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特集1 教育再生の実行に向けて

第1節 近年の教育改革の道のり

1 教育改革の背景

 教育は、人々の多様な個性・能力を開花させ人生を豊かにするとともに、社会全体の今後一層の発展を実現する基盤です。我が国の教育は、一人一人の国民の地道な努力により、機会均等の理念を実現し、国民の教育水準を高め、その時々の時代の要請に対応しつつ、社会の発展に大きく寄与してきました。その結果、戦後の豊かな経済社会や、安心な生活の実現など、大きな成果を収めてきました。
 一方、グローバル化の進展などにより世界全体が急速に変化する中にあって、産業空洞化や生産年齢人口の減少など深刻な諸課題を抱える我が国は、極めて危機的な状況にあり、東日本大震災の発生は、この状況を一層顕在化・加速化させています。これらの動きは、これまでの物質的な豊かさを前提にしてきた社会の在り方、人の生き方に大きな問いを投げ掛けていると言えます。
 教育現場に目を向けると、学校におけるいじめや体罰の問題など、子供の安全に関わる悲惨な事件が起きています。また、子供たちの学ぶ意欲の低下なども懸念されるとともに、社会全体の規範意識の低下、家族や地域についての価値観の変化などが子供の健やかな成長に影響を与えています。このように、我が国の教育に対する信頼は揺らぎ、幾つもの大きな課題に直面しています。
 このような状況も踏まえ、平成25年4月25日、中央教育審議会(以下、本節において中教審という)において「第2期教育振興基本計画について(答申)」が取りまとめられ、同年6月14日には第2期の「教育振興基本計画」が閣議決定されました。本節では教育振興基本計画の策定につながるこれまでの教育改革を概観します。

図表1-1-1第2期教育振興基本計画策定までの教育改革の道のり

2 「第三の教育改革」の始まり(四六答申)

 昭和22年の教育基本法・学校教育法の制定に始まった戦後の学校教育制度は、我が国の教育改革について検討する合議制機関として内閣に設置された教育刷新委員会(昭和24年に教育刷新審議会と改称)の建議、さらに昭和28年以降は中央教育審議会の答申を踏まえて、逐次整備・充実が図られてきました。しかし、昭和30年代後半以降、技術革新や高度経済成長、これらに伴う地域や家庭環境の変化、さらに高等学校・大学進学率の上昇を受けとめる学校教育の量的拡大などを背景に、制度的にも内容的にも多くの問題を抱えるに至りました。このため、新学制発足後20年を経た昭和42年、中央教育審議会に対して「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」諮問が行われました。これは、明治期の「第一の教育改革」、戦後の「第二の教育改革」に次ぐ「第三の教育改革」を目指すものでした。

 諮問を受けた中央教育審議会では、2期4年にわたる長期間をかけて、広範かつ包括的な調査審議を行い、昭和46年にいわゆる「四六答申」を取りまとめました。文部省では、事務次官をトップとする「教育改革実施本部」を設置して、答申の提言の実施に当たりました。その結果、

  • 人材確保法による教員給与の計画的改善など優れた教員確保の条件整備
  • 私立学校に対する経常費助成を行うと同時に、安易な学生の増加抑制や高等教育機関の計画的整
    備を行うなど、高等教育の量から質への転換
  • 共通第一次学力試験の導入や、学部に基礎を置かない新しい形態の大学院設置など大学制度の多
    様化

といった学校教育の量的拡充や条件整備、教育課程の改善などは、比較的順調に進められましたが、学校体系の見直し、大学等の種別化など、学校制度の基本構造に踏み込んだ改革は実現しませんでした。
 その後も都市化や核家族化など子供たちを取り巻く教育環境は厳しさを増し、非行や校内暴力、いじめや登校拒否など「教育荒廃」と言われる状況に対して、学校教育が画一的・硬直的で十分対応できていないとの批判や、いわゆる学歴社会の弊害が指摘されるにいたりました。
 一方、戦後新しく再出発した社会教育は、学校教育にやや遅れて昭和24年以降、法整備や財政支援が行われ、特に、公民館が急速に全国に普及し、地域に根差した日本独自の学校外における学習環境が整備されていきました。さらに、1960年代半ばから70年代にかけて、ユネスコやOECDにおいて生涯教育やリカレント教育など、生涯にわたる学習の必要性が提言され、中央教育審議会においてもこれらを踏まえた「生涯学習」の重要性が提言されるようになりました。

3 臨時教育審議会

 こうした中、政府全体の責任において教育改革に取り組むため、昭和59年に内閣総理大臣の諮問機関として、臨時教育審議会(以下、臨教審)が発足することとなりました。戦後に教育問題について内閣直属の調査審議機関が設けられたのは、「第二の教育改革」の教育刷新委員会に次いで2度目のことでした。
 臨教審では、教育の機会均等の基本理念の下に実施された戦後の教育改革について、教育を重視する国民性や所得水準の向上などともあいまって著しく教育が普及し、我が国社会の発展の原動力となったとして、その成果を高く評価しました。その一方で、戦後教育改革も大局的に見ると明治以降の追い付き型教育の延長線上にあり、画一的・硬直的・閉鎖的で各人の個性を伸ばしていくという面に欠けており、その弊害としていじめ、登校拒否、校内暴力、青少年非行などの教育荒廃の現象が現れてきたことなど、様々な問題点や限界を指摘しました。
 このような状況を踏まえ、臨教審は4次にわたる答申において、教育改革を進める視点として、次の3点を示しています。

1.個性重視の原則

 画一性、硬直性、閉鎖性を打破して、個人の尊厳、自由・規律、自己責任の原則、すなわち「個性重視の原則」を確立することが重要であること。

2.生涯学習体系への移行

 学校中心や学歴中心の考え方を改め、生涯学習体系への移行を主軸とする教育体系の総合的再編成を図っていかなければならないこと。

3.変化への対応

 教育が直面している最も重要な課題は国際化・情報化への対応であること。
 臨教審以降の教育改革の多くは、この三つの基本的考え方を踏まえ、中教審をはじめ関係審議会等における具体化方策の検討を経て展開されました。例えば、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに、個性を生かす教育の充実などを狙いとした学習指導要領の改訂が、教育課程審議会の答申を受け平成元年に実施されるなど、教育内容・方法の改善が進められました。また、生徒の個性に応じた多様な教育を進めるため、単位制高校や総合学科など新しいタイプの高等学校も創設されました。情報化に対応した教育用コンピュータの整備に向けた国庫補助もこの頃から始まっています。さらに、臨教審で提起された共通第一次学力試験に代わる新たな「共通テスト」が、後に大学入試センター試験として実現するなど、様々な政策が進められています。

4 臨教審後の中央教育審議会等における21世紀の教育の展望

 平成の時代に入り、日本社会は大きな変貌を遂げました。臨教審の4次にわたる答申後、東西の冷戦構造が崩壊し、経済・社会のグローバル化が進む一方、学校においては「学級崩壊」現象が顕在化し、また、青少年犯罪や幼児虐待等が社会問題になりました。21世紀到来を目の前に控え、これからの社会の展望を踏まえつつ、中教審において、今後における教育の在り方について、検討が開始されました。

 平成7年の諮問以来、2年間審議を重ね、2次にわたり取りまとめられた「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(答申)」においては、子供たちに「生きる力」を育むことを基本とし、自己実現や心の豊かさを実現するためにも、一人一人の能力・個性に応じた教育を重視していくことが必要であるとし、様々な提言を行いました。また、平成10年には大学審議会より「21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)」が答申され、21世紀という競争的環境の中で個性が輝く大学創りに向けた方策を提言しました。

5 教育改革国民会議

 時をほぼ同じくして、臨教審答申後の社会の変化に対応するため、教育の基本に遡った幅広い国民的議論が必要との観点から、平成12年3月、内閣総理大臣の下に教育改革国民会議が発足、同年12月に最終報告が取りまとめられました。この報告の中では、教育を変える17の提案として「教育の原点は家庭であることを自覚する」、「一律主義を改め、個性を伸ばす教育システムを導入する」、「職業観、勤労観を育む教育を推進する」、「学校や教育委員会に組織マネジメントの発想を取り入れる」、「新しいタイプの学校(“コミュニティ・スクール等”)の設置を促進する」などの具体的な提案とともに、新しい時代にふさわしい教育基本法の見直しの必要性が提言されました。
 新たな教育基本法に求められる観点としては、以下の三つの観点が示されました。

  1. 時代の変化を考慮し、新しい時代を生きる日本人の育成が必要であること。
  2. 伝統、文化など時代に継承すべきものを尊重し、発展させていくこと。
  3. これからの時代にふさわしい教育を実現するために、教育基本法の内容に理念的事項だけでなく、具体的方策を規定すること。この観点からは、他の基本法と同様、教育振興基本計画策定に
    係る規定を盛り込むべきであること。

 こうした教育改革国民会議の提言を受けて、教育基本法の改正に向けた中教審での検討が進められ
ることになりました。

江崎玲於奈教育改革国民会議座長から森喜朗総理大臣(当時)に提言手交の写真
江崎玲於奈教育改革国民会議座長から森喜朗総理大臣(当時)に提言手交
出典:首相官邸ホームページ

6 教育基本法の改正

 平成13年11月、文部科学大臣から中教審に対して、新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について諮問がなされました。約1年4か月にわたる審議を経て、中教審は平成15年3月、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(答申)」を答申しました。その中で、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、改めて教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正することが必要であるとの提言が行われました。
 その後の3年近くにわたる与党協議会での検討、国会における合計190時間近い審議等を経て、平成18年12月、新しい教育基本法が成立しました。
 改正教育基本法は、これまでの教育基本法が掲げてきた普遍的な理念は継承しつつ、公共の精神など、日本人が持っていた規範意識を大切にすることや、それらを醸成してきた伝統と文化を尊重することなど、今日極めて重要と考えられる理念を明確にしたものです。
 第1条では、「教育の目的」として、人格の完成を目指すことや、国家及び社会の形成者として心身共に健康な国民の育成を期することを規定しています。そして、この教育の目的を実現するために重要と考えられる事柄を、第2条に「教育の目標」として規定しています。また、教育の理念として、「教育の機会均等」に加え、「生涯学習の理念」を新たに規定しています。また、教育に関する重要な事項として、生涯学習の理念(第3条)、大学(第7条)、私立学校(第8条)、家庭教育(第10条)、幼児期の教育(第11条)、学校・家庭・地域の連携協力(第13条)などの条文が、この改正により新たに規定されました。
 さらに、改正教育基本法第17条第1項において、政府は教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本的な計画(教育振興基本計画)を策定することが新たに規定されています。また、同条第2項では、地方公共団体も本計画を参酌し、地域の実情に応じた計画を策定するよう努めることが規定されました。
 これを受けて、平成19年2月に、中教審に教育振興基本計画特別部会が設置され、平成20年4月の答申を受けて、同年7月1日、初めての教育振興基本計画が閣議決定されました。
 本計画の具体的な内容については、第2期教育振興基本計画の検討経緯や内容と併せて、第2節に記述します。

教育基本法成立(伊吹文明文部科学大臣(当時))の写真
教育基本法成立(伊吹文明文部科学大臣(当時))

7 教育再生会議

 平成18年10月、21世紀にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図っていくことを目的として、「教育再生会議」が設置され、社会総がかりで教育再生を図るための方策についての検討が行われました。
 教育再生会議は、約1年4か月の間に3次にわたる報告と、政策の実効性担保を図るための最終報告を取りまとめました。まず、平成19年1月に、いじめ問題をはじめ、義務教育を中心に初等中等教育の当面の課題に焦点を絞り、第一次報告を取りまとめました。同報告を参考に、中教審における具体的な制度設計に関する審議を経て、平成19年の通常国会で、「学校教育法」、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」、「教育職員免許法及び教育公務員特例法」のいわゆる教育三法の改正が行われました。このほか、いじめ問題に対応し、児童生徒に対する毅然とした指導・懲戒に関する通知などが行われました。
 また、「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」(平成17年中央教育審議会)でも必要性が示されていた全国的な学力調査が、平成19年度より約40年ぶりに実施されています。
 第二次報告では、学力の向上、徳育の充実、大学・大学院の改革、教育財政の在り方に重点を置いて提言されており、第三次報告では、小中一貫教育の推進など「6-3-3-4制」の弾力化や英語教育の改革、現場の自主性を活かしたシステム、子供、若者、家庭への総合的な支援などが提言されています。これらも踏まえ、文部科学省において、中教審の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」を経て、平成20年、21年に小中高等学校等の学習指導要領が改訂されています。また、大学の秋入学の促進のため、4月入学原則を撤廃する学校教育法施行規則の改正も行われました。
 平成20年2月には、教育再生会議の理念を引き継いだ教育再生懇談会が内閣に設置され、1年9か月をかけて4次にわたる報告書をとりまとめ、教育再生会議の提言のフォローアップや教育の在り方についての検討を行い、人生前半の社会保障の一層の充実などの取組について提言を行いました。今般内閣に設置された教育再生実行会議においては、以上の教育再生会議等における議論や実績を踏まえつつ、内閣を挙げて教育再生の実行を強力に進めていくこととしています。教育再生実行会議については、第3節において詳しく記述します。
 教育改革は一朝一夕で成るものではなく、全ての国民が連携・協働しつつ、社会総がかりで進めていくことが不可欠です。社会は絶えず変化し、その時代に求められる教育政策も見直しが求められてきました。今後とも、「すべての意志ある者がその能力に応じた教育機会を得られ、持てる能力を最大限伸長し、自己実現を図り、教育を通じて幸福な人生を送れるように」という一貫した思いの下で、引き続き、スピード感を持って教育改革に取り組んでいきます。

第1回教育再生会議の様子(平成18年10月18日)の写真
第1回教育再生会議の様子(平成18年10月18日)
出典:首相官邸ホームページ

第2節 第2期教育振興基本計画

1 教育振興基本計画について

(1)教育振興基本計画とは

 前節において示した経緯により、平成20年7月、教育基本法第17条第1項に基づき、我が国初めての教育振興基本計画が策定されました(第1期計画)。教育振興基本計画は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針や講ずべき施策、その他必要な事項について、政府が定める基本的な計画です。教育基本法に示された教育の理念の実現に向け、第1期計画では、10年間を通じて目指すべき姿を明らかにするとともに、5年間(20から24年度)に取り組むべき施策の四つの基本的方向を整理しており、この基本的方向に沿って諸般の取組を総合的・計画的に実施してきました。

〈10年間を通じて目指すべき教育の姿〉
  1. 義務教育修了までに、すべての子どもに、自立して社会で生きていく基礎を育てる
  2. 社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てる
〈5年間で取り組むべき施策の四つの基本的方向〉
  • 基本的方向1:社会全体で教育の向上に取り組む
  • 基本的方向2:個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる
  • 基本的方向3:教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える
  • 基本的方向4:子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する

(2)第1期計画期間の進捗状況について

 ここでは第1期計画に掲げられた四つの基本的方向に基づき、計画の進捗状況を概観します。

図表1-1-2 第1期教育振興基本計画の進捗状況(基本的方向1)

図表1-1-3 第1期教育振興基本計画の進捗状況(基本的方向2)

図表1-1-4 第1期教育振興基本計画の進捗状況(基本的方向3)

図表1-1-5 第1期教育振興基本計画の進捗状況(基本的方向4)

 以上のような状況を踏まえれば、第1期計画において掲げる「10年間を通じて目指すべき教育の姿」の達成はいまだ途上であると言え、また、教育格差の問題、コミュニティとの協働やICTの活用の重要性、イノベーション創出の必要性など新たな課題も浮かび上がっています。
 これまでの教育改革の多くは、前節にも記載したように、欧米への「追い付き追い越せ」を目標とした社会の終焉や経済社会の成熟化など21世紀の社会を見据えて進められてきました。特に第1期計画は、主要先進国の多くが、成果目標などを盛り込んだ中長期計画を策定するなど、戦略的に教育政策を進めている状況にあって、初めて策定した総合的な計画でした。このような様々な改革努力により教育諸条件は向上しましたが、繰り返し指摘されてきた諸課題は依然として未解決のものも多く、より複雑化・顕在化しています。また、急速な社会変化により近年新たに生じた課題についても、必ずしも全てに十分に対応できているとは言えません。

2 第2期教育振興基本計画の策定

 第2期計画の策定に当たっては、前述のような第1期計画期間の施策の実施状況や社会情勢の変化、さらには東日本大震災の影響や教訓を十分に検証・評価し、これらを踏まえて新たな教育振興のための基本的な方針及び諸方策を明らかにすることが求められました。
 平成23年6月に、文部科学大臣より中央教育審議会に対して、第2期計画の策定について諮問が行われてから、同教育振興基本計画部会において約2年にわたり、23回の審議が重ねられ、平成25年4月25日に「第2期教育振興基本計画について(答申)」が取りまとめられました。
 その後、政府内での調整を経て、平成25年6月14日に第2期の「教育振興基本計画」が閣議決定されました。ここでは、その内容について触れていきます。
 第2期計画は、平成25年度から平成29年度までの5年間の計画です。前文では本計画のコンセプトとして、「今まさに我が国に求められているもの、それは、自立・協働・創造に向けた一人一人の主体的な学びである」と示しており、その上で、「教育成果の保証に向け、明確な成果目標と、それを実現するための具体的かつ体系的な方策を明記すること」としています。
 第2期計画は、大きく3部構成をとっており、第1部では総論として、我が国における今後の教育の全体像を、第2部は各論として、今後5年間に実施すべき教育上の方策を、そして第3部では施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項をそれぞれ記載しています。

三村中央教育審議会会長から下村文部科学大臣への答申の手交の写真
三村中央教育審議会会長から下村文部科学大臣への答申の手交

(1)第1部(総論) 我が国における今後の教育の全体像

1.我が国の教育の課題

 第2期計画では、グローバル化の進展などにより世界全体が急速に変化する中にあって、産業空洞化や生産年齢人口の減少など深刻な諸課題を抱える我が国は、極めて危機的な状況にあると強調しています。また、東日本大震災の発生は、この危機的状況を一層顕在化・加速化させており、これまでの物質的な豊かさを前提にしてきた社会の在り方、人の生き方に大きな問いを投げ掛けていると指摘しています。一方で、日本には世界から評価される「人の絆きずな」や基礎的な知識技能の平均レベルの高さなど様々な「強み」があり、これらを踏まえて、経済成長のみを追求するのではない、成熟社会に適合した新たな社会モデルを構築していくことが求められているとしています。
 その上で、第1期計画の評価を行っていますが、総じて言えば、教育の現状と課題としては、第1期計画で掲げた「10年を通じて目指すべき教育の姿」の達成はいまだ途上段階にあると総括しており、以下の点が指摘されています。

○個々人の多様な強みを引き出すという視点の不足
 高度経済成長期における我が国社会では、価値観や人材の同質性・共通性に基軸が置かれてきたが、それらが重視されてきた結果、個々人の多様な強みを引き出すという視点が不足していたこと

○学校段階間や学校・社会間の接続の不足
 生涯学習社会の理念の共有が道半ばであり、教育に対する社会全体の連携の強化や各学校段階間や学校・社会生活間において円滑に接続ができていないこと、ともすれば縦割り的な視点に陥って
いたこと

○十分なPDCAサイクルの不足
 「どのような成果を目指すのか」「どのような力の修得を目指すのか」といった明確な目標が設定され、その取組の成果について、データに基づく客観的な検証を行い、そこで明らかになった課題等をフィードバックし、新たな取組に反映させるPDCAサイクルが、教育行政、学校、学習者等の各レベルにおいて、必ずしも十分に機能していなかったこと

2.東日本大震災からの教訓

 第2期計画の答申に向けた中央教育審議会の議論では、第1期計画の評価だけではなく、東日本大震災の教訓を我が国全体のものとして捉え、被災地の復興とともに、我が国全体が希望を持って、未来に向かって前進していくための方策を検討する必要があるとの観点から、被災地の教育委員会や大学からヒアリングによる審議が行われました。
 東日本大震災は、地震や津波のみならず、原子力発電所の事故も伴う複合的かつ甚大なものでしたが、被災地では子供たちの主体的にボランティアに取り組む姿や、厳しい学習環境の中で懸命に自学自習に打ち込む姿、地域住民やボランティア等の献身的かつ積極的な行動など、希望や「人の絆きずな」の存在を感じさせる場面も多くありました。
 このことを踏まえ、第2期計画では、大震災の体験から見出した我が国が直面する危機を打破するための手掛かり(教訓)として、例えば、以下のものを挙げています。

  • 困難に直面しようとも、諦めることなく、状況を的確に捉えて自ら考え行動する力の重要性
  • 新たな社会的・経済的価値を生み出すイノベーションの創造など、未来志向の復興・社会づくりを目指していくこと、そのための人材育成の重要性
  • 居住地域や経済的理由など子ども・若者が置かれている環境に関わらず、全ての子ども・若者が耐震化等の施された安全な学校施設で安心して必要な力を身に付けていける環境整備の重要性
  • 人々や地域間、各国間に存在するつながり(絆きずな)や、人と自然の共生の重要性
3.今後の社会の方向性

 このような我が国が直面する危機、第1期計画の評価、さらには東日本大震災から得られた教訓を踏まえれば、今後の社会の方向性としては、個人の「自立」、様々な人との「協働」、新たな価値の「創造」の三つをキーワードとし、その実現に向けた生涯学習社会の構築が必要であるとしています。

  • 自立:一人一人が、多様な個性・能力を伸ばし、充実した人生を主体的に切り拓いていくことのできる生涯学習社会
  • 協働:個人や社会の多様性を尊重し、それぞれの強みを生かして、共に支え合い、高め合い、社会に参画することのできる生涯学習社会
  • 創造:これらを通じて更なる新たな価値を創造していくことのできる生涯学習社会
     そして、これにより、次のように、先に述べた危機が回避されるシナリオを描くことができるとしています。
  • 人々の潜在力が社会の様々な分野で最大限に生かされるよう、社会の構成員全てが、多様な個性と能力を高め、十分に発揮できる「生涯現役・全員参加型」社会を構築し、今後の社会の担い手が増加するとともに、社会格差が改善。
  • 高度の職業能力を持つ人材、グローバルに活躍する人材、イノベーションを実現する人材の養成・確保を図り、成長分野の産業活性化、新産業の創出などが実現。
  • 一人一人、さらには社会全体の絆づくりを図り、社会関係資本が形成。

図表1-1-6 自立・協働・創造モデル

4.教育行政の四つの基本的方向性

 第2期計画期間においては、第1期計画で掲げた「10年間を通じて目指すべき姿」を達成すると同時に、「自立」「協働」「創造」を基軸とした新たな社会モデルを実現するための生涯学習社会の構築を旗印として、教育の再生に向けた各般の施策を推進していくこととしています。
 以上を踏まえ、第2期計画にあっては、各学習機会を通じた以下の四つの横断的視点で教育の在り方を捉え、これを基本的方向性として必要な方策を整理しています。

  1. 社会を生き抜く力の養成
     社会が激しく変化する中で、「教育成果の保証」に向けた条件整備を図ることにより、自立と協働を図るための能動的・主体的な力である「社会を生き抜く力」を誰もが身に付けられるようにすること。
  2. 未来への飛躍を実現する人材の養成
     変化や新たな価値を主導・創造しイノベーションを実現する人材、グローバル社会において各分野を牽引できるような人材、すなわち「未来への飛躍を実現する人材」を養成すること。
  3. 学びのセーフティネットの構築
     厳しい経済情勢において社会的格差等の問題が指摘される現在、上記2点を達成するための基礎的な条件として、教育負担の軽減や学校施設の耐震化など、安全・安心で充実した教育機会にアクセスできるようにすること、すなわち社会参画・自立に向けた「学びのセーフティネット」を構築すること。
  4. 絆づくりと活力あるコミュニティの形成
     以上の取組をより実効的に進めるためには、個々人の取組に委ねるのではなく、社会全体の協働関係において推進していくこと、いわゆる社会関係資本を充実することが重要です。このため、社会のつながりの希薄化などが指摘される中にあって、学校教育内外の多様な環境から学び、相互に支え合い、そして様々な課題の解決や新たな価値の創出を促す「絆づくりと活力あるコミュニティ」の形成を図ること。
5.教育投資の在り方

 これらの方向性を実現するための裏付けとなる教育投資の在り方については、教育の効果は広く社会全体に還元されるものであり、教育への投資は学習者本人のみならず社会全体で確保する必要があるとしており、具体的には、現下の様々な教育課題を踏まえ、

  • 協働型・双方向型学習など質の高い教育を可能とする環境の構築
  • 家計における教育費負担の軽減
  • 安全・安心な教育研究環境の構築(学校施設の耐震化など)

の3点を中心に充実を図ることとしています。
 また、教育の再生は最優先の政策課題の一つであり、欧米主要国を上回る質の高い教育の実現が求められています。このため、OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とし、第2期計画期間内においては、各成果目標の達成や基本施策の実施に必要な予算について財源を措置し、真に必要な教育投資を確保していくことが必要であるとしています。

図表1-1-7 第2期教育振興基本計画第1部総論概要

(2)第2部(各論)今後5年間に実施すべき教育上の方策

1.四つの基本的方向性の実現に向けた基本的な考え方

 国が行う教育政策の意義を国民の間で共有し、効果的かつ着実に実施するためには、明確な目標設定と成果の客観的な検証、判明した課題をフィードバックし、新たな取組に反映させる検証改善サイクル(PDCAサイクル)の実践が重要です。
 そこで、第1部で示した四つの基本的方向性の実現のため、第2部においては、第2期計画期間である5年間における1.成果目標、2.成果目標の達成度を検証するための成果指標、3.成果目標の実現に必要な具体的施策を示しています。また、各々の成果目標は、初等中等教育段階、高等教育段階、そして生涯学習に関するものに体系的に整理しています。
 また、四つの基本的方向性のいずれにも関係すると考えられる方策については、「四つの基本的方向性を支える環境整備」として位置付けるとともに、東日本大震災からの復旧・復興支援についても一つの柱として整理しています。

2.四つの基本的方向性に基づく方策

 四つの基本的方向性の実現のための八つの成果目標と、成果指標、基本施策の一例を以下にご紹介します。個々の基本施策の説明については、第2部での説明が詳しいので簡潔にとどめます。

4のビジョン(基本的方向性)、8のミッション(成果目標)、30のアクション(基本施策)(★成果指標の例、◆基本施策の例)

1.社会を生き抜く力の養成

1 生きる力の確実な育成(幼稚園~高校)
 ⇒ 生涯にわたる学習の基礎となる「自ら学び、考え、行動する力」などを確実に育てる。

★国際的な学力調査の平均得点を調査国中トップレベルにする。あわせて、習熟度レベルの上位層の増加、下位層の減少。

★全国学力・学習状況調査における過去の調査との同一問題の正答率の増加、無解答率の減少

★いじめ、不登校、高校中退者の状況改善等(いじめの認知件数に占める、いじめの解消しているものの割合の増加、全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合、高校中退者の割合の減少など)

★今後10年間で子どもの体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す

◆新学習指導要領を踏まえた言語活動等の充実
 ⇒特に思考力・判断力・表現力等の効果的な育成に向け、各教科等を通じた言語活動の充実のための取組を推進
 ⇒各地域の実情を踏まえた土曜日における授業や体験活動の実施など土曜日の活用の促進 など

◆ICTの活用などによる協働型・双方向型学習の推進
 ⇒確かな学力を効果的に育成するため、ICTの積極的活用など指導方法・指導体制の工夫改善を通じた協働型・双方向型の授業革新の推進 など

◆豊かな心の育成
 ⇒「心のノート」をさらに充実させ、全小・中学生への配布
 ⇒道徳を新たな枠組みにより教科化することの検討 など

◆いじめ、暴力行為等の問題への取組の徹底
 ⇒未然防止のため、道徳教育・人権教育・体験活動等の推進、非行防止教室の開催などの取組を促進
 ⇒いじめの防止対策に関する法制化の促進 など

◆全国学力・学習状況調査(全数調査の継続実施)
 ⇒全数調査の継続的実施
 ⇒経年変化分析や家庭の状況と学力等の状況の把握・分析等が可能な「きめ細かい調査」の組み入れ など

◆子どもの成長に応じた柔軟な教育システム等の構築に向けた、学制の在り方を含めた検討
 ⇒6・3・3・4制の在り方を含め、学校制度やその運用等に関する調査研究を実施し、その状況等も踏まえた幅広い検討の推進 など

2 課題探求能力の修得(大学~)
 ⇒ どんな環境でも「答えのない問題」に最善解を導くことができる力を養う。

★学生の学修時間の増加(欧米並みの水準)

★教育課程の体系化、組織的な教育の実施、授業計画の充実など全学的な教学システムの整備状況の向上

◆学生の主体的な学び確立による大学教育の質的転換
 ⇒学長を中心に、改革サイクルが機能する全学的な教学マネジメント確立の促進
 ⇒学生の学修時間や留学等の多様な経験を行う機会を確保する観点から就職・採用活動開始時期の変更 など

◆点からプロセスよる質保証を重視した高大接続
 ⇒大学入学者選抜の改善をはじめとする高大の円滑な接続と連携の促進(高等学校段階での学習到達度テストの結果の活用などを含めた入試の抜本的な改革) など

3 自立・協働・創造に向けた力の修得(生涯全体)
 ⇒ 社会を生き抜くための力を生涯を通じて身に付けられるようにする。

★現代的・社会的な課題に対応した学習を行った人の割合の増加

★体験活動・読書活動の実施状況等の改善(体験活動を行う児童生徒等の数の増加、全校一斉の読書活動を実施する学校の割合の増加など)

◆現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進
 ⇒男女共同参画社会形成の促進、人権、環境保全、消費生活、地域防災・安全、スポーツ等について、学習機会の充実の促進 など

◆学校内外における様々な体験活動・読書活動の推進
 ⇒社会体験や国際交流体験など、特に青少年を対象とした体験活動の推進や、「子どもの読書活動の推進に関する基本計画」に基づく読書活動の推進 など

◆学習の質の保証と学習成果の評価活用を推進
 ⇒評価・情報公開の仕組みの構構・普及、教育支援人材の認証制度の推進 など

4 社会的・職業的自立に向けた力の育成

★児童生徒の進路に向けた意識の向上(将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加など)

★職場体験・インターンシップの実施状況の改善

★大学等への社会人受入状況の改善

◆体系的・系統的なキャリア教育の充実
 ⇒子ども・若者の発達の段階に応じて学校の教育活動全体を通じた指導 など

◆社会人の学び直しの機会の充実
 ⇒大学等の生涯を通じた学びの場としての機能強化や、企業等の学び直しへの理解促進や奨学金制度の弾力的運用を含めた環境整備 など

2.未来への飛躍を実現する人材の養成

5 新たな価値を創造する人材、グローバル人材等の養成

★国際科学技術コンテストへの参加者の増加

★世界で戦える「リサーチユニバーシティ」を10年後に倍増

★2020年を目途に日本人の海外留学生数を倍増

★学習指導要領に基づき達成される英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上、高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上)を達成した中高校生の割合50%

★英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級、TOEFLiBT80点、TOEIC730点程度以上)を達成した英語教員の割合(中学校:50%、高等学校:75%)

★大学における外国語による授業の実施率(外国語による授業/全授業数)の増加

★大学の入学時期の弾力化状況の改善(4月以外で入学した学生数の増加)

◆優れた才能や個性を伸ばす仕組みの推進
 ⇒飛び入学制度の活用を図り、各大学における積極的な取組の促進
 ⇒高等学校段階における早期卒業制度の検討 など

◆外国語教育の強化や留学生交流・国際交流の推進、大学・高校等の国際化のための取組の支援
 ⇒小学校における英語教育実施学年の早期化、指導時間増、教科化、指導体制の在り方等の検討 ⇒大学入試におけるTOEFL等外部検定試験の活用
 ⇒留学生の経済的負担軽減のための寄附促進や給付を含む官民が協力した新たな仕組みの創設
 ⇒高校段階から世界で戦えるグローバル・リーダーを育てるため、スーパーグローバルハイスクールを創設 など

◆大学院教育の抜本的改革の支援
 ⇒専門分野の枠を超えた博士課程教育の構築・展開に向けた大学院教育の抜本的改革や産業会など社会と大学院との連携による人材育成等への支援 など

3.学びのセーフティネットの構築

6 意欲ある全ての者への学習機会の確保

★経済的な理由による高校中退者の数の減少

★家庭の経済状況等が学力に与える影響の改善

★奨学金の希望者のうち、貸与を受けることができた者の割合の増加

★低所得世帯の学生のうち授業料減免を受けている者の割合の改善

◆各学校段階を通じた切れ目のない教育費負担軽減
 ⇒幼児教育の負担軽減・無償化の検討、義務教育段階の就学援助の実施、低所得世帯等の高校生への修学支援の充実、低所得世帯等の大学生・専門学校生への支援の充実 など

◆挫折や困難を抱えた子ども・若者の学び直しの機会を充実
 ⇒家庭環境等の要因により学力定着等が困難な児童生徒が多く在席する学校における補充学習等のきめ細かい指導や学び直しの機会の充実 など

7 安全・安心な教育研究環境の確保

★学校施設の耐震化率の向上(公立学校について平成27年度までのできるだけ早期の耐震化の完了など)

★学校管理下における事件・事故災害で負傷する児童生徒等の減少

◆学校の耐震化、非構造部材の耐震対策を含む防災機能強化、老朽化対策の推進

◆主体的に行動する態度を育成する防災教育等の学校安全に関する教育、地域社会・家庭・関係機関と連携した学校安全の推進

4.絆づくりと活力あるコミュニティの形成

8 互助・共助による活力あるコミュニティの形成

★全ての学校区において、学校支援地域本部など学校と地域の連携・協働体制を構築

★コミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割に拡大

◆コミュニティ・スクール、学校支援地域本部等の普及
 ⇒コミュニティ・スクールの拡大や実効性ある学校関係者評価の実施の促進、学校裁量権拡大の促進や、学校支援地域本部等の取組の充実 など

◆大学等のセンターオブコミュニティ構想(COC構想)の推進
 ⇒地域の高等教育機関が全学的に連携し、解決困難な地域の諸課題に対して学生が課題解決に参加 など

◆家庭教育支援体制の強化
 ⇒親の学びを応援するため、小学校等の地域の身近な場において、親が交流・相談できる拠点機能の整備 など

4つの基本的方向性を支える環境整備

◆教育委員会の抜本的改革
 ⇒教育委員会の責任体制を確立し、現場の問題に迅速かつ的確に対応できるよう、その抜本的な改革のための検討

◆きめ細かで質の高い教育のための教職員等の指導体制の整備
 ⇒少人数学級の推進、習熟度別指導、小学校における専科指導等の充実、格差解消のための補充学習支援 など

◆大学におけるガバナンス機能の強化
 ⇒学長のリーダーシップによる適切な意志決定を可能とする組織運営の確立、基盤的経費のメリハリある配分 など

◆大学の財政基盤の確立と施設整備
 ⇒国立大学運営費交付金や私学助成など財政基盤の確立と基盤的経費のメリハリある配分 など

◆私立学校の振興
 ⇒基盤的経費等の公財政支援その他の施策の充実・推進、学生等の経済的負担の軽減 など

◆社会教育推進体制の強化
 ⇒社会教育行政が様々な主体と連携・協働し、地域課題の解決に取り組んでいる先進的な地方公共団体の支援など

図表1-1-8 第2期教育振興基本計画第2部各論概要 

図表1-1-9 第2期教育振興基本計画体系イメージ

 第3部においては、施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項として、的確な情報の発信と国民の意見等の把握・反映、進捗状況の点検及び計画の見直しを挙げています。
 第2期計画の根底に流れているのは、我が国の置かれた現状に対する「危機感」です。一律の正解が存在しない今、その「危機感」をそれぞれが当事者として共有し、何もしないことが最大のリスクであるという認識の下で、自ら果たすべき課題を追究し、それぞれの現場で行動することが今まで以上に重要となっています。
 文部科学省としては、第2期計画を踏まえ、教育の持つ力と可能性を信じ、社会を構成する全ての国民一人一人と協働しつつ、今後も教育改革に全力で取り組んでまいります。

第3節教育再生に向けた重要課題

1 教育再生実行会議の開催

(1)開催の閣議決定

 21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移していくため、内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進することとしています。そのため、政府では、平成25年1月15日に、「教育再生実行会議」(以下、「会議」とする。)の開催を閣議決定しました。

教育再生実行会議担当室の看板掛けの様子の写真
教育再生実行会議担当室の看板掛けの様子
写真提供:内閣広報室

(2)会議の構成と目的

 会議は、内閣総理大臣、内閣官房長官、文部科学大臣兼教育再生担当大臣に加え、座長の鎌田薫氏、副座長の佃和夫氏をはじめとする、教育界、経済界、地方公共団体などの幅広い分野の15名の有識者等から構成され、教育再生を実現するための諸施策についての検討を行っています。
 会議では、平成18年から20年の教育再生会議の提言や実績を踏まえながら、教育再生の実行のために直面する事項について、基本的な方向性を集中的かつ迅速に検討することとしています。

図表1-1-10 教育再生実行会議構成員

 平成25年1月24日に開催された初会合では、安倍総理大臣から、教育再生は経済再生と並ぶ日本国の最重要課題であること、教育再生の最終的な大目標は、世界トップレベルの学力と規範意識を身に付ける機会を保障することであること、18年の教育基本法改正の理念を実現し、教育の再生に全力を挙げて取り組んでいくことなどの挨拶がありました。

会議の様子の写真
会議の様子
写真提供:内閣広報室

(3)会議の提言の実行について

 会議では、いじめの問題、教育委員会の在り方、大学教育の在り方等のテーマについて、順次、改革の方向性を提言してきています。それを受け、文部科学省をはじめとする関係省庁は、その実行のために必要な方策の実施や検討を行うこととしており、特に制度改正を要する事項等については中央教育審議会で、その具体的な実施方策等を調査審議することとしています。このように、提言の迅速な実行のため、文部科学大臣兼教育再生担当大臣が中心となり、内閣を挙げて取り組むこととしています。

2 いじめの問題等への対応について

(1)第一次提言について

 会議では、いじめ等で今も悩み苦しんでいる子供を救うため、最初のテーマとして、いじめ・体罰の問題に関して議論を進め、平成25年2月26日、「いじめの問題等への対応について(第一次提言)」を取りまとめました。この中では、1.道徳教育の抜本的充実や新たな枠組みによる教科化の検討、2.いじめに対峙していくための法律の制定、3.体罰禁止の徹底等、について提言されています。この提言は、3月1日の閣議に報告され、安倍内閣総理大臣から、いじめ・体罰の問題は喫緊の課題であることから、下村文部科学大臣兼教育再生担当大臣を中心として、関係閣僚の連携の下、スピード感を持って提言の実行に取り組むよう指示が出されました。

(2)第一次提言を受けた文部科学省の対応について

 これを受けて文部科学省では、道徳教育の充実に関する懇談会を開催し、「心のノート」の全面改訂、教員の指導力向上、道徳の教科化の具体的な在り方等についての検討を開始するとともに、いじめ対策等総合推進事業の実施、体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底についての通知の発出、運動部活動での指導ガイドラインの作成等を行っています。
 また、第183回国会において成立した「いじめ防止対策推進法」に基づき、いじめの問題に関する対策の実施を一層推進していくこととしています。

安倍内閣総理大臣に提言を手交する鎌田座長の写真
安倍内閣総理大臣に提言を手交する鎌田座長

図表1-1-11 いじめの問題等への対応について(教育再生実行会議第一次提言概要)

3 教育委員会制度等の在り方について

(1)第二次提言について

 その後、会議では、教育委員会の在り方について議論を進めました。教育委員会については、1.権限と責任の所在が不明確である、2.地域住民の意向を十分に反映していない、3.教育委員会の審議等が形骸化している、4.迅速さ、機動性に欠ける等の課題が指摘されていることを踏まえ、実際に委員による教育委員会会議の視察も行いながら議論を進め、平成25年4月15日、「教育委員会制度等の在り方について(第二次提言)」を取りまとめました。この中では、1.地方教育行政の権限と責任を明確にし、全国どこでも責任ある体制を築くこと、2.責任ある教育が行われるよう、国、都道府県、市町村の役割を明確にし、権限の見直しを行うこと、3.地方教育行政や学校運営に対し、地域住民の意向を適切に反映することについて提言されています。この提言は、同年4月16日の閣議に報告され、安倍内閣総理大臣から、制度発足以来、半世紀以上が経過した教育委員会の抜本的改革により、教育再生の基盤が築かれるものと考えており、提言を着実に実行していくよう指示が出されました。

図表1-1-12 教育委員会制度等の在り方について(教育再生実行会議第二次提言概要)

(2)第二次提言を受けた文部科学省の対応について

 これを受けて文部科学省では、必要な法律改正の在り方を含めた、より具体的な改革方策について中央教育審議会に諮問しました。今後答申を得て、関係法律の改正案を国会に提出することを目指すなど、提言の実現に向けて取り組んでいきます。

会議の様子の写真 
会議の様子
写真提供:内閣広報室

4 これからの大学教育等の在り方について

(1)第三次提言について

 続いて会議では、大学教育・グローバル人材の育成について議論を進め、平成25年5月28日、「これからの大学教育等の在り方について(第三次提言)」を取りまとめました。この中では、1.グローバル化に対応した教育環境づくりを進めること、2.社会を牽引するイノベーション創出のための教育・研究環境づくりを進めること、3.学生を鍛え上げ社会に送り出す教育機能を強化すること、4.大学等における社会人の学び直し機能を強化すること、5.大学のガバナンス改革、財政基盤の確立により経営基盤を強化すること、について提言を行っています。この提言は、同年5月31日の閣議に報告され、安倍内閣総理大臣から、国家戦略として、世界に勝てる大学への改革に取り組んでいくため、提言を着実に実行していくよう指示が出されました。この提言の内容は、同年6月14日に閣議決定された、政府の日本再興戦略に盛り込まれ、その実現に内閣を挙げて取り組むこととされています。

 図表1-1-13 これからの大学教育等の在り方について(教育再生実行会議第三次提言概要)

(2)第三次提言を受けた文部科学省の対応について

 今後、文部科学省では、日本再興戦略も踏まえ、制度改正を伴うものについては中央教育審議会等で審議を行い、必要なものについては関係法令を改正するなど、提言の着実な実現に取り組んでいきます。

5 今後の審議予定

 現在、会議では高大接続・大学入試の在り方について議論を進めています。さらにその後、6・3・3・4制の在り方等について検討を行うこととしています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成25年10月 --