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第4章 世界トップレベルの学力と規範意識等の育成を目指す初等中等教育の充実

総論

 教育は、子供たち一人一人の人格の完成を目指すものであり、子供たちが将来にわたって幸福な生活を営んでいく上で不可欠です。また、将来この国や社会を担っていく人材を育てていくという使命もあり、このような教育の重要性はどのような時代にあっても変わることはありません。特に、昨今では、グローバル化や知識基盤社会の到来、少子高齢化の進展など、社会が急速な変化を遂げており、教育の重要性はますます高まっています。
 このような時代の中で子供たちへの教育を一層充実していくよう、文部科学省では、教育機会の確保や教育水準の維持向上のため、学習指導要領が目指す教育の実現、科学技術系人材を育成するための理数教育の推進、グローバル人材の育成に向けた教育の充実、キャリア教育・職業教育の推進、高校教育改革の推進、教科書の充実、いじめ等の生徒指導上の諸課題への対応、道徳教育の充実、人権教育の推進、子供の健康と安全の確保、きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員等の指導体制の整備、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の推進、インクルーシブ教育システム構築に向けた特別支援教育の推進、地方教育行政の在り方と地域と共にある学校づくり及び幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実など、様々な政策を実施しています。

第1節 学習指導要領が目指す教育の実現

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
【成果指標】

  • 国際的な学力調査の平均得点を調査国中トップレベルにする。あわせて、習熟度レベルの上位層の増加、下位層の減少。全国学力・学習状況調査における過去の調査との同一問題の正答率の増加、無解答率の減少
  • 児童生徒の学習意欲の向上や学習習慣の改善
  • 体力の向上傾向を確実にする(今後10年間で子供の体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す)。

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 教育課程編成・実施上の課題や優れた実践共有等のための説明会・協議会の実施参加実績 163,308人
  • 学力定着に課題を抱える学校の重点的・包括的支援に関する調査研究、言語活動の充実に関する実践研究、対話・創作・表現活動等を通じた児童生徒の思考力・人間関係形成能力等の育成事業の実施
  • 第2部第8章第2節2 学校における体育・運動部活動の充実参照。
  • 引き続き上記の取組を進めるとともに、課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(アクティブ・ラーニング)の推進を図る。

 学習指導要領は、子供たちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするために、学校が編成する教育課程の大綱的基準として、国が学校教育法等に基づいて定めるものです。現行の学習指導要領では、1.基礎的・基本的な知識・技能、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度(「確かな学力」)、2.自らを律しつつ、他人と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心など(「豊かな心」)、3.たくましく生きるための健康や体力(「健やかな体」)のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指しています。
 現行の学習指導要領は、平成23年4月から小学校で、24年4月から中学校でそれぞれ全面実施されており、高等学校では25年度入学生から年次進行で実施されています。特別支援学校でも、小・中・高等学校に準じて実施されています。

1 確かな学力を育む

(1)学習指導要領の基本的な考え方

 現行の学習指導要領のポイントとしては、例えば、次の七つの点が挙げられます。

1.言語活動の充実

 言語は、論理や思考などの知的活動、コミュニケーション、感性・情緒などの基盤です。児童生徒一人一人の思考力・判断力・表現力等を育むためには、国語科をはじめ各教科などで記録、説明、批評、論述、討論などの言語活動の充実を図ることが有効と考えられます。各学校における言語活動の充実を支援するため、これまで、言語活動の充実に関するイラストやポスターを小・中・高等学校や教育委員会に配布するとともに、「言語活動の充実に関する指導事例集」を作成し、教育委員会等への配布を行いました。平成26年度は、言語活動の充実に関する実践研究を行い、指定地域における言語活動の授業実践や校内研修の取組について、成果を映像資料や参考資料等にまとめました。
 また、芸術表現活動や対話、創作、表現に係る体験活動など、他者と関わり、協調・協働しながら課題解決に取り組む活動は、児童生徒の思考力・判断力・表現力等の向上や、コミュニケーション能力、自己肯定感、社会性、責任感等の育成に大きな効果があります。このため、平成22年度から、芸術家などの専門家を学校に派遣し、芸術表現体験活動等を取り入れたワークショップ型の授業を実践する事業を展開しており、これまでに延べ1,068校で実施しています。

2.理数教育の充実

 次代を担う科学技術系人材の育成や国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上を図るため、理数好きな子供の裾野の拡大や子供の才能を見いだし伸ばす施策を充実するなど科学技術・理数教育を充実するための施策を総合的に推進しています(※1)。

3.伝統や文化に関する教育の充実

 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、その良さを継承・発展させるための教育を充実することが必要です。このため、現行の学習指導要領では、各教科等で我が国の伝統や文化についての理解を深める学習を充実しました。例えば、「国語」では、神話・伝承や古文・漢文に関する学習(小学校)を充実するとともに、「美術」では我が国の美術文化に関する学習(中学校)を、「音楽」では我が国の伝統的な歌唱や和楽器に関する学習(中学校)を充実しています。

4.体験活動の充実

 文部科学省では、児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むため、健全育成のための体験活動推進事業を実施し、学校による宿泊体験活動の取組を支援するとともに、農林水産省、総務省、環境省と連携して子供の農山漁村宿泊体験などを推進しています(※2)。

5.道徳教育の充実

 学校教育では、調和の取れた人間の育成を目指して、子供たちの発達段階に応じた道徳教育を展開することとしています。文部科学省では、平成27年3月に学習指導要領の一部改正等を行い、道徳の時間を「特別の教科 道徳」(「道徳科」)に位置付けました。道徳科は、小学校では30年度から、中学校では31年度からそれぞれ実施されます。このほか、各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため、地方公共団体の多様な取組を支援しています(※3)。

6.グローバル人材の育成に向けた教育の充実

 初等中等教育段階から国際的な視野を持つグローバル人材を育成するため、文部科学省では、小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化、高校生の海外留学の促進、スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また、海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます(※4)。

7.学習評価

 学習評価は、児童生徒の学習状況を検証し、結果の面から教育水準の維持向上を保障する機能を有するものです。学習評価を通じて、学習指導要領に示す内容が児童生徒一人一人に確実に身に付いているかどうかを適切に評価し、その後の学習指導の改善に生かしていくとともに、学校の教育活動全体の改善に結び付けていくことが重要です。
 このため、文部科学省では、各学校における学習評価が円滑に行われるよう、各都道府県教育委員会等に対する通知(「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(平成22年5月11日付け初等中等教育局長通知)」)を発出し、学習指導要領を踏まえた学習評価の考え方についての周知・徹底を図っています。
 各学校では、校長のリーダーシップの下で、国や教育委員会等が示す評価に関する資料を参考にしながら、児童生徒の学習状況を判断する際の目安となる評価規準を適切に設定するとともに、評価方法の工夫改善や評価結果の教師同士での検討、実践事例の継承などに、組織的・計画的に取り組むことが求められています。また、学校では、保護者などに対し、児童生徒に対する学習評価の考え方などを事前に説明するとともに、通信簿などを通じ、子供たちの学習状況についてより丁寧に説明するなどの取組も進められています。


  • ※1 参照:第2部 第4章 第2節
  • ※2 参照:第2部 第3章 第4節
  • ※3 参照:第2部 第4章 第9節
  • ※4 参照:第2部 第4章 第3節

(2)我が国の子供たちの学力・学習状況

 子供たちの学力・学習状況を調査するため、我が国では全国学力・学習状況調査を実施するとともに、OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)(※5)、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)に参加しています。これらの調査結果を踏まえ、世界トップレベルの学力・規範意識を育むための取組を一層推進することが重要であり、文部科学省では、1.言語活動や理数教育の充実などを図った学習指導要領の着実な実施とフォローアップ、2.教職員定数の改善や、教職員の資質向上によるきめ細かな指導体制の整備、3.全国学力・学習状況調査の継続的な実施による教育の検証改善サイクルの確立などにしっかり取り組んでいきます。

1.全国学力・学習状況調査の実施

 文部科学省では、平成19年度から、全国の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒の学力状況などを把握する「全国学力・学習状況調査」を毎年4月に実施しています。この調査は、(1)義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ること、(2)学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てること、(3)以上のような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することを目的として実施しています。教科は国語と算数・数学で、それぞれ「知識」に関する問題(A問題)と知識・技能の「活用」に関する問題(B問題)を出題しています(24年度及び27年度調査では理科も実施)。また、学力を問う教科の調査だけでなく、児童生徒の生活習慣や学習環境、学校の指導方法等の調査も行い、学力との関連を分析しています。19年度から21年度までは悉(しっ)皆調査、22年度及び24年度は抽出調査(抽出率約30%)及び希望利用方式(抽出調査の対象外の学校であっても、設置者が希望すれば、抽出調査と同一の問題の提供を受け、本調査を利用できる)、25年度及び26年度は悉(しっ)皆調査で実施しました(23年度は東日本大震災の影響等を考慮して実施を見送り)。
 調査結果を活用することで、各教育委員会や学校は自らの教育の成果と課題を検証し、教育施策の改善や教育指導の充実に生かすことができ、教育に関する継続的な検証改善サイクルの構築が着実に進むことが期待できることから、文部科学省としては、各教育委員会や学校に積極的な調査結果の活用を促しています。文部科学省及び国立教育政策研究所では、調査結果を踏まえた教育指導の充実や学習状況の改善に向けた取組への支援として、(1)調査結果の分析を踏まえた課題や指導のポイントを示した「報告書」、(2)課題が見られた事項について、授業のアイディア例をまとめたパンフレット「授業アイディア例」の作成・配布、(3)調査結果を活用した指導改善に向けた説明会の開催、(4)都道府県教育委員会等の要請に応じて助言を行うための学力調査官等の派遣、(5)教育委員会・学校における調査結果を活用した優れた学校改善の取組事例の収集・普及、(6)専門家等による追加的な分析・検証などを行っています。

2.平成26年度全国学力・学習状況調査の概要

 平成26年度は、国語、算数・数学の2教科での悉(しっ)皆調査を4月22日に実施しました。26年度調査では、結果公表の取扱いについて実施要領の見直しを行い、

  • (ア)市町村教育委員会において、それぞれの判断で、実施要領に定める配慮事項に基づき、個々の学校名を明らかにした調査結果の公表を行うことができる
  • (イ)都道府県教育委員会において、市町村教育委員会の同意を得た場合は、実施要領に定める配慮事項に基づき、当該市町村名又は当該市町村教育委員会が設置管理する学校名を明らかにした調査結果の公表を行うことができる

 こととしています。
 平成26年度の調査問題は、これまでの調査で見られた課題に関連した問題も出題していることが主な特徴です。国語については、「仮定の表現を用いて適切な文に書き直すこと」(小学校)や、「心情が相手に効果的に伝わるように、描写を工夫して書き加えること」(中学校)について相当数の児童生徒ができている一方で、「発言をする際に一定の立場に立ってはいるが、根拠を明確にした上で発言をする点」(小学校)や、「説明する際に、文章や資料から必要な情報を取り出してはいるが、それらを用いて伝えたい内容を適切に説明する点」などについて依然として課題が見られました。算数・数学については、「整数、小数、分数の四則計算をすること、特に計算の順序についてのきまりなどを理解すること」(小学校)や、「反比例におけるxとyの値の変化の特徴を理解すること」(中学校)などについて改善の状況が見られましたが、「図を観察して数量の関係を理解したり、数量の関係を表現している図を解釈したりすること」(小学校)や、「確率を用いた理由の説明やグラフを用いた方法の説明」(中学校)などに課題が見られました(図表2-4-1)。
 また、各年度で平均正答率(公立)が低い3都道府県の平均を見ると、全国平均との差は縮小傾向にあり、学力の底上げの進展が見られるとともに、特に、小学校調査において過去の結果と比較して顕著な改善が見られる都道府県がありました。学校における指導等と学力等との関係については、「各教科等の指導のねらいを明確にした上で、言語活動を適切に位置付ける」、「総合的な学習の時間における探究活動(課題の設定からまとめ・表現に至る探求の過程を意識した指導)」のような指導等を行った小学校・中学校ほど、教科の平均正答率等が高い傾向が見られました。さらに、児童生徒の学習・生活習慣と学力の関係については、「携帯電話やスマートフォンで通話・メール・インターネットをする時間が短い」、「テレビゲームをしている時間が短い」児童生徒ほど教科の平均正答率等が高い傾向が見られました。

図表2‐4‐1 問題例:平成26 年度全国学力・学習状況調査

3.平成26年度全国学力・学習状況調査の結果公表の状況

 文部科学省では、平成26年度全国学力・学習状況調査から、教育委員会が調査結果を公表できる範囲を変更したところであり、各教育委員会の対応状況を把握するため、26年11月1日時点の状況について調査を行いました。47都道府県教育委員会、20指定都市教育委員会、指定都市を除く1,736市町村教育委員会から回答があり、これらの集計結果を公表しました。

【平成26年度全国学力・学習状況調査の結果公表に関する調査結果】

都道府県教育委員会の状況(公表予定を含む)

  • 都道府県全体の結果:公表47(100%)うち教科の平均正答率(数)を公表47(100%)
  • 市町村の結果:公表14(30%)うち教科の平均正答率(数)を公表7(15%)公表しない31(56%)
  • 市町村立学校の結果:公表※5(11%)うち教科の平均正答率(数)を公表0
    ※成果の見られた学校など都道府県内の一部の学校の状況について公表 公表しない41(87%)

指定都市教育委員会の状況

  • 指定都市全体の結果:公表20(100%)うち教科の平均正答率(数)を公表17(85%)
  • 指定都市立学校の結果:公表2(10%)うち教科の平均正答率(数)を公表0 公表しない18(90%)

市町村教育委員会の状況

  • 市町村全体の結果:公表1,005(58%)うち教科の平均正答率(数)を公表479(28%) 公表しない689(40%)
  • 市町村立学校の結果:公表112(6%)うち教科の平均正答率(数)を公表32(2%) 公表しない1,607(93%)

 都道府県教育委員会が、市町村教育委員会の同意を得て、市町村名を明らかにした形で市町村全体の状況を公表したところは、47教育委員会のうち、14か所(30%)であったことは、今回の実施要領の見直しを受けて、都道府県教育委員会から市町村教育委員会に働きかけがなされた結果であると認識しています。
 市町村教育委員会については、政令指定都市を含む1,756市町村教育委員会のうち、1,025か所(58%)が、自らの市町村の結果を公表しました。平成19年度から22年度の間に一度でも公表したことのある教育委員会は720か所(41%)であったことからすると、市町村教育委員会においても、結果の公表に関する理解と取組が進展しています。
 市町村教育委員会が所管の学校の結果を公表している地方公共団体は、112か所(6%)となっており、公表の方法としては、ウェブサイト、広報誌などが見られました。
 一方、各教育委員会においては、全体としては結果公表の取組が進んできてはいますが、教科の平均正答率等の数値の取扱いについては、慎重な対応がなされているというのが現状です。調査結果の公表に当たっては、単純な結果だけではなく、分析結果や分析に基づく改善方策を積極的に公表し、学校における教育指導や教育委員会の施策の改善・充実につなげていくことが重要です。

4.国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)

 国際教育到達度評価学会(IEA)では、小学校4年生、中学校2年生を対象とし、初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学と理科の教育到達度を測定し、学校のカリキュラムで学んだ基本的な知識や技能がどの程度習得されているかを評価するため、「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」を4年おきに実施しています。
 これまでの調査結果によると、我が国は小学校及び中学校の算数・数学、理科の全てについて、国際的に上位を維持しています。直近の2011(平成23)年調査において、小学校では各教科とも前回調査に比べ平均得点が有意に上昇するとともに、習熟度の低い児童の割合が減少し、習熟度の高い児童の割合が増加しています。また中学校では、各教科とも平均得点は前回調査と同程度ですが、習熟度の高い生徒の割合が増加しています(図表2-4-2)。
 しかし、他のトップレベルの国と比べると、各教科において習熟度の高い児童生徒の割合が低いことや、学習に対する意欲等が国際平均よりも低いなどの課題も見られます。

図表2‐4‐2 これまでのTIMSS の結果


  • ※5 参照:第2部 第1章 第2節3

2 豊かな心を育む

(1)道徳教育の推進

 学校教育では、調和の取れた人間の育成を目指して、子供たちの発達段階に応じた道徳教育を展開することとしています。文部科学省では、平成27年3月に学習指導要領の一部改正等を行い、道徳の時間を「特別の教科 道徳」(「道徳科」)に位置付けました。
道徳科は、小学校では30年度から、中学校では31年度からそれぞれ実施されます。このほか、各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため、地方公共団体の多様な取組を支援しています(※6)。


  • ※6 参照:第2部 第4章 第9節

(2)人権教育の推進

 「日本国憲法」及び「教育基本法」の精神にのっとり、学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することは重要なことです。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」及び「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定、平成23年4月1日一部変更)に基づき、政府全体として人権教育・啓発を推進しています。学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じて、学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高めるための指導を進めており、一人一人を大切にする教育の推進に努めています(※7)。


  • ※7 参照:第2部 第4章 第10節

(3)体験活動の推進

 文部科学省では、児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むため、健全育成のための体験活動推進事業を実施し、学校による宿泊体験活動の取組を支援するとともに、農林水産省、総務省、環境省と連携して子供の農山漁村宿泊体験などを推進しています(※8)。


  • ※8 参照:第2部 第3章 第4節2

(4)国旗・国歌の指導

 学校における国旗・国歌の指導は、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために、学習指導要領に基づいて行っているものです。
 平成11年8月には「国旗及び国歌に関する法律」が施行され、国旗・国歌の根拠について慣習として定着していたものが成文法としてより明確に位置付けられ、学校教育における国旗・国歌に対する正しい理解が更に進められました。
 現行の学習指導要領では、小・中学校の社会科において我が国及び諸外国の国旗と国歌の意義を理解させ、これらを尊重する態度を育てるよう指導することとしています。また、小・中・高等学校の特別活動において「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定しています。さらに、小学校の音楽科において、国歌を「歌えるよう指導すること」としています。
 文部科学省では、引き続き、全ての学校において学習指導要領に基づいた国旗・国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導していきます。

3 健やかな体の育成

 これからの社会を生きる児童生徒において、健やかな心身の育成を図ることは極めて重要です。体力は、人間の活動の源であり、健康の維持といった身体面のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わっており、生きる力の重要な要素です。
 このため、体育科・保健体育科で、基礎的な身体能力の育成を図るとともに、運動部活動などと連携させることなどによって、体育・健康に関する指導に学校の教育活動全体で効果的に取り組んでいます(※9)。


  • ※9 学校体育・運動部活動等については、第2部 第8章 第2節2参照

4 学習指導要領の着実な実施とフォローアップ等

(1)円滑かつ着実な実施に向けた支援策

 学習指導要領を円滑かつ着実に実施するためには、これまでに学校現場での実践を通じて明らかになってきた教育課程編成・実施上の課題の解消や優れた実践の共有等を図るとともに、教育条件の整備が必要です。
 文部科学省では、各都道府県教育委員会指導主事などを対象とした研究協議会等の開催や学習指導に関する関係資料の作成等を行うとともに、理数教育や外国語教育など各教科等の充実に向けた支援や、教育の情報化など各教科等横断で取り組むべき重要事項の推進も図っています。
 また、指導環境の整備については、1.理科の実験用機器などの購入経費の補助、2.中学校武道場の整備促進、3.教職員定数の改善、4.補習等のための指導員等派遣事業などを行っています。
 教材については、平成23年4月に定めた「教材整備指針」に基づく例示教材等の整備を推進するため、「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」を策定し、単年度約800億円、24年度から33年度までの10年間で約8,000億円の地方財政措置が講じられることとされています。

(2)教育課程の改善等に向けた取組

 文部科学省では、今後の学習指導要領の改訂に役立てるための実証的な資料を得るため、学習指導要領によらない教育課程の編成・実施を認め、新しい教育課程や指導方法について実践研究を行う研究開発学校制度(※10)を設けています。(平成26年度の研究開発学校数:37件、94校)
 これまでも、その成果は、例えば平成元年(小学校)の生活科や、10年(小・中学校)及び11年(高等学校)の「総合的な学習の時間」、20年(小学校)の「外国語活動」の導入に向けた検討を行う際に、実証的な資料として活用されました。
 また、学校が、地域の実態に照らしたより効果的な教育を実施できるよう、学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程の編成・実施を認める教育課程特例校制度(※11)を設けています。具体的には、東京都品川区の「市民科」、世田谷区の「日本語科」など、学校の創意工夫を生かした教育課程が編成・実施されています。
 また、文部科学省では、平成24年度から26年度にかけて「国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進に関する調査研究」を行いました。国際バカロレアのカリキュラムは、学習指導要領が目指す思考力・判断力・表現力等の育成にも資するものであり、その趣旨を踏まえたカリキュラムや指導方法、評価方法等に関する調査研究を実施し、我が国の教育課程の改善に活(い)かしていくこととしています。
 このほか、文部科学省では、子供たちに育成すべき資質・能力の構造を明らかにした上で、それを実現するための具体的な教育目標、指導内容などの教育課程と学習評価を一体として捉え、改善していくため、平成24年12月から「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」を開催して情報収集・意見交換等を行い、26年3月に論点整理を取りまとめました。
 なお、教育課程全体の見直しについては、中央教育審議会において、教育課程の改善に向けた研究や議論の成果等も踏まえつつ検討が行われています(※12)。


  • ※10 研究開発学校制度:教育実践の中から提起される諸課題や、学校教育に対する多様な要請に対応した新しい教育課程(カリキュラム)や指導方法を開発するため、学習指導要領等の国の基準によらない教育課程の編成・実施を認める制度
  • ※11 教育課程特例校制度:学校又は地域の特色を生かし、学習指導要領等によらない特別の教育課程の編成・実施を認める制度
  • ※12 参照:第1部 特集3 第2節2

第2節 科学技術系人材を育成するための理数教育の推進

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標5(社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成)
【成果指標】

  • 国際科学技術コンテストへの参加者の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 国際科学技術コンテストへの参加者の増加 平成23年度:1万2,855人 26年度:1万8,089人
  • スーパーサイエンスハイスクール(SSH)について、平成26年度は204校を支援し、さらに「グローバルサイエンスキャンパス」(GSC)についても、26年度は8大学を採択・支援し、科学技術人材育成に関する機能を強化。
  • 科学の甲子園、科学の甲子園ジュニア、国際科学技術コンテスト、サイエンス・インカレを平成26年度も開催し、理数好きの生徒等の裾野を拡大するとともに、切磋(さ)琢(たく)磨する場を提供。
  • 次代を担う科学技術人材の育成・確保のため、理数好きの生徒等を拡大するとともに、優れた素質を持つ生徒等を発掘し、その才能を伸ばすための支援策の充実に向けた検討が必要。

 知識基盤社会の到来とともに、科学技術に関する世界的な競争がこれまで以上に激化しており、我が国でも次代を担う科学技術系人材の育成が不可欠です。同時に、科学技術の成果が社会の隅々にまで活用されている今日において、国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上が極めて重要です。
 この二つの観点から、科学技術の土台となる理数教育の充実を図ることは喫緊の課題であり、文部科学省では、理数好きな子供の裾野の拡大や子供の才能を見いだし伸ばす施策を充実するなど科学技術・理数教育を充実するための政策を総合的に推進しています。
 現行の学習指導要領では、観察・実験やレポートの作成、論述、自然体験などに必要な時間を十分確保するため、理科や算数・数学の授業時数を増やしています。また、国際的な通用性や小・中・高等学校の学習の円滑な接続などを図る観点から、例えば、小学校の算数では台形の面積(第5学年)や反比例(第6学年)、小学校の理科では物と重さ(第3学年)や骨と筋肉の働き(第4学年)、食物連鎖(第6学年)、中学校の数学では二次方程式の解の公式(第3学年)、中学校の理科ではイオンや遺伝の規則性、放射線の性質と利用(第3学年)等を指導するなど内容の充実を図っています。

1 理数好きな子供の裾野の拡大

 理数教育を着実に実施するため、文部科学省では「理科教育振興法」に基づき、公・私立の小・中・高等学校等における実験用機器をはじめとした理科、算数・数学教育に使用する設備の計画的な整備を進めています。平成25年度からは、理科教育における観察・実験を充実させるため、小・中学校における理科の観察・実験アシスタントの配置の支援や教員の指導力向上等を図るための研究協議を実施しています。
 科学技術振興機構では、学校現場において科学技術と社会のつながりや最先端の科学技術などを踏まえた魅力ある授業が行われることを目指し、理数教育について優れた能力を有する教員の養成や地域の中核となる現職教員の育成支援に取り組んでいます。
 さらに、児童生徒の知的好奇心・探究心に応じた学習の機会を提供するため、理科教育用デジタル教材等を開発し、インターネット等を通じて提供しています(平成27年3月31日時点の登録教員数7万6,186人)。また、科学部活動を活性化し、専門家との連携により生徒の資質を発掘・伸長する取組を支援する「中高生の科学部活動振興プログラム」(26年度支援件数204件)等の取組を実施しています。

2 子供の才能を見いだし伸ばす取組の充実

 平成14年度から文部科学省では、先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」として指定し、科学技術振興機構を通じて、課題研究の推進、理数に重点を置いたカリキュラムの実施、科学技術人材の育成等を支援しています。26年度においては、全国204校の高等学校等が特色ある取組を進めています。
 平成26年度からは、意欲や能力のある高校生を対象とし、国際的な科学技術人材育成プログラムの開発・実施を行う大学を「グローバルサイエンスキャンパス」として指定し、支援しています。また、意欲や能力のある児童生徒を対象として、課題研究・体系的教育プログラムを実践する大学等を支援する「次世代科学者育成プログラム」を実施しています。
 また、全国の高校生等が学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として、「第4回科学の甲子園」が茨城県において開催され、千葉県代表チームが優勝し、中学生を対象に東京都江東区で開催された「第2回科学の甲子園ジュニア」では茨城県代表チームが優勝しました。
 このほか、科学技術振興機構では、数学・化学・生物学・物理・情報・地学・地理等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や、国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援を行っています。国内大会の参加者数は、年々増加し、平成26年度は1万8,089人となっています。26年度の国際科学オリンピックの日本代表選手は、金メダル10個、銀メダル13個、銅メダル5個の合計28個のメダルを獲得しました。

第3節 グローバル人材の育成に向けた教育の充実

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標5(社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成)
【成果指標】

  • 国際共通語としての英語力の向上
    • 学習指導要領に基づき達成される英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上、高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上)を達成した中高校生の割合50%
  • 英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級、TOEFL iBT 80点、TOEIC 730点程度以上)を達成した英語教員の割合(中学校:50%、高等学校:75%)
  • 日本の生徒・学生等の海外留学者数、外国人留学生数の増加(2020年を目途に日本人の海外留学生数を倍増など)

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 中学校第3学年で英検3級程度以上の英語力を有する生徒の割合:32.2%
     高等学校第3学年で英検準2級程度以上の英語力を有する生徒の割合:31%(平成25年度)
  • 中学校の英語教員で目標を達成した教員の割合:27.9%
     高等学校の英語教員で目標を達成した教員の割合:52.7%(平成25年度)
  • 海外に留学(3か月以上)した高校生数:3,257人(平成23年度)、海外に研修旅行(3か月以内)した高校生数:29,953人(平成23年度)
  • 平成26年度予算から、高校生留学に必要な留学支援金「社会総がかりで行う高校生留学促進事業」を拡充し、短期派遣事業のメニューを新設。
  • 平成27年度から、官民協働による海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」に高校生コースを新設し、14日以上3か月以内(1か月以上を推奨)の期間、留学する高校生等に対して、計300人を支援予定。

 初等中等教育段階から国際的な視野を持つグローバル人材を育成するため、文部科学省では、小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化、高校生の海外留学の促進、スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また、海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。

1 グローバル社会の中で特に求められる力

 グローバル化が進行する社会においては、多様な人と関わり様々な経験を積み重ねるなど「社会を生き抜く力」を身に付ける過程の中で、未来への飛躍を担うための創造性やチャレンジ精神、強い意志を持って迅速に決断し組織を統率するリーダーシップ、国境を越えて人々と協働するための英語等の語学力・コミュニケーション能力、異文化に対する理解、日本人としてのアイデンティティなどを培っていくことが、一層重要になってきます。
 これらを踏まえ、文部科学省では以下に述べるように小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化、高校生の海外留学の促進、スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また、海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。
 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには、我が国の歴史や伝統文化、国語に関する教育を推進していくことも重要です。このため、現行の学習指導要領において、小・中学校の国語科や社会科の授業時数を増加させるとともに、古典や歴史学習の充実を図っています。また、音楽科における民謡・長唄や保健体育科における武道の必修化など、我が国の伝統文化に関する教育についても充実を図っています(※13)。


  • ※13 参照:第2部 第4章 第1節1

2 英語をはじめとした外国語教育の強化

(1)学習指導要領における外国語教育

 平成23年4月から小学校で現行の学習指導要領が全面実施され、年間35単位時間(週1コマ)の外国語活動が導入されました。外国語活動では、外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませることにより、中学校以降の外国語学習につながるコミュニケーション能力の素地を育成することを目的としています。
 また、平成24年度から全面実施された中学校の学習指導要領では、指導する語彙数を900語から1,200語に充実したほか、授業時数を週3コマから週4コマに増やし、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく指導することとしています。25年度から年次進行で実施されている高等学校の学習指導要領でも、指導する語彙数を1,300語から1,800語に充実させ、さらに、「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする」ことを明記しました。

(2)外国語能力の向上に向けた取組

 平成24年6月に「外国語能力の向上に関する検討会」より提言された「国際共通語としての英語力向上のための五つの提言と具体的施策~英語を学ぶ意欲と使う機会の充実を通じた確かなコミュニケーション能力の育成に向けて~」の実現に向けて、文部科学省では、各中・高等学校の外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定のための手引の作成など、外国語能力向上のための諸施策を推進しています。
 このような施策を通して現行学習指導要領の着実な実施を支援していくことに加え、文部科学省は、グローバル化に対応した教育環境の更なる整備に向けて小・中・高等学校を通じた英語教育改革を進めるため、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を取りまとめ、平成25年12月に発表しました。また、同計画を具体化するため、26年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」を開催し、同年9月に「今後の英語教育の改善・充実方策について(報告)」を取りまとめました(※14)。
 これらにより示された方向性を踏まえ、英語教育の更なる充実・強化を図るため、平成26年度より、教員等の英語力・指導力向上のための研修、外国語指導助手(ALT)などの活用促進、小学校の英語教育における先取りした取組の支援、外部検定試験を活用した生徒の英語力の把握・分析及びそれを通じた指導改善などの取組を進めています。
 また、文部科学省は、総務省及び外務省と共に「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を推進しています。本プログラムは、外国語教育の充実や、地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて、諸外国との相互理解を増進するとともに、我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。本プログラムにALTとして活躍する参加者は、生徒が授業で生きた英語に触れたり、実際に英語を使ったりする機会を充実させるために重要な存在です。平成26年度は、本プログラムにより28か国から招致した約4,000人のALTが学校などで語学指導や国際理解のための活動に従事しています。


  • ※14 参照:第1部 特集3 第2節5

3 高校生の国際交流

(1)高校生留学の促進等

 近年、日本人高校生の海外留学や海外研修旅行は減少傾向にあり、その促進が課題となっています。文部科学省では、グローバル化が加速する中で、日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材を育成するため、「第2期教育振興基本計画」等を踏まえ、海外に留学する高校生に対して留学費用の一部を支援する事業(支援対象者数1,600人(原則1年間の長期派遣300人、原則2週間以上1年未満の短期派遣1,300人))を実施しています。
 また、各都道府県が海外勤務や海外留学等の経験者を「グローバル語り部」として高等学校等に派遣して、国際理解教育や国際的な職業、海外留学への関心を高めるための授業等を行えるようにしたり、高校生留学を推進するためのフェア等を各都道府県内で開催したりすることにより、安心・安全な留学への関心を喚起し、留学への機運を醸成するための支援を行っています。
 このほか、著名な科学者による講義や他国からの参加高校生との交流を深めることを目的とする「オーストラリア科学奨学生(ハリー・メッセル国際科学学校)事業」(主催:オーストラリア・シドニー大学内物理学財団、隔年実施、期間:約2週間)に高校生を派遣するための選考及び支援を行っています。平成27年度はその開催年に当たっており、9人の高校生を派遣する予定です。

(2)外国人高校生の短期受入れ

 文化や伝統、生活習慣の異なる同世代の若者が交流を深めることは、広い視野を持ち、異文化を理解し、これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく資質・能力を育成する上で重要です。
 文部科学省では、民間の高校生留学・交流を扱っている団体を通じて、海外で日本語を学習している外国人高校生を6週間程度日本に招致し、日本の高等学校への体験入学等を行う「異文化理解ステップアップ事業」を平成8年度から実施しています。26年度は115人の外国人高校生を招致しており、27年度も同数の招致を予定しています。

4 スーパーグローバルハイスクール

 文部科学省では平成26年度から、社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成に資する教育課程等の研究開発及び実践を行う高等学校等を「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定し、支援しています。26年度はSGH指定校56校、SGHアソシエイト54校を決定しました。

5 国際バカロレアの推進

 国際バカロレア(IB)は、国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムであり、国際的に活躍できる人材を育成する上で優れたプログラムとして評価されています。国際バカロレアの教育理念や手法は、学習指導要領の目指す方向性と軌を一にし、語学力のみならず課題発見・解決能力、論理的思考力、コミュニケーション能力など、グローバル化に対応した素養・能力を育む上で適したものです。
 国際バカロレアには、生徒の発達段階や目的に応じて、次のようなプログラムがあります。

  1. プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)(対象:3歳から12歳)
  2. ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)(対象:11歳から16歳)
  3. ディプロマ・プログラム(DP)(対象:16歳から19歳)
  4. キャリア関連プログラム(CP)(対象:16歳から19歳)

 これらの中でも高校レベルのDPは、2年間のカリキュラムを履修し、最終試験を経て所定の成績を収めることで、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得できます。この資格は、世界の主要な大学の入学者選抜等で広く活用されています。
 国際バカロレアの導入が進むことによって日本の生徒の進路・進学先が国内だけでなく海外の大学に拡大したり、国際バカロレアの特徴的な手法やカリキュラムが日本の初等中等教育改革に波及効果を与える等も期待されます。政府は、「日本再興戦略―JAPAN is BACK」(平成25年6月14日閣議決定)において、平成30年までに日本の国際バカロレア認定校等を200校へ大幅に増加させる目標を掲げて普及拡大に取り組んでいます(27年2月現在で国際バカロレア認定校等は33校)。
 日本における国際バカロレアの普及拡大に向けては、特に、ディプロマ・プログラムでは母語を除く全ての科目を原則として英語で教える必要があったことから、指導可能な教員(外国人指導者等)の確保が大きな課題でした。このため、文部科学省では、平成25年度から国際バカロレア機構との協力の下で、ディプロマ・プログラムの一部の科目を日本語でも実施可能とする「日本語デュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム」(日本語DP)の開発・導入を進めています。日本語DPの活用によって国際バカロレア認定校で指導することができる優秀な日本人教員の確保が以前と比べて容易になります。さらに、26年6月に各都道府県に対して「特別免許状の授与に係る指針」を示し、外国人指導者への特別免許状の授与も促進しています。これらの取組によって日本の高等学校等に国際バカロレアの導入が進むことが期待されます。
 加えて、日本国内における国際バカロレアの普及に当たっては、国内の大学入学者選抜において国際バカロレア資格やその成績の活用を促進することも重要です。このため、大学に対して積極的な情報提供や様々な情報交換を進めており、平成26年度「スーパーグローバル大学創成支援」採択大学の多くで、国際バカロレアを活用した入試の導入や拡大の方針が示されるなど、国際バカロレアを活用した大学入試が大きく広がりつつあります。
 また、文部科学省では、「文部科学省・国際バカロレア普及拡大広報ページ(※15)」において、国際バカロレアに係る最新情報を広く周知するなど、積極的な広報活動にも取り組んでいます。


  • ※15 参照:https://www.facebook.com/mextib

6 海外子女教育の充実

 我が国の国際化の進展に伴って多くの日本人が子供を海外に同伴しており、平成26年4月現在、海外に在留している義務教育段階の子供の数は7万6,536人となっています(図表2-4-3)。
 文部科学省では、海外子女教育の重要性を考慮し、日本人学校や補習授業校の教育の充実・向上を図るため、日本国内の義務教育諸学校の教員を派遣するとともに、退職教員をシニア派遣教員として派遣するなど、高い資質・能力を有する派遣教員の一層の確保に努めています(平成26年度は派遣教員1,070人、シニア派遣教員87人)。
 さらに、教育環境の整備として、義務教育教科書の無償給与、教材の整備、通信教育などを行っています。
 このほか、外国における災害、テロ、感染症などに対応するため、在外教育施設派遣教員安全対策資料の作成などを行うほか、有事の際には、関係省庁や現地の在外教育施設などと緊密な連携を図り、教職員や児童生徒の安全確保に努めるとともに、臨時休校等のため一時帰国した児童生徒の就学機会が確保されるよう、都道府県教育委員会等に周知を図っています。
 なお、海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する情報は、総合ホームページ(通称「CLARINET(クラリネット)(※16)」)に掲載しています。

図表2‐4‐3 海外に在留している義務教育段階の子供の数


  • ※16 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

7 帰国児童生徒、外国人の子供等に対する教育の充実

(1)公立学校に在籍する帰国・外国人児童生徒等の現状

 平成25年4月1日から26年3月31日までの1年間で、海外に1年以上在留した後に帰国した児童生徒は、公立の小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校を合計して、8,679人います。また、公立学校に在籍する外国人児童生徒は26年5月1日現在7万3,289人で、このうち、日本語指導が必要な外国人児童生徒は2万9,198人であり、24年度と比べて2,185人増加しています。さらに、日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒(帰国児童生徒のほか、本人が重国籍又は保護者の一人が外国籍である等の理由から、日本語以外の言語を家庭内言語として使用しており、日本語能力が十分でない児童生徒が含まれる。)は7,897人であり、24年度と比べて1,726人増加しています。

(2)帰国児童生徒、外国人の子供等への支援施策

 文部科学省では、このような児童生徒について、国内の学校生活への円滑な適応を図るだけでなく、児童生徒の特性の伸長・活用など、海外における学習・生活体験を尊重した教育を推進するため、以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 学級数等から算定されるいわゆる基礎定数とは別に、個別の課題(日本語指導を含む。)解決のために各都道府県からの申請に応じて配当する加配定数を措置
  2. 受入れから卒業後の進路まで一貫した指導・支援体制を構築するため、各地方公共団体が行う帰国・外国人児童生徒等の受入れ促進、日本語指導の充実、支援体制の整備に関する取組を支援する補助事業を実施
  3. 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施ができるよう、学校教育法施行規則の一部を改正
  4. 学校において児童生徒の日本語能力を把握し、その後の指導方針を検討する際の参考となる「外国人児童生徒のためのJSL(※17)対話型アセスメント~DLA(※18)~」及び教育委員会等が帰国・外国人児童生徒等教育に関する研修会を計画する際の参考となる「外国人児童生徒教育研修マニュアル」の普及
  5. 教員研修センターにおいて、外国人児童生徒教育に携わる教員や学校管理職及び指導主事を対象として、日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を実施
  6. リーマンショック後の景気後退によって不登校・不就学になっている外国人の子供に対して、日本語等の指導や学習習慣の確保を図り、主に公立学校への円滑な転入を促すため、「定住外国人の子供の就学支援事業」(虹の架け橋教室)を平成21年度から26年度まで実施

  • ※17 JSL:Japanese as Second Language:第2 言語としての日本語
  • ※18 DLA:Dialogic Language Assessment:対話型アセスメント

第4節 キャリア教育・職業教育の推進

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標4(社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成等)
【成果指標】

  • 児童生徒の進路に向けた意識の向上
    • 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加
    • 教科学習が将来社会に出た時に役立つと思う児童生徒の割合の増加
  • 就職ミスマッチなどによる若者の雇用状況(就職率、早期離職率等)改善に向けた取組の増加
    • 中学校、高等学校における職場体験・インターンシップの実施状況の改善

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年度に全ての専門高校において、職業との関連が深い実践的な教育を行うことにより、専門的な知識・技術・技能等の育成を行っている。
  • 既に実施している取組内容の充実や質の更なる向上に対する支援、優良事例や先進事例などの情報発信に努めていくことが課題。
  • 初等中等教育段階の職場体験活動・インターンシップの実施率はおおむね上昇傾向であるが、高等学校普通科においては、インターンシップを体験した生徒の割合が低水準にとどまっている(普通科14.7%(平成20年度)→18.1%(平成25年度))。

 文部科学省では、学校から社会・職業への円滑な移行や明確な目的意識を伴った進路選択のため、社会的・職業的自立に必要な能力等を育むキャリア教育や専門的な知識・技能の高度化、職業の多様化に対応した職業教育の充実を図っています。

1 キャリア教育の推進

(1)初等中等教育におけるキャリア教育の推進

 今日、日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しており、特に、産業や経済の分野においてその変容の度合いが著しく大きく、雇用形態の多様化・流動化に直結しています。このような中で現在の若者と呼ばれる世代は、例えば、若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ、無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないという点において大きな困難に直面していると言われています。
 こうした状況に鑑み、子供たちが、“働くことの喜び”や“世の中の実態や厳しさ”などを知った上で、将来の生き方や進路に夢や希望を持ち、その実現を目指して、学校での生活や学びに意欲的に取り組めるようになり、「学校から社会・職業への移行」を円滑にし、社会的・職業的自立に必要な能力や態度を身に付けることができるようにするキャリア教育を推進していくことが重要です。
 このようなキャリア教育を推進するため、文部科学省では、キャリア教育の実践の普及・促進に向けて様々な施策を展開しています。

〈平成26年度実施施策(※19)〉

  1. 全国各地で高等学校の教員にキャリア教育の意義や重要性について理解を深めてもらうための「キャリア教育推進アシストキャラバン」の実施
  2. 学校と地域・社会や産業界等との円滑な連携に向けて、企業等の出前授業や職場体験活動・インターンシップの受入先の開拓等を行う地域組織の設置を促進する「地域キャリア教育支援協議会設置促進事業」の実施
  3. 学校が望む支援と地域・社会や産業界等が提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」を運営(平成24年8月~)
  4. 厚生労働省、経済産業省と「キャリア教育推進連携シンポジウム」を合同開催(平成27年1月21日)
  5. キャリア教育の充実・発展に尽力し、顕著な功績が認められた学校、教育委員会等に対する「文部科学大臣表彰」、また、学校、地域の産業界、自治体等の関係者が連携・協働して行うキャリア教育の取組に対する「キャリア教育推進連携表彰」(経済産業省と共同実施)を実施

  • ※19 2~5についての詳細は、文部科学省・キャリア教育ウェブサイト参照 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/

(2)職場体験、インターンシップ(就業体験)等の体験活動の推進

 職場体験やインターンシップ(就業体験)は、生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり、1.異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること、2.生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること、3.学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し学習意欲を喚起すること、4.職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど、極めて高い教育効果が期待されます。このため、キャリア教育の中核的な取組の一つとして、学校現場における職場体験、インターンシップの普及・促進に努めています。
 公立小学校では、多くの学校において職場見学が実施されています。公立中学校における職場体験は、平成25年度の実施率が98.6%と、ほとんどの中学校において実施されています。しかし、こうした職場体験を一過性の行事として終わらせることのないよう、学校における事前指導や事後指導の実践に当たっては、日常の教育活動と関連付けて職場体験の狙いや効果を高めることを目的とした実践にするなど更なる工夫も必要となっています。
 公立高等学校(全日制及び定時制)におけるインターンシップの実施率は80.8%となっています。しかし、その参加は希望制となっている学校が多いため、在学中にインターンシップを体験した生徒の割合は、全体で30.4%、普通科では18.1%となっており、参加率の向上が期待されています。

2 職業教育の推進

(1)専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の専門高校を中心に、我が国の産業経済や医療・福祉の発展を担う人材を育成する上で、大きな役割を果たしています。平成26年5月現在、専門高校の数は1,565校、生徒数は約63万人であり、高等学校の生徒数全体の約18.9%を占めています。また、生徒の進路状況は、26年3月卒業者のうち、大学などへの進学者約20.6%、専門学校などへの進学者約23.5%、就職者約51.9%と多様です。

(2)専門高校における教育内容の充実

1.学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けた取組

 平成25年度入学生から年次進行で実施されている高等学校学習指導要領(職業に関する教科)は、専門高校を取り巻く社会の状況や生徒の実態等を踏まえて、1.将来のスペシャリストの育成、2.地域産業を担う人材の育成、3.人間性豊かな職業人の育成という三つの観点を基本としており、円滑かつ着実な実施に向け、改訂の趣旨や内容について広報・周知活動を図るとともに、先進事例の共有や課題の協議を行うなどの取組を実施しています。
 なお、教育課程全体の見直しについては、中央教育審議会において、教育課程の改善に向けた研究や議論の成果等も踏まえつつ、職業教育の充実の在り方などを含めて検討が行われています(※20)。

2.特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及

 近年の科学技術の進展等に伴い、産業界で必要な専門知識や技術は高度化し、従来の産業分類を越えた複合的な産業が発展しています。これに対応した高度な知識・技能を身に付け、社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため、先進的で卓越した取組を行う専門高校を「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」に指定し、調査研究を行っています。
 また、被災地における専門高校等を支援するため、「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業(専門高校における実践的な職業教育推進のためのカリキュラムの開発・実証等)」及び大学や専門学校等と連携して人材育成を行う「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」は、27年度においても引き続き実施します。


  • ※20 参照:第1部 特集3 第2節2

(3)専門高校活性化に資する取組

1.全国産業教育フェア

 全国産業教育フェアは、専門高校等の生徒の学習成果を全国的な規模で総合的に発表するものです。平成26年度は宮城県において開催し、2日間を通して約9万9,000人の来場があり、復興を強力に後押しするものとなりました。なお、27年度のフェアは三重県で開催します。

2.教員研修の充実

 教員研修センター等では、教員等の資質を向上し、その指導力の強化を図るため、産業教育担当の教員などを対象として、情報化・技術革新その他社会情勢の変化に適切に対応した最新の知識・技術を習得させる研修や、大学や企業等の産業教育に関わる施設に派遣する研修などを行っています。

3.施設・設備の補助

 産業教育振興のため、産業教育施設・設備基準に基づき、公立及び私立高等学校に必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を支援しています。

(4)専修学校高等課程(高等専修学校)における職業教育の充実

 専修学校高等課程(高等専修学校)は、その柔軟な制度的特性を生かして社会的要請に弾力的に応える教育を行うことによって、中学校卒業段階で職業に対する目的意識を持った生徒等を対象に、実践的な職業教育・専門技術教育の機会を提供しています。
 また、実学を重視する専修学校高等課程は、不登校や中途退学を経験している生徒等、高等学校等の教育になじまない生徒にも教育の機会を与えており、その社会的・職業的自立に向けて積極的に対応しています。
 専修学校高等課程は、高等学校等と並び、多様な教育の選択肢を提供する後期中等教育機関の一つとしてその役割を果たしていくことが今後とも期待されています。

3 高等学校卒業後の就職の状況

 高校生の就職については、平成27年3月新規高等学校卒業者の就職率(就職希望者に対する就職者の割合)は97.5%(27年3月末現在)となり、前年同期から0.9ポイント上昇しました。就職率は5年連続で前年同期を上回りました。しかし、卒業までに就職に至らなかった生徒も数多く存在し、それらの生徒は、卒業後もハローワーク等の支援を得て就職活動を継続してきました。
 文部科学省では、厚生労働省による支援策を周知し、学校とハローワークが連携した就職支援を呼び掛けるなど、関係省庁・関連経済団体等と連携して、新卒者の就職支援に取り組んでいます。

第5節 小中一貫教育の推進

1 小中一貫教育の現状

 近年、小学校から中学校に進学する際にいじめや不登校等が急増するいわゆる「中一ギャップ」等の教育上の課題に対応するため、全国で、地域の実情に応じた小中一貫教育の取組が広がってきました。文部科学省が行った小中一貫教育等についての実態調査(平成26年5月1日時点)(以下「実態調査」という。)によると、小・中学校の9年間をひとまとまりと捉えて系統性・連続性に配慮した教育を行う、様々な小中一貫教育の取組が、全国211市町村において1,130件実施されています。
 実態調査においては、これらの取組の多くから顕著な成果が報告されています。全体として、小中一貫教育の実施により、「大きな成果が認められる」との回答が約1割、「成果が認められる」との回答が約8割となっており、具体的には、学力の向上、いわゆる中一ギャップの緩和、教員の意識向上など、様々な面に及んでいます(図表2-4-4)。

図表2‐4‐4 小中一貫教育の成果
 一方で、小中一貫教育を推進する上で解消を図っていくべき課題も認識されています(図表2-4-5)。全体として、「大きな課題が認められる」との回答が約1割、「課題が認められる」との回答が約8割となっており、最も多くの学校が課題として認識しているのは、小中一貫教育の実施のための時間の確保や負担の軽減及び負担感・多忙感の解消です。しかし、これらの課題を解消するための取組については「力を入れている」と回答した実施校は約2割にとどまっており、課題が認識されている一方、解消のための対応は必ずしも進んでいない状況が明らかとなりました。
 また、小中一貫教育を実施する地方自治体等からは、小中一貫教育に関連する制度的整備や、支援の充実について要望が寄せられていました。

図表2‐4‐5 小中一貫教育の課題

2 制度化に向けた検討の経緯

 このような状況の中、政府に設置された教育再生実行会議は、平成26年7月に取りまとめた第五次提言「今後の学制等の在り方について」において、小中一貫教育学校(仮称)の制度化を提言しました。文部科学省では、提言も踏まえ、小中一貫教育の具体的な制度設計の在り方について中央教育審議会に諮問を行い、中央教育審議会は26年12月22日に「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)」を取りまとめました。

答申に示された制度設計のポイント

  • 一人の校長の下、原則として小中免許を併有した教員が9年間の一貫した教育を行う新たな学校の種類を学校教育法に位置付ける(小中一貫教育学校(仮称))
  • 独立した小・中学校が小中一貫教育学校(仮称)に準じた形で一貫した教育を施すことができるようにする(小中一貫型小学校・中学校(仮称))
  • 既存の小・中学校と同様、市町村の学校設置義務の履行の対象とする(市町村は全域で小中一貫教育を行うことも可)
  • 既存の小・中学校と同様、市町村教委による就学指定の対象校とし、入学者選抜は実施しない

 さらに、答申では、小中一貫教育の実施を希望する設置者の積極的な取組を促すために、財政的支援を含めた条件整備や小中一貫教育の取組の質の向上を図るための方策を総合的に必要があるとして、適切な教職員定数の算定や施設・設備の整備への支援等が提言されました。

3 学校教育法等の一部を改正する法律について

 この答申を踏まえ、文部科学省では小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う「義務教育学校」の設置を可能とすること等を盛り込んだ「学校教育法等の一部を改正する法律案」を平成27年3月に第189回通常国会に提出し、同法案は同年6月17日に成立しました。

(「学校教育法等の一部を改正する法律」の概要)

(1)趣旨・位置付け
  • 学校教育制度の多様化及び弾力化を推進するため、現行の小・中学校に加え、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う「義務教育学校」を新たな学校の種類として規定
(2)設置者・設置義務
  • 国公私いずれも設置が可能
  • 市区町村には、公立小・中学校の設置義務があるが、義務教育学校の設置をもって設置義務の履行
(3)目標・修業年限
  • 義務教育学校の目的:心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育について、基礎的なものから一貫して施すこと
  • 9年(小学校・中学校の学習指導要領を準用するため、前期6年と後期3年の課程に区分)
(4)教職員関係
  • 市区町村立の義務教育学校の教職員給与は、国庫負担の対象
  • 小学校と中学校の免許状の併有を原則(当分の間は例外あり)
(5)施設整備
  • 施設費国庫負担・補助の対象(小・中学校と同様に、義務教育学校の新築又は増築に要する経費の1/2を負担等)

 なお、小中一貫型小学校・中学校(仮称)の仕組みの整備や、就学指定、教育課程の特例等の在り方については、政省令で規定する予定です。

第6節 高等学校教育改革の推進

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
【成果指標】

  • 習熟度レベルの上位層の増加、下位層の減少。
  • 児童生徒の学習意欲の向上や学習習慣の改善

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 中央教育審議会高等学校教育部会が平成26年6月に取りまとめた「審議まとめ」を踏まえ、困難を抱える生徒等への支援の充実や優れた才能や個性を有する生徒を支える取組を推進するとともに、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の創設に向けた検討を行うこと等を通じて、高等学校教育の質の確保・向上に向けた取組を推進。

1 高等学校教育をめぐる現状とこれまでの取組

 新制高等学校発足当初(昭和23年)約42%であった高等学校進学率は、現在では約98%に達しており、高等学校は国民的な教育機関となっています(図表2-4-6)。高等学校進学率の上昇に伴い、生徒の能力・適性、興味・関心、進路などが多様化しており、生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育が求められています。
 一方、高等学校の生徒数は、最も多かった平成元年の約560万人から26年度には約330万人に減少しており、高等学校の適正配置・適正規模の在り方が課題となっています。
 このため、各都道府県では、高等学校の適正配置・適正規模に留意しつつ、生徒一人一人の個性を伸ばし、知・徳・体の調和の取れた充実した高等学校教育を実現するため、各学校においてそれぞれの特色を生かして創意工夫に富んだ魅力ある学校づくりが進められています。

図表2‐4‐6 高校への進学率と生徒数の推移
 文部科学省においても、これまで、多様な生徒の能力、興味、関心、進路希望等に対応するため、中高一貫教育、総合学科や単位制高等学校をはじめとする新しいタイプの高等学校や特色ある学科、コースの設置を推進するなど、生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりを可能とするための改革を進めてきました。平成26年度には、中高一貫教育校は541校が、総合学科は364校で設置されています。
 一方、義務教育段階での学習不足や、生徒の学習意欲をめぐる問題などへの対応が一層求められるようになってきています。また、現在の高等学校教育については、生徒の幅広い学習ニーズに柔軟に応えることが可能となった一方、その実態が多様化する中で、高等学校というものを一くくりにすることが次第に難しくなっている状況にあります。

2 高等学校教育の質の確保・向上に向けた取組

(1)高等学校教育の在り方に関する検討

 高等学校教育をめぐる状況に鑑み、平成23年9月から中央教育審議会初等中等教育分科会に高等学校教育部会を置き、高等学校教育の現状と課題や今後の高等学校教育の在り方等について検討し、約2年半の審議を経て、26年6月に「審議まとめ」を取りまとめました。
 この「審議まとめ」では、中学校を卒業した生徒のほぼ全てが高等学校に進学する中で、生徒一人一人の学習意欲を高めることが極めて重要であり、社会で生きていくために必要となる力や社会の発展に貢献し得る力を共通して身に付けられるよう、「共通性の確保」を図りつつ、生徒の卒業後の進路が多様になっていることや、各学科において抱える課題が一様でない実態を踏まえ、「多様化への対応」も併せて進めることにより、高等学校教育の質の確保・向上を目指すこととしています。
 また、具体的施策として、1.達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の導入や、幅広い資質の多面的な評価など学習成果や教育活動の把握・検証の推進、2.学校から社会・職業への円滑な移行の推進、3.多様な生徒の学習形態や進路希望に対応した教育活動の推進、4.教員の資質向上と学校の組織運営体制の改善・充実、5.ガイドラインの作成や第三者機関による評価の仕組み創設など広域通信制課程の在り方の検討などを進めて行くことが重要であることが示されました。

(2)全ての生徒が共通に身に付けるべき資質・能力の育成

 「共通性の確保」を図る一環として創設することとされた達成度テスト(基礎レベル)(仮称)については、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的な改革の一環として、中央教育審議会高大接続特別部会においても審議されました。平成26年12月、中央教育審議会は高等学校基礎学力テスト(仮称)を導入することなどを答申し、引き続き、具体的な制度設計に向けて専門的に検討しています。また、筆記試験等では評価できない生徒の幅広い資質・能力を多面的に評価することも重要であり、新たな評価手法の開発・普及に向けた調査研究を進めています。

(3)多様な学習ニーズへのきめ細かな対応

 「多様化への対応」に係る取組については、定時制課程や通信制課程等における困難を抱える生徒等への支援・相談体制の充実を図るための事業を新たに設けるとともに、優れた才能や個性を有する生徒を支えるため、飛び入学者に対する高等学校の卒業程度認定制度の創設等を行うこととしています。加えて、既に大学への編入学が認められている専門学校と同等の修業年限や総授業時数等の要件を満たす高等学校の専攻科を修了した者について、大学に編入学することを認めるよう、制度改正を予定しています。
 さらに、ICT等の活用による学びの機会充実を図るため、全日制・定時制課程の高等学校における遠隔教育を一定の要件の下に可能とするための制度改正を行うとともに、先進的かつ実践的な取組を行う教育委員会等に対し、財政的な支援を行っています。

第7節 教科書の充実

 教科書は、学校における教科の主たる教材として、児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たすものです。教育の機会均等を実質的に保障し、全国的な教育水準の維持向上を図るため、学校教育法により、小・中・高等学校、特別支援学校などにおいては、文部科学大臣の検定を経た教科書又は文部科学省が著作の名義を有する教科書を使用しなければならないとされています。教科書は、次のような過程を経て、児童生徒の手に渡り使用されています(図表2-4-7、図表2-4-8)。

図表2‐4‐7 教科書が使用されるまで

図表2‐4‐8 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

1 教科書検定

 教科書検定制度は、民間の発行者の創意工夫による多様な教科書の発行を期待するとともに、1.全国的な教育水準の維持向上、2.教育の機会均等の保障、3.適正な教育内容の維持、4.教育の中立性の確保などの要請に応えるため実施しているものです。
 教科書検定は、教育基本法や学習指導要領、教科用図書検定基準に基づき、各分野の専門的な知見を有する教科用図書検定調査審議会の委員によって、専門的・学術的な審議に基づいて厳正に行われています。
 また、国民の教科書に対する関心が高いことから、これに応え、教科書への信頼を確保するとともに検定への一層の理解を得るため、検定結果の公開を行い、透明性の確保を図っています。平成26年度は、25年度に行った小学校用及び高等学校の主として高学年用教科書の検定結果を公開しました(※21)。


  • ※21 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1346343.htm
     http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1348031.htm

2 教科書採択

 教科書採択とは、地域や児童生徒の実情に応じて、学校で使用する教科書を決定することであり、公立学校では設置者である都道府県や市町村の教育委員会、国・私立学校では校長が行っています。公立小・中学校の採択については、都道府県教育委員会が、市町村教育委員会の意見を聴いて市町村の単位で採択地区を設定します。複数の市町村からなる採択地区では、地区内の市町村の教育委員会は、規約を定めて採択地区協議会を設け、その協議の結果に基づいて種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
 教科書採択は、採択権者の権限と責任の下で、1.教科書の内容に関する十分な調査研究、2.適正かつ公正な採択の確保、3.保護者の参画などの開かれた採択の推進などが求められています。文部科学省では、各教育委員会に対して、調査研究のより一層の充実、採択事務のルール化などの採択手続の明確化、採択地区の適正規模化、静ひつな採択環境の確保など、採択のより一層の改善に努めるように指導しています。

3 教科書無償給与

 義務教育教科書無償給与制度は、日本国憲法第26条が掲げる義務教育無償の精神をより広く実現する制度として、昭和38年度以来51年間にわたって実施され、国民の間に広く定着しています。この制度は、次代を担う児童生徒に国民的自覚を深めてほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり、同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。教科書無償給与の対象となるのは、全ての義務教育諸学校の児童生徒が使用する全教科の教科書であり、本制度の実施のため、平成26年度には約413億円の予算が計上され、約1,018万人の児童生徒に対して、合計約1億冊の教科書が給与されました。

4 特定教科用図書等の普及充実

 平成20年の「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の制定を受け、拡大教科書など障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図っています。
 具体的には、できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるような拡大教科書の標準的な規格を定めるなど、教科書発行者による拡大教科書の発行を促しています。平成26年度に使用される小・中学校用教科書に対応した標準規格の拡大教科書は全点発行されています(図表2-4-9)。また、教科書発行者が発行する拡大教科書では対応できない児童生徒のために、一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して、教科書デジタルデータの提供を行っています。このほか、発達障害等の障害により検定教科書において一般的に使用されている文字や図形などを認識することが困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等として音声教材の整備充実を図るため、調査研究などを行っています。

図表2‐4‐9 検定済教科書・拡大教科書の種類・発行点数

5 教科書改革

(1)教科書改革実行プラン

 平成18年、約60年ぶりに「教育基本法」が改正され、新たに教育の目標が明記されました。そして20年から21年にかけて改正教育基本法を踏まえた学習指導要領の全面改訂が行われました。これらに示す教育の目標を踏まえてバランス良く記載され、採択権者が責任を持って選んだ教科書で子供たちが学ぶようにできるようにすることが重要です。
 このような観点から、平成25年11月、文部科学大臣は今後の教科書改革に向けた総合的な政策パッケージとして、教科書の編集・検定・採択の各段階における必要な制度改善を盛り込んだ「教科書改革実行プラン」を発表し、同プランに基づき「教科用図書検定基準」や「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」(「教科書無償措置法」)などを改正しました(図表2-4-10)。

図表2‐4 -10 教科書改革実行プラン

(2)教科書編集・検定段階の見直し

 「教科書改革実行プラン」に基づく制度改善として、1.「教科用図書検定基準」等の改正、2.検定申請時の提出書類の改善、3.検定手続の透明化の3点が教科用図書検定調査審議会に審議要請されました。平成25年12月の同審議会での「審議のまとめ」を経て、26年1月には、よりバランスの取れた教科書となるよう、図表2-4-11に示すように社会科の検定基準を改正しました。この検定基準の改正を含め、新しい検定制度は26年度の中学校用教科書の検定から適用されています。

図表2‐4 -11 教科用図書検定基準の改正内容

(3)教科書採択段階の見直し

 「教科書改革実行プラン」に基づく制度改善として、「教科書無償措置法」の一部改正案を第186回国会に提出し、平成26年4月に成立しました(図表2-4-12)。 文部科学省では、改正法の趣旨を踏まえた教科書採択が行われるよう、各教育委員会等への指導・助言を行っています。

図表2‐4 -12 「教科書無償措置法」の改正のポイント

第8節 いじめ等の生徒指導上の諸課題への対応

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)
【成果指標】
<主として初等中等教育関係>

  • いじめ、不登校、高校中退者の状況改善(いじめの認知件数に占める、いじめの解消しているものの割合の増加、全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合の減少、高校中退者数の割合の減少など)

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成25年度 いじめの認知件数に占める、いじめの解消しているものの割合 88.1%(24年度 89.4%)(注:25年度は高等学校に通信制課程を含む。)
  • 平成25年度 全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合 1.29%(24年度1.24%)
  • 平成25年度 高校中退者数の割合 1.7%(24年度 1.5%)(注:25年度は高等学校に通信制課程を含む。)
  • いじめの問題への対応は、学校における最重要課題の一つであり、いじめ防止対策推進法及び基本方針に基づき、国・地方公共団体・学校・地域住民・家庭その他の関係者の連携の下、いじめの未然防止、早期発見・早期対応のための対策を総合的かつ効果的に推進することが必要。

1 生徒指導上の諸問題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は、全ての児童生徒を対象として、学校のあらゆる教育活動の中で、それぞれの人格の健全な発達・成長を目指すとともに、現在及び将来における自己実現を図っていくために、児童生徒が自らを導いていく能力を育成すること、そして、学校生活が有意義で興味深く、充実したものになることを目指して行われるものです。生徒指導の積極的な意義を考慮し、児童生徒に社会的な資質や能力、態度などを修得・発達させるような指導・援助が行われています。
 一方、いじめの社会問題化や少年による重大事件など、児童生徒の問題行動などは教育上の大きな課題となっています。文部科学省では、毎年度、各都道府県教育委員会などを通じて調査を行い、暴力行為、いじめ、不登校などの児童生徒の問題行動等の実態把握に努めています。平成25年度の調査結果では、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約5万9,000件、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約18万6,000件、小・中・高等学校における不登校児童生徒数は17万5,000人と、依然として相当数に上っています。
 学校においては、日常的な指導の中で、教師と児童生徒との信頼関係を築き、全ての教育活動を通じて規範意識や社会性を育むきめ細かな指導を行うとともに、問題行動の未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また、問題行動が起こったときには、粘り強い指導を行い、指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には、出席停止や懲戒などの措置も含めた毅(き)然とした対応を採るとともに、問題を隠すことなく、教職員が一体となって対応する必要があります。さらに、教育委員会は学校を適切にサポートする体制を整備すること、そして、家庭や地域社会、関係機関などの理解と協力を得て地域ぐるみで取り組める体制づくりを進めていくことが重要です。
 文部科学省では小学校段階から高校段階までの組織的・体系的な取組を進めるため、平成22年3月、生徒指導の概念・取組の方向性等を整理した学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し、各教育委員会及び学校などに配布しました。
 また、平成27年2月に神奈川県川崎市で発生した中学1年生殺人事件を受け、文部科学省では、文部科学副大臣を主査とし、関係府省庁とも連携したタスクフォースを設置するとともに、同様の危機にさらされている児童生徒がいないか把握する調査や、学校と警察の連携に係る調査を実施するなどの取組を行いました。調査の結果を受け、被害のおそれが生じている児童生徒については、原則として対面で本人と会い、状況を確認するなどして、安全の確保に向けた取組を採るよう要請しました。
 そして、これらの調査や検証等を踏まえ、同様の事案が二度と起こらないようにするための再発防止策について、3月に取りまとめを行いました。具体的には、

  1. 全国の学校・設置者において、例えば新学期に向けて子供の安全について確認や引継ぎがなされているかなど、緊急点検を行うこと
  2. 平成27年度には、
     (ア)学校や教育委員会における組織的な対応
     (イ)警察をはじめとする関係機関との連携
     (ウ)課題を抱える家庭への支援の充実
     (エ)子供のSOSを受け止める取組の充実
    といった課題について取り組んでいくこと、
  3. 被害のおそれがある児童生徒に対する早期対応の指針の策定

 などについて取りまとめを行い、全国の教育委員会等に通知を発出しました(※22)。


  • ※22 平成27年3月31日付け初等中等教育局長通知「連続して欠席し連絡が取れない児童生徒や学校外の集団との関わりの中で被害に遭うおそれがある児童生徒の安全の確保に向けた取組について」

(2)いじめ

 平成24年度には、いじめの問題を背景として生徒が自らその命を絶つという痛ましい事案をきっかけに、このことが大きな社会問題となりました。25年6月に「いじめ防止対策推進法」が成立したことを受け、文部科学省では、同年10月に「いじめの防止等のための基本的な方針」を策定しました。(図表2-4-13、2-4-14)

図表2‐4 -13 いじめの防止等のための基本的な方針(概要)

図表2‐4 -14 いじめ防止対策推進法に定める組織
 平成25年度、全国の国公私立の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約18万6,000件、いじめを認知した学校数は約2万校で学校総数に占める割合は約51.8%と、依然として相当数に上っています。(図表2-4-15)

図表2‐4 -15 いじめの認知(発生)件数の推移

 いじめは、どの子供にも、どの学校にも起こり得るものであり、その早期発見に努め、いじめを認知した際には早期に対応することが大切です。
 いじめの問題については、まず、「いじめは絶対に許されない」との意識を社会全体で共有し、子供を「加害者にも、被害者にも、傍観者にもしない」教育を実現することが必要です。また、いじめの問題に適切に対処するためには、子供たちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることも大切です。

1.いじめの防止等のための普及啓発や研修等の実施

 同法や基本方針の策定を受け、文部科学省では、教育委員会関係者や教職員に法や基本方針の周知を図り、いじめの防止等への取組を徹底するため、「いじめの防止等のための普及啓発協議会」や「いじめの問題に関する指導者養成研修」を開催しています。

2.関係諸機関との連携

 いじめの問題の未然防止、早期発見、早期対応のためには、学校と関係機関との連携を強化することが必要であり、特に、いじめは犯罪行為に当たる可能性があることから、警察との連携を強化することが重要です。
 このため、文部科学省では通知の発出等によって、

  • 犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案については、早期に警察へ相談・通報することが必要であること(平成24年11月2日付け大臣官房長・初等中等教育局長通知)や学校・教育委員会が、警察におけるいじめ問題への対応の考え方を理解しつつ、より一層主体的に警察と連携・協力していく上での留意点(平成25年1月24日付け初等中等教育局長通知)
  • 学校において生じる可能性がある犯罪行為等について、いじめの態様別にまとめたもの(平成25年5月16日付け初等中等教育局長通知)
    などを示しています。

 加えて、法務省の人権機関との連携の強化についても通知を発出し、授業や講演会、教員研修等に法務局職員や人権擁護委員を招くなど、人権機関との更なる連携を推進することを求めています。

3.いじめ対策等総合推進事業

 いじめの未然防止、早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため、「いじめ対策等総合推進事業」を拡充し、地方公共団体におけるいじめの問題等への対応を支援しています(※23)。

4.「ネットいじめ」への対応

 近年、インターネットや携帯電話を利用したいじめ(「ネットいじめ」)が深刻な問題になっています。文部科学省では平成26年度から、ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールなど都道府県・指定都市における取組への支援を新たに行っています。
 また、「ネットいじめ」のうち、ソーシャルネットワークサービス(SNS)でのいじめについては、第三者が閲覧できないため従来の取組で対応できない場合もあります。こうしたいじめの未然防止のためには、子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み、解決につなげていく意識を高め、実行していくことや情報モラルを身に付けさせることが重要です(※24)。平成27年1月にSNSでのいじめを主なテーマに、全国の小中学生が集まる「全国いじめ問題子供サミット」を開催しました。

5.いじめ防止対策協議会の開催

 基本方針に基づき、文部科学省では、学校関係者や各種職能団体等の関係団体から有識者の参画を得て、いじめ防止対策推進法に基づく取組状況の把握と検証を的確に行うとともに、いじめの問題に取り組む関係者間の連携強化を図り、いじめの問題を含めた生徒指導上の諸問題に関してより実効的な対策を講じるため、平成26年6月に「いじめ防止対策協議会」を立ち上げました。27年3月までに3回の会議を開催しています。


  • ※23 参照:第2部 第4 章 第8節2
  • ※24 参照:第2部 第11章 第1節5

(3)暴力行為

 平成25年度、全国の国公私立の小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は、学校内で発生したものが、全学校の約26.3%に当たる9,700校において約5万4,000件、学校外で発生したものが、全学校の約8.4%に当たる3,114校において約5,000件となっており、依然として相当数に上っています(図表2-4-16)。
 文部科学省では、平成25年度から「いじめ対策等生徒指導推進事業」において、暴力行為などの未然防止や早期発見・早期対応につながる取組、サポートチームなど関係機関とのネットワークを活用した取組などを実践する調査研究を実施しています。

図表2‐4 -16 暴力行為発生件数の推移

(4)不登校

 平成25年度の全国の国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約12万人、高等学校は約5万6,000人と、依然として相当数に上っています(図表2-4-17)。
 文部科学省では、平成25年度から「いじめ対策等生徒指導推進事業」において、教育委員会が設置・運営し、不登校児童生徒の指導・支援を行う教育支援センター(適応指導教室)を活用した取組などについて調査研究を実施するとともに、NPO法人等の学校外の機関などに対して、不登校児童生徒の実態に応じた効果的な活動プログラムの開発などを委託しています。また、23年度と24年度に不登校経験者の状況を把握するための不登校生徒に関する追跡調査を実施し、26年7月には、結果の取りまとめを行うとともに、同年11月には、「全国不登校フォーラム」を行い、関係者から意見を集めました。加えて、27年1月に「不登校に関する調査研究協力者会議」を立ち上げ、不登校の未然防止や不登校児童生徒への必要な支援の在り方等を更に検討しています。
 不登校児童生徒の中には、フリースクールなど学校外の場で学んでいる児童生徒もいます。フリースクール等で学ぶ子供への支援策を考えるきっかけとするため、平成26年11月に、「全国フリースクール等フォーラム」を開催しました。さらに、27年1月には「フリースクール等に関する検討会議」を立ち上げ、フリースクール等での学習に関する制度上の位置付け、子供たちへの学習支援や経済的支援の在り方などに関する具体的な検討を進めています。

図表2‐4 -17 不登校児童生徒数の推移

(5)高等学校中途退学

 平成25年度の全国の国公私立の高等学校における中途退学者数は約6万人、在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は約1.7パーセントとなっています(図表2-4-18)。中途退学の理由は、「学校生活・学業不適応」が約36.3%で最も多く、次いで「進路変更」が約32.9%となっています。
 高等学校中途退学への対応については、各高等学校において、一人一人の生徒が主体的に目標や意欲を持って学ぶことができるよう、生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに、キャリア教育の充実、一層きめ細かな教育相談、ガイダンスを実施することなどが重要です。また、就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。

図表2‐4 -18 高等学校における中途退学者数の推移

(6)自殺

 内閣府・警察庁の自殺統計では、平成25年中の小・中・高等学校の児童生徒の自殺者数は320人となっています。
 文部科学省では、命の大切さを学ぶ教育などを通じて児童生徒の自殺の防止に取り組むとともに、その特徴や傾向などを考慮した対策を検討するため、平成20年度から有識者会議を開催し、児童生徒の自殺予防や、不幸にして自殺が起きたときの緊急対応に必要な学校・教職員向けの資料を作成し、各教育委員会や学校に配布してきました。26年度には、児童生徒を直接対象とした自殺予防教育の在り方や児童生徒の自殺が起きた時の背景調査の在り方について検討を行いました。これらの取組等を踏まえ、学校における自殺予防教育導入の手引である「子供に伝えたい自殺予防」、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」を作成し、26年7月に公表しました。
 また、これらの審議のまとめについて、各教育委員会等の生徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会」を開催し、周知を図っています。

2 生徒指導体制及び教育相談体制の整備・充実

 児童生徒のいじめの問題などに適切に対処するためには、児童生徒の悩みや不安などを受け止めて、速やかに相談できるよう教育相談体制を整備することが重要です。文部科学省では、学校等における教育相談体制を整備するために、児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラーや教育分野に関する知識に加えて、社会福祉などの専門的な知識・技術を用いて、児童生徒が置かれた様々な環境へ働き掛け、関係機関などとのネットワークを活用して支援を行う専門家であるスクールソーシャルワーカーを配置する都道府県等に対して補助を行っています。
 スクールカウンセラーについては、平成26年度は全公立小学校及び公立中学校1万3,800校にスクールカウンセラーを配置するために必要な経費の補助を行ったほか、生徒指導推進協力員・学校相談員として、元警察官などの地域の人材を小中高等学校等へ配置するために必要な経費の補助を行いました。27年度予算では、全公立中学校に対するスクールカウンセラーの配置に加えて、引き続き、生徒指導上の大きな課題を抱える公立中学校等でスクールカウンセラーによる週5日の相談体制を実施し、常時生徒が相談できる体制づくりを推進します。また、公立小学校については、従来の配置に加え、小中連携型配置の拡充に必要な経費を計上するとともに、貧困対策のための重点加配として、新規に600校の配置に必要な経費を計上しています。
 また、スクールソーシャルワーカーについては、各都道府県・指定都市、中核市に対して、平成26年度は1,466人分の配置に必要な経費の補助を行いました。27年度予算では、2,247人分に配置を拡充するとともに、貧困対策のための重点加配として、新規に600人分の配置に必要な経費を計上しています。
 さらに、文部科学省では、いじめの問題に悩む子供や保護者等が、いつでも、全国どこからでも相談ができるよう、平成19年から、夜間・休日を含めた「24時間いじめ相談ダイヤル(0570-0-78310(なやみ言おう)」を整備しています。
 加えて、平成25年度から、都道府県や市区町村における、第三者的立場からいじめ問題等を調整・解決する取組や、外部専門家を活用して学校を支援する取組に対して補助を行っており、26年度からは、都道府県・指定都市における、ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールの取組への支援を新たに行っています。

3 体罰の禁止

 体罰は、学校教育法第11条により厳に禁止されており、児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また、体罰は、違法行為であるのみならず、児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え、教員等及び学校への信頼を失墜させる行為であり、児童生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの連鎖を生む恐れがあります。
 しかし、平成24年度には、部活動中の体罰が背景にある生徒の自殺事案が発生し、大きな社会問題となりました。これを受け、文部科学省では、「体罰禁止の徹底及び体罰に係る実態把握について」(平成25年1月23日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出し、体罰禁止の趣旨の周知徹底と、体罰を行った教員等への厳正な対応等を求めるとともに、体罰の実態について主体的に把握し、文部科学省に対して報告するよう求めました。また、教育再生実行会議の第一次提言も踏まえ、懲戒と体罰の区別等についてより一層適切な理解促進を図るとともに、教育現場において、児童生徒理解に基づく指導が行われるよう、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成25年3月13日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出し、懲戒と体罰の区別について、具体例を示して分かりやすく説明するとともに、部活動指導に当たっての留意事項を示しています。さらに、25年8月には、国公私立学校における24年度の体罰の状況についてまとめた結果を公表し、その結果を踏まえ、「体罰根絶に向けた取組の徹底について」(平成25年8月9日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出し、厳しい指導の名の下で、若しくは保護者や児童生徒の理解を理由として、体罰や体罰につながりかねない不適切な指導を見過ごしてこなかったか、これまでの取組を検証し、体罰を未然に防止する組織的な取組、徹底した実態把握、体罰が起きた場合の早期対応及び再発防止策、事案に応じた厳正な処分など、体罰防止に関する取組の抜本的な強化を図るよう求めました。
 これらに加え、平成27年1月には、国公私立学校における25年度に処分が行われた体罰の状況についてまとめた調査結果を公表し、体罰の実態を把握するとともに、その禁止の徹底に努めています。
 運動部活動における体罰禁止の徹底については、平成25年3月に「運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催し、5月には運動部活動の指導者が、指導に当たって萎縮しないよう、また、体罰に頼らない指導の充実が図られるよう「運動部活動での指導のガイドライン」を策定しました。このガイドラインにおいては、運動部活動における指導と許されない指導の一定の考え方を示すとともに、運動部活動の指導に係る運営、体制等についても必要事項を掲載しています。
 文部科学省では、このガイドラインを各学校等に周知し、運動部活動の現場から体罰を根絶するよう努めています。

第9節 道徳教育の充実

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
【成果指標】

  • 自分自身や他者、社会等との関わりに関する意識の向上
    • 学校のきまりを守っている児童生徒の割合の増加
    • 自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の増加
    • 人の気持ちが分かる人間になりたいと思う児童生徒の割合の増加
    • 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年度 学校のきまりを守っている児童生徒の割合
    小学校90.5% 中学校92.9%
  • 平成26年度 自分には良いところがあると思う児童生徒の割合
    小学校76.2% 中学校67.8%
  • 平成26年度 人の気持ちが分かる人間になりたいと思う児童生徒の割合
    小学校94.4% 中学校95.3%
  • 平成26年度 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合
    小学校86.7% 中学校71.5%

 学校教育では、調和の取れた人間の育成を目指して、子供たちの発達の段階に応じた道徳教育を展開することとしています。
 幼稚園では、各領域を通して総合的な指導を行い、道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では、道徳の時間(週当たり1単位時間)を要として、各教科、総合的な学習の時間、特別活動などそれぞれの特質に応じて適切な指導を行い、学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では、人間としての在り方生き方に関する教育を、学校の教育活動全体を通じて行うことにより、その充実を図ることとしています。
 文部科学省では、教育再生実行会議の第一次提言や、「道徳教育の充実に関する懇談会」の報告を踏まえ、「心のノート」を全面改訂して作成した道徳教育用教材「私たちの道徳」を全国の小・中学生に配布するとともに、本教材を活用するに当たっての解説や具体的な事例などを掲載した指導資料を作成・配布しました。
 また、中央教育審議会は、平成26年3月から道徳教育の在り方について議論を重ね、26年10月に「道徳に係る教育課程の改善等について(答申)」を取りまとめ、学習指導要領に示された内容をより体系的に学ぶことができるよう、小・中学校における従来の「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」(仮称)として位置付けることなどを提言しました。
 この答申を踏まえ、文部科学省においては、学習指導要領の一部改正案などについて、平成27年2月4日から3月5日までの30日間、パブリックコメントを実施し、寄せられた意見も踏まえ、27年3月27日に道徳の時間を「特別の教科 道徳」(「道徳科」)として位置付けることなどに係る学習指導要領の一部改正等を行いました。
 今回の改正の主なポイントは次のとおりです。

  1. 内容について、いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものに改善
  2. 問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れ、指導方法を工夫
  3. 数値評価は引き続き実施せず、児童生徒の道徳性に係る成長の様子を継続的に把握
  4. 道徳科に検定教科書を導入

 今回の改正を踏まえ、小学校では平成30年度から、中学校では31年度からそれぞれ道徳科が実施されます。また、27年度から小・中学校それぞれの実施年度までの間は移行措置として、改正学習指導要領の趣旨を踏まえた取組が可能となっています。
 さらに、文部科学省では、各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため、外部講師の活用や、郷土の歴史や偉人などを取り上げた地域教材の作成、家庭・地域との連携を強化する取組など自治体における多様な取組を支援する「道徳教育の抜本的改善・充実に係る支援事業」を実施しています。

第10節 人権教育の推進

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
【成果指標】

  • 自分自身や他者、社会等との関わりに関する意識の向上
    • 学校のきまりを守っている児童生徒の割合の増加
    • 自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の増加
    • 人の気持ちが分かる人間になりたいと思う児童生徒の割合の増加
    • 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年度 学校のきまりを守っている児童生徒の割合
     小学校90.5% 中学校92.9%
  • 平成26年度 自分には良いところがあると思う児童生徒の割合
     小学校76.2% 中学校67.8%
  • 平成26年度 人の気持ちが分かる人間になりたいと思う児童生徒の割合
     小学校94.4% 中学校95.3%
  • 平成26年度 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合
     小学校86.7% 中学校71.5%

 「日本国憲法」及び「教育基本法」の精神にのっとり、学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することは重要なことです。 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」及び「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定、23年4月1日一部変更)に基づき、政府全体として人権教育・啓発を推進しています。学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じて、学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高めるための指導を進めており、一人一人を大切にする教育の推進に努めています。
 文部科学省では、学校教育の分野において、「人権教育の指導方法等の在り方について[第3次まとめ]」(平成20年3月)等を踏まえつつ、学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や学校における指導方法の改善充実について実践的な研究を行う「人権教育研究推進事業」を実施し、人権教育の先進的な取組の普及に努めています。
 また、平成23年度から人権教育の全国的な推進を図るため、人権教育の実践事例の収集・公表を実施しており、26年度においては、54の事例を公表しました。そのほか、22年度から開始した都道府県等の人権教育担当指導主事等を対象とする「人権教育担当指導主事連絡協議会」を引き続き開催しており、人権教育の重要性について改めて認識を共有するとともに、国連「児童の権利に関する条約」等について引き続き周知を図っています。
 さらに、平成26年6月に学校における性同一性障害に係る対応状況の調査結果を公表し、学校へ周知しました。

第11節 子供の健康と安全

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
【成果指標】

  • 学校における健康教育・健康管理の推進
    • 健康の重要性を認識し、日常生活の実践に生かしている児童生徒の割合の増加
    • 学校保健委員会を設置する学校の割合の増加
    • 朝食を欠食する子供の割合の減少
    • 学校給食における地場産物を使用する割合の増加

成果目標7(安全・安心な教育研究環境の確保)
【成果指標】

  • 学校管理下における事件・事故災害で負傷する児童生徒等の減少・死亡する児童生徒等のゼロ化
  • 子供の安全対応能力の向上を図るための取組が実施されている学校の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 健康は、幸せな生活を送るために重要だと考えている児童生徒の割合は、【高3男子】90.1%、【高3女子】93.1%(平成22年度)。
     また、保健で学習したことを、自分の生活に生かしている児童生徒の割合は、【高3男子】47.1%、【高3女子】47.4%(平成22年度)
  • 学校保健委員会を設置する学校の割合は、平成25年度で92.1%(平成23年度:90.7%)
  • 朝食を欠食する子供の割合は【小学校】1.5%(平成22年度)。
  • 学校給食における地場産物を使用する割合は25.1%(平成24年度)
  • 学校安全計画の中に児童生徒等に対する安全指導の内容を盛り込んでいる学校の割合は94.4%(平成25年度)
  • 学校保健に係る教職員の資質・能力向上、退職養護教諭や学校医等の活用、家庭・地域との連携などにより、保健教育・保健管理をより一層推進することが必要である。
  • 第2次食育推進基本計画等も踏まえ、栄養教諭の配置を促進するとともに、学校給食の地場産物の活用の一層の普及・定着を図るための方策を検討する必要がある。
  • 安全教育の充実に関する成果についての周知・徹底、安全教育を系統的に指導できる時間を確保するための検討、安全教育に関する教職員の研修等の充実などが必要である。

 学校は、子供たちの健やかな成長と自己実現を目指して教育活動を行うところであり、子供の健康と安全を保つことは重要です。文部科学省では、学校における食育の推進、心と体の健康問題への対応、登下校時を含めた学校における子供の安全確保に向けた施策に取り組んでいます。

1 学校給食、食育の推進

(1)栄養教諭を中心とした指導の充実

 近年の子供の食を取り巻く環境の変化に対応するためには、学校における指導体制を整備し、学校教育活動全体の中で体系的・継続的に食に関する指導を行うことが重要です。このため、平成17年4月から各都道府県において栄養教諭の配置が開始されており、26年4月1日現在で全都道府県に5,023人の栄養教諭が配置されています。また、26年4月1日現在、国立大学の附属学校に76名の栄養教諭が配置されています。
 現行の学習指導要領では、総則に「学校における食育の推進」を明記するとともに、家庭科、体育科など関連する科目等においても食育の観点からの記述を充実しています。
 文部科学省では、有識者会議が今後の学校における食育の在り方について検討した結果を受けて、平成26年度から栄養教諭を中心に外部の大学や企業、生産者、関係機関等と連携し、食育を通じた学力向上、健康増進、地産地消の推進、食文化理解など食育の多角的効果について検証しました。さらに、これらの成果の普及啓発を行うため、先進的な食育に取り組むモデル校として「スーパー食育スクール」を全国で33事業(42校)指定し、学校における食育を一層推進しています。

(2)学校給食について

 学校給食は、栄養バランスの取れた豊かな食事を子供に提供することによって子供の健康の保持増進を図ることはもちろん、食に関する指導を効果的に進めるため、給食の時間をはじめとして各教科や特別活動、総合的な学習の時間等において「生きた教材」として活用することができるなど大きな教育的意義を持っています。平成25年5月現在、小学校では2万629校(全小学校の99.2%)、中学校では9,167校(全中学校の86.9%)、全体で3万1,218校が学校給食を実施しています(図表2-4-19)。

図表2‐4 -19 学校給食実施状況

 各学校では、近年、学校給食の多様化が図られており、例えば学校給食の食材として地域の産物を活用したり、地域の郷土料理・伝統料理などを献立に活用したりする取組が進められています。第2次食育推進基本計画では学校給食における地場産物の活用率を平成27年度までに30%以上(食材数ベース)とすることを目指すとされていますが、25年度における活用率は全国平均で25.8%となっています。さらに、25年12月に「第2次食育推進基本計画」の一部が改定され、24年度に全国平均で77%であった学校給食における国産食材の使用割合を27年度までに80%以上とする新たな目標が追加され、25年度における活用率は、全国平均で77.1%となりました。
 また、米飯給食は、伝統的な食生活の根幹である米飯に関する望ましい食習慣を児童生徒に身に付けさせることや、地域の食文化を通じて郷土への関心を深めることが期待できるといった教育的意義を持っており、平成25年度の週当たりの米飯給食の実施回数は全国平均で3.3回となっています。文部科学省では、週3回未満の地域・学校については週3回程度、週3回以上の地域・学校については週4回程度など新たな目標を設定し、実施回数の増加を図ることを促しています。
 平成9年以降、学校給食を原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒は発生していませんが、依然としてノロウイルス等による食中毒が発生しており、学校給食における衛生管理の徹底が求められています。
 平成20年に「学校給食法」を改正し、文部科学大臣が学校給食の適切な衛生管理を図る上で必要な事項について維持されることが望ましい基準を定め、21年3月に「学校給食衛生管理基準」を告示し、同年4月から施行しました。
 文部科学省では、「学校給食衛生管理基準」の徹底を図るため、「学校給食調理場における手洗いマニュアル」等の各種マニュアル(※25)を作成しています。
 また、学校給食における食物アレルギーを持つ児童生徒への対応については、従来、「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(平成20年3月)」(以下、「ガイドライン」という。)や通知等によって、学校長をはじめとした校内体制の整備のほか、保護者や主治医等と十分な連携を図りつつ、個々の児童生徒の状況に応じた対応に努めることなどを指導してきました。
 文部科学省では、平成24年に発生した死亡事故を受けて開催した有識者会議の最終報告を踏まえ、26年度に、学校におけるアレルギー対応の改善・充実のための資料として、「学校給食におけるアレルギー対応指針」「ガイドライン要約版」「学校におけるアレルギー疾患対応資料(DVD)」を作成し、全国の教育委員会や学校等へ配布し、全教職員に対する理解の促進と事故防止の徹底を図っています。


  • ※25 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/index.htm

2 学校保健の充実

(1)子供の健康課題に対する総合的な取組

 現代の多様化・深刻化する子供の健康課題に対応するため、心の健康や性に関する問題、喫煙、飲酒、薬物乱用防止について記述した「児童生徒の心と体を守る啓発教材」を作成し、全国の小学校5年生、中学校1年生、高等学校1年生等に配布しました。
 また、退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして派遣する事業を実施したり、メンタルヘルスの問題、各種感染症、アレルギー疾患など学校だけでは解決することができない児童生徒の現代的な健康問題について学校保健支援チームを設置し地域の医療機関等と連携して解決を図る事業を実施したりするなど様々な施策を講じています。
 さらに、学校、家庭、地域の専門機関等が連携し、学校における健康課題を協議することによって児童生徒等の健康づくりを推進する学校保健委員会の設置を推進しており、平成25年度の設置率は92.6%と高い水準を実現しています。

(2)がんに関する教育の推進

 がん対策については、厚生労働省が中心となって、「がん対策基本法」の下で政府が策定する「がん対策推進基本計画」に基づいて行われており、平成24年度から新たな基本計画が始まっています。同計画では、今後5年以内の健康教育におけるがん教育の検討や実施についても盛り込まれています。
 文部科学省では、同計画の達成に向けて、平成26年度からがんに関する教育の推進に取り組んでいます。具体的には、有識者で構成される検討会を開催し、がん教育の先進事例の分析・調査等を行うとともに、各都道府県等が主体的に行うがん教育に関する取組に対して支援を行うことによって各地域におけるがん教育の充実を図っています。

(3)児童生徒等の健康診断の充実

 学校における健康診断は、児童生徒の健康の保持増進を図り、学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資するため重要です。「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」で健康診断の在り方について検討した結果を踏まえ、「身長曲線・体重曲線」(※26)を用いることによって、成長障害等の異常の発見や発育の評価を効果的に行うことができることから、これらの活用を促進することを前提として座高測定を、衛生状態の改善によって検出率が極めて低い水準となった寄生虫検査をそれぞれ健康診断の必須項目から削除しました。
 文部科学省では、平成26年4月30日に「学校保健安全法施行規則」の一部を改正し、28年度からの実施に向けて「児童生徒の健康診断マニュアル」を改訂する一方で具体的な実施方法等を周知しています。


  • ※26 身長曲線・体重曲線:子供の身長・体重の記録を描くことで得られる曲線と、年齢別の身長・体重のパーセンタイル値を曲線でつないで作成した標準的なグラフを比較し、各自の発育経過を確認するもの。
    ※ パーセンタイル値とは、日本語では百分率のこと。同姓同年齢の児童生徒が100人いて背の低い方から高い方に並んだ時、身長が5パーセントタイルということは前から5番目に当たる身長、90パーセントタイルは前から90番目に当たる身長ということになる。

(4)感染症への対応

 学校における感染症(※27)の流行予防は、教育の場・集団生活の場として望ましい学校環境を維持するとともに、児童生徒等が健康な状態で教育を受けるためにも重要です。
 平成24年には、学校保健安全法施行規則を改正し、髄膜炎菌性髄膜炎を新たに学校において予防すべき感染症に追加するとともに、インフルエンザ等の出席停止の期間の基準を改正しました。これらの改正等を踏まえ、教職員や医療関係者を対象とした指導参考資料「学校において予防すべき感染症の解説」(※28)を作成し、平成25年5月に公表しました。


  • ※27 学校において予防すべき感染症は、学校保健安全法施行規則第18条により第一種から第三種に分けられている(第一種:エボラ出血熱、ペスト、特定鳥インフルエンザなど、第二種:インフルエンザ、百日咳ぜき、麻しん、風しん、結核、髄膜炎菌性髄膜炎など、第三種:コレラ、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフスなど)。
  • ※28 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1334054.htm

(5)学校におけるアレルギー疾患への対応

 近年、アトピー性皮膚炎など児童生徒のアレルギー疾患の問題が指摘されており、学校における対応が重要となっています。平成19年4月に「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」及び「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」が文部科学省の監修で作成され、20年4月から各学校等に配布されています。22年度からは、学校におけるアレルギー疾患の対応の充実を図るため、教職員や指導主事などを対象とする講習会を毎年全国6か所で開催しています。26年度は全国10か所に拡大し、同ガイドラインなどの普及啓発を一層推進しています。

(6)心の健康問題への対応

 社会環境や生活環境の急激な変化が、子供の心身の健康に大きな影響を与えており、学校生活においても生活習慣の乱れ、いじめ、不登校などの心の健康問題が顕在化しています。文部科学省では、教職員などの学校関係者が、メンタルヘルスについての正しい知識を持って児童生徒に対応することができるよう、子供の心のケアシンポジウムを開催しています。

(7)薬物乱用防止教育の充実

 近年の青少年の薬物乱用問題については、これまでの諸対策によって、薬物は絶対に使うべきではないと考える児童生徒の割合が高くなるなど規範意識の向上、少年の覚醒剤事犯の検挙人員の継続的な減少及び同事犯全体における少年の割合の低下など、一定の成果が認められています。一方、大麻事犯については、平成26年中の大麻事犯全体の約37%を20歳代が占めており、依然として若者を中心に乱用されている状況がうかがえることが指摘されています。また、近年、合法ハーブ等と称して販売される危険ドラッグ等、乱用される薬物が多様化しており、若者への広がりが懸念されています。
 文部科学省では、全ての中学校及び高等学校において、年に1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに、地域の実情に応じて小学校においても薬物乱用防止教室の開催に努めるなど、薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう都道府県教育委員会等を指導しています。また、高等学校学習指導要領「保健体育」において新たに大麻を扱うこととし、大麻の有害性・危険性に関する指導を充実するなど、薬物乱用防止教育の推進に努めています。さらに、薬物乱用防止教室の指導者を対象とした講習会等の開催や、大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレットの作成・配布等を通して、合法ハーブ等と称して販売される危険ドラッグ等、多様化する乱用薬物に関する啓発の強化を図っています。

(8)学校における性に関する指導の充実

 学校における性に関する指導は、児童生徒に性に関する知識を理解させるとともに、生命の尊重や自己及び他者の個性を尊重し、相手を思いやり、望ましい人間関係を構築するなど、適切な行動を取ることができるようにすることを目的としており、体育科、保健体育科、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしています。なお、指導に当たっては、1.児童生徒の発達の段階を踏まえること、2.学校全体で共通理解を図ること、3.保護者の理解を得ることなどに配慮すること、4.個々の児童生徒の状況等に応じ、集団指導と個別指導の内容を区別して効果的に行うことなどに配慮することが大切です。
 これらを踏まえて文部科学省では、各地域における指導者養成と普及を目的とした研修会を各都道府県において開催するとともに、指導主事や教職員を対象とした「性に関する講習会」を開催し、性に関する今日的課題に対する理解や効果的な指導方法について研修を深めています。

3 学校安全の推進(※29)

(1)子供の安全に関する総合的な取組

 平成21年4月から施行された「学校保健安全法」では、学校安全を取り巻く今日的な課題に対応できるよう、それらの課題に対して学校全体としての取組体制を整備充実させるとともに、学校のみでは解決が難しい課題については地域の関係機関との連携などを図るという趣旨の下で、学校の施設・設備の安全点検、日常生活における安全に関する指導などを含めた学校安全計画の策定・実施や危険等発生時の対処要領の作成など学校安全に関する規定が充実されました。
 また、同法に基づき、平成24年4月、国として「学校安全の推進に関する計画」(※30)を策定し、各学校における安全に関する取組を総合的かつ効果的に推進しています。


  • ※29 防災教育については、第2部 第2章 第4節1参照
  • ※30 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1320286.htm

(2)学校での子供の安全確保の充実

 学校は児童生徒等が安心して学習を行うことが求められる場所であり、学校においてその安全な環境を整備し、事件・事故を防止するための取組を進める必要があります。
 このため、安全対策として実施する監視カメラや非常通報装置、自動体外式除細動器(AED)の設置などに関する経費に対して地方財政措置が講じられています。また、文部科学省では、教職員の校内研修や職員会議などで活用できる教職員向け学校安全資料を作成しています。
 このほか、学校、教育委員会、道路管理者、警察などの関係機関が連携し、実施する通学路の交通安全対策を支援するとともに、各地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等の継続的な取組を支援するなど、通学路における交通安全の確保に向けた取組を推進しています。平成25年度には、特に対策が必要な市町村に対し、通学路安全対策アドバイザーを派遣し、専門的な見地からの必要な指導・助言の下で、学校、教育委員会が関係機関と連携して行う通学路の合同点検や安全対策の検討に対して支援しました。
 平成26年度は、通学路安全対策アドバイザーを含めた交通安全教育の専門家と協力して、児童生徒に対する交通安全教育の実施まで支援を広げるとともに、これまで発生した学校管理下での事件・事故災害における学校及び学校の設置者の対応について実態を調査・分析し、学校事故再発防止に向けて今後留意すべき点について取りまとめるための「学校事故対応に関する調査研究」を実施しています。

(3)地域ぐるみで子供の安全を守る環境整備

 学校内のみでなく登下校時を含めた子供の安全を確保するためには、地域社会全体で子供の安全を見守る体制の整備が必要です。先進事例として、例えば、セーフティプロモーションスクール(※31)の取組が上げられます。文部科学省では、平成17年度から学校安全ボランティアを活用し、地域ぐるみで学校内外における子供の安全を見守る体制を整備するため、警察官OB等がスクールガード・リーダー(※32)として学校を巡回したり、学校安全ボランティアに対して警備のポイントなどを指導したりするなど、各地域における子供の見守り活動に対する支援などを実施しており、引き続き、地域と学校、保護者、関係機関が連携して安全を確保する取組を推進しています。


  • ※31 セーフティプロモーションスクール:学校が地域の学校安全関係者や関係機関等と連携・協力し、PDCAサイクルに基づく学校安全計画の評価と次年度計画への反映等、安全推進の取組を継続的に実践する学校を認証する大阪教育大学による取組
  • ※32 スクールガード・リーダー:学校等を巡回し、学校安全体制及び学校安全ボランティアの活動に対して専門的な指導を行う者を指す。

(4)実践的な安全教育の充実

 平成23年度から25年度にかけて全面実施されている小学校学習指導要領、中学校学習指導要領及び高等学校学習指導要領では、総則に安全に関する指導について新たに規定するとともに、体育科、保健体育科、特別活動など関連する各教科などにおいても指導の内容の充実を図っています。
 学校における安全教育においては、児童生徒等が自他の生命を尊重し、日常生活全般における安全のために必要な事柄を実践的に理解し、生涯を通じて安全な生活を送ることができるような態度や能力を養う安全教育を、生活安全・交通安全・災害安全のそれぞれの分野において行うことが重要です。特に、子供の安全を確保するためには、子供自身に危険を予測し、危険を回避する能力を養成するよう実践的な安全教育を推進する必要があります。このため文部科学省では、学習指導要領の改訂などを踏まえ、学校における安全教育の教職員用の参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」(平成22年3月)、「『生きる力』を育む防災教育の展開」(※33)(25年3月)の改訂を行いました。このほかにも、各種の教職員用の参考資料や教材を作成しています。
 さらに、平成24年度から東日本大震災の教訓を踏まえた新たな防災教育の指導方法の開発・普及等を行う実践的防災教育総合支援事業を実施するなど、各学校で防災教育をはじめとした実践的な安全教育が実施できるよう支援しています。
 平成26年度は、防災教育をはじめとした安全教育が各学校において確実に実施されることが重要であるとの認識の下で、中央教育審議会スポーツ・青少年分科会学校安全部会において、安全教育に関する諸課題について審議し、教育課程全体の中で検討するに当たって必要な視点に関する意見を取りまとめました。今後、次期学習指導要領改訂に向けた教育課程全体の見直しに関する議論等の中で引き続き検討されていきます。


  • ※33 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1289310.htm

第12節 きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員等の指導体制の整備

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年11月、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会において「これからの学校教育を担う教員の在り方について―小中一貫教育制度に対応した教員免許制度改革―(報告)」を取りまとめた。また、教員養成・採用・研修の在り方等について、27年夏頃を目途として方向性を示すことができるよう議論を進めている。
  • 学校現場では、英語教育や理数教育、道徳教育など近年の教育課題への対応とともに、子供たちに基礎的な知識・技能を習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を育むことが求められている。このため、教員には高い専門性と実践的な指導力を身につけられるよう、養成・採用・研修の一体となった改革を進める必要がある。
  • 教職員評価を活用した人事管理、優秀教職員表彰の整備、指導が不適切な教員への適切な対応、教職員のメンタルヘルス対策等のため、文部科学省として、様々な機会を捉え、教育委員会に対し必要な指導を行っていくことが必要。

1 教員の資質能力の向上

(1)教員の養成・採用・研修の一体的な取組

 学校における教育活動の成否は、教員の資質能力に負うところが極めて大きく、教員の資質能力の向上は子供たちの教育の充実を図る上で重要な政策課題です。子供たちに確かな学力や規範意識を身に付けさせ、社会を生き抜く力を養成する必要があるとともに、学校現場においては、グローバル化を踏まえた英語教育の強化、いじめ問題への対応、特別支援教育の充実、ICTの活用や主体的・協働的な学びの充実をはじめとした、複雑かつ多様な課題への対応が求められています。このため、教員としての高い使命感や倫理観とともに、こうした課題に適切に対応できる、高い専門性と実践的な指導力などを十分に備えた教員を確保する必要があります。
 このような課題を踏まえ、平成26年11月に中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会が「これからの学校教育を担う教員の在り方について―小中一貫教育制度に対応した教員免許制度改革―」(報告)を取りまとめました。今後は、教員養成・採用・研修の全体に共通する背景、課題、改革の方向性を踏まえつつ、これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方について議論を進めていきます。

1.教員養成における改善・充実

 平成26年9月、教員の資質能力向上に係る当面の改善方策の実施に向けた協力者会議が取りまとめた「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」(25年10月)を踏まえ、教職課程における情報の公表の義務付け、外国の大学において修得した単位を免許状の授与を受けるための科目の単位に含めることができる旨の制度改正や、教職大学院及び修士課程の組織編制に係る省令改正等を行いました。

2.教員採用における取組

 文部科学省では、真に教員としての適性を有する人材の確保の観点から、各都道府県教育委員会等における採用選考の改善を促しています。学力試験の成績だけでなく、面接試験や実技試験の実施、受験年齢制限の緩和、様々な社会経験を適切に評価する特別選考等を通じて、人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されています。平成26年度に各都道府県教育委員会等で実施された採用選考では、個性豊かで多様な人材を確保するため、教職経験や民間企業等での勤務経験を有する者、英語に係る資格を持つ者、スポーツ・芸術での技能や実績を持つ者等を対象とした特別選考が63の都道府県教育委員会等で実施されました(図表2-4-20)。

図表2‐4 -20 平成26 年度公立学校教員採用選考試験実施方法等
 また、全ての都道府県教育委員会等で採用選考基準を公表するなど、採用選考の透明性や不正防止の取組を行っています。
 なお、条件附採用期間制度(※34)を適正に運用し、新規採用者の教員としての適格性を見極めるよう、各教育委員会の取組を促進しています。
 加えて、幅広い経験を持ち、優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が、様々な形で学校教育に参加することも、学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。現在、教員免許状を取得していなくとも、各教科や総合的な学習の時間の一部などを担当することができる特別非常勤講師制度の活用が広がっており、平成25年度の活用件数は、全国で1万9,539件となっています。
 さらに、優れた社会経験のある者を学校現場に迎え入れるため、特別免許状を授与し、教諭の職に就くことができる制度が整備されており、都道府県教育委員会等が行う採用選考において、特別免許状の授与を前提とした社会人選考も行われています。また、都道府県教育委員会による特別免許状の積極的な授与に資するとともに、特別免許状所有者による教育の質を担保するため、「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」を作成し、各都道府県教育委員会に対し通知しました(平成26年6月)。

3.現職教育の高度化

 教員には、その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており、様々な研修が実施されています。
 国では、教員研修センターにおいて、校長・副校長・教頭などに対する学校経営研修や、重要課題について地方公共団体が行う研修の講師や企画・立案などを担う指導者を養成するための研修等により、地域の中核となるリーダーを育成しています。加えて、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)において、本センターの機能強化が言及されており、今後、当該取組を進めていきます。具体的には、27年度に本センターに「次世代型教育推進センター」を設置し、課題解決・協働型授業等に関する研修システムを構築するなど全国的な普及を図っています。
 また、都道府県教育委員会等においては、初任者研修、10年経験者研修、長期社会体験研修、大学院等派遣研修等が行なわれています。
 加えて、教員が定期的に最新の知識技能を身に付けることで、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目的として、平成21年4月から教員免許更新制が実施されています。
 更新制導入後(平成21年4月1日以降)に授与される免許状(新免許状)には、10年間の有効期間が定められます。有効期間の更新は、都道府県教育委員会(免許管理者)が行い、1.大学等が行う免許状更新講習(※35)を30時間以上受講・修了した者、2.免許管理者が最新の知識技能を十分に有しており、免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者に対して更新が認められています。
 更新制導入前(平成21年3月31日まで)に授与された免許状(旧免許状)については、更新制の導入後も有効期間は定められませんが、現職教員については、10年ごとの修了確認期限(※36)までに30時間以上の免許状更新講習を受講・修了することが義務付けられています。また、現職教員が、修了確認期限までに免許状更新講習を受講・修了しなかった場合は、その者が有する免許状は効力を失うこととされています。ただし、新免許状の場合と同様に、免許管理者が最新の知識技能を十分に有しており、免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者は、免許状更新講習の受講義務が免除されます。なお、現職教員以外の者については、免許状更新講習の受講は義務付けられていません。
 教員免許更新制度は、法律の施行後5年を経過した場合に制度の運用状況等について検討を加え、必要に応じ改善を行うものと法律で定められています。また、教員が、グローバル化等の社会の急激な変化を受けて、現代的な教育課題に対応する指導力を身に付ける必要性が指摘されています。これらに対応するため、免許状更新講習に係る枠組みや内容の見直しが求められています。
 このため、文部科学省では「教員免許更新制度の改善に係る検討会議」を開催し、これまでの教員免許更新制度に係る諸問題を整理し、専門的な見地から検討を行い、平成26年3月に「教員免許更新制度の改善について」(報告)を取りまとめました。この報告を踏まえ文部科学省では、免許状更新講習について、これまでの必修領域を精選するとともに、学校種・免許種や教職経験に応じて現代的な教育課題を適時に多くの受講者が学べ、かつ、現職研修経験に応じて履修内容を調整できる領域として選択必修領域を導入するなど、その枠組みや内容の見直しに係る省令を改正し、28年4月から施行することとしています。


  • ※34 条件附採用期間制度:採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり、児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・講師については、その職務の専門性等から特に、条件附採用期間が1年間とされ、かつ、その間に初任者研修を受けることとなっている。
  • ※35 免許状更新講習:免許状更新講習の内容は以下の二つの事項となっている。
    1. 教職についての省察並びに子供の変化、教育政策の動向及び学校の内外における連携協力についての理解に関する事項(12時間以上)
    2. 教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項(18時間以上)
  • ※36 修了確認期限:旧免許状所持者である現職教員等が、免許状更新講習の課程を修了したことについての都道府県教育委員会の確認を受けなければならない期限

(2)教職員評価と優秀教職員表彰、指導が不適切な教員への対応

1.教職員評価に関する取組

 教職員評価については、組織的な取組、業務改善、地域との協働について評価するなど学校組織全体の総合力を向上させる工夫や、教職員自身による特長や課題の認識、面談等における管理職との認識共有を通じて人材育成に資する工夫を行うなど、一層の改善充実に努めることが重要です。
 平成26年5月、地方公務員について、人事評価制度の導入等によって能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図ること等を目的として、「地方公務員法」の一部が改正されました(公布の日から起算して2年を超えない範囲内において、政令で定める日から施行)。
 従来、教育公務員を含む地方公務員の勤務評定については、「地方公務員法」第40条等に基づき、任命権者たる教育委員会が、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講ずることとされていましたが、今回の法改正により、勤務成績の評定に代わり、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる人事評価制度が導入されることになります。人事評価制度においては、能力・業績の両面からの評価により実施され、評価基準の明示や自己申告、面談、評価結果の開示などの仕組みにより客観性等を確保しつつ、評価結果が任用、給与、分限その他の人事管理にも活用されることとなります。
 教職員に対する人事評価について、教職員の能力と業績を適正に評価し、評価結果が処遇上も報われるようにすることは、教職員全体への信頼性を高め、頑張る教職員を励まし応援していく上で重要です。文部科学省では、これまでも、評価結果を人事、給与、優秀教職員表彰、当該教職員の資質向上に必要な研修機会の付与等に活用するよう促してきました。現在も各教育委員会において、既に能力評価や業績評価等による人事評価が実施され、評価結果が適切に活用されています。文部科学省では、各教育委員会に対して、今回の「地方公務員法」の改正の趣旨にのっとり、教職員評価を活用した人事管理に一層努めるよう促しています。

2.優秀教職員表彰に関する取組

 教職員の意欲を向上させ、更なる活躍を期待し、広く他の教職員の模範となることを期待するため、優秀な教職員を表彰することは非常に重要です。平成24年度には、67都道府県・指定都市のうち59の教育委員会が優秀教員表彰の取組を実施しています。文部科学省においても、18年度から文部科学大臣優秀教職員表彰を実施してきました。26年度は、学校における持続可能な開発のための教育(ESD)を含むユネスコ活動の重要性やグローバル化の進展への対応などを踏まえ、ユネスコ活動や国際交流等の分野を選考基準に追加して表彰することとしました。26年度の被表彰者については、全国の国公私立学校の現職の教職員のうち、学校教育における教育実践等に顕著な成果を上げた者の中から、都道府県・指定都市教育委員会などが候補者を推薦し、830人が表彰されました。

3.指導が不適切な教員への対応

 教員の指導は、心身ともに発達段階にある児童生徒に対して大きな影響を及ぼすものであり、指導が不適切な教員が児童生徒の指導に当たることがないようにしなければなりません。平成26年5月に「地方公務員法」の一部が改正され、地方公務員について、人事評価制度の導入等により能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図る観点から、人事評価を任用その他の人事管理の基礎として活用することが法律上明記されました。これを踏まえ、指導が不適切な教員の認定の際、人事評価を活用することが求められています。
 指導が不適切な教員の認定や指導に課題のある教員に対する取組を行うに当たっては、法律の趣旨にのっとり、文部科学省において取りまとめた「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(平成20年2月8日)」などを踏まえ、指導が不適切な教員に対する指導改善研修後の免職その他の必要な措置、指導が不適切であるとの認定に至らないが、指導に課題があるとされた教員の資質向上のための取組、条件附採用期間制度の適正な運用などにより、人事管理システムの公正かつ適正な運用に引き続き努めるよう、各教育委員会に対し促しています。

図表2‐4 -21 指導が不適切な教員の認定者数等について(平成25年度)

(3)非違行為を行う教員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰などの非違行為は、それ自体許されないものであるだけでなく、教員に対する信頼、ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
 体罰事案については、各教育委員会において引き続き、体罰の未然防止、徹底した実態把握及び早期対応に努めるとともに、体罰を行ったと判断された教員については、客観的な事実関係に基づき厳正な処分などを行うよう促しています。特に、児童生徒に傷害を負わせるような体罰を行った場合、児童生徒への体罰を常習的に行っていた場合、体罰を起こした教育職員が体罰を行った事実を隠蔽した場合などについては、より厳重な処分を行うよう各教育委員会に対し指導しています。
 また、児童生徒に対するわいせつ行為などについては、教員として絶対に許されないものであり、各教育委員会において対策を強化するとともに、こうした非違行為があった場合には、原則として懲戒免職とするなど、厳正な対応をするよう指導しています。あわせて、文部科学省では、各教育委員会に対して、懲戒処分全般の基準を作成することや、処分事案について、児童生徒などのプライバシー保護に十分配慮しつつ、できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し、教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2-4-22)。

図表2‐4 -22 公立高校教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成25年度)

(4)教職員のメンタルヘルスの保持

 学校教育は教員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであり、教員が心身ともに健康を維持して教育に携わることが重要です。しかし、公立学校の教員の精神疾患による病気休職者数は、平成25年度においては5,078人と、19年度以降、5,000人前後で推移しており、依然として高水準であることから、教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進を図ることが喫緊の課題です(図表2-4-23)。
 文部科学省では、有識者による「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」を開催し、平成25年3月に最終まとめを取りまとめました。最終まとめでは、教職員のメンタルヘルス対策は、人事や学校運営と関連付けて、効果的・効率的に取り組むことが重要であり、教職員本人のセルフケア、校長等のラインによるケア、教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるような良好な職場環境・雰囲気の醸成等も含めた予防的な取組を推進することが必要であるとされています。それとともに、教職員が復職する際に、心身の快復状況に加え、授業等の業務を滞りなく行えるか等の本人の状況、産業医・嘱託精神科医等の意見などを踏まえ、教育委員会において慎重に判断することや、復職後の経過措置も含めた復職支援の充実を連携させて取り組むことが必要であるとされています。
 文部科学省では、最終まとめを参考にしつつ、教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進について一層積極的に取り組むよう、各教育委員会に対して指導しています。

図表2‐4 -23 公立高校教育職員の病気休職者数の推移

(5)民間人校長、民間人副校長・教頭制度の活用

 文部科学省では、地域や学校の実情に応じ、学校の内外から幅広く優秀な管理職を登用することができるよう、平成12年に校長の資格要件を緩和し、教員免許を持たず、教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとしています(副校長については20年の設置時から、教頭については18年からそれぞれ可能となっている。)。
 これらの資格要件の緩和により、平成26年4月1日現在、全国の公立学校における教員出身でない校長の在職者数は136人、教員出身でない副校長・教頭の在職者数は70人となっています。

2 学級編制・教職員定数・義務教育費国庫負担金制度

(1)学級編制と教職員定数

 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校における1学級の児童生徒数(学級編制)や教職員の配置(教職員定数)の「標準」を定めています。公立の小・中学校等の学級編制の標準は、現在、1学級40人(平成23年度から小学校第1学年は35人)となっており、各都道府県教育委員会は、これを標準として学級編制の基準を定めることになっています。
 なお、地域の実情や児童生徒の実態に応じた柔軟な対応が可能となるよう、各都道府県教育委員会の判断で、国の標準よりも少人数の学級編制基準を定めることもできます。平成22年度以降は、全ての都道府県において国の標準を下回る学級編制の取組が実施されています(図表2-4-24)。

図表2‐4 -24 平成26 年度において国の標準を下回る学級編制を実施する都道府県の状況について

 文部科学省では、少人数教育の推進、いじめ問題や特別支援教育の充実といった様々な教育上の課題に対応をするため、これまで幾次にもわたって学級編制の標準や教職員定数の改善を重ねてきました。平成26年度予算では、少子化等に伴い教職員定数が減少する一方で、小学校英語の教科化や特別支援教育の充実など個別の教育課題への対応に必要な703人の教職員定数増を実施しました。
 平成27年度概算要求では、26年8月に策定した「教職員定数改善計画(案)」に基づき、10年後の学校の姿を見据えて、3万1,800人の定数改善を「義務標準法」の改正等によって図ることを目指し、その初年度分として2,760人の定数改善の要求を行いました。
 しかし、厳しい財政状況を踏まえ、平成27年度予算においては、少子化等に伴う教職員定数の減少を見込む一方で、課題解決型授業(アクティブ・ラーニング)等による教育の質の向上やチーム学校の推進、個別の教育課題への対応、学校規模の適正化への支援のため、新たな定数措置として900人を計上しています。
 また、多様な経験を持つ1万人の地域人材等の積極的参加による地域ぐるみの教育再生を図る取組として、「補習等のための指導員等派遣事業」を実施し、学校全体として指導体制の充実を図ることとしています。

【学級規模等の国際比較】
 欧米諸国などと比べて、1学級当たりの児童生徒数や教員一人当たりの児童生徒数など、我が国の教育環境は依然として低い水準にあります。

(参考1 1 学級当たり児童生徒数[国際比較])
(参考1 1 学級当たり児童生徒数[国際比較])

(参考2  教員1 人当たり児童生徒数[国際比較])
(参考2  教員1 人当たり児童生徒数[国際比較])

(2)義務教育費国庫負担制度

1.義務教育費国庫負担制度

 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、「義務教育費国庫負担法」に基づき、義務教育に必要な経費の大半を占める教職員給与費について、原則、都道府県が負担した実支出額の3分の1を負担しています(義務教育費国庫負担制度)。これによって、地方公共団体の財政状況にかかわらず、全国どの地域においても、教職員給与費を安定的に確保することが可能となっています。
 また、義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で給与額や教職員配置に関する地方の自由度を大幅に拡大する「総額裁量制」の下で、各都道府県においては、教員を増員して少人数学級を導入するなど地域や学校の実情を踏まえた特色ある教育がより一層展開できるようになりました。

2.教員の給与

 教員の給与は、「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(いわゆる「人材確保法」)によって、一般の公務員の給与より優遇されています。昭和55年の時点では、教員の給与は、一般行政職の公務員の給与と月額で比較して7%以上優遇されていましたが、その後、この優位性は年々減少し、現在は一般行政職の公務員の給与とほぼ同水準となっています。文部科学省では、人材確保法の初心に立ち返り、教員の処遇を確保するとともに、真に頑張っている教員に報いることができるよう、メリハリのある給与体系の推進を図ることが重要と考えています。

(3)指定都市に係る県費負担教職員の給与負担等の移譲

 現行制度の下で、市町村立の小学校・中学校・特別支援学校等の教職員については、都道府県が給与費を負担し、都道府県教育委員会が人事権を持っていますが、指定都市立の学校については、特例として指定都市教育委員会が人事権を持っています。このため、指定都市においては、人事権者と給与負担者が異なるといった状態にあり、指定都市からこのような状態を解消するよう要望されていました。
 こうした要望に対して、文部科学省では、平成25年11月14日、関係道府県と指定都市の間で個人住民税所得割2%の税源移譲について合意されたことなどを背景に検討を進めてきました。中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について(答申)」(平成25年12月13日)において、「指定都市に係る県費負担教職員の給与等の負担、県費負担教職員に係る定数の決定及び学級編制基準の決定については、指定都市に移譲する方向で所要の制度改正を行うことが適当である」と指摘されました。さらに、「事務・権限の移譲等に対する見直し方針について」(平成25年12月20日閣議決定)において、指定都市に係る県費負担教職員の給与等の負担等を移譲することが決定されました。
 文部科学省では、平成26年5月に成立した「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」の中で、指定都市への給与負担等の移譲に必要な法制上の措置を講じ、平成29年度からの移譲を目指して必要な準備を行っています。

第13節 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の推進

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)
【成果指標】
(主として初等中等教育関係)

  • 幼稚園等の就園率の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 幼児教育の段階的無償化に向けた取組を推進している。
  • 幼児教育の質の向上に向けた取組を推進している。

1 幼稚園教育の現状

 幼児期は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期であり、このような時期に行われる幼児教育は非常に重要なものです。
 幼稚園は、満3歳から小学校就学前までの幼児であれば、誰でも入園することができる学校であり、我が国の幼児教育の中核としての役割を担っています。平成26年5月1日現在、全国で1万2,905園の幼稚園があり、約156万人の幼児が在園しています。全国の5歳児のうち、約54%が幼稚園に就園しており、また、3歳児の就園率については増加傾向にあります(図表2-4-25、図表2-4-26)。

図表2‐4 -25 幼稚園数及び幼稚園児数等

図表2‐4 -26 幼稚園就園率の推移

2 幼稚園の教育活動・教育環境の充実

(1)幼稚園教育の内容の改善・充実

 現行の幼稚園教育要領に基づいて、近年の子供の育ちの変化や社会の変化に対応し、1.子供の発達や学びの連続性の確保(小学校教育との円滑な接続)及び幼稚園での生活と家庭などでの生活の連続性の確保、2.教育課程終了後に行ういわゆる「預かり保育」や子育ての支援の充実を図っています。
 小学校教育との接続については、平成22年11月に取りまとめた「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について」報告も踏まえ、各幼稚園等における幼小接続の取組の推進を図っており、現在、全国の約8割の幼稚園で、幼児と小学校児童との交流や教員同士の交流が実施されています。
 また、地域の実態や保護者の要請に応じて行ういわゆる預かり保育や子育ての支援(子育て相談、子育てに関する情報の提供、未就園児の親子登園、保護者同士の交流の機会の提供など)については財政措置などを通じた支援を行っており、全国の約8割の幼稚園で実施されています。
 さらに、文部科学省では、「幼稚園における学校評価ガイドライン〔平成23年11月改訂〕」を示し、幼稚園の特性に応じた学校評価を推進することによって幼稚園教育の質の向上を図っています。
 これらの幼稚園教育に関する様々な課題等について幼稚園教育に携わる者の理解を深めるため、国及び都道府県において、幼稚園の園長や教諭等を対象とした協議会を開催しています。
 また、平成27年4月1日から子ども・子育て支援新制度が施行されており、幼児教育の質の向上がますます求められています。文部科学省では、質の高い幼児教育を確保する観点から、幼児教育に関する国の研究拠点の整備に向けた検討や、地方公共団体における幼児教育の推進体制や幼児教育に係る教職員の資質向上を図るためのモデル事業なども27年度から実施しています。

(2)幼稚園就園奨励事業の充実

 幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や公私立幼稚園間における保護者負担の較差の是正を図ることを目的として、保育料(入園料を含む。)を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して、幼稚園就園奨励費補助金によりその所要経費の一部を国庫補助しています。
 平成26年度は、幼稚園と保育所の負担の平準化を図る観点から、生活保護世帯の保護者負担を無償化するとともに、第二子の保護者負担を半額にした上で所得制限を撤廃し、第三子以降についても所得制限を撤廃しました。
 平成27年度予算では、低所得世帯の保護者負担を更に軽減するとともに、市町村に対する補助を拡充(居住市町村に関わらず支援が行われるよう、市町村の超過負担を解消)することとしています。

3 幼児教育、保育の総合的な提供

(1)幼稚園と保育所の連携

 文部科学省では、厚生労働省と連携して、幼稚園と保育所との連携を進めています。具体的には、幼稚園と保育所の施設の共用化の推進、教育内容・保育内容の整合性の確保、幼稚園教諭と保育士の合同研修の実施・資格の併有の促進、幼稚園と保育所の連携事例集の作成・提供などの取組を行っています。

(2)認定こども園制度の活用促進等

 平成18年10月から、幼稚園、保育所等のうち、教育・保育を一体的に提供し、地域における子育ての支援を実施する施設として、都道府県知事(教育委員会の場合もある。)が認定する認定こども園制度が開始されました。
 認定こども園制度は、1.親の就労の有無にかかわらず施設の利用が可能となる、2.適切な規模の子供の集団を保ち、子供の育ちの場を確保できる、3.既存の幼稚園の空き教室の活用により保育所の待機児童の解消に資する、4.育児不安の大きい家庭への支援を含む地域の子育て支援が充実するなどの効果が期待されています。
 平成27年4月1日現在で、認定こども園は全国で2,836件となっています(図表2-4-27)。

図表2‐4 -27 認定こども園の平成27 年4 月1 日現在の数

 文部科学省・厚生労働省では、平成26年度まで、20年度に創設された「安心こども基金」により取組の普及促進に努めてきました。27年度以降も新たに交付金を創設し、引き続き、「安心こども基金」で行われていた支援を継続することとしています。

(3)子ども・子育て支援新制度

 平成24年8月、幼児期の学校教育・保育、地域の子育て支援を総合的に推進するため、子ども・子育て関連三法(「子ども・子育て支援法」、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」、「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)が成立し、これに基づき「子ども・子育て支援新制度」を構築することとなりました(図表2-4-28)。
 新制度では、住民に身近な市町村が実施主体となり、幼児期の学校教育・保育、子育て支援に関する住民のニーズを把握し、ニーズを満たすための方策を定めた計画(市町村子ども・子育て支援事業計画)を策定して、地域の子ども・子育て支援の体制を計画的に整備します。
 また、新制度で提供される子ども・子育て支援の諸施策について、改善や充実が行われることとなっています。具体的には、1.認定こども園の一類型である「幼保連携型認定こども園」について、学校及び児童福祉施設としての法的位置付けを持つ単一の施設として、認可・指導監督権限を一本化すること、2.認定こども園・幼稚園・保育所に共通する給付である「施設型給付」や、小規模保育等への給付である「地域型保育給付」を創設すること、3.一時預かりや放課後児童クラブなど、13の事業を「地域子ども・子育て支援事業」として、財政支援等を行うこと、としています。
 これらの改善や充実によって、現行の認定こども園制度で課題とされていた二重行政や財政支援が不十分であること等の解決が図られます。
 新制度は平成27年4月1日から施行されており、文部科学省では、引き続き、制度の施行状況を踏まえつつ、円滑な実施に取り組んでいきます。

図表2‐4 -28 子ども・子育て関連3法(平成24年8月成立)の趣旨と主なポイント

第14節 インクルーシブ教育システム(※37)構築に向けた特別支援教育の推進

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標1(「生きる力」の確実な育成)
【成果指標】

  • 幼・小・中・高等学校における障害のある幼児児童生徒に対する個別の指導計画及び個別の教育支援計画の作成率の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 平成26年度 個別の指導計画の作成率
     91.5%(作成する必要のある該当者がいない学校を除く)
  • 平成26年度 個別の教育支援計画の作成率
     81.5%(同上)
  • 障害のある児童生徒等の就学手続について、「学校教育法施行令」の一部を改正し、市町村の教育委員会が、障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案し、総合的な観点から就学先を決定する仕組みに改めた。
  • 就学手続の改正や特別支援教育関係予算の大幅な増額など、障害のある児童生徒の教育の充実に向けた取組が着実に進められており、引き続き、障害のある児童生徒が、障害の状態に応じた十分な教育を受けられるよう、教育環境の整備を進めていくことが必要。

  • ※37 インクルーシブ教育システム:障害者の権利に関する条約第24条によれば、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、政府訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(政府訳:一般的な教育制度)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。
  • ※38 通級による指導:小・中学校において、学習障害・注意欠陥多動性障害・自閉症等のある児童生徒を対象として、通常の学級に在籍し、主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら、障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態

1 特別支援教育をめぐる現状

 障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うため、一人一人の障害の状態などに応じ、特別な配慮の下で適切な教育を行う必要があります。このため、障害の状態などに応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級において、特別の教育課程や少人数の学級編制の下で、特別な配慮を持って作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備などを活用して指導が行われています。また、通常の学級においては、通級による指導(※38)のほか、習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法、特別支援教育支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われています。
 平成26年5月1日現在、特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と、小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒の総数は約40万6,000人です。このうち、義務教育段階の児童生徒は約34万人であり、これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約3.3%に当たります(図表2-4-29)。特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と、小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒は年々増加しています。
 また、通常の学級においても、学習障害、注意欠陥多動性障害、自閉症などの発達障害のある児童生徒が在籍しています。文部科学省が平成24年12月に実施した調査によると、公立小・中学校の通常の学級に在籍する知的な遅れはないものの発達障害の可能性のある児童生徒は、6.5%程度と推計されています。そのため、発達障害のある児童生徒をめぐっては、学校生活における早期からの支援に対する要望が高まっています。

図表2‐4 -29 特別支援教育の現状

2 特別支援教育を推進するための取組

(1)特別支援教育の在り方に関する検討

 「障害者の権利に関する条約」は、平成18年12月に国連総会で採択され、20年5月に発効しました。日本は、19年9月に署名し、26年1月に批准しました。同条約では、「インクルーシブ教育」の理念が提唱されており、この理念の実現に向け、文部科学省では、平成24年7月の中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」等を踏まえ、障害のある児童生徒等の就学手続について、特別支援学校の就学を原則とする仕組みから、市町村の教育委員会が、障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、総合的な観点から就学先を決定する仕組みに改正しました。

(2)地域・学校における支援体制の整備―発達障害を含む障害のある子供たちへの支援―

1.特別支援教育の充実のための体制整備

 文部科学省では、発達障害を含む障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため、学校における体制の整備や留意事項などをを示し、学校や教育委員会などの取組を促進しています(※39)。また、障害のある幼児児童生徒への支援体制の整備、巡回相談や専門家チームによる支援、研修体制の整備・実施、関係機関との連携など、国も特別支援教育の体制整備の推進に係る経費の一部を補助しています。
 平成26年度特別支援教育体制整備状況調査によると、小・中学校においては、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており、「個別の指導計画」の作成、「個別の教育支援計画」の作成についても、着実な取組が進んでいます。また、幼稚園・高等学校における体制整備は進みつつあるものの、小・中学校に比べると課題が見られます(図表2-4-30)。幼稚園段階からの支援の強化に向け、26年度には、障害のある子供に対する早期からの教育相談及び支援体制の構築を推進するための、教育と保育、福祉、保健、医療等の連携推進、情報提供等の取組に対する支援事業を大幅に拡充しています。

図表2‐4 -30 平成26 年度特別支援教育体制整備状況調査

2.発達障害のある児童生徒に対する支援事業

 発達障害の可能性のある児童生徒の多くは通常の学級に在籍しています。そのため、全ての教員が発達障害に関する一定の知識・技能を有していることが必要とされています。文部科学省では、平成25年度に開始した発達障害に関する教職員の専門性向上のための事業を拡充するとともに、26年度から発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援の在り方に関する研究事業を新たに実施しています。

3.障害のある児童生徒の教材の充実

 障害のある児童生徒について、将来の自立と社会参加に向けた学びの充実を図るためには、障害の状態や特性を踏まえた教材を効果的に活用し、適切な指導を行うことが大切です。文部科学省では、平成26年度から学習上の支援機器等教材の活用を促進する事業を開始し、児童生徒の障害の状態等に応じて使いやすい支援機器等教材の研究開発を支援するとともに、支援機器等教材を活用した指導方法に関する実践的な研究を実施しています。

4.公立幼稚園、小・中・高等学校における特別支援教育支援員の配置

 各教育委員会では公立幼稚園、小・中・高等学校に、障害のある児童生徒に対する学校生活上の介助や学習活動上の支援などを行う特別支援教育支援員の配置を行っています。特別支援教育支援員の配置に係る経費については、地方財政措置が講じられています。文部科学省では、特別支援教育支援員の活用事例などの参考情報をまとめたパンフレットを各教育委員会に配布するなど、特別支援教育支援員の配置を促進しています。
 各教育委員会においては、こうした財政措置などを有効に活用し、全国的に特別支援教育支援員の配置数増加が図られています(平成26年5月1日現在の全国の配置数は、公立幼稚園で約5,600人、公立小・中学校で約4万3,600人、公立高等学校で約500人となっている。)。

5.障害の重度・重複化への対応

 特別支援学校に在籍する児童生徒の障害については、重度・重複化が進んでおり、一層適切な対応が必要です。特別支援学校では、現行の学習指導要領等に基づき、障害の重度・重複化に対応した適切な教育が行われています。

6.特別支援学校等における医療的ケア

 特別支援学校等には、日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており、学習や生活を行う上で適切に対応することが必要です。
 現在、「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき、特別支援学校の教員も一定の条件の下でたんの吸引等の医療的ケアをすることができることとされていますが、文部科学省では、特別支援学校などにおいて、医療的ケアを必要とする児童生徒などの健康と安全を確保するに当たり留意すべき点などについて整理した通知を発出しています。
 現在、全国の特別支援学校には、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が約8,000人在籍しています。文部科学省では、特別支援学校における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため、看護師の配置に必要な経費の一部を補助しています。

7.就学支援

 文部科学省及び都道府県・市町村教育委員会では、障害のある児童生徒などに対する就学を支援するため、「特別支援学校への就学奨励に関する法律」などに基づき、特別支援教育就学奨励制度を実施しています。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などの就学に関する特殊事情を考慮して、保護者などの経済的負担を軽減することを目的とし、保護者等の負担能力に応じて、通学費や教科用図書購入費、寄宿舎費など特別支援学校等の就学に必要な経費の全部又は一部を負担しています。


  • ※39 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm

(3)教育課程における特別支援教育

 幼稚園、小・中・高等学校における特別支援教育については、学習指導要領等において、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的・組織的に行うこととしています。
 また、現行の特別支援学校の学習指導要領のポイントとしては、1.障害の重度・重複化、多様化に対応した一人一人に応じた指導の一層の充実、2.自立と社会参加を推進するための職業教育等の充実といった観点から次のようなことが挙げられます。

1.障害の重度・重複化、多様化に対応した一人一人に応じた指導の一層の充実

 障害の重度・重複化、多様化に対応した指導については、現行の学習指導要領において、教師間の協力や外部専門家の活用など指導方法の工夫を例示するほか、一人一人に応じた指導を充実する観点から、関係機関と連携した支援を行うための個別の教育支援計画の作成を義務付けるとともに、「自立活動」の内容として「他者とのかかわりの基礎に関すること」などを明記しています。

2.自立と社会参加を推進するための職業教育等の充実

 障害者が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業などへの就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要です。しかし、近年、特別支援学校高等部卒業者のうち、福祉施設等入所者の割合が約64%に達する一方で、就職者の割合は約28%となっており、職業自立を図る上で厳しい状況が続いています(図表2-4-31)。この背景には、特別支援学校高等部卒業後の就職者数は増加しているものの、特別支援学校高等部在籍者数も大幅に増加しており、就職者の割合が微増にとどまっていることなどが挙げられます。

 現行の学習指導要領では、職業教育・就労支援の充実に向けて、1.産業現場等における長期間の実習を取り入れるなどの就業体験の機会の充実、2.校内の組織体制の整備や労働・福祉等の関係機関との連携、地域や産業界等の人々の積極的な協力を得るなどの進路指導の充実、3.知的障害者を教育する特別支援学校高等部に専門教科「福祉」を新設するなどの改善を行っています。文部科学省では、学習指導要領の趣旨を踏まえた職業教育の改善に関する研究とともに、平成26年度から、自立・社会参加に向けた高等学校段階における特別支援教育充実事業を実施しています。
 障害者の就労を促進するためには、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を行う必要があります。文部科学省では、厚生労働省と連携して、都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用したり、福祉関係機関と連携を図り就労への円滑な移行を図ったりするといった取組の充実を促しています。

図表2‐4 -31 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

3.交流及び共同学習の充実

 障害のある子供と、障害のない子供や地域の人々が活動を共にすることは、全ての子供の社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく、地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっています。
 現行の学習指導要領等では、「障害者基本法」も踏まえ、各学校において、障害のある子供とない子供との交流及び共同学習の機会を設けることなどを規定しています。
 また、国立特別支援教育総合研究所が運営する「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」(※40)において、平成26年から「合理的配慮」の提供に係る実践事例を公表し、特別支援教育の一層の推進につなげています。さらに、学校の教員や教育委員会の指導主事を対象とした交流及び共同学習推進指導者研究協議会を実施し、各都道府県において指導者となる人材を育成しています。


  • ※40 参照:http://inclusive.nise.go.jp/

(4)教員の専門性の向上

 平成26年5月1日現在、特別支援学校の教員の特別支援学校教諭免許状等の保有率は全体で72.7%となっており、特別支援教育に関する教員の専門性の向上が一層求められている中で、専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっています。
 このため、文部科学省では、各都道府県教育委員会等に対して、特別支援学校教諭免許状等の保有率の向上に向けて、採用、研修、配置等に当たっては免許状の保有状況を考慮することなどを要請しています。また、特別支援学校の教員の専門性を向上させることを目的として、平成18年度から各都道府県の教員等を対象とした研修を実施するなどの取組を行っています。さらに、国立特別支援教育総合研究所においても、各都道府県において指導者となる人材を育成するための様々な研修を実施しています。

(5)国立特別支援教育総合研究所における取組

 国立特別支援教育総合研究所においては、我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、発達障害を含めて様々な障害のある幼児児童生徒に対する指導法等についての専門的な研究や研修が進められています(※41)。また、発達障害教育情報センターを設置し、教育関係者や保護者等にウェブサイトを通じて発達障害に関する各種教育情報を提供したり教員向けの研修講義を配信したりしています(※42)。


  • ※41 参照:http://www.nise.go.jp
  • ※42 参照:http://icedd.nise.go.jp

第15節 地方教育行政の在り方と地域と共にある学校づくり

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標8(互助・共助による活力あるコミュニティの形成)
【成果指標】

  • 「コミュニティ・スクールを全公立小・中学校の1割に拡大」

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • コミュニティ・スクール指定状況:1,919校(平成26年4月1日現在)
  • コミュニティ・スクールの導入促進や取組の充実を支援するため、調査研究や推進フォーラム、制度説明会を実施
  • コミュニティ・スクールの導入について地域差があることから、未導入の地域を中心とした支援を推進することが必要

1 教育委員会制度

 教育委員会は、地方教育行政の中心的な担い手であり、地域の学校教育、社会教育、文化、スポーツなどに関する事務を担当する機関として、地域の教育行政における重要事項や基本方針を決定しています。教育委員会は、教育における政治的中立性、継続性・安定性の確保や、地域住民の多様な意向の反映を実現するため、地方公共団体の長から独立した合議制の執行機関として、全ての地方公共団体(都道府県及び市町村)に置かれています。

(1)平成26年改正前の教育委員会制度

 これまでの教育委員会は、原則として5人の教育委員(都道府県又は市については6人以上、町村については3人以上とすることもできます。)によって構成され、教育委員は、都道府県知事や市町村長が議会の同意を得て任命されています。教育長は、教育委員の中から任命され、教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属する全ての事務を行っています。

(2)平成26年改正後の教育委員会制度

 これまでの教育委員会制度に対しては、教育委員長と教育長の間で責任の所在が不明確であることなどの課題が指摘されていました。教育再生実行会議の提言や中央教育審議会の答申を踏まえて、平成26年6月、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し、教育委員会制度を刷新しました。
 新教育委員会制度では、教育行政の責任の明確化を図るため、委員長と教育長を一本化した新たな責任者(新教育長)を置くこととしたほか、地方公共団体の長が、教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めることとするとともに、地方公共団体の長と教育委員会によって構成される総合教育会議を設けることとしました(図表2-4-32)。このほか、いじめによる自殺の防止等、児童生徒等の生命又は身体への被害の拡大又は発生を防止する緊急の必要がある場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して指示ができることを明確にしました。改正法は、平成27年4月1日から施行されています。

図表2‐4 -32 教育委員会の組織 

2 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の促進

 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、平成16年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正によって導入された制度であり、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って公立学校の運営に参画することを可能とするものです。平成26年6月に成立した「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」の附帯決議においても、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)のより一層の拡大が言及されています。
 教育委員会からコミュニティ・スクールに指定された学校には、保護者や地域住民を委員とした学校運営協議会が設置されます。学校運営協議会は、校長が作成する学校運営の基本的な方針について承認を行うこと、学校運営全般について教育委員会・校長に意見を述べること、教職員の任用に関して任命権を持つ教育委員会に意見を述べることなどができます(図表2-4-33)。

図表2‐4 -33 コミュニティ・スクールのイメージ

 このように、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画することによって、学校と地域の人々が目標を共有し、共に行動する関係を構築することが期待されます。
 平成26年4月1日現在、コミュニティ・スクールとして指定を受けている学校は、25年度から349校増え、全国で1,919校となっており、着実に全国に広まりつつあります(図表2-4-34)。また、設置する小・中学校全てをコミュニティ・スクールに指定している教育委員会の数も、25年度比17市町村増の55市区町村と増加しています。

図表2‐4 -34 公立学校における学校運営協議会を置く学校(コミュニティ・スクール)数の推移

 コミュニティ・スクール指定校の校長に対するアンケート調査では、「成果が不明確」「任用の意見の申し出で人事が混乱しないか」など、指定前に課題視していたことの多くが指定後には解消したと回答されています(図表2-4-35)。

図表2‐4 -35 コミュニティ・スクール指定前後の課題認識

 文部科学省では、「コミュニティ・スクールの数を全公立小・中学校の1割(約3,000校)に拡大」することを推進目標としています。その実現に向けて、1.コミュニティ・スクールの導入を目指す地域における運営体制づくりなどの実践研究(平成26年度は全国138教育委員会に委託、52教育委員会に補助金交付)、2.導入を目指す地域に実践経験のある元校長や地域住民を派遣するコミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)派遣事業、3.先進取組の成果発信などを通じて更なる制度普及を図る「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(26年度は山口・宮崎・岐阜・東京で開催)や説明会などを実施しています。
 なお、文部科学省ウェブサイトには、コミュニティ・スクールに関する情報を掲載しています(※43)。


  • ※43 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/index.htm

3 自律的・組織的学校運営体制の構築

(1)学校評価の推進

 学校評価は、各学校が自らの教育活動等の成果や取組を不断に検証することによって、1.学校運営の組織的・継続的な改善を図ること、2.各学校が保護者や地域住民等に対し、適切に説明責任を果たし、その理解と協力を得ること、3.学校に対する支援や条件整備等の充実につなげることを目的として行われます。「学校教育法」及び「学校教育法施行規則」では、各学校に対して、自己評価の実施・評価結果公表の義務、学校関係者評価の実施・評価結果公表の努力義務、評価結果の設置者への報告義務等を定めています。
 文部科学省では、各学校や設置者における取組の参考に資する「学校評価ガイドライン」を策定しているほか、好事例の普及・啓発や、学校評価に係る指導的立場にある教育行政職員に対する研修等を実施しています(平成26年度は広島・岩手・東京で開催)。文部科学省ウェブサイトには、学校評価の実施状況や学校評価に関する調査研究事業の報告書、教育委員会における学校評価の取組事例等を掲載しています(※44)。


  • ※44 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-hyoka/index.htm

(2)学校の裁量拡大とマネジメント力の強化

 地域に開かれた特色ある学校づくりを実現するためには、各学校において、それぞれの教育理念や教育方針に基づき、児童生徒や地域の状況などに応じて、自主的・自律的な学校運営を行うことが必要です。このような観点から、各教育委員会において、学校の裁量を拡大するため、次のような取組が行われています(図表2-4-36)。

1.学校管理規則における教育委員会の関与の縮減

 学校と教育委員会の関係を定めている学校管理規則について、これまで教育委員会の許可や承認などが必要であったものを届出に改めるなど、教育委員会の関与を縮減する取組が進められています。

2.校長裁量経費を措置するなど、学校予算における学校の裁量を拡大

 従来細かな費目ごとに配当していた学校予算の仕組みを見直し、一定総額の中での学校独自の予算編成を可能とする仕組みや、各学校独自の提案に対して予算措置を可能とする仕組みの導入が進められています。
 また、平成18年度の「教員勤務実態調査」によると、教員の残業時間が以前の調査時よりも増加しており、授業の準備に十分な時間が取れていないという状況にあります。さらに、2014(平成26)年に公表された「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)」では、日本の中学校における教員の1週間当たりの勤務時間は約54時間と参加国中最長(参加国平均は約38時間)であり、授業以外の諸活動に従事する時間が参加国平均よりも長いということが明らかとなりました。こうした状況に対応して、質の高い教育を行うために、教員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保することが重要です。このためには、校長のリーダーシップの下、教職員の役割分担の明確化などを通じて業務を効率化するなど、組織的・機動的な学校運営を実践していくことが一層重要です(※45)。
 文部科学省としても、学校マネジメント力の強化に関する調査研究や、「学校マネジメントフォーラム」の実施等を通じて好事例の普及を図っています。

図表2‐4 -36 各教育委員会における学校の裁量拡大の取組状況


  • ※45 OECD国際教員指導環境調査(TALIS)については第2部 第1章 第2節3参照
  • ※46 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/chihou/1357599.htm

第16節 少子化に対応した活力ある学校づくり

 学校教育においては、児童生徒が集団の中で、多様な考えに触れ、認め合い、協力し合い、切磋(さ)琢(たく)磨することを通じて一人一人の資質や能力を伸ばしていくことが重要であり、小・中学校では一定の集団規模が確保されていることが望まれます。このため文部科学省では、法令により、公立小・中学校の適正規模や適正配置について、標準等を設定してきました(学校規模:12~18学級、通学距離:小学校4km、中学校6km)。
 少子化の流れを受けて、この10年で既に小・中学校の1割にあたる3,000校超が統合されてきていますが、標準規模に満たない学校が約半数存在している現状があり、今後、少子化の更なる進展により、学校の小規模化に伴う教育的デメリットの顕在化が懸念されています。一方、統合が困難な地理的特性や地域コミュニティの核としての学校の重要性への配慮も求められています。

1 学校規模適正化・適正配置等に係る検討経緯

 このような状況の中、政府全体として策定した「経済財政運営と改革の基本方針2014」(平成26年6月24日閣議決定)及び教育再生実行会議第五次提言「今後の学制等の在り方について」に学校規模適正化に関する指針の策定が盛り込まれたことを受け、文部科学省として正式に検討を開始しました。
 平成26年9月以降、「学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査」を実施した上、10月から12月にかけて、有識者の協力を得た検討会議や地方自治体・学校現場等からのヒアリングを行いました。
 また、同年12月「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26年12月27日閣議決定)において、学校の小規模化に伴う課題への対応について、地域コミュニティの核としての学校の役割を重視する等の観点から、学校統合を検討する場合や小規模校の存続を選択する場合、休校した学校を児童生徒の増加に伴い再開する場合など様々なケースに対応し活力ある学校づくりを目指した市町村の主体的な検討や具体的な取組をきめ細かに支援することとされました。

2 公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引

 このような検討の結果、文部科学省は平成27年1月に「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(以下、「手引」という。)を策定し、全国の自治体に通知しました(平成27年1月27日付け27文科総1112号文部科学事務次官通知)。手引においては、

  • 学校統合により魅力ある学校づくりを行う際の留意事項に加え、
  • 学校を存続させる場合に小規模校のメリットを活(い)かし、デメリットを緩和するための方策、
  • 休校した学校を再開させるための取組

 等についてきめ細かく盛り込んでいます。
 文部科学省としては、各市町村がこの手引を積極的に活用し、少子化に伴う学校の小規模化という課題に正面から向き合い、地域コミュニティの核となる魅力ある学校づくりを主体的に検討していくよう促していくこととしています。

第17節 幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)
【成果指標】
〈主として初等中等教育関係〉

  • 経済的な理由による高校中退者の数の減少
  • 家庭の経済状況や教育環境の違いが学力に与える影響の改善

〈主として高等教育・生涯学習関係〉

  • 進学機会の確保や修学の格差の状況改善(被災した世帯の学生等も含め、家庭の経済状況によらない高等教育への進学機会の確保)
    • 大学等奨学金の貸与基準を満たす希望者のうち、奨学金の貸与を受けることができた者の割合の増加
    • 低所得世帯の学生等のうち授業料減免を受けている者の割合
  • 経済的な理由による高校中退者の数の減少

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 義務教育の無償制、教科書の無償配布に加えて、就学援助を通じ、経済的困難を抱える家庭に対する支援を継続的に実施(国は要保護児童生徒への支援の2分の1を補助)。
  • 就学援助について、要保護児童生徒数は微増であるが、近年増加傾向にある。準要保護児童生徒数は減少しているが、主な要因は児童生徒数全体の減少であり、援助率は引き続き増加している。
  • 各市町村が実情に応じて実施している就学援助制度については、「子供の貧困対策に関する大綱」が策定されたことを踏まえ、就学援助の実施状況等を定期的に調査し、公表するなど、就学援助の適切な運用等の取組を促し、各市町村における就学援助の活用・充実を図ることが必要。
  • 生活扶助基準について、その適正化の観点から、平成25年8月1日から3年程度かけて段階的に新たな基準に見直しを行うこととしており、これに伴い、他制度に影響が生じる可能性が指摘されていることから、政府ではできる限り影響が及ばないようにするため、25年2月5日に全閣僚で対応方針を確認している。就学援助については、25年度当初に要保護者として就学支援を受けていた者については、引き続き要保護者として国庫補助の対象とすることとしている。地方単独事業である準要保護者への就学援助についても、国の取組を説明の上、その趣旨を理解した上で各自治体において判断いただくよう依頼している。
  • 平成26年度から開始した新たな高等学校等就学支援金制度や高校生等奨学給付金制度等が着実に実施されるよう努めるとともに、引き続き高等学校段階の教育費負担の軽減を図る。

1 小学校就学前段階における経済的支援

 文部科学省では、幼稚園の入園料や保育料に関する経済的負担を軽減する就園奨励事業を実施している地方公共団体に対して、幼稚園就園奨励費補助金によって所要経費の一部を補助しています(※47)。


  • ※47 参照:第2部 第4章 第13節

2 義務教育に係る教育費負担軽減

 義務教育段階では、国公立学校の授業料や教科書が無償となっていますが、これら以外にも学校生活を送るためには多くの費用が必要です。例えば、「平成24年度子供の学習費調査」によると、学用品費・遠足費・修学旅行費などの学校教育費や給食費などは、それぞれ公立小学校で年間約10万円と、公立中学校で年間約17万円となっています。
 このような費用を負担することが困難な児童生徒の保護者を経済的に支援するために、市町村が行う就学援助制度があります。
 就学援助制度とは、「学校教育法」の実施義務に基づき、各市町村が、経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、学用品の給与などの援助を行う制度です。就学援助制度の対象者は、生活保護法に規定する要保護者と、これに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者となっています。
 就学援助を受けている児童生徒の割合は増加しており、就学援助制度の重要性はますます高まっています。なお、就学援助制度は市町村において実施されるものですが、要保護者に対する就学援助にかかる所要の経費については、国が補助を行っています。また、要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者の就学援助に関する所要の経費については、地方財政措置が講じられています。
 生活扶助基準の見直しに伴う影響については、平成26年4月に各地方公共団体に調査を実施した結果、影響が生じていない地方公共団体が96%、生活扶助基準の見直しに伴う影響への対応を直接的には行っていないが、経済的に困窮している児童生徒に対する取組などの対応を実施している地方公共団体が4%となっています。これらの地方公共団体名も含めて調査結果を6月に公表し、引き続き、各地方公共団体において適切に判断するよう依頼しています。

3 高等学校段階に係る教育費負担軽減

 高等学校等に通う生徒に対する経済的支援として、授業料に充てるための高等学校等就学支援金制度や授業料以外の教育費に充てる高校生等奨学給付金等があります(※48)。
 高等学校等就学支援金については、年収約910万円(※49)(市町村民税所得割額が30万4,200円)未満の世帯の生徒に公立高校の授業料相当の年額11万8,800円を支給します。私立高校に通う生徒の場合は所得に応じて最大2.5倍(年額29万7,000円)まで加算支給します。
 また、返済不要の奨学金である高校生等奨学給付金制度については、低所得世帯の生徒を対象とし、授業料以外の教育費に充てるために、世帯の所得状況や子供の数に応じて約3万円から14万円までを給付しています。
 さらに、日本学生支援機構が実施してきた高等学校等の生徒に対する奨学金事業については、平成17年度の入学者から順次、都道府県に移管されています。各都道府県において必要な資金を円滑に確保できるよう、国は奨学金の原資として、一定期間、高等学校等奨学金事業交付金を交付することとしており、26年度予算においては約81億円を措置しています。加えて、高校生修学支援基金により、奨学金事業を実施する都道府県に対して緊急支援を行っており、24年度から26年度までは、当該基金を利用する都道府県において、所得連動返済型の奨学金制度(貸与者本人が一定の収入を得るまでの間、奨学金の返済を猶予)が整備されるよう制度改正を行っています。


  • ※48 参照:第1部 特集3 第4節2
  • ※49 市町村民税所得割額は、両親の合算。また、年収は両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上19歳未満)、中学生1人の4人世帯の場合の目安

4 障害のある児童生徒などに対する就学支援

 文部科学省では、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級等に就学する障害のある児童生徒などの保護者の経済的負担を軽減する観点から、特別支援教育就学奨励制度を実施している地方公共団体に対して所要経費の一部を補助しています(※50)。


  • ※50 参照:第2部 第4章 第13節

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成27年09月 --