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第4章 新たな知と価値を創造・発信する高等教育へ向けて

第4章 総論

 グローバル化や少子高齢化など社会の急激な変化に直面し、また、東日本大震災という国難を経験した我が国では、閉塞感を打破し持続可能で活力ある社会を目指した社会構造の変革を成し遂げなければなりません。そのためには、大学および大学関係者は、我が国及び国民が直面する課題にしっかり応えていく重大な責務を有しているとの認識の下に、国民や社会の期待に応える大学改革を主体的に実行することが求められています。
 文部科学省では、平成24年6月に「大学改革実行プラン~社会の変革のエンジンとなる大学づくり~」を公表し、今や待ったなしの状況にある大学改革を確実に実行段階へと移し、その成果として、社会を変革するエンジンとしての大学の役割が国民に実感できることを目指して取り組んでいます。今後は、世界トップレベルの大学力の実現を目指し、官邸に設置された教育再生実行会議や産業競争力会議での国立大学改革やグローバル人材育成、学び直しなどの議論も踏まえ、大学の質・量両面の充実・強化につながる大学改革を推進していきます。
 また、このほかにも、医療人や法曹などの専門人材の養成や、地域医療の中核としての大学病院の機能強化、高等専門学校や専門学校の充実など、高等教育の多様な発展のための様々な取組を推進しています。
 一方、我が国の様々な社会的課題に対応するための取組も進めています。現下の厳しい経済情勢を踏まえ、学ぶ意欲と能力のある学生が経済的理由によって学業を断念することがないよう、各大学が行う授業料減免措置を支援したり、奨学金事業を一層拡充したりしています。奨学金事業については、卒業後に一定の収入を得るまでの間、返済を猶予する制度を導入するなど、適確な運用を図っています。
 さらに、学生の就職活動への支援やキャリア教育の充実に向けた支援も行っております。学生の就職活動への支援に関しては、経済団体に対し、採用選考活動の開始時期を卒業・終了年度の8月に見直すよう要請するなど、関係府省と連携しつつ大学等卒業予定者の支援に取り組んでいきます。キャリア教育の充実に向けた支援に関しては、大学等における就職支援体制の強化や、教育課程の内外を通じて学生の社会的・職業的自立を支援する取組などを総合的に支援することとしています。

第1節 高等教育施策の動向

1 大学改革の進展

(1)激しく変化する社会における大学の機能の再構築

 グローバル化・情報化などが著しく進展し、将来の予測が困難になっている現代において、高等教育機関、とりわけ大学は、幅広い教養と高い専門性を備えた人材の育成、様々な研究を通じた諸問題の解決など、国民生活や社会経済の発展に大きく寄与しています。また、地域の産業活性化や課題解決の拠点としての役割も担っており、新たな知と価値を創造・発信し、能動的に社会をリードしていくことに大きな期待が寄せられています。
 我が国の大学・短大への戦後の進学率は、昭和50年代から平成2年頃までほぼ横ばいだった期間を経て上昇し、平成24年度には大学・短大合わせて56.2%、高等専門学校、専門学校を含めれば79.3%となっています。我が国の大学進学者の多くを占める18歳人口は、平成4年度の205万人をピークに減少し、平成20年度頃に一旦減少傾向が止まりましたが、平成33年度頃から再び減少することが予想されます(図表2-4-1)。

図表2-4-1 18歳人口、進学率等の推移

 一方、成熟社会においては、知識基盤社会の進展や産業・就業構造の変化により、高度な知識や技能を有する高等教育修了者の需要が増加することが予想されます。実際、多くの経済協力開発機構(OECD)加盟国では大学レベルの高等教育への進学率が上昇傾向にあります(図表2-4-2)。国内でも所得や地域によって大学進学率になお差があります(図表2-4-3)(図表2-4-4)。このような状況を踏まえ、学ぶ意欲と能力を持つ全ての若者に高等教育の機会を開くとともに、社会人の学び直しなど生涯学習の場としての機能の充実や、留学生の受入れの推進も含め、より多様で質の高い大学教育の機会の充実に努めていくことが重要です。

図表2-4-2 大学型高等教育進学率の国際比較

図表2-4-3 高校卒業後の進路(両親年収別)

図表2-4-4 都道府県別高校新卒者の進学率

 文部科学省では、前述のような社会からの期待に応える大学づくりを進めるため、平成24年6月に「大学改革実行プラン」を取りまとめ、公表しました(図表2-4-5)。
 同プランでは「激しく変化する社会における大学の機能の再構築」として、1.大学教育の質的転換と大学入試改革(参照:第2部 第4章 第2節 1、2)、2.グローバル化に対応した人材育成(参照:第2部 第4章 第3節)、3.地域再生の核となる大学づくり(COC(Center of Community)構想の推進)(参照:第2部 第4章 第2節 4)、4.研究力強化(世界的な研究成果とイノベーションの創出)(参照:第2部 第6章 第2節、第5節)の四つの改革の方向性を示すとともに、そのための大学ガバナンスの充実・強化についても改革の方向性を示しています(参照:第2部 第4章 第1節 1(2))。

図表2-4-5 大学改革実行プランの概要

 また、平成24年8月には、中央教育審議会において、質を伴う学修時間の増加・確保を始点とした大学教育の質的転換を提言した「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」を取りまとめました。現在、中央教育審議会大学分科会では、同答申の提言等を踏まえ、大学教育の更なる充実・発展に向けた審議を行っています(参照:第2部 第4章 第2節 1(1))。

(2)大学の機能の再構築のための大学のガバナンスの充実・強化

 大学が社会の要請に応えてその役割・機能を十分に発揮し続けるためには、各大学の自主的・自律的な改革サイクルを確立することが必要です。このような観点から、設置形態や各大学の機能に応じたガバナンスの強化のための取組を促進しています。具体的には、ここに挙げる「国立大学改革」、「財政基盤の確立とメリハリある資金配分の実施」や、第2節 3で紹介する「大学の質の保証・向上」に関する諸施策などを推進することにより、大学のガバナンスの充実・強化に取り組んでいます。

1.国立大学改革について

 国立大学は、高度な学術研究の推進、目的別人材育成、地域活性化への貢献や高等教育の機会均等の確保といった重要な役割を果たしています。
 平成16年に国立大学が法人化されたことにより、学長のリーダーシップによる戦略的な運営が可能となり、各大学の特色に応じた自主的・自律的な機能強化に向けた取組が進められています。各大学それぞれの個性や強みを活かした具体的な取組として、例えば、山口大学及び鹿児島大学では、二つの大学が持っている教育資源と人材と設備を共用し、新しい獣医学教育カリキュラムを構築し、欧米水準の獣医学教育の実現並びに社会のニーズに機動的に対応できる獣医学教育と研究の実現に向けた共同獣医学部を新たに設置しました。
 このような国立大学の強みや特色を活かした取組を更に加速化させ、国立大学の機能を強化するため、文部科学省では、「国立大学改革強化推進事業」として、学長のトップマネジメントによる組織改革や大学の強みとなる分野への重点的投資等、これまでにない大胆な改革に取り組んでいる国立大学に対して支援を行っています。各大学においては、本事業も活用しつつ積極的に改革に取り組んでおり、例えば、京都大学では、グローバル化に対応した組織改革を目指しており、そのために、100人規模の外国人教員の新規採用及びその配置を契機として、大学全体の組織改革を加速化させようとしています。また、英語による学部専門教育科目の講義や英語による会議の実現等により、グローバル化に対応した教学マネジメントを実現しようとしています。
 また、現下の厳しい経済状況の中で、我が国の経済の成長による富の創出を実現するためには、国立大学が保有する研究成果の活用が極めて重要です。このため、平成24年度補正予算で国立大学に対して出資を行い、産学連携等による実用化のための研究開発の推進を図っています。この取組を通じて、大学の市場破壊的・創造的な研究と、企業が連携して事業化を図ることにより、新しい社会的価値を創出します。
 文部科学省としても、引き続き、国立大学が社会からの期待に応えられるよう、学長のリーダーシップによる思い切った改革を進めていくよう促すなど国立大学の機能強化を図っていきます。

2.財政基盤の確立とメリハリある資金配分の実施

 私立大学は我が国の学部学生全体の約8割を担っており、日本の「大学力」の質・量を支える、重要な役割を果たしています。平成24年度は、このような私学助成の基盤的経費としての基本的性格を踏まえつつ、各私立大学の全学的な教育改革を支援する「私立大学教育研究活性化設備整備事業」を実施したほか、教育・財務情報の公表状況や定員超過の状況などに応じた減額率を強化するなど、ガバナンス強化のためのメリハリある配分を実施しました。

第2節 高等教育の更なる発展に向けて

1 大学教育の質的転換

(1)学士課程教育・短期大学士課程教育

 学士課程教育については、これまでの中央教育審議会の答申を受けた様々な制度改正等により、改革の取組が着実に進んできています。例えば、平成19年の大学設置基準等の改正を受け、ほぼ全ての大学が授業計画(シラバス)の作成や、教育内容等の改善を図るための組織的な研修等(ファカルティ・ディベロップメント)を実施しています。また、平成20年12月の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」で提唱された「学位授与の方針」、「教育課程編成・実施の方針」、「入学者受入れの方針」の策定も、確実に進んできています。
 今後は、第4章 第1節 1(1)でも触れたように、グローバル化の進展等の社会の急激な変化に対応するため、平成24年8月の中央教育審議会答申を踏まえ、各大学等において1.質を伴った学生の学修時間の増加・確保を始点として、教育課程の体系化、組織的な教育の実施、学生の主体的な学びを促すアクティブ・ラーニング等の導入・拡大、学生の学修成果の把握、学修支援環境の整備等に取り組むとともに、2.教員中心の授業科目の編成から組織的・体系的な学位プログラムとしての教育課程への転換などが求められます(図表2-4-6)。

図表2-4-6 新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(平成24年8月28日中央教育審議会答申)

 一方、昭和25年の制度創設以来、特に女性への高等教育の普及や実践的職業教育の場として、大きな役割を果たしている短期大学士課程についても、学士課程教育同様、教育改革の取組は着実に進展してきています。
 短期大学は、地域の身近な高等教育機関として、短期間で、大学としての教養教育やそれを基礎とした専門教育を提供しており、幼稚園教諭や保育士、栄養士などの地域の専門的職業人の養成の面で重要な役割を担うとともに、卒業後には4年制大学への編入学などにより学び続ける道も開かれています。
 こうした様々な役割を果たしている短期大学の在り方について、知識基盤社会、成熟社会の中でその機能をどのように再構築すべきかといった観点から、今後、第7期の中央教育審議会において検討が進められることとされています。
 また、平成20年12月の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」を受け、文部科学省では、学士課程教育等の改革を支援する取組を行っています。この答申で指摘されている事項の一つとして、大学間連携の必要性が挙げられますが、これを推進するため、24年度においては、主に次のような取組を行っています。

(ア)大学間連携共同教育推進事業
 国公私立の設置形態を超え、地域や分野に応じて大学間が相互に連携し、社会の要請に応える共同の教育・質保証システムの構築を行う取組の中から、優れた取組を選定し、重点的な財政支援を行うことにより、教育の質の保証と向上、強みを活かした機能別分化を推進することを目的とした事業。平成24年度に49件の取組を選定。

(イ)教育関係共同利用拠点の認定
 各大学が有する教育関連施設等の共同利用を促進し、大学の人的・物的資源の有効活用を推進するため、大学教育の充実に特に資すると認められる練習船、演習林等の教育関連施設等を教育関係共同利用拠点として文部科学大臣が認定する制度。平成24年度は、10件の拠点を新たに認定(平成24年度までの合計:31拠点)。

(2)大学院教育

 グローバル化や知識基盤社会が進展し、国籍を問わず優れた人材の獲得競争が激化する中、大学と社会の連携による多様な要請への対応、学生が将来への見通しを持って切磋琢磨できる環境を一層重視し、国内外の社会の様々な分野で質の保証された大学院修了者が活躍できるよう、「グローバル化社会の大学院教育」(平成23年1月31日中央教育審議会答申)を踏まえ策定した「第2次大学院教育振興施策要綱」(平成23年8月5日文部科学大臣決定)に基づき、以下の施策等を通じて大学院教育の一層の充実・強化を図っています。

1.大学院教育の抜本的強化

(ア)博士課程教育リーディングプログラム(平成23年度から実施)
 俯瞰力と独創力を備え、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため、国内外の第一級の教員・学生を結集し、産・学・官の参画を得つつ、専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した学位プログラムを構築・展開する大学院教育の抜本的改革を支援しており、平成24年度までに44件を採択しました。

(イ)組織的な大学院教育改革推進プログラム(平成19年度から実施)
 産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を養成するため、明確な人材養成目的に沿った組織的・体系的なカリキュラムの構築や、コースワークの改善など大学院教育の充実・強化を図るための優れた取組を支援しており、21年度までに91大学、221件を採択しました。
 また、平成24年度には、21年度採択29件の事後評価を実施しました。

2.卓越した教育研究拠点の形成

(ア)グローバルCOEプログラム(平成19年度から実施)
 国際的に第一級の力量を持つ研究者等を養成し、国際的に優れた教育研究拠点を形成する取組を支援しており、平成21年度までに41大学140拠点を採択しました。
 また、平成24度には、19年度採択63件の事後評価を実施しました。

(イ)卓越した大学院拠点形成支援補助金(平成24年度より実施)
 卓越した大学院教育研究拠点に対し、博士課程学生が研究に専念するために必要な経費を支援することにより、優秀な学生を惹きつけ、世界で活躍できる研究者を輩出する環境づくりを推進しており、24年度は24大学を支援しました。

2 大学入学者選抜をはじめとする高大接続の改善

(1)各大学の入学者選抜

 これまで各大学では、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)に基づき、大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等を多面的に評価するため、面接・小論文などの活用による評価尺度の多元化や、アドミッション・オフィス(AO)入試や推薦入試の導入・拡大といった入試方法の多様化を進めてきました。一方で、AO入試や推薦入試は、外形的・客観的基準に乏しい「学力不問」の入試方法になっているのではないかとの懸念があることから、どのような入試方法でも学力検査や調査書の利用など学力把握措置を講ずることとするなど、入試方法の改善を促しています(毎年通知を発出(平成24年度は5月31日に発出))。

(2)高大接続の改善

 いわゆる大学全入時代への移行等による大学入試の選抜機能の低下により、高等学校での学力状況の把握や大学教育での学生の質の評価の指標など、本来、各学校段階において果たされるべき機能を引き続き大学入学者選抜に求めることが困難になっています。
 これらの課題を解消するためには、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育の在り方を一体としてとらえ、それぞれが本来の機能を果たせるよう、高等学校と大学の円滑な接続と連携の下で改善を図っていくことが必要です。こうした認識の下、中央教育審議会では、平成24年8月から高大接続特別部会を設置し、有識者の意見を精力的に聴取しつつ、大学入学者選抜をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について審議を行っています。

(3)大学入試センター試験

 大学入試センター試験は、大学入学志願者の高等学校段階における基礎的な学習の達成度を判定するため、各大学が大学入試センターと共同して平成2年度入試より実施している試験です。
 平成24年度大学入試センター試験(平成24年1月実施)では、問題冊子の配付ミス等により多くの受験生の受験環境に影響を与えたことから、文部科学省において検証委員会を設置し、トラブルの検証と再発防止のための提言を取りまとめ(平成25年4月)、大学入試センター及び参加大学に対し周知徹底を図りました。その結果、25年度試験では、同様のトラブルは発生しませんでしたが、適切に監督業務を行っていれば防止することができたトラブル等が発生したことから、引き続き実施方法等の点検、見直しを促すこととしています。

3 大学の質の保証・向上

(1)設置認可制度

 大学の設置や組織改編は、大学の質の国際的な通用性の確保や学生保護のため、設置審査などの所定の手続を経て行われます。
 文部科学大臣は大学の設置などの認可申請を受けると、申請内容が大学設置基準などの法令に適合しているかどうかについて、学識経験者などからなる大学設置・学校法人審議会に諮問し、同審議会で教学面や財政計画・管理運営面を審査します。審議会による審査を経た後、文部科学大臣が認可を行います。
 他方、大学の組織改編を機動的に行うことができるよう、文部科学省では、平成15年度から、授与する学位の種類と分野を変更しない学部・学科などについて、原則として届出による設置を可能とするなど、設置認可制度の大幅な弾力化を進めました。その結果、学問の進展や社会の変化に対応した機動的な組織編成が可能となりました。
 こうした組織改編が容易になった一方で、一部の大学から、準備が不足していたり大学の設置に関する基本的理解を欠いていたりする設置申請や届出がなされた結果、設置認可申請の取下げや審査の継続(保留)、不認可となった件数が以前と比べ増加するとともに、当初の計画策定が甘かったため、開設後数年もたたないうちに再び届出により新たな学部などに転換するといった事例も出てきています。
 文部科学省では、新しく設置された大学などが最初に卒業生を送り出す年度(完成年度)まで、設置計画履行状況調査(アフターケア)として、毎年授業科目の開設状況や教員組織の整備状況などの報告を求め、書面、面接または実地により調査を行っています。その結果、特に課題が見られる大学に対しては、各大学の教育水準の維持・向上に資するよう、留意事項を付したり、助言を行ったりして、大学に対して主体的な改善を促しています。
 大学設置認可をめぐっては、田中文部科学大臣(当時)が、平成24年11月2日の記者会見において、認可の基準や大学設置・学校法人審議会の在り方など、見直すべき課題がある中で、大学の新設を認可することはできないと述べましたが、同月7日の衆議院文部科学委員会における審議等を踏まえ、10月末の大学設置・学校法人審議会から出された答申のとおり、新設3大学を含む設置認可を11月8日に行いました。大学設置認可の在り方については、新たに「大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会」を開催して検討を行い、25年2月に、大学の質を高める観点からの設置認可制度の見直しの方向性について、報告がまとめられました。これを受けて文部科学省では、審査基準に学生確保の見通しに関する事項を加えるなどの告示改正を行ったところであり、各大学においては、入学する学生のことを第一に考え、十分に将来の見通しが立てられた大学の設置の認可申請や届出をすることがこれまで以上に求められています。
 文部科学省としては、上記検討会の報告も踏まえ、今後も大学の質保証の観点から必要な見直しを行っていくこととしています。

(2)認証評価制度

 平成16年度から、学校教育法第109条に基づき、全ての大学、短期大学、高等専門学校は、7年以内に1回(専門職大学院は5年以内に1回)、文部科学大臣の認証を受けた評価機関(認証評価機関)による第三者評価(認証評価)を受けることが義務付けられています。これは、設置後の大学等の組織運営や教育研究活動等の状況を定期的に事後確認する体制を整備する観点から導入されたものです。認証評価制度は、文部科学省令において大枠が定められており、国による大学等の教育研究の質の担保を図っています。一方で、1.各認証評価機関が定める評価基準に従って実施されること、2.大学等が自ら認証評価機関を選択して評価を受けることなど、大学等の自主性・自律性や教育研究の特性に配慮した評価がなされる仕組みになっています。
 評価の方法は各評価機関により異なりますが、評価結果に応じて再評価の受審や要改善事項に対する改善報告書の提出を求めるなど、各評価機関において各大学等の改善を促す仕組みがとられています。
 平成24年度末までに延べ、大学818大学、短期大学394大学、高等専門学校80校、法科大学院98専攻、経営系専門職大学院39専攻、その他の専門職大学院43専攻の認証評価が行われ、その結果が各認証評価機関(平成25年3月現在13機関)のウェブサイトで公表されています。

図表2-4-7 認証評価機関一覧

(3)情報公表の推進

 大学は公的な教育機関として、その活動や取組について、社会への説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上することが求められています。このため、教育情報の一層の公表を促進する観点から、平成23年4月より改正学校教育法施行規則が施行され、全ての大学が公表すべき情報を法令上明確化しました。加えて、我が国の大学の教育情報の活用・公表を一層促進するため、文部科学省「大学における教育情報の活用支援と公表の促進に関する協力者会議」の中間まとめ(平成23年8月)において、データベースを用いた大学の教育情報の活用・公表のための共通的な仕組み(大学ポートレート(仮称))の整備が提言されました。これを踏まえ、大学関係者が参画する大学ポートレート(仮称)準備委員会において26年度中の実施に向け検討が行われています。

4 地域・社会に開かれた高等教育

(1)地域社会の核としての大学

 大学は、様々な人材や、情報・技術が集まる地域コミュニティの中核的存在(COC、Center of Community)です。多くの大学が、その教育研究活動の一環として、様々な形で地域や社会の課題解決に取り組んでおり、例えば、

  1. まちづくりや商店街活性化など、大学や学生が参加した地域活性化策
  2. 防災人材のスキルアップなど、地域を担う人材の育成や社会人の学び直し支援
  3. 金属加工の技術開発支援など、地域の企業等のニーズに応じた産学官連携の取組

 などの活動を通じて、地域の再生・活性化に大きく貢献しています。
 平成24年6月に発表された大学改革実行プランの中でも、大学の地域の課題解決に取り組む意義や効果について強調しており、25年度以降、地域の課題解決につながる大学の特に優れた教育研究活動に対して支援していきます。

(2)社会人の学び直し

 「教育振興基本計画」(平成20年7月閣議決定)においては、誰もが生涯のいつでも必要な時に学び、また、何度でも新たな挑戦を行うことができる社会の実現に向けて、大学等において社会人をはじめとする幅広い学習者の要請に対応するための取組が求められています。このため、文部科学省では、社会人の受入れを一層促進できるよう以下のように制度の弾力化等に取り組んできており、職業を有しながら大学で学ぶことを希望する人々の学習機会が拡大しています。
 また、平成19年度には学校教育法を改正し、大学の学生以外の者に大学等で高度かつ専門的な内容を体系的に学べる機会を提供するとともに大学等の積極的な社会貢献を促進するため、大学等が社会人など学生以外の者を対象とした一定のまとまりのある学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し、その修了者に対して履修証明書(サーティフィケート)を交付できる制度(履修証明制度)を創設しました。現在、離職中の保育士らが新しい能力を身に付けて現場に復帰できるよう支援する「HPS養成教育プログラム」を開設した静岡県立大学短期大学部や、国際ビジネス法務に関し、最新の海外の判例の購読や国際ビジネス紛争を法的に解決する知見の修得を目指す「国際ビジネス法務塾―国際ビジネス法・ビジネス英語・交渉力のスキルアップのために―」を開設した帝塚山大学などをはじめ、様々な大学等が積極的に履修証明プログラムの開設・実施に取り組んでおり、21年度末現在、72大学で130プログラムが実施されています。

第3節 グローバル人材育成と大学の国際化

1 双方向の留学生交流の推進

 グローバル化が加速する国際社会の中で、我が国の大学の国際化の推進や、世界に雄飛する人材の育成等を図るため、平成20年7月に関係省庁(文部科学省、外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)において、留学生受入れ拡大のための方策をまとめた「留学生30万人計画」骨子を策定しました。これに基づき、留学の動機付けから大学等や社会での受入れ、就職など卒業・修了後の進路に至るまで体系的に関係省庁で連携して、外国人留学生の受入れを推進しています。一方、海外の大学等で学ぶ日本人学生の数は近年減少傾向にあるため、諸外国から我が国への受入れのみならず、今後は学生等の送り出しについても、より積極的に促進する必要があります。
 外国人留学生の受入れについては、「日本留学フェア」、「日本留学セミナー」などによる情報発信や渡航前の入学許可を得ることを可能とした「日本留学試験」の実施等により、留学生の受入れ支援体制の充実を図るとともに、国費外国人留学生制度や私費外国人留学生に対する援助により、留学生が安定した生活の中で勉学に専念できるよう環境の整備に努めています。
 日本人の海外留学については、国費による日本人学生の海外派遣制度を設けており、平成21年度より日本人の学生などを最先端の教育研究活動を行っている海外の大学院に派遣し、学位を取得させることにより、我が国のグローバル化や国際競争力の強化を促進する「留学生交流支援制度(長期派遣)」を実施しております。また、海外留学の大半を占める私費留学については、日本学生支援機構を通じて、留学情報の収集・整理、「海外留学説明会」を開催するなど、留学希望者に対し必要な情報を提供しています。
 さらに、大学間交流協定などに基づき、諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生や諸外国の大学へ派遣される日本人学生を支援する日本学生支援機構の奨学金制度として、平成21年度から「留学生交流支援制度(3か月以上1年以内の短期受入れ・短期派遣)」を設けています。
 23年度からの取組として、3か月未満の留学生の短期受入れ、日本人学生の海外派遣、いわゆるショートステイ・ショートビジットへの支援を行うなど、双方向の留学生交流の推進を図っています。

2 大学の国際化

 日々激しく変化を遂げ、グローバル化が不可逆的に加速する現代社会においては、国際的に活躍できるグローバル人材の育成が喫緊の課題となっています。
 そのような中、近年、日本人の海外留学は減少傾向にあります。文部科学省では、この傾向を反転させ、また、大学教育を通じて世界で活躍できる人材を育成できるよう、平成24年度より「グローバル人材育成推進事業」を実施し、42大学を採択しました。本事業では、大学による留学促進の取組やグローバル人材を育成するための組織的な教育体制の整備に対し支援を行っています。
 他方、国内の大学において、異なる文化的背景を持つ学生や教員が切磋琢磨できる環境を整備することもグローバル人材の育成に有効です。このため、「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業」において、英語で学位が取得可能なコースの開設など、国際化の拠点として留学生受入れのための総合的な体制整備を図る13大学を支援しています。
 また、海外の大学との教育連携は、国内だけでは実施できない質の高い教育の提供に資するとともに、我が国の大学教育の国際通用性の向上にも貢献します。このため、「大学の世界展開力強化事業」として、海外大学との単位互換やダブル・ディグリー・プログラムの実施など、質の高い協働教育プログラムを構築する大学への支援を行っています。平成24年度には、同事業において、23年度までの支援対象である東アジアや米国等の大学との教育連携に加え、ASEAN諸国の大学との協働教育プログラムの開発に取り組む大学への支援を開始しました。
 学生の流動性が高まり、教育の国際連携が拡大する中で、単位互換や大学間の教育連携等に関する共通枠組みの形成に向けた国際的な取組が活発化しています。我が国がより多くの優秀な学生を確保するためには、このような取組において主導的な役割を発揮していくことが重要です。
 日中韓の3国においては、3国間の大学間交流を拡大する「キャンパス・アジア」構想を推進しています。平成24年度には、23年11月に3国共同で採択した10件のパイロットプログラムを対象に、プログラムの実施状況を管理・分析するための検証活動を開始しました。
 さらに、東アジアにおける学生交流の促進に一層貢献するため、我が国は、平成24年7月に開催された第1回ASEAN+3教育大臣会合において、我が国主導によるアジア地域の質保証センターの設置、及び「ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループ」の設置を提案しました。今後は、これらの提案の実現に向けて関係国と協力しつつ詳細の検討を進めていくこととしています。

第4節 専門人材の育成

1 医療人の養成

 医療は生活に欠かせないものであり、国民の生命と健康な生活を守る医療人材の養成に対する国民の期待が高まっています。特に、今後ますます進行する高齢化に伴う疾病構造の変化、医療ニーズの変化に対応して、総合的な診療能力を有する医師の養成や、地域の医療・保健・福祉などの関係者が相互に連携協力し、チームとして医療を実施していく能力を培うことなどが必要です。また、臨床研究などによって医薬品や医療機器の開発などを進め、世界最高水準の医療を国民に提供するとともに、我が国の成長牽引の基盤となる人材養成が重要となっています。これらを背景として、文部科学省としても、国民の期待に応える「良き医療人」の養成を担う各大学と協力しながら、様々な取組を進めています。

(1)医学教育の改善・充実

1.医学教育の質的改善

 医師には、人間性豊かで高度な臨床能力を持ち、患者中心の医療を実践できる医療人としての養成に大きな期待が寄せられています。各大学においては、医学生が卒業までに最低限学ぶべき教育内容を精選して作成された「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づきカリキュラム改革を行うなど、個々の教育理念に応じた特色ある取組が進められています。
 医学教育の更なる改善に向けて、平成22年度に改訂された「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の周知を図り、特に医学生の臨床能力の向上の観点から診療参加型臨床実習の充実に向けた取組を促しています。今後は、国際標準の医学教育認証制度の基盤の構築を促進し、国際的な水準の医師養成に引き続き取り組むとともに、新たに、総合的な診療能力を有する医師の養成や、メディカル・イノベーションを担う医療人の養成に取り組む大学の優れた取組を支援していきます。

2.医師確保への対応

 どこに住んでいても、その人にとって適切な医療サービスを受けることができるよう、地域の医師確保は重要な課題です。このため、平成24年9月に総合的な医師確保対策「地域の医師確保対策2012」を厚生労働省と共同で策定し、地域医療を担う意欲と能力を持つ医師の養成・確保や、地域医療への貢献と医師としてのキャリア形成を両立できる仕組みの構築を図るなど、医師の地域偏在の解消に取り組んでいます。
 また、平成20年度より医学部入学定員の増員を行っており、24年度には医学部入学定員の上限を引き上げる制度改正を行いました。25年度医学部入学定員については、24年度同様、都道府県が地域医療に将来従事することを返還免除の条件とする奨学金を活用し、地域医療を担う医師の養成・確保に一貫して取り組む定員増などを認めることとしました。この結果、全国で更に50人が増加し、総計9,041人の定員となっています(19年度比で1,416人増)。

(2)歯学教育の改善・充実

 歯学教育に関しては、確かな臨床能力を備えた歯科医師を養成するため、平成21年1月、「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」において、ア)歯科医師として必要な臨床能力の確保、イ)優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施、ウ)歯科医師の社会的需要を見据えた優れた入学者の確保、エ)未来の歯科医療を拓く研究者の養成の観点からなる第1次報告が取りまとめられました。この第1次報告のフォローアップを実施するため、22年9月から「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議フォローアップ小委員会」を開催し、各大学の調査を実施しました。23年5月及び24年12月に歯学教育の改善状況についてのフォローアップ調査の結果を公表し、各大学の歯学教育の改善に向けた具体的な取組を促進しています。今後は、引き続き、歯学生の診療参加型臨床実習の充実や歯学教育認証評価の導入等に取り組んでいきます。

(3)薬学教育の改善・充実

 医療技術の高度化、医薬分業の進展などに伴い、医療の担い手として活躍する薬剤師や薬学の研究者など、多様な分野に進む人材が求められています。こうした中、平成18年4月から薬剤師養成については6年制の教育となっています。
 各大学においては、5年次からの実務実習(病院・薬局それぞれにおいて約11週間)の円滑な実施のため、実務実習事前学習や、基本的な技能及び態度を客観的に評価する薬学共用試験(CBT(客観的知識試験)、OSCE(客観的臨床能力試験))の充実、実習施設との緊密な連携による実習指導体制の充実などの取組が行われています。また、24年度より全大学を対象とした分野別第三者評価が始まり、教育の質保証の取組もなされています。
 また、薬学教育を更に充実させていくため、「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」を開催し、平成23年12月には、「新制度の『大学院4年制課程』における研究・教育などの状況に関する自己点検・評価の提言」が取りまとめられました。学部教育については、大学の関係者などから成る専門の委員会を設置して、「薬学教育モデル・コアカリキュラム」「実務実習モデル・コアカリキュラム」の改訂及び質の高い入学者の確保についての検討を行っています。

薬学共用試験OSCE(客観的臨床能力試験)のシミュレーション風景の写真(薬学共用試験センター提供)
薬学共用試験OSCE(客観的臨床能力試験)のシミュレーション風景(薬学共用試験センター提供)

(4)看護師等医療技術者教育の改善・充実

 看護師など医療技術者の養成に関しては、質の高い医療技術者、教育者、研究者の養成を目的とした大学・大学院が増えており、大学が養成する人材に期待が寄せられています。
 一方、看護系大学数の急増により、教育の質の確保が重要になっています。このため、平成21年3月から大学における看護系人材養成の在り方について有識者による検討を行い、23年3月には、学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標の策定などを内容とする最終報告が取りまとめられました。24年度からは、各大学において最終報告を参照して新たに編成したカリキュラムにより学士課程における看護教育を推進するなど、引き続き大学・大学院における看護学教育の質保証体制の改善に向けて取り組んでいます。

(5)がん医療への取組

 がんは、我が国の死亡率第1位の疾患である一方で、放射線療法や化学療法、緩和医療等を行える専門家が全国的に少なく、その育成が急務とされています。また、近年の高度化したがん医療は、医師だけでなく、高度ながん医療に習熟した看護師、薬剤師、その他の医療技術者などが参画し、チームとして機能することが何より重要です。
 そのため、平成19年度から「がんプロフェッショナル養成プラン」を、24年度からは後継事業の「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」を実施し、全国で100大学が参加して優れたがん専門医療人の養成に取り組んでいます。

(6)大学病院の充実

 大学附属病院は、学生・研修医などの教育や先端的な臨床研究を行うとともに、高度医療や採算性が低い医療など、診療面でも重要な役割を果たしています。
 平成16年度から国立大学は法人化され、その附属病院に対して、自主・自律的な運営による効率的な経営を求めるとともに、教育・研究・診療機能の維持・充実の観点から運営費交付金等の財政措置を行っています。平成24年度予算においては、地域医療における高度医療拠点としての機能を強化するため、国立大学附属病院の債務負担軽減策の拡充や、治験や先進医療技術に関する研究などに積極的に取り組む国立大学附属病院を支援する経費を措置しています。
 また、深刻な医師不足問題、周産期などの医療提供体制の構築、医療の高度化等の課題に対応するために、国公私立大学を通じて、大学病院における医療専門職(専門医・看護師など)を養成する教育体制の充実に取り組んでいます。
 さらに、地域における医師不足により、大学病院に患者が集中し、大学病院に勤務する医師は過酷な勤務を余儀なくされ、教育や研究に従事する時間が減少しています。そこで、医師事務作業補助者の雇用により関係職種間の役割分担を推進し、医師の業務負担軽減を図る取組を進めています。

名古屋大学看護部と医学部保健学科が連携して開発した教育プログラム「フィジカルアセスメント研修」の様子の写真
名古屋大学看護部と医学部保健学科が連携して開発した教育プログラム「フィジカルアセスメント研修」の様子(写真提供:名古屋大学病院看護部)

2 専門職大学院

 社会が多様に発展し、国際的競争も激しくなる中で、多様な経験や国際的視野を持ち、高度で専門的な職業能力を持つ人材が多く必要とされるようになってきています。このような社会のニーズに対応するため、高度専門職業人の養成に目的を特化し、理論と実務を架橋する実践的な教育を展開する専門職大学院を平成15年に創設しました。
 平成24年5月現在、法曹養成(法科大学院)、教員養成(教職大学院)、会計、経営管理、MOT(技術経営)、公共政策などの多様な分野で計185専攻が開設され、それぞれの個性・特色に応じた教育を実施しています。

(1)法科大学院

 21世紀の司法を支えるにふさわしい、質・量ともに豊かな法曹を養成するため、「プロセス」としての法曹養成制度の中核的機関として、平成16年度に法科大学院が創設されました。これまで、法曹をはじめ民間企業や公務部門など社会の様々な分野にその修了者を送り出しています。
 一方で、司法試験合格状況等において、法科大学院間の差の拡大や、法学未修者と法学既修者間の差の拡大といった課題が顕在化しており、これらの課題への速やかな対応が必要です。文部科学省では、平成24年7月に取りまとめられた中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会の提言等を踏まえ、1.法科大学院教育の成果の積極的な発信、2.課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の適正化、教育体制の見直し等の取組の加速、3.法学未修者教育の充実、4.認証評価結果の積極的な活用や教員の資質能力向上の取組の充実など法科大学院教育の質の改善等の促進といった、法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策に取り組んでいます。
 なお、現在、政府に設置された法曹養成制度検討会議において、法科大学院を含めた法曹養成制度全体の在り方について検討が行われています。

(2)教職大学院

 教職大学院は、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成と、確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えたスクールリーダーの養成を目指し、平成19年度に制度が創設され、全国25大学で設置されています。
 学校・教育委員会との連携・協働により、教職経験のある実務家教員の配置や、学校現場における長期の実習など、学校や教育委員会のニーズに即した体系的な教育課程を特色としており、新たな学びを展開できる実践的な指導力を養成しています。教育委員会による現職教員の教職大学院への派遣数も増加傾向にあり、平成24年3月修了者のうち、学部新卒学生の教員就職率が93%と高いなど、着実な成果を上げています。一方、教職大学院は現在全国で25大学の設置にとどまっています。今後の教員の資質能力向上のために、いかに教職大学院の発展等により、修士レベルの課程の質と量の充実を図っていくかが今後の課題です。

3 高等専門学校

 高等専門学校は、中学校卒業後という早い年齢段階からの、実験・実習を重視した、5年間一貫の専門的・実践的な技術教育を特徴とする高等教育機関として、昭和37年に第1期校が設立され、平成24年度に創設50周年を迎えました。この間、産業界のニーズに応える高度な専門知識と実践力を身に付けた優秀な技術者を、多数社会へ輩出してきました。
 高等専門学校の卒業生は特に専門知識やコンピューターの活用能力、誠実さなど、現場技術者としての資質について、産業界から高い評価を受けており、最近の平均求人倍率は20倍前後に達し、例年100%近い就職率となっています。
 卒業後には、大学3年次への編入学制度等による進学の道が開かれており、平成24年3月の高等専門学校卒業者のうち約39.1%に当たる3,970人が、専攻科や長岡、豊橋の技術科学大学をはじめとする国・公・私立大学等に進学しています。
 ほとんどの高等専門学校には専攻科が設置されています。大学評価・学位授与機構が認定した専攻科の修了者は、一定要件を満たせば、同機構から学士の学位を授与されることとなっており、高等専門学校の専攻科は全て同機構の認定を受けています。また、専攻科修了後の大学院進学率も最近では約31%となっています。
 独立行政法人国立高等専門学校機構においては、国際的に活躍できる実践的技術者を育成する観点から、民間企業と協力し、企業の海外事務所において就業体験等を行っています。加えて、教室の学習と企業でのインターンシップとを繰り返し行うコーオプ教育によってキャリア教育・職業教育・国際交流を実践しています。

4 専門学校の現状と最近の施策

(1)専門学校の現状

 専修学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育、専門的な技術教育等を行う教育機関として発展してきました。特に、高等学校卒業程度を入学対象とする専門課程(専門学校)の生徒数は、平成24年5月現在約58万人となり、新規高等学校卒業者の約16.8%が進学しており、大学への進学(約47.6%)に次ぐ割合となっています。専門学校は、我が国の高等教育の多様化・個性化を図る上でも重要な役割を果たしています。

(2)最近の施策

 文部科学省では、専修学校教育の質の保証・向上を図るため「専修学校の質保証・向上に関する調査研究協力者会議」において、専修学校における学校評価ガイドラインの策定等に向けた検討を行い、平成25年3月に「専修学校における学校評価ガイドライン」を策定しました。
 また、我が国の経済社会を支える厚みのある中間層として、産業構造の変化やグローバル化等に対応した新たな知識・技術・技能を備え中核的な役割を果たす専門人材を質的・量的に確保するため、専修学校等を中心とした産学官コンソーシアムを整備し、1.産業界等のニーズを踏まえた人材養成策の策定、2.社会人等が実践的な職業能力を向上するための新たな学習システムの開発(モデル・カリキュラム基準や達成度評価の実証等)、3.各分野における専門的・実践的な教育の質の保証・向上のための仕組みづくり等を実施しています。

第5節 学生に対する経済的支援の充実と学生の就業力の向上

1 学生に対する経済的支援の充実

(1)学生の経済状況について

 家庭の経済状況にかかわらず、誰もが安心して教育を受けることのできる環境を整えることが重要ですが、教育を受ける際の費用を、誰がどのように負担するかが大きな問題となります。まず、各家庭で負担している教育費の現状を見ていきます。
 教育費支出が、実際に家計にとってどれほどの負担になっているのかを図示したものが図表2-4-8です。子供二人が私立大学に通っている場合には、勤労世帯の平均可処分所得の1/2近くを教育費が占めています。家計が負担する教育費が、大学段階で大きなものとなっていることが示されています。

図表2-4-8 家計に占める教育費負担(国公私平均)

(2)日本学生支援機構の奨学金事業

1.奨学金事業の現状

 日本学生支援機構は、経済的理由により修学が困難な優れた学生に対し奨学金を貸与するとともに、卒業後の返還金の回収を行っています。平成24年度予算においては、貸与人員で約134万人(全学生のおおむね3人に1人)、事業費総額で約1兆1,263億円となっています。

図表2-4-9 奨学金事業費総額

 この奨学金事業には、無利子奨学金(第一種奨学金)と有利子奨学金(第二種奨学金)の2種類があり、有利子奨学金は、利子が課されるものですが、在学中は奨学金の返還が猶予され、その間は利子が課されず、卒業後、年利3%を上限とした低利子(平成25年3月現在の利率固定方式では年1.08%)での貸与となっています。
 また、家計支持者の失業や被災などによって家計が急変し、緊急に奨学金を必要とする学生に対応するため、「緊急採用奨学金(無利子)」、「応急採用奨学金(有利子)」の申込みを年間を通じて随時受け付けています。
 さらに平成24年度に、家計の厳しい学生等(給与所得世帯の年収300万円以下相当)の将来の返済の不安を軽減し、安心して進学等できるようにするため、そのような学生等を対象に、卒業後に一定の収入(年収300万円)を得るまでの間、返済を猶予する「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を新設しています。
 なお、高等学校及び専修学校高等課程の生徒に対する奨学金事業については、平成17年度の入学者より、都道府県に移管されており、各都道府県において確実に事業が実施されるよう、高等学校等奨学金事業交付金(平成24年度予算では約200億円)を措置しています。

2.学生の学ぶ意欲に応える事業の充実

 さらに平成25年度予算においては、奨学金(無利子・有利子)の貸与人員を大幅に増員(貸与人員:対24年度比8万8,000人増の144万3,000人※)し、「予約採用」枠を拡大するとともに、24年度に新設した、「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を充実させるため、奨学金の返還額が所得に連動する柔軟な「所得連動返済型奨学金制度」の構築に向けた準備を行うこととしています。
 ※平成24年度の貸与実績見込みを踏まえた見直し後の貸与人員(135万5千人)と比較

3.返還金回収業務の充実

 日本学生支援機構の奨学金事業は、卒業した学生からの返還金を奨学金の原資として活用する貸与制により実施しており、現在、事業費総額の約5割が返還金で賄われているため、返還金の確実な回収が、奨学金事業を円滑に実施する上でますます重要となっています。このため、日本学生支援機構では、各学校の協力を得て、学生の返還意識を高めるとともに、回収業務の民間委託、返還相談体制の更なる充実などにより、返還金の適切な回収に取り組んでいます。
 一方、災害、病気、経済困難などにより返還が困難な方に対しては、毎月の返還の負担を軽減する減額返還制度(平成23年1月から導入)や、返還期限を猶予する制度を設けて対応しています。

(3)大学における授業料減免事業の支援

 文部科学省では、経済的理由などにより、授業料等の納付が困難である者などを対象に、修学継続を容易にし、教育を受ける機会を確保するため、国立大学や私立大学等が実施する授業料減免措置等に対し、国立大学法人運営費交付金の算定や、私立大学等経常費補助金の特別補助を通じて支援しています。また、公立大学については、地方財政措置を通じて支援しています。
 現在、全ての国立大学において授業料減免制度を設けており、平成23年度の授業料免除実施額は約248億円、免除人数は約13万9,000人(延べ数)となっています。公立大学では、現在、全ての大学が授業料減免制度を設けており、平成23年度実績で約1万800人に対して約36億円の減免措置がなされています。また、私立大学等が実施している授業料減免事業に対しては、平成23年度に51億円、約3万2,000人分を補助しています。

(4)奨学団体等の奨学金事業

 我が国の奨学金事業は、日本学生支援機構のほかに特例民法法人や地方公共団体、大学や民間会社などによって、多様な形態で幅広く実施されています。平成22年度の日本学生支援機構の調査によると、約2,600の奨学団体等が、約15万5,000人の奨学生に対し、総額で約616億円を支給しています。
 これらの奨学団体等は、それぞれの設立目的に基づいて特色ある事業を行っており、教育の機会均等と優れた人材の育成の観点から一層の充実が図られることが期待されます。このような一定の奨学団体に対する寄附金については、現在、税制上の優遇措置が講じられています。

(5)大学院学生の経済的支援の拡充

 大学院学生に対する経済的支援として、文部科学省では、卓越した大学院拠点形成支援補助金等を通じて、ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の充実を図る取組を行っています。

※注釈
 TA:優秀な大学院学生に対し、教育的配慮の下に、学部学生等に対するチュータリング(助言)や実験・実習・演習等の教育補助業務を行わせ、大学院学生への教育訓練の機会を提供するとともに、これに対する手当の支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。
 RA:大学等が行う研究プロジェクト等に、教育的配慮の下に、大学院学生等を研究補助者として参画させ、研究遂行能力の育成、研究体制の充実を図るとともに、これに対する手当の支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。

2 学生の就職活動支援及びキャリア教育職業教育の充実

(1)学生の就職活動

1.就職率の動向

 文部科学省と厚生労働省が共同で実施した就職状況調査によると、平成23年度大学等卒業者の就職率は次表のとおりです。

図表2-4-10 平成23年度大学等卒業者の就職状況(平成24年4月1日現在)

 平成20年度以降、就職率は3年続けて下落しましたが、23年度は若干改善の兆しが見えてきています(図表2-4-11)。また、25年3月大学等卒業予定者の就職内定率(2月1日現在)は82.4%(昨年同期比2.2ポイント増)と、2年続けて上昇しています。

図表2-4-11 就職率の推移

2.秩序ある就職・採用活動への取組

 平成25年度(26年3月)以降の卒業予定の学生の就職・採用活動については、24年度と同様に、大学側(国公私立大学などの代表者で構成される「就職問題懇談会」)が「大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について」の申合せを行い、企業側((一社)日本経済団体連合会)が大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の「採用選考に関する企業の倫理憲章」を定め、双方がそれぞれを尊重する形で行われています(図表2-4-12)。

図表2-4-1 2「申合せ」及び「倫理憲章」

 学生の就職・採用活動については、平成9年度(10年3月)卒業・修了者から、大学側の申合せと企業側の倫理憲章の相互尊重という形で行われていますが、当時の倫理憲章では、広報活動開始時期については明記されておらず、最近の就職活動は、慣例的に卒業・修了前年度の10月1日より行われるようになり、就職活動の過熱化が問題となっていました。これを見直すべく、大学側と企業側が協議し、23年3月の倫理憲章改定により、24年度(25年3月)卒業・修了者より、広報活動の開始時期を2か月遅らせ、卒業・修了前年度の12月1日以降開始としました。
 しかしながら、依然として授業や試験などの学事日程と重複することなどから、大学側は、広報活動は卒業・修了前年度の3月以降開始、採用選考活動は卒業・修了年度の夏季休暇以降開始とすることを要請しています。また、各経済団体においても、就職・採用活動時期の見直しを提言しています。
 こうした状況を踏まえ、平成25年4月19日に安倍内閣総理大臣より経済団体に対し、27年度卒業・修了予定者から、広報活動の開始時期を卒業・修了前年度の3月に、採用選考活動の開始時期を卒業・修了年度の8月に見直すよう要請し、経済団体からは、前向きに協力するとの回答をいただきました。
 また、平成25年4月22日に下村文部科学大臣より大学等の関係団体に対し、国民や社会の期待に応える人材を育成するため、大学改革や大学教育の質的転換に積極的に取り組むよう要請しました。
 文部科学省としては、今回の就職活動時期の見直しが円滑に進められ、その趣旨に沿った大学教育の充実が図られるよう取組を進めてまいります。

(2)学生の就職支援

 学生の厳しい雇用情勢を受け、文部科学省では、関係省庁と連携しつつ、大学等の就職相談員とハローワークのジョブサポーターとの連携の促進などによる大学等における就職支援体制の強化を行っています。
 さらに、政府全体としては、(一社)日本経済団体連合会などの経済団体・業界団体等に対して、文部科学、厚生労働、経済産業の3大臣の連名で、新規学校卒業者等の採用枠の拡大、卒業後3年以内の既卒者の新卒枠での応募受付、通年採用の拡大、卒業から就職までの間に多様な経験を積むための猶予期間(GAPYEAR)への配慮などに関する要請を行うなど、大学等卒業予定者の支援に取り組んでいます。

(3)学生の社会的・職業的自立への支援

 学生の資質能力に対する社会からの要請や、学生の多様化に伴う卒業後の職業生活等への移行支援の必要性が高まっていることから、大学等が教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に関する指導等に取り組む体制を整えることについて、平成22年2月に大学設置基準が改正され、23年4月から全ての大学で取り組まれることとなりました。これを踏まえ、文部科学省では、各大学が教育課程内外にわたり就業力の育成等を目指す取組などを総合的に支援することとしています。
 また、文部科学省においては、平成25年2月から「協力者会議」を開催し、大学等におけるインターンシップの実施実態の把握と検証、キャリア教育・職業教育におけるインターンシップの位置付けの明確化、インターンシップでの質的・量的充実に向けた取組など、インターンシップの更なる充実に向けた課題の整理と今後の推進方策について、検討することとしています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成25年10月 --