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第2章 東日本大震災からの復旧・復興の進展

総論

 平成23年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。この地震に続いて太平洋岸を中心に広範囲で津波が発生し、特に東北地方及び関東地方の太平洋岸では巨大津波によって甚大な被害を受けました。さらに、東京電力福島第一原子力発電所において事故が起こり、放射性物質が放出するという事態が発生しました。
 文部科学省では、被災地や被災者に寄り添いながら、一日も早い復旧・復興を目指して、学校施設の復旧や就学支援、児童生徒の心のケア、復興を支える人材の育成や大学・研究所等を活用した地域の再生、原子力損害賠償の円滑化などに取り組んでいます。

第1節 創造的復興を実現する人材の育成

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標8(互助・共助による活力あるコミュニティの形成)
【成果指標】
<初等中等教育・生涯学習関係>

  • 全ての学校区において、学校支援地域本部など学校と地域が組織的に連携・協働する体制を構築

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 東日本大震災からの復興のために、学びを通して原発事故等で被害を受けた各地域の諸問題の解決に取り組む未来志向の教育が行われている。

 東日本大震災からの復興のためには、教育・学びを通して、復興や持続可能な地域づくりに貢献する人材を育成することが鍵となります。こうした認識の下、東北各地では、東日本大震災を機に従来の目的や手法にとらわれることなく未来志向の教育の実践が進められています。

1 復興教育支援事業

 文部科学省では、東北発の未来型教育モデルづくりを進めるため、復興教育支援事業に取り組んでいます。震災の教訓を踏まえ、被災地の復興とともに、我が国全体が希望を持ち未来に向かって前進できるよう、被災地の復興を支え、先進的な教育活動を展開する団体の取組を支援するとともに、その成果を全国に普及することによって、被災地以外も含めた我が国全体の新しい教育の在り方の参考にすることとしています。

2 OECD東北スクール

 東北の被災地では、震災を契機とした復旧だけでなく、震災前から地域にあった課題をも乗り越え、持続可能な地域社会を創出できる人材の育成を目的とする創造的復興教育の取組が進められています。
 「OECD東北スクール」はこうした取組の一つとして、福島大学がOECD(経済協力開発機構)の知見を活用して東北の復興を支援するため、文部科学省や被災地の地方公共団体、学校等と連携して実施した教育プログラムです。
 平成26年8月30日と31日にパリのシャン・ド・マルス公園において、東北の復興と魅力をアピールするイベント「東北復幸祭<環WA>in PARIS」を開催しました。岩手、福島、宮城の被災3県の中学生・高校生たちが自らイベント内容を企画し、パリの会場では津波の高さを表現した巨大風船を上げたり、生徒達の過去・現在・未来への思いをつづった「100の物語」と題するパネルを展示したり、ステージ上で被災体験を語ったりするなど、それぞれの被災体験を発信しました。これらの資金集めや広報等も生徒自身で行うなど、多くの人々と協力しながら活動することを通して、国際的な視野や新しい東北を作り上げる復興の担い手となるための力を身に付けました。

OECD東北スクール生徒集合写真
 OECD東北スクール生徒集合写真

写真 南三陸の伝統芸能「行山流水戸辺鹿子躍」のステージ
 南三陸の伝統芸能「行山流水戸辺鹿子躍」のステージ

3 福島県双葉郡教育復興ビジョン

 東京電力福島第一原子力発電所における原子力事故によって避難を余儀なくされた福島県双葉郡8町村(葛尾村、浪江町、双葉町、大熊町、川内村、富岡町、楢葉町、広野町)は、住民の離散による子供たちの減少や、避難先の仮設校舎での学習など、様々な困難を抱えながら教育活動を行っています。
 双葉郡8町村では、長期的な復興に向けて今こそ10年先、20年先を見据えて双葉郡の教育を立て直し、これまでの価値観にとらわれない思い切った取組を進めていくことが必要であると考え、平成25年7月31日に「双葉郡教育復興ビジョン」を取りまとめました。
 平成27年度には広野町に福島県立ふたば未来学園高等学校を開設し、地域と連携した課題解決型学習や外部人材を活用した取組を通じて、人材育成と地域復興との相乗効果の創出等を図っています。
 文部科学省としても、創造的復興教育を推進する観点からこれらの取組を技術的・財政的に支援しています。

4 創造的復興教育の更なる推進に向けて

 第2期教育振興基本計画では、東北各地の実践について「今後の我が国の教育の在り方に大きな示唆を与えるものであり、こうした東北発の未来型教育モデルづくりを被災地だけでなく我が国全体で発展させていけるよう支援を行う」と位置付けられています。
 東北各地で行われている未来志向の教育の実践には、次のような特徴が見られます。

  1. 地域の課題を踏まえ、困難な状況を乗り越え持続可能な地域づくりに貢献する人材の育成を目指している。
     地域全体の現実や課題を直視し、困難を乗り越えて地域の復興に取り組み、「持続可能な地域づくり」に貢献できるような人材育成を構想した事例が数多くあります。たとえ困難な状況に置かれても、状況を的確に捉えて自ら学び、考える資質・能力、人と支え合いながら、主体的に行動して困難を乗り越えていく資質・能力のように、学習指導要領の理念である「生きる力」を更に推し進めた「生き抜く力」の育成を目指しています。
  2. 学校外も含めた様々な機会での活動を通した実践的な学び等、能動的・創造的な学びを重視している。
     持続可能な地域づくりに貢献できる人材を育成するためのカリキュラム・指導方法が試行錯誤されています。そこでは、教室で一方的に知識を学ぶだけではなく、学校外も含め、実践的な活動を通して学ぶことを重視しています。「教授中心」から「学習者中心」へ、「受動的で静的な教育」から「能動的で創造的な学習」への転換をもたらそうとしています。
  3. 地域・NPO法人・大学等の多様な主体と協働し、充実した教育環境の構築を図っている。
     2.を実現するために、子供たちが主体的に学べる環境整備が不可欠です。既に、地域・NPO法人・大学等といった学外の多様な組織との協働が実現しています。イベント的な単発のゲストレクチャーではなく、それぞれの主体が学校教育と目的を共有し、パートナーとして協働しています。
  4. 地域復興の歩みそのものが学びの対象となり、相乗効果で地域の復興をも後押しする取組である。
     創造的復興教育では、地域社会そのものが教材です。子供たちは地域復興の歩みを学びの対象としてフィールドワーク(野外研究、実地調査)を繰り返し、自らの学びを深めています。こうした試みは、子供たちが学ぶだけでなく、地域復興そのものを後押しするという相乗効果を生んでいます。その副産物として、子供たちと地域の人々が共に学ぶ「学びのコミュニティ」が出現しています。
     文部科学省では、こうした実践を「創造的復興教育」として促進するとともに、被災地だけでなく全国に共有するための情報発信等を実施しています。

第2節 絆(きずな)づくりと活力あるコミュニティ形成

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標8(互助・共助による活力あるコミュニティの形成)
【成果指標】
<高等教育・生涯学習関係>

  • 震災ボランティアを含めた地域における学生ボランティアに対する大学等の支援状況の向上

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 地域の復旧・コミュニティの再生を支える様々なボランティアの組織的実施や医療・教育文化・産業再生・まちづくりなど地域の暮らしや産業などを支えるため、被災地の大学等が持つ高度な知的資源を集約した地域の復興を推進する拠点の整備を支援(25 年度実績:14件)

1 学びの場を通じたコミュニティ再生

 被災地の自律的な復興に向けて、住民一人一人が主体的に参画することのできる地域コミュニティ再生のための学びの場づくり、コミュニケーションの場づくりを推進することが重要です。文部科学省では、「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」を実施しています。学校や社会教育施設等を活用しつつ、学習活動のコーディネートなどを行う人材によって、子供たちの学習活動や地域住民の学習・交流の推進や絆(きずな)づくりを支援しています。

Column No.07 「宮城県協働教育プラットフォーム事業」~家庭・地域と学校が協働して子供を育てる環境づくりのために~

 宮城県においては、平成17年度に知事を議長とする「みやぎらしい協働教育推進会議」を設置し、家庭・地域・学校の連携のもと、地域全体で子供を育てる環境づくりを進めてきました。23年3月の東日本大震災以降、それまでの協働教育の取組の成果を引き継ぎ、23年度から国の委託事業「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」を活用して、新たな枠組みで「協働教育推進総合事業」に取り組んでいます。

図 「宮城県協働教育プラットフォーム事業」~家庭・地域と学校が協働して子供を育てる環境づくりのために~
 本県では、震災により、家庭、地域、学校がともに大きな被害を受け、子供を育てる環境が大きく損なわれていることから、家庭・地域・学校が相互に連携し支え合いながら強い絆(きずな)で協働し、子供を育てる仕組みづくりを積極的に推進して、家庭・地域の教育力の再構築に努めています。
 「協働教育推進総合事業」の「協働教育プラットフォーム事業」は、従来からの「学校教育支援」に、「家庭教育支援」と「地域活動支援」を加えた三つの柱の下、学校、家庭、地域の協働によって各種の事業を実施しようとするもので、子供を育てる協働の仕組みづくり(地域に推進組織を立ち上げ、人と地域資源などをつなぐコーディネーターを配置する)を進め、地域全体の教育力の向上と活性化を図ることを目的とする事業です。平成24年度・25年度は県内34市町村中28市町村、26年度は31市町村で実施され、家庭・地域・学校の調整(コーディネート)を行う仕組みづくりや、家庭・地域・学校等が協働して子供たちを育み、家庭・地域の教育力の向上と学校教育の更なる充実を図る取組が展開されています。
 本県の沿岸部の市町では、未だに多くの児童生徒が仮設住宅での生活を余儀なくされている状況となっています。震災を契機に、人と人とを結び、子供の豊かな学習機会と地域住民に新たな学習活動を生み出す協働教育の必要性がこれまで以上に高まっています。

写真 家庭教育支援 絵本(大型)の読み聞かせ
 家庭教育支援 絵本(大型)の読み聞かせ

写真 地域活動支援 遊び場づくり活動(NPO法人による支援)
 地域活動支援 遊び場づくり活動(NPO法人による支援)

写真 学校教育支援 総合的な学習の時間
 学校教育支援 総合的な学習の時間

(執筆:宮城県教育委員会)

2 大学や研究所等を活用した地域の再生

(1)復興に向けた教育研究活動の推進

 東日本大震災を経て、我が国の復興・再生に向けての貢献は、知の拠点である高等教育機関の重要な使命となりました。発災直後における災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)等の派遣、宿泊施設への避難者の受入れだけでなく、中長期にわたる復旧・復興においても、高等教育機関の果たすべき役割の重要性は増しています。被災地域において、大学における地域復興のセンター的機能の整備や復旧・復興を担う専門人材の育成支援等を行うとともに、被災地以外の高等教育機関による学生ボランティアの派遣や復興支援に資する研究の支援等を通じて被災地の復興支援を行っています。

(2)東北地方における医学部新設の特例

 震災からの復興、今後の超高齢化と東北地方における医師不足、原子力事故からの再生といった要請を踏まえ、特例として東北地方で一校に限り、医学部新設を可能とすることとし、有識者会議において専門的・客観的な審査を行った上で、平成26年9月に条件付きで東北薬科大学を選定しました。東北薬科大学では、選定条件を踏まえ、東北各県・各大学等を構成員とする運営協議会を設置して議論を重ねるなどの取組を進め、選定条件について一定の取組がなされたものと有識者会議において判断されたことを受け、27年3月に設置認可申請が行われました。文部科学省としては、27年4月に大学設置・学校法人審議会に設置に関する諮問を行うとともに、東北薬科大学に対して必要な指導・助言を行っています。

(3)大学における地域復興のセンター的機能の整備

 文部科学省では、地域の復旧・コミュニティの再生を支える様々なボランティアの組織的実施や医療・教育文化・産業再生・まちづくりなど、地域の暮らしや産業などを支えるため、被災地の大学等が持つ高度な知的資源を集約した地域の復興を推進する拠点の整備を支援しています(平成26年度実績:14件)。例えば、被災地にサテライトを設置し地域の産業を再生する取組、被災した児童生徒に対する学習支援活動の展開、被災地の医療機関への医師派遣などを実施しています。これらの取組によって、各地域の復興センターにおいて、被災地のニーズに真に応えた復興に貢献しています。

(4)東北マリンサイエンス拠点の形成

 東北地方太平洋沖地震とこれに伴い発生した津波により、世界有数の漁場である東北沖の海洋生態系が激変し、沿岸域の水産業が甚大な被害を受けました。このことから、被災地の水産業の復興支援を目的として、岩手県大槌町、宮城県女川町の海洋研究拠点を中心に、関係自治体・漁協等と連携・協力し、震災により激変した東北沖の海洋生態系を明らかにするとともに、東北の水産資源を活用した新たな産業創成に資する技術開発を進めるなどの調査研究を実施しています(図表2-2-1)。平成26年度は、これまで明らかになってきた被災地の海洋生態系の変化について漁業者や地元小中学生等へ情報提供したほか、第3回国連防災世界会議(27年3月、仙台市)パブリック・フォーラムにおいてこれまでの成果を発表するとともに、より良い復興を実現するための科学の在り方について検討しました。また、これまでに開発した技術を実用化するための取組を推進し、ギンザケの出荷期間を延長するための新たな養殖生簀(いけす)の実証試験や、高度冷凍技術を用いた食品開発等を行いました。

図表2‐2‐1 東北マリンサイエンス拠点の概要

(5)東北メディカル・メガバンク計画

 東日本大震災で医療機関などが大きな被害を受けた東北地方は、被災者の命と健康が守られ、安心して暮らすことができる医療体制・健康管理の仕組みづくりが必要となっています。
 文部科学省は、厚生労働省、総務省等との協力の下で、東北大学及び岩手医科大学を実施機関として、東北メディカル・メガバンク計画を推進しています。本計画では、被災地域を対象とした健康調査を実施し、被災地域の方々の健康不安解消に貢献するとともに、収集した健康情報や生体試料を蓄積してバイオバンク(※1)を構築します。さらに、このバイオバンクを活用して、病気の正確な診断や予防法の確立など、個人のゲノム情報等に応じた次世代医療の創成のための研究開発を行います。
 平成25年度以降、本格的に健康調査を開始しており、多くの方々の協力を得ながら、大規模なゲノムコホート研究(※2)を推進しているほか、収集された生体試料を用いた解析を実施しています。26年度には日本人の標準的なゲノム配列と頻度5%以上の変異情報を公開するなど、次世代医療研究の基盤となる成果を創出しています。
 今後も、地元の地方公共団体や関係機関などとの緊密な連携の下、健康調査での医師の活動や調査の結果の回付などを通じて、被災地住民の方々の健康不安解消に貢献するとともに、東北地方で個別化予防等の基盤となるバイオバンクを形成し、最先端の解析研究を推進することで東北発の新しい医療をつくり、被災地の創造的な復興に貢献していきます。


  • ※1 バイオバンク:協力者から収集した生体試料や健康情報、臨床情報等を管理する「倉庫」のこと。
  • ※2 ゲノムコホート研究:同意を得た住民から、生体試料、健康情報、診療情報等を収集し、生体試料から得られるゲノム情報等と併せて解析することで、疾患や薬物動態等に関連する遺伝子要因、環境要因等を同定する研究。

(6)産学官連携による東北発科学技術イノベーション創出プロジェクト

 文部科学省では、平成24年度から「産学官連携による東北発科学技術イノベーション創出プロジェクト」を実施しています。同プロジェクトでは、26年度も引き続き、被災地自治体主導の地域の強みを生かした科学技術駆動型の地域発展モデルに対する支援(26年度:4件)を行うとともに、目利き人材を活用して被災地域の産業界が抱える課題解決に資する全国の大学等の革新的技術シーズとのマッチング支援を実施することで、大学等の革新的技術シーズを被災地企業において実用化し、被災地復興に貢献しています。

3 地域の文化芸術・スポーツ活動の振興を通じた復興の推進

 文部科学省では「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」でスポーツ・レクリエーション活動の支援を行い、地域コミュニティを再生するとともに、住民一人一人の心身の健康の確保に取り組んでいます。
 この事業は、被災3県(岩手、宮城、福島)の各地域において住民のスポーツ活動の担い手として各種スポーツ事業を実施してきた総合型地域スポーツクラブなどにクラブマネジャー、市町村体育協会やレクリエーションスポーツの指導者、そのほかスポーツに関わりを持つ住民を「地域スポーツコーディネーター」として配置し、地域の住民に対するスポーツ活動を企画・立案し、外部講師や地域ボランティア等の参画を得て、スポーツ・レクリエーション教室などのプログラムを定期的に実施するものです。

福島県郡山市で実施したスポーツ・レクリエーション教室

親子体操教室

  • 日時 平成27年1月19日(月曜日)10時~12時
  • 場所 桑野地域公民館
  • 内容 親子での3B体操と忍者ランドを実施。外遊びが制限され、運動不足になりがちな幼児の体力向上を図るとともに、母親への運動の場と地域における交流の場の提供を目的としています。

写真 親子体操教室1 写真 親子体操教室2

写真 親子体操教室3 写真 親子体操教室4

 また、行政機関・芸術家・芸術団体・文化施設・助成財団・企業・芸術系大学・文化ボランティアなど様々な立場の団体や個人が連携協力する「文化芸術による復興推進コンソーシアム」が平成24年5月に創設されました。このコンソーシアムでは、文化芸術による復興推進に関し、人的・組織的ネットワークの形成や情報収集・調査研究などを実施しています。

第3節 学びのセーフティーネット

第2期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)
【成果指標】
<主として初等中等教育関係>

  • 家庭の経済状況や教育環境の違いが学力に与える影響の改善

<主として高等教育・生涯学習関係>

  • 進学機会の確保や就学の格差の状況改善(被災した世帯の学生等も含め、家庭の経済状況によらない高等教育への進学機会の確保)

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 経済的理由から就学等が困難となった世帯の幼児児童生徒の就学援助等のため、「被災児童生徒等就学支援等臨時特例交付金」により平成24年度に約5 万8,000人を支援
  • 日本学生支援機構の無利子奨学金により、平成26年度に約1万人の学生を支援

1 文教施設等の復旧

 東日本大震災(最大震度7)での文部科学省関係(幼児・児童・生徒・学生・教職員など)の人的被害は死者659名、行方不明者79名、負傷者262名となっています(図表2-2-2)。また、学校施設や社会教育施設、文化財などの物的被害は全国で1万2,000件以上発生しました(図表2-2-3)。

写真 津波による被害を受けた校舎
 津波による被害を受けた校舎

写真 津波による被害を受けた校舎移転に伴う用地取得・造成、校舎等の新築
 移転に伴う用地取得・造成、校舎等の新築

図表2‐2‐2 東日本大震災における文部科学省関係の人的被害(平成24年9月14日現在)

図表2‐2‐3 東日本大震災における文部科学省関係の物的被害(平成24年9月14日現在)
 また、東京電力福島第一原子力発電所における原子力事故により、福島県の公立学校のうち、浪江町の6の小・中学校が休校となっているほか、他校・他施設を使用して授業を行っている学校が28校、仮設校舎を使用している学校が31校存在しています(平成27年2月時点)。
 文部科学省では、東日本大震災によって被害を受けた文教施設等が早期に復旧し、できる限り速やかに教育活動等が再開することができるよう、必要な予算を確保するよう努めています。
 平成26年度中に、災害復旧事業を活用する国立学校(25法人)、公立学校(2,307校)、私立学校(789校)については約9割が、社会教育施設・スポーツ施設・文化施設については1,236施設のうち約9割が、文化財等については修復に当たって国庫補助を必要とする被災文化財等の92件のうち約9割が、それぞれ復旧を完了しています。
 また、被災地における埋蔵文化財については、埋蔵文化財の専門職員の被災地派遣(平成26年度:83名)等により、発掘調査期間が短縮されるなど、復興事業の工期への影響の回避につながっています。

2 就学のための経済的支援

(1)就学のための経済的支援等

 東日本大震災によって経済的理由から就学等が困難となった幼児児童生徒の就学支援等を実施するため、文部科学省では、「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金」(平成23年度から26年度までの4年間で約444億円、全額国庫負担)による基金事業として、各都道府県等において、幼稚園に通う幼児の保育料や入園料を軽減する就園奨励事業や、小・中学生に対して学用品費や通学費(市町村が実施するスクールバスの運行委託費等)、学校給食費などを補助する就学援助事業、高校生に対する奨学金事業、特別支援学校等に通う幼児児童生徒の就学に必要な経費を補助する就学奨励事業、私立学校及び専修学校・各種学校に対する授業料等減免措置事業を実施してきました。この基金事業は、26年度で終期を迎えることになりましたが、27年度からは、被災した幼児児童生徒が安心して学ぶことができる環境を引き続き確保するため、新たに全額国庫補助の単年度の交付金事業として「被災児童生徒就学支援等事業」(約80億円)を実施することとしています。

(2)学生等に対する支援

 全国の多くの大学で、授業料減免、奨学金、宿舎支援などが実施されています。日本学生支援機構では、東日本大震災により被災した世帯の学生等が経済的理由により進学等を断念することがないよう、家計基準を満たす学生等へは全員無利子奨学金を貸与しており、平成24年度から家計の厳しい学生等を対象に、奨学金の貸与を受けた本人が、卒業後に一定の収入を得るまでの間、返還期限を猶予する「所得連動型無利子奨学金制度」を適用しています。26年度は、高等教育段階において授業料等減免措置(42億円、1万8,000人)や無利子奨学金(68億円、約1万人)の拡充を図りました。

3 学習支援・心のケア・スクールカウンセラー

(1)スクールカウンセラーの派遣等

 文部科学省では、被災した子供たちの心のケア等への対応のため、被災地域や被災した幼児児童生徒等を受け入れた地域の学校などに必要なスクールカウンセラー等を派遣しています。平成26年度計画においては、被災地の要望を踏まえ、岩手県、宮城県、福島県に908名(うち県外から191名)のスクールカウンセラー等を派遣しています。
 なお、被災地での新たな課題に対応するため、高校生に対する進路指導・就職支援を行う進路指導員や特別支援学校における外部専門家、生徒指導体制を強化するための生徒指導に関する知識・経験豊富なアドバイザーなどの専門家を活用できるようにもしています。

(2)公立学校における教職員体制の整備

 東日本大震災により被害を受けた地域に所在する学校及び震災後に被災した児童生徒を受け入れた学校においては、被災児童生徒に対する学習支援を行うこと、心のケアのための特別な指導を行うことなどが課題になっています。平成27年度予算において、被災した児童生徒の学習支援等のため、1,000名(前年同)の教職員定数の加配措置を計上しています。文部科学省では、各県からの要望を踏まえ、義務教育諸学校分として、岩手県(213人)、宮城県(233人)、福島県(501人)、山形県(5人)、茨城県(24人)、新潟県(10人)の6県に対し合計986人、高等学校分として、岩手県(34人)、宮城県(27人)、福島県(24人)の3県に対し合計85人、総計1,071人を追加して加配措置を実施しています。

(3)アスリートや芸術家によるスポーツ・芸術活動

 文部科学省では、国が行う復興事業の状況、被災地やスポーツ界などの要望を踏まえ、被災地にアスリートを派遣したり、被災地の総合型地域スポーツクラブの活動に対して、スポーツ振興くじ(toto)の助成を通して支援しています。
 また、子供たちが健やかに過ごし、安心できる環境の醸成を図るため、「文化芸術による子供の育成事業(派遣事業)」の一環として、被災地へ芸術家などを派遣しています。平成26年度は、音楽・演劇・落語・伝統芸能・美術などの文化芸術活動を行う芸術家などを598の小学校・中学校などに派遣し、講話・実技披露・実技指導を実施しました。

(4)国立青少年教育施設を活用したリフレッシュキャンプの実施

 国立青少年教育振興機構では、平成23年夏以降、被災地の子供たちなどを対象に、子供たちの心身の健全育成及びリフレッシュを図るため、外遊び、スポーツ及び自然体験活動などができる機会として、国立青少年教育施設を活用したリフレッシュキャンプを実施しており、複数の民間企業からの協賛金などを得て開催されています。
 本事業は、平成23年7月から27年3月までに、国立青少年教育施設で250回実施され、延べ2万4,959人が参加しました。今後も被災地の子供たちの心身の健全育成及びリフレッシュを図るための取組を実施する予定です。

4 学校給食の安全安心

 食品中の放射性物質は、厚生労働省の定める基準値に基づき、主に出荷前の段階でのモニタリング検査が行われています。文部科学省では、より一層の安心を確保する観点から、学校給食の放射性物質検査を支援しています。 平成26年度には、福島県など11県では一食全体の提供後の検査に要する経費を、福島県では食材の事前検査を行うための人件費や機器の校正に要する経費をそれぞれ計上しています。

第4節 震災後の社会を生き抜く力の養成

第2 期教育振興基本計画における関連成果指標
成果目標7(安全・安心な教育研究環境の確保)
【成果指標】
<主として初等中等教育関係>

  • 学校管理下における事件・事故災害で負傷する児童生徒等の減少・死亡する児童生徒等のゼロ化
  • 子供の安全対応能力の向上を図るための取組が実施されている学校の増加

計画策定後の主な取組と課題(ポイント)

  • 学校安全計画の中に児童生徒等に対する安全指導の内容を盛り込んでいる学校の割合
     →95.2%(学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査(平成24年度))

 【課題】

  • 防災教育を含む安全教育の充実に関する成果についての周知・徹底、安全教育を系統的に指導できる時間を確保するための検討、教職員の研修等の充実などが必要である。

1 防災教育の充実

 東日本大震災においては、児童生徒等及び教職員の死者・行方不明者が600人を超えるなど甚大な被害が発生しました。一方、日頃の防災教育の成果を生かして、児童生徒等が率先して避難した事例が見られるなど、防災教育の重要性が改めて認識されています(図表2-2-4)。文部科学省では、各学校が地震・津波等から児童生徒等を守るための防災マニュアルを作成する際の参考となるよう「学校防災マニュアル(地震・津波)作成の手引き」を作成するとともに、各学校に学校防災のための参考資料「『生きる力』を育む防災教育の展開」を配布しました。

図表2‐2‐4 防災教育の取組事例
 さらに、平成26年5月からは、中央教育審議会の下に設けられた学校安全部会において、防災教育をはじめとした安全教育の充実等の方策を含めた今後の学校安全の基本的な施策の在り方について専門的な審議を行い、11月に審議のまとめを公表しました。今後、次期の学習指導要領改訂に向けた、教育課程全体の議論等において検討されていくことになります。

2 学校での放射線等に関する教育

 学校教育において、児童生徒に対し、放射線等に関する科学的な知識や多様な意見を学び、それに基づき自ら考え、判断する力を身に付けさせる教育を進めていくことは重要です。現行の学習指導要領においては、社会科や理科等の教科の中で、エネルギー、放射線等に関する内容の充実を図っています。例えば、中学校学習指導要領理科においては「放射線の性質と利用」に関する内容が追加され指導が行われています。
 文部科学省では、学校における放射線等に関する教育の支援として、教職員向けのセミナーや児童生徒向けの出前授業を実施しています。また、全国の小・中・高等学校等に放射線に関する基礎知識や東京電力福島第一原子力発電所における原子力事故の被害状況や地域の復興再生に向けた取組等を掲載した放射線副読本を配布したところであり、文部科学省ウェブサイトで提供しています。(※3)また、平成27年3月には、放射線副読本を効果的に活用するとともに、放射線教育の指導の参考となるDVDを作成し、全国の小・中・高等学校等に配布しました。


  • ※3 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/detail/1344732.htm

3 復興を担う専門人材の育成支援

 東日本大震災によって被災した地域では、復興を担う即戦力となる専門人材の育成・確保が喫緊の課題となっています。文部科学省では、「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」を実施し、岩手県、宮城県、福島県の専修学校が中心となって、産学官連携による推進協議会を組織し、被災地のニーズに対応しつつ、新産業の創出や地元産業の復興に必要な職業能力の向上、社会人等を対象とした学び直しの機会を提供するなど、被災地のニーズを踏まえた専門人材の育成支援に努めています(図表2-2-5)。

(取組の例)

  1. 自動車組み込みなど、産業界の高度化に必要な知識・技術の向上を図る取組
  2. 再生可能エネルギー、放射線工学など、被災地においてニーズが高い分野を対象とした取組
  3. 介護など、現状の被災地においてニーズが高く、供給が不足する分野を対象とした取組
  4. 合同就職セミナーの開催、就職支援コーディネーターの配置など、被災地における就職支援体制の強化

図表2‐2‐5 東日本大震災からの復興人材育成支援事業の取組地域について

第5節 原子力発電所事故への対応

1 学校等における線量の低減等

 文部科学省では、東京電力福島第一原子力発電所において原子力事故が発生して以降、子供たちの安全・安心を確保するため、通知・事務連絡を発出して学校における対応方針を示すとともに、財政的支援や専門家の派遣などによって学校における除染を推進してきました。これらの取組によって、学校の校庭等の空間線量率については、避難地域以外の全校で毎時1マイクロシーベルト未満まで低下しています。引き続き、「放射性物質汚染対処特措法」に基づき、子供の生活環境(学校、公園等)を含めた地域全体における除染を進めています。

2 原子力災害を踏まえた研究開発・人材育成の取組

(1)除染技術の確立に向けた取組

 東京電力福島第一原子力発電所における原子力事故によって放射性物質で汚染された環境の回復に向けて、文部科学省では、除染に資する研究開発を実施しています。
 具体的には、日本原子力研究開発機構では、福島県など地方公共団体、国内外の大学・研究機関、民間企業などと連携・協力しながら除染の技術開発・評価・実証等を実施しています。吸着材や天然鉱物などを用いた土壌・河川・プール水の除染技術を開発するとともに、汚染土壌などの除染によって、空間線量率がどのように低減するかを評価できるソフトウェアを開発し一般に公表するなどの取組を行っています。

(2)廃止措置に関する研究開発・人材育成

 文部科学省では、東京電力福島第一原子力発電所の安全な廃止措置等を推進するため、平成26年6月に「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン」を公表しました。このプランに基づき、国内外の英知を結集し、安全かつ確実に廃止措置等を実施するための先端的技術研究開発と人材育成を加速するため、27年度に日本原子力研究開発機構に廃炉国際共同研究センターを立ち上げることとしています。廃炉国際共同研究センターでは、東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置等を円滑に進めるために必要となる基礎基盤研究や人材育成等を実施します。具体的には、原子炉内部からの燃料デブリ(※4)取り出し、放射性廃棄物の処理・処分等に必要な研究開発や産学官の連携による人材育成等を実施します。また、多様な分野の国内外の大学、研究機関、企業等が集結する国際共同研究拠点について、27年度中に福島における整備に着手する予定です。


  • ※4 燃料デブリ:溶融した原子炉燃料が、冷えて固まったもの

(3)原子力災害を踏まえた原子力基礎基盤研究・人材育成の取組の推進

 原子力の基盤と安全を支えるとともに、国際的な原子力安全等への貢献のためには、幅広い原子力人材を育成することが必要であることから、文部科学省では、国際原子力人材育成イニシアティブにおける原子力分野のシミュレーション技術(※5)を活用した教育システムの構築等の活動を通じて、原子力安全・危機管理に係る人材の育成を支援しています。さらに、原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブにより、東京電力福島第一原子力発電所における原子力事故を踏まえた原子力安全の一層の高度化や新たに顕在化した課題への対応に関連した基礎的・基盤的研究を実施しています。


  • ※5 シミュレーション技術:ある特定のシステムの挙動を、それとほぼ同じ法則に支配される他のシステムやコンピュータなどによって模擬する技術のこと。原子力分野では、この技術を活用して、通常運転時、設計基準事故時、異常な過渡変化時における挙動等を模擬・検証することにより、施設の安全性向上に取り組んでいる。

3 原子力損害賠償への対応

 東京電力福島第一原子力発電所及び第二原子力発電所の事故発生以降、多くの住民が、避難生活や生産及び営業を含めた事業活動の断念などを余儀なくされており、被害者が一日でも早く安心で安全な生活を取り戻せるよう、迅速・公平・適正な賠償が必要です。
 文部科学省では、「原子力損害の賠償に関する法律」に基づいて設置した原子力損害賠償紛争審査会において、賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示した指針を、地元の意見も踏まえつつ、順次策定してきました。また、平成23年8月に設置した原子力損害賠償紛争解決センターでは、業務運用の改善や体制整備を図りつつ、和解仲介手続を実施しています。
 さらに、政府として、東京電力の迅速かつ適切な損害賠償の実施や経営の合理化等に関する「新・総合特別事業計画」を平成26年1月に認定(26年8月及び27年4月に変更認定)し、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて、東京電力による円滑な賠償の支援を行っています。
 なお、原子力損害に関する国際的な賠償制度の構築に貢献することなどを目的として、我が国は、原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)を締結(27年4月に発効)し、必要な国内法が成立しました。

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生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成27年09月 --