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第1章 教育政策の総合的推進

総論

 平成18年に「教育基本法」が改正され、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化などの今日的な課題を踏まえ、教育の基本理念が示されました。この理念の実現に向けて、「教育基本法」の規定に基づいて、政府の教育に関する総合的な計画として策定されたものが「教育振興基本計画」です。20年に政府は初めての計画を策定し、その後、様々な社会情勢の変化や、東日本大震災の発生などを踏まえ、25年6月に第2期の教育振興基本計画を策定しました。
 文部科学省では、教育振興基本計画に基づいて、教育基本法の理念の実現に向けた様々な施策に取り組んでいます。
 また、国立教育政策研究所では、教育政策に関する総合的な国立の研究機関として、教育行政全般にわたって様々な調査研究や情報提供を行っています。

第1節 第2期教育振興基本計画に基づく教育施策の推進

1 第2期教育振興基本計画の概要

(1)我が国における今後の教育の全体像

 第2期教育振興基本計画では、社会の現状として、少子高齢化やグローバル化など、我が国を取り巻く諸情勢の急激な変化に伴い、社会全体の活力の低下や我が国の国際的な存在感の低下などが懸念される中、東日本大震災の発生によってこれらの問題が一層顕在化・加速化した正に危機的な状況にあると述べています。一方で、我が国が直面する危機を乗り越え、我が国の強みも活(い)かしつつ、持続可能で活力ある社会を構築していくための方向性として、「自立」「協働」「創造」の三つの理念の実現に向けた生涯学習社会の構築を目指すこととしています。
 このような社会の実現によって、個々人の自己実現、社会の「担い手」の増加、格差の改善、社会全体の生産性の向上、一人一人の絆(きずな)の確保が図られ、我が国が直面する危機が回避されるとしています。その上で、こうした社会の実現に向けた教育行政の方向性として、

  1. 社会を生き抜く力の養成
  2. 未来への飛躍を実現する人材の養成
  3. 学びのセーフティネットの構築
  4. 絆(きずな)づくりと活力あるコミュニティの形成

 といった生涯の各段階を貫く四つの基本的方向性を打ち出しています(図表2-1-1)。
 また、これらの方向性を実現するための裏付けとなる教育投資の在り方について、

  1. 協働型・双方向型学習など質の高い教育を可能とする環境の構築
  2. 家計における教育費負担の軽減
  3. 安全・安心な教育研究環境の構築(学校施設の耐震化など)

 といった点を中心に充実を図ることとしています。
 さらに、グローバル化が一層進行する中で、とりわけ天然資源の乏しい我が国においては人材こそが社会の活力増進のための最大の資源です。これらの三点の充実を図ることなどを通じて、様々な強みを伸長しつつ我が国の成長を支え、国際的に通用する人材を育成する必要性が一層高まっており、教育の再生は最優先の政策課題の一つであると結論付けています。
 このような状況を踏まえて、欧米主要国を上回る質の高い教育の実現に向けて、OECD諸国をはじめとする諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考としつつ、第2期教育振興基本計画の期間内においては、各成果目標の達成や基本施策の実施に必要な予算について財源を措置し、真に必要な教育投資を確保していくことが必要であるとしています。

図表2-1-1 第2期教育振興基本計画(総論)

(2)今後5年間に実施すべき教育上の方策

 第2期教育振興基本計画の第2部各論では、第1部総論で打ち出した四つの基本的方向性に、それぞれ8の成果目標とこれを測る成果指標、それらの実現に向けた30の具体的な施策を掲げて、「4のビジョン(基本的方向性)、8のミッション(成果目標)、30のアクション(基本施策)」として体系的に整理しています。
 なお、四つの基本的方向性のいずれにも関係すると考えられる方策は、「四つの基本的方向性を支える環境整備」として位置付け、東日本大震災からの復旧・復興支援も一つの柱として整理しています。

図表2-1-2 第2期教育振興基本計画(各論)

2 第2期教育振興基本計画の進捗状況

 第2期教育振興基本計画においては、施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項として、的確な情報の発信と国民の意見等の把握・反映、進捗状況の点検及び計画の見直しを示しています。文部科学省では、現在の状況を適切に把握し、今後の各時点における進捗状況の検証に活(い)かしていくことが大切であると考え、中央教育審議会に教育振興基本計画部会を設置し、第2期教育振興基本計画の進捗状況の客観的な点検を行っています。その際には、第2期教育振興基本計画で掲げられた成果目標・成果指標の達成度合いや、各基本施策の進捗状況についてデータに基づく客観的な検証を行うことによって課題等を認識し、新たな取組に反映させる検証改善サイクル(PDCAサイクル)を確立するよう取り組んでいます。
 文部科学省では、第2期教育振興基本計画を踏まえ、教育の持つ力と可能性を信じ、社会を構成する全ての国民一人一人と協働しつつ、教育改革に取り組んでいます。

第2節 教育施策の総合的推進のための調査研究

 国立教育政策研究所は、教育政策に関する総合的な国立の研究機関として、初等中等教育から高等教育、生涯学習、文教施設までの教育行政全般にわたって、将来の政策形成のための先行的調査や既存の施策の検証など、教育改革の裏付けとなる基礎的な調査研究を進めています。また、国際的な共同研究に我が国の代表として参画するほか、児童生徒の学力の全国的な実態把握、教育委員会や学校と連携した調査研究、教育課程や生徒指導・進路指導に関する国内の教育関係者への情報提供など、幅広い活動を展開しています。

1 政策課題に対応した調査研究

 平成26年度は、外部の研究者や行政担当者などが幅広く参画するプロジェクト研究として、例えば、児童生徒の学力等への学級規模の影響について検討する「少人数指導・少人数学級の効果に関する調査研究」、地域の意見や力を生かした学校運営を適切に支援する教育行政の在り方について調査研究を行う「『地域とともにある学校』の推進に向けた教育行政の在り方に関する調査研究」などの調査研究を行いました。

2 専門的事項に関する調査研究及び教育活動支援

 平成26年度は、児童生徒の学力の実態などを把握するための「全国学力・学習状況調査」(※1)において調査問題の作成や結果の分析、解説資料の作成を行うとともに、調査結果を踏まえて、授業の改善・充実を図る際の参考となるよう「授業アイディア例」を作成し配布しました。(※2)
 また、学習指導要領改訂に必要な資料を得るとともに各学校における教育課程編成及び指導方法等の改善充実を図るため、特に重要な課題について研究テーマを示し、指定校で実践的な研究を推進する研究指定校事業を行っています。
 さらに、いじめや不登校の問題、キャリア教育、社会教育や学校施設に関する調査研究を踏まえ、各種の指導資料や参考資料を作成し配布するほか、各種の研修事業等を実施しています。


  • ※1 参照:第2部 第4章 第1節1(2)
  • ※2 参照:http://www.nier.go.jp/jugyourei/index.htm

3 国際共同研究等

 国立教育政策研究所は、経済協力開発機構(OECD)が実施する「生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)」、「国際教員指導環境調査(TALIS:タリス)」のほか、国際教育到達度評価学会(IEA:International Association for the Evaluation of Educational Achievement)が実施する「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)」などの国際的な比較研究において日本代表機関として参画し、これらの問題の作成、調査の実施、結果の分析などを担当しています。
 平成26年度は「PISA 2012年問題解決能力調査」及びTALISの調査結果を公表しました。(※3)


  • ※3 参照:第2部 第4章 第1節1(2)

(1)OECD生徒の学習到達度調査(PISA)

 OECDでは、義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生)が、自らの知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するため、PISAを実施しています。調査は、2000(平成12)年から3年ごとに読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について行われています。2012(平成24)年調査では、従来の筆記型調査と併せて、国際オプションとしてコンピュータ使用型のデジタル数学的リテラシー、デジタル読解力、問題解決能力に関する調査も実施し、問題解決能力調査の結果のみ2014(平成26)年4月に公表しました。問題解決能力調査には、2012(平成24)年調査に参加した65か国・地域のうち、44か国・地域が参加しています。
 2012(平成24)年調査における問題解決能力とは、「解決の方法がすぐには分からない問題状況を理解し、問題解決のために、認知的プロセスに関わろうとする個人の能力であり、そこには建設的で思慮深い一市民として、個人の可能性を実現するために、自ら進んで問題状況に関わろうとする意志も含まれる」と定義されています。
 問題解決能力の調査は、2003(平成15)年調査では筆記型調査として実施されていますが、2012(平成24)年調査ではコンピュータ使用型調査として実施され、解答者自らコンピュータを操作して必要な情報を探し出さなければ解決へと至らない問題も含めることが可能となりました。
 問題解決能力の平均得点は、OECD加盟国の生徒の平均得点が500点になるよう換算しています。シンガポール(562点)、韓国(561点)、日本(552点)、マカオ(540点)、香港(540点)の順に高く、日本の得点は3番目に高くなっています(図表2-1-3)。
 また、習熟度レベル別では、レベル5以上の生徒の割合が最も多いのはシンガポールの29%であり、次いで韓国の28%と続き、日本は22%で3番目に高くなっていました。シンガポール、韓国、日本などは、上位の習熟度レベルに属している生徒の割合が多く、下位の習熟度レベルに属している生徒の割合が少ないことが分かりました。

図表2‐1‐3 習熟度レベル別の生徒の割合

(2)OECD国際教員指導環境調査(TALIS)

 OECDでは、学校の学習環境と教員の勤務環境について、国際比較が可能なデータを収集し、教育に関する分析や教育政策の検討に活用するため、2008(平成20)年からTALISを実施しています。日本は2013(平成25)年に行われた第2回調査から参加しており、2014(平成26)年に結果が公表されました。日本においては国立教育政策研究所が調査実施の責任機関となっています。
 調査には、34か国・地域が参加し、日本からは無作為に抽出された全国の中学校及び中等教育学校前期課程192校から校長及び教員約3,700人が参加しました。調査項目は、職能開発などの教員の環境、学校での指導の状況、教員への評価やフィードバック(非公式な意見や批評)、教員の自己効力感(自分の指導についてどの程度よくできていると感じているか)と仕事への満足度などで、調査対象者が質問紙調査に回答する方法で行われました。
 調査結果からは、日本の学校では、教員間の授業研究の実施割合や、校長やその他の教員から指導に関するフィードバックを受けている割合が他の参加国に比べて高いことが分かりました。日本の教員は研修に対するニーズは全体的に高くなっていますが、研修への参加の妨げとして「業務スケジュールと合わない」ことを挙げる教員が特に多くなっており、業務が多忙であるため研修への参加が困難な状況がうかがえます。指導の在り方に関しては、生徒にICTを頻繁に活用させている教員の割合が特に低く、また生徒の批判的思考を促すことなどについて自信を持つ教員の割合も低くなっています。教員の1週間当たりの勤務時間については、参加国中で最も長く、特に、課外活動(スポーツ・文化活動)の指導時間が長いことが分かりました(図表2-1-4)。

図表2‐1‐4 教員の1 週間当たりの仕事時間(TALIS 2013 調査結果)

4 研究活動等の成果の公開

 国立教育政策研究所の研究・事業活動に関する報告書などは、国立教育政策研究所のウェブサイトや図書館などで広く公開しています。また、シンポジウムの開催や全国の教育研究所で構成される全国教育研究所連盟の大会などを通じて、教育関係者に対して幅広く研究活動等の成果の普及に努めています。
 平成26年度は、各地の学校等において先進的な取組を行っているNPOの参加を得て、東京で、土曜日の教育活動等を通じて子供たちの成長を地域ぐるみで支援する社会の在り方をテーマとしたシンポジウムを開催しました。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成27年09月 --