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第10章 国際交流・協力の充実

総論

 経済社会のグローバル化と急激な少子高齢化によって、我が国は今後も健全に成長し魅力ある国であるために変化・進化していくことが求められています。政府が掲げる地球儀を俯瞰(ふかん)する外交の動向も踏まえ、文部科学行政が担う各分野の国際的な取組について、戦略的に政策形成を図ることが必要です。
 このため、文部科学省は、国際戦略を企画・立案するための体制を整備し、教育、文化、スポーツ及び科学技術・学術の分野において、相手国・地域の特性やニーズ等も踏まえた国際協力の取組を強化しています。
 例えば、平成26年7月31日から8月2日にかけて安倍総理が経済ミッションとともにブラジルを訪問した際には、文部科学省関連のミッションとして独立行政法人の理事長や大学長が同行し、経済セミナーでの講演及び新たな協力関係の構築のための関係機関間の覚書の締結を行うなど、教育・研究分野での日伯関係の進展を図りました。
 また、平成26年8月に、下村文部科学大臣がインドを訪問した際には、関係閣僚との会談等を通じて、両国間の留学生交流、大学間交流、科学技術交流の一層の推進や人文社会科学分野の研究協力推進について新たに合意し、日印間の協力促進の大きな契機となりました。これらの成果を基に、同年9月にインドのモディ首相が来日した際の「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」において、両国間の留学生数の大幅増、科学技術分野の協力強化、スポーツ交流の促進等が盛り込まれたところです。このように、教育、科学技術、文化、スポーツ分野での国際協力は急激に重要性を増しており、これらの分野の国際的取組の推進がさらに加速するよう、取り組んでまいります。

第1節 教育・スポーツ分野における国際交流・協力

1 留学生交流の推進

(1)外国人留学生受入れの現状と施策

1.留学生受入れの現状

 グローバル化が加速する国際社会の中で、我が国の大学の国際化の推進や、世界で活躍する人材の育成を図るため、平成20年7月に留学生受入れ拡大のための方策をまとめた「留学生30万人計画」骨子が策定されました。これに基づき、留学の動機付けから大学等や社会での受入れ、就職など卒業・終了後の進路に至るまで体系的に関係省庁で連携して、留学生の受入れを推進しています。
 平成26年5月1日現在、我が国の大学などで学ぶ留学生の数は、18万4,155人となっており、全体として増加傾向となっています(図表2-10-1、2-10-2)。
 「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」(平成25年6月14日閣議決定)において、2020年までに留学生の受入れ30万人(「留学生30万人計画」)の実現を目指すとともに、より戦略的な留学生の受入れを推進することとしています。さらに、「日本再興戦略改定2014―未来への挑戦―」(平成26年6月24日閣議決定)では、高度外国人人材の活用や、外国人留学生の受入れ環境の支援の強化等、より具体的な施策を講ずることとしています。

図表2-10-1 留学生数の推移(各年5月1日)

2.留学情報提供体制の整備

 留学生の受入れを促進するため、日本学生支援機構は、海外において日本の大学等の参加を得て、「日本留学フェア」や「日本留学説明会」を実施し、現地の学生、進学指導担当者などに対して日本への留学に関する情報の提供を行っています。平成26年度は、台湾、インド等15か国・地域、24都市で開催しました。また、関係機関との連携により日本留学希望者向けのポータルサイト(※1)を構築し、情報提供を充実しています。さらに、7か国8都市に、日本の全ての大学が共同利用可能な日本への留学の窓口となる「海外大学共同利用事務所」を設置し、日本の大学の情報提供や入学説明会の開催などを行っています。

図表2-10-2 出身国・地域別留学生数(2014年5月1日現在)

3.日本留学試験の実施

 我が国の大学への留学生の入学選抜においては、受験のために渡日する必要があるなど、欧米諸国の大学への留学に比べて手続が煩雑で、留学希望者にとって負担が大きいと指摘されてきました。このため、文部科学省では、日本学生支援機構と協力して、海外で広く実施され、渡日前に入学許可を得ることを可能とし、留学希望者にとって利用しやすい試験として「日本留学試験」を、平成14年度から実施しています。
 本試験は年2回(6月と11月)、国内では16都道府県、海外ではアジア地域を中心に17都市で実施しています。平成26年度の受験数の合計は、国内2万7,924人、海外5,241人の計3万3,165人でした。また、本試験を留学生の入学選抜に利用した大学は416大学、81短期大学となっています(27年3月現在)。そのうち、本試験を利用した渡日前入学許可制度を導入している大学は78大学、10短期大学となっています(27年3月現在)。

4.留学生に対する支援措置

(ア)国費外国人留学生等の受入れ
 国費外国人留学生制度は、文部省(当時)が、諸外国の次代を担う優れた若者を我が国の高等教育機関に招へいし、教育・研究を行わせる制度として昭和29年に創設されました。現在、研究留学生(大学院レベル)や学部留学生、ヤング・リーダーズ・プログラムなど7種類のプログラムにより実施されており、これまでに約9万8,000人の国費外国人留学生を支援してきました(注:台湾については上記に準じる支援を、公益財団法人交流協会を通じて実施)。

(イ)私費外国人留学生などへの援助
 文部科学省では、優れた私費外国人留学生の国費外国人留学生への採用を実施しています。また、日本学生支援機構では、私費外国人留学生や大学進学を目指して日本語教育機関で学ぶ学生等に対して学習奨励費(奨学金)を給付しており、私費外国人留学生が安定した生活の中で勉学に専念できる環境の整備に努めています。

(ウ)宿舎の安定的確保
 日本学生支援機構では、大学等が民間アパート等を借り上げる際の「留学生借り上げ宿舎支援事業」を実施しています。
 このほか、公益財団法人留学生支援企業協力推進協会等の留学生関係公益法人では、民間企業の社員寮に留学生を受け入れるプログラム及び、入居者の損害賠償等を目的とした「留学生住宅総合補償制度」などの施策を実施しています。

(エ)留学生の就職支援
 日本学生支援機構では、日本企業に就職を希望する留学生の就職・採用活動について、有益な情報を提供するとともに、学校側・企業側が情報交換を行う「全国キャリア・就職ガイダンス」を実施しています。

5.留学生のための教育プログラムの充実

 我が国への留学形態が多様化する中、留学生の需要に応じた魅力ある教育プログラムを提供しています。また、「国費外国人留学生の優先配置を行う特別プログラム」を選定し、国際的に魅力ある留学生受入れプログラムを実施する大学から、当該プログラムにより受け入れる留学生の一部を国費外国人留学生として優先的に採用しています。

6.地域における留学生支援

 留学生と地域住民との交流、留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進するため、各都道府県で、大学、地方公共団体、経済団体、民間団体などによって構成される地域留学生交流推進会議が開催されています。
 さらに、平成24年度より、各地域において大学、地方公共団体、経済団体、NPO法人等の連携により、留学生を支援しつつ日本人学生や地域住民等と交流していく、街づくりのモデル地域を支援するため「留学生交流拠点整備事業」を実施しており、24年度は7拠点、25年度には3拠点の計10拠点を採択しています。

7.帰国留学生に対する援助の充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め、母国において活躍できるように、日本学生支援機構では、短期研究のための帰国留学生招へい事業、研究支援のための指導教員の派遣など援助を行うとともにJapan Alumni eNews(日本留学ネットワークマガジン)を発行し、帰国外国人留学生等に対し必要な情報を提供しています。

8.世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略

 グローバル化が加速し、世界的な留学生獲得競争が激化する中、教育研究の向上や国家間の友好関係の強化に継続して取り組むことに加え、諸外国の成長を我が国に取り込み、我が国の更なる発展を図る必要があります。このため、文部科学省では平成25年12月に「世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略」を取りまとめ、留学生の受入れに係る重点地域や重点分野を設定しました。今後、重点地域からの留学生の受入れを重視していきます。


  • ※1 参照:http://www.g-studyinjapan.jasso.go.jp/

(2)日本人学生等の海外留学の現状と施策

1.海外留学の現状

 各国などの統計によれば、平成24年に海外に留学した日本人学生等は、6万138人であり、平成16年をピークに減少傾向にありましたが、前年比で下げ止まりました(図表2-10-3、2-10-4)。
 社会や経済のグローバル化が進む中、世界で活躍することができる人材の育成が急務であることから、日本人学生等の海外留学についても「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」において、2020年までに6万人から12万人へ倍増することとし、意欲と能力ある若者全員に留学機会を与え、海外留学の経済的負担を軽減するための官民が協力した新たな仕組みを創設することとしています。文部科学省では、この目標の達成に向けて、日本人学生等の海外留学を促進していきます。

図表2-10-3 海外の大学等に在籍する日本人学生数

2.海外留学に関する施策

 文部科学省では、日本人学生等の海外留学支援として、国費による海外派遣制度を設けています。
 平成21年度からは、日本人の学生などを最先端の教育研究活動を行っている海外の大学院に派遣し、学位を取得させることにより、我が国のグローバル化や国際競争力の強化を促進する「海外留学支援制度(大学院学位取得型)」を実施しています。この制度により、平成25年度には157名の日本人の学生などを派遣しました。

図表2-10-4 海外の大学等に在籍する日本人学生数(上位10か国、地域)(2012年)
 また、大学間交流の活性化や大学の国際化等に資する短期留学を推進するために、大学間交流協定などに基づき、諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生や諸外国の大学へ派遣される日本人学生を支援する日本学生支援機構の奨学金制度として、平成21年度から「海外留学支援制度(協定受入型)」及び「海外留学支援制度(協定派遣型)」を設けています。この制度により、平成25年度には、6,413名の留学生を受入れ、1万1,139名の日本人学生を派遣しました。
 さらに、外国政府などの奨学金により、平成25年度は28か国に約750名の日本人学生などが留学しており、文部科学省では、その募集・選考に協力しています。
 海外留学の大半を占める私費留学については、日本学生支援機構を通じて、留学情報の収集・整理を行い、また、平成26年度は、4都道府県において「海外留学説明会」を、東京都において「海外留学フェア」を開催するなど、留学希望者に対し必要な情報を提供しています。

3.官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の始動

 文部科学省では平成25年10月に開始した留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」に引き続き取り組むとともに、26年度より官民が協力した新たな仕組みとして、民間の知見と支援を活用した海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を開始し、海外留学に係る経済的負担の軽減を図るなど、社会全体で若者の海外留学を促進していきます。
 「日本代表プログラム」では1,700名(221校)の応募から選抜された323名(106校)の第1期派遣留学生が平成26年8月末以降に順次留学を開始し、第2期派遣留学生についても784名(173校)の応募から256名(110校)を選抜し、27年4月より順次留学を開始する予定です。

(3)高校生交流の現状と施策(※2)


  • ※2 参照:第2部 第4章 第3節3

2 教員・青少年等の国際交流

(1)教員等の国際交流

 文部科学省では、毎年中国と韓国に教職員を派遣(約100名)するとともに、これらの国から教職員を我が国に招へい(約200名、いずれも平成26年度実績)しています。この教職員招へいプログラムでは、教育制度や教育事情、生活、文化等についての幅広い相互理解と友好親善を深める機会を提供するとともに、我が国の教職員との交流や家庭訪問も実施しています。
 日本とアメリカとの間では、「日米教育交流計画」(フルブライト計画(※3))によって日米の研究者・大学院生・ジャーナリスト等の交流が行われています。また、文部科学省では、平成21年度より持続可能な開発のための教育(ESD)を共通のテーマとして日米の初等中等教育教員が相互交流、意見交換、共同研究などを行うことにより、日米の教育交流及びESDの促進を図ることを目的とする「ESD日米教員交流プログラム」を実施しています。
26年度においては、日米から計48名の教員がこのプログラムに参加しました。


  • ※3 昭和26年に発足した日米間の交流計画で、日米両国の政府が経費を分担して運営し、日米教育委員会が実施している。
  • ※4 参照:第1部 特集2 第3節2、第2部 第8章 第6節3

(2)青少年の国際交流

 国際化が進展する中、青少年自らが国際社会の一員であることを自覚し、異なる文化や歴史に立脚する人々と共生していくことは重要な課題です。
 文部科学省では、次世代を担う青少年等の海外派遣及び日本招へいを行う「青少年国際交流推進事業」や青少年教育施設を中核として、東アジアを中心とした海外の青少年と日本の青少年が体験活動を通じて交流する「青少年教育施設を活用した国際交流事業」を実施しています。
 このほか、国立青少年教育振興機構においても、青少年を対象とした独自の国際交流事業を実施しています。
 また、平成27年には、162の国と地域から約3万人の青少年が集うボーイスカウトの世界大会「第23回世界スカウトジャンボリー」が山口県山口市きらら浜で開催される予定です。これらを契機として青少年の国際交流を推進していきます。

(3)スポーツを通じた国際交流・貢献の推進

 スポーツを通じた国際交流は、国際相互理解を促進し、国際平和に大きく貢献するなど、我が国の国際的地位の向上を図る上でも極めて重要です。
 このため、文部科学省では、公益財団法人日本体育協会が行うアジア地区とのスポーツ交流事業や公益財団法人日本オリンピック委員会が行う国際競技力向上のためのスポーツ交流事業に対して支援を行っています。
 また、国際スポーツ界に貢献するため、スポーツを通じた国際協力及び交流、国際的な人材養成の中核拠点の構築、国際的なアンチ・ドーピング推進の強化支援を柱とする、「Sport for Tomorrow」プログラムに取り組み、世界にオリンピック・パラリンピック・ムーブメントを広げていきます。(※4)

3 国際機関等の国際的枠組みにおける取組

(1)経済協力開発機構(OECD)

 OECDは、先進34か国を加盟国として、様々な分野における政策調整・協力、意見交換などを行っています。教育分野に関しては、主に以下のような取組を行っています。
 文部科学省は、OECDとの共催により、2014(平成26)年6月、TALIS調査の結果公表に合わせて「よりよい教員政策の形成―国際比較からみる政策上の教訓、これからの教育と学校への示唆―」をテーマとして、東京でOECD非公式教育大臣会合を開催しました。
 また、東北の復興を支援する教育事業として被災地の中学・高校生を対象にOECD東北スクールを実施してきました。平成26年8月には、この事業の集大成として、フランス・パリで東北の復興をアピールするイベント「東北復幸祭<環WA>in Paris」を実施し、日本から約100名の生徒が参加しました(※5)。

写真 OECD非公式教育大臣会合(平成26年6月)
 OECD非公式教育大臣会合(平成26年6月)

写真 パリのイベントに参加した東北スクールの生徒たち
 パリのイベントに参加した東北スクールの生徒たち


  • ※5 参照:第2部 第2章 第1節2

(2)アジア・太平洋経済協力(APEC)

 アジア・太平洋経済協力(APEC)は、アジア・太平洋地域の21か国・地域が参加する経済協力の枠組みです。貿易・投資の自由化などの経済問題とともに、教育を含む人材養成の分野にも積極的に取り組んでいます。こうした取組の一つとして、タイと共同事業を実施し、日本における授業研究の取組の紹介や防災教育に関する研究を行ってAPEC域内への普及を図っています。
 また、高等教育分野においては、越境教育協力推進のため、アメリカの提案によって域内の留学生数を2020年までに100万人とする目標値を設定しています。

(3)国連大学

 国連大学は、東京に本部を置く国連機関です。国内には本部のほかに「サステイナビリティ高等研究所」があります。国連大学では、グローバル人材開発、自然資本と生物多様性等の国連における重要課題に係る広範な課題の解決に向けて、研究活動を行うほか、大学院プログラムを開設して学生を受け入れています。日本は、国連大学本部施設の提供や国連大学基金への拠出とともに、毎年、事業費などを拠出しています。

(4)世界知的所有権機関(WIPO)

 WIPO(※6)は、知的財産権の国際的保護の促進などを目的として1970(昭和45)年に設立された国連の専門機関です。WIPOは、国際条約の作成・管理を行うとともに、各国の法令整備の支援や開発途上国に対する法律・技術上の援助、情報の収集・提供などを行っています。
 日本はWIPOに対して毎年、信託基金を拠出し、アジア・太平洋地域の各国の著作権法制度の整備や普及・啓発を促進しています。また、WIPOに職員を派遣し、協力・連携して各種セミナー、研修、専門家派遣等を実施しています。


  • ※6 参照:第2部 第9章 第10節5

4 国際教育協力の推進

(1)国際教育協力の在り方に関する検討

 経済成長を遂げた新興国等に対する教育協力は、既存の政府開発援助(ODA)枠では収まらず、新たな方法によらなければ成果を上げることが困難になってきています。今後は、限られた人的・物的資源の下で、多様化するニーズに的確に応え、関係者の協働による「面」として戦略的に取り組むことが求められています。文部科学省では、平成23年6月に我が国として必要な国際協力の在り方について検討するための場として、国際協力推進会議を開催しました。26年度はポスト2015年開発アジェンダ(※7)等を見据えた今後の国際教育協力の在り方や、各国からの協力要請に対して大学等が効果的に応えていくための課題などを検討しました。


  • ※7 ポスト2015年開発アジェンダ:平成12年9 月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられた、ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)に続く、27年より先の国際開発目標。

(2)国際教育協力における取組

 国際社会においては、貧困、災害、気候変動など地球的規模の課題が山積しています。先進国には、これらの課題解決のための資金面の貢献だけでなく、知的貢献も求められています。
 特に、近年、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)やエジプト・日本科学技術大学(E-JUST)のように、実験・研究を重視した少人数の日本式工学教育が開発途上国で高く評価されています。
 アジア地域等の国々では、高い技術力を持った人材の育成は、産業の振興をもたらし、ひいては国の発展につながるという意識が高まっています。こうしたことを背景に、様々な国々から日本の協力を得て自国に工学系の高等教育機関を設置する要望が寄せられています。国際協力機構(JICA)が、日本の大学等の協力を得て、アジア地域等において高等教育機関の能力を強化する事業を実施している場合に、文部科学省はこれらの事業を支援しています。

(3)東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)との連携強化

 文部科学省では、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)に対して、平成26年度はSEAMEOの5センターが実施する教員研修等に講師として5名の専門家を派遣するなど連携強化を図っています。
 また、東南アジア教育大臣機構・高等教育開発センター(SEAMEO-RIHED)のAIMS(ASEAN International Mobility of Students:ASEAN統合に向けて政府主導で実施している学生交流プログラム)にも参加しており、このプログラムを通じて日本の11大学と東南アジアの21大学が協力する七つのプログラムが文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」に採択されています。
 さらに、SEAMEO加盟国内における持続可能な開発のための教育(ESD)を促進するため、ESDに関する顕著な取組を行っている東南アジアの小・中・高等学校を顕彰する「SEAMEO-Japan ESD Award」を実施しています。これまで東南アジアの10か国259校が応募し、平成27年から29年まで継続することが合意されています。

(4)現職教員による日本の教育経験を生かした協力の促進

 教員の国際協力への参加促進を目的として、平成13年度に青年海外協力隊「現職教員特別参加制度」が創設され、20年度には、同制度が「日系社会青年ボランティア」にも拡大されました。
 子供に密着した実践的な能力や経験を身に付けた日本の教員は、教育経験を生かした国際教育協力を進めていく上で貴重な人材になります。現職教員にとって、開発途上国等における厳しい環境の下で国際教育協力に従事することによって、問題への対処能力や指導力などの資質能力が一層向上することが期待されます。帰国後、国際理解教育の実践などを通じて、日本の教育現場に教員自身の貴重な経験を還元することなども期待されます。過去13年間で961名の国公私立学校の教員が世界各地の開発途上国等に派遣され、現地で活躍してきました。また、平成25年度募集から本制度の対象を私立学校の教員にも拡大しました。

第2節 科学技術外交の推進

1 科学技術外交の意義

 近年のグローバル化の進行や、中国やインド等の新興国の台頭による世界の多極化、環境・エネルギー、食料、水、防災、感染症などの地球規模課題の顕在化など、世界を取り巻く諸情勢は大きく変動しています。また、世界的な頭脳循環が加速し、国際的な頭脳獲得競争がますます激しくなっています。こうした状況において、我が国は国際的な協調の下で、より一層科学技術の推進によって諸問題を解決し、新しい知の創出を図るとともに、世界における我が国の国際的存在感を高めることが求められています。
 先進国との国際科学技術協力においては、我が国の科学技術水準の向上に資するとともに、地球規模課題の解決につながる技術の開発等によって、我が国の持続的な成長・発展を促すことが期待されています。また、新興国や開発途上国との協力においては、今後著しい発展が見込まれるアジア諸国との協力の強化を科学技術面で先導するとともに、各国で顕在化している地球規模課題の解決や相手国の人材育成、相手国・我が国の科学技術の発展による緊密な科学技術コミュニティの構築が期待されています。
 科学技術・学術審議会第七期国際戦略委員会では、我が国の科学技術・学術の国際活動に関して今後重点的に取り組むべき事項について審議し、平成26(2014)年7月に、「今後新たに重点的に取り組むべき事項について~激動する世界情勢下での科学技術イノベーションの国際戦略~」を取りまとめました。
 現在、我が国の研究者の海外派遣総数について、派遣研究者の総数は増加傾向にあります。外国人研究者の受入れ総数は、平成21年度から23年度にかけて東日本大震災等の影響により減少したものの、その後、回復傾向が見られます。我が国の科学技術コミュニティが世界の人材流動の動きから取り残されないよう、我が国の頭脳循環の流れを活性化させ、我が国の大学等研究機関を世界のトップクラスの研究ネットワークの中核に位置付けることが必要です。海外への研究者派遣は、海外の先端研究に参画することで、研究能力を高めるとともに、国際研究ネットワークに入り込み、その核として活躍することができる力を身に付けることが期待されます。また、優秀な外国人研究者の受入れを進めることによって、新たなイノベーションの創出や我が国の受入れ機関の国際化の促進、将来の海外における我が国とのネットワークの構築が見込まれます。
 文部科学省では、地球規模課題の解決の貢献、先端科学技術分野における戦略的な国際協力の推進による多様で重層的な協力の推進や、国際的な人材・研究ネットワークの強化などに取り組み、科学技術の国際活動を戦略的に推進しています。

2 科学技術外交を推進するための国の取組

(1)分野や相手国に応じた多様で重層的な科学技術協力

 我が国は、現在、世界47か国・機関と科学技術協力協定等を結んでいます。これらの国・機関とは、合同委員会の開催等を通じて互いの協力を深めています。文部科学省では、先進国から開発途上国までの多層的な国際ネットワークを発展させていくため、相手国・機関の特性や分野の特性に応じて多様で重層的な協力を推進しています。

1.アジア諸国との協力

 近年著しい成長を続けるアジア諸国との協力関係を強化するため、以下に挙げる国際的枠組みを通じて協力を進めています。

(ア)e-ASIA共同研究プログラム
 文部科学省では、科学技術振興機構(JST)と協力して、アジア地域の研究開発力を強化するとともに、共通課題の解決を目指して共同研究を行う「e-ASIA共同研究プログラム」を実施しています。2014(平成26)年には日本・タイ・フィリピンによる共同研究「バイオマス資源化のためのナノカーボンを基盤とする触媒材料の開発」を新たに採択しました。平成26年度はこのプログラムにおいて、合計六つの課題を支援しました。

(イ)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力
 東南アジア諸国連合(ASEAN)との科学技術協力は、科学技術委員会(COST)を通じて行っています。現在、ASEANに日本・中国・韓国の3か国を加えたASEAN COST + 3による協力が行われており、我が国では文部科学省を中心に対応しています。2015(平成27)年1月には、第8回ASEAN COST + 3会合が東京で開催され、ASEANと日中韓の協力に関する意見交換が行われました。また、我が国とASEAN科学技術委員会(COST)との間の協力枠組みとして、2009(平成21)年に日・ASEAN科学技術協力委員会(AJCCST)が発足し、2015(平成27)年1月に第6回日・ASEAN科学技術協力委員会が東京で開催されました。

(ウ)インド等の新興国での協力
 インドとの間においては、2014(平成26)年10月に第8回科学技術協力合同委員会が東京で開催され、これまでの協力状況及び今後の協力拡大について議論が行われました。また、日印の科学技術協力を一層推進し、最先端の分野における協力を促進するため、2015(平成27)年2月にデリーにて、日本の科学技術及び大学や研究機関等の魅力を紹介する日印科学セミナーを開催しました。

写真 日印科学セミナーでのパネルディスカッションの様子 提供:理化学研究所
 日印科学セミナーでのパネルディスカッションの様子
 提供:理化学研究所

(エ)「センチネルアジア」プロジェクト
 衛星画像等の災害関連情報をインターネット上で共有することを目的として、2005(平成17)年に第12回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-12)において我が国が提案し、2006(平成18)年2月から開始された国際協力プロジェクトです。人工衛星は、地上の被害に影響を受けず広域の画像取得が可能であることなどから、大規模自然災害の状況把握に有効な手段です。このプロジェクトは、2014(平成26)年4月現在で、25か国・地域の79機関及び14国際組織の協力の下で行われています。

(オ)アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
 アジア諸国との原子力分野の協力を効果的に推進するため、日本が主導するもので、各国の原子力研究開発利用を担当する大臣クラスの参加者が意見交換を毎年行っています。また、放射線治療や核セキュリティ・保障措置、人材養成等の分野ごとに開催されるワークショップなどで意見交換や情報交換が行われています。

2.アジア、アフリカ及び中南米等の開発途上国との科学技術協力

 我が国は、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)を通じて、アジア、アフリカ及び中南米等の開発途上国との科学技術協力を進めています。これらの国々のニーズを踏まえ、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症分野における地球規模課題の解決と将来的な社会実装に向けた国際共同研究を推進しています。具体的には、文部科学省・科学技術振興機構(JST)と外務省・国際協力機構(JICA)が連携して、我が国の先進的な科学技術とODAを組み合わせる形で本プログラムを実施しています。平成20年度から26年度までに、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症分野において、41か国にて87件(地域別ではアジア47件、アフリカ20件等)を採択しています。

写真 地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS) 「アフリカサヘル地域の持続可能な水・衛生システム開発」 提供:科学技術振興機構(JST)
 地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)
 「アフリカサヘル地域の持続可能な水・衛生システム開発」
 提供:科学技術振興機構(JST)

3.二国間・多国間の科学技術・学術協力

 欧米を中心とした先進国や成長著しい新興国との幅広い科学技術協力を進めることによって、科学技術イノベーションの創出に貢献することが求められています。我が国では、二国間及び多国間の科学技術・学術協力を進めています。

(ア)二国間の科学技術・学術協力
 科学技術振興機構(JST)では、イコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下で、戦略的に重要なものとして国が設定した協力対象国・地域及び研究分野における共同研究を支援する国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム)や研究交流を支援する戦略的国際科学技術協力推進事業を実施しています。
 さらに、日本学術振興会(JSPS)では、研究者の自由な発想に基づく共同研究・セミナー及び研究者交流を支援する二国間交流事業を実施し、二国間の学術協力を推進しています。

(イ)多国間の科学技術・学術協力
 日本学術振興会(JSPS)では、各国学術振興機関と連携して国際共同研究事業を実施しています。さらに、多国間交流ネットワークの構築及び強化を図るため、我が国と世界各国の研究機関との協力関係に基づく共同研究・セミナー等の活動を支援する「研究拠点形成事業」を実施し、多国間における学術協力を推進しています。
 また、2011(平成23)年1月から2014(平成26)年12月まで、我が国は、日本・EU相互の具体的な科学技術政策について情報交換及びネットワークの構築を目指す、EUのFP7(※8)における国際協力プロジェクトであるCONCERT-Japan(※9)に参加しました。

(ウ)先進国との多国間の科学技術協力

  • (a)経済協力開発機構(OECD)
     OECDでは、閣僚理事会、科学技術政策委員会(CSTP)、情報・コンピュータ及び通信政策委員会(ICCP)、産業・イノベーション・起業委員会(CIIE)、農業委員会(AGR)、環境政策委員会(EPOC)、原子力機関(NEA)、国際エネルギー機関(IEA)等を通じて、加盟国間の意見・経験等及び情報の交換、人材の交流、統計資料等の作成をはじめとした科学技術に関する活動が行われています。
  • (b)ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)における協力
     HFSPは、1987(昭和62)年6月のベネチア・サミットにおいて我が国が提唱した国際的な研究助成プログラムで、生体の持つ複雑な機能の解明のための基礎的な国際協同研究などを推進することを目的としています。日本・アメリカ・フランス・ドイツ・EU・イギリス・スイス・カナダ・イタリア・オーストラリア・韓国・ニュージーランド・インド・ノルウェー・シンガポールの計15国(極)で運営されており、我が国は本プログラム創設以来、積極的な支援を行っています。本プログラムでは、国際協同研究チームへの研究費助成、若手研究者が国外で研究を行うための旅費、滞在費等の助成及び受賞者会合の開催等が実施されています。平成26年度までに本プログラムの研究助成を受けた者の中から、25名のノーベル賞受賞者が輩出されるなど、本プログラムは高く評価されています。
4.大規模な国際協力プロジェクトへの参画

 技術の発展、研究の大規模化に伴い、先端分野での大規模な国際プロジェクトが増えており、我が国としても各国と協力し、積極的に取り組んでいます。

(ア)ITER(国際熱核融合実験炉)計画等
 エネルギー資源の乏しい我が国にとって、将来のエネルギーの安定的な供給確保は重要な課題です。ITER計画は、人類究極のエネルギーである核融合エネルギーの実現を目指して、日本・EU・アメリカ・ロシア・中国・韓国・インドの7国(極)により進められている国際約束に基づくプロジェクトです。我が国はITERの建設に当たり、超伝導コイル、遠隔保守機器、加熱装置等の重要機器の製作を担うなど、主導的役割を担っています。また、ITER計画を補完・支援する先進的研究開発プロジェクトである幅広いアプローチ(BA)活動(※10)を日欧協力により、我が国で実施しています。

(イ)国際宇宙ステーション(ISS)計画
 ISS計画は、日本・アメリカ・欧州・カナダ・ロシアの5国(極)共同の国際協力プロジェクトです。我が国は、日本実験棟「きぼう」及び宇宙ステーション補給機「こうのとり」(H-Ⅱ Transfer Vehicle:HTV(※11))を開発・運用することで本計画に参加しており、2009(平成21)年7月に完成した「きぼう」の利用、日本人宇宙飛行士のISS長期滞在、「こうのとり」による物資補給等を行っています。2013(平成25)年11月からは若田光一宇宙飛行士がISSで6か月間、長期滞在を行いました。ISSに到着する米国民間補給機のロボットアームを用いてドッキングさせる作業や日本実験棟「きぼう」からの超小型衛星の放出をはじめ、超高感度4Kカメラによるアイソンすい星やオーロラ等の撮影、ライフサイエンスや宇宙医学の実験など様々な活動を行ったほか、2014(平成26)年3月から地上に帰還するまでの2か月間アジア人として初めてISSのコマンダー(船長)に就任し、ISSのクルー(若田宇宙飛行士のほか、アメリカ人2名、ロシア人3名)全員の指揮を執りました。
 このように、我が国はISS計画において主要な役割を果たしており、その宇宙技術・貢献は各国から高く評価されています。

国際宇宙ステーション(2010(平成22)年5月撮影) 提供:アメリカ航空宇宙局(NASA)
 国際宇宙ステーション(2010(平成22)年5月撮影)
 提供:アメリカ航空宇宙局(NASA)

(ウ)国際深海科学掘削計画(IODP)
 深海底を掘削し、地球環境変動、地殻内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的として、日米主導の下、世界26か国が参加する多国間国際協力プロジェクトで、統合国際深海掘削計画(前IODP(2003年~2013年))を引き継いで、2013年(平成25年)10月から開始しています。我が国が提供し、深海底から海底下7,000mまでの掘削能力を有する地球深部探査船「ちきゅう」及びアメリカが提供する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて世界各地の深海底を掘削しています。

写真 地球深部探査船「ちきゅう」
 地球深部探査船「ちきゅう」

(エ)大型ハドロン(※12)衝突型加速器(LHC)計画
 LHC計画は、欧州合同原子核研究機関(CERN)において、周長27kmにも及ぶ巨大な円形加速器を用いて陽子を2方向からほぼ光速まで加速し、それらの陽子同士が衝突する際に生じる膨大なエネルギー領域において宇宙創成時(ビッグバン直後)の状態を再現し、未知の粒子の発見等を通じて、宇宙創成の謎や物質の究極の内部構造等を探索するプロジェクトです。我が国は、学術的な意義に加え国内の先進技術分野の発展が期待できることから、加速器建設に資金拠出を行うなどLHC計画の推進に貢献しており、2008(平成20)年に実験を開始しました。2014(平成26)年には高度化のための改修工事が完了し、現在、世界最高のエネルギー領域において実験研究が行われています。我が国からは、LHCで行われる複数の実験に約200名の研究者等が参画しています。

写真 大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の一部
 大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の一部

(オ)国際リニアコライダー(ILC)計画
 「ヒッグス粒子」の性質をより詳細に解明することを目指して、国際的な研究者のグループが、線形加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を構想しており、2013(平成25)年6月に設計報告書が公表されました。文部科学省の依頼によって審議した日本学術会議は、「ILC計画の実施の可否判断に向けた諸課題の検討を行うために必要な経費を政府においても措置し、2、3年をかけて当該分野以外の有識者や関係政府機関を含めて集中的な調査・検討を進めること」を提言しました。これを受けて、文部科学省は、2014(平成26)年5月に外部有識者による会議及びその下の二つの部会を開催し、巨額の投資に見合う科学的な意義、技術設計報告書に示されているコストや人材の集積見込み等、実施の可否判断に向けた諸課題の検討を行っています。

(カ)国際科学技術センター(ISTC)
 ISTCは、旧ソビエト連邦諸国における大量破壊兵器開発に従事していた研究者に対して平和活動に従事する機会を与えること、同諸国の市場経済への移行を支援することを目的として、1994(平成6)年3月に日本・アメリカ・EU・ロシアの4国(極)によって設立された国際機関です。2014(平成26)年現在、承認プロジェクトの資金支援決定総額は約8億8,400万ドル、従事したロシア及びCIS諸国の研究者の数は延べ7万5,000人以上となりました。


  • ※8 FP7:EU(European Union、欧州連合)の研究助成プログラムの名称(FP7:Framework Programme7。2007(平成19)年~2013(平成25)年の7年間で、総額500億ユーロを超える研究・イノベーション投資を実施)
  • ※9 CONCERT-Japan:Connecting and Coordinating European Research and Technology Development with Japan
  • ※10 幅広いアプローチ(BA)活動:核融合エネルギーの実用化に向けて、ITER だけでは十分に把握できない核融合炉工学分野やプラズマ物理分野などの研究開発を、日欧協力により、我が国(青森県六ヶ所村、茨城県那珂市)において行う取組。
  • ※11 参照:第2部 第7章 第4節
  • ※12 ハドロン:物質を構成している最小の単位である粒子の一種、クォークによって構成される複合粒子(陽子や中性子など)の総称。

(2)国際的な人材・研究ネットワークの強化

1.国際的な頭脳循環の推進

 文部科学省では、従前の「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業」を抜本的に見直し、平成26年度から「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進事業」を開始しました。この事業では、我が国の高い潜在能力を持った研究グループが特定の研究領域で研究ネットワークを戦略的に形成するため、海外のトップクラスの研究機関と若手研究者派遣・受入れを行う大学等研究機関を重点的に支援しています。

2.外国からの研究者の受入れの推進

 我が国における外国人研究者の受入れ状況について、短期受入研究者数は、平成21年度から23年度にかけて東日本大震災等の影響により減少したものの、その後、回復傾向が見られます。一方、中・長期受入れ研究者数は、平成12年度以降、おおむね1万2,000人から1万5,000人の水準で推移しています(図表2-10-5)。

図表2-10-5 海外からの受入れ研究者数(総数/短期/中・長期)

 日本学術振興会(JSPS)では、優秀な外国人研究者を我が国に招へいし、我が国全体の学術研究の推進及び国際化の進展を図るため、「外国人特別研究員事業」をはじめとして、研究者のキャリアステージや招へい目的に応じた、多様なプログラムを実施しています。また、この招へい事業経験者等の組織化を図るとともに、再来日の機会の提供などによる、我が国と諸外国の研究者ネットワークの形成・強化を図っています。

3.日本の研究者等の海外派遣の推進

 我が国の大学、独立行政法人等の研究者の海外派遣状況について、短期派遣研究者数は、調査開始以降、増加傾向が見られます。中・長期派遣研究者数は、平成12年度から19年度までは減少傾向が見られたものの、20年度以降はおおむね4,000~5,000人の水準で推移しています(図表2-10-6)。

図表2-10-6 海外への派遣研究者数(総数/短期/中・長期)
 将来、国際ネットワークの核として活躍することができる研究者を育成するため、日本学術振興会(JSPS)では、優れた若手研究者が海外の大学等研究機関において長期間研究に専念することができるよう支援する海外特別研究員事業を実施しています。

4.諸外国との若手人材交流

 科学技術振興機構(JST)は、海外の優秀な人材の獲得につなげるため、アジアの14の国・地域から青少年(40才以下の高校生、大学生、大学院生、研究者等)を短期間(1~3週間程度)、招へいする日本・アジア青少年サイエンス交流事業を平成26年度に開始しました。

第3節 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)事業への参加・協力

 国際連合教育科学文化機関(UNESCO:ユネスコ)は、教育・科学・文化の分野における国際協力の促進を通じて平和に貢献することを目的とする国際連合の専門機関であり、現在195か国が加盟しています。我が国におけるユネスコ活動については、日本ユネスコ国内委員会が助言、企画、連絡及び調査に当たっています。

1 教育における取組

 ユネスコが取り組んでいる主要な課題の一つに、持続可能な社会の担い手を育む教育である「持続可能な開発のための教育(ESD)」があります。
 第2期教育振興基本計画において、ESDを推進することとされているとおり、文部科学省と日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESDの推進拠点に位置付け、加盟校の増加に取り組んでいます。平成17年に19校であった国内のユネスコスクールは、27年2月現在で913校に達しており(図表2-10-7)、ESDの理念に基づく様々な活動がなされています。24年8月には、ユネスコスクールの質的充実を図る観点から、「ユネスコスクールガイドライン」を作成し、都道府県教育委員会等を通じて周知しました。
 また、平成26年度から新規事業としてユネスコ活動費補助金(グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業)を実施し、教育委員会や大学が中心となって、ユネスコ協会及び企業等の協力を得つつ、ユネスコスクールとともにコンソーシアムを形成し、ESDの実践・普及及び国内外におけるユネスコスクール間の交流を促進しています。26年度の採択件数は5件です。
 「国連持続可能な開発のための教育の10年(UNDESD)」の最終年である平成26年11月には、ユネスコと日本政府の共催によって、愛知県名古屋市及び岡山市で「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」を開催し、UNDESDを振り返るとともに、今後の推進方策について議論しました。文部科学省と日本ユネスコ国内委員会では、ESDの普及促進に向けて様々な取組を実施しています。一例として、ESDをより身近に感じてもらうため、愛称を公募し、「今日よりいいアースへの学び」という愛称を決定したほか、広く一般国民及びESDのステークホルダーに世界会議の開催を周知するため、ESDポータルサイトやESDフェイスブックを創設し、情報発信をしました(※13)。
 この他、教育分野においては、識字率の改善などを目標とした「万人のための教育(EFA:Education for All)」の推進などについても、ユネスコに拠出している信託基金を通じて、ユネスコと連携して事業を実施しています。

図表2-10-7 ユネスコスクール加盟校の推移


  • ※13 ESD及び「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」については、第1部 特集3 第2節6参照。

ユネスコスクールガイドライン

ユネスコスクールとして大切なこと

 ユネスコスクールの活動には、次のようなことが大切ですので、各学校におかれては、これらの点を念頭において活動いただくことを期待しております。

  • 国内外のユネスコスクール相互間のネットワークを介して、互いに交流相手の良さを認め合い、学び合うこと。
  • 地域の社会教育機関、NPO等との連携などを通じて、開かれたネットワークを築くよう努めること。
  • 校内外における各種研修の充実・活用を図るなど、ユネスコスクールの活動を通じて広く学校外にも働きかけ、我々人類社会が持続的に発展するよう心がけること。
  • 学校経営方針等にユネスコスクールの活動に取り組むことを明確に示し、学校全体で組織的かつ継続的にユネスコスクールの活動に取り組みやすくすること。
  • ユネスコスクールの活動を自らの学校評価の項目に盛り込み、活動の質の向上に努力すること。
  • 必要に応じ、ASPUnivNet(※14)加盟大学をはじめとする高等教育機関の支援や協力を得ながら、ユネスコスクールの活動の充実に努めること。
持続発展教育(※15)(ESD)推進拠点として大切なこと

 ユネスコスクールが持続発展教育(ESD)推進拠点として発展していくには、次のようなことが大切ですので、各学校におかれては、これらの点を念頭において活動いただくことを期待しております。

  • 持続発展教育(ESD)を通じて育てたい資質や能力を明確にし、自分で、あるいは協働して、問題を見出し解決を図っていく学習の過程を重視した教育課程を編成するよう努めること。
  • 総合的な学習の時間を中心とした教科横断的な指導計画を立てるなど、指導内容を適切に定め、さらに、指導方法の工夫改善に努めること。
  • 持続発展教育(ESD)の推進拠点として、研究・実践に取り組み、その成果を積極的に発信することを通じて、持続発展教育(ESD)の理念の普及に努めること。

 持続発展教育(ESD)とは、持続可能な社会づくりの担い手を育む教育であり、その中には、国際理解、環境、多文化共生、人権、平和、開発、防災などのテーマ・内容が含まれます。従って、持続発展教育(ESD)で取り上げるテーマ・内容は必ずしも新しいものではありません。むしろ、それらを持続発展教育(ESD)という新しい視点から捉え直すことにより、個別分野の取組に、持続可能な社会の構築という共通の目的を与え、具体的な活動の展開に明確な方向付けをするものです。また、それぞれの取組をお互いに結び付けることにより、既存の取組の一層の充実発展を図ることを可能にします。
 持続発展教育(ESD)の実施においては、「人格の発達や、自律心、判断力、責任感などの人間性を育むこと」や、「他人、社会、自然環境との関係性を認識し、関わり、つながりを尊重できる個人を育むこと」の観点が必要です。
 持続発展教育(ESD)の理念は、現行の教育振興基本計画(平成20年7月策定)に盛り込まれていますし、学習指導要領(平成20年、21年公示)で示されている「生きる力」という理念にも通ずるものです。


  • ※14 ユネスコスクールのパートナーとして、ユネスコスクールの活動を支援する大学のネットワーク。
  • ※15 「 持続発展教育」とはユネスコスクールガイドライン制定時に使用していたESDの訳語です。現在では、「持続可能な開発のための教育」という訳語を使用しています。

2 科学における取組

 科学分野では、国際水文学計画(IHP:International Hydrological Programme)や政府間海洋学委員会(IOC:Intergovernmental Oceanographic Commission)及び人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画をはじめとする持続可能な開発のための国際科学プログラム、生物多様性の保全、学術研究支援などのユネスコの諸活動に積極的に参加・協力しています。
 平成26年6月、スウェーデンで開催された第26回ユネスコMAB計画国際調整理事会において、我が国から生物圏保存地域(国内呼称:ユネスコエコパーク)に推薦していた「只見」(福島県)及び「南アルプス」(山梨県、長野県、静岡県)の2件の新規案件並びに「志賀高原」(群馬県、長野県)の拡張案件について、登録されることが決定し、我が国のユネスコエコパークは7か所になりました(図表2-10-9)。ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会との共生)を目指す取組という観点から、自然と人との関わりを学ぶ場として、ESDの実践の場としての活用等が期待されています。さらに、文部科学省と日本ユネスコ国内委員会では、地元の地方公共団体や関係府省等と連携して、ユネスコエコパークを活用する各地域の取組を支援しています。26年9月には、我が国のユネスコエコパークの首長等が一堂に会し、各地域の特色ある取組の共有や、意見交換を行う「ユネスコエコパーク全国サミットin志賀高原」が開催されました。
 また、我が国からユネスコに提案した「サステイナビリティ・サイエンスの推進」は、各国からの積極的な賛同を得て、ユネスコの2014-2021年中期戦略及び2014-2017年事業・予算の中で明確に位置付けられています。

図表2-10-8 ユネスコエコパークの三つの地域(ゾーニング)

図表2-10-9 国内のユネスコエコパーク

3 文化における取組

 文化分野では、世界の重要な記録物の保存等を目的としたユネスコ記憶遺産事業において、平成26年6月、日本ユネスコ国内委員会文化活動小委員会は、我が国から「舞鶴への生還」及び「東寺百合文書」の2件をユネスコ記憶遺産の審査に付すことを決定しました。登録の可否は、27年にユネスコ記憶遺産国際諮問委員会において審議される予定です。ユネスコ記憶遺産は、これまで301件(26年1月現在)の登録があります。我が国からは、「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」(23年5月)、「御堂関白記」及び「慶長遣欧使節関係資料」(スペインとの共同推薦)(25年6月)の3件が登録されています。重要な記録物の保存は、国内においても関心が高く、今後ますます多くの申請が見込まれます。

国宝 支倉常長像 仙台市博物館蔵
 国宝 支倉常長像
 仙台市博物館蔵

 また、クリエイティブ・シティーズ(創造都市)・ネットワーク事業は、文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化の7分野において、都市間で相互に連携し、国内外のネットワークを通じて文化産業の強化による都市の活性化及び文化多様性への理解増進を図る取組です。平成26年12月には、新たに鶴岡市が食文化分野で、浜松市が音楽分野で、それぞれ我が国初の加盟が認定されました。これは、デザイン分野の名古屋市及び神戸市(20年10月)、クラフト&フォークアート分野の金沢市(21年6月)、メディアアート分野の札幌市(25年11月)に続く加盟となります。これらの加盟都市においては、都市間のネットワークを活用した積極的な文化事業の国際展開が期待されます。

「寝掘り」(c)Yamamoto Family
 「寝掘り」(c)Yamamoto Family

 これらの他にも我が国では、ユネスコの目的を実現していくため、国・地方公共団体・民間がそれぞれ協力して、あるいは独自に活発な活動を行っています(図表2-10-10)。

図表2-10-10 我が国が協力しているユネスコの主な事業


  • ※16 世界遺産及び無形文化遺産については、第2部 第9章 第5節参照

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成27年09月 --