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第9章 国際交流・協力の充実

第9章 総論

 ヒト・モノ・カネの流動性の高まりにより「国境」の意義が曖昧となり、各国の相互依存が複雑に深化するなど、国際社会及び我が国を取り巻く環境が大きく変化する中、我が国が国際社会において引き続き存在感を示し、更に高めていくためには、これまで培ってきた教育、科学技術、文化、スポーツなどの力を広く国際社会に発信していくことが重要です。このためには、国際社会で活躍できる人材の育成や、海外の優秀な学生や研究者の受入れによる双方向の人的交流の活性化は不可欠です。
 また、諸外国に対する協力や支援を一層充実させていくことも重要です。文部科学省では、途上国から評価されている日本の教育や科学分野での強みを相手国の要望に応じて提供するなど、ニーズを踏まえた教育分野での協力の在り方の検討を進めています。また、官民が一体となった国際協力に関する戦略の策定・実施や、産業界の更なる貢献と連携による相乗効果の発揮など、多様な関係者の協働によるオールジャパンによる国際協力の重要性が指摘されており、文部科学省としては、今まで以上に戦略的な国際協力の取組を進めていきます。
 なお、我が国の提案により始まった、「持続可能な開発のための教育(ESD)」について、文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、平成26年11月に、ユネスコと日本政府の共催により我が国で開催する「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」に向けて、ESDの普及促進と質の向上に資する様々な取組を実施しています。
 これらの取組を通じて、文部科学省においては、国際交流及び国際協力の一層の充実を進めているところです。

第1節 相互理解を深める国際交流

1 学生交流の推進

(1)留学生受入れの現状

 グローバル化が加速する国際社会の中で、我が国の大学の国際化の推進や、世界に雄飛する人材の育成等を図るため、平成20年7月に関係省庁(文部科学省、外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)で、留学生受入れ拡大のための方策をまとめた「留学生30万人計画」骨子を策定しました。これに基づき、留学の動機付けから大学等や社会での受入れ、就職など卒業・修了後の進路に至るまで体系的に関係省庁で連携して、外国人留学生の受入れを推進しています。一方、海外の大学等で学ぶ日本人学生の数は近年減少傾向にあります。諸外国から我が国への受入れのみならず、今後は学生等の送り出しに対しても、より積極的な措置を講ずる必要性があります。
 平成24年5月1日現在、我が国の大学などで学ぶ外国人留学生の数は、13万7,756人となっています(図表2-9-1~図表2-9-3)。東日本大震災以降、我が国と大学の正しい現状が諸外国に伝わっていないため、日本への留学に対する懸念が広がっており、これまでの増加傾向から減少へと転じています。そのため、震災後も日本で勉学を継続している留学生の生の声の発信や、日本への留学を検討している外国人学生に我が国と大学の現状について正しく理解してもらう「ジャパン・スタディ・プログラム」の実施等により、広く我が国の正しい現状を発信することで、留学生の呼び戻しを図っており、平成24年度には減少に一定の歯止めがかかっています。

図表2-9-1 留学生数の推移(各年5月1日)

図表2-9-2 出身国・地域別留学生数(2012年5月1日現在)

図表2-9-3 主要国における留学生受入れの状況

(2)留学生受入れ支援体制の充実

1.留学情報提供体制の整備

 日本学生支援機構は、海外において、日本の大学等の参加を得て、「日本留学フェア」や「日本留学セミナー」を実施し、現地の学生、進学指導担当者などに対して日本への留学に関する情報の提供や、東日本大震災以降の日本における安全情報の発信を行っています。平成24年度は、中国、韓国等13か国・地域、21都市で開催しました。また、22年から関係機関との連携により日本留学希望者向けのポータルサイト(※1)を構築し、情報提供を充実しています。また、7か国8都市に、日本の全ての大学が共同利用可能な日本への留学の窓口となる「海外大学共同利用事務所」を設置し、日本の大学の情報提供や入学説明会の開催などを行っています。

2.日本留学試験の実施

 我が国の大学への留学生の入学選抜においては、受験のために渡日する必要があるなど、欧米諸国の大学への留学に比べて手続が煩雑で、留学希望者にとって負担が大きいと指摘されてきました。このため、文部科学省では、日本学生支援機構と協力して、海外で広く実施され、渡日前に入学許可を得ることを可能とし、留学希望者にとって利用しやすい試験として「日本留学試験」を、平成14年度から実施しています。
 本試験は年2回(6月と11月)、国内では16都道府県、海外ではアジア地域を中心に17都市で実施しています。平成24年度の受験者数の合計は、国内2万6,297人、海外5,498人の計3万1,795人でした。また、本試験の利用大学は406大学、80短期大学となっております(平成24年4月1日現在)。さらに、本試験を利用した渡日前入学許可制度を導入している大学は73大学、10短期大学となっています(同年12月1日現在)。


※1 参照:http://www.g-studyinjapan.jasso.go.jp/

3.留学生に対する支援措置

(ア)国費外国人留学生等の受入れ
 国費外国人留学生制度は、文部科学省(当時の文部省)が、諸外国の次代を担う優れた若者を我が国の高等教育機関に招へいし、教育・研究を行わせる制度として昭和29年に創設されました。
 現在、研究留学生(大学院レベル)や学部留学生、ヤング・リーダーズ・プログラムなど7種類のプログラムにより実施されており、これまでに約9万2,000人の国費外国人留学生を支援してきました(注:台湾については上記に準じる支援を(公財)交流協会を通じて実施)。

(イ)私費外国人留学生などへの援助
 文部科学省では、私費外国人留学生に対して、優れた私費外国人留学生の国費外国人留学生への採用を実施しています。また、日本学生支援機構では、私費外国人留学生や大学進学を目指して日本語教育機関で学ぶ学生等に対して学習奨励費(奨学金)を給付しており、私費外国人留学生が安定した生活の中で勉学に専念できる環境の整備に努めています。

(ウ)宿舎の安定的確保
 日本学生支援機構では、大学等が民間アパート等を借り上げる際の「留学生借り上げ宿舎支援」を実施しています。
 このほか、公益財団法人留学生支援企業協力推進協会等の留学生関係公益法人では、民間企業の社員寮に留学生を受け入れるプログラムや、入居者の損害賠償などを目的とした「留学生住宅総合補償制度」などの施策を実施しています。

(エ)留学生の就職支援
 日本学生支援機構では、日本企業に就職を希望する外国人留学生の就職・採用活動について、有益な情報を提供するとともに、学校側・企業側が情報交換を行う「全国就職指導ガイダンス」や、日本で学ぶ外国人留学生がそれぞれのキャリアデザインに沿った就職ができるよう、留学生の就職・採用活動に関する有益な情報を提供する「外国人留学生就職活動準備セミナー」を実施しています。

4.留学生のための教育プログラムの充実

 我が国への留学形態が多様化する中、留学生の需要に応じた魅力ある教育プログラムを提供しています。学部レベルでは、一部の大学において、短期留学生のための英語によるプログラムを実施しています。また、大学院レベルでの国費外国人留学生について、「国費外国人留学生の優先配置を行う特別プログラム」を選定し、国際的に魅力ある留学生受入れプログラムを実施する大学から、当該プログラムにより受け入れる留学生の一部を国費外国人留学生として優先的に採用しています。

5.地域における留学生支援

 留学生と地域住民との交流、留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進するため、全道府県に、大学、地方公共団体、経済団体、民間団体などによって構成される地域留学生交流推進会議が設置されています。また、地域における交流や在籍管理、就職など社会における留学生受入れの推進のため、有識者、企業、学校、留学生支援団体(NPO、ボランティア団体)、留学生(現役及びOB)の関係者による全国レベルの「留学生交流総合推進会議」を開催しています。
 さらに、平成24年度より、各地域において大学、自治体、経済団体、NPO等の連携協力により、留学生を支援しつつ日本人学生や地域住民等と交流していく、街づくりのモデル地域を支援するため「留学生交流拠点整備事業」を実施しており、同年度は7拠点を採択しています。

6.帰国留学生に対する援助の充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め、母国において活躍できるように、日本学生支援機構では、短期研究のための帰国留学生招へい事業、研究支援のための指導教員の派遣など援助を行うとともにJapanA lumni eNews(日本留学ネットワークメールマガジン)を発行し、帰国外国人留学生等に対し必要な情報を提供しています。

(3)日本人学生に対する海外留学の支援

1.海外留学の現状

 各国などの統計によれば、平成22年に海外に留学した日本人は、約6万人です。留学先別に見ると、その約6割が欧米諸国となっています(図表2-9-4、図表2-9-5)。

図表2-9-4 日本から海外への留学者数の推移

図表2-9-5 海外の大学等に在籍する日本人学生数(2010年)

2.海外留学に関する施策

 文部科学省では、国費による日本人学生の海外派遣制度を設けています。
 平成21年度からは、日本人の学生などを最先端の教育研究活動を行っている海外の大学院に派遣し、学位を取得させることにより、我が国のグローバル化や国際競争力の強化を促進する「留学生交流支援制度(長期派遣)」を実施しています。
 また、外国政府などの奨学金により、平成23年度は31か国に約600人の日本人学生などが留学しており、文部科学省では、その募集・選考に協力しています。
 さらに、海外留学の大半を占める私費留学について、日本学生支援機構を通じて、留学情報の収集・整理を行い、また、「海外留学説明会」を開催するなど、留学希望者に対し必要な情報を提供しています。

(4)学生相互交流(受入れ・派遣)の推進

 大学間交流協定などに基づき、母国の大学に在籍したまま、海外の大学で1年間程度、教育を受けて単位を修得したり、研究指導を受けたりする短期留学は、大学間交流の活性化と大学の国際化や日本社会のグローバル化と国際化する社会に対応できる人材の育成、国際理解・知識の拡大、国境を越えた幅広い人的ネットワークの形成が可能となるなど、非常に有意義なものです。こうした短期留学を推進するために、大学間交流協定などに基づき、諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生や諸外国の大学へ派遣される日本人学生を支援する日本学生支援機構の奨学金制度として、平成21年度から「留学生交流支援制度(3か月以上1年以内の短期受入れ・短期派遣)」を設けています。この制度により、23年度には、2,888人の留学生を受け入れ、1,635人の日本人学生を派遣しました。
 さらに、平成23年度からの取組として、3か月未満の留学生の短期受入れ、日本人学生の海外派遣、いわゆるショートステイ・ショートビジットへの支援を行っており、同年度には、3,982人の留学生を受け入れ、1万4,248人の日本人学生を派遣しました。

(5)高校生交流の現状と施策

1.高校生留学の促進等

 平成23年度に外国の高等学校へ3か月以上留学した者は3,257人、海外研修旅行者(語学などの研修や国際交流などを目的として、外国の高等学校などに3か月未満の旅行に出た者)は2万9,953人となっており、調査を開始した昭和61年度以降のピーク時(3か月以上留学した者は4,487人(平成4年度)、海外研修旅行者は3万9,310人(平成12年度))に比べ、日本人高校生の海外留学や海外研修旅行は減少傾向にあります(出典:文部科学省「平成23年度高等学校等における国際交流等の状況」(25年4月公表、隔年実施。ただし、22年度の状況調査は東日本大震災の影響等に配慮して実施を見送り、23年度の状況を調査))。
 文部科学省では、豊かな語学力・コミュニケーション能力や異文化体験を有し、国際的に活躍できる「グローバル人材」を我が国で継続的に育てていくために、海外に留学する高校生に対して留学費用の一部を支援する事業(支援対象者数300人)等を実施しています(第2部 第3章 第3節 参照)。

2.外国人高校生の短期受入れ

 文化や伝統、生活習慣の異なる同世代の若者が交流を深めることは、広い視野を持ち、異文化を理解し、これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく資質・能力を育成する上でとても有意義なことであり、文部科学省では、外国で日本語を専攻している高校生を日本に招致し、日本の高等学校への体験入学等を行う「異文化理解ステップアップ事業」を平成8年度から実施しています(第2部 第3章 第3節 参照)。

3.高校生の海外への修学旅行

 平成23年度において海外修学旅行を行った高等学校は、延べ1,203校(公立424校、私立775校、国立4校)で参加生徒数は15万1,419人となっており、調査を開始した昭和61年度以降のピーク時(高等学校数は延べ1,388校(平成18年度)、参加生徒数は19万6,971人(平成12年度))に比べ、減少しています(出典:文部科学省「平成23年度高等学校等における国際交流等の状況」)。海外への修学旅行は、外国人との交流の機会や外国の歴史・文化などに接する機会を得ることにより、国際理解を深めるなどの意義があります。

2 教員・青少年などの国際交流

(1)教員などの国際交流

 文部科学省では、相互理解の増進と指導力の向上を図るため、関係機関の協力を得て、毎年中国と韓国に教職員を派遣しています。また、中国と韓国から、初等中等教育教職員を我が国に招へいし、我が国の教育制度や教育事情、生活、文化等について幅広く理解を深める機会を提供するとともに、我が国の教職員との交流や家庭訪問により、相互理解と友好親善を図る教職員招へいプログラムを実施しています。平成24年度は、中国・韓国へ計73名を派遣し、韓国から144名の教職員を我が国に招へいしました。
 日米間では、昭和26年に発足した「日米教育交流計画」(フルブライト計画。日米両国政府が経費を分担して運営。日米教育委員会が実施主体)により、両国の研究者・大学院生・ジャーナリスト等の交流が行われています。また、平成20年6月に行われた第23回カルコン(日米文化教育交流会議)合同会議において採択された報告書に基づき、21年度より持続可能な開発のための教育(ESD)を共通のテーマとして日米の初等中等教育教員が相互交流、意見交換、共同研究などを行うことにより、日米の教育交流及びESDの促進を図ることを目的とする「ESD日米教員交流プログラム」を実施しています。24年度は日米から計47名の教員がこのプログラムに参加しました。

(2)青少年の国際交流

 文部科学省では、次代を担う青年リーダーなどの海外派遣及び日本招へいを行い、相互交流を図る「青少年国際交流推進事業」、東アジアを中心とした海外の青少年と日本の青少年が交流する「青少年教育施設を活用した国際交流事業」を実施しています。また、これらの事業に加えて平成24年度は、世界10か国の青少年と日本の青少年が岩手県、愛媛県を中心に多様な体験活動や討議を行う「世界に雄飛するたくましい青少年を育む国際交流事業」を実施しました。
 このほか、国立青少年教育振興機構においても、青少年を対象とした独自の国際交流事業を実施しています。
 また、平成27年には、161の国と地域から約3万人の青少年が集うボーイスカウトの世界大会「第23回世界スカウトジャンボリー」が山口県山口市きらら浜で開催される予定であり、これを契機として青少年の国際交流の機運を醸成していくため、文部科学省としても積極的に支援を行っています。

(3)スポーツを通じた国際交流・貢献の推進

 スポーツを通じた国際交流は、国際相互理解を促進し、国際平和に大きく貢献するなど、我が国の国際的地位の向上を図る上でも極めて重要です。
 このため、文部科学省では、日本体育協会が行うアジア地区とのスポーツ交流事業や日本オリンピック委員会が行う国際競技力向上のためのスポーツ交流事業に対して支援を行っています。
 また、国際スポーツ界に貢献するため、我が国は、世界ドーピング防止機構(WADA)のアジア代表常任理事国として、WADA地域事務所と協力し、国際連合教育科学文化機関の「ドーピングの防止に関する国際規約」の未締結国へ働きかけるなど、アジア地域におけるドーピング防止活動の推進を図っています。
 さらに、日本アンチ・ドーピング機構と連携し、アジア諸国に指導者を派遣し、ドーピング検査員の養成のための講習会を実施するほか、我が国にアジア諸国のドーピング検査員を招き、実践的な研修を実施するなど、アジア諸国におけるドーピング防止活動を支える人材の養成に大きく貢献しています。

3 国際機関のその他の国際的枠組みにおける取組

(1)経済協力開発機構(OECD)教育事業への参加

 OECDは、先進34か国を加盟国として、様々な分野における政策調整・協力、意見交換などを行っています。教育分野に関しては、加盟各国における教育改革の推進や施策の実践に寄与することを目的として、教育統計や指標の開発と分析、生徒の学習到達度調査(PISA)、成人が社会で必要とする総合的な力を測る国際成人力調査、教員・教授・学習に関する国際調査、高等教育分野での国際比較調査などの事業を実施しており、我が国も参加・協力しています。また、2013(平成25)年2月には、「高等教育のグローバル化-世界動向と政府の役割の再検討」をテーマにOECD/Japanセミナーを開催するなど、OECDの教育事業の成果の普及に努めています。

(2)アジア・太平洋経済協力(APEC)教育事業への協力

 APECは、アジア・太平洋地域の21か国・地域が参加する地域協力の枠組みです。貿易・投資の自由化などの経済問題とともに、教育を含む人材養成の分野にも積極的に取り組んでいます。教育分野については、参加国・地域の主導により、教育政策上の諸課題に関する活動を実施しています。その一環として、タイとの共同事業を実施し、日本における授業研究の取組の紹介や防災教育に関する研究を行い、APEC域内への普及を図っています。また、2012(平成24)年5月には、慶州(韓国)で、「将来の課題と教育上の対応:グローバル、イノベーティブ、協力的な教育の推進」をテーマとして第5回教育大臣会合が開催されました。

(3)国連大学への協力

 国連大学は、東京に本部を置く国連機関です。国内には本部のほかに二つの研究所があり、「サステイナビリティと平和研究所」では、グローバルな変化とサステイナビリティ、国際協力と開発、平和構築と安全保障という国連における三つの重要議題にまたがる広範な課題の解決に向け、活動しています。また、「高等研究所」では、持続可能な開発を中心とした国際的・学際的な研究や研修を行っています。また、これらの研究所では、大学院プログラムを開設し、学生を受け入れています。
 我が国は、国連大学本部施設の提供や国連大学基金への拠出に加え、毎年、事業費などの拠出を行っています。

(4)世界知的所有権機関(WIPO)との協力

 WIPO(World Intellectual Property Organization)は、知的財産権の国際的保護の促進などを目的として1970(昭和45)年に設立された国連の専門機関です。WIPOは、国際条約の作成・管理を行うとともに、各国の法令整備の支援や開発途上国に対する法律・技術上の援助、情報の収集・提供などを行っています(参照:第2部 第7章 第8節 4(2))。
 我が国はWIPOに対して、平成5年度から毎年継続的に信託基金を拠出し、アジア・太平洋地域各国の著作権法制度整備や普及・啓発を促進しています。また、WIPOに職員を派遣し、協力・連携して各種セミナー、研修、専門家派遣を実施しています。

4 国際教育協力の推進

(1)国際教育協力における取組

 国際社会においては、貧困、災害、気候変動など地球的規模の課題が山積しており、先進国には、課題解決のための資金面での貢献のみではなく、知的貢献が求められています。
 特に近年、実験・研究を重視した少人数の日本式工学教育は、開発途上国で高く評価されており、日本の協力を得て、自国に工学系の高等教育機関を設置したいという要望が様々な国から寄せられています。その背景には、高い技術力を有した人材の育成は、産業の振興をもたらし、ひいては国の発展につながるという認識があります。
 こうした背景の下、国際協力機構(JICA)が、日本の大学等の協力を得て、アジア地域等における高等教育機関の能力強化に関する様々な事業を実施しており、文部科学省はこれらの事業を支援しています。また、東南アジア地域の教育、科学技術及び文化に関する教員研修・研究開発を促進する東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)との連携強化を図っています。SEAMEO加盟国内において持続可能な開発のための教育(ESD)の優れた取組を行う学校を表彰し、ESDの普及を図ることを目的にSEAMEO-JapanESDAwardを創設しました。第1回目となる2012(平成24)年は、「防災」をテーマに公募を行い、加盟各国から多数の応募がありました。第1位受賞校の「クンジャゴン郡立第一高等学校(ミャンマー)」には、日本のユネスコスクールとの交流を深めるため、日本訪問の機会を提供しました。

(2)国際協力推進会議

 経済成長を遂げた新興国への教育協力はODA枠では収まらず、新たな方法によらなければ成果を上げることが困難になってきています。こうした状況を踏まえ、文部科学省では、平成23年6月に「国際協力推進会議」を設置し、ASEAN・中東等の新興諸国に焦点を当てて国際協力の在り方について議論し、平成24年3月に「国際協力推進会議中間報告書」を取りまとめました。24年度は、南米への国際教育協力について議論を行うこととし、「国際協力推進会議」の下に「南米ワーキンググループ」を設置して、産学官の多様な領域における専門家に参加いただきました。同会議及びワーキンググループにおいて、中間報告書を踏まえた国際教育協力の実施方策や、オールジャパン体制での南米への国際教育協力の在り方について検討し、南米諸国との国際教育協力の推進方策を「審議のまとめ」として整理しました。審議のまとめでは、特に以下の施策の重要性が強調されました。

1.「集中」

 限られた予算・マンパワーを効果的に活用するため、各種プロジェクトの「集中」を考慮

2.日本側における組織的かつ経済的な協力体制の確保

 個人の力に依存することなく国際教育協力を組織として継承していける体制を整備

3.ポストODAへの対応

 資源や戦略的重要性の観点から、重点国を優先的に支援

4.南米での日本語教育

 南米の親日派を拡充するため、日系人のみならずそれ以外の人々への日本語教育を促進

5.安全等リスクへの配慮

 事業実施に係るリスクマネジメントに十分配慮

○「連絡調整会議(仮称)」の設置
 また、国際教育協力においては、産学官の連携などオールジャパンでの戦略的な取組が不可欠であることから、具体的な国の施策を立案・実施する関係各省等が参画する「連絡調整会議(仮称)」を設置することが提案されました。
 以上を踏まえて、文部科学省は今後も国際教育協力の推進に取り組んでいきます。(※2)


※2 参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/010/index.htm

(3)現職教員による日本の教育経験を生かした協力の促進

 教員の国際協力への参加促進を目的として、平成13年度に青年海外協力隊「現職教員特別参加制度」が創設され、20年度には、同制度が「日系社会青年ボランティア」にも拡大されました。
 教員は、指導案の作成、教材開発、指導技術など、子供に密着した実践的な能力や経験を身に付けており、我が国の教育経験を生かした国際教育協力を進めていく上での貴重な人材です。また、開発途上国の厳しい環境の下で国際教育協力に従事することで、問題への対処能力や指導力など、教員の資質能力の向上が期待されています。さらに、帰国後は自身の貴重な経験を国際理解教育の実践などを通じて、日本の教育現場に還元することも期待されています。これまでの11年間で828名の教員が世界各地の開発途上国に派遣され、活躍しています。また、平成25年度募集から本制度の対象を私立学校の教員にも拡大しました。今後も本制度を活用して、日本の教員が持つ知見や経験をより多くの現地の人々や子供たちに伝えるとともに、教員が青年海外協力隊等に参加して得た経験を日本の子供たちに更に広めることができるよう、文部科学省としても関係機関に働きかけを行っていきます。(※3)


※3 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/kyouiku/main5_a9.htm

第2節 ユネスコ事業への参加・協力

 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、教育・科学・文化の分野における国際協力の促進を通じて平和に貢献することを目的とする国連の専門機関であり、現在195か国が加盟しています。
 我が国におけるユネスコ活動については、日本ユネスコ国内委員会が助言、企画、連絡及び調査に当たっています。

1 教育における取組

 ユネスコが取り組んでいる主要な課題の一つに、我が国の提案により始まった、持続可能な社会の担い手を育む教育である「持続可能な開発のための教育(ESD)」があります。文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、国際的な連携を実践する学校)をESDの推進拠点と位置付け、その加盟校増加に取り組んでいます。平成17年に19校であった国内のユネスコスクールは、24年12月現在で550校に達しており、様々なESDの理念に基づく取組がなされています。
 また、平成24年8月には、ユネスコスクールの質的充実を図る見地から、「ユネスコスクールガイドライン(※4)」を作成し、都道府県教育委員会等を通じてその趣旨を周知しました。本ガイドラインは、既加盟のユネスコスクールがより充実した活動をし、また今後加盟予定の学校などが効果的な活動を立案するために重要と思われる事項をまとめたものです。ユネスコスクールの活動の質がより一層向上し、ユネスコスクールがESDの推進拠点として発展するために、ガイドラインが活用されることを期待しています。
 「国連持続可能な開発のための教育の10年(UNDESD)」の最終年である平成26年11月には、ユネスコと日本政府の共催により、愛知県・名古屋市及び岡山市で「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」を開催し、UNDESDを振り返るとともに、そのフォローアップを踏まえ、今後の方策について議論される予定です。文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、この世界会議の成功と、ESDの普及促進と質の向上に向けて、様々な取組を実施しています。
 一例として、平成24年10月に「ESDオフィシャルサポーター」を結成しました。これは、多様な分野で活躍している6名(さなかクン(魚類学者・イラストレーター)、平野啓子氏(語り部、かたりすと)、木佐彩子氏(フリーアナウンサー)、白井貴子氏(シンガーソングライター)、日比野克彦氏(アーティスト)、服部隆之氏(作曲家))が広く一般に向けESDの普及・促進を行う、いわゆる「応援団」です。今後、「ESDオフィシャルサポーター」は、それぞれの活動の中でESDを広めていきます。
 また、教育分野においてはほかにも、識字率の改善などを目標とした「万人のための教育(EFA)」の推進などについても信託基金の拠出などを通じユネスコと連携して事業を実施しています。

図表2-9-6 ユネスコスクール加盟校の推移

ユネスコスクールガイドライン

ユネスコスクールとして大切なこと

 ユネスコスクールの活動には、次のようなことが大切ですので、各学校におかれては、これらの点を念頭において活動いただくことを期待しております。

  • 国内外のユネスコスクール相互間のネットワークを介して、互いに交流相手の良さを認め合い、学び合うこと。
  • 地域の社会教育機関、NPO等との連携などを通じて、開かれたネットワークを築くよう努めること。
  • 校内外における各種研修の充実・活用を図るなど、ユネスコスクールの活動を通じて広く学校外にも働きかけ、我々人類社会が持続的に発展するよう心がけること。
  • 学校経営方針等にユネスコスクールの活動に取り組むことを明確に示し、学校全体で組織的かつ継続的にユネスコスクールの活動に取り組みやすくすること。
  • ユネスコスクールの活動を自らの学校評価の項目に盛り込み、活動の質の向上に努力すること。
  • 必要に応じ、ASPUnivNet(※5)加盟大学をはじめとする高等教育機関の支援や協力を得ながら、ユネスコスクールの活動の充実に努めること。
持続発展教育(ESD)推進拠点として大切なこと

 ユネスコスクールが持続発展教育(ESD)推進拠点として発展していくには、次のようなことが大切ですので、各学校におかれては、これらの点を念頭において活動いただくことを期待しております。

  • 持続発展教育(ESD)を通じて育てたい資質や能力を明確にし、自分で、あるいは協働して、問題を見出し解決を図っていく学習の過程を重視した教育課程を編成するよう努めること。
  • 総合的な学習の時間を中心とした教科横断的な指導計画を立てるなど、指導内容を適切に定め、さらに、指導方法の工夫改善に努めること。
  • 持続発展教育(ESD)の推進拠点として、研究・実践に取り組み、その成果を積極的に発信することを通じて、持続発展教育(ESD)の理念の普及に努めること。

 持続発展教育(ESD)とは、持続可能な社会づくりの担い手を育む教育であり、その中には、国際理解、環境、多文化共生、人権、平和、開発、防災などのテーマ・内容が含まれます。従って、持続発展教育(ESD)で取り上げるテーマ・内容は必ずしも新しいものではありません。むしろ、それらを持続発展教育(ESD)という新しい視点から捉え直すことにより、個別分野の取組に、持続可能な社会の構築という共通の目的を与え、具体的な活動の展開に明確な方向付けをするものです。また、それぞれの取組をお互いに結び付けることにより、既存の取組の一層の充実発展を図ることを可能にします。
 持続発展教育(ESD)の実施においては、「人格の発達や、自律心、判断力、責任感などの人間性を育むこと」や、「他人、社会、自然環境との関係性を認識し、関わり、つながりを尊重できる個人を育むこと」の観点が必要です。
 持続発展教育(ESD)の理念は、現行の教育振興基本計画(平成20年7月策定)に盛り込まれていますし、学習指導要領(平成20年、21年公示)で示されている「生きる力」という理念にも通ずるものです。


※4 本ユネスコスクールガイドライン中ではESDの訳語として「持続発展教育」を用いているが、政府が作成する文書においては、「持続可能な開発のための教育」を用いている。

※5 ユネスコスクールのパートナーとして、ユネスコスクールの活動を支援する大学のネットワーク

2 科学における取組

 科学分野では、国際水文学計画(IHP)や政府間海洋学委員会(IOC)及び人間と生物圏(MAB)計画をはじめとする持続可能な発展のための国際科学プログラム、生物多様性の保全、学術研究支援などのユネスコの諸活動に積極的に参加・協力しています。
 平成24年7月、ユネスコにおいて、日本から推薦していた「綾」(宮崎県)が、我が国5か所目のユネスコエコパーク(※6)に登録されました。MAB計画の一事業として展開されるユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会との共生)を目指す取組として、今後、持続可能な社会の構築に向けた取組を行っている地域において、環境教育を通じたESDの学習の場としての役割や地域振興の一つの方策となること等が期待されています。25年2月には文部科学省で綾ユネスコエコパークの登録証授与式を行うとともに、ユネスコからシャーフ生態・地球科学部長代理等を招いてシンポジウムを開催し、日本におけるユネスコエコパークの今後の普及と可能性について理解を深めました。

図表2-9-7 綾ユネスコエコパークにおける取組

 また、我が国から提出している「サステイナビリティ・サイエンス(※7)に関するユネスコへの提言」については、平成25年11月の第37回ユネスコ総会で決定されるユネスコの次期中期戦略(37C/4)及び事業・予算(37C/5)に反映させ、「サステイナビリティ・サイエンス」の推進を図っていくこととしており、日本ユネスコ国内委員会ではサステイナビリティ・サイエンスワーキンググループを設置して、我が国としてユネスコに行う必要なインプットを検討しています。25年4月、ユネスコ・ジャカルタ事務所と連携して、アジア太平洋地域ワークショップを開催し、サステイナビリティ・サイエンスに関してアジア太平洋地域における共通理解を深めました。さらに、9月には、ユネスコ本部等と協力して、サステイナビリティ・サイエンスに関する国際シンポジウムを開催する予定です。


※6 平成22年1月、生物圏保存地域(BR:Biosphere Reserves)により親しみをもってもらうために、BRを日本国内ではユネスコエコパークと呼ぶことが日本ユネスコ国内委員会で正式に決定されました。
※7 「サステイナビリティ・サイエンス」とは、持続可能な地球社会の構築にむけた、自然科学と人文・社会科学の統合的アプローチによる科学的取組をいう。(平成23年8月3日日本ユネスコ国内委員会提言より)

3 文化における取組

 文化分野では、ユネスコ記憶遺産選考委員会を開催し、日本ユネスコ国内委員会から行う第2回推薦(平成26年3月)に向けて選考基準や物件候補について審議を行い、「東寺百合文書」を推薦することを決定しました。24年3月に初の推薦を行った「御堂関白記」及び「慶長遣欧使節関係資料」(スペインとの共同推薦)については、25年6月開催の「ユネスコ記憶遺産国際諮問委員会(IAC)」の審議を経て、ユネスコ事務局長により、ユネスコ記憶遺産として「登録」が決定されました。
 また、クリエイティブ・シティーズ・ネットワーク事業は、文学、映画、音楽、メディア芸術、食文化等7分野において、都市間で相互に連携し、国内外のネットワークを通じて文化産業の強化による都市の活性化及び文化多様性への理解増進を図る取組であり、我が国は、デザイン分野の名古屋市及び神戸市、クラフト&フォークアート分野の金沢市が登録されており、地域振興の契機となる観点から、申請を検討している自治体が増えています。
 これらのほかにも我が国では、ユネスコの目的を実現していくため、国・地方公共団体・民間がそれぞれ協力して、あるいは独自に活発な活動を行っています(図表2-9-8)。

図表2-9-8 我が国が協力しているユネスコの主な事業

第3節 科学技術外交の推進

1 科学技術外交の意義

 近年のグローバル化の進行や、中国やインドなどの新興国の台頭による世界の多極化、環境・エネルギー、食料、水、防災、感染症などの地球規模課題の顕在化など、世界を取り巻く諸情勢は大きく変動しています。また、世界的な頭脳循環が加速し、国際的な頭脳獲得競争がますます激しくなっています。これらの状況において、我が国は国際的な協調下で、より一層の科学技術の推進による諸問題の解決や新しい知の創出を図るとともに、世界における我が国の国際的存在感を向上させることが求められています。
 先進国との国際科学技術協力においては、我が国の科学技術水準の向上に資するとともに、地球規模課題の解決につながる技術の開発等により、我が国の持続的な成長・発展を促すことが期待されています。また、開発途上国との協力においては、今後著しい発展が見込まれるアジア諸国との抜本的な協力強化を科学技術面で先導するとともに、各国で顕在化している地球規模課題の解決や相手国の人材育成、相手国・我が国の科学技術の発展による緊密な科学技術コミュニティの構築が期待されています。
 現在、我が国の研究者の海外派遣総数はほぼ横ばいで推移している一方で、外国人研究者の受入れ総数は減少しました。このような状況から、我が国の科学技術コミュニティが世界の人材流動の動きから取り残されてしまうとの危惧があり、我が国の頭脳循環の流れを活性化させることによって、我が国が世界規模の頭脳循環の中で一角を占めていくことが必要です。海外への研究者派遣は、海外の先端研究に参画することで、研究能力を高めるとともに、国際研究ネットワークに入り込み、その核として活躍できる力を付けることが期待されます。また、優秀な外国人研究者の受入れを進めることで、新たなイノベーションの創出や、我が国受入れ機関の国際化の促進、将来の海外における我が国とのネットワークの構築が見込まれます。
 これらの状況を踏まえ、文部科学省は、地球規模課題の解決への貢献、先端科学技術分野での戦略的な国際協力の推進による多様で重層的な協力の推進や、国際的な人材・研究ネットワークの強化などに取り組み、科学技術の国際活動を戦略的に推進しています。

2 科学技術外交を推進するための国の取組

(1)分野や相手国に応じた多様で重層的な協力

 我が国は世界各国・地域と科学技術協力協定等を結んでおり、現在、その対象は、47か国・機関に及んでいます。これらの国・機関とは、定期的な合同委員会の開催等を通じ、互いの協力を深めています。また、先進国から途上国までの多層的な国際ネットワークを発展させていくためには、相手国・機関の特性や分野の特性に応じた協力を行っていく必要があります。文部科学省では以下の取組により分野や相手国・機関に応じた多様で重層的な協力を推進しています。

1.アジア諸国との協力

 近年著しい成長を続けるアジア諸国との協力関係を強化するため、以下に挙げる様々な枠組みを通じて協力を進めています。

(ア)e-ASIA共同研究プログラム
 文部科学省は科学技術振興機構(JST)と協力して、2012(平成24)年6月に、アジア地域において科学技術分野における研究交流を加速することにより、研究開発力を強化するとともに、アジア諸国が共通して抱える課題の解決を目指し多国間の共同研究を行う「e-ASIA共同研究プログラム」を発足させました。同年10月、日本・タイ・ベトナムによる共同研究3課題を採択し、支援が開始されています。

(イ)日中韓科学技術協力担当大臣会合
 日中韓3か国の科学技術協力を促進すべく、2007(平成19)年1月に初の会合が韓国(ソウル)で開催されました。2009(平成21)年5月には第2回の会合が東京で開催され、同会合では、3か国の「共同研究協力プログラム(JRCP)」の創設や「若手研究者のワークショップ」の開催(第1回は2010(平成22)年5月に韓国で開催)等が合意されました。2012(平成24)年4月には第3回の会合が中国(上海)で開催され、今後の日中韓3か国間の科学技術協力について、大臣間で意見交換が行われました。

(ウ)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力
 東南アジア10か国が参加するASEANと日本との間で、科学技術分野での協力が進められています。ASEAN科学技術委員会(COST)において、日本・中国・韓国の3か国を加えたASEAN COST+3による協力が行われており、我が国では文部科学省を中心として対応しています。2011(平成23)年12月には、第6回ASEAN COST+3会合が韓国(済州島)で開催され、ASEANと日中韓の共同プロジェクトに関する意見交換が行われました。また、我が国とASEAN COSTとの間の協力枠組みとして、2009(平成21)年に日・ASEAN科学技術協力委員会(AJCCST)が発足し、2012(平成24)年5月に第3回AJCCSTがミャンマー(ネピドー)で開催されました。

(エ)「センチネルアジア」プロジェクト
 衛星画像等の災害関連情報をインターネット上で共有することを目的とし、2005(平成17)年に我が国が提案し、2006(平成18)年10月から開始された国際協力プロジェクトです。人工衛星は、昼夜や天候に左右されず広域の画像取得が可能であることなどから、大規模自然災害の状況把握に有効な手段です。このプロジェクトは、2013(平成25)年3月現在、25か国・地域の74機関・14国際組織の協力の下で行われています。

(オ)アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
 アジア諸国との原子力分野の協力を効果的に推進するため、日本が主導するもので、各国の原子力研究開発利用を担当する大臣クラスの参加者が意見交換を毎年行っています。また、研究炉利用や放射線安全・廃棄物管理、人材養成等の分野ごとに開催されるワークショップなどで意見交換や情報交換が行われています。

2.地球規模課題対応の分野での開発途上国との協力

 アジア諸国との協力関係を重視しつつ、アフリカ等を含む開発途上国と、地球規模課題の解決や相手国と我が国の科学技術の更なる発展に資する科学技術協力を推進しています。

○地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)
 アジア、アフリカ、中南米等の開発途上国との科学技術協力については、これらの国々のニーズを踏まえ、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症分野における地球規模課題の解決と、将来的な社会実装に向けた国際共同研究を推進しています。具体的には、文部科学省と科学技術振興機構(JST)、外務省と国際協力機構(JICA)が連携し、我が国の先進的な科学技術とODAを組み合わせた「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」を実施しています。

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)採択課題「根寄生雑草克服によるスーダン乾燥地農業開発」の写真
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)採択課題「根寄生雑草克服によるスーダン乾燥地農業開発」
提供:科学技術振興機構

3.二国(極)間・多国間における科学技術協力

 欧米を中心とした先進国や成長著しい新興国との幅広い科学技術協力を進めることにより、科学技術イノベーションの創出に貢献することが求められています。我が国では、以下のとおり二国(極)間、多国間における科学技術・学術協力を進めています。

(ア)二国(極)間における科学技術協力
 科学技術振興機構(JST)では、政府間合意に基づくイコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下、戦略的に重要なものとして国が設定した協力対象国・地域及び研究分野における共同研究を支援する「国際科学技術共同研究推進事業戦略的国際共同研究プログラム」、同様に研究交流を支援する「戦略的国際科学技術協力推進事業」を実施しています。さらに、日本学術振興会(JSPS)では、研究者の自由な発想に基づく共同研究・セミナー及び研究者交流を支援する「二国間交流事業」を実施し、二国(極)間の学術協力を推進しています。

(イ)多国間における科学技術協力
 日本学術振興会(JSPS)では、各国学術振興機関と連携して国際共同研究事業を実施しています。さらに、多国間交流ネットワークの構築及び強化を図るため、平成24年度より「先端研究拠点事業」、「アジア研究教育拠点事業」、「アジア・アフリカ学術基盤形成事業」を、対象国等を見直し、新たに「研究拠点形成事業」として実施し、多国間における学術協力を推進しています。
 また、2011(平成23)年1月より、我が国は、EUのFP7(※8)における国際協力プロジェクトであるCONCERT-Japan(※9)に参加しています。本事業は、各国政府機関と資金配分機関とが共同事業体を形成し、各国分担の上でシンポジウムや各種の会議を開催することにより、日本と欧州諸国相互の具体的な科学技術政策についての情報交換やネットワークの構築を目指しています。

(ウ)先進国との多国間における科学技術協力

○経済協力開発機構(OECD)
 OECDでは、閣僚理事会、科学技術政策委員会(CSTP)、情報・コンピュータ及び通信政策委員会(ICCP)、産業・イノベーション・起業委員会(CIIE)、農業委員会(AGR)、環境政策委員会(EPOC)、原子力機関(NEA)、国際エネルギー機関(IEA)等を通じて、加盟国間の意見・経験等及び情報の交換、人材の交流、統計資料等の作成をはじめとした科学技術に関する活動が行われています。

○ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)における協力
 HFSPは、1987(昭和62)年6月のベネチア・サミットにおいて我が国が提唱した国際的な研究助成プログラムで、生体の持つ複雑な機能の解明のための基礎的な国際共同研究などを推進することを目的としています。日本・米国・フランス・ドイツ・EU・英国・スイス・カナダ・イタリア・オーストラリア・韓国・ニュージーランド・インド・ノルウェーの計14極で運営されており、我が国は本プログラム創設以来、積極的な支援を行っています。本プログラムでは、国際共同研究チームへの研究費助成、若手研究者が国外で研究を行うための旅費、滞在費等の助成及び受賞者会合の開催等が実施されています。2012(平成24)年度までに本プログラムの研究助成を受けた者の中から、18名のノーベル賞受賞者が輩出されるなど、本プログラムは高く評価されています。


※8 EU(European Union)の研究助成プログラムの名称(FP7:Framework Programme7。2007(平成19)年~2013(平成25)年の7年間で、総額500億ユーロを超える研究・イノベーション投資を実施)
※9 Connecting and Coordinating European Research and Technology Development with Japan

4.国際協力プロジェクトへの取組

 技術の発展、研究の大規模化に伴い、先端分野での大規模な国際プロジェクトが増えており、我が国としても各国と協力し、積極的に取り組んでいます。

(ア)イーター(ITER:国際熱核融合実験炉)計画
 エネルギー資源の乏しい我が国にとって、将来のエネルギーの安定確保は重要な課題です。ITER計画は、人類究極のエネルギーである核融合エネルギーの実現を目指して、日本・欧州・ロシア・米国・中国・韓国・インドの7極により進められている国際協定に基づくプロジェクトです。我が国はITERの建設に当たり、超伝導コイル、遠隔保守機器、加熱装置等の重要機器の製作を担うなど、主導的役割を担っています。また、ITER計画を補完・支援する先進的研究開発プロジェクトである幅広いアプローチ活動(※10)を日欧協力により、我が国で実施しています。


※10 幅広いアプローチ活動 核融合エネルギーの実用化に向けて、ITERだけでは十分に把握できない核融合炉工学分野やプラズマ物理分野などの研究開発を、日欧協力により、我が国(青森県六ヶ所村、茨城県那珂市)において行う取組

(イ)国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)計画
 国際宇宙ステーション(ISS)計画は、日本・米国・欧州・カナダ・ロシアの5極が共同で行う平和目的の国際協力プロジェクトです。我が国は、日本実験棟「きぼう」や宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用、日本人宇宙飛行士等によるISS長期滞在等の活動を行っています。2012(平成24)年は星出彰彦宇宙飛行士がISSに長期滞在し、ISSの部品を交換するために3回に及ぶ船外活動を実施し、日本人宇宙飛行士として最長記録を更新するとともに、ロボットアームを用いた世界初の超小型衛星放出実験、無重力が生物へもたらす影響を調べるためのメダカを用いた実験を日本実験棟「きぼう」で実施しました。また、平成25年度末からは、若田光一宇宙飛行士がアジア人として初めてISSでコマンダー(船長)(約6か月間の滞在期間中、後半期間)を務める予定です。このように、我が国は「きぼう」、「こうのとり」の運用、日本人宇宙飛行士のISSへの搭乗等を通じ、ISS計画において主要な役割を果たしており、我が国の宇宙技術・貢献は各国から高く評価されています。

国際宇宙ステーション(2010年(平成22年)5月撮影)の写真
国際宇宙ステーション(2010年(平成22年)5月撮影)
提供:米国航空宇宙局(NASA)

(ウ)統合国際深海掘削計画(IODP)
 深海底を掘削し、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的として、日米主導の下世界26か国が参加する多国間国際協力プロジェクトです。深海底から海底下7,000mまでの掘削能力を有する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が提供する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を運用しています。「ちきゅう」は、東南海地震の想定震源域である紀伊半島沖熊野灘における地震発生メカニズム解明を目的とした科学掘削を進めています。

地球深部探査船「ちきゅう」の写真
地球深部探査船「ちきゅう」

(エ)大型ハドロン(※11)衝突型加速器(LHC)計画
 LHC計画は、欧州合同原子核研究機関(CERN)において、周長27kmにも及ぶ巨大な円形加速器を用いて陽子を2方向からほぼ光速まで加速し、それらの陽子同士が衝突する際に生じる膨大なエネルギー領域において宇宙創成時(ビッグバン直後)の状態を再現し、未知の粒子の発見等を通じて、宇宙創成の謎や物質の究極の内部構造等を探索するプロジェクトです。我が国は、学術的な意義に加え国内の先進技術分野の発展が期待できることから、加速器建設に資金拠出を行うなどLHC計画の推進に貢献しており、2008(平成20)年に加速器が完成、現在世界最高のエネルギー領域において実験研究が行われています。我が国からは、LHC計画の主要実験であるATLAS(※12)実験等に、約200名の研究者らが参画しており、2012(平成24)年7月に「ヒッグス粒子」と見られる新粒子を発見したと発表しました。

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の一部の写真
大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の一部


※11 ハドロンとは、ハドロン物質を構成している最小の単位である粒子の一種、クォークによって構成される複合粒子(陽子や中性子など)の総称
※12 ATLAS:A Toroidal LHC Apparatus

(オ)国際科学技術センター(ISTC)
 ISTCは、旧ソ連邦諸国における大量破壊兵器開発に従事していた研究者へ平和活動に従事する機会を与えること、同諸国の市場経済への移行を支援することを目的として、1994(平成6)年3月に日本・米国・EU・ロシアの4極により設立された国際機関です。2013(平成25)年1月現在、承認プロジェクトの資金支援決定総額は約8億6,050万ドル、従事したロシア及びCIS諸国の研究者の数は延べ7万5,000人以上となりました。

(2)国際的な人材・研究ネットワークの強化

1.日本の研究者等の海外派遣の拡充

 我が国の大学、独立行政法人等の研究者の海外派遣状況(平成23年度)は、短期、中・長期派遣者数ともに増加しました。

図表2-9-9 期間別派遣研究者数(短期/中・長期)

 将来、国際ネットワークの核として活躍できる研究者を育成するため、日本学術振興会(JSPS)では、優れた若手研究者が海外の大学等研究機関において長期間研究に専念できるよう支援する海外特別研究員事業を実施しています。また、平成21年度補正予算においてJSPSに創設した「研究者海外派遣基金」により、若手研究者を3か月程度から1年の期間派遣する事業を実施しており、その結果、25年度までに約8,000人の派遣が見込まれています。さらに、「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業」において、1年以上の長期間にわたり若手研究者を海外へ派遣する大学等研究機関を支援することにより、頭脳循環の推進を図っています。

2.外国からの研究者の受入れの推進

 我が国における外国人研究者受入状況(平成23年度)については、短期、中・長期受入れ者数ともに減少しました。

図表2-9-10 期間別受入研究者数(短期/中・長期)

 日本学術振興会(JSPS)では、優秀な外国人研究者を我が国に招へいし、我が国の研究環境の高度化や国際的な研究者ネットワークの発展・強化を図るため、「外国人特別研究員事業」をはじめとして、研究者のキャリアステージ及び招へい目的に応じた、多様なプログラムを実施しています。また、同会の招へい事業経験者等の組織化を図るとともに、再来日の機会の提供などによる、我が国と諸外国の研究者ネットワークの形成・強化を図っています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成25年10月 --