためには,障害の状態や特性を踏まえた教材を効果的に活用し,適切な指導を行うことが大切で文部科学白書2016185第第第初等中等教育の充実す。文部科学省では,平成26年度から学習上の支援機器等教材の活用を促進する事業を開始し,児童生徒の障害の状態等に応じて使いやすい支援機器等教材の研究開発を支援するとともに,支援機器等教材を活用した指導方法に関する実践的な研究を実施しています。

5.公立幼稚園,小・中・高等学校における特別支援教育支援員の配置

 各教育委員会では公立幼稚園,小・中・高等学校に,障害のある児童生徒に対する学校生活上の介助や学習活動上の支援などを行う特別支援教育支援員の配置を行っています。特別支援教育支援員の配置に係る経費については,地方財政措置が講じられています。文部科学省では,特別支援教育支援員の活用事例などの参考情報をまとめたパンフレットを各教育委員会に配布するなど,特別支援教育支援員の配置を促進しています。
 各教育委員会においては,こうした財政措置などを有効に活用し,全国的に特別支援教育支援員の配置数増加が図られています。平成28年5月1日現在の全国の配置数は,公立幼稚園で6,874人,公立小・中学校で4万9,023人,公立高等学校で616人となっています。

6.障害の重度・重複化への対応

 特別支援学校に在籍する児童生徒の障害については,重度・重複化が進んでおり,一層適切な対応が必要です。特別支援学校では,現行の学習指導要領等に基づき,障害の重度・重複化に対応した適切な教育が行われています。

7.特別支援学校等における医療的ケア

 特別支援学校等には,日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており,学習や生活を行う上で適切に対応することが必要です。
 現在,「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき,特別支援学校等の教員も一定の条件の下でたんの吸引等の医療的ケアをすることができることとされています。文部科学省では,特別支援学校などにおいて,医療的ケアを必要とする児童生徒などの健康と安全を確保するに当たり留意すべき点などについて整理した通知を発出しています。
 平成28年度現在,医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が公立特別支援学校に8,116人,公立小・中学校に766人在籍しています。文部科学省では,特別支援学校等における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため,看護師の配置に必要な経費の一部を補助しています。

8.就学支援

 文部科学省及び都道府県・市町村教育委員会では,障害のある児童生徒などの就学を支援するため,「特別支援学校への就学奨励に関する法律」などに基づき,特別支援教育就学奨励制度を実施しています。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などの就学に関する特殊事情を考慮して,保護者などの経済的負担を軽減することを目的とし,保護者等の負担能力に応じて,通学費や教科用図書購入費,寄宿舎費など特別支援学校等の就学に必要な経費の全部又は一部を負担しています。


  •  ※38 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm

(3)教育課程における特別支援教育

 幼稚園,小・中・高等学校における特別支援教育については,学習指導要領等において,個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的・組織的に行うこととしています。
 また,平成29年3月31日に告示した次期小学校学習指導要領等においては,1.特別支援学級や障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」)等において特別な教育課程を編成する際の配慮事項,2.特別支援学級に在籍する児童生徒や障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」)を受ける児童生徒については,個別の教育支援計画や個別の指導計画を全員作成し,活用すること,3.各教科等において,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を行うことなどの充実を図ったところです。さらに,29年4月28日に告示した次期特別支援学校の学習指導要領等においては,障害のある子供たちの学びの場の柔軟な選択を踏まえ,幼稚園,小・中・高等学校の教育課程との連続性を重視するとともに,障害のある子供たちが学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため,発達段階を踏まえた「自立活動」等の内容を充実させています。

(4)交流及び共同学習の充実

 障害のある子供と,障害のない子供や地域の人々が活動を共にすることは,全ての子供の社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく,地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっています。このため,現行の学習指導要領等では,「障害者基本法」も踏まえ,各学校において,障害のある子供とない子供との交流及び共同学習の機会を設けることなどを規定しています。

(5)教員の専門性の向上

 平成28年5月1日現在,特別支援学校の教員の特別支援学校教諭免許状等の保有率は全体で75.8%となっており,特別支援教育に関する教員の専門性の向上が一層求められている中で,専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっています。
 このため,文部科学省では,各都道府県教育委員会等に対して,特別支援学校教諭免許状等の保有率の向上に向けて,採用,研修,配置等に当たっては免許状の保有状況を考慮することなどを要請しています。また,特別支援学校の教員の専門性を向上させることを目的として,平成18年度から各都道府県の教員等を対象とした研修を実施するなどの取組を行っています。

(6)国立特別支援教育総合研究所における取組

 国立特別支援教育総合研究所は,我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして,国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動や,各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に専門的な研修を行っています。また,インターネットを通じて,通常の学級の教員を含め,障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教員の資質向上の取組を支援するため,研修講義の配信や特別支援学校教員の免許状保有率向上に資する免許法認定通信教育を実施しています。また,全ての学校をはじめとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため,発達障害に関する情報の発信,学校における合理的配慮の実践事例の提供及び障害の状態や特性等に応じた教材や支援機器等の活用の促進のため,以下の取組を推進し,情報発信を行っています。

1.発達障害教育情報センター(※39)

 教育関係者や保護者等にウェブサイトを通じて発達障害に関する各種教育情報を提供したり教員向けの研修講義を配信したりしています。

2.インクルーシブ教育システム構築支援データベース(※40)

 学校における合理的配慮の提供に係る実践事例を公表し,特別支援教育の一層の推進につなげています。

3.特別支援教育教材ポータルサイト(※41)

 基礎的環境整備(合理的配慮の基礎となる環境整備)の一環として,教材や支援機器等の活用に関する様々な情報を集約・管理し,発信するためのポータルサイトです。
 このほか,平成28年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し,地域や学校が直面する課題を研究テーマとし,その解決を目指す「地域実践研究」や,諸外国の最新情報の発信等を通して,地域や学校における取組を強力に支援しています。


  • ※39 参照:http://icedd.nise.go.jp/
  • ※40 参照:http://inclusive.nise.go.jp/
  • ※41 参照:http://kyozai.nise.go.jp/

ColumnNo.11 平成28年度の特別支援教育をめぐるトピックについて

 近年,特別支援教育の社会への浸透は大きく前進しているところですが,平成28年度においても大きな変化がありました。
 まず,政府全体の動きとして,平成28年当初より,「障害者差別解消法」が施行されました。このことにより,「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって作り出されているものであり,社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」に基づく制度が本格的にスタートしました。
 次に,文部科学省の動きとして,初等中等教育段階では,「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」が改正され,平成29年度より障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」)の担当教員の基礎定数化が図られることとなりました。これまで,通級による指導の担当教員については,毎年度予算の状況に応じて措置される加配定数が活用されていましたが,29年度からは,通級による指導を受けている児童生徒13人に対して教員1人の割合で,確実に措置される基礎定数に10年掛けて切り替わることになりました。このことにより,通級による指導の充実につながることが期待されます。
 また,高等学校における通級による指導を制度化するための省令等の改正を行い,平成30年度から施行することとしています。
 さらに,高等教育段階では,「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し,「障害者差別解消法」の施行を踏まえた高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方について検討を行い,その結果を「第二次まとめ」として取りまとめ,関係者の理解や取組の充実を促しています。
 また,これらの学校教育施策のみならず,学校卒業後も含め,障害者の生涯学習(教育,文化,スポーツ)を通じた生きがいづくり,地域とのつながりづくりを進めるよう,文部科学省の障害者施策を見直すこととしました。
 その一環として,2020(平成32)年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典を開催する「Specialプロジェクト2020」を推進することとしています。平成28年9月には,そのプレイベントとして,リオデジャネイロパラリンピック(ボッチャ団体)銀メダリストや特別支援学校の児童生徒の参加の下,「文部科学省ボッチャイベント」を開催しました。政府からは松野文部科学大臣のほか,丸川東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣,萩生田内閣官房副長官も参加しました。また,同年10月には「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」の中で,障害者の優れた芸術活動をテーマとしたシンポジウム,展覧会やバリアフリー映画上映会などを開催しました。
 また,障害者の生涯学習の推進のための具体的方策について検討するため,平成28年11月から12月に省内にタスクフォースを設置し,報告を取りまとめ公表するとともに,文部科学大臣が文部科学省幹部級職員に向けて講話を行い,全省を挙げて障害者施策の企画立案を進めていくことを指示しました。これを受けて,省内に「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置し,今後,障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実に向け関係部局と連携した進学・就職を含む切れ目ない支援体制の整備,障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する特別支援教育,障害者スポーツや障害者の文化芸術活動の振興等の施策を横断的かつ総合的に推進していくこととしています。

第15節 地方教育行政の在り方と地域とともにある学校づくり

1 教育委員会制度

 教育委員会は,地方教育行政の中心的な担い手であり,地域の学校教育,社会教育,文化,スポーツなどに関する事務を担当する機関として,地域の教育行政における重要事項や基本方針を決定しています。教育委員会は,教育における政治的中立性,継続性・安定性の確保や,地域住民の多様な意向の反映を実現するため,地方公共団体の長から独立した合議制の執行機関として,全ての地方公共団体(都道府県及び市町村)に置かれています。
 従来,教育委員会制度に対しては,教育委員長と教育長の間で責任の所在が不明確であることなどの課題が指摘されていました。このため,教育再生実行会議の提言や中央教育審議会の答申を踏まえて,平成26年6月,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し,教育委員会制度を刷新しました。
 新教育委員会制度では,教育行政の責任の明確化を図るため,教育委員会を代表する委員長と事務局を指揮監督する教育長を一本化した新たな責任者(新教育長)を設置しました。また,教育委員による新教育長へのチェック機能を強化したほか,地方公共団体の長が,教育,学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めることとするとともに,地方公共団体の長と教育委員会によって構成される総合教育会議を設けることとしました(図表2‐4‐30)。このほか,いじめによる自殺の防止等,児童生徒等の生命や身体への被害の拡大又は発生を防止する必要がある場合に,文部科学大臣が教育委員会に対して指示ができることを明確にしました。改正法は,平成27年4月1日から施行されています。
 新教育長の任命状況は,平成28年9月1日時点で全体の約5割程度であり,30年度中には全ての地方公共団体で新教育長が任命されることとなります。
 文部科学省では,新制度への移行を踏まえ,新教育長,教育委員の資質・能力の向上を図るための研修機会の拡充等に努めているところです。

 図表2‐4‐30 教育委員会の組織

2 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の推進

(1)地域とともにある学校づくり

 社会総掛かりでの教育の実現を図る上で,学校は,地域社会の中でその役割を果たし,地域と共に発展していくことが重要です。学校と地域がパートナーとして連携・協働するために,これからの公立学校は「地域に開かれた学校」から一歩踏み出し,地域でどのような子供たちを育てるのか,何を実現していくのかという目標やビジョンを地域住民等と共有し,地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していく必要があります。
 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は,平成16年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正によって導入されました。コミュニティ・スクールには,保護者や地域住民等を委員とした学校運営協議会が教育委員会により設置されます。学校運営協議会は,校長が作成する学校運営の基本的な方針について承認を行うこと,学校運営全般について教育委員会・校長に意見を述べること,教職員の任用に関して任命権を持つ教育委員会に意見を述べることができます。この制度を導入することにより,地域の声を学校運営に生かし,地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことができます(図表2‐4‐31)。

 図表2‐4‐31 コミュニティ・スクールのイメージ

(2)コミュニティ・スクールの設置状況

 平成28年4月1日現在,コミュニティ・スクールは,27年度から417校増え,全国で2,806校となっており,着実に全国に広まりつつあります(図表2‐4‐32)。また,コミュニティ・スクールを設置している教育委員会の数も,294と増加しています。

 図表2‐4‐32 コミュニティ・スクール指定校数の推移

(3)国の動向とコミュニティ・スクール推進のための具体的方策

 平成27年12月に中央教育審議会において取りまとめられた「新しい時代の教育と地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)」において,学校における地域との連携・協働体制を組織的・継続的に確立する観点から,コミュニティ・スクールの一層の推進が提言されました。それを踏まえ,第193回国会において,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部が改正されました。主な改正内容は次のとおりです。

  1. 各教育委員会は,所管する学校全てに学校運営協議会を置くように努めること。また,小中一貫教育など複数の学校が相互に密接な連携を図る必要がある場合には,複数の学校で一つの学校運営協議会を置くことができること。
  2. 学校運営協議会では,学校運営への必要な支援についての協議も行うこととして,そのような活動を行う者を委員として加えること。また,委員の任命に当たって校長が意見申出を行えるとしたこと。
  3. その他,教職員任用に関する学校運営協議会意見の細則を教育委員会規則で定めることとしたことや,協議会における協議結果等を保護者や地域住民等への情報提供に努めること。文部科学省では,本法律の改正を受け,全ての公立学校にコミュニティ・スクールの導入を目指すために,以下の取組を推進しています。
    1. コミュニティ・スクール導入時の運営体制づくりへの支援及び補助事業の実施
    2. 導入の実践経験のあるコミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)の派遣
    3. 「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」や制度等説明会の実施
    なお,文部科学省ウェブサイト及びFacebookには,コミュニティ・スクールに関する情報を掲載しています(※42)。

  • ※42 参照:
    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/index.htm
    https://www.facebook.com/community.school.mext/

3 自律的・組織的学校運営体制の構築

(1)学校評価の推進

 学校評価は,各学校が自らの教育活動等の成果や取組を不断に検証することによって,1.学校運営の組織的・継続的な改善を図ること,2.各学校が保護者や地域住民等に対し,適切に説明責任を果たし,その理解と協力を得ること,3.学校に対する支援や条件整備等の充実につなげることを目的として行われます。「学校教育法」及び「学校教育法施行規則」では,各学校に対して,自己評価の実施・評価結果公表の義務,学校関係者評価の実施・評価結果公表の努力義務,評価結果の設置者への報告義務等を定めています。
 文部科学省では,各学校や設置者における取組の参考に資する「学校評価ガイドライン」を策定しており,平成28年3月には小中一貫教育の実施を踏まえ,本ガイドラインを改訂しました。また,好事例の普及・啓発や,学校評価に係る指導的立場にある教育行政職員に対する研修等を実施しており,文部科学省ウェブサイトには,学校評価の実施状況や調査研究事業の報告書,教育委員会における取組事例等を掲載しています(※43)。


  • ※43 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-hyoka/

(2)学校現場における業務改善の推進

 今日の学校を取り巻く環境は複雑化・困難化しており,貧困問題への対応や保護者からの要望への対応など,学校に求められる役割も拡大しています。また,教育の質の向上のための授業革新や様々な教育課題への対応も求められているところです。
 平成18年度に文部科学省が実施した「教員勤務実態調査」によると,教員の勤務時間が以前の調査時よりも増加しており,授業の準備に十分な時間を確保できないという状況にあります。さらに,2014(平成26)年に公表された「OECD国際教員指導環境調査」(TALIS:タリス)では,日本の中学校における教員の1週間当たりの勤務時間は約54時間と参加国・地域中最長(調査に参加した国・地域の平均は約38時間)であり,中でも授業以外の諸活動に従事する時間が全参加国・地域の平均よりも長いということが明らかとなりました。
 こうした状況に対応して,質の高い教育を行うために,教員の負担を軽減し,子供と向き合う時間を確保することが重要です。このためには,校長のリーダーシップの下,教職員の役割分担の明確化などを通じて業務を効率化するなど,組織的・機動的な学校運営を実践していくことが一層重要です。
 このため,文部科学省では,平成26年度に実施した教職員の業務実態に関する調査の結果(図表2‐4‐33)を基に,27年7月に「学校現場における業務改善のためのガイドライン」を策定しました。同ガイドラインにおいては,学校現場における様々な業務の改善に関する基本的な考え方と改善の方向性を示すとともに,先進的な取組をしている地方公共団体の例を紹介しており,各地方公共団体の取組の参考となることを期待しています。また,「国や教育委員会からの調査やアンケート」への対応が,特に教職員にとって負担感の高い業務となっていると示されたことから,各教育委員会に対し,学校現場に対して行う調査の必要性を検討し,厳選するよう依頼しています。同時に国においても,従前より,学校現場を対象とする調査についての縮減・見直しに取り組んできたところですが,更なる調査の見直しに努めることとしています。
 平成28年6月には,省内に設置したタスクフォースにおいて,学校現場における業務の適正化に向けた報告書(図表2‐4‐34)を取りまとめ,重点的に講ずべき改善方策を示し,取組を推進しています。また,同年7月には「学校現場における業務改善のためのガイドライン」を踏まえた各地方公共団体の取組状況についてフォローアップ調査を行い,結果を公表しました。
 さらに,平成29年1月に,文部科学大臣から,「重点モデル地域を指定し,学校現場の業務改善を加速するためのプロジェクトの開始」,「部活動の適正化の推進」,「業務改善等に知見のある有識者や教育関係者等を業務改善アドバイザーとして派遣する仕組みの創設」などを柱とする取組方針を発表しました。文部科学省では,同方針に基づいて取組を力強く進めているところであり,今後も,学校現場の業務改善に関する地方公共団体の着実な取組を促していくとともに,好事例・エビデンスの収集を引き続き行い,「学校マネジメントフォーラム」の実施等を通じて,全国への発信・普及を図ることとしています。
 なお,平成29年4月,文部科学省が発表した「教員勤務実態調査」(28年度)の速報値では,調査の対象としたいずれの職種(※44)においても,18年度に実施した前回の調査に比べて,勤務時間が増加していることが明らかになりました。速報値によると,教諭の1週間当たりの平均勤務時間は,小学校で57時間25分,中学校で63時間18分となっています(図表2‐4‐35)。文部科学省としては,上述のように,教員の長時間勤務に支えられている学校現場の状況は既に限界にきていると認識していましたが,こうした結果により,改めて,看過できない大変深刻な実態が裏付けられました。
 このため,文部科学省では,教員の勤務時間の短縮に向けた具体的かつ実効性ある取組を早急に進めるべく,平成29年5月から,有識者や関係団体からのヒアリングを実施し,論点の整理を始めています。その上で,中央教育審議会において,教員の働き方改革に資する方策についての総合的な検討をお願いし,結論の出たものから逐次実行段階に移していくこととしています。

 図表2‐4‐33 教員の業務実態に関する調査結果

 図表2‐4‐34 次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース報告【概要】

 図表2‐4‐35 平成28年度教員勤務実態調査集計(速報) 1

 図表2‐4‐35 平成28年度教員勤務実態調査集計(速報) 2


  • ※44校長,副校長,教頭,主幹教諭,指導教諭,教諭,講師,養護教諭,栄養教諭

第16節 少子化に対応した活力ある学校づくりの推進

 学校教育においては,児童生徒が集団の中で,多様な考えに触れ,認め合い,協力し合い,切磋琢磨(せっさたくま)することを通じて一人一人の資質や能力を伸ばしていくことが重要であり,小・中学校では一定の集団規模が確保されていることが望まれます。そのため文部科学省では,「学校教育法施行規則」及び「義務教育施設費負担法施行令」に基づき,公立小・中学校の適正規模や適正配置について,標準等を設定してきました(学校規模:12から18学級,通学距離:小学校4km以内,中学校6km以内)。
 少子化の流れを受けて,この10年で既に小・中学校の1割に当たる3,000校超が統合されてきていますが,標準規模に満たない学校が約半数存在しているのが現状です。今後,少子化の更なる進展により,学校の小規模化に伴う教育的デメリットの顕在化が懸念されています。一方,統合が困難な地理的特性や地域コミュニティの核としての学校の重要性への配慮も求められています。

1 公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引

 文部科学省が平成28年に行った調査では,学校規模・配置について80%以上の市区町村が課題を認識しているものの,そのうち42%において検討の予定が立てられていません。また,各市区町村のうち42%が,国に望む支援として,「学校規模適正化の適否について検討する際に参考となる資料の提供」を挙げています。
 文部科学省では,市町村の様々な取組を総合的に支援する一環として,学校統合により魅力ある学校づくりを行う場合,小規模校のデメリットの克服を図りつつ学校の存続を選択する場合,一旦休校とした学校を再開する場合のそれぞれの場合の検討に際しての基本的方向性や考慮すべき要素,留意点等をまとめた「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」を平成27年1月27日に公表し,全国の都道府県に通知するとともに,文部科学省ウェブサイトで公表しました(※45)。
 各市町村において,少子化に伴う学校の小規模化という課題に正面から向き合い,地域コミュニティの核となる魅力ある学校づくりが主体的に検討されることが期待されます。


  • ※45 参照:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/07/24/1354768_1.pdf

2 少子化に対応した活力ある学校づくりの推進

 平成28年12月22日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略2016改訂版」においては,2020(平成32)年までのKPI(成果目標)を「統合による魅力ある学校づくりや小規模校における教育環境の充実等について,課題を認識している全ての市町村が着手」することとしています。文部科学省としては,平成28年度に,公立学校施設整備費の補助,統合校や過疎地の小規模校における教員定数の加配措置,スクールバス・ボート購入費の補助,学校を統合する場合や小規模校を存続させる場合の委託研究事業等を行ったところであり,これらの取組を通じて,各地方公共団体における課題への検討を促進しています(図表2‐4‐36)。
 引き続き,手引の更なる周知や優れた先行事例の創出・普及を図りつつ,今後も各地方公共団体の検討状況を調査し,各地方公共団体における取組が促進されるよう支援することとしています。

 図表2‐4‐36 少子化に対応した活力ある学校教育への支援策

第17節 幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実

1 小学校就学前段階における経済的支援

 文部科学省では,幼稚園の入園料や保育料に関する経済的負担を軽減する就園奨励事業を実施している地方公共団体に対して,幼稚園就園奨励費補助金によって所要経費の一部を補助しています(※46)。


  • ※46 参照:第2部 第4章 第13節 2

2 義務教育に係る教育費負担軽減

 義務教育段階では,国公立学校の授業料,国公私立学校の教科書が無償となっていますが,これら以外にも学校生活を送るためには多くの費用が必要です。例えば,「平成26年度子供の学習費調査」によると,学用品費・遠足費・修学旅行費などの学校教育費や給食費などは,それぞれ公立小学校で年間約10万円と,公立中学校で年間約17万円となっています。
 このような費用を負担することが困難な児童生徒の保護者を経済的に支援するために,市町村が行う就学援助制度があります。
 就学援助制度とは,「学校教育法」の実施義務に基づき,各市町村が,経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して,学用品の給与などの援助を行う制度です。就学援助制度の対象者は,「生活保護法」に規定する要保護者と,これに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者となっています。
 就学援助を受けている児童生徒の割合は依然として高止まり傾向にあり,就学援助制度の重要性はますます高まっています。平成29年3月には,「新入学児童生徒学用品費等」の予算単価をほぼ2倍に増額するなどの見直しを行い,さらに,小学校等についても「新入学児童生徒学用品費等」を入学前に支給できるよう要綱の改正を行いました。なお,就学援助制度は市町村において実施されるものですが,要保護者に対する就学援助に係る所要の経費については,国が補助を行っています。また,要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者の就学援助に関する所要の経費については,地方財政措置が講じられています。
 生活扶助基準の見直しに伴う影響については,平成28年10月に各地方公共団体に調査を実施した結果,影響が生じていない地方公共団体が99.2%,生活扶助基準の見直しに伴う影響への対応を直接的には行っていないが,経済的に困窮している児童生徒に対する取組などの対応を実施している地方公共団体が0.8%となっています。これらの地方公共団体名も含めて調査結果を公表し,引き続き,各地方公共団体において適切に判断するよう依頼しています。

3 高等学校段階に係る教育費負担軽減

 高校生等の修学支援として,まず,高等学校等の授業料を高等学校等就学支援金(以下,「就学支援金」という。)により支援しています。
 就学支援金は,国公私立を問わず,市町村民税所得割額が30万4,200円(年収約910万円(※47))未満の世帯の生徒で,受給資格(※48)を認められた者には,公立高校の授業料相当の年額11万8,800円が就学支援金として支給されています。また,私立高校等に通う生徒の場合は世帯所得に応じて最大2.5倍(年額29万7,000円)まで加算して支給します。また,低所得世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため,高校生等奨学給付金により支援をしています。平成28年度は,学年進行で着実に事業を実施するとともに,非課税世帯における給付額の増額など制度の充実を図りました。

 図表2‐4‐37 高校生等奨学給付金の給付額(平成29年度)

 このほか,高等学校等を中途退学した者が再び学び直す場合に就学支援金の支給期間を超えても継続して支援することや,保護者等の失職・倒産などの家計急変により収入が激減した場合の支援,在外教育施設の日本人高校生への支援等も行っています。


  • ※47 市町村民税所得割額は両親の合算。また,年収は両親のうちどちらか一方が働き,高校生1人,中学生1人の4人世帯の場合の目安。
  • ※48 高等学校等に在学し,日本国内に住所を有する者で,1.高等学校等を卒業又は修了していない者,2.高等学校等に在学した期間が通算して一定期間を超えない者(全日制の場合36月)。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成29年12月 --