ここからサイトの主なメニューです

第9章 文化芸術立国の実現

総論

 我が国では、平成13年に文化芸術振興基本法が制定され、本法律に則り策定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の下、文化芸術の振興に取り組んでいます。
 第9章においては、文化庁が進めている文化芸術の振興のための様々な取組について詳しく紹介します。

第1節 平成26年度文化庁予算の概要、税制、文化審議会

1 予算措置

 平成26年度予算は、「豊かな文化芸術の創造と人材育成」、「かけがえのない文化財の保存、活用及び継承等」、「我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進」及び「文化発信を支える基盤の整備・充実」といった主要施策により、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)」(23年2月閣議決定)の重点戦略を推進する内容となっています(図表2-9-1)。
 「豊かな文化芸術の創造と人材育成」では、文化芸術創造活動への効果的な支援や子供たちの文化芸術を体験する機会を拡充するため、芸術団体の創造活動への支援の重点化や、文化芸術による子供の育成事業などの施策を推進しています。
 「かけがえのない文化財の保存、活用及び継承等」では、文化財の保存修理・防災施設などの充実や、文化財の整備・活用などの推進を図っています。
 「我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進」では、優れた舞台芸術・メディア芸術などの戦略的発信、文化遺産保護等国際協力の推進、外国人に対する日本語教育の推進を図っています。
 「文化発信を支える基盤の整備・充実」では、国立文化施設の整備・充実などを通じて、文化発信の国内基盤を強化し、国民の鑑賞機会の充実を図っています。

2 税制措置

1.文化芸術団体に対する寄附金に関する税制措置

 一般に、企業が寄附を行った場合は、当該寄附金について、一定額まで損金算入することが認められていますが、公益社団・財団法人及び独立行政法人などの特定公益増進法人等に対する寄附金については、個人については、寄附金控除(所得控除)が、企業などの法人については、一般の寄附金の損金算入限度額に加えて、更に別枠で損金算入することが認められています。
 特に個人からの寄附に関しては、平成19年より、寄附金控除の限度額が所得金額の30%から40%に引き上げられ、22年より、寄附金控除の適用下限額が「5,000円を超える額」から「2,000円を超える額」に引き下げられるなど、文化芸術団体に対する支援をより行いやすいよう措置されています。また、23年度からは、認定NPO法人及び公益社団・財団法人等への寄附に係る税額控除が導入されました。

図表2‐9‐1 平成26年度文化庁予算(分野別)

2.文化財に関する税制措置

 文化財の分野でも、重要文化財等として指定、選定、登録された家屋やその敷地については、固定資産税を非課税や2分の1課税とするなど、所有者が文化財を適切に管理する上で必要な税制上の優遇措置をとっています。また、重要文化財(土地を除く。)を国や地方公共団体等へ譲渡した場合は所得税が非課税(重要文化財や史跡等に指定された土地については、特別控除。)となり、建造物(登録有形文化財・重要伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物を含む)とその敷地については、相続税額の算出において、一定の評価減を行うこととされています。さらに、重要有形民俗文化財を国又は地方公共団体等に対して譲渡した場合にかかる所得税の軽減措置(1/2課税)について時限措置がとられています(平成28年12月31日まで)。
 加えて、現在、地方公共団体について認められている寄附金控除について、博物館等の設置・管理を行う地方独立行政法人に対する寄附についても同様に寄附金控除の対象となるとともに、地方公共団体に対し重要文化財等を譲渡した場合に認められている譲渡所得の特例について、いわゆる「博物館相当施設」の設置・管理の業務を主たる目的とする地方独立行政法人に対し重要文化財等を譲渡した場合についても、同様に譲渡所得の特例の対象とされています。
 このほか、公益社団・財団法人が所有・取得する重要無形文化財の公演のための施設に係る固定資産税・都市計画税・不動産取得税の軽減措置(課税標準2分の1)が時限措置(27年3月31日まで)となっていたところ、当該措置を2年延長しています(29年3月31日まで)。
 また、登録美術品として登録された美術品については、優れた美術品の美術館・博物館における公開を促進するために、相続税の物納の特例措置が設けられています(※1)。


  • ※1 参照:第2部 第9章 第6節3

3 文化審議会

 平成13年1月の中央省庁等改革により、文化振興に向けた政策立案機能を強化するため、文化庁に文化審議会が設けられました。文化審議会では、国語分科会、著作権分科会、文化財分科会、文化功労者選考分科会の4分科会のほか、文化政策部会、美術品補償制度部会、世界文化遺産・無形文化遺産部会を設置し、文化の振興や国際文化交流の振興に関する重要事項などについて幅広い観点から調査審議を行っています。
 文化審議会は、これまでに11の答申などを行い、文化庁では、これらを受けて各種施策に取り組んでいます。

第2節 文化芸術創造活動の推進

1 文化芸術創造活動の活性化支援

(1)文化芸術活動に対する効果的な支援

 文化庁では、我が国の文化芸術の振興を図るため、トップレベルの舞台芸術創造事業を実施し、音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、大衆芸能といった分野の芸術水準の向上の直接的な牽(けん)引力となる公演を重点的に支援しています。平成26年度は、年間活動支援型26団体、公演事業支援型203件を採択しました。
 また、平成26年度から実演芸術の水準向上のための取組や障害者の優れた芸術活動の促進のための調査研究等を芸術団体等からの企画提案を受けて行う戦略的芸術文化創造推進事業を新たに実施し、28件の取組を採択しました。

(2)文化芸術振興基金

 平成2年に設立された芸術文化振興基金は、安定的・継続的に多様な芸術文化活動に援助を行うため、約661億円(政府からの出資金が約541億円、民間からの出えん金が約120億円)の基金が日本芸術文化振興会によって運用され、その運用益によって芸術文化活動を支援しています。また、芸術文化の振興を図るために、芸術文化振興基金への寄附金を募って拡大に努めています。

〈芸術文化振興基金からの助成額(平成26年度)〉

  • 芸術家や芸術団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動:7億4,450万円
  • 地域の文化の振興を目的として行う活動:2億8,960万円
  • 文化に関する団体が行う文化の振興又は普及を図るための活動:9,920万円

2 新進芸術家等の人材育成

 文化庁では、世界で活躍する新進芸術家等を育成するため、美術、音楽、舞踊、演劇などの分野において研修・発表の機会を提供しています。特に、新進芸術家海外研修制度では、昭和42年以来、新進芸術家等が海外の大学や芸術団体などで研修を受け、これまで多数の優秀な芸術家などを輩出しています(図表2-9-2)。

図表2‐9‐2 新進芸術家海外研修制度の派遣者の例

3 芸術祭の開催

 文化庁では、昭和21年度から毎年秋に芸術祭を開催しています。平成26年度は、皇太子同妃両殿下が御臨席になった芸術祭オープニングにおいて、「伝統芸能の交流-日本・モンゴルの歌と踊り」を上演したほか、オペラ、バレエ、演劇、音楽、歌舞伎、能楽、文楽、邦舞、大衆芸能、アジア・太平洋地域の芸能の11の主催公演を実施しました。また、演劇、音楽、舞踊、大衆芸能の参加公演部門には165件、テレビ、ラジオ、レコードの参加作品部門には126件が参加しました。各部門における審査の結果、優れた公演・作品に対して、文部科学大臣から芸術祭各賞が授与されました。

平成26 年度文化庁芸術祭主催公演 新国立劇場バレエ公演「眠れる森の美女」 写真:鹿摩隆司
平成26 年度文化庁芸術祭主催公演 新国立劇場バレエ公演「眠れる森の美女」
写真:鹿摩隆司

4 企業による芸術文化活動への支援

(1)企業の取組の顕彰

 公益社団法人企業メセナ協議会は、企業によるメセナ(芸術・文化振興による社会創造)活動の推進のため、芸術・文化支援を行う企業相互の連携を図ることを目的として平成2年に設立されました。文化庁では、公益社団法人企業メセナ協議会との連携の下、同協議会の主催する「メセナアワード」において、芸術文化振興に大きく貢献し、地域活性化や次世代育成に関わるメセナ活動を顕彰しています。

(2)民間の寄附の促進

 公益社団法人企業メセナ協議会は、民間の芸術文化活動への寄附を促進すべく、「助成認定制度」および「2021 芸術・文化による社会創造ファンド(2021 Arts Fund)」を運営しています。

1.助成認定制度

 この制度の認定を受けた文化芸術活動に対して寄附を行う場合、個人の場合には所得控除、企業などの法人の場合には一般の寄附金とは別枠での損金算入が認められます(図表2-9-3)。

図表2‐9‐3 企業メセナ協議会の助成認定制度

2.2021芸術・文化による社会創造ファンド(2021 Arts Fund)

 2020年より先の文化創造に資するべく、地域文化振興及び芸術・文化による地域創造、芸術・文化を通じた国際交流及び日本文化の国際発信、芸術・文化及びこれを通じた社会創造を担う人材育成を重点として、寄附者の意向に応じた目的別ファンドを設置するとともに、目的を達成するための寄附コーディネートを行っています。

第3節 映画・メディア芸術の振興

1 日本映画の振興

 映画は、演劇、音楽や美術などの諸芸術を含んだ総合芸術であり、国民の最も身近な娯楽の一つとして生活の中に定着しています。また、ある時代の国や地域の文化的状況の表現であるとともに、その文化の特性を示すものです。さらに、映画は海外に向けて日本文化を発信する上でも極めて効果的な媒体であり、有力な知的財産として位置付けられています。
 文化庁では、平成16年度から総合的な日本映画の振興施策を実施しており、1.日本映画の創造・交流・発信、2.若手映画作家等の育成、3.日本映画フィルムの保存・継承を推進しています(図表2-9-4)。

 具体的には、日本映画の製作支援、映画関係者によるシンポジウムなどの創作活動や交流の推進、日本映画の海外映画祭への出品支援やアジアにおける日本映画特集上映など海外への日本文化発信、短編映画作品製作による若手映画作家育成事業などの人材育成を通して、我が国の映画の一層の振興に取り組んでいます。特に日本映画の製作支援については、映画による国際文化交流を推進し、我が国の映画振興に資するため、平成23年度からは、国際共同製作による映画製作への支援も行っています。
 また、日本映画に関する情報提供を通じてこれらの活動を促進するため、データベースの整備も進めています。

写真 若手映画作家等の育成(ndjc)撮影風景
若手映画作家等の育成(ndjc)撮影風景

図表2‐9‐4 日本映画の振興

2 アニメーション、マンガなどのメディア芸術の振興

(1)文化庁メディア芸術祭

 アニメーション、マンガ、ゲームなどのメディア芸術は広く国民に親しまれ、新たな芸術の創造や我が国の芸術全体の活性化を促すとともに、海外から高く評価され、我が国に対する理解や関心を高めています。文化庁では、メディア芸術の一層の振興を図るため、創作活動に対する支援、普及、人材育成などに重点を置いた様々な取組を行っています。その一つの柱である文化庁メディア芸術祭は、平成26年度に18回目を迎え、71の国と地域から3,853作品の応募がありました。「アート」、「エンターテインメント」、「アニメーション」、「マンガ」の四つの部門にそれぞれ大賞、優秀賞、新人賞を顕彰するとともに、メディア芸術の振興に寄与した関係者に功労賞を贈呈しました。
 受賞作品は、国立新美術館で開催された第18回メディア芸術祭受賞作品展の中で展示されました。また、過去の受賞作品を中心に優れたメディア芸術作品の鑑賞の機会を提供するメディア芸術祭地方展(平成26年度は愛媛県、北海道、秋田県で開催)や海外メディア芸術祭等参加事業などを実施し、国内外に優れたメディア芸術作品を発信しています。

写真 アート部門優秀賞 「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」 坂本龍一/真鍋大度(日本)
●アート部門優秀賞 「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」
メディアインスタレーション
坂本龍一/真鍋大度(日本)
写真:Keizo Kioku, Courtesy of Creative City Sapporo、International Art Festival Executive Committee、(c)SAKAMOTO Ryuichi/MANABE Daito

写真 アート部門優秀賞 「Nyloïd」 メディアパフォーマンス Cod.Act(Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD)(スイス)
●アート部門優秀賞 「Nyloïd」
メディアパフォーマンス
Cod.Act(Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD)(スイス)
写真:Xavier Voirol ©Cod.Act

エンターテインメント部門 「Ingress」 ゲーム、アプリケーション
エンターテインメント部門 「Ingress」
ゲーム、アプリケーション
Google’s Niantic Labs(創業者:John HANKE)(米国)
写真:Google’s Niantic Labs、(c)Google/Niantic Labs

アニメーション部門 「The Wound」 短編アニメーション Anna BUDANOVA(ロシア)(c)Ural-Cinema

●アニメーション部門 「The Wound」
短編アニメーション
Anna BUDANOVA(ロシア)
(c)Ural-Cinema

マンガ部門大賞 「五色の舟」近藤 ようこ/原作:津原 泰水(日本)近藤ようこ・津原泰水/KADOKAWA刊(c)Youko Kondo/Yasumi Tsuhara 2014
●マンガ部門大賞 「五色の舟」
近藤 ようこ/
原作:津原 泰水(日本)
近藤ようこ・津原泰水/
KADOKAWA刊
(c)Youko Kondo/Yasumi Tsuhara 2014

第4節 子供たちの文化芸術活動と地域における文化芸術の振興

1 子供たちの文化芸術活動の推進

 平成25年6月14日に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」においては、「小・中学校等と博物館や劇場、音楽堂等、文化芸術団体との連携・協力を図りつつ子どもたちが一流の文化芸術に触れる機会の提供を推進するとともに、子どもたちが地域の伝統文化に触れる機会を提供する取組への支援を行う。」とされています。文化庁では、子供たちが、本物の文化芸術に直接触れたり創造活動に参加したりすることにより、多くの感動体験を得て感受性豊かな人間として成長するように、以下の施策を実施しています。

(1)文化芸術による子供の育成事業

 子供たちが優れた実演芸術を鑑賞するとともに、文化芸術団体等による実技指導、ワークショップに参加し、更にはこれらの団体と本番の舞台で共演するなど、実演芸術に身近に触れる機会を提供する「文化芸術による子供の育成事業」を実施しています。平成26年度は、文化芸術団体による巡回公演を1,797公演、学校への芸術家派遣を2,853か所で実施しました。

(2)伝統文化親子教室事業

 文化庁では、次代を担う子供たちに対して、民俗芸能、工芸技術、邦楽、日本舞踊、茶道、華道などの伝統文化・生活文化を計画的・継続的に体験・修得することができる機会を提供する取組を支援しています。平成26年度は3,306団体の活動を採択しました。

(3)全国高等学校総合文化祭

 高校生に文化部活動の成果発表の機会を提供して、創造活動を推進し相互の交流を深めるため、都道府県、全国高等学校文化連盟等との共催により、「全国高等学校総合文化祭」(平成26年度は7月27日から31日まで茨城県で開催)、「全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演」(26年度は8月30日、31日に開催)をそれぞれ毎年開催しています。

2 地域における文化芸術活動の支援

 文化庁では、優れた文化芸術に身近に接することができ、地域に根付いた文化芸術活動が活発に行われるようにするため、個性豊かな文化芸術の振興、文化芸術を支える人材育成など、地域における文化芸術の振興を図っています。

(1)劇場、音楽堂等の活性化

 「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」及び「劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針」の趣旨を踏まえ、地域の文化拠点である劇場、音楽堂等が行う実演芸術の創造発信や、専門的人材の養成、普及啓発事業等を支援することによって、劇場、音楽堂等の活性化を図るとともに、地域コミュニティの創造と再生を推進する劇場・音楽堂等活性化事業を実施しています(平成26年度採択実績:165件)。

(2)文化遺産を活(い)かした地域活性化事業

 我が国の宝である地域の多様で豊かな文化遺産を活用して、伝統行事・伝統芸能の公開や、後継者養成、古典に親しむ活動、子供たちが親と共に地域の伝統文化に触れる体験事業等、地域の特色ある総合的な取組に対して支援を行っています(平成26年度採択実績:327件)。

(3)国民文化祭

 国民の文化芸術活動への参加機運を高めるとともに、地域や世代を超えた文化交流の輪を広げていくため、都道府県等との共催によって、全国規模の文化の祭典である「国民文化祭」を毎年開催しています(平成26年度は秋田県で開催)。

(4)地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ

 地域の文化芸術活動等を活発にし、地域文化の再生やコミュニティの再構築などを図り、地域の活性化を推進するため、地方公共団体が企画する音楽、演劇、舞踊、美術、メディア芸術等を中心とした文化芸術の創造発信事業に対して支援を行っています(平成26年度採択実績:115件)

第5節 文化財の保存と活用

 文化財は、我が国の歴史や文化の理解のため欠くことのできない貴重な国民的財産であるとともに、将来の発展向上のためになくてはならないものであり、将来の地域づくりの核ともなるものとして、確実に次世代に継承していくことが求められます。このため、文化庁では、「文化財保護法」に基づき、文化財のうち重要なものを指定・選定・登録し(図表2-9-5、図表2-9-6)、現状変更や輸出等について一定の制限を課す一方、有形の文化財については保存修理、防災、買上げ等、無形の文化財については伝承者養成、記録作成等に対して補助を行うことによって、文化財の保存を図っています。また、文化財の公開施設の整備に対して補助を行ったり、展覧会などによる文化財の鑑賞機会の拡大を図ったりするなど文化財の活用のための措置も講じています。

図表2‐9‐5 文化財の体系

図表2‐9‐6 文化財指定等の件数

1 有形文化財の保存と活用

 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産や考古資料、歴史資料で、我が国にとって歴史上、芸術上、学術上価値の高いものを総称して「有形文化財」と呼んでおり、このうち、「建造物」以外のものを「美術工芸品」と呼んでいます。

(1)国宝、重要文化財の指定等

 文化庁では、有形文化財のうち重要なものを「重要文化財」に指定し、さらに、重要文化財のうち世界文化の見地から特に価値の高いものを「国宝」に指定して重点的に保護しています。また、近年の国土開発や都市計画の進展、生活様式の変化等によって、社会的評価を受ける間もなく消滅の危機にさらされている近代等の有形文化財を登録という緩やかな手法で保護しています(図表2-9-7、図表2-9-8)。

(2)保存・活用のための取組

 我が国の有形文化財は、木材等の植物性材料で作られているものが多く、その保存・管理には適切な周期での修理が必要であるとともに防災対策が欠かせません。これらは、原則として有形文化財の所有者によって行われるものですが、ほとんどの場合に多額の経費を要するので、国による補助が行われています。

1.建造物

 文化庁では、地震等の災害から建造物を守るため、耐震診断や耐震補強工事を補助しているほか、火災から建造物を守るため、自動火災報知設備や避雷設備、消火設備、防犯設備の設置等を補助しています。さらに、ふるさと文化財の森システム推進事業を実施して、保存修理に必要な資材の供給林を設定し、管理業務を支援しています。
 また、建造物を活用するため、活用事例を紹介するほか、NPO等による文化財建造物の管理活用事業を実施しています。

2.美術工芸品

 文化庁では、美術工芸品を災害や盗難等の被害から守るため、手引の作成や研修会の開催など、防災・防犯意識の向上や有効な対策への理解を促進するための取組を実施しています。
 また、美術工芸品の活用を図るため、文化財保存施設の整備を推進するとともに、国宝・重要文化財が出品される展覧会を支援しています。海外流出や散逸等のおそれがある国宝・重要文化財等については、国が買い取って保存するとともに、文化庁主催展覧会に出品したり、博物館等の展覧会に貸与したりしています。
 なお、文化庁では、全国各地に所在している国指定文化財(美術工芸品)の所在を調査し、平成26年7月4日と27年1月21日の2回にわたって調査結果を公表しました。調査結果によると、調査時点の国指定文化財(美術工芸品)全件(1万524件)のうち、所在を確認することができた件数は1万276件、所在不明であると判明した件数が180件、追加で確認する必要がある件数が68件となりました。現在、追加で確認する必要がある文化財を確認する作業を進めるとともに、所在不明であると判明した文化財を追跡し、再発防止策を実施しています。

図表2‐9‐7 平成26年度の国宝・重要文化財(建造物)の指定

図表2‐9‐8 平成26年度の国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定

2 無形文化財の保存と活用

 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いものを「無形文化財」と呼んでいます。無形文化財は、人間の「わざ」そのものであり、具体的にはその「わざ」を体現・体得した個人又は団体によって表現されます。

(1)重要無形文化財の指定や保持者等の認定

 文化庁では、無形文化財のうち重要なものを「重要無形文化財」に指定し、同時に、これらの「わざ」を高度に体現・体得している者を「保持者」又は「保持団体」として認定しています(図表2-9-9)。保持者の認定には、重要無形文化財である芸能又は工芸技術を高度に体現・体得している者を認定する「各個認定」(この保持者がいわゆる「人間国宝」)と、二人以上の者が一体となって舞台を構成している芸能の場合は、その「わざ」を高度に体現している者が構成している団体の構成員を認定する「総合認定」があります。
 また、「保持団体認定」は、重要無形文化財の性格上個人的特色が薄く、かつ、その「わざ」を保持する者が多数いる場合、これらの者が主たる構成員となっている団体を認定するものです。

(2)保存・活用のための取組

 文化庁では、重要無形文化財の各個認定の保持者に対し、「わざ」の錬磨向上と伝承者の養成のための特別助成金を交付するとともに、重要無形文化財の総合認定保持者が構成する団体や保持団体、地方公共団体等が行う伝承者養成事業、公開事業等を補助しています。
 また、我が国にとって、歴史上、芸術上価値の高い重要無形文化財(工芸技術)を末永く継承し保護していくため、保持者の作品等の無形文化財資料を購入したり、その「わざ」を映像で記録して公開したりしています。

図表2‐9‐9 平成26年度の重要無形文化財の指定・認定

3 民俗文化財の保存と活用

 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものを「民俗文化財」と呼んでおり、有形のものと無形のものがあります。

(1)重要有形・無形民俗文化財の指定等

 文化庁では、有形、無形の民俗文化財のうち、特に重要なものを「重要有形民俗文化財」、「重要無形民俗文化財」に指定し、保存しています(図表2-9-10)。
 また、重要有形民俗文化財以外の有形民俗文化財のうち、保存・活用のための措置が特に必要とされるものを「登録有形民俗文化財」に登録するとともに、重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうち、特に記録作成等を行う必要があるものを「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択しています。

(2)保存・活用のための取組

 民俗文化財は、日常生活に基盤を置くものであり、近年の急激な社会構造や生活様式の変化によって変容・衰退のおそれがあります。
 文化庁では、重要有形民俗文化財に指定された衣服や器具・家屋等を保護するため、管理や修理、保存活用施設の整備等の事業を補助するとともに、重要無形民俗文化財に関する伝承者の養成や用具等の修理・新調等の事業に対しても補助を行っています。また、文化庁が選択した無形の民俗文化財を対象に、特に変容・衰滅のおそれが高いものについて、計画的に映像等による記録保存を確実に進めています。

図表2‐9-10 平成26年度の民俗文化財の指定

4 記念物の保存と活用

 貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁(りょう)、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとって芸術上又は鑑賞上価値の高いもの、動物や植物、地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いものを総称して「記念物」と呼んでいます。

(1)史跡、名勝、天然記念物の指定等

 文化庁では、記念物のうち重要なものを、遺跡は「史跡」に、名勝地は「名勝」に、動物、植物、地質鉱物は「天然記念物」に指定し、さらに、それらのうち特に重要なものについては、「特別史跡」、「特別名勝」、「特別天然記念物」に指定しています(図表2-9-11)。
また、今日の地域開発の進展や生活様式の急激な変化に伴い、残存が困難な状況にある記念物については登録という緩やかな手法で保護しています。登録記念物については、「遺跡関係」、「名勝地関係」、「動物、植物及び地質鉱物関係」の三つの種別があります。

(2)保存・活用のための取組

 文化庁では、歴史上、学術上価値の高い史跡等について、保存と活用を図るための事業を行う所有者、管理団体等に対する補助を充実するとともに、地方公共団体が史跡等を公有化する事業に対する補助を実施し、保存・整備や活用等を推進しています。

図表2‐9-11 平成26年度の史跡・名勝・天然記念物の指定及び登録記念物の登録

5 文化的景観の保存と活用

 石積みの棚田が営まれる集落、流通・往来の結節点に形成された町場、河川流域の土地利用等、地域における人々の生活又は生業や当該地域の風土により形成された景観地で、国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないものを「文化的景観」と呼んでいます。

(1)重要文化的景観の選定

 文化的景観を有する都道府県又は市町村では、「景観法」に基づく景観計画・条例や文化的景観保存計画等によって文化的景観の適切な保存・活用を図っています。
 このような文化的景観のうち、文化庁では、都道府県又は市町村の申出に基づき、特に重要なものを「重要文化的景観」として選定しています(図表2-9-12)。

図表2‐9-12 平成26年度の重要文化的景観の選定

(2)保存・活用のための取組

 文化庁では、地方公共団体が行う文化的景観に関する保存調査や文化的景観保存計画の策定、地域住民が参加するワークショップ等の普及・啓発、重要文化的景観の整備等の事業を補助しています。
平成26年度は、新たに6件の文化的景観保存計画が策定され、34件の重要文化的景観において、重要な構成要素である家屋の修理・修景や、突発的な豪雨によって被害を受けた構成要素の災害復旧が行われました。

6 伝統的建造物群の保存と活用

 周囲の環境と一体を成して歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値が高いものを「伝統的建造物群」と呼んでおり、城下町や宿場町、門前町、農漁村集落などがこれに当たります。

(1)重要伝統的建造物群保存地区の選定

 伝統的建造物群を有する市町村では、伝統的建造物群やこれと一体を成して価値を形成している環境を保存するために「伝統的建造物群保存地区」を定め、伝統的建造物の現状変更の規制等を行い、歴史的集落や町並みの保存と活用を図っています。
文化庁では、伝統的建造物群保存地区のうち、市町村の申出に基づき、我が国にとってその価値が特に高いものを、「重要伝統的建造物群保存地区」に選定しています(図表2-9-13)。

(2)保存・活用のための取組

 文化庁では、伝統的建造物群を持つ市町村が実施する伝統的建造物群の保存状況等の調査を補助しています。また、重要伝統的建造物群保存地区において、伝統的建造物の修理、伝統的建造物以外の建築物等の修景、伝統的建造物群と一体を成して価値を形成している環境の復旧、防災計画を策定するための調査、防災のための施設・設備の設置、建造物や土地の公有化等の事業を補助しています。

図表2‐9-13 平成26年度の重要伝統的建造物群保存地区の選定

7 文化財保存技術の保護

 我が国固有の文化によって生み出され、現在まで保存・継承されてきた文化財を確実に後世へ伝えていくため、欠くことのできない文化財の修理技術・技能やこれらに用いられる材料・道具の製作技術等を「文化財の保存技術」と呼んでいます。
 文化庁では、文化財の保存技術のうち、保存の措置を講ずる必要があるものを「選定保存技術」に選定するとともに、その技術を正しく体得している者を「保持者」として、技術の保存のための事業を行う団体を「保存団体」として、それぞれ認定し、保護を図っています。

8 埋蔵文化財の保護

 「埋蔵文化財」(土地に埋蔵されている文化財)は、その土地に生きた人々の営みを示す遺産であり、土地に刻まれた地域の歴史と文化そのものです。
 このような埋蔵文化財を保護するために、「埋蔵文化財包蔵地」(全国に約46万5,000件)として周知された土地で開発事業等を行う場合、事前にその遺跡の内容を確認するための試掘・確認調査等を行います。そして、遺跡を現状保存するために調整を行いますが、やむを得ず現状保存できない場合は、遺跡の記録を作成してそれを保存するための発掘調査が必要になります(記録保存調査)。また、地域にとって重要な遺跡を積極的に現状保存するために、発掘調査を行う場合もあります(保存目的調査)。
 現在、毎年約8,000件の発掘調査が全国で行われ、多くの成果が得られています。文化庁では、その成果をより多くの国民に、できるだけ早く、分かりやすく伝えるために、毎年「発掘された日本列島」展を開催しています。平成26年度は20周年を記念して、「日本発掘!」と題した大規模な展示会を実施しました。27年度は、東京都江戸東京博物館、富山県立埋蔵文化財センター、岡山県立博物館、栃木県立博物館、岩手県立博物館を巡回します。

写真 馬形埴輪 (栃木県甲塚古墳 約1,400年前)
馬形埴輪
(栃木県甲塚古墳 約1,400年前)

写真 人体文土器 (岩手県けや木の平団地遺跡 約4,000年前)
人体文土器
(岩手県けや木の平団地遺跡 約4,000年前)

9 「歴史文化基本構想」の普及・促進

 近年、過疎化や少子高齢化に伴う人口減少等、文化財を育み、支えてきた地域の変化により、文化財の継承が困難になってきています。こうした状況の中、地域の文化財をその周辺環境も含めて総合的に保存・活用していくことが重要です。このため、各地方公共団体の文化財保護に関するマスタープランとして、周辺環境も含めて文化財を総合的に保存・活用するために策定する「歴史文化基本構想」について、文化財の保存に限らず、文化財を総合的に活(い)かした地域づくりにも役立つものとして、その策定を推進しています。
 また、文化庁では、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(通称:「歴史まちづくり法」)に基づいて、市町村が、地域に根差した人々の活動と建造物が一体となった良好な市街地の環境を維持・向上させるための計画(歴史的風致維持向上計画)を国土交通省・農林水産省と共に認定しています。認定された市町村は、国による重点的な支援を受けることができます。

10 古墳壁画の保存と活用

 我が国では2例しか確認されていない極彩色古墳壁画である高松塚古墳及びキトラ古墳の両古墳壁画は、高松塚古墳近くにある「国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設」において、両古墳から取り外した壁画の保存修理が行われています。
 高松塚古墳壁画は、壁画修理後の当分の間は古墳の外の適切な場所において保存管理・公開を行うとともに、壁画修理後の古墳現地の扱いや壁画・石室の当分の間の保存管理・公開の方法、場所等について検討を行っています。
 キトラ古墳壁画は、国営飛鳥歴史公園キトラ古墳周辺地区が平成28年度に供用開始されることに向けて、壁画の修理を進めるとともに、壁画保存管理施設や古墳の整備工事を進めています。
 また、国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設では、壁画の保存対策事業に対する国民の理解を深めるため、平成20年度から毎年度、修理作業中の壁画の状況等を公開しています。26年度は26年8月と27年1月の2回実施し、合計3,777人の参加がありました。

11 世界遺産と無形文化遺産

(1)世界遺産

 世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)は、顕著な普遍的価値を持つ文化遺産・自然遺産を、人類全体のための世界の遺産として損傷・破壊等の脅威から保護することを目的として、1972(昭和47)年に採択されました。我が国は平成4年に条約を締結し、27年3月末現在、191か国が締結しています。また、23年11月、第18回世界遺産条約締約国会議において、我が国が21か国から構成される世界遺産委員会の委員国に選出されました。通常、4年間委員国を務めることとなります。
 毎年1回開催される世界遺産委員会においては、締約国からの推薦や諮問機関の評価等に基づいて審議が行われ、顕著な普遍的価値を持つと認められる文化遺産・自然遺産・複合遺産が世界遺産一覧表に記載されます。2015(平成27)年3月末現在で1,007件の遺産(文化遺産779件、自然遺産197件、複合遺産31件)が記載されています(図表2-9-14)。
 2014(平成26)年6月、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が、世界遺産委員会での審議を経て、我が国で18番目の世界遺産として認められました。
 現在、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」及び「国立西洋美術館(本館)」(ル・コルビュジェの建築作品)を世界遺産として推薦しています。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」は、平成27年6月から7月に開催される世界遺産委員会において登録の可否が決定される予定です。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」及び「国立西洋美術館(本館)」(ル・コルビュジェの建築作品)は、28年夏頃の世界遺産委員会で登録の可否が決定される予定です。
 また、2014(平成26)年10月に、文化庁、奈良県及び奈良市が主催となり奈良文書20周年記念会合を開催しました。本会合では、奈良文書20周年を祝うとともに、新たな観点を加えた成果文書を取りまとめました。

図表2‐9-14 我が国の世界遺産一覧


  • ※2 奈良文書:1994(平成6)年に奈良で採択された国際宣言で、我が国特有の木造の文化遺産の保存修理の在り方について世界的な理解を得るきっかけとなったもの。

(2)無形文化遺産の保護に関する取組

 世界各地において、生活様式の変化など社会の変容に伴って、多くの無形文化遺産が衰退や消滅の危機にさらされる中で、2003(平成15)年のユネスコ総会において、「無形文化遺産の保護に関する条約」が採択され、2006(平成18)年4月20日に発効しました。我が国は、2004(平成16)年に3番目の締約国となり、2015(平成27)年3月末現在で161か国が締結しています。各締約国は、条約に基づいて、「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)」の作成や無形文化遺産基金による国際援助を通じて、無形文化遺産の保護や、無形文化遺産の重要性及び相互評価の重要性に関する意識の向上等を図っています。
 2014(平成26)年11月、ユネスコ本部において政府間委員会が開催され、我が国の「和紙:日本の手漉和紙技術」を含めた34件が新たに「代表一覧表」に記載されました(図表2-9-15)。27年3月には「代表一覧表」の記載に向けて、ユネスコに「山・鉾(ほこ)・屋台行事」を再提案しました。28年秋の政府間委員会において記載の可否の審議を受ける予定となっています。

図表2‐9-15 「代表一覧表」に記載されている我が国の無形文化遺産 

第6節 美術館・歴史博物館・劇場等の振興

1 美術館・歴史博物館・劇場等の振興

 文化庁では、美術館・歴史博物館が、地域住民の文化芸術活動・学習活動の場として積極的に活用され、国内外の発信拠点としての機能が充実するよう様々な支援や人材養成等を行っています。
 「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」を実施し、美術館・歴史博物館が中心となって、地域へのアウトリーチ活動、外国人利用のための環境整備(多言語化)、地域の子供を対象にした取組、障害者による芸術活動といった地域と共働する事業を支援しています。
 また、公私立の美術館・歴史博物館の学芸員等の専門的な知識や技術を向上させ、美術館・歴史博物館活動の充実を図るため、国立美術館・国立博物館等の協力を得て、企画展示セミナーなど様々な研修会や講習会等を実施しています。さらに、美術館等の管理・運営や教育普及等を担う専門職員の資質向上を図るため、ミュージアム・マネジメント研修やミュージアム・エデュケーター研修を実施しています。

2 美術品補償制度等

 「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」に基づいて、展覧会のために海外等から借り受けた美術品に損害が生じた場合にその損害を政府が補償する「美術品補償制度」が設けられています。この制度の創設以来、平成27年3月末現在で18件(26年度は4件)の展覧会が美術品補償制度の対象になっています。美術品補償制度によって、展覧会の主催者の保険料負担が軽減され、広く全国で優れた展覧会が安定的・継続的に開催されることが期待されています。
 また、「海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律」によって、従来は強制執行等の禁止措置が担保されていないために借り受けることが困難であった海外の美術品等を公開する展覧会の開催が可能となっています。平成26年度は12件の展覧会で公開するために借り受けた美術品等を指定しました。

3 登録美術品制度

 「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に基づいて、優れた美術品の美術館や博物館における公開を促進する「登録美術品制度」が設けられています。この制度は、優れた美術品について、個人や企業等の所有者からの申請に基づき、専門家の意見を参考にして文化庁長官が登録するものです。登録された美術品は、所有者と美術館の設置者との間で結ばれる登録美術品公開契約に基づき、当該美術館において5年以上の期間にわたって計画的に公開・保管されます。また、登録美術品については、相続税の物納の特例措置(※3)が設けられています。平成27年3月末現在までに、67件(8,377点)の美術品が登録美術品として登録されています。


  • ※3 相続税の物納の特例措置:相続税の物納が認められる優先順位を国債や不動産などと同じ第一位とするもの。物納された美術品は、それまで公開契約を結んでいた美術館に無償で貸与され、引き続き美術館での保管・公開が可能となる。これまでに2件の美術品が物納されている。

4 国立美術館

 国立の美術館として、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館が設置されています。各国立美術館では、それぞれの特色を生かしつつ、5館が連携・協力して、美術作品の収集・展示、教育普及活動やこれらに関する調査研究を行うとともに、我が国の美術振興の拠点として、国内外の研究者との交流、学芸員の資質向上のための研修、公私立美術館に対する助言、地方における巡回展などを行っています(※4)(図表2-9-16)。
 各国立美術館は、定期的に企画展を開催しています。平成26年度においては、「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展ヤゲオ財団コレクションより」(東京国立近代美術館)、「ホイッスラー展」(京都国立近代美術館)、「ジャック・カロ―リアリズムと奇想の劇場」(国立西洋美術館)、「ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉」(国立国際美術館)、「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」(国立新美術館)などを開催しました。東京国立近代美術館フィルムセンターでは、「MoMA ニューヨーク近代美術館 映画コレクション」の上映などを行いました。
 また、美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修を実施したり、国立国会図書館や国立情報学研究所などと連携して美術情報を多元的に発信したりしています。

図表2‐9-16 国立美術館


  • ※4 参照:http://www.artmuseums.go.jp/

5 国立文化財機構

 国立文化財機構は、東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館の4博物館を設置し、有形文化財を収集・保管して広く観覧に供するとともに、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、アジア太平洋無形文化遺産研究センターを加えた7施設において調査・研究などを行うことにより、貴重な国民的財産である文化財の保存と活用を図ることを目的としています(※5)(図表2-9-17)。

図表2‐9-17 国立文化財機構
 各博物館では、現在、国宝・重要文化財を含めて約12万件の文化財を所蔵しています。これらの文化財を活用し、平常展、企画展などを通じて日本の歴史・伝統文化や東洋文化の魅力を国内外に発信する拠点としての役割も担っています。
 平成26年度においては、「日本国宝展」(東京国立博物館)、「国宝 鳥獣戯画と高山寺」(京都国立博物館)、「武家のみやこ 鎌倉の仏像―迫真とエキゾチシズム―」(奈良国立博物館)、「華麗なる宮廷文化 近衞家の国宝―京都・陽明文庫展」(九州国立博物館)などの特別展を開催しました。
 東京文化財研究所では、日本・東洋の美術・芸能等の文化財に関する調査研究や文化財の保存に関する科学的な調査、修復材料・技術の開発に関する研究を行っています。また、海外の博物館・美術館が所蔵する日本古美術品の修復協力、アフガニスタンやミャンマー等アジア諸国を中心とした文化財保存修復に関する協力など、国際交流も進めています。
 奈良文化財研究所では、遺跡、建造物、歴史資料などの調査研究や平城宮跡、飛鳥・藤原宮跡の発掘調査などを進めています。全国各地の発掘調査などに対する指導・助言や発掘調査を行う専門職員などに対する研修も行っています。
 平成23年10月に日本政府とユネスコの協定に基づき設置されたアジア太平洋無形文化遺産研究センターでは、アジア太平洋地域における無形文化遺産保護を強化する拠点の一つとして様々な活動を行っています。
 なお、国立文化財機構は東日本大震災等における文化財レスキュー事業等の経験を踏まえ、大規模災害に対応した文化財等の救出・救援体制を確保するため、平成26年7月に機構内に「文化財防災ネットワーク推進本部」を設置し、今後起こり得る大規模災害に当たって当機構が果たすべき文化財の防災・救援業務に係る研究等を行っていく予定です。


  • ※5 参照:http://www.nich.go.jp

6 日本芸術文化振興会

(1)伝統芸能の保存・振興

 我が国の伝統芸能の振興の拠点として、国立劇場、国立演芸場、国立能楽堂、国立文楽劇場、国立劇場おきなわが設置されています。日本芸術文化振興会は、これらの5館を通して、歌舞伎、文楽、大衆芸能、能楽、組踊などの伝統芸能の公開や伝承者の養成、伝統芸能に関する調査研究・資料の収集及び活用、劇場施設の貸与などの事業を行っています(図表2-9-18)。
 平成26年度は、公演事業として、5館で計185公演(1,050回)を実施しました。物語の展開を理解しやすいように筋を通した「通し狂言」の上演に努めており、歌舞伎では44年ぶりとなる「岡崎」を含む「通し狂言 伊賀越道中双六」などの上演を行いました(国立劇場)。新作にも取り組み、文楽ではシェイクスピア原作の「不破留寿之太夫」(国立劇場)、落語作家の小佐田定雄による「かみなり太鼓」(国立文楽劇場)を上演しました。国立能楽堂では、現行演目の脚本・演出を新たな視点で見直す企画公演「能を再発見する」の最終年度として、観阿弥時代の能「百万」、世阿弥の能「古作 花筐(がたみ)」を上演しました。
 また、平成26年は国立演芸場の開場35周年、国立文楽劇場の開場30周年に当たり、「通し狂言 菅原伝授手習鑑」(国立文楽劇場)など、各館で記念公演を行いました。前年度に開場10周年を迎えた国立劇場おきなわでも、引き続き記念公演として「琉球舞踊特選会」他4公演を上演しました。伝承者養成事業では、27年3月現在、歌舞伎俳優7名、歌舞伎音楽(竹本)1名、歌舞伎音楽(長唄)1名、大衆芸能寄席囃子(ばやし)6名、能楽(三役)3名、文楽3名、組踊10名がそれぞれ研修中です。
 このほか、各館において展示や各種講座などを実施し、伝統芸能に関する理解促進と普及に努めています。

(2)現代舞台芸術の振興・普及

 我が国の現代舞台芸術の振興の拠点として、新国立劇場が設立されています。日本芸術文化振興会は、新国立劇場を通して、オペラ、バレエ、現代舞踊、演劇等の公演の実施や、実演家等の研修、現代舞台芸術に関する調査研究・資料の収集及び活用、劇場施設の貸与等を行っています(※6)(図表2-9-18)。
 平成26年度は、公演事業としてオペラ「パルジファル」、バレエ「眠れる森の美女」、現代舞踊「CLOUD/CROWD」、演劇「三文オペラ」などの新制作に取り組み、計31公演(255回)を実施しました。実演家研修事業では、27年3月現在、オペラ15名、バレエ11名、演劇26名がそれぞれ研修中です。
 また、新国立劇場や新国立劇場舞台美術センター資料館において展示や各種講座などを実施し、現代舞台芸術の理解促進と普及に努めています。

図表2‐9-18 日本芸術文化振興会


  • ※6 参照:http://www.nntt.jac.go.jp/

第7節 国際文化交流を通じた日本文化の発信と国際協力への取組

1 国際文化交流の総合的な推進

(1)文化関係の国際的な会合の開催・参加

1.日中韓文化大臣会合

 日中韓文化大臣会合は、文化交流・協力の強化に向けた方策等について、日中韓3か国の文化担当大臣が意見交換を行うものです。平成26年11月に下村文部科学大臣が横浜市で主催した第6回会合では、「横浜共同声明」を採択し、27年以降の3か国における文化交流・協力を未来志向で一層強化していくことを確認しました。
 これまでの会合での合意に基づき、「東アジア文化都市」、「日中韓芸術祭」、「日中韓文化芸術教育フォーラム」などの3か国共同事業を実施しています。

Column No.13 日中韓文化大臣会合

 日中韓文化大臣会合は、平成19年1月に開催された日中韓首脳会談において、同年が「日中韓文化交流年」と位置付けられたことを受けて、同年に第1回会合が中国南通市で開催されました。
 これ以降、3か国で順番に開催し、26年11月の横浜市における第6回会合は、第3回の奈良市に続いて、日本が主催する2度目の開催となりました。
 政治・経済・外交において関係を深める中国及び韓国との間で、文化協力による相互理解・人的交流の強化を図ることが近年ますます重要になっており、本会合で確認された具体的な協力方策を通じて、日中韓の文化交流を一層促進することとしています。

写真 第6回日中韓文化大臣会合の様子
第6回日中韓文化大臣会合の様子

2.ASEAN+3文化大臣会合

 ASEAN+3文化大臣会合は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の10か国と日中韓3か国の文化担当大臣が、ASEAN統合の深化に向けて文化分野におけるプログラムについて議論を行うものです。平成26年4月にベトナムで開催された第6回会合では、下村文部科学大臣が文化分野でASEANとの協力関係を一層進めていく意向を表明しました。
 この会合に合わせ、日本の提案によって「日ASEAN文化大臣会合」が初めて開催され、下村文部科学大臣から、我が国が強みを持つ文化分野の専門人材の派遣による交流等、ASEANとの相互交流の強化、人材育成の支援等を行っていくことが提案され、ASEAN各国大臣から賛同を得ました。

(2)文化芸術活動を行う者の国際的な交流

1.文化交流使の派遣

 世界の人々の日本文化への理解の深化や日本と外国の文化人等のネットワーク形成・強化につながる活動の展開を図るため、芸術家、文化人など文化芸術に携わる人々を一定期間「文化交流使」として指名して派遣しています。文化交流使は、海外で実演、実技指導、講演、講義、上映、展示、共同制作、情報交換などを行っています。平成26年度は、8人を新たに指名し、日本食研究者、琵琶演奏家、CGアーティスト、能楽師、演劇作家といった様々な分野で活躍中の文化人・芸術家による国際文化交流と日本文化の発信活動を展開しました。また、第6回日中韓文化大臣会合における合意を受けて、新たに日中韓の各国が自国の中堅・若手芸術家等を一定期間相互に派遣する「東アジア文化交流使」を開始しました。26年度東アジア文化交流使に指名された4人・1グループは、中国と韓国において演奏公演や、共同制作に向けた調査などを行いました。

2.ハイレベル文化人専門家の招へい

 文化庁では、外国のハイレベルの文化人、芸術家や文化財専門家などを招へいし、我が国関係者との意見交換などを実施しています。平成26年度は、シンガポール、オーストラリア、アメリカ、スイス、サモア、タイ、カナダ、中国、韓国、ポルトガルの10か国から11人の専門家を招へいしました。

(3)東アジア諸国や国際交流年に設定された国々等との交流

1.東アジア文化都市

 東アジア文化都市は、日中韓3か国から1都市ずつを選定し、その都市において現代の芸術文化や伝統文化、多彩な生活文化に関する様々な文化芸術イベント等を実施する文化事業であり、平成26年から開始しました。日本における東アジア文化都市として、26年は神奈川県横浜市が、27年は新潟県新潟市がそれぞれ選ばれています(※7)。

2.「国際交流年」における大型文化事業の開催

 文化、教育、スポーツなど幅広い分野で官民を通じた交流事業を開催・実施することによって諸外国との友好と相互理解を深めるため、多くの国・地域との「国際交流年」が設定されています。平成26年は「日スイス外交関係樹立150周年」、「日カリブ交流年」、「日ボリビア外交関係樹立100周年」「日ブルネイ外交関係樹立30周年」などに当たり、文化庁では様々な事業を主催・支援しました。

3.文化芸術の海外発信拠点形成事業

 文化庁では、日本各地に文化芸術創造と国際的発信の拠点を推進するため、異文化交流の担い手となる外国人芸術家の積極的受入れや、国際的な文化芸術創造といった各地域において取り組まれている特色ある国際文化交流事業(アーティスト・イン・レジデンス)を支援しています。平成26年度は、22件の団体に対して支援を行いました。


  • ※7 参照:第1部 特集1 第4節5

2 芸術文化の国際交流の推進

 芸術文化の国際交流の推進は、我が国の芸術文化水準の向上を図るとともに我が国に対するイメージの向上や諸外国との相互理解の促進に貢献するものです。文化庁では、芸術文化の国際交流を推進するため、芸術団体が海外公演・有名な国際芸術祭に参加したり、海外映画祭等に出品したりする取組を支援しています。

3 文化財国際交流・協力の推進

 文化庁では、「文化芸術振興基本法」や「文化芸術振興基本方針」などを踏まえ、世界に誇ることができる芸術を創造し、これを国内外に発信するとともに、文化芸術の国際交流・文化遺産の保護における国際協力などを推進しています。

(1)文化遺産の保護における国際協力

 「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」を踏まえ、文化遺産国際協力コンソーシアムの下で、文化庁、外務省、大学・研究機関、民間助成団体等が一体となって連携協力し、文化遺産の保護における国際協力を効果的かつ効率的に推進しています。具体的には、国内の各研究機関等とネットワークを構築して、文化遺産国際協力に関する調査研究や普及啓発などを行っています。

(2)国際社会からの要請等に基づく支援

 文化庁では、文化遺産国際協力コンソーシアム、外務省や国際交流基金その他の関係機関との協力の下で、文化遺産の保護における国際貢献事業として、1.緊急的文化財国際事業、2.文化遺産国際協力拠点交流事業を実施しています。

1.緊急的文化財国際事業

 平成16年度から、紛争や自然災害によって被災した文化遺産について関係国や機関からの要請等に応じ、我が国の専門家の派遣や相手国の専門家の招へいを行うなど緊急対応の専門家交流事業を実施しています。平成26年度は、シリア・アラブ共和国における文化遺産被災状況調査を実施しました。

2.文化遺産国際協力拠点交流事業

 平成19年度から、海外の国や地域において文化遺産の保護に重要な役割を果たす機関等との交流や協力を行う拠点交流事業を実施し、現地で文化遺産の保護に携わる人材の養成に取り組んでいます。26年度からは、東南アジア5か国における文化遺産を保存するための拠点交流事業や、大洋州島しょの文化遺産保護に関する拠点交流事業を実施しました。

(3)二国間取決め等による国際交流・協力

1.日本古美術海外展

 平成26年6月から9月までニューサウスウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー)において、日本古美術海外展「能狂言」展を開催しました。展覧会では、能楽に関する多数の文化財を収集し、調査研究を行っている国立能楽堂の所蔵作品を中心に、面や装束、楽器、謡本、絵画資料などの文化財を紹介しました。

写真 ニューサウスウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー) 日本古美術海外展「能狂言」展1 写真 ニューサウスウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー) 日本古美術海外展「能狂言」展2
ニューサウスウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー)
日本古美術海外展「能狂言」展

2.アジア諸国への文化財の保存修復協力

 文化庁では、アジア諸国に文化庁の調査官等を派遣して、歴史的建造物の共同調査や保存修復についての技術協力を行っています。また、アジア諸国の文化財の専門家や行政官を招へいして、技術協力に関する協議や研修を行うなど文化財建造物の保存修復分野における研究交流、人材育成を推進しています。

3.イタリアとの交流・協力

 我が国は、文化財の保存修復や国際協力の分野で長年の経験を有するイタリアと日伊文化遺産国際協力に関する覚書を締結して、積極的な交流を行っています。平成20年度から壁画の保存修復と活用の調和に関する協力や、文化的景観と歴史的街区の保護に関する協力等の共同プロジェクトが進行しています。

4.イクロムとの連携協力

 我が国は、国際機関である文化財保存修復研究国際センター(ICCROM:イクロム)に加盟し、分担金の拠出や国際的な研究事業等への協力を行っています。文化庁では、平成12年度から文化庁の調査官を派遣し、連携の強化を図っています。

(4)文化財の不法な輸出入等の規制

 我が国では、不法な文化財取引を防止し、各国の文化財を不法な輸出入等の危険から保護するため、「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」と「文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律」に基づいて、外国の博物館等から盗取された文化財の輸入が禁止されています。盗難の被害者は、民法で認められている代価弁償を条件として、特例として回復請求期間が10年間に延長されています。

(5)武力紛争の際の文化財の保護

 我が国では、武力紛争時における文化財を保護するため、「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」と「武力紛争の際の文化財の保護に関する法律」等に基づいて、武力紛争時に他国に占領された地域(被占領地域)から流出した文化財の輸入が規制されています。また、武力紛争時において戦闘行為として文化財を損壊する行為や、文化財を軍事目的に利用する行為等が罰則の対象となっています。

第8節 社会の変化に対応した国語施策の推進

 国語は、国民の生活に密接に関係し、我が国の文化の基盤になるものです。文化庁では、時代の変化や社会の進展に伴って生じる国語に関する諸問題に対応して、より適切な国語の在り方を検討しながら、その改善のために必要な施策を実施しています。

1 常用漢字表に関する手当て等の検討

 「常用漢字表」(平成22年11月30日内閣告示)は、文化審議会「改定常用漢字表(答申)」(22年6月7日)を踏まえて定められています。文化庁では、常用漢字表をより活用しやすくするための検討を行っています。25年度は「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」(26年2月)(※8)を取りまとめ、26年度からは、文化審議会国語分科会において「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成について審議しています。
 この指針とは、例えば、明朝体に代表される、印刷文字と手書き文字における表現の差についてや、筆写の楷書ではいろいろな書き方があるものなどについて、具体的に分かりやすく解説するものです(図表2-9-19)。

図表2‐9-19 明朝体と筆写の楷書との関係


  • ※8 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/ijidoukun_140221.pdf

2 国語に関する世論調査

 文化庁では、平成7年度から「国語に関する世論調査」を実施し(※9)、現在の社会変化に伴う日本人の国語意識の現状について調査し、その結果を毎年秋に公表しています。26年9月に公表した25年度「国語に関する世論調査」では、社会全体の言葉や言葉遣いについて、人とのコミュニケーションについて、読書、敬語等について取り上げました。
 また、平成26年4月から27年2月に掛けて、YouTube文部科学省公式チャンネルMEXT chに「ことば食堂へようこそ!」(全20話)を毎月2話ずつ公開しました(※10)。これは「国語に関する世論調査」で12年度調査から取り上げてきた慣用句等の調査結果に基づいて作成した動画です。


  • ※9 参照:http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html
  • ※10 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kotoba_shokudo/index.html(現在は全話視聴することができる。)

3 消滅の危機にある言語・方言に関する取組

 平成21年2月にユネスコがアイヌ語など国内の八つの言語・方言(※11)が消滅の危機(※12)にあると発表したことを受けて、文化庁では、これらの実態調査を行っています(図表2-9-20)。また、23年3月11日に起きた東日本大震災の被災地の方言に関する調査を行い、その保存・継承のための取組を支援しています。

図表2‐9-20 ユネスコによる日本における消滅の危機にある言語・方言とその危機状況
 ユネスコが認定した危機言語・方言のうち、平成22年度と24年度にアイヌ語、奄美(あまみ)方言、宮古方言、与那国方言について、25年度と26年度に八丈方言、国頭(くにがみ)方言、沖縄方言、八重山方言について、それぞれ危機度の実態や保存・継承のための取組状況を調査しました。
 また、文化庁では、平成26年12月に東京都八丈町において、八丈町、国立国語研究所と「日本の危機言語・方言サミットin八丈島」を共催し、「危機的な状況にある言語・方言の保存・継承に係る取組等の実態に関する調査研究」の成果を報告しました。
 平成25年度、26年度に、「極めて深刻」とされたアイヌ語を保存・継承するため、北海道平取(びらとり)町のアイヌ語音声資料を文字化したり翻訳や注釈を作成したりするなどアーカイブ(保存記録)化に関する研究を進め、27年1月と2月に、北海道札幌市と平取町において「アイヌ語の保存・継承に必要なアーカイブ化に関する調査研究報告会」を開催しました。
 さらに、文化庁では、東日本大震災によって被災地の方言が危機的な状況にあると考え、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の各方言の特徴と方言に対する意識を調査し、平成25年度と26年度には、被災地における方言の活性化支援事業を実施するなど被災地の方言の保存・継承に資する活動を支援しています。
 なお、平成22年度以降の消滅の危機にある言語・方言に関する調査研究の結果等については、文化庁ウェブサイトで公開しています(※13)。

写真 アイヌ語の調査研究報告会(札幌)
アイヌ語の調査研究報告会(札幌)

写真 被災地方言の活性化支援事業(八戸)
被災地方言の活性化支援事業(八戸)


  • ※11 ユネスコでは、日本で「方言」として扱われる言葉も「言語」として扱っている。
  • ※12 ユネスコでは、消滅の危機状況について、危機の度合いの高いものから順に、【絶滅】、【極めて深刻】、【重大な危険】、【危険】、【脆(ぜい)弱】、【安全】と表している。
  • ※13 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/index.html

Column No.14 国語に関する世論調査

 平成25年度「国語に関する世論調査」では、社会全体の言葉や言葉遣い、人とのコミュニケーション、読書、敬語、漢字を用いた語と外来語の意味・使い分け、「~る」「~する」形の動詞、慣用句等の意味などについて調査しました。
 ここでは、人とのコミュニケーションについて、「あなたは、初めて会った人とでも早く打ち解ける方だと思いますか、それとも、打ち解けるまでに時間が掛かる方だと思いますか。」という問いの調査結果を紹介します(図表2-9-21)。

図表2‐9-21 初めて会った人と打ち解けるまでの時間
 性・年齢別に見ると、「早く打ち解ける方(男性)」の割合は、16~19歳では52.6%、20代では47.3%となっており、同年代の女性を上回っています。しかし、30代では35.6%、40代では36.4%と、20代に比べて12~11ポイントも下回り、女性と逆転しています。また「打ち解けるのに時間が掛かる(男性)」は、他の年代が全て30%台であるのに対し、30代では46.5%と、目立って高くなっています。
 一方、「早く打ち解ける方(女性)」の割合は、16~19歳から40代に掛けて、45%前後で推移し、50代で40%を下回るものの、60代以上では、45%を超えています。
 初めて会った人と打ち解けるまでの時間について、男性と女性との間で上記のような意識の差が見られました。

第9節 外国人に対する日本語教育施策の推進

1 外国人に対する日本語教育施策

 国内に在留する外国人数は、約212万人と近年は200万人を超えて推移しており(平成26年12月末時点、法務省調べ)、滞在も長期化する傾向にあります。国内の日本語学習者数は、東日本大震災の影響で一時減少したものの、その後は増加し、約17万人(26年11月時点、文化庁調べ)となっています。日本で暮らす多くの外国人が様々な目的で日本語を学んでいます(図表2-9-22)。
 このような状況の下で、文化庁では、コミュニケーションの手段、文化発信の基盤としての日本語教育の推進を図るため様々な取組を行っています(図表2-9-23)。

図表2‐9-22 国内の日本語教育実施機関・施設等数、日本語教員数、日本語学習者数の推移

図表2‐9-23 日本語教育に関する主な事業

2 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容・方法の充実

 文化庁では、文化審議会国語分科会日本語教育小委員会が取りまとめた「『生活者としての外国人』に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案」など(図表2-9-24)を踏まえ、これらが地域の日本語教育を推進していく上でよりどころの一つとして一層活用されるよう、周知を図っています。

図表2‐9-24 「生活者としての外国人」に対する日本語教育プログラムの実践のための5点セット 

3 日本語教育の更なる推進に向けた施策の検討

 日本語教育をめぐる状況の変化に対応するため、文化審議会国語分科会日本語教育小委員会は、「課題整理に関するワーキンググループ」を設置し、平成25年2月に「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と論点の整理について(報告)」を取りまとめ、日本語教育を推進するに当たっての主な論点を11に整理しました。さらに日本語教育小委員会では、26年1月に11項目の論点ごとに意見やデータを整理し、「日本語教育の推進に当たっての主な論点に関する意見の整理について(報告)」(※14)を取りまとめました。現在、論点7「日本語教育のボランティアについて」、論点8「日本語教育に関する調査研究の体制について」検討を行っているところです。


  • ※14 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/hokoku_140131.pdf

第10節 新しい時代に対応した著作権施策の展開

 文化庁では、我が国が標榜(ぼう)する「文化芸術立国」及び「知的財産立国」を実現するとの基本理念に立ちつつ、デジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の創作手段や利用手段の多様化などの社会状況の変化に対応した著作権施策を展開しています。

1 著作権法の改正

 近年のデジタル化・ネットワーク化の進展や国際協調に対応する観点から、「著作権法」は、権利の保護と公正な利用の調和を図りつつ、時宜に応じて改正されてきました。平成26年5月、電子書籍の普及など出版をめぐる状況の変化等に対応するため、著作権法が改正されました。
 この改正は、1.電子書籍に対応した出版権の整備、2.「視聴覚的実演に関する北京条約(視聴覚的実演条約)(※15)」の実施に伴う規定を整備するものです。具体的には、

  1. 電子書籍に対応した出版権の整備は、出版者がいわゆる「電子出版」について著作権者から出版権の設定を受けて、インターネットを用いた無断送信等を差し止めることができるよう、紙媒体による出版のみを対象としていた従来の出版権制度を見直すものです。このことによって、紙媒体による出版文化の継承、発展と健全な電子書籍市場の形成が図られ、我が国の多様で豊かな出版文化の更なる進展に寄与することが期待されます。
  2. 「視聴覚的実演条約」の実施に伴う規定の整備は、俳優や舞踊家等が行う視聴覚的実演に関する国際的な保護を強化するために行うものであり、今まで我が国が保護の対象としていなかった実演のうち、「視聴覚的実演条約」の締約国の国民が行う実演が新たに著作権法による保護の対象となります。
     これらの改正事項のうち、1.については平成27年1月1日から施行されています。また、「視聴覚的実演条約」の実施に伴う規定については、「視聴覚的実演条約」が日本について効力を生ずる日(30か国の批准又は加入により発効)から施行されます(※16)。

  • ※15 参照:第2部 第9章 第10節5(2)
  • ※16 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h26_hokaisei/

2 著作権分科会における検討

 文化審議会著作権分科会は、政府の「知的財産推進計画2014」(平成26年7月知的財産戦略本部決定)等に掲げられている事項を含めた諸課題に対応するため、1.法制・基本問題小委員会、2.著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会、3.国際小委員会の三つの小委員会を設けて著作権に関する様々な課題について検討を行いました。

(1)法制・基本問題小委員会

 法制・基本問題小委員会では、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(仮称)(※17)」の締結に向けて障害者の情報アクセス機会の確保・向上を図る方策や、著作物等のアーカイブ化を促進する方策などを検討しました。


  • ※17 参照:第2部 第9章 第10節5(2)

(2)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会

 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会では、クラウドサービス等と著作権に関する課題について検討し、平成27年2月に報告書を取りまとめました(※18)。この報告書では、

  1. いわゆる「ロッカー型クラウドサービス」(※19)について、利用者が用意したコンテンツを自らがクラウド上に保存し、自らの所有する様々な端末で利用することは、基本的には法律上の例外規定が適用される「私的使用目的」の範囲内であり、著作権者等の許諾は不要であること
  2. 契約処理コストの低減等を図るため、その他の著作権者等の許諾を要するタイプの同サービスについて、権利者団体から提案された「音楽集中管理センター」(仮称)の設立に向けた取組を進めること
    などを提言しました。このほか、著作物のクリエーターに対して適切な対価を還元するに当たっての諸課題について検討しました。

  • ※18 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hogoriyo/h26_10/pdf/shiryo_1.pdf
  • ※19 ロッカー型クラウドサービス:利用者が、クラウド上のサーバー(ロッカー)に保存されるコンテンツを自らの様々な携帯端末等において利用することができるようにするサービスのこと。

(3)国際小委員会

 国際小委員会では、インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方等について検討しました。

3 著作物の円滑な流通の促進

 インターネットの普及は、著作物のデジタル化とあいまって、著作物の流通形態を劇的に変化させています。このような状況の中で、文化庁は、著作物の流通の促進を図っています。

(1)「著作権等管理事業法」の的確な運用

 著作物等の利用者の便宜を図るとともに、権利の実効性を高めるため、著作物等を集中的に管理する方式が普及しています。これらの事業を行う著作権等管理事業者に対して、「著作権等管理事業法」に基づき、年度ごとの事業報告の徴収や定期的な立入検査などを行い、適切に事業が行われるよう指導監督を行っています(登録事業者数:33事業者〈平成27年4月現在〉)。

(2)著作権者不明等の場合における裁定制度の運用・改善

 著作権者等やその所在が不明の場合に、文化庁長官の裁定を受けて著作物等を適法に利用するための「裁定制度」の運用を行っています。平成26年度は書籍における著作物や放送番組における実演など1,278件の著作物等の利用について裁定を行いました。
 また、権利者不明著作物を含む過去のコンテンツ資産の利用を促進していくため、裁定制度の手続の簡素化、迅速化を図っています。平成26年8月に権利者捜索のために利用者に求めている「相当な努力」を定めた文化庁告示を改正するとともに、運用の改善を図りました(※20)。


  • ※20 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/pdf/minaoshi.pdf

(3)著作権登録制度の運用・改善

 著作権に関する事実関係の公示や、著作権が移転した場合の取引の安全の確保などのため、著作権法に基づく登録事務を行っています。登録された著作権登録情報は、平成25年1月から完全電子化され、検索しやすくなりました。

4 著作権教育の充実

 著作権に関する意識や知識を身に付けることは、今日ますます重要となっており、現行の中・高等学校の学習指導要領においても著作権について取り扱っています。文化庁では、全国各地での講習会の開催や教材の作成・提供を行っています。講習会は、国民一般、都道府県等著作権事務担当者、図書館等職員、教職員を対象として毎年十数か所で開催されています。教材は、児童生徒を対象とした著作権学習ソフトウェア、教職員を対象とした指導事例集、大学生や企業を対象とした映像資料、初心者向けのテキスト、著作権Q&Aデータベース「著作権なるほど質問箱」などを、文化庁ウェブサイトにより広く提供しています(※21)。
 このほか、関係機関・団体などが主催する著作権講習会への講師の派遣や、著作権教育の充実のため関係団体との連携の促進などを行う著作権教育連絡協議会を開催しています。
 また、文化庁では、平成24年の著作権法改正で導入された違法ダウンロードの刑事罰化に関する質問を整理して公開しているほか、関係事業者と連携しつつ周知に努めています(※22)。

写真 平成26年度図書館等職員著作権実務講習会(京都会場)の様子
平成26年度図書館等職員著作権実務講習会(京都会場)の様子


  • ※21 参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/
  • ※22 詳細については参照:http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/online.html

Column No.15 意思表示システム

 ネットワーク社会の進展により、インターネット等のネットワークを介して、著作物が広く、容易に流通するようになっており、これに伴い他人の著作物を利用する機会も増大しています。著作権制度においては、著作物等の利用には原則として著作権者等の事前の許諾を要することとなっているため、こうした環境変化に対応して、著作物等の積極的活用を図るための仕組みを構築することが社会的に要請されています。その方策の一つとして、著作権者等があらかじめ一定の利用条件を付した意思表示を行うことによって、利用者が利用の都度、著作権者等の許諾を得る負担を軽減する意思表示システムがあります。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
 意思表示システムには、文化庁によって制定された自由利用マークのほかに、民間において運用されているものがあります。中でも、アメリカ合衆国において発足したNPO法人の運用するクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(※23)(CCライセンス)は、世界各国に普及しており、平成26年には約8億8,200万以上の著作物等にCCライセンスが付されています。CCライセンスは、「表示=作品のクレジットを表示すること」、「非営利=営利目的の利用をしないこと」、「改変禁止=元の作品を改変しないこと」、「継承=元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること」の四つの条件を組み合わせて利用することができます。著作権者等は、著作物等を公表する際、自身の選択するCCライセンスのタイプに応じた画像アイコンを表示したライセンスバナーやライセンスURL等を著作物等に付すことで、条件を分かりやすく表示して、法的な利用許諾(ライセンス)を行うことが可能となります。
 CCライセンスをはじめとする意思表示システムは、世界中のウェブサービス事業者や公的機関の間でも普及しつつあり、著作物等の流通推進の上で、より一層の発展が期待されています。


  • ※23 参照:http://creativecommons.jp/licenses/

5 国際的課題への対応

 デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、著作物の国境を越えた新たな流通形態が生まれ、我が国コンテンツの海外での侵害形態として、CD、DVD等いわゆる「パッケージ」の海賊版に加え、インターネット上の著作権侵害が深刻な問題となっています。文化庁では、このような現状に対応した適切な海賊版(違法複製物)対策と国際ルールの構築を積極的に推進しています。

(1)海外における海賊版対策

 アジア地域を中心に、我が国のゲームソフト、アニメ、音楽などに対する関心が高まる一方で、これらを違法に複製した海賊版の製造・流通及びインターネット上の著作権侵害が、放置することのできない深刻な問題となっています。このため、文化庁では、権利者による権利行使の実効性を高めるための環境整備を目的として、

  1. 二国間協議等の場を通じた侵害発生国・地域への取締強化の要請
  2. 侵害発生国・地域における法制面での権利執行の強化の支援
  3. 侵害発生国・地域の取締機関職員を対象としたトレーニングセミナーの実施
  4. 我が国の企業等の諸外国での権利行使の支援
  5. 侵害発生国・地域における著作権普及啓発事業の実施

 などに取り組んでいます。
 このうち、4.の我が国の企業等の諸外国での権利行使の支援については、平成27年度から新たにインターネット上の著作権侵害の状況や対処方法・事例等を調査した上で、実践的なハンドブックを作成し、セミナーも実施する予定です。

(2)国際的なルールづくりの参画

 著作権に関する国際的なルールは、国際連合の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)(※24)が中心となって作られています。
 平成24年6月には「視聴覚実演に関する北京条約」が、また、25年6月には視覚障害者及びその他の読字障害者による著作物のアクセスと利用の促進を目的とした「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(仮称)」がWIPOにおいて採択されました。「視聴覚実演に関する北京条約」については、26年5月に国会においてその締結が承認されたことを受け、6月に加入しました。また、放送機関の保護に関する新条約についても現在議論されており、我が国は積極的に参画しています。
 さらに、対アジア諸国を中心に、経済連携協定(EPA)交渉等の中で著作権等関係条約の締結を働きかけています。


  • ※24 参照:第2部 第10章 第1節3

第11節 宗教法人制度と宗務行政

1 宗教法人制度の概要

 現在、我が国には、教派、宗派、教団といった大規模な宗教団体や、神社、寺院、教会などの大小様々な宗教団体が存在し、多様な宗教活動を行っています。このうち、約18万2,000の宗教団体が「宗教法人法」に基づく宗教法人となっています(図表2-9-25、2-9-26)。
 宗教法人制度を定める宗教法人法の目的は、宗教団体に法人格を与え、宗教団体が自由で自主的な活動を行うための財産や団体組織の管理の基礎を確保することにあります。宗教法人制度は、憲法の保障する信教の自由、政教分離の原則の下で、宗教法人の宗教活動の自由を最大限に保障するため、所轄庁の関与をできるだけ少なくし、各宗教法人の自主的・自律的な運営に委ねています。一方、宗教法人の責任を明確にし、その公共性に配慮することを骨子として全体系が組み立てられています。

図表2‐9-25 宗教法人数 図表2‐9-26 系統別信者数

2 宗務行政の推進

(1)宗教法人の管理運営の推進

写真 宗教法人の管理運営の推進

 文化庁では、都道府県の宗務行政に対する指導・助言、都道府県事務担当者の研修会、宗教法人のための実務研修会などの実施、手引書や映像教材の作成などを行っています。
 また、我が国における宗教の動向を把握するため、毎年度、宗教界の協力を得て宗教法人に関する宗教統計調査を実施し、「宗教年鑑」として発行するほか、宗教に関する資料を収集しています。

(2)不活動宗教法人対策の推進

 宗教法人の中には、設立後、何らかの事情によって活動を停止してしまったいわゆる「不活動宗教法人」が存在します。不活動宗教法人は、その法人格が売買の対象となり、第三者が法人格を悪用して事業を行うなど社会的な問題を引き起こすおそれがあり、ひいては宗教法人制度全体に対する社会的信頼を損なうことにもなりかねません。
 このため、文化庁と都道府県においては、不活動状態に陥った法人について、活動再開ができない場合には、吸収合併や任意解散の認証によって、また、これらの方法で対応できない場合には、裁判所に解散命令の申立てを行うことによって、不活動宗教法人の整理を進めています。

(3)宗教法人審議会

 宗教法人の信教の自由を保障し、宗教上の特性などに配慮するため、文部科学大臣の諮問機関として宗教法人審議会が設置されています。

第12節 アイヌ文化の振興

 文部科学省と国土交通省では、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」に基づいて、同法の規定に基づく業務を行う団体として公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構を指定し、アイヌに関する研究等の助成、アイヌ語の振興、アイヌ文化の伝承再生や文化交流、普及事業、優れたアイヌ文化活動の表彰やアイヌの伝統的生活空間(イオル)の再生事業等を支援しています。
 現在、「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針について」(平成26年6月13日閣議決定)を踏まえ、国立のアイヌ文化博物館(仮称)の整備・運営に向けた調査・検討を進めています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成27年09月 --