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第1章 東日本大震災からの復旧・復興の進展

第1節 学びの場の確保

1 文教施設等の復旧

 東日本大震災(最大震度7)での文部科学省関係(幼児・児童・生徒・学生・教職員など)の人的被害は死者659名、行方不明者79名、負傷者262名となっています。また、学校施設や社会教育施設、文化財などの物的被害は全国で1万2,000件以上発生しました。

地震により崩壊した教室の柱(福島県本宮市)の写真
地震により崩壊した教室の柱(福島県本宮市)

津波により破損した校舎(宮城県石巻市)の写真
津波により破損した校舎(宮城県石巻市)

図表2-1-1 東日本大震災における文部科学省関係の人的被害(平成24年9月14日現在)

図表2-1-2東日本大震災における文部科学省関係の物的被害(平成24年9月14日現在)

 文部科学省では、東日本大震災によって被害を受けた文教施設等が早期に復旧し、できる限り速やかに教育活動が再開できるよう、必要な予算を確保するとともに、被害状況に合わせて、津波により被害を受けた公立学校が高台等に移転する場合の費用を新たに補助対象とし、私立学校については、応急仮設校舎のリースに関わる費用を補助対象として追加しました。社会教育施設関係では、被害の大きさに鑑み、生涯学習センターを補助対象施設として追加するなど制度の充実を図りました。文化財については、早期の復旧に向けて必要な予算を確保するとともに、寄附金等も活用し、関係団体の協力の下、美術工芸品等の動産文化財の救出、応急措置、一時保管を行う「文化財レスキュー事業」や文化財建造物の被災状況調査、応急措置、技術的支援等を行う「文化財ドクター派遣事業」を実施しました。また、被災地における埋蔵文化財の取扱いについては、復旧・復興との両立のため、発掘調査の弾力的な運用、復興交付金による自治体の財政負担の軽減、埋蔵文化財の専門職員の被災地派遣(平成24年度:32名、25年度上期:60名)を行っています。
 これらの取組の結果、災害復旧事業を活用する国立学校、公立学校、私立学校の3,198校のうち約9割、社会教育施設・スポーツ施設・文化施設についても1,269施設のうち約9割が、平成24年度中に復旧を完了しています。

2 児童生徒等の心のケアや就学のための経済的支援等

(1)スクールカウンセラーの派遣等

 文部科学省では、被災した子供たちの心のケア等への対応のため、平成24年度においては、23年度に引き続き、「緊急スクールカウンセラー等派遣事業」を実施し、被災した幼児児童生徒等の心のケアのため、被災地域や被災した幼児児童生徒等を受け入れた地域の学校などに必要なスクールカウンセラー等を全額国庫負担により派遣する経費を措置しました。この事業により、24年度においては、被災地の要望を踏まえ、岩手県、宮城県、福島県に対して、全国から193名(延べ4,114名)のスクールカウンセラー等を派遣しています。
 なお、本事業においては、被災地での新たな課題に対応するため、スクールカウンセラー等に加え、高校生への進路指導・就職支援を行う進路指導員や特別支援学校における外部専門家、生徒指導体制を強化するための生徒指導に関する知識・経験豊富なアドバイザーなどの専門家を活用できるようにしています。
 また、平成22年9月に配布した指導参考資料(「子どもの心のケアのために」)を増刷し、被災した県及び市町村の教育委員会からの追加配布要望に応じて発送しました(※1)。


※1 参照:指導参考資料「子どもの心のケアのために ―災害や事件・事故発生時を中心に―」

Column No.05 緊急派遣スクールカウンセラーの活動事例

京都府教育委員会では、緊急スクールカウンセラー等派遣事業を活用し、福島県相双地区において支援活動を実施しました。
 平成24年1月から3月には、新地町、飯舘村、富岡町の小中学校へ、24年9月から25年3月には、新地町、飯舘村の小・中学校へ、各町村に1名のスクールカウンセラーを1週間交替のリレー方式で派遣し、心のケアに関する活動を支援しました。
 京都府内の学校に勤務しているスクールカウンセラーだけでなく、大学や医療機関等に勤務している臨床心理士も派遣を希望し、約80名のスクールカウンセラーを派遣することができました。
 スクールカウンセラーが1週間ごとに交替するという配置方法は、前例がなく、手探り状態で活動を開始しましたが、派遣校の教職員との信頼関係が深まるとともに、児童生徒へのカウンセリング、全校面接や校内研修の実施、支援の必要な学年・学級へのコンサルテーションなど、学校の実態に応じて柔軟に活用されるようになりました。
 また、京都府にスーパーバイザーによる後方支援チームを設置し、派遣者間の引継ぎ会議を運営して、現地での活動が円滑に進むよう工夫しました。
 活動終了時には、不登校等の児童生徒の抱える課題の改善や児童生徒理解の深まりによる、教職員の指導力向上などの成果を上げることができました。
 仮設住宅での生活が長期化し、補償の問題や復興格差などが表面化する中で、児童生徒や保護者、教職員への心のケアの必要性は、ますます高まることが予想されます。
 今後も、現地のニーズに応じた活動を継続していきたいと考えています。

(執筆:京都府教育委員会)

スクールカウンセラーの活動の様子(飯舘村立飯樋小学校)の写真
スクールカウンセラーの活動の様子(飯舘村立飯樋小学校)

(2)公立学校での教職員体制の整備

 東日本大震災により被害を受けた地域に所在する学校及び震災後に被災した児童生徒を受け入れた学校においては、被災児童生徒に対する学習支援を行うこと、心のケアのための特別な指導を行うことなどが課題になっています。義務標準法等の一部改正法(平成23年4月)の附則でも、国及び教育委員会は、教職員の定数に関し、こうした事情に迅速かつ的確に対応するために必要な特別な措置を講ずることとされています。
文部科学省では、平成23年度に7県(岩手県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、新潟県)に対し1,080人(義務教育諸学校:986人、高等学校:94人)、24年度に5県(岩手県、宮城県、福島県、茨城県、新潟県)に対し1,031人(義務教育諸学校:970人、高等学校:61人)の教職員定数の加配措置をいずれも各県からの申請どおり実施しました。
 この加配措置については、中長期的に継続した対応が必要であると考えており、平成25年度予算でも、被災した児童生徒の学習支援等のため、1,000名(前年同)の定数措置を計上しています。これを受け、文部科学省では、各県からの要望を踏まえ、義務教育諸学校分として、岩手県(208人)、宮城県(216人)、福島県(503人)、山形県(5人)、茨城県(31人)、新潟県(12人)の6県に対し合計975人、高等学校分として、岩手県(34人)、宮城県(26人)、福島県(7人)の3県に対し合計67人、総計1,042人の追加措置を実施しました。
 さらに、被災県では、必要な教職員定数が追加措置されても、実際の人員の確保が困難な状況もあり、文部科学省では、宮城県教育委員会からの依頼を受けて、被災地以外の教育委員会に教職員の派遣の打診を行い、派遣を申し出た教育委員会の情報を提供しました。これにより、秋田県、栃木県、石川県、兵庫県、愛媛県、熊本県の教育委員会から、教諭5名、養護教諭6名の派遣が行われました。このほか、東京都及び岐阜県の教育委員会からも、宮城県に合計97名の教諭等が派遣されました。

(3)アスリートや芸術家によるスポーツ・芸術活動

 文部科学省では、国が行う復興事業の状況、被災地やスポーツ界などの要望を踏まえ、昨年度に引き続き、スポーツ団体が行うスポーツによる子供たちの心のケア活動など、次のような様々な取組をスポーツ振興くじ(toto)助成により支援することとしました。

  • 被災地にアスリートを派遣し、子供たちを励ます「スポーツこころのプロジェクト 笑顔の教室」の開催
  • 被災地に所在する総合型地域スポーツクラブの活動
  • 東北総合体育大会の開催

スポーツこころのプロジェクト(岩手県大船渡市) 「スポーツこころのプロジェクト笑顔の教室」の様子の写真1 スポーツこころのプロジェクト(岩手県大船渡市) 「スポーツこころのプロジェクト笑顔の教室」の様子の写真2
スポーツこころのプロジェクト(岩手県大船渡市) 「スポーツこころのプロジェクト笑顔の教室」の様子

 文部科学省では、今後も引き続き、スポーツを通じた東日本大震災の復旧・復興支援に取り組んでいくこととしています。
 また、被災地に文化芸術活動を提供することにより、子供たちが健やかに過ごし、安心できる環境の醸成を図るため、「次代を担う子どもの文化芸術体験事業(派遣事業)」の一環として、被災地へ芸術家などを派遣しました。
 本事業では、被災地の地方公共団体、NPO法人、財団法人、文化芸術団体などで構成する四つの実行委員会(岩手県、宮城県、福島県、仙台市)が事業のコーディネーターとなり、被災地でのニーズを把握するとともに、音楽・演劇・落語・伝統芸能・美術などの文化芸術活動を行う芸術家などを344の小学校・中学校などに派遣し、講話・実技披露・実技指導を実施しました。

(4)「リフレッシュ・キャンプ」の実施

 東日本大震災の被災地の子供たちは、震災による様々な影響により、日常生活の中で多くのストレスを抱えていました。このような実態を受け、国立青少年教育振興機構では、平成23年夏以降、被災地の子供たちなどを対象に、子供たちの心身の健全育成及びリフレッシュを図るため、国立青少年教育施設を活用し、外遊び、スポーツ及び自然体験活動などができる機会として、「リフレッシュ・キャンプ」を実施しています。本事業の一部は、文部科学省との共催で実施されているほか、複数の民間企業からの協賛金などを得て開催されています。
 平成24年度の「リフレッシュ・キャンプ」では、引き続き、トップアスリートによるスポーツ・プログラム、屋内プールでの水泳、ハイキング、調理体験、農業体験などが実施されました。
 本事業は、平成23年7月から25年3月までに、国立青少年教育施設で全137回実施され、延べ1万2,655人が参加しました。25年度も更に多様なプログラムを提供するなどして、被災地の子供たちの心身の健全育成及びリフレッシュを図るための取組を実施する予定です。

Column No.06 「リフレッシュ・キャンプ福島復興支援事業なすかしドリームプロジェクト」 ―福島県復興を担う子供たちを育てる長期宿泊キャンプ―(国立那な須す甲か子し青少年自然の家)

 福島県の国立那須甲子青少年自然の家では、平成23年8月、同県の国立磐梯青少年交流の家とともに「リフレッシュ・キャンプ」を実施し、その後も様々な事業を継続してきました。
 平成24年度の取組の一つとして、小学校5・6年生を対象とした14泊15日(24年7月29日~24年8月12日)の「リフレッシュ・キャンプ福島復興支援事業なすかしドリームプロジェクト」を実施しました。
 本キャンプでは、那須甲子連山縦走登山や阿武隈川源流体験、100kmウォークなどの自然体験活動を実施し、一人では達成することが難しい体験を通じて、友達と声を掛け合う経験を参加者に提供しました。また、防災に関する学習として、東京消防庁防災教育センターや福島復興局、被災地などの訪問、駅舎に寝袋で宿泊する帰宅困難体験などを実施し、もしものときに、どのように行動し、避難したらよいのか考える機会としました。
 国立青少年教育振興機構が開発・実施したIKR調査※によると、本キャンプの事前事後では、「非依存性」や「適応行動」など、子供たちの「心理的社会的能力」が向上したことが分かりました。
 事業終了後、保護者の方からは、「今の制限された生活に挫けることなく、家族、友だち、周囲の人々の絆を大切に、子供が今回学んでくれた何事も諦めない心を、家族皆で大事にしていきたいと思います。」とのお手紙が届いています。
 国立那須甲子青少年自然の家では、引き続き、被災地の子供たちがのびのびと遊び、日頃のストレスを和らげることができるよう、「リフレッシュ・キャンプ」などの事業を実施するとともに、様々な体験活動の機会と場の提供に努めています。

※IKR調査とは、依存性や積極性、自己規制、自然への関心などの28項目からなる「IKR評定用紙(簡易版)」を使用した、体験活動の教育効果を測定するためのアンケート調査。

(執筆:国立青少年教育振興機構)

那須甲子連山縦走登山に挑む参加者(福島県那須甲子連山)の写真
那須甲子連山縦走登山に挑む参加者(福島県那須甲子連山)

メインプログラム福島県縦断100kmウォークを踏破した参加者(福島県猪苗代町)の写真
メインプログラム福島県縦断100kmウォークを踏破した参加者(福島県猪苗代町)

(5)就学のための経済的支援等

 東日本大震災により経済的理由から就学等が困難となった世帯の幼児児童生徒の就学等を幅広く支援するため、文部科学省では、平成23年度補正予算において、「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金」を措置しました。これにより各県において基金を設置し、幼稚園に通う幼児の保育料や入園料を軽減する就園奨励事業や、小中学生に対して学用品費や通学費(市町村が実施するスクールバスの運行委託費等)、学校給食費などを補助する就学援助事業、高校生に対する奨学金事業、特別支援学校等に通う幼児児童生徒の就学に必要な経費を補助する就学奨励事業、私立学校及び専修学校・各種学校に対する授業料等減免措置事業について、26年度までの間、必要な支援を行うことができることとしました。これを受け、23年度には約6万8,000人に対して支援を行いました。
 それに加え、経済的理由にかかわらず高等学校等の生徒が学業を継続できるよう平成21年度第1次補正予算により全都道府県に造成された高校生修学支援基金について、依然として厳しい経済状況や震災の風評被害、円高による雇用環境の更なる悪化に備え、修学支援を強化する必要があることから、当初の計画を3年間(26年度末まで)延長し、積み増しを行いました。
 私立学校については、震災や原子力発電所事故により、設置者である学校法人の経営環境も厳しさを増していることから、施設面だけでなく、ソフト面の支援も含め、引き続き必要な支援を行っていきます。

(6)学生への支援

 文部科学省では、各大学等に対して入学金や授業料の徴収猶予・減免などについて要請を行い、これまで全国の多くの大学で、授業料減免、奨学金、宿舎支援などが実施されました。日本学生支援機構では、東日本大震災により被災した世帯の学生等が経済的理由により修学を断念することがないよう、無利子奨学金を貸与しており、平成24年度には家計の厳しい学生等を対象に、奨学金の貸与を受けた本人が、卒業後に一定の収入を得るまでの間、返還を猶予する「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を導入しています。また、24年度は、高等教育段階において無利子奨学金(61億円、約8,000人)や授業料等減免措置(75億円、2万1,000人)の拡充を図りました。
 また、文部科学省では、東日本大震災により被災した学生・生徒の就職活動を支援するため、平成24年度も引き続き、厚生労働省と連携し、国立青少年教育振興機構などの協力を得て、就職活動のための宿泊施設を無償提供(23年4月から実施。当初、24年3月末までとしていたが25年3月末まで1年延長)するなど、関係府省と連携しつつ、被災した学生・生徒等が就職活動を継続できるよう支援を実施しました。

第2節 学びを通じたまちづくり

1 学びを通じた地域の絆きずなの強化と復興を担う人材育成

(1)被災地の復興課題に応じた学びを通じた地域の絆きずなの強化

 今後、被災地の自律的な復興に向けて、住民一人一人が主体的に参画することのできる地域コミュニティ再生のための学びの場づくり、コミュニケーションの場づくりを推進することが重要になってきます。
 このため、文部科学省では、平成23年度から「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」を実施しています。学校や社会教育施設等を活用しつつ、学習活動のコーディネートなどを行う人材により、地域住民の学習・交流の推進や子供たちの成育環境の改善を支援しています。
 本事業は平成25年度も引き続き実施する予定であり、学びを媒介としたコミュニケーションの活性化や地域の課題解決の取組を支援し、地域コミュニティの再生を図ります。

Column No.07郷土に想おもいをよせる「同窓会」

 福島県では現在でも被災地域の多くの子供や保護者が県内外へと避難しています。そのため、子供たちが久しぶりに会う同級生と交流を深め、郷土の良さを見詰め直すことなどを目的とし、福島大学のうつくしまふくしま未来支援センターの企画により、「郷土に想いをよせる同窓会」を実施しました。
 平成24年10月に国立那須甲子青少年自然の家で開催された浪江町津島地区の部では、小学5年生から中学2年生及びその保護者、地域住民が参加しました。故郷の郷土芸能の紹介・体験活動では子供たちが津島地区に伝わる「田植え踊り」「三匹獅し子舞」の映像を鑑賞した後、三匹獅子舞で使用する千穂づくりを体験するなど、地域の人たちと郷土に関する情報交換を行いました。また、子供たちが自主的に「自分たちのお祭りをしよう」と考え、神みこし輿を作り会場を歩き回りました。
 11月に国立磐梯青少年交流の家で開催された川内村の部では、小・中学生と保護者、地域住民が参加し、子供たちが伝統芸能「三匹獅子」を披露するとともに、地域に伝わる踊り(BON・DANCE)を地域の皆さんと踊ることで、村の魅力を改めて理解しました。
 今回の企画では、福島大学の学生や企業などのボランティアが積極的に参加しました。最初は不安そうだった子供たちも、ボランティアと過ごす中で、次第に積極的に協力する姿が見られ、帰りには見違えるような笑顔を見せ「なかなか会えない友達に会えてうれしい」「今通っている学校の人たちも優しいけど、いつか友達みんなと津島に帰りたい」と話していました。
 また、子供だけでなく保護者を対象にカウンセリングを実施し、日頃話せないことを話すことで保護者のストレス軽減にもつながりました。
 同窓会を企画・参加した校長先生は「皆、生活するのに精一杯な状態だが、子供だけでなく大人も元気を出していくことが必要。同窓会事業を通じて『元気をもらった』という大人の声があり、大変良かった」と話していました。
 今後、「同窓会」はほかの地域にも広げていく予定です。

神輿担ぎ(浪江町の部)の写真
神輿担ぎ(浪江町の部)

BON・DANCE(川内村の部)の写真
BON・DANCE(川内村の部)

 東日本大震災の被災地では、自治体のみならず、大学やNPO等様々な主体が積極的に関わり、被災地の復興はもとより、今後の我が国の学校教育の新しいモデルとなるような先進的な取組が進められつつあります。このような取組は、新学習指導要領が重視している「思考力・判断力・表現力」や「学ぶ意欲」の向上にも大きな役割を果たすことが期待されています。
 文部科学省では、震災の教訓を踏まえ、被災地の復興とともに、我が国全体が希望を持って未来に向かって前進していけるようにするための教育を進めることを目的としています。そのために被災地の復興を支え、今後の学校教育の新しいモデルともなる先進的な教育活動を展開する団体の取組を支援するとともに、その成果を全国に普及することにより、被災地以外も含めた我が国全体の新しい教育の在り方の参考にすることとしています。
 平成24年度は、復興教育支援事業として、様々な取組に対して支援を行っています。採択機関などの取組を見ると、例えば、特定非営利活動法人じぶん未来クラブでは、子供たちが心を開き、自信を持ち、コミュニケーションの本質を体感することで、厳しい現実に立ち向かい、他者と協同して主体的に復興を担う「生きる力」を育むことを目指して、子供たちのみならず、現場の教員など教育関係者や保護者などと一体となったワークショップを実施しています。このほか、大学やNPOなどでの心の教育、地域の未来を担う人材の育成に向けたキャリア教育など多彩な復興教育支援の取組を実施しており、25年度でも本事業を引き続き実施することとしています。

(2)復興を担う専門人材の育成支援

 東日本大震災により被災した地域では、復興を担う即戦力となる専門人材の育成・確保が喫緊の課題となっています。
 このため文部科学省では、実践的な職業教育、専門的な技術教育を行う職業教育機関である専修学校の教育機能を活用して、震災により大きく変化した被災地の人材ニーズに対応しつつ、復興の即戦力となる専門人材の育成と地元への定着を図るための取組をしています。それが「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」の実施です。
 本事業では、全国の専修学校・大学などの教育機関や産業界など幅広い支援を得て、専修学校が中心となって産学官連携による推進協議会を組織し、新産業創出や地元産業の復興に必要な職業能力の向上、被災により失業した人を対象とした学び直しの機会などを提供しており、被災地のニーズを踏まえた専門人材の育成支援に努めています。

(実施例)
  1. 自動車組み込み、医療情報事務など、産業界の高度化や医療現場の専門人材に必要な知識・技術の向上を図る短期人材育成コースの試行導入
  2. 食・農林水産業、再生可能エネルギー、放射線工学など、被災地においてニーズが高い分野を対象とした中長期的な人材育成コースの開発・実証
  3. 介護など、現状の被災地においてニーズが高く、供給が不足する分野を対象とした短期専門人材育成コースの開設支援
  4. 被災地における産学連携による合同就職セミナーの開催、就職支援コーディネーターの配置、専修学校等の就職支援体制の充実強化

図表2-1-3 東日本大震災からの復興人材育成支援事業の取組地域について

2 大学や研究所等を活用した地域の再生

(1)復興に向けた教育研究活動の推進

 東日本大震災を経て、我が国の復興・再生に向けての貢献は、知の拠点である高等教育機関の重要な使命です。発災直後における災害派遣医療チーム(DMAT)などの派遣、宿泊施設への避難者の受け入れだけでなく、中長期にわたる復旧・復興においても、高等教育機関の果たすべき役割の重要性は増しています。被災地域において、大学における地域復興のセンター的機能の整備や復旧・復興を担う専門人材の育成支援、大学病院による放射線対応などを行うとともに、被災地以外の高等教育機関による学生ボランティアの派遣や復興支援に資する研究の支援等を通じて被災地の復興支援を行っています。

Column No.08 「福島の子供たちへのメンタルヘルス支援」-浜松医科大学-

 浜松医科大学子供のこころ発達研究センターは、子供たちのこころの危機の背景にある諸現象を解明し、また、こころの危機を持つ子供たちへの療育や教育を実践していくための手法を開拓し、提供していくことを目指し研究・教育を行っています。
 同センターは、震災の被害に加え、放射線の問題という甚大なストレス状況にさらされている福島の子供たちを支援するため、福島県全域の小・中・高等学校及び特別支援学校を対象に、1.心の教育プログラムの実施、2.巡回相談の実施を主とする支援活動を継続して実施しています。
 心の教育プログラムは、心の健康を増進させ、ストレス状況に対する子供たちの対処能力を上げることを目的とし、被災体験から生じ得るPTSD(※2)などの深刻な心の病の発症を未然に防ぐ予防的効果を持つと期待されます。巡回相談では、被災体験に起因する情緒的問題のほか、発達障害の問題を含む特別支援関係の問題、友人関係や家族関係の問題など、幅広い内容の相談に対応しています。


※2 PTSD:外傷後ストレス障害。命に関わる危険な体験をした後で、目がさえて眠れない、その場面が目に浮かぶ、その体験を思い起こさせる場所や話題を避ける、情緒不安定で、周囲の人とうまく付き合えない、などの症状がでてくるとき、それをPTSDと言います。 

Column No.09 「仮設住宅の住環境の改善支援」-京都工芸繊維大学-

 今回の震災では、多くの方が地震や津波によって住む家を失い、現在でも多くの方が仮設住宅での生活を余儀なくされています。京都工芸繊維大学では、宮城県気仙沼市において仮設住宅の住環境の改善支援プロジェクトに取り組んでいます。
 学生が被災地に赴いて住民の方から直接お話を伺い、仮設住宅を実際に見せてもらいながら、問題点を抽出して解決策を検討し、再度意見交換を行った上で施工まで実施します。
 解決策を検討する際の前提条件は、実際に住民の方自らが施工できるメニューであり、材料も現地で調達できること。具体的には、窓の結露抑制のための気泡緩衝材貼付けや、冷気遮断のための断熱材貼付け・内障子の設置などです。
 学生たちは、被災者の暮らしと向かい合い、積極的にコミュニケーションを図りながら作業を進めています。

仮設住宅住民への住環境改善のための説明会の様子の写真
仮設住宅住民への住環境改善のための説明会の様子

仮設住宅の住環境改善のための施工作業の模様の写真
仮設住宅の住環境改善のための施工作業の模様

(2)大学における地域復興のセンター的機能の整備

 文部科学省では、地域の復旧・コミュニティの再生を支える様々なボランティアの組織的実施や医療・教育文化・産業再生・まちづくりなど地域の暮らしや産業などを支えるため、被災地の大学等が持つ高度な知的資源を集約した地域の復興を推進する拠点の整備を支援しています(24年度実績:14件)。例えば、被災地にサテライトを設置し地域の産業を再生する取組、被災した児童生徒に対する学習支援活動の展開、復興の担い手の育成、被災地の医療人材の受入れと最新医療の研修実施や、災害医療や緊急被ばく医療に対応できる高度医療人材の養成などを実施しています。これらの取組により、各地域の復興センターにおいて、被災地のニーズに真に応えた復興に貢献しています。

(3)東北マリンサイエンス拠点の形成

 東北沖においては、東日本大震災の地震・津波により、海洋生態系が激変しており、漁場の回復及び沿岸地域の産業の復興が課題となっています。このことから岩手県大槌町、宮城県女川町の拠点を中心として、関係自治体・漁協などと連携・協力し、震災により激変した東北沖の海洋生態系を明らかにするとともに、東北の海の資源を活用した新たな産業創成に資する技術開発を進めるなど、被災地の水産業の復興のための調査研究を実施しています。具体的には、東北大学、東京大学、海洋研究開発機構を中心に全国の関連研究者が連携して、東北沖の物理・化学的環境と生物動態について、沿岸域から沖合域まで総合的な調査研究を実施するとともに、東北沖の海の資源を有効活用した新しい産業を被災地で育てるために、全く新しい陸上養殖技術や海藻からのバイオエタノール利用技術等の革新的な技術開発を推進しています。

図表2-1-4 東北マリンサイエンス拠点の概要 

(4)東北メディカル・メガバンク計画

 東日本大震災で医療機関などが大きな被害を受けた東北地方は、被災者の命と健康が守られ、安心して暮らすことができる医療体制・健康管理の仕組みづくりが必要となっています。
 文部科学省は、厚生労働省、総務省等と協力の下で、東北大学及び岩手医科大学を実施機関として、東北メディカル・メガバンク計画を推進しています。
 本計画では、被災地域で住民の同意を得つつ健康調査を実施し、収集した健康情報や生体試料を蓄積してバイオバンク(※3)を構築します。このバイオバンクを活用した研究開発により、震災と疾病との関係の解析を行うとともに、病気の正確な診断や予防、薬の副作用の低減など、個人のゲノム情報に応じた次世代医療の創成のための研究開発を行います。
 平成24年度は、被災地での健康調査活動の拠点となる「地域支援センター」の開所をはじめとする、実施体制を整備しました。25年度からは、本格的に健康調査を開始し、調査で得られた結果を活用した大規模なゲノムコホート研究(※4)を実施します。
 今後も、地元の地方公共団体や関係機関などとの緊密な連携の下、健康調査での医師の活動や健康調査の結果の回付などを通じて、被災地住民の健康不安解消に貢献するとともに、東北地方で個別化医療の基盤となるバイオバンクを形成し、最先端の解析研究を推進することで、東北発の次世代医療実現の起点として、被災地の創造的な復興に貢献します。
 これらを着実に推進することにより、将来的には、創薬等の新たな産業の創出などが期待されています。

図表2-1-5 東北メディカル・メガバンク計画の成果から期待できること 


※3 バイオバンク
 協力者から収集した生体試料や健康情報、臨床情報等を管理する「倉庫」のこと。

※4 ゲノムコホート研究
 同意を得た住民から、生体試料、健康情報、診療情報等を収集し、生体試料から得られるゲノム情報等と併せて解析することで、疾患や薬物動態等に関連する遺伝子要因、環境要因等を同定する研究。

(5)産学官連携による東北発科学技術イノベーション創出プロジェクト

 文部科学省では、平成24年度から、「産学官連携による東北発科学技術イノベーション創出プロジェクト」を実施しています。当該事業は、被災地自治体主導の地域の強みを生かした科学技術駆動型の地域発展モデルに対する支援を行うとともに、東北地方の総合経済団体である東北経済連合会と連携の下、全国の大学等の技術シーズの育成強化、技術シーズの被災地企業への移転促進、目利き人材活用による被災地産学共同研究支援などを総合的に実施することで、全国の大学などの革新的技術シーズを被災地企業で実用化し、被災地復興に貢献します。

3 地域の文化芸術・スポーツ活動の振興を通じた復興の推進

 文部科学省では「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」でスポーツ・レクリエーション活動の支援を行い、地域コミュニティを再生するとともに、住民一人一人の心身の健康の確保に取り組んでいます。
 この事業は、被災3県(岩手、宮城、福島)の各地域において住民のスポーツ活動の担い手として各種スポーツ事業を実施してきた総合型地域スポーツクラブなどにクラブマネージャー、市町村体育協会やレクリエーションスポーツの指導者、そのほかスポーツに関わりを持つ住民を「地域スポーツコーディネーター」として配置し、地域の住民に対するスポーツ活動を企画・立案し、外部講師や地域ボランティア等の参画を得て、スポーツ・レクリエーション教室などのプログラムを定期的に実施するものです。

岩手県陸前高田市高田町で実施したスポーツ・レクリエーション教室

キッドビクス教室

日時
 平成24年9月14日(金曜日)10時30分~11時30分
場所
 高田町大隅まちづくり商店街集会室
内容
 体幹トレーニングの一種で、子供のためのエアロビクス(Kid+Aerobics)。親子で参加し楽しむことで、親子のふれあいを深めることを目的としています。

キッドビクス教室の写真1 キッドビクス教室の写真2

キッドビクス教室の写真3 キッドビクス教室の写真4

 また、東日本大震災の影響により、公演や展覧会なども、中止や延期などを余儀なくされました。こうした中、文化庁では、平成23年4月の文化庁長官によるメッセージ「当面の文化芸術活動について」により、文化芸術関係者が文化芸術活動を積極的に行うことで、今後の復興を支えていただきたいと、呼び掛けを行いました。
 また、行政機関・芸術家・芸術団体・文化施設・助成財団・企業・芸術系大学・文化ボランティアなど様々な立場の団体や個人が連携協力する「文化芸術による復興推進コンソーシアム」が平成24年5月に創設されました。このコンソーシアムでは、文化芸術による復興推進に関し、人的・組織的ネットワークの形成や情報収集・調査研究などを実施しています。

第3節 原子力発電所事故への対応―放射線から子供たちを守る

1 放射線モニタリングの実施

 東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する放射線モニタリングについては、関係府省、福島県等が連携し、「総合モニタリング計画」(平成23年8月モニタリング調整会議決定、24年3月及び4月改訂)に沿って、モニタリングポスト等による空間線量の測定、土壌に含まれる核種ごとの放射性物質の分析、河川や海などの水及び土に含まれる放射性物物質の分析、食品や水道水に含まれる放射性物質のモニタリングなどを実施しています。東京電力福島第一原子力発電所事故後の原子力規制の見直しに伴い、原子力規制委員会が発足した24年9月19日以降は、原子力規制委員会において、文部科学省が担っていた放射線モニタリングの司令塔機能を担うとともに、関係機関の行ったモニタリング情報について、原子力規制委員会において集約し、放射線モニタリング情報のウェブサイト(※5)において公表しています。
 文部科学省においては、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生直後から、モニタリングカーや船舶を用いた東京電力福島第一原子力発電所周辺の陸域・海域における緊急時モニタリングや航空機を用いたモニタリングなどを実施しました。平成24年度においては、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況の把握のため、ガンマ線放出核種(放射性セシウム等)、プルトニウム、ストロンチウムなどの核種の分布状況について取りまとめるとともに、自治体と協働で実施した走行サーベイの結果を公表しました。また、北海道や西日本を含む日本全国、及び東京電力福島第一原子力発電所80km圏内・圏外において航空機モニタリングを実施し、これらの地域の空間線量率及び放射性セシウムの沈着状況について確認しました。また、海域については、24年3月30日に策定された「平成24年度海域モニタリングの進め方」に沿って、関係省庁・自治体等との連携の下、福島県沖、宮城県沖、茨城県沖などを対象に、海水や海底土、海洋生物に含まれる放射性物質の濃度の測定を実施しました。
 さらに、福島県内の学校等に設置したリアルタイム線量測定システムや福島県全域及び福島県隣県に設置した可搬型モニタリングポスト、全国における放射能調査体制の強化のため各都道府県に増設した固定型モニタリングポストにより空間線量を測定し、これらの測定値を放射線モニタリング情報のウェブサイトでリアルタイムに公開しています(※6)。

図表2-1-6 第6次航空機モニタリングの測定結果(東京電力福島第一原子力発電所から80km圏内の地上面から1m高さの空間線量率)


※5 参照:http://www.nsr.go.jp/activity/monitoring/

※6 モニタリングポストの測定結果のリアルタイム配信をはじめ、上記の文部科学省が実施していた放射線モニタリングについては、平成25年4月1日付で原子力規制委員会へ移管

2 児童生徒が学校等において受ける線量低減の取組等

(1)校舎・校庭等の除染

 文部科学省では、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、子供たちの安全・安心を確保するため、通知・事務連絡を発出して学校における対応方針を示すとともに、財政的支援や専門家の派遣により、学校における除染を推進してきました。
 具体的には、事故後の状況に合わせて、平成23年4月19日、5月11日、5月27日に通知・事務連絡において当面の対応方針について示し、8月26日には、「福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について」(生涯学習政策局長、初等中等教育局長、科学技術・学術政策局長、スポーツ・青少年局長通知)において、学校において児童生徒等が受ける線量について原則年間1ミリシーベルト以下とするとともに、校庭・園庭の空間線量率については、これを達成するため毎時1マイクロシーベルト未満を目安とすること、局所的に線量の高い場所の把握と除染を進めることなどを示しました。
 そして、この方針の下、校庭等の放射線モニタリングや積算線量計の配布等により、実際に児童生徒等の受ける放射線量を継続的に確認しながら、校庭・園庭の土壌に関する線量低減策への財政的支援や、学校内において局所的に線量が高い場所を把握するための測定の手引きの公表、除染に関する専門家の派遣などにより、学校の除染を行ってきました。
 これらの取組により、学校の校庭等の空間線量率については、避難区域以外の全校で毎時1マイクロシーベルト未満まで低下しており、実際に児童生徒等が学校で受ける放射線量の推計値も、年間で平均約0.2ミリシーベルトという低い水準を実現しています。
 なお、平成24年1月1日には、「放射性物質汚染対処特措法」が完全施行となり、現在、同法に基づき、子供の生活環境(学校、公園等)を含めた地域全体における除染が進められています。

(2)学校給食の安全・安心の確保

 食品の安全については、厚生労働省の定める基準値に基づき、出荷段階での検査が行われているところですが、文部科学省では、より一層の安全・安心を確保する観点から、学校給食の放射性物質検査について支援を行っています。
 平成23年度第3次補正予算においては、東日本の16都県に対して、学校給食の食材を検査する機器の整備を補助しました。
 これに加えて、福島県については、県内の希望する全ての学校給食調理場について検査体制を整えることができるよう、「福島県原子力被害応急対策基金」により、必要な検査機器を整備しています。
 さらに、平成24年度は、全国を対象として、学校給食一食全体の提供後の検査を行う事業を実施しました。
 また、平成25年度においては、福島県等を対象として、引き続き一食全体の提供後の検査に関する事業等を支援する予定です。

3 放射線、原子力に対する理解を深めるための取組

(1)学校での放射線等に関する教育

 今回の原子力災害の教訓を将来に生かすためにも、児童生徒に対し、客観的な知識や多様な意見を学び、それに基づき自ら考え、判断する力を身に付けさせる教育を進めていく必要があります。
 学校教育では、平成20年3月に小・中学校、21年3月には高等学校の学習指導要領が改訂され、社会科や理科等の教科で、原子力やエネルギー、放射線等に関する内容の充実が図られました。例えば、新しい中学校学習指導要領の理科において、「放射線の性質と利用」について新たに示され、23年度から実施されています。
 これを踏まえ、文部科学省では、全国の都道府県が学習指導要領の趣旨に沿って主体的に実施する原子力を含めたエネルギーや放射線等に関する教育の取組への支援として、副教材の購入、施設の見学、講習・講演会の実施、その他指導方法の検討や実践事例の調査等に必要となる経費を交付しており、今回の原子力災害後、放射線等への関心が高まっていることから、改めて放射線等に関する教育の取組への当該支援の活用を促しています。
 また、放射線等に関する教育の取組の充実を図る事業の実施による支援として、簡易放射線測定器「はかるくん」の貸出しのほか、教育職員向けのセミナーや児童生徒向けの出前授業等を実施するとともに、ウェブサイトで小・中・高等学校向けの「放射線等に関する副読本」を提供しています。

4 除染や廃止措置などの、原子力災害を踏まえた研究開発・人材育成の取組

(1)除染技術の確立に向けた取組

 東京電力福島第一原子力発電所事故により放射性物質で汚染された環境の回復に向けて、文部科学省では、除染に資する研究開発を実施しています。
 具体的には、日本原子力研究開発機構では、福島県など地方公共団体、国内外の大学・研究機関、民間企業などと連携・協力しながら除染の技術開発・評価・実証等を実施しています。これまでに、吸着材や天然鉱物などを用いた土壌・河川・プール水の除染技術を開発するとともに、汚染土壌などの除染により、空間線量率がどのように低減するかを評価できるソフトウェアを開発し一般に公表するなどの取組を行いました。
 今後も関係機関と連携の上、除染技術の確立に向けた取組を実施していきます。

(2)廃止措置に関する研究開発

 東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に向けて、平成23年12月に策定された「東京電力株式会社福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に向けた研究開発計画」に基づき、関係機関が連携・協力し、使用済み燃料プールからの燃料取り出し、原子炉内部からの燃料デブリ取り出し、放射性廃棄物の処理・処分などに必要な研究開発を実施しました。

(3)原子力災害を踏まえた原子力基礎基盤研究・人材育成の取組の推進

 原子力の安全を確保する上で基盤となる原子力人材を育成するため、文部科学省及び経済産業省では、大学や高等専門学校の原子力教育を支援する「原子力人材育成プログラム」を実施しています。
 また、「国際原子力人材育成イニシアティブ」により、産学官の関係機関が連携し効果的・効率的・戦略的に人材育成を行う機関横断的な取組を支援しており、平成24年度は、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力安全や危機管理に関する人材育成を引き続き重点的に実施しました。
 さらに、基礎的・基盤的研究の充実・強化を図るため、「原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ」により、政策ニーズを明確にした戦略的なプログラムを設定し、競争的環境の下に大学等における研究を推進しており、23年度は、東京電力福島第一原子力発電所事故対応への貢献という観点も考慮し新規課題を採択しました。

5 原子力損害賠償への対応

 東京電力福島第一原子力発電所及び第二原子力発電所の事故発生以降、多くの住民が、避難生活や生産及び営業を含めた事業活動の断念などを余儀なくされており、被害者が一日も早く安心で安全な生活を取り戻せるよう、迅速・公正・適正な賠償が必要です。
 文部科学省では、「原子力損害の賠償に関する法律」(昭和36年法律第147号)に基づいて設置した原子力損害賠償紛争審査会で、賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示した指針を順次策定しています。
 平成23年8月に中間指針(※7)、12月に中間指針第一次追補(※8)、24年3月に第二次追補(※9)を策定し、その後、食品中の放射性物質の新たな基準値や食品以外の農林産物の暫定許容値などの設定に伴い新たな品目・区域に対して出荷制限などが出されたため、中間指針に明示された産品・地域に加え、風評被害として認められる類型を追加する中間指針第三次追補(※10)を25年1月30日に策定しました。
 また、平成23年8月に設置した「原子力損害賠償紛争解決センター」では、和解仲介手続の迅速・効率化に向け、業務運用の改善や人員増強等の体制強化策を実施しています。24年7月には福島事務所(郡山市)の支所を開設(福島市、会津若松市、いわき市、南相馬市)したほか、8月には東京事務所の拡充を行いました。
 このほか、政府として、東京電力の迅速かつ適切な損害賠償の実施や、経営の合理化等に関する「総合特別事業計画」を認定(平成24年5月9日認定、25年2月4日変更認定)し、原子力損害賠償支援機構を通じて、東京電力による円滑な賠償の支援を行っています。


※7 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針

※8 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)

※9 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第二次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)

※10 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第三次追補(農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害について)

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生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成25年10月 --