ここからサイトの主なメニューです

第8章 スポーツ立国の実現

総論

 スポーツは、世界共通の人類の文化であるとともに、青少年の健全育成や、地域社会の再生、心身の健康の保持増進、社会・経済の活力の創造、我が国の国際的地位の向上など、国民生活において多面にわたる役割を担うものです。これらの役割などを考慮し、「スポーツを通じてすべての人々が幸福で豊かな生活を営むことができる社会」の創出を目指すことが重要です。
 文部科学省では、「スポーツ基本法」で示された基本理念にのっとり、「スポーツ基本計画」(平成24年3月30日)に基づき、スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図っています。
 また、「スポーツ基本法」は、基本理念の一つとして、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつスポーツが推進されなければならないことも掲げています。近年、パラリンピック競技大会をはじめ、障害者スポーツにおける競技性の向上は目覚ましく、福祉やリハビリテーションの観点に加えてスポーツの振興の観点からも、障害者スポーツに関する施策を一層推進していく必要性が高まってきました。こうした状況に鑑み、平成26年度にスポーツ振興の観点から行う障害者スポーツに関する事業が厚生労働省から文部科学省に移管されました。文部科学省では、障害者福祉を担当する厚生労働省とも連携しながら、「スポーツ基本法」の理念が実現されるよう、競技スポーツから地域スポーツまで幅広く障害者スポーツを推進しています。
 さらに、平成27年2月に「文部科学省設置法の一部を改正する法律案」を第189回通常国会に提出し、同法案は同年5月13日に成立しました。同法では、文部科学省の外局として平成27年10月にスポーツ庁を設置すること等を規定しており、スポーツ庁では、スポーツを通じた健康増進、地域活性化、国際的地位の向上など、多面にわたるスポーツの役割をより一層高めることとしています(※1)。


  • ※1 参照:第1部 特集2 第3節

第1節 「スポーツ基本計画」の推進とスポーツ振興財源

(1)スポーツ基本計画

 文部科学省では、「スポーツ基本法」に基づき、スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「スポーツ基本計画」(平成24年3月30日)を策定しました。この計画は、「スポーツを通じてすべての人々が幸福で豊かな生活を営むことができる社会の創出」を目指し、24年度以降の10年間の基本方針と5年間に実施する施策を示しています。
 スポーツ基本計画では、政策課題として、1.子供のスポーツ機会の充実、2.ライフステージに応じたスポーツ活動の推進、3.住民が主体的に参画する地域のスポーツ環境の整備、4.国際競技力の向上、5.オリンピック等の国際競技大会等の招致・開催等を通じた国際交流・貢献の推進、6.ドーピング防止やスポーツ仲裁の推進によるスポーツ界の透明性、公平・公正性の向上、7.スポーツ界における好循環の創出に向けたトップスポーツと地域におけるスポーツとの連携・協働の推進の7つを掲げています(図表2-8-1)。また、これらの政策課題ごとに政策目標を設定しスポーツの推進に取り組み、スポーツ立国の実現を目指すこととしています。
 スポーツ基本計画の実施を通じてスポーツ立国を実現させていくためには、その進捗状況について計画期間中に不断の検証を行い必要な施策を講じるとともに、検証の結果を次期計画策定時の改善に着実に反映させることが重要です。このため、計画では、計画が未達成の場合に設定目標の当否を含めて原因を客観的に検証するとともに、計画内容の見直しに当たっては、内外の社会情勢やスポーツ界の変化を踏まえ、着実かつ効果的な改善方策を検討することとしています。また、計画の進捗状況や施策の効果をより適切に点検・評価することを可能とする評価方法や指標等の開発を図ります。その際、国民の参加によるスポーツの推進の観点から、国民に分かりやすく説明できるよう工夫することとしています。

図表2‐8‐1 「スポーツ基本計画」の全体像

(2)スポーツ振興財源

 文部科学省のスポーツ関係予算は、平成27年度で約290億円であり、国費では行き届き難いスポーツ振興活動への助成を行い、スポーツ振興の補完的財源としての役割を果たしているのがスポーツ振興くじとスポーツ振興基金です。

1.スポーツ振興くじ

 スポーツ振興くじは、サッカーの試合の結果(勝敗・得点)を対象とするくじを販売し、その収益により、地方公共団体・スポーツ団体が行う地域スポーツの振興や環境整備などの事業に助成する制度です。豊かなスポーツ環境づくりのための財源確保を目的として「スポーツ議員連盟」により提案され、平成10年5月に議員立法として成立した「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」により創設されました。
 スポーツ振興くじの収益は、3分の1が地方公共団体などへ、3分の1がスポーツ団体へ助成金として支給され、地域のスポーツ施設整備や地域でのスポーツ教室の開催など、誰もが身近にスポーツに親しむことのできる環境を整備するための事業等に充てることができます。また、残りの3分の1は国庫に納付されています。
 平成13年3月からJリーグの試合を対象としたくじの全国販売が始まり、14年度からその収益を活用した助成が開始されました。その後、売上げが落ち込んだ時期もありましたが、18年度に高額当せんくじ「BIG」(1等最高6億円)を販売し、売上げを伸ばすことができました。また、25年度からは1等当せん金額を引き上げたくじ「BIG」(1等最高10億円)や海外リーグの試合を対象としたくじを販売するなどの取組により、1,000億円以上を売り上げるなど一層のスポーツ振興財源の確保を図っています。
 平成26年度は、以下の事業に対し、約193億円の助成を行いました。

平成26年度スポーツ振興くじ助成金配分額

2.スポーツ振興基金

 スポーツ振興基金は、我が国の国際競技大会における不振などを受け、競技水準の向上に向けた気運が高まる中、スポーツ関係者、経済界など民間各界からの要請等を踏まえて平成2年に設立されました。
 政府出資金250億円と、民間からの寄附金約45億円の合計約295億円を原資に、その運用益等を財源として、トップアスリートの強化事業などに対する助成が行われています。
 平成26年度は、以下の事業に対し、約13億円の助成を行いました。

平成26年度スポーツ振興基金助成金配分額

第2節 子供のスポーツ機会の充実

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
(健やかな体の育成)
【成果指標】

  • 体力の向上傾向を確実にする(今後10年間で子供の体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す)。

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年に公表した体力・運動能力調査の結果(50m走 単位:秒)
    平成23年度:
     7歳男子10.68 7歳女子10.98
     9歳男子9.56 9歳女子9.89
     11歳男子8.88 11歳女子9.18
    平成24年度:
     7歳男子10.62 7歳女子10.91
     9歳男子9.59 9歳女子9.89
     11歳男子8.81 11歳女子9.13
    平成25年度:
     7歳男子10.61 7歳女子10.93
     9歳男子9.67 9歳女子9.98
     11歳男子8.90 11歳女子9.12
    (参考)
    昭和60年度:
     7歳男子10.30 7歳女子10.68
     9歳男子9.40 9歳女子9.74
     11歳男子8.75 11歳女子9.00
  • 子供の体力の向上傾向を維持し、確実なものとすることが課題。

1 子供の体力の現状と課題

 人間が発達・成長し、創造的な活動を行っていくために、体力は必要不可欠なものです。しかし、子供の基礎的運動能力は昭和60年頃をピークとして長期的に低下傾向にありました。
 文部科学省では、子供の体力の重要性に関する普及啓発や、運動やスポーツに親しむ機会の提供などの取組を行ってきました。その結果、子供の体力は横ばい又は向上傾向を示し、長期的低下傾向に歯止めがかかるなど、一定の成果が見られています。しかし、子供の体力水準の高かった昭和60年頃に比べると、依然として低い水準にとどまっています(図表2-8-2 )。

図表2‐8‐2 子供の体力・運動能力の年次推移

 最近の傾向を見ると、運動をする子供とそうでない子供に二極化しています。特に、中学校女子においては、1週間の総運動時間(体育の授業を除く)が60分未満の生徒が全体のおよそ5分の1存在することなど、生涯にわたって運動やスポーツに親しむ資質や能力の育成が十分に図られていないことが懸念されています(図表2-8-3)。
 こうした状況に鑑み、文部科学省では、「幼児期運動指針」(平成24年3月)の普及啓発を推進するとともに小学校5年生、中学校2年生の全児童生徒を対象として実施する「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果に基づき、学校での体育活動の改善充実や学校・家庭・地域が一体となった体力向上の取組を推進しています。

図表2‐8‐3 1 週間の総運動時間の分布と1 週間の総運動時間が60分未満の生徒の運動時間の内訳(中学校女子)

2 学校における体育・運動部活動の充実

(1)学習指導要領の趣旨を踏まえた学校体育の充実

 現行の学習指導要領では、生涯にわたって運動に親しむ資質・能力を育てることや体力の向上を図ることを狙いとして、小学校から高等学校までを見通して、指導内容の系統化や明確化を図っています(図表2-8-4)。
 文部科学省では、学習指導要領の趣旨を踏まえた指導の理解、定着を図るため、映像による参考資料等を作成・配布するなどの支援を行っています。また、第2期教育振興基本計画においても、体育・保健体育の授業を通じ、子供が十分に体を動かして、スポーツの楽しさや意義・価値を実感することができる環境整備を図ることとしています。

図表2‐8‐4 体育の分野 指導内容の体系化 

(2)運動部活動指導の工夫改善の取組

 運動部活動は、スポーツに興味と関心を持つ同好の生徒が、より高い水準の技能や記録に挑戦する中で、スポーツの楽しさや喜びを味わい、豊かな学校生活を経験するとともに、体力の向上や健康の増進にも極めて効果的な活動です。
 中・高等学校の学習指導要領総則には、部活動の意義、教育課程との関連、運営上の工夫を行うなどの配慮事項が示されています。
 また、第2期教育振興基本計画においても、運動部活動等の学校の体育に関する活動や地域スポーツを通じて、スポーツの楽しさや意義・価値を実感することができる環境整備を図ることとしています。
 近年、運動部活動においては、教員数の減少による練習・引率等の負担が増加していること、生徒の指導に対するニーズが高度で専門的になっていることなどによる指導者不足、様々なニーズを持った生徒に対応した活動の運営、指導等が課題となっています。また、種目によって女子の参加が困難な競技もあるなど参加機会の充実が求められています。
 一方、運動部活動においても、体罰は「学校教育法」で禁止されており、決して許されない行為です。体罰を厳しい指導として正当化することは誤った認識です。文部科学省では、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成25年3月13日付け文部科学省初等中等教育局長、スポーツ・青少年局長通知)や「運動部活動での指導のガイドライン」(25年5月)などを通じて、全ての教育委員会、中・高等学校などの学校関係者に対して、この趣旨の周知徹底に努めています。また、26年度は、岩手県、熊本県及び東京都において、運動部活動指導における体罰根絶と一層の指導充実を目指して、運動部活動の指導者等を集めた「運動部活動指導者サミット」を実施しました。

(3)体育活動の安全かつ円滑な実施のための取組

 文部科学省では、中学校で必修となっている武道等を安全かつ円滑に実施するため、教育委員会と学校に対して、「武道必修化に伴う柔道の安全管理の徹底について」(平成24年3月9日付けスポーツ・青少年局長通知)を踏まえ、各学校における柔道の指導体制を確認し、より安全に指導できる体制となるよう求めています。また、26年度は「スポーツ事故防止対策推進事業」を通じて全国3か所でセミナーを開催し、事故防止のための最新の知見、全国の事故の発生状況や事例等に係る情報を共有しました。
 さらに、体育活動中の重大事故の防止に向けて競技団体や医療関係団体等の取組に関する情報を随時、教育委員会等に提供するなど最新の知見の周知に取り組むとともに、「学校における体育活動中の事故防止について(報告書)」(平成24年7月)を踏まえ、体育活動を安全に進める上でのポイントや事故防止のための取組、事故発生時の対応等をより分かりやすく映像で表した資料を作成・配布しています。

第3節 年齢や性別、障害等を問わないライフステージに応じたスポーツ活動の推進

1 スポーツへの参加促進

 成人の週1回以上のスポーツ実施率は、平成24年度時点で47.5%まで上昇しています(図表2-8-5)。これを世代別に見ると、20代から40代までで実施率が低いことが分かります(図表2-8-6)。また、60歳以上については、週1回以上のスポーツ実施率が約6割となる一方で、1年間に一度も「運動・スポーツはしなかった」と回答した人が約23から26%までとなっており、スポーツを行う者と全く行わない者の二極に分かれています。
 文部科学省では、スポーツ実施率の低い20代、30代の若者に対して、仕事や子育てなどの若者特有のスポーツ阻害要因に対応した若者のスポーツ参加を促すプログラムのモデル開発を全国で実施するとともに、スポーツに無関心な高齢者が、それぞれの適性や健康状態に応じて無理なく継続的に実施できる運動・スポーツプログラムの普及啓発を図るなど各世代のスポーツ参加を促進する取組を行っています。
 また、スポーツを「支える人」の重要な要素であるスポーツボランティアの活動を活性化し、スポーツボランティア文化の醸成を図るため、ボランティアを行っている個人や組織・団体の活動実態調査の実施、運営者側等が活用できるガイドブックの作成・配布を行っています。
 さらに、文部科学省では、毎年10月を「体力つくり強調月間」として、広く国民に健康・体力つくりの重要性を呼びかけるとともに、「体育の日」を中心とした体力テストや各種スポーツ行事を実施しています。
 あわせて、多年にわたり地域や職場において、スポーツの振興に顕著な成果を上げた人や団体等に対し、その功績をたたえるため、文部科学大臣が表彰を行っています。

図表2‐8‐5 成人の週1 回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

図表2‐8‐6 世代別の週1 回以上運動・スポーツを行う者の割合

2 障害者スポーツの推進

 障害者(成人)の週1回以上のスポーツ・レクリエーション実施率は18.2%にとどまっています(図表2-8-7)。文部科学省では、健常者と障害者がともに楽しむことができるスポーツ・レクリエーション活動の推進、障害者スポーツの安全確保に関する調査研究等を通じて、障害者スポーツの普及促進を図っています。
 また、我が国の障害者スポーツの普及・振興を図る統括組織である公益財団法人日本障がい者スポーツ協会に対する補助を通じて、障害者スポーツの普及・啓発や障害者スポーツ指導者の養成・活用等を進めています。
 なお、文部科学省が主催者に加わって初めての全国障害者スポーツ大会(第14回、平成26年11月1日から3日)が長崎県で開催され、約5,500人の選手・監督等が参加しました。

図表2‐8‐7 障害者(成人)が過去1 年間にスポーツ・レクリエーションを行った日数

第4節 住民が主体的に参画する地域のスポーツ環境の整備

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標8(互助・共助による活力あるコミュニティの形成)
【成果指標】
<初等中等教育・生涯学習関係>

  • 全ての市区町村に総合型地域スポーツクラブを設置

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年度 総合型地域スポーツクラブ設置率(創設準備中クラブも含む)80.1%
    (3,512クラブ)(平成25年度実績79.0%(3,493クラブ))。

1 コミュニティの中心となる地域のスポーツクラブの育成・推進

 総合型地域スポーツクラブ(総合型クラブ)は、地域住民が自主的・主体的に運営し、身近な学校や公共施設などを拠点として日常的に活動する地域密着型のスポーツクラブです。生涯スポーツ社会の実現に寄与するほか、地域の子供のスポーツ活動の場の提供、家族のふれあい、世代間交流による青少年の健全育成、地域住民の健康維持・増進などの地域社会の再生に関する多様な効果も期待されています。さらに、地域スポーツ活動を通して地域の絆(きずな)や結び付きを再発見するなどコミュニティの核となることも望まれています。
 文部科学省では、総合型クラブ設立事例の情報提供や日本スポーツ振興センター(JSC)のスポーツ振興くじ(toto)助成などによって、総合型クラブの創設と全国展開を支援してきました。こうした取組の効果もあって、全国の総合型クラブの数は、平成26年度に3,512クラブとなっており、クラブ設置率(全市区町村数に対する総合型クラブが設置されている市区町村数の割合)は、同年度に80.1%に達しています(図表2-8-8)。
 一方、「平成26年度総合型地域スポーツクラブに関する実態調査」によると、総合型クラブの現在の課題として、「会員の確保」や「財源の確保」、「指導者の確保」などが挙げられています(図表2-8-9)。会員を確保し、会費収入を拡充していくためには、市区町村の人口規模や高齢化、過疎化等各地域の実情に応じて総合型クラブが、多様で質の高い魅力あるプログラムを提供できるよう、地方公共団体、大学・企業等と連携し、支援していくことが必要です。
 文部科学省では、総合型クラブ間のネットワークの構築を強化し、指導者の共有化やトップアスリートによるスポーツ教室の共同開催、スポーツ施設・設備の共同利用などを通じて、総合型クラブにおいて魅力あるスポーツサービスを提供するための体制の整備に取り組んでいます。また、総合型クラブが、地方公共団体等と協力して、大学・企業のスポーツ資源(人材、施設)を活用した定期的なスポーツ教室などを地域住民に提供する事業も実施しています。

図表2‐8‐8 総合型地域スポーツクラブの設置状況

 図表2‐8‐9 総合型地域スポーツクラブの現在の課題

2 新しい時代にふさわしいコーチング

 スポーツの指導において暴力を行使する事案が明らかになったことなどを踏まえ、文部科学省では、オールジャパン体制でコーチング環境の改善・充実に向けた取組を推進しています。平成26年度には、コーチが育成過程において確実に習得すべき知識・技能に基づいた「モデル・コア・カリキュラム(骨子)」を作成するとともに、競技者・チームを支えるコーチ、家族、マネジャー等の関係者・関係団体(アスリート・アントラージュ(※2))が連携してコーチング環境の改善を図りました。また、平成27年3月、スポーツ関係団体、大学、スポーツクラブ、アスリート等を構成員とする「コーチング推進コンソーシアム」において、コーチングを正しい方向に導くため、「グッドコーチに向けた『7つの提言』」を取りまとめて広く関係者に呼びかけています。


  • ※2 アスリート・アントラージュ:国際オリンピック委員会(IOC)では、「アスリート・アントラージュ」をマネジャー、エージェント、コーチ、トレーナー、医療スタッフ、研究者、スポーツ団体、スポンサー、弁護士、家族等の競技者のスポーツキャリアを支える全ての人たちと定義している。

3 身近なスポーツ活動の場の確保・充実

 文部科学省では、総合型クラブの活動場所をはじめ、地域住民がスポーツに親しみ、交流する場を確保するため、身近なスポーツ活動の場の確保に取り組んでいます。我が国の体育・スポーツ施設数は、ピークであった昭和60年度に比べて、平成20年度には約7万か所減少しています。(図表2-8-10)これに対しては、最も身近なスポーツ活動の場である学校体育・スポーツ施設を、地域住民にこれまで以上に有効に活用してもらうことが具体的な方策の一つと考えられます。
 現在、屋外運動場の約80%、体育館の約87%、水泳プールの約27%が地域住民に開放されています。しかし、「施設の開放は行っているものの定期的ではない」、「利用手続が煩雑である」、「利用方法などの情報が不足している」など、地域住民のニーズに十分に対応しきれていない面も見られます。
 文部科学省では、学校体育・スポーツ施設を学校と地域社会との「共同利用型」に移行して地域住民の視点に立った積極的な利用の促進を図るため、地域住民が利用しやすい施設づくりを推進するとともに、更衣室を備えたクラブハウス、温水シャワーなどの整備、休・廃校となった学校体育・スポーツ施設を有効活用するために必要な施設設備の整備などを支援しています。

図表2‐8 -10 我が国の体育・スポーツ施設数の推移

第5節 国際競技力向上に向けた人材の養成やスポーツ環境の整備等

1 我が国の国際競技力の現状と課題

 我が国のオリンピック競技大会におけるメダルの獲得状況は、1964(昭和39)年の東京オリンピック競技大会以降、長期的・相対的に低下傾向にありましたが、2012(平成24)年のロンドンオリンピック競技大会では、史上最多となる38個のメダルを獲得しました。また、第4位から第8位までと合わせた入賞総数も計80で史上最多となりました。
 一方、冬季競技大会では、2014(平成26)年のソチオリンピック冬季競技大会において8個のメダルの獲得、入賞総数28を果たすなど、国外で開催された冬季大会では史上最高の成績となりました(図表2-8-11)。
 また、平成26年度から競技性の高い障害者スポーツに関する事業が厚生労働省から文部科学省に移管され、パラリンピック競技の国際競技力の向上にオリンピック競技と一体的に取り組む体制が整いました。

図表2‐8 -11 オリンピック・パラリンピック競技大会におけるメダル獲得数及び金メダルランキングの推移

2 国際競技力の向上施策

 文部科学省では、「スポーツ基本計画」に掲げられている目標を達成するため、日本オリンピック委員会(JOC)や日本パラリンピック委員会(JPC)、中央競技団体と連携して我が国の国際競技力の向上に向けた環境整備に取り組んでいます(※3)。


  • ※3 参照:第1部 特集2 第1節

Column No.12 女性アスリートの育成・支援

 オリンピック競技大会では、女性が参加することができる競技数が増加しています。特に、近年の夏季大会における我が国の女性アスリートのメダル獲得率(※4)は男性アスリートより高く、その活躍は著しいものがあります。そこで、女性アスリートの国際競技力が更に向上するよう、女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究や女性競技種目戦略的強化プログラム、女性特有の課題に対応した支援プログラムを実施しています。

写真 女子ハンドボールにおける選手強化活動(デンマークにて) 提供:JSC
女子ハンドボールにおける選手強化活動(デンマークにて)
提供:JSC

 女性競技種目戦略的強化プログラムでは、平成25年度に4競技種目(飛込、ハンドボール、ボート、スケルトン)を戦略的に選定し、26年度からこれらの競技種目の課題を解決するためのモデルプログラムを開発しています。このモデルプログラムが他の競技団体等で活用されることも念頭に置いて、女性競技種目における恒常的な競技力の向上を目指しています。
 平成26年度における取組のうち、ハンドボールについては、「国内に高水準な競争相手が少ない」という課題に着目して、海外(デンマーク)における「個の強化」と国内における「チームの強化」の2本柱でモデルプログラムを開発・実施しています。海外における「個の強化」では、海外にトップアスリート等を派遣し、高度なトレーニング環境において教育プログラムを含めた自己の研さん活動を行っています。国内における「チームの強化」では、国内の高水準な競争相手の不足を解決するための「トレーニングパートナー(男子選手)」を活用しながらチームとしての強化活動を行っています。

図 女性アスリートの育成・支援プロジェクト


  • ※4 メダル獲得率:オリンピック競技大会における我が国のメダルの獲得数を総メダル数で除したもの。

3 国際・国内競技大会の招致・開催に対する支援

(1)国際競技大会の招致・開催

 我が国で国際競技大会を開催することは、我が国のトップアスリート強化につながるだけでなく、世界のトップアスリートの競技を目の当たりにすることによって多くの国民に夢や感動を与えるなど、スポーツの振興や地域の活性化、国際親善などにも大きく寄与します。文部科学省では、国際競技大会の招致・開催が円滑に行われるよう、準備運営団体や関係府省との連絡調整を行い、必要な協力・支援を行っています(※5)。
 2017(平成29)年に北海道札幌市と帯広市(スピードスケート)で開催されることが決定している2017札幌アジア冬季競技大会については、大会成功に向けて、大会組織委員会の開催準備等に対して協力・支援を行っています。また、2019(平成31)年に熊本県で開催される世界女子ハンドボール選手権について、招致の際に大臣メッセージを発出しています。文部科学省では、世界規模の総合競技大会だけでなく、単一競技大会やアジア地区の競技大会なども含めて、様々な国際競技大会の招致・開催に向けた戦略的な協力・支援を行っています。


  • ※5 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会及びラグビーワールドカップ2019については、第1部 特集2 第1節、第2節を参照

(2)国民体育大会の開催

 国民体育大会は、広く国民の間にスポーツを普及し国民の体力の向上を図るとともに、地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与することを目的として、毎年都道府県対抗方式によって開催される最大の総合スポーツ大会です。文部科学省、公益財団法人日本体育協会、開催地都道府県が共同で国民体育大会を主催しています。平成26年の第69回大会では、冬季大会と本大会を合わせて40競技が実施され、約2万4,000人の都道府県代表選手・監督が天皇杯(男女総合成績1位)・皇后杯(女子総合成績第1位)を目指して競い合いました(図表2-8-12)。

図表2‐8 -12 第69 回国民体育大会(平成26年)競技種目及び選手・監督数 

第6節 スポーツ界における透明性、公平・公正性の向上

1 スポーツ団体のガバナンス強化

 近年、一部のスポーツ団体において、競技者に対する暴力事件や、国の補助金及び公的助成金の不正使用等の不祥事が発生しました。これらは、スポーツ界に対する国民の信頼を失わせる可能性があり、各スポーツ団体の判断や説明には大きな社会的責任が伴うことを踏まえた対処が必要になっています。こうしたことから、スポーツ界においては、誰もが安全かつ公正な環境の下でスポーツに参加することができるよう、スポーツ団体の運営の在り方(ガバナンス)を強化する必要性が高まっています。
 文部科学省では、これまで日本スポーツ振興センター(JSC)や公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)に対して、競技団体等における助成金や補助金の経理について適切な執行を指導するなど再発防止に努めてきました。平成26年6月に公益財団法人日本スポーツ仲裁機構に対して、中央競技団体のガバナンスの確立・強化に関する調査研究を委託し、27年3月に組織運営におけるガイドラインや不祥事対応事例集等を取りまとめました。
 また、平成26年4月にJSCがスポーツにおける八百長・違法賭博、ガバナンス欠如、暴力、ドーピング等に一体的に対応するため、スポーツ振興投票の公正性の確保に係る調査、スポーツ団体のガバナンス強化に係る調査、スポーツ指導における暴力行為等の相談窓口及びアンチ・ドーピングのためのインテリジェンスによる調査業務等を行う「スポーツ・インテグリティ・ユニット」を設置したほか、27年4月には、JOCに「NF(国内競技団体)支援総合センター」が開設されるなど、スポーツ界においてもガバナンス向上に向けた取組が進められています。

2 スポーツを行う者の権利・権益の保護

 スポーツ団体の決定は、全ての競技者の活動に関わるものであることから、広く公共性が求められ、その決定の際には全ての競技者にとって適正かつ公平な措置が必要です。
 競技団体の代表選手選考やドーピング違反による資格停止処分などをめぐる紛争解決の手段として、日本スポーツ仲裁機構によるスポーツ仲裁・調停があります。スポーツ団体のスポーツ仲裁自動受諾条項(※6)の採択状況は61.7%(平成26年9月時点)となっており、近年着実に増加しています。文部科学省では、スポーツ紛争の迅速かつ適正な解決に向けた体制整備を図るため、団体・アスリートなどのスポーツ仲裁・調停に関する理解増進、仲裁人・調停人等のスポーツ仲裁に関わる専門的人材の育成に取り組んでいます。
 また、日本代表チームをはじめ、スポーツ指導において暴力を行使する事案が明るみに出たことを受けて、平成26年1月にJSCにトップアスリートを対象とした「第三者相談・調査制度相談窓口」が設置されました。各競技団体やJOC、日本体育協会の相談窓口と連携してスポーツを行う者の権利利益の保護に貢献しています。


  • ※6 スポーツ仲裁自動受諾条項:スポーツに関する紛争が生じた際には、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構の仲裁手続を利用して解決することを定める条項のこと。あらかじめスポーツ団体の規則に盛り込まれることにより、競技者が仲裁の申し立てを行った際、自動的に仲裁の合意があるとみなされる。

3 ドーピング防止に向けた取組について

 ドーピングとは、競技者の競技能力を向上させるため、禁止されている薬物を使用することなどを言います。ドーピングは、1.競技者に重大な健康被害を及ぼす、2.フェアプレーの精神に反し、人々に夢や感動を与えるスポーツの価値を損ねる、3.優れた競技者によるドーピングが青少年に悪影響を与えるなどの問題があり、世界的規模での幅広い防止活動が求められています。
 我が国は、2006(平成18)年にユネスコ「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」を締結し、世界ドーピング防止機構(WADA)常任理事国として、国際的なドーピング防止活動に積極的に取り組んでいます。

写真 アンチ・ドーピングのアウトリーチ 提供:JADA
アンチ・ドーピングのアウトリーチ
提供:JADA

 国内のドーピング検査件数はイギリスやアメリカなどオリンピックメダル獲得上位国を超えており、より効率的な検査実施のために、ドーピング検査の質の向上を図っています。文部科学省では、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)との連携を図りつつ、国際的な水準のドーピング検査の充実、アスリート等に対するドーピング違反の未然防止を目的とした教育・啓発活動、ドーピング検査技術の研究開発などに積極的に取り組むとともに、若い世代を対象としたドーピング防止教育を推進しています。

第7節 スポーツ界の連携・協働による「好循環」の創出

1 トップスポーツと地域におけるスポーツとの連携・協働の推進

 競技で培われたトップアスリートの技術や経験、人間的な魅力は、人々のスポーツへの関心を高めて地域スポーツの活性化や学校体育の充実、次世代アスリートの発掘や育成などにつながるとともに、地域における活躍は、引退したトップアスリートの能力や経験を発揮する場の確保にもつながります。
 スポーツ界における人材の好循環を実現するため、文部科学省では、トップアスリートの育成・強化を進めると同時に、総合型クラブのうち、充実した活動基盤を持つ拠点となるクラブにトップアスリートなどの経験を持つ優れた人材を配置し、周辺の複数のクラブや学校の体育・運動部活動に巡回指導を実施する体制を整備しています。

写真 トップアスリートが中学校の部活動で指導する様子 提供:NPO 法人よりづかちょいスポ倶楽部(北海道北広島市)
トップアスリートが中学校の部活動で指導する様子
提供:NPO 法人よりづかちょいスポ倶楽部(北海道北広島市)

 また、現役引退後のキャリアパスに不安を抱えているアスリートも多くいます。アスリートが、安心してスポーツに取り組むことができ、培ってきた技術や経験、優れた資質や能力を引退後も社会に還元する環境を整備することが重要です。文部科学省では、トップアスリート、トップアスリートを目指すジュニア競技者、指導者、保護者、競技団体等に対して、キャリアデザインの啓発活動やプログラム開発を支援するなど、アスリートが現役中から将来に備えるデュアルキャリアと引退後のキャリア形成の両面から支えています。

2 地域スポーツと企業・大学等との連携

 スポーツに関する専門的人材及び施設を持った企業・大学等が地域スポーツの担い手の一つとして地域における連携・協働に加わることは、トップスポーツと地域スポーツとの好循環にも役立ちます。
 文部科学省では、地方公共団体が大学や企業、スポーツ団体と連携を図り、大学や企業のスポーツ施設等において、教員や学生等による地域住民を対象とした定期的なスポーツ教室、スポーツセミナーなどの指導やスポーツ交流大会等を実施する取組を支援することによって、地域住民の運動・スポーツへの参加意欲を高めてスポーツによる健康増進を図り、スポーツを通じた地域コミュニティの活性化を促進しています。

写真 県・大学・病院が開発した運動・スポーツプログラムを実践している様子 提供:徳島県
県・大学・病院が開発した運動・スポーツプログラムを実践している様子
提供:徳島県

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成27年09月 --