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第7章 文化芸術立国の実現

第7章 総論

文化芸術振興施策の総合的推進

 平成13年、文化芸術全般にわたる法律として「文化芸術振興基本法」が制定されました。この法律は、文化芸術に関する活動を行う人々の自主的な活動を推進することを基本としながら、文化芸術振興に関する施策の総合的な推進を図り、心豊かな国民生活と活力ある社会の実現に貢献することを目的としています。
 文化芸術振興基本法に基づき、政府は、文化芸術振興に関する施策の総合的な推進を図るため、「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(「基本方針」)を策定し、この基本方針に基づき「文化芸術立国」を目指して文化芸術の振興に取り組んでいます。

-我が国の文化芸術をめぐる状況-
 内閣府「国民生活に関する世論調査」によれば、「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」と考える国民の割合はおおむね増加傾向にあり、平成23年度では約6割となっています(図表2-7-1)。
 また、内閣府「文化に関する世論調査」(平成21年11月)によれば、日常生活の中で、優れた文化芸術を鑑賞したり、自ら文化活動を行ったりすることを「非常に大切」、「ある程度大切」と考える国民は、約9割となっています(図表2-7-2)。

図表2-7-1 人々の求める豊かさ

図表2-7-1 人々の求める豊かさ

図表2-7-2 日常生活における文化芸術の体験・活動の重要性

図表2-7-2 日常生活における文化芸術の体験・活動の重要性

 文化芸術振興のために国に力を入れてほしい事項として、約5割の国民が「子どもたちの文化芸術体験の充実」を挙げています。それに次いで、約4割の国民が「文化芸術を支える人材の育成」、「文化財の維持管理に対する支援」を挙げています(図表2-7-3)。
 文化庁では、基本方針に基づき、子どもたちの文化芸術体験、人材育成、文化財の保存・活用を含め、文化芸術振興のための諸施策を展開しています。

図表2-7-3 文化芸術振興のために国に力を入れてほしい項目

図表2-7-3 文化芸術振興のために国に力を入れてほしい項目

 文化芸術は、過去から未来へと受け継がれ、人々に喜びや感動を与えると同時に、経済や国際協力をはじめ我が国の全ての営みの基盤として極めて重要なものです。
 こうした文化芸術の持つ重要性を考慮し、文化庁では、今後とも文化芸術の振興に努めていくこととしています。

-文化芸術振興基本法と基本方針-
 文化芸術振興に対する国民の要望の高まりなどを背景に、平成13年11月、議員立法による文化芸術振興基本法が成立し、同年12月、公布・施行されました。
 この法律は、芸術、メディア芸術、伝統芸能、生活文化、文化財などの文化芸術振興に関する基本理念を定め、国と地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文化芸術振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、文化芸術活動を行う者の自主的な活動を促進し、文化芸術振興に関する施策の総合的な推進を図ろうとするものです。
 基本方針は、同法に基づき、文化芸術振興に関する施策の総合的な推進を図るため、政府が策定するものです。文化庁では、これまで第1次基本方針(平成14年12月閣議決定)、第2次基本方針(19年2月閣議決定)、第3次基本方針(23年2月8日閣議決定)(図表2-7-4)に基づき、文化芸術振興に取り組んできました。

図表2-7-4 第3次基本方針の概要

図表2-7-4 第3次基本方針の概要

-文化審議会-
 平成13年1月の中央省庁等改革により、文化振興に向けた政策立案機能を強化するため、文化庁に文化審議会が設けられました。文化審議会では、国語分科会、著作権分科会、文化財分科会、文化功労者選考分科会の4分科会のほか、文化政策部会、美術品補償制度部会、世界文化遺産・無形文化遺産部会を設置し、文化の振興や国際文化交流の振興に関する重要事項などについて幅広い観点から調査審議を行っています。
 文化審議会は、これまでに10の答申などを行い、文化庁では、これらを受けて各種施策に取り組んでいます。

〈これまでの主な答申など〉

  • 「文化を大切にする社会の構築について-一人一人が心豊かに生きる社会を目指して(答申)」(平成14年4月)
  • 「文化芸術の振興に関する基本的な方針について(答申)」(平成14年12月)
  • 「これからの時代に求められる国語力について(答申)」(平成16年2月)
  • 「今後の舞台芸術創造活動の支援方策について(提言)」(平成16年2月)
  • 「地域文化で日本を元気にしよう!(報告)」(平成17年2月)
  • 「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて(答申)」(平成19年2月)
  • 「敬語の指針(答申)」(平成19年2月)
  • 「舞台芸術人材の育成及び活用について(報告)」(平成21年7月)
  • 「改定常用漢字表(答申)」(平成22年6月)
  • 「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)について(答申)」(平成23年1月)
コラムNo.31 第3次基本方針の策定とPDCAサイクルの確立

 文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針、平成23年2月8日閣議決定)においては、文化芸術振興施策の着実かつ継続的な実施を図るとともに、国民への説明責任の向上に資するため、同基本方針に掲げる重点戦略についてPDCA(計画、実行、検証、改善)サイクルを確立する必要があり、そのために有効な評価手法の確立に努めることとしています。この方針を基に、文化庁では、有効な評価手法の確立に資するよう第3次基本方針に基づく主要な文化施策の評価に必要な指標の開発などに関する調査研究を行っています。
 平成23年度には、アンケート調査票など個別の取組事例に関する基礎的データや効果の測定様式と施策全体の評価様式を作成しました。

-文化芸術振興のための予算・税制措置-
(予算措置)
 平成23年度予算は、「豊かな文化芸術の創造と人材育成」、「我が国のかけがえのない文化財の保存・活用・継承等」、「我が国の優れた文化芸術の発信・国際文化交流の推進」といった主要な施策により、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)」(23年2月閣議決定)の重点戦略を推進する内容となっています。
 「豊かな文化芸術の創造と人材育成」では、文化芸術創造活動への新たな支援や芸術家などの人材育成のため、芸術団体の創造活動への支援の重点化や、次世代人材育成プロジェクトなどの施策を推進しました。
 「我が国のかけがえのない文化財の保存・活用・継承等」では、文化財の保存修理・防災施設などの充実や、文化財の整備・活用などの推進を図り、文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業を新たに行うとともに、「我が国の優れた文化芸術の発信・国際文化交流の推進」では、1.優れた舞台芸術・メディア芸術などの戦略的発信、2.文化財の国際協力の推進、3.外国人に対する日本語教育の推進、4.文化発信を支える基盤整備を実施しました。なお、日本及び諸外国における「国家予算に占める文化予算の割合」、「GDPに占める寄附の割合」は、図表2-7-6のとおりです。

図表2-7-5 平成23年度文化庁予算(分野別)

図表2-7-5 平成23年度文化庁予算(分野別)

図表2-7-6 文化予算と寄附額(諸外国との比較)

図表2-7-6 文化予算と寄附額(諸外国との比較)

(税制措置)

(1)文化芸術団体に対する寄附金に関する税制措置
 一般に、企業が寄附を行った場合は、当該寄附金について、一定額まで損金算入することが認められています。さらに、芸術の普及向上や文化財などの保存活用、博物館の設置運営などを主な目的とする特例民法法人のうち一定の要件を満たすもの等の特定公益増進法人に対する寄附金については、個人の場合には寄附金控除(所得控除)、企業などの法人の場合には一般の寄附金の損金算入限度額に加えて、更に別枠で損金算入することが認められています。
 特に個人からの寄附に関しては、平成19年から、寄附金控除の限度額が所得金額の30%から40%に引き上げられ、22年から、寄附金控除の適用下限額が5千円から2千円に引き下げられるなど、文化芸術団体に対する支援をより行いやすいよう措置されています。また、23年度税制改正において、「新しい公共」によって支え合う社会の実現に向けて、認定特定非営利活動法人や一定の公益社団・財団法人などへの寄附に対する税額控除などが創設されています。

(2)文化財に関する税制措置
 文化財の分野でも、重要文化財などとして指定、選定、登録された家屋やその敷地については、固定資産税を非課税や2分の1課税とするなど、所有者が文化財を適切に管理する上で必要な税制上の優遇措置をとっています。また、重要文化財を国や地方公共団体などへ譲渡した場合は所得税が非課税(史跡などに指定された土地については、特別控除)となり、建造物(登録有形文化財・重要伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物を含む。)とその敷地については、相続税額の算出において、一定の評価減を行うこととされています。また、平成23・24年度の措置として、公益社団・財団法人が所有する重要無形文化財の公演のための施設について固定資産税・不動産取得税・都市計画税が2分の1課税となっています。
 さらに、優れた美術品の美術館・博物館における公開を促進するために、登録美術品として登録された美術品については、相続税の物納の特例措置が設けられています。

第1節 芸術創造活動の推進

1 芸術創造活動の活性化支援

(1)文化芸術活動に対する効果的な支援

 文化庁では、我が国の文化芸術の振興を図るため、芸術水準向上の直接的な牽(けん)引力となる、音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、大衆芸能の各分野の公演に対して重点的に支援する「トップレベルの舞台芸術創造事業」を行っています。
 これまでは、文化芸術団体への支援については、1公演ごとに、出演費、会場費、宣伝費などの支援対象経費の1/3以内かつ自己負担金の範囲内で支援を行ってきましたが、自己収入を増やすと支援額が減少するため、文化芸術団体が公演収入を増加させるインセンティブが働かないという課題がありました。
 このため、文化庁では、文化芸術団体が公演収入を増加させるインセンティブを向上させるとともに、優れた芸術創造活動に専念できるよう、平成23年度から、「トップレベルの舞台芸術創造事業」として、第3次基本方針を踏まえ、以下のような新たな支援の仕組みにより文化芸術活動への新たな支援を実施しています。

(新たな支援の仕組みのポイント)

  1. 公演本番に必要な出演料、会場費などについてはチケット収入などの自己収入で賄い、支援は、脚本や演出、稽古などの公演以前の芸術創造活動に必要な費目に限定
  2. 一定期間を見越し、安定した芸術創造活動を実施できるよう、1事業単位の支援を行うだけでなく、年間の優れた芸術創造活動を総合的に支援する年間事業支援の仕組みの導入
  3. 年間事業支援を受ける団体については、概算払制度の導入
     なお、文化庁では、これらの支援方法の見直しが、補助事業等に係る不正受給などの不正な行為を防止し、国民の税金を財源とする補助金等をより適切に執行するためにも有効な手段の一つになると考えています。
     また、文化芸術活動への支援をより効果的に行い、PDCAサイクルを確立するため、平成23年度から日本芸術文化振興会において、専門家を活用した審査・評価の仕組みを試行的に導入しています(「トップレベルの舞台芸術創造事業」のうち、音楽、舞踊の2分野において実施)。

(2)芸術文化振興基金

 芸術文化振興基金は、全ての国民が芸術文化に親しみ、自らの手で新しい文化を創造するための環境の醸成とその基盤の強化を図る観点から、安定的・継続的に多様な芸術文化活動に援助を行うことを目的として、平成2年3月に設けられました。約653億円(政府からの出資金約541億円、民間からの出えん金約112億円)の基金を日本芸術文化振興会が運用しています。
 なお、芸術文化の振興を図るために、寄附金を募り、その拡大に努めています。
〈芸術文化振興基金からの助成額(平成22年度)〉
 ○芸術家や芸術団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動10億300万円
 ○地域の文化の振興を目的として行う活動3億3,300万円
 ○文化に関する団体が行う文化の振興又は普及を図るための活動1億3,000万円

2 新進芸術家などの人材育成

 世界で活躍する新進芸術家などを育成するため、美術、音楽、舞踊、演劇などの各分野において、研修・発表の機会を提供しています。特に、新進芸術家海外研修制度では、昭和42年以来、新進の芸術家に海外の大学や芸術団体などでの研修の機会を提供しており、これまで多数の優秀な芸術家を輩出しています。

図表2-7-7 新進芸術家の海外研修(新進芸術家海外研修制度)のこれまでの派遣者の例

図表2-7-7 新進芸術家の海外研修(新進芸術家海外研修制度)のこれまでの派遣者の例

図表2-7-8 世界に羽ばたく新進芸術家等の人材育成

図表2-7-8 世界に羽ばたく新進芸術家等の人材育成

3 芸術祭の開催

 芸術祭は、内外の優れた芸術作品を鑑賞する機会を広く一般に提供するとともに、芸術の創造とその発展を図ることを目的に、昭和21年度から毎年秋に開催しています。
 平成23年度は、皇太子殿下の御臨席の下、芸術祭オープニングとして、新国立劇場バレエ団による「バレエ・オープニング・ガラ」を上演するとともに、オペラ、演劇、音楽、能楽、文楽、歌舞伎、邦舞、アジア・太平洋地域の芸能などの主催公演を実施しました。演劇、音楽、舞踊、大衆芸能の参加公演部門とテレビ、ラジオ、レコードの参加作品部門では、それぞれの部門に設置した審査委員会で審査を行い、優れた公演・作品に対して文部科学大臣から芸術祭大賞などが授与されました。

文化庁芸術祭主催公演バレエ「パゴダの王子」制作:新国立劇場撮影:瀬戸秀美
文化庁芸術祭主催公演バレエ「パゴダの王子」
制作:新国立劇場撮影:瀬戸秀美

4 企業による芸術文化活動への支援

(1)企業の取組の顕彰

 公益社団法人企業メセナ協議会は、企業によるメセナ(芸術文化支援)活動の推進のため、芸術文化支援を行う企業相互の連携を図ることを目的として平成2年に設立されました。文化庁では、公益社団法人企業メセナ協議会との連携のもと、同協議会の主催する「メセナアワード」において、芸術文化振興に高く貢献し、かつ地域活性化や、次世代育成に関わるメセナ活動を顕彰しています。

(2)メセナ活動への支援

 公益社団法人企業メセナ協議会は、主要事業の一つとして、民間の芸術文化支援を促進する「助成認定制度」を実施しています。この制度の認定を受けた文化芸術活動に対して寄附を行う場合、個人の場合には所得控除、企業などの法人の場合には一般の寄附金とは別枠での損金算入が認められます(図表2-7-9)。

図表2-7-9 企業メセナ協議会の助成認定制度

図表2-7-9 企業メセナ協議会の助成認定制度

第2節 映画・メディア芸術の振興

1 日本映画の振興

 映画は、演劇、音楽や美術などの諸芸術を含んだ総合芸術であり、国民の最も身近な娯楽の一つとして生活の中に定着しています。また、ある時代の国や地域の文化的状況の表現であるとともに、その文化の特性を示すものです。さらに、映画は海外に向けて日本文化を発信する上でも極めて効果的な媒体であり、有力な知的財産として位置付けられています。
 文化庁では、平成16年度から総合的な日本映画の振興施策を実施しており、1.日本映画の創造・交流・発信、2.若手映画作家等の育成、3.日本映画フィルムの保存継承を推進しています(図表2-7-10)。
 具体的には、日本映画の製作支援、映画関係者によるシンポジウムなどの創作活動や交流の推進、日本映画の海外映画祭への出品支援やアジアにおける日本映画特集上映など海外への日本文化発信、短編映画作品製作による若手映画作家育成事業などの人材育成を通して、我が国の映画の一層の振興に取り組んでいます。特に日本映画の製作支援については、映画による国際文化交流を推進し、我が国の映画振興に資するため、平成23年度から新たに、国際共同製作による映画製作への支援を行っています。
 また、日本映画に関する情報提供を通じてこれらの活動を促進するため、データベースの整備も進めています。

●全国ロケーションデータベースシステム(JLDB)
(参照:http://www.jldb.bunka.go.jp/)

全国ロケーションデータベースシステム(JLDB)(参照:http://www.jldb.bunka.go.jp/)

●日本映画情報システム(JCDB)
(参照:http://www.japanese-cinema-db.jp/)

日本映画情報システム(JCDB)(参照:http://www.japanese-cinema-db.jp/)

図表2-7-10 日本映画の振興

図表2-7-10 日本映画の振興

2 アニメーション、マンガなどのメディア芸術の振興

 アニメーション、マンガ、ゲームなどのメディア芸術は広く国民に親しまれ、新たな芸術の創造や我が国の芸術全体の活性化を促すとともに、海外から高く評価され、我が国への理解や関心を高めています。文化庁では、メディア芸術の一層の振興を図るため、創作活動への支援、普及、人材育成などに重点を置いた様々な取組を行っています。その一つの柱である文化庁メディア芸術祭は、平成23年度には15回目を迎え、57の国と地域から2,714作品の応募が寄せられました。「アート」「エンターテインメント」「アニメーション」「マンガ」の四つの部門ごとに大賞1作品、優秀賞4作品、新人賞3作品を顕彰するとともに、メディア芸術の振興に寄与した方に功労賞を贈呈しました。
 受賞作品は、「第15回メディア芸術祭受賞作品展」(平成24年2月22日から3月4日まで国立新美術館で開催)で展示されました。また、22年度以前の受賞作品を中心に展示する「メディア芸術祭地方展」(23年度:京都府、宮崎県)や、「メディア芸術祭海外展」(23年度:ドイツ(ドルトムント))などの実施により、国内外へ優れたメディア芸術作品を発信しています。

アート部門大賞「Que voz feio(醜い声)」
アート部門大賞「Que voz feio(醜い声)」
作者:山本良浩
(C)山本良浩

エンターテインメント部門大賞「SPACE BALLOON PROJECT」
エンターテインメント部門大賞「SPACE BALLOON PROJECT」
作者:大八木翼/馬場鑑平/野添剛士/John POWELL
(C)SAMSUNG ELECTRONICS JAPAN

アニメーション部門大賞「魔法少女まどか☆マギカ」
アニメーション部門大賞「魔法少女まどか☆マギカ」
監督:新房昭之
(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS

マンガ部門大賞「土星マンション」
マンガ部門大賞「土星マンション」
作者:岩岡ヒサエ
(C)岩岡ヒサエ/IKKICOMIX(小学館)

第3節 子どもたちの文化芸術活動と地域における文化芸術の振興

1 子どもたちの文化芸術活動の推進

 文化庁では、子どもたちが、本物の文化芸術に直接触れたり創造活動に参加したりすることにより、多くの感動体験を得て感受性豊かな人間として成長するように、以下の施策を実施しています。

(1)次代を担う子どもの文化芸術体験事業

 子どもたちが優れた舞台芸術を鑑賞するとともに、文化芸術団体などによる実演指導、ワークショップに参加し、更にはこれらの団体と本番の舞台で共演するなど、舞台芸術に身近に触れる機会を提供する「次代を担う子どもの文化芸術体験事業」を実施しています(平成23年度は文化芸術団体による巡回公演を1,610公演、学校への芸術家派遣を1,832か所で実施)。

(2)全国高等学校総合文化祭

 高校生に文化部活動の成果発表の機会を提供し、創造活動の推進と相互の交流を深めるため、「全国高等学校総合文化祭」(平成23年度は8月3日から8月7日まで福島県で開催)、「全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演」(23年度は8月27日、28日に開催)を都道府県、全国高等学校文化連盟などとの共催で毎年開催しています。

2 地域における文化芸術活動への支援

 文化庁では、優れた文化芸術に身近に接することができ、地域に根付いた文化芸術活動が活発に行われるようにするため、個性豊かな文化芸術の振興、文化芸術を支える人材育成など、地域における文化芸術の振興を図っています。

(1)優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業

 優れた舞台芸術の創造・発信を自ら行うことができる劇場・音楽堂が各地で事業を展開し、地域の文化芸術活動の活性化と住民の鑑賞機会の充実を図るため、劇場・音楽堂が中心となり地域住民や芸術関係者などとともに取り組む、音楽、舞踊、演劇などの舞台芸術の制作、教育普及、人材育成などを支援しています(平成23年度支援実績:80件)。

(2)文化遺産を活かした観光振興・地域活性化

 平成23年度から、新たに「文化遺産を活(い)かした観光振興・地域活性化事業」として、日本各地の「たから」である多様で豊かな文化遺産を活用し、伝統行事や伝統芸能の公開・後継者養成、重要文化財建造物などの公開活用や史跡などの復元・公開など、地域の特色ある総合的な取組に対して支援を行っています(平成23年度採択実績:812件)。

(3)国民文化祭

 国民の文化芸術活動への参加機運を高めるとともに、地域や世代を超えた文化交流の輪を広げていくため、全国規模の文化の祭典である「国民文化祭」を都道府県などとの共催で毎年開催しています(平成23年度は10月29日から11月6日まで京都府で開催)。

3 文化芸術創造都市の推進

 近年、美しい景観や自治体固有の文化的環境を生かすことにより、住民の創造性を育むとともに、新しい産業やまちのにぎわいに結びつけることを目指す自治体が増えてきました。文化庁は、このように都市政策の中心に文化政策を据える自治体を応援するため、平成19年度に表彰制度を創設しました(図表2-7-11)。
 平成21年度からは、「文化芸術創造都市」に取り組む自治体やその関係者を対象とし、情報収集・提供、研修の実施などを通じた国内の文化芸術創造都市ネットワークの構築に取り組んでいます。また、22年度からは、文化芸術の持つ創造性を領域横断的に活用し、自治体や市民(文化ボランティア、アートNPOなど)、企業などが協働して地域課題の解決を図ろうとする先駆的かつ多様な取組を支援・促進する「文化芸術創造都市モデル事業」を実施しています。
 さらに、平成23年度には、これまでの成果を基に、可視性・持続可能性・自律性を有したネットワーク(「文化芸術創造都市ネットワーク日本(仮称)」)の設立へと発展させるため、先進事例の調査を含め「文化芸術創造都市ネットワーク日本(仮称)」の在り方について調査研究を行い、24年2月4日に文部科学省において「創造都市ネットワーク会議」を開催しました。

図表2-7-11 文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)受賞都市一覧

図表2-7-11 文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)受賞都市一覧

第4節 文化財の保存と活用

1 文化財保護制度の概要

 我が国には、人間と自然との関わりの中で生まれ、地域の風土や生活を反映し、他国の文化との交流を通じて育まれてきた豊かで伝統的な文化が存在します。それらは、現代を生きる私たちに、我が国の歴史や古くからの生活の様子を伝えると同時に、その根底にある知と技を伝え、日々の暮らしに精神的な豊かさや感動、生きる喜びを与えてくれます。また、地域で継承されてきた伝統的な文化は、人々の手によって掘り起され、再認識されることにより、地域の人々の心のよりどころとして連帯感を育み、共に生きる社会の基盤を形成する役割を担っています。
 文化財は、このような伝統的な文化が結実した一つの形であり、我が国の歴史や文化の理解に欠くことのできない貴重な資産であるとともに、現在・将来の社会の発展向上のために無くてはならないものです。その意味においても、文化財は、将来の地域づくりの核ともなるものとして、確実に次世代に継承していくことが求められます。
 このため、国は、文化財保護法に基づき、文化財のうち重要なものについて指定などを行い、現在の状態からの変更、修理、輸出などに一定の制限を行うことで保存を図っています。一方で、有形の文化財については保存修理、防災、買上げなど、また、無形の文化財については伝承者養成や記録作成などに対して助成などを行うことで、所有者などの負担の軽減を図っています。

図表2-7-12 国指定等文化財の件数

図表2-7-12 国指定等文化財の件数

図表2-7-13 文化財保護の体系

図表2-7-13 文化財保護の体系

2 有形文化財の保存と活用

(1)有形文化財とは

 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書、考古資料、歴史資料などの有形の文化的所産で、我が国にとって歴史上、芸術上、学術上価値の高いものを総称して「有形文化財」と呼んでいます。このうち、「建造物」以外のものを「美術工芸品」と呼んでいます。

(2)国宝、重要文化財の指定等

 国は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定し、更に世界文化の見地から特に価値の高いものを国宝に指定して保護しています。また、近年の国土開発や都市計画の進展、生活様式の変化などにより、社会的評価を受ける間もなく消滅の危機にさらされている多種多様な有形文化財については登録という緩やかな手法で保護しています。

図表2-7-14 平成23年度の重要文化財(建造物)の指定物件

図表2-7-14 平成23年度の重要文化財(建造物)の指定物件

図表2-7-15 平成23年度の重要文化財(美術工芸品)の指定物件

図表2-7-15 平成23年度の重要文化財(美術工芸品)の指定物件

(3)保存・活用のための取組

 我が国の有形文化財は、木材などの植物性材料でつくられているものが多く、その保存・管理には適切な周期での修理が必要であるとともに防災対策が欠かせません。これらは所有者が行うことが原則ですが、多額の経費を要することからほとんどの場合、国庫補助が行われています。
 建造物については、地震などの災害から守るためには、事前に対策をとることが重要なため、国では地震時における安全性確保の考え方を取りまとめ、具体的な耐震診断の指針を策定しています。平成17年度からは耐震診断に、21年度からは耐震補強工事に国庫補助を行っています。また、防火対策として、自動火災報知設備や避雷設備、消火設備とともに、放火などを防ぐための防犯設備の設置に国庫補助を行っています。さらに、保存修理に必要な資材の供給林を設定し、管理業務の支援などを行う「ふるさと文化財の森システム推進事業」を実施しています。このほか、所有者が保存活用計画を策定するための指針や活用するための事例を取りまとめて紹介しており、23年度からは、NPOや市民団体などによる保護の取組を推進する「NPO等による文化財建造物の管理活用事業」を行っています。
 美術工芸品については、盗難などの被害から守るため、手引の作成や研修会の開催など、防犯意識の向上や有効な防犯対策への理解を促進するための取組を実施しています。さらに、鑑賞機会の拡大を図るため、展示や体験学習を行うのに適した文化財保存施設の整備を推進するとともに、博物館などの施設が開催する国宝・重要文化財が出品される展覧会について一部の経費を負担しています。また、海外流出や散逸などのおそれがある国宝・重要文化財などについては国において買い取り保存を図るとともに、文化庁主催展覧会への出品や博物館などの施設が開催する展覧会への貸与により活用を図っています。

3 無形文化財の保存と活用

(1)無形文化財とは

 演劇、音楽、工芸技術、その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いものを「無形文化財」と呼んでいます。無形文化財は、人間の「わざ」そのものであり、具体的にはそのわざを体現・体得した個人又は団体によって表現されます。

(2)重要無形文化財の指定や保持者等の認定

 国は、無形文化財のうち重要なものを重要無形文化財に指定し、同時に、これらのわざを高度に体現・体得しているものを保持者又は保持団体として認定しています。保持者の認定には、重要無形文化財である芸能又は工芸技術を高度に体現・体得している者を認定する「各個認定」(この保持者がいわゆる「人間国宝」)、二人以上の者が一体となって舞台を構成している芸能の場合、そのわざを高度に体現している者が構成している団体の構成員を認定する「総合認定」があります。また、「保持団体認定」は、重要無形文化財の性格上個人的特色が薄く、かつ当該わざを保持する者が多数いる場合、これらの者が主たる構成員となっている団体を認定するものです。

(3)保存・活用のための取組

 重要無形文化財の各個認定の保持者に対し、わざの錬磨向上と伝承者の養成のための特別助成金を交付するとともに、重要無形文化財の総合認定保持者が構成する団体や保持団体、地方公共団体などが行う伝承者養成事業、公開事業などに対して補助を行っています。また、我が国にとって、歴史上、芸術上価値の高い重要無形文化財(工芸技術)を末永く継承し保護していくため、保持者の作品などの無形文化財資料を購入したり、その「わざ」を映像で記録し、これらの資料や完成した映像記録を公開しています。

図表2-7-16 平成23年度の重要無形文化財の指定・認定(23年9月指定・認定)

図表2-7-16 平成23年度の重要無形文化財の指定・認定(23年9月指定・認定)

4 民俗文化財の保存と活用

(1)民俗文化財とは

 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移を理解する上で欠くことのできないものを「民俗文化財」と呼んでおり、有形のものと無形のものがあります。

(2)重要有形・無形民俗文化財の指定等

 国は、有形、無形の民俗文化財のうち、特に重要なものを「重要有形民俗文化財」、「重要無形民俗文化財」に指定し、その保存を図っています。また、重要有形民俗文化財以外の有形民俗文化財のうち、保存・活用のための措置が特に必要とされるものを「登録有形民俗文化財」に登録するとともに、重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうち、特に記録作成などを行う必要があるものを「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択しています。

図表2-7-17 平成23年度の民俗文化財の指定(24年3月指定)

図表2-7-17 平成23年度の民俗文化財の指定(24年3月指定)

(3)保存・活用のための取組

 民俗文化財は、日常生活に基盤を置くものであり、近年の急激な社会構造や生活様式の変化によって変容・衰退のおそれがあります。このため、重要有形民俗文化財に指定された衣服や器具・家屋などを保護するための管理や修理、保存活用施設の整備などの事業を補助するとともに、重要無形民俗文化財に関する伝承者の養成や用具などの修理・新調などの事業に対しても補助を行っています。また、国が選択した無形の民俗文化財を対象に、特に変容・衰滅のおそれが高いものについて、計画的に映像などによる記録化を進め、確実な記録保存を行っています。

5 記念物の保存と活用

(1)記念物とは

 貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅などの遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁(きょうりょう)、峡谷、海浜、山岳などの名勝地で我が国にとって芸術上又は鑑賞上価値の高いもの、動物や植物、地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いものを総称して「記念物」と呼んでいます。

(2)史跡、名勝、天然記念物の指定等

 国は、記念物のうち重要なものを、遺跡は「史跡」に、名勝地は「名勝」に、動物、植物と地質鉱物は「天然記念物」に指定し、特に重要なものについては、「特別史跡」、「特別名勝」、「特別天然記念物」に指定しています。
 また、今日の地域開発の進展や生活様式の急激な変化に伴い、残存することが困難な状況にある記念物については登録という緩やかな手法で保護しています。登録記念物については、「遺跡関係」、「名勝地関係」、「動物、植物及び地質鉱物関係」の三つの種別があります。

図表2-7-18 平成23年度の史跡・名勝・天然記念物の指定

図表2-7-18 平成23年度の史跡・名勝・天然記念物の指定

(3)保存・活用のための取組

 史跡などを次世代に確実に伝えるためには、調査研究に基づき本質的価値を把握した上で、保存と管理の基本方針を定めることが必要です。このため、地方公共団体がこのような方針を定める保存管理計画の作成経費に対し、国庫補助を行っています。
 さらに、所有者や管理団体が実施する境界標などの管理施設の設置、石垣や歴史的建造物などの修理や、遺構の表示や復元、園路などの各種施設の整備など、保存活用事業に対して補助を行っています。

6 文化的景観の保存と活用

(1)文化的景観とは

 「文化的景観」とは、石積みの棚田や流通・往来の結節点に形成された町場、河川流域の土地利用など、地域における人々の生活又は生業や当該地域の風土により形成された景観地で、我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないものをいいます。

(2)重要文化的景観の選定

 文化的景観を有する都道府県又は市町村では、景観法に基づく景観計画や条例、文化的景観保存計画などにより、文化的景観の適切な保存・活用を図っています。このような文化的景観のうち、国は、都道府県又は市町村の申出に基づき、特に重要なものを重要文化的景観として選定しています。
 平成23年度には6件が新たに選定され、24年3月末現在、全国で30件の重要文化的景観が選定されています。

図表2-7-19 平成23年度選定の重要文化的景観

図表2-7-19 平成23年度選定の重要文化的景観

(3)保存・活用のための取組

 国は、都道府県又は市町村が行う文化的景観に関する保存調査や文化的景観保存計画の策定、地域住民が参加するワークショップなどの普及・啓発、重要文化的景観の整備などに関する事業に対して国庫補助を行っています。
 平成23年度には、新たに7件の文化的景観保存計画が策定されたほか、15件の重要文化的景観において、重要な構成要素である家屋の修理・修景、当該重要文化的景観の価値を周知するための説明板設置などに関する整備事業が行われました。

7 伝統的建造物群の保存と活用

(1)伝統的建造物群とは

 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値が高いものを「伝統的建造物群」と呼んでおり、城下町や宿場町、門前町、農漁村集落などがこれに当たります。

(2)重要伝統的建造物群保存地区の選定

 伝統的建造物群を有する市町村では、伝統的建造物群やこれと一体をなして価値を形成している環境を保存するために伝統的建造物群保存地区を定め、伝統的建造物の現状変更の規制などを行い、歴史的集落や町並みの保存と活用を図っています。国は、伝統的建造物群保存地区のうち、市町村の申出に基づき、我が国にとってその価値が特に高いものを、重要伝統的建造物群保存地区に選定しています。

図表2-7-20 平成23年度選定の重要伝統的建造物群保存地区

図表2-7-20 平成23年度選定の重要伝統的建造物群保存地区

(3)保存・活用のための取組

 伝統的建造物群を有する市町村が、伝統的建造物群保存地区として保存するために行う伝統的建造物群の保存状況などの調査に国庫補助を行っています。また、重要伝統的建造物群保存地区において、伝統的建造物の修理、伝統的建造物以外の建築物などの修景、伝統的建造物群と一体をなして価値を形成している環境の復旧、防災計画を策定するための調査、防災のための施設・設備の設置、建造物や土地の公有化などの市町村が行う事業に国庫補助を行っています。

8 文化財保存技術の保存

(1)文化財保存技術とは

 我が国の固有の文化により生み出され、現在まで保存・継承されてきた文化財を、確実に後世へ伝えていくために欠くことのできない、文化財の修理技術・技能やそれに用いられる材料・道具の製作技術などを「文化財保存技術」と呼んでいます。

(2)選定保存技術の選定及び保持者等の認定

 国は、文化財保存技術のうち、保存措置を講ずる必要があるものを選定保存技術として選定するとともに、その技術を正しく体得している者を保持者として、技術の保存のための事業を行う団体を保存団体として、それぞれ認定し、保護を図っています。

図表2-7-21 平成23年度の選定保存技術の選定・認定(23年9月選定・認定)

図表2-7-21 平成23年度の選定保存技術の選定・認定(23年9月選定・認定)

9 埋蔵文化財の保護

 「埋蔵文化財」は、国や地域の歴史や文化の成り立ちを明らかにする上で欠くことのできない国民共有の財産であり、個性豊かな地域の歴史的・文化的環境を形作る貴重な資産です。
 このような埋蔵文化財を保護するため、文化財が埋蔵されている土地で開発事業などを行う場合には、事前に遺跡の内容を確認するための発掘調査を行った上で、現状保存のための調整や、現状保存を行うことができない場合には記録として保存するための発掘調査が必要です。また、記録保存のために行った発掘調査については、発掘現場での説明会や報告書の作成などによって積極的に公開を行うことが求められます。
 国は、こうした埋蔵文化財の保護が円滑かつ迅速に実施されるよう、発掘調査体制や具体的な発掘調査方法、遺物の整理収納方法の充実などの様々な課題について調査研究を行い、その成果については、課題ごとに報告書を取りまとめ、各都道府県に通知を行っています。それを受けて、各都道府県において埋蔵文化財の取扱基準を策定するなど所要の施策が行われています。

10 「歴史文化基本構想」の普及・促進

 近年、過疎化や少子高齢化に伴う人口減少など、文化財を育み、支えてきた地域の変化により、文化財の継承が困難になってきています。こうした状況の中、地域の文化財をその周辺環境も含めて総合的に保存・活用していくことが重要です。「歴史文化基本構想」は、各地方公共団体において、文化財保護に関するマスタープランとして、文化財をその周辺環境も含めて総合的に保存・活用するために策定するものであり、文化財保護施策に限らず、文化財を生かした地域づくりに活用することも可能なものです。
 国では、平成20年度から22年度までの3カ年にわたり、全国20地域(23市町村)において、実際に「歴史文化基本構想」を策定する「文化財総合的把握モデル事業」を実施しました。また、これと並行して有識者会議を開催し、「歴史文化基本構想」の策定に当たっての技術的な留意点などについて検討を行い、それを基に、各地方公共団体が「歴史文化基本構想」を策定する際の参考となるよう、「歴史文化基本構想」策定技術指針を24年2月に取りまとめました。
 また、このほかに、歴史文化を活(い)かした地域づくりに関連する取組として、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(通称:歴史まちづくり法)に基づく歴史的風致維持向上計画の認定制度があります。これは市町村が、地域に根差した人々の活動と建造物が一体となって良好な景観を形成している区域を維持・向上させるための計画を国が認定するもので、認定された市町村は、国より重点的な支援を受けることができます。

11 古墳壁画の保存と活用

(1)キトラ古墳の整備と壁画の保存活用

 キトラ古墳については、壁画発見(昭和58年)後の調査により、壁画が描かれた漆喰が既に浮き上がり、剝落の危険性があると判明したため、平成16年9月に壁画の全面取り外しの方針を決定しました。その後、カビなどの定期点検や仮設保護覆屋の建設などによる環境制御を行いながら、順次壁画の取り外しを行ってきました。その結果、22年11月には石室内の全ての壁画の取り外しを終了しました。
 取り外した壁画は国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設において、高松塚古墳の壁画とともに保存修理を行っています。

キトラ古墳壁画の取り外し作業
キトラ古墳壁画の取り外し作業

(2)普及・公開の取組

 平成23年5月(8日間)と11月(8日間)に、国宝高松塚古墳壁画の修理作業室の一般公開を行いました。また、24年3月には、高松塚古墳壁画が発見され40周年を迎えることから、それを記念して、全国の小学生を対象とした一般公開を実施しました。

国宝高松塚古墳壁画修理作業室の一般公開
国宝高松塚古墳壁画修理作業室の一般公開

(3)古墳壁画の保存活用に関する検討

 高松塚古墳壁画やキトラ古墳壁画の適切な保存活用を行うために必要な事項などを調査研究するため、平成22年4月から「古墳壁画の保存活用に関する検討会」を開催し、有識者などによる検討を行っています。

12 世界遺産と無形文化遺産

(1)世界遺産の登録の推進

1.世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)

 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(「世界遺産条約」)は、顕著な普遍的価値を持つ文化遺産・自然遺産を、人類全体のための世界の遺産として損傷・破壊などの脅威から保護することを目的として、昭和47年のユネスコ総会において採択されました。我が国は平成4年に同条約を締結し、24年3月現在、189か国が締結しています。また、23年11月、第18回世界遺産条約締約国会議において、我が国が21カ国から構成される世界遺産委員会の委員国に選出されました。通常、4年間務めることとなります。
 毎年1回開催される世界遺産委員会においては、締約国からの推薦に基づき、顕著な普遍的価値を持つと認める文化遺産・自然遺産複合遺産を世界遺産に登録しており、平成23年6月現在、936件の遺産(文化遺産725件、自然遺産183件、複合遺産28件)が、我が国では16件の遺産(文化遺産12件、自然遺産4件)が登録されています。
 世界遺産への登録を推進することは、我が国の貴重な文化遺産の価値が国際的に評価されるとともに、登録を目指す過程で地域における総合的な文化財保護の取組が格段に充実するという点で大きな意義があります。

図表2-7-22 我が国の世界遺産一覧

図表2-7-22 我が国の世界遺産一覧

2.世界遺産の登録・推進に向けた国内の取組について

 締約国は、世界遺産の候補としてふさわしいと考えられる文化遺産・自然遺産の一覧表を「世界遺産暫定一覧表」として世界遺産委員会に提出することが求められています。
 平成24年3月末現在、我が国の世界遺産暫定一覧表に記載されている文化遺産は12件です。このうち、文化庁と国土交通省との共同により「武家の古都・鎌倉」を、文化庁、環境省並びに林野庁との共同により「富士山」を推薦し、外務省を通じて、24年1月に推薦書(正式版)をユネスコ世界遺産センターに提出しました。これらについては、25年夏の世界遺産委員会において、世界遺産一覧表への記載の可否の審議を受ける予定となっています。

(2)無形文化遺産の保護に関する取組

 平成15年のユネスコ総会において、無形文化遺産の保護に関し拘束力のある初めての国際的な法的枠組みとして「無形文化遺産の保護に関する条約」が採択され、18年4月20日に発効されました。我が国は、本条約の策定段階から主導的役割を果たすとともに、その早期発効を促すため、16年6月に3番目の締約国となり、24年3月現在で142か国が締結しています。
 本条約は、無形文化遺産を保護することを目的として、「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)」への記載、無形文化遺産の保護のための国際的な協力・援助体制の確立、締約国がとるべき必要な措置などについて規定しています。
 平成23年11月、本条約の政府間委員会がインドネシアのバリで開催され、我が国の「壬生の花田植」と「佐陀神能」の2件を含む19件が新たに「代表一覧表」に記載されることになりました。24年3月には、「代表一覧表」への記載に向け、我が国として「和食;日本人の伝統的な食文化」をユネスコに提案することを決定し、提案書を提出しました。今後、最短で25年秋の無形文化遺産保護条約政府間委員会において記載の可否の審議を受ける予定となっています。また、無形文化遺産に関する途上国への技術的支援などを行うため、国立文化財機構の一機関として、23年10月にアジア太平洋無形文化遺産研究センターを大阪府堺市に設置しました。

図表2-7-23 「代表一覧表」に記載されている我が国の無形文化遺産

図表2-7-23 「代表一覧表」に記載されている我が国の無形文化遺産

コラムNo.32 「平泉」の世界遺産登録について

 平成23年6月に、パリ(フランス)で開催された第35回世界遺産委員会で、「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」が世界遺産一覧表に登録されました。その資産は、「中尊寺」、「毛越寺」、「観自在王院跡」、「無量光院跡」、「金鶏山」で構成されています。
 「平泉」の世界遺産登録を記念し、平成24年2月、文化庁と外務省の共催により、岩手県平泉町で「平泉」世界遺産認定書授与式が開催され、ユネスコのボコバ事務局長から、岩手県と平泉町に世界遺産認定書が手渡されました。
 この「平泉」の世界遺産登録は、東日本大震災からの復興に向けた励みになる取組となりました。
 今回の「平泉」の世界遺産登録を契機に、本遺産の世界遺産としての価値をより多くの方々に知っていただきたいと願っております。
 同時に、地元自治体と協力し、人類全体の宝である貴重な遺産の保存管理に万全を期し、後世に確実に引き継いでいくことが重要だと考えています。

中尊寺金色堂

中尊寺金色堂
写真提供:中尊寺

毛越寺庭園

毛越寺庭園
写真提供:川嶋印刷株式会社

コラムNo.33 世界記憶遺産について

 世界記憶遺産事業は、世界的に重要性をもつ文書、書籍、絵画などの記憶遺産を保護し、散逸を防ぎ、更なる活用を図ろうとすることを目的とした、ユネスコの事業です。
 平成4年に開始されて以来、各国からの推薦による登録が進められていましたが、近年になって『アンネの日記』などの登録により、国内外での知名度が増加したことから、我が国としても、選考委員会を設置し、登録案件の推薦を進めることとなりました。
 平成24年3月には、選考委員会を通じた最初の推薦案件として、いずれも国宝に指定されている『御堂関白記』と『慶長遣欧使節関係資料』の提案書がユネスコに提出され、25年に登録の可否が決定する予定です。
 なお、世界記憶遺産事業では国以外の団体・個人も登録物件の推薦を行うことができ、平成23年5月には、福岡県田川市と福岡県立大学が独自に推薦した『山本作兵衛炭鉱記録画』が我が国最初の登録物件となりました。

第5節 美術館・歴史博物館・劇場等の振興

1 美術館・歴史博物館への支援

 国では、美術館・歴史博物館が地域住民の文化芸術活動・学習活動の場として積極的に活用され、文化芸術の国内外への発信拠点としての機能が充実するよう、事業に対する支援や人材養成などを行っています。

(1)美術館・歴史博物館の活性化に向けた取組

 国は、美術館・歴史博物館の果たす役割の重要性を考慮し、館が自らの事業の方向性を社会の変化に対応させるための活動基盤の整備に焦点を当て、地域との関係の強化(地域軸の強化)と国際的な交流の拡大(国際軸の強化)に資する取組に対して支援を行っています。平成23年度からは、美術館・歴史博物館が中心となった地域文化資源活用、地域連携強化、新規利用者層創出、国際交流拠点形成について支援する「ミュージアム活性化支援事業」を実施しています。

(2)美術館・歴史博物館を支える人材の養成等

 公私立の美術館・歴史博物館の学芸員などの専門的な知識や技術を向上させ、美術館・歴史博物館活動の充実を図ることが求められています。このため、国では、国立美術館・国立博物館などの協力を得て、企画展示セミナーなど様々な研修会や講習会などを実施しています。また、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)」において、美術館などの管理・運営や教育普及などを担う専門職員の研修を充実することとされたことを受けて、平成23年度から新たにミュージアム・マネジメント研修やミュージアム・エデュケーター研修を実施しています。

2 美術品政府補償制度の導入等

 美術品の政府補償制度とは、展覧会を開催するために海外の美術館などから借り受けた作品に万一損害が発生した場合に、その損害を政府が補償するものです。
 美術品の政府補償制度を創設する「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」は平成23年3月に成立し、同年6月に施行されました。同年10月には、この制度の適用第一号として「プラド美術館所蔵ゴヤ光と影」展が国立西洋美術館で開催されました。24年3月末現在、5件の展覧会に美術品補償制度が適用されています。今後、この制度により、展覧会の主催者の保険料負担が軽減され、広く全国で安定的・継続的に優れた展覧会が開催されるようになることが期待されます。
 また、海外の美術品などに対する強制執行などの禁止の措置を定めるとともに、国の美術館などの施設の整備・充実などについて定める「海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律」が平成23年3月に成立し、同年9月に施行されました。この法律によって、従来は強制執行などの禁止措置が担保されていないために借り受けることが困難であった海外の美術品などを公開する展覧会の開催が可能となり、前述の美術品の政府補償制度と合わせて、国民が世界の多様な文化に接する機会の増大が図られることが期待されます。

3 登録美術品制度

 優れた美術品の美術館や博物館における公開を促進することにより、国民が美術品を鑑賞する機会を拡大することを目的とする「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に基づいて、「登録美術品制度」が設けられています。
 この制度は、優れた美術品について、個人や企業などの所有者からの申請に基づき、専門家の意見を参考にして文化庁長官が登録を行うものです。登録された美術品は、所有者と美術館の設置者との間で結ばれる登録美術品公開契約に基づき、当該美術館において5年以上の期間にわたって計画的に公開・保管されます。また、登録美術品については、相続税の物納の特例措置が設けられています。
 平成24年3月末現在、41件(375点)の美術品が登録美術品として登録されています。

短刀(銘国光)
短刀(銘国光)

4 国立美術館

 国立美術館は、独立行政法人として、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館それぞれの特色を生かしつつ、5館が連携・協力して、美術作品の収集・展示、教育普及活動やこれらに関する調査研究を行うとともに、我が国の美術振興の拠点として、海外の美術館や作家との交流、公私立美術館への助言を行っています(参照:http://www.artmuseums.go.jp/)(図表2-7-24)。

図表2-7-24 国立美術館

図表2-7-24 国立美術館 

 平成23年度においては、「ぬぐ絵画-日本のヌード1880-1945」(東京国立近代美術館)、「パウル・クレー-おわらないアトリエ」(京都国立近代美術館)、「プラド美術館所蔵ゴヤ光と影」(国立西洋美術館)、「世界制作の方法」(国立国際美術館)、「アーティスト・ファイル2011-現代の作家たち」(国立新美術館)など36回の企画展を開催するとともに、東京国立近代美術館フィルムセンターでは、「映画女優香川京子」の上映・展示などを行いました。
 また、美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修や、国立国会図書館や国立情報学研究所などとの連携による美術情報の多元的発信などを行いました。
 なお、東日本大震災に関連し、全国美術館会議と連携し文化財救援活動に参加するほか、様々な取組を行いました。

5 国立文化財機構

 国立文化財機構は、東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館の4博物館を設置し、有形文化財を収集・保管して国民の皆様の観覧に供するとともに、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、アジア太平洋無形文化遺産研究センターを加えた7施設において調査・研究などを行うことにより、貴重な国民的財産である文化財の保存と活用を図ることを目的としています(参照:http://www.nich.go.jp)(図表2-7-25)。
 現在、国立博物館では国宝・重要文化財を含む約12万件の文化財を所蔵しています。また、これらの文化財を活用し、平常展、企画展などを通じて日本の歴史・伝統文化や東洋文化の魅力を国内外に発信する拠点としての役割も担っています。
 平成23年度においては、「空海と密教美術展(東京国立博物館)」「法然上人八百回忌法然-生涯と美術-(京都国立博物館)」「天竺へ三蔵法師3万キロの旅(奈良国立博物館)」「よみがえる国宝-守り伝える日本の美-(九州国立博物館)」などの特別展を開催しました。
 東京文化財研究所では、日本・東洋の美術・芸能の調査研究や文化財の保存に関する科学的な調査、修復材料・技術の開発に関する研究を行うとともに、海外の博物館・美術館が所蔵する日本古美術品の修復協力、アフガニスタンやイラクの文化財保存修復に関する協力など国際交流を進めています。奈良文化財研究所では、遺跡、建造物、歴史資料などの調査研究や平城宮跡、飛鳥・藤原宮跡の発掘調査などを進めるとともに、全国各地の発掘調査などに対する指導・助言や発掘調査を行う専門職員などに対する研修を行っています。
 また、アジア太平洋地域における無形文化遺産保護を強化する拠点として、平成23年10月にアジア太平洋無形文化遺産研究センターを大阪府堺市に設置しました。
 なお、災害により被災した文化財の保護のため、文化庁の要請を受け、国立文化財機構は東京文化財研究所に事務局を設置し、東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業(文化財レスキュー事業)を実施するなど、地方公共団体などに対する支援・協力を行っています。

図表2-7-25 国立文化財機構

図表2-7-25 国立文化財機構

6 日本芸術文化振興会

(1)伝統芸能の保存・振興

 我が国の伝統芸能の保存・振興を目的として、国立劇場、国立演芸場、国立能楽堂、国立文楽劇場、国立劇場おきなわの5館において、歌舞伎、大衆芸能、能楽、文楽、組踊などの伝統芸能の公開や伝承者の養成、伝統芸能に関する調査研究・資料収集・展示、劇場施設の貸出しなどの事業を実施しています(参照:http://www.ntj.jac.go.jp)。
 平成23年度は、公演事業として、歌舞伎では、開場45周年を記念して「歌舞伎を彩る作者たち」と銘打ち全6公演をシリーズとして実施したほか、文楽「日本振袖始(にほんふりそではじめ)大蛇退治の段」における新脚色、東日本大震災による犠牲者の鎮魂をテーマとした新作声明を上演した特別企画公演(国立劇場)、新作能「影媛(かげひめ)」(国立能楽堂)など、通し狂言や復活狂言などによる古典の正しい伝承を基本としながら、併せて新しい作品の上演についても取り組み、5館で計186公演(1,041回)を実施しました。伝承者養成事業では、現在、歌舞伎俳優研修生9名、歌舞伎音楽竹本研修生1名、歌舞伎音楽長唄研修生2名、大衆芸能太神楽研修生4名、文楽研修生4名、能楽研修生4名、組踊研修生9名がそれぞれ研修中です。また、各館において展示や各種講座などを実施し、伝統芸能に関する理解促進と普及に努めています。

(2)現代舞台芸術の振興・普及

 我が国の現代舞台芸術振興の拠点として、新国立劇場において、オペラ、バレエ、現代舞踊、演劇などの公演の実施や、現代舞台芸術の実演家などの研修、現代舞台芸術に関する調査研究・資料収集・展示、劇場施設の貸付けなどを実施しています(参照:http://www.nntt.jac.go.jp)(図表2-7-26)。
 平成23年度は、公演事業としてオペラ「イル・トロヴァトーレ」、バレエ「パゴタの王子」、現代舞踊「近松DANCE弐題」、演劇「ゴドーを待ちながら」などの意欲的な作品を含め、計34公演(284回)を実施しました。実演家研修事業では、オペラ5名、バレエ6名、演劇11名が研修を修了しました。
 また、新国立劇場や新国立劇場舞台美術センター資料館において展示や各種講座などを実施し、現代舞台芸術の理解促進と普及に努めています(図表2-7-26)。

図表2-7-26 日本芸術文化振興会

図表2-7-26 日本芸術文化振興会

7 文化関係独立行政法人の改革

 平成22年4月に行われた内閣府行政刷新会議の事業仕分け第2弾では、国立美術館並びに国立文化財機構の美術品収集などについて「事業規模は拡充。機動的な美術品購入等が可能となる仕組み等適切な制度の在り方を検討。国の負担を増やさない」とされました。これを受けて「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(22年12月7日閣議決定)において、国立美術館、国立文化財機構、日本芸術文化振興会並びに国立科学博物館の4法人については「国の負担を増やさない形での事業の充実に向けて、制度の在り方を検討する」とされました。
 平成23年10月以降、行政刷新会議独法改革分科会において独立行政法人の制度及び組織の見直しに向けた検討が行われ、行政刷新会議決定を経て、「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」(24年1月20日閣議決定)が策定されました。同閣議決定では、国立美術館、国立文化財機構及び日本芸術文化振興会の3法人については「統合し、文化振興型の成果目標達成法人とする」とともに、「民間等の資金の活用を図り、国の負担を増やさない形で事業を充実し、必要な収蔵品を機動的・効果的に購入等するための仕組み(基金)の整備を検討する」ことなどとされました。
 今後は、閣議決定を前提とし、新たな制度・組織への移行を目指して、具体的な制度の検討を進めることとしています。

第6節 国際文化交流を通じた日本文化の発信と国際協力への取組

 国際化の進展に伴い、伝統文化から現代の文化芸術活動に至る我が国の多彩な文化芸術を積極的に海外発信するとともに、文化芸術各分野における国際文化交流を推進することにより、文化芸術水準の向上を図るとともに、我が国に対するイメージの向上や諸外国との相互理解の促進に貢献することが求められています。
 文化庁では、文化芸術振興基本法や基本方針を受け、世界に誇ることができる芸術の創造とその国内外への発信、文化芸術の国際交流の推進、海外の文化遺産保護への協力を行うなど、文化芸術立国の実現に向けた施策の充実に取り組んでいます。

1 国際文化交流の総合的な推進

(1)文化芸術の創造・海外発信拠点の形成

1.文化芸術の海外発信拠点形成事業

 異文化交流の担い手となる外国人芸術家の受入れや国際的な文化芸術創造など、各地域において取り組まれている特色ある国際文化交流事業(アーティスト・イン・レジデンスなど)を支援することにより、日本各地に文化創造と国際的発信の拠点づくりを推進する事業です。平成23年度においては、27団体に対して支援を行いました。

オープンスタジオの様子(アーカスプロジェクト2011いばらき)
オープンスタジオの様子(アーカスプロジェクト2011いばらき)

2.国際芸術フェスティバル支援事業

 我が国で開催される中核的な国際芸術フェスティバルに対し戦略的かつ重点的に支援を行い、これらを文化芸術の世界的拠点として育成することにより、我が国の文化芸術の水準向上を図るとともに、優れた文化芸術の海外への情報発信を強化し、もって世界の文化芸術の水準向上に貢献することを目的としています。平成23年度は、「横浜トリエンナーレ2011」と「第24回東京国際映画祭」への支援を行いました。

「横浜トリエンナーレ2011」の様子
「横浜トリエンナーレ2011」の様子

(2)文化人・芸術家等の国際交流ネットワークの形成

1.文化庁文化交流使事業

 芸術家、文化人など文化芸術に携わる人々を、一定期間「文化交流使」として指名し、世界の人々の日本文化への理解の深化や日本と外国の文化人のネットワーク形成・強化につながる活動の展開を図ることを目的とした事業です。文化交流使には、日本在住の芸術家、文化人が海外に一定期間滞在し、講演、講義、ワークショップや実演などを行う「海外派遣型」、国際芸術交流支援事業により海外で公演などを行う芸術団体が現地の学校などで実演会、演奏会などのアウトリーチ活動を行う「短期指名型」の2類型があります。
 平成23年度は、「海外派遣型」文化交流使として、9名(1グループを含む)を新たに指名し、雅楽、書道・刻字、短歌、染色、和楽器、能楽、現代美術といった様々な分野で活躍中の文化人・芸術家による国際文化交流と日本文化の発信活動を展開しました。また、「短期指名型」文化交流使に指名された3団体は、主に日本と周年を迎えた国々で、実演やワークショップなどを通じてそれぞれの専門分野の日本文化を紹介しました。

図表2-7-27 平成23年度文化庁文化交流使一覧

図表2-7-27 平成23年度文化庁文化交流使一覧

2.ハイレベル文化人専門家の招へい

 文化庁では、外国のハイレベルの文化人、芸術家や文化財専門家などを招へいし、我が国関係者との意見交換などを実施しています。平成23年度は、ユネスコ、アフガニスタン、イラン、英国、フランス、ドイツ、スイス、中華人民共和国、大韓民国、から12名の専門家を招へいしました。

(3)文化関連の国際的なフォーラムの開催・参加

1.東アジア共生会議

 東アジア各国が共生する未来に向けた理念を明らかにするため、東アジア諸国の文化人、芸術家、文化に関する様々な分野の学識経験者が一堂に会し、議論する国際的な文化フォーラムです。
 平成23年12月に、初日は民俗芸能公演、2日目は「災害と文化」・「東アジア意識の現在と共生の課題」をテーマにセッションを開催し、世界各国へ東アジアからのメッセージを発信しました。

2.世界文明フォーラム2012の開催

 アマルティア・セン氏(ハーバード大学教授)をはじめとして、世界的な著名人が参画し、「世代間公正」の実現に向けて、東日本大震災の教訓を織り込んだ目指すべき21世紀の世界の姿や文化芸術の果たすべき役割などを議論しました。

世界文明フォーラム2012の様子
世界文明フォーラム2012の様子

3.文化に関連する国際的なフォーラムへの参加

 日中韓の文化担当大臣が集う「日中韓文化大臣フォーラム」、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国と日中韓の文化担当大臣が集う「ASEAN+3文化大臣会合」、アジア欧州会合(ASEM:アジアと欧州の合計46か国と2機関により構成)の文化担当大臣が集う「ASEM文化大臣会合」など、文化担当大臣の国際的なフォーラムに参加するとともに、ユネスコの各種会議に参加し、議論に貢献しています。

(4)「国際交流年」における取組

 文化、教育、スポーツなど幅広い分野で官民を通じた交流事業を開催・実施することによって、諸外国との友好と相互理解を深めることを目的とした「国際交流年」が設定されています。平成23年は「日本・クウェート国交樹立50周年」、「日独交流150周年」、「日バルト三国新たな外交関係開設20周年」に当たり、文化庁として様々な事業を主催・支援しました。

2 芸術文化の国際交流の推進

 芸術文化の国際交流の推進は、我が国の芸術文化水準の向上を図るとともに我が国に対するイメージの向上や諸外国との相互理解の促進に貢献するものです。このため、文化庁では、芸術文化の国際交流を推進するため、様々な施策に取り組んでいます(図表2-7-28)。

図表2-7-28 文化庁の主な国際芸術文化交流事業の概要

図表2-7-28 文化庁の主な国際芸術文化交流事業の概要

3 文化財国際交流・協力の推進

 文化遺産は人類共通の財産であり、その保護のためには国際的な交流・協力が不可欠です。我が国は、長年にわたり、国内外の文化財に関する優れた調査研究を行うとともに、保存修復のための高度な技術を開発し、経験を蓄積してきました。文化財保護の国際的な取組が進展する中で、我が国に対する期待はこれまで以上に高まっています。このため、文化庁では、次のような取組を行っています。

(1)文化遺産保護国際協力のための体制構築

1.海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律

 平成18年6月に、海外の文化遺産の保護に係る我が国の国際協力について、国や教育研究機関の果たすべき責務、基本方針の策定、関係機関の連携の強化などの講ずべき施策について定めた「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」が成立しました。19年12月には、同法に基づき、国や研究機関、文化遺産国際協力コンソーシアムなどの役割のほか、重点地域をアジアとすることや経済協力との連携強化などについて盛り込んだ基本方針が策定されました。
 この基本方針に基づき、国内の協力体制の構築や関係機関の連携強化による効果的な文化遺産国際協力を実施しています。

2.文化遺産国際協力コンソーシアム

 文化庁、外務省、大学・研究機関、民間助成団体などが一体となって連携協力し、文化遺産国際協力を効果的かつ効率的に推進するため、平成18年6月に文化遺産国際協力コンソーシアムが発足しました。文化遺産国際協力コンソーシアムでは、国内各研究機関などのネットワーク構築、情報の収集や提供、文化遺産国際協力に関する調査研究、文化遺産国際協力についての普及啓発を実施しています。

(2)国際社会からの要請等に基づく国際支援

1.文化遺産保護国際貢献事業(緊急的文化財国際事業への支援)

 文化庁は、平成16年度から、「文化遺産保護国際貢献事業」として、紛争や自然災害により被災した文化遺産について関係国や機関からの要請などに応じ、我が国の専門家の派遣、又は相手国の専門家の招へいを行うなどの緊急対応の専門家交流事業を実施しています。

○平成22年度~
 インドネシア西スマトラ州パダンにおける歴史的地区文化遺産復興支援に係る専門家交流

○平成23年度
 タイ・アユタヤ遺跡洪水被害状況調査
 ブータン王国・民家等の伝統的建造物保存修復手法に関する技術支援(専門家交流)

2.文化遺産保護国際貢献事業(文化遺産国際協力拠点交流事業)

 文化庁は、平成19年度から、海外の国や地域において文化遺産の保護に重要な役割を果たす機関などとの交流や協力を行う拠点交流事業を実施しており、現地で文化遺産の保護に携わる人材の養成に取り組んでいます。

○平成20年度~
 インドネシア・ボロブドゥール遺跡に関する交流事業
 モンゴル・国立文化遺産センターを拠点とした交流事業

○平成22年度~
 カンボジア(アンコール期及びポストアンコール期の文化遺産)における拠点交流事業
 インドネシア・アチェにおける歴史的記録文書等の保存修復のための拠点交流事業

○平成23年度
 キルギス共和国及び中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業
 コーカサス諸国等における文化遺産保護に関する拠点交流事業

 これらの事業は、文化遺産国際協力コンソーシアム、外務省や国際交流基金その他の関係機関との協力の下で実施しています。

(3)二国間取極などによる国際交流・協力

1.日本古美術海外展

 文化庁は、我が国の優れた文化財を諸外国に紹介することにより、我が国の歴史と文化に対する理解の増進と国際親善の推進に寄与することを目的として、昭和26年以降、国宝・重要文化財を含む日本古美術品の展覧会を海外の美術館などとの共催により開催しています。
 平成23年度は、23年4月から6月まで、九州国立博物館において、22年度にバンコク国立博物館(タイ)で開催した「日本とタイ-ふたつの国の巧と美」の帰国展を開催し、我が国から出品した作品とともに、タイ側の作品も展示されました。
 また、平成23年12月から24年2月にかけて、大韓民国国立中央博物館(ソウル)において、九州国立博物館、滋賀県並びに大韓民国国立博物館との共催により、「日本仏教美術-琵琶湖周辺の仏教信仰-」展を開催しました。同展覧会では、滋賀県の社寺などに伝えられた彫刻・絵画・工芸品・書跡など、仏教美術の名宝59件(うち国宝4件、重要文化財31件)を紹介し、日本と同じく仏教美術が重要な位置を占める大韓民国において大きな反響を得ました。

2.アジア諸国への文化財の保存修復協力

 文化庁では、アジア諸国へ文化庁の調査官などの専門家を派遣して、歴史的建造物の共同調査や保存修復についての技術協力を行い、併せて、アジア諸国の文化財の専門家、行政官を招へいして、技術協力に関する協議や研修を行うなど、文化財建造物の保存修復分野における研究交流、人材育成を推進しています。
 平成23年度は、インドネシア、ベトナム、大韓民国へ文化庁の調査官などを派遣し、現地文化財の保存修復に係る技術指導や、今後の二国間技術協力の方針についての協議を行いました。

3.イタリアとの交流・協力

 我が国は、文化財の保存修復や国際協力の分野で長年の経験を有するイタリアと、積極的な交流を行っています。
 平成19年3月には、伊吹文部科学大臣(当時)とルテッリ伊文化財・文化活動大臣(当時)が、日伊文化遺産国際協力の文書に署名しました。さらに、20年3月、壁画の保存修復と活用の調和に関する協力と、文化的景観と歴史的街区の保護に関する協力などを実施することを日伊間で合意し、20年度からこれらの共同プロジェクトが進行しています。今後も、両国の保存修復などの現場を活用して、共同研究、相互の専門家の派遣や情報交換などを実施していく予定です。

4.イクロムとの連携協力

 我が国は、国際機関である文化財保存修復研究国際センター(ICCROM:イクロム)に加盟し、分担金の拠出(米国に次ぐ第2位の拠出国)や国際的な研究事業などに協力するほか、平成12年度からは同センターに文化庁の調査官を派遣し、連携の強化を図っています。

(4)文化財の不法な輸出入等の規制

 我が国は、平成14年に、不法な文化財取引を防止し、各国の文化財を不法な輸出入などの危険から保護することを目的とする「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」を締結し、併せて「文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律」を制定しました。
 この法律には、外国の博物館などから盗取された文化財を「特定外国文化財」として輸入を禁止すること、「特定外国文化財」の盗難の被害者については、民法で認められている代価弁償を条件として、回復請求期間を特例として10年間に延長することなどが定められています。

(5)武力紛争の際の文化財の保護

 我が国は、平成19年に、武力紛争時における文化財の保護を目的とする「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」などを締結し、併せて「武力紛争の際の文化財の保護に関する法律」を制定しました。この法律には、武力紛争時に他国に占領された地域(被占領地域)から流出した文化財を「被占領地域流出文化財」として指定し、輸入を規制すること、武力紛争時において戦闘行為として文化財を損壊する行為又は文化財を軍事目的に利用する行為などを罰則の対象とすることなどが定められています。

第7節 国語施策と外国人に対する日本語教育施策の推進

1 社会の変化に対応した国語施策

 国語は、国民の生活に密接に関係し、我が国の文化の基盤を成すものです。文化庁では、時代の変化や社会の進展に伴って生じる様々な国語の問題に対応して、より適切な国語の在り方を検討しながら、その改善のために必要な施策を実施してきました。
 国語に関する問題については、かつての国語審議会が中心となって検討を行い、様々な改善を図ってきました。具体的には、国語の表記に関して、一般の社会生活における「目安」や「よりどころ」として、「常用漢字表」「現代仮名遣い」「外来語の表記」などが答申され、内閣告示・訓令によって実施されてきました。その後、国語審議会は、平成13年1月に文化審議会国語分科会として改組され、現在に至っています。
 これら審議会の答申に基づく告示をはじめとする国語施策の普及と国語の改善のため、文化庁では、様々な取組を行ってきました。例えば、最近の国語施策についての情報などを提供するとともに、参加者から国語施策に対しての意見を頂くための「国語問題研究協議会」、「国語施策懇談会」を毎年開催しています。また、国語施策を進める上での参考とするとともに、国語に対する国民の関心を喚起するために、平成7年度から毎年「国語に関する世論調査」を実施し、日本人の国語意識の現状について調査しています。さらに、インターネットを活用した取組では14年5月から国語施策に関連する資料を提供してきた「国語施策情報システム」について、利用者の要望の多かった「常用漢字表」音訓検索の導入など、24年2月に大幅な更新を行いました。
 また、平成19年2月に文化審議会が答申した「敬語の指針」を広く普及するためのウェブ版短編映画「敬語おもしろ相談室」を文化庁ホームページで公開しています。

(1)漢字政策の変遷と漢字表改定の背景

 昭和21年に内閣告示された「当用漢字表」は、「一般社会で、使用する漢字の範囲」として1,850字を示した漢字表で、その「使用上の注意事項」には「この表の漢字で書きあらわせないことばは、別のことばにかえるか、または、かな書きにする。」と明記されていました。「当用漢字表」は35年にわたって使用されましたが、その制限的な性格によって国語の表現を束縛し、表記を不自然なものにするとの批判や、社会情勢の変化によって新たに字種の追加が必要になったことなどから見直しが進められ、昭和56年に「常用漢字表」が内閣告示として公布されました。「常用漢字表」は、「当用漢字表」に95字を加えた1,945字の漢字表となり、その性格も制限色の薄い「漢字使用の目安」に変更されました。
 しかし、昭和56年当時には想定できなかった情報機器の急速な普及によって、手書きできない漢字でも簡単に打ち出すことが可能になるなど、私たちの文字環境は大きく変化しました。こうした状況に対応するため、平成17年3月に文部科学大臣から文化審議会に「情報化時代に対応する漢字政策の在り方について」が諮問され、文化審議会国語分科会で審議することになりました。
 平成22年6月7日、国語分科会における5年にわたる審議の結果、取りまとめられた「改定常用漢字表」が文化審議会で了承され、文部科学大臣に答申されました。その後、「改定常用漢字表」は、関係各府省との協議を経て、同年11月30日に内閣告示「常用漢字表」として公布されています。
 新しい「常用漢字表」は、内閣告示以降、既に法令、公用文書、新聞、雑誌、放送などに広く用いられ、一般の社会生活における円滑な情報伝達のための漢字使用の目安とされています。また、文化庁では、平成22年~23年に「常用漢字表」の説明会を全国4か所で、「常用漢字表」の説明を含む国語問題研究協議会を東日本・西日本の2か所で開催するなど、その普及に努めています。
 なお、平成23年度においては、国語分科会に設置された問題点整理小委員会で、現在、社会の各分野で問題とされている国語についての課題を広く洗い出し、今後、国語施策を行う上でどのように対応していけばよいのかを整理しました。これらの検討を通じて挙げられた意見は、「国語分科会で今後取り組むべき課題について」(問題点整理小委員会における「意見のまとめ」)として取りまとめられています。

図表2-7-29 国語審議会及び文化審議会(国語分科会)の重要な答申等と実施状況

図表2-7-29 国語審議会及び文化審議会(国語分科会)の重要な答申等と実施状況

(参考)改定された常用漢字表の主な点
○出現頻度、造語力の有無、読み取りの効率性などの観点から、196字を追加し、5字を削除。1,945字から2,136字の漢字表に改定。

追加字種(196字)

追加字種(196字)

削除字種(5字)

削除字種(5字)

○専ら固有名詞を表記するのに用いる漢字は対象外として追加しないが、都道府県名に用いる漢字(=岡、阪、熊、鹿、梨、阜、茨、媛、埼、奈、栃)とこれに準じる漢字(=畿、韓)は例外として追加。

○これまでの常用漢字に新たな音訓を追加。

 ○これまでの常用漢字に新たな音訓を追加。

○使用されなくなった音訓を削除。

○使用されなくなった音訓を削除。

○付表の語を変更。

○付表の語を変更。

○付表の語を追加。

○付表の語を追加。

○追加字種の字体(印刷文字における字体)については、「表外漢字字体表」(平成12年12月国語審議会答申)に示された「印刷標準字体」を基本としつつ、以下の5字(※)に、括弧内に示す「許容字体」を併せて明示。また、「しんにゅう」「しょくへん」の例を含め、印刷文字字形とは異なる手書き特有の字形を持つ字について、具体的に説明。

※遡[遡]、遜[遜]、謎[謎]、餅[餅]、餌[餌][ ]の外が「印刷標準字体」

○必要に応じ、振り仮名などを用いて読み方を示すような配慮をするなどした上で、表に掲げられていない漢字を使用することもできると明記。

(2)消滅の危機にある言語・方言に関する調査

 平成21年2月、ユネスコが、アイヌ語、八丈語(八丈方言)、奄美語(奄美方言)、沖縄語(沖縄方言)など国内の八つの言語・方言が消滅の危機にあると発表したことを受けての実態調査や23年3月11日の東日本大震災の被災地の方言に関する調査を行っています。

コラムNo.34 日本における消滅の危機にある言語・方言

 平成21年2月に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が、世界中で約2,500の言語が消滅の危機にあるという調査結果を発表しました。日本の中では、次の八つが挙げられています。

【極めて深刻】アイヌ語

【重大な危険】八重山(やえやま)語(八重山方言)、与那国(よなぐに)語(与那国方言)

【危険】八丈(はちじょう)語(八丈方言)、奄美(あまみ)語(奄美方言)、国頭(くにがみ)語(国頭方言)、沖縄(おきなわ)語(沖縄方言)、宮古(みやこ)語(宮古方言)

※ユネスコでは、日本で「方言」として扱われることのある言葉も「言語」として扱われています。

 文化庁においては、平成22年度に「危機的な状況にある言語・方言の実態に関する調査研究事業」を人間文化研究機構国立国語研究所に委託して、与那国島(与那国語・与那国方言)、多良間(たらま)島(宮古語・宮古方言)、喜界(きかい)島(奄美語・奄美方言)、下甑(しもこしき)島(鹿児島県甑島の言葉)の実態についての実地調査と、アイヌ語についての先行研究に基づく現状分析を行い、ホームページで公表しています。
 調査の結果、与那国語(与那国方言)、宮古語(宮古方言)、奄美語(奄美方言)、アイヌ語は、ユネスコの指摘どおり消滅の危機にあること、また同時に、ユネスコが挙げていない甑島の言葉も消滅の危機にあることが明らかになりました。
 平成23年度は、同年3月11日に起きた東日本大震災の影響を考慮し、「東日本大震災において危機的な状況が危惧される方言の実態に関する予備的調査研究事業」を東北大学に委託して、被災地方言の被災前の状況分析や、震災が方言の継承に与える影響の予測などを行い、ホームページで公表しています。

 (ユネスコ“Atlas of the World’s Languages in Danger”を基に作成)
(ユネスコ“Atlas of the World’s Languages in Danger”を基に作成)

2 外国人に対する日本語教育施策の推進

(1)外国人に対する日本語教育施策

 近年、外国人登録者数(約208万人:平成23年12月法務省調べ(速報値))は3年連続で減少したものの、長期的には日本語学習者数(約17万人:22年11月文化庁調べ)は増加傾向にあり、それに伴って外国人の日本語学習目的が多様化しています。
 このような状況の下、文化庁では、外国人労働者問題関係省庁連絡会議や日系定住外国人施策推進会議における提言などを基に、コミュニケーションの手段、文化発信の基盤としての日本語教育の推進を図るため様々な取組を行っています。

図表2-7-30 日本語教育に関する主な事業

図表2-7-30 日本語教育に関する主な事業

(2)外国人に対する日本語教育の教材例集の作成等

 平成19年7月、近年の外国人の定住化傾向や社会参加の必要性の高まりを前提とした日本語教育の在り方について検討を行うため、文化審議会国語分科会に日本語教育小委員会を設置しました。20年1月に整理した「今後検討すべき日本語教育の課題」に基づき、これまで「地域における日本語教育の体制整備」と「生活者としての外国人に対する日本語教育の目的及び標準的な内容等」について審議を行ってきました。「生活者としての外国人に対する日本語教育の目的及び標準的な内容等」については、22年5月に「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」、23年1月に「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案活用のためのガイドブック」、24年1月に「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案教材例集」と「「生活者としての外国人」に対する日本語教育における日本語能力評価について」の取りまとめを行いました。

(3)日本語教育の総合的推進

 日本語教育に関する具体的な事業は、関係府省や関係機関・団体において、それぞれの目的や対象者に応じて実施されており、文化庁では、関係府省がそれぞれ実施している日本語教育施策について情報交換を行い、総合的な推進を図っていくことを目的として「日本語教育関係府省連絡会議」を開催しています。
 また、平成24年1月には日本語教育の総合的な推進の取組の一環として「日本語教育推進会議」を立ち上げ、同年3月に第2回を開催しました。この会議では、関係府省に加え、日本語教育関係機関・団体が一堂に会して日本語教育に関する取組や課題などについて意見交換や情報交換を行っています。

第8節 新しい時代に対応した著作権施策の展開

 文化庁では、我が国が標榜する「文化芸術立国」及び「知的財産立国」を実現するとの基本理念に立ちつつ、情報化の進展に伴う著作物等の創作手段や利用手段の多様化などの社会状況の変化に対応した著作権施策を展開しています。

1 法制度の整備

 「著作権法」については、これまでも権利の保護と公正な利用の調和を図りつつ、時宜に応じた制度改正を行ってきており、平成24年3月には第10・11期の文化審議会著作権分科会の検討結果を踏まえた著作権法の一部改正法案が国会に提出されました。第11期文化審議会著作権分科会においては、急速なデジタル・ネットワーク社会の進展などに対応するため、法制問題小委員会、国際小委員会の2つの小委員会を設置し、著作権に関する様々な課題について、検討が進められました。
 法制問題小委員会においては、著作権法制度の在り方に関すること、具体的には、国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定などについて検討が実施されました。また、国際小委員会においては、インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方などについて検討が実施されました。主な事項の検討結果については以下のとおりです。

(1)法制問題小委員会における検討結果

1.権利制限規定の見直しに係る課題

(ア)国立国会図書館からの送信サービス等に関する権利制限規定の創設
 広く国民が出版物にアクセスできる環境を整備するため、国立国会図書館のデジタル化された所蔵資料(以下、デジタル化資料)の利活用の促進が求められており、平成23年8月26日「『デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項』に係るまとめ」が取りまとめられました。これを受けて、デジタル化資料を公立図書館や大学図書館などに対してインターネットなどで配信するための権利制限規定の創設について検討が行われ、「国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定に係るまとめ」が取りまとめられました。

(イ)私的使用のための複製に係る権利制限規定に関する課題の検討
 デジタル化・ネットワーク化が進展する中、私的使用のための複製に係る権利制限の在り方について、著作権法第30条全般を対象として検討を行いました。
 具体的には、実態に即した議論となるよう、平成23年7月に2回にわたり関係団体からヒアリングを実施し、当該ヒアリングなどを考慮して論点の整理が行われ、今後更に検討されることとなっています。

2.いわゆる「間接侵害」に係る課題
 権利者に無断で音楽・映像などのコンテンツを動画共有サイトにアップロードする者といった権利侵害行為を行う者に対しサーバーを提供する者のように、権利侵害行為に間接的に関与する者に対して、権利者がどのような場合に差止請求などを行うことが適切なのかなどについて、司法救済ワーキングチームにおいて検討を行い、当該ワーキングチームとして「『間接侵害』等に関する考え方の整理」(平成24年1月)が取りまとめられました。

3.ネット上の複数者による創作に係る課題
 インターネット上では、投稿サイトや電子掲示板への書き込みなど、複数の者が著作物の創作に関わる形態のサービスが普及しています。このように創作された著作物を二次利用する場合の権利処理ルールについて、立法措置による対応の可能性と契約による対応の可能性の両面から、契約・利用ワーキングチームにおいて検討を行い、報告書(平成24年1月)を取りまとめました。

(2)国際小委員会における検討結果

1.インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方

 海外における著作権侵害への効果的な対応を行っているコンテンツ業界の権利執行団体2団体からヒアリングを行い、インターネット上の違法コンテンツを監視し削除要請を行うシステムの活用、侵害発生国の関係機関などとの連携強化や違法コンテンツの流通防止に向けた意識啓発の促進などの権利侵害への効果的な取組事例の共有を図るとともに、それらの取組に対する政府の支援方策などについて検討を行いました。

2.著作権保護に向けた国際的な対応の在り方

 現在、視聴覚実演の保護や放送機関の保護に向けた条約に関する議論や、権利の制限と例外に関する議論が世界知的所有権機関(WIPO)で進められており、引き続き我が国の対応の在り方を検討していくことが必要であるとされました。特に、視聴覚的実演の保護に関する条約については、平成24年6月の外交会議開催の決定につき報告が行われ、本条約については、早期実現が望まれています。

3.知財と開発問題、フォークロア問題への対応の在り方

 世界知的所有権機関(WIPO)の、遺伝資源・伝統的知識及びフォークロアに関する政府間委員会(IGC)において、テキストベースでの議論が具体的に進展している中、引き続き我が国の対応の在り方を検討していくことが必要であるとされました。

2 円滑な流通の促進

 インターネットの普及は、著作物のデジタル化とあいまって、著作物の流通形態を劇的に変化させています。このような状況の中、文化庁では、著作物の流通促進の観点から次のような施策を行っています。

(1)「著作権等管理事業法」の的確な運用

 著作権等の管理については、著作物等の利用者の便宜を図るとともに、権利の実効性を高めるため、著作物等を集中的に管理する方式が普及しています。これらの事業を行う「著作権等管理事業者」に対して、「著作権等管理事業法」に基づき、年度ごとの事業報告の徴収や定期的な立入検査などを行い、適切に事業が行われるよう指導監督を行っています(登録事業者数37事業者(平成24年3月1日現在))。

(2)著作物等の流通・利用の円滑化施策

 著作物等の流通を促進するための環境整備として、インターネット上のコンテンツに利用条件を付与するシステム(意思表示システム)の在り方の検討や、諸外国の著作権の集中管理と競争政策に関する調査研究などを行い、その成果を広く関係者に公表しています。

(3)権利者不明等の場合における裁定制度の運用

 著作権者等の所在が不明の場合に著作物等を適法に利用するための「裁定制度」の運用を行っています。平成23年度は国会図書館の書籍や放送番組における実演など60,230件の著作物等の利用について裁定を行いました。

(4)著作権登録制度の運用・改善

 著作権に関する事実関係の公示や、著作権が移転した場合の取引の安全の確保などのため、著作権法に基づく登録事務を行っています。平成21年の著作権法改正においては、デジタル化・ネットワーク化の進展に合わせ、検索しやすい媒体をもって調製できるよう、著作権登録原簿の電子化に関する規定を整備しました(23年6月1日施行)。

3 著作権教育の充実

 著作権に関する高い意識や幅広い知識を身につけることは、今日ますます重要となっており、中学校や高等学校の学習指導要領においても著作権について取り扱うこととされています。
 また、文化庁では、全国各地での講習会の開催やさまざまな人を対象とした教材の作成・提供を行っています。講習会については、国民一般、都道府県等著作権事務担当者、図書館等職員、教職員を対象として毎年十数か所で開催しています。さらに、教材についても積極的に提供しており、児童生徒を対象とした著作権学習ソフトウェア、教職員を対象とした指導事例集、大学生や企業を対象とした映像資料、初心者向けのテキスト、著作権Q&Aデータベース「著作権なるほど質問箱」などを文化庁ホームページ(参照:http://www.bunka.go.jp/chosakuken/index_4.html)を通して広く提供しています。
 このほかにも、関係機関・団体などが主催する著作権講習会への講師の派遣や、著作権教育の充実のため関係団体との連携の促進などを行う著作権教育連絡協議会を開催しており、平成23年度も引き続きこれらの施策を推進し、著作権に関する教育・普及啓発について一層の充実を図っています。

平成23年度著作権セミナー(新潟県)会場風景
平成23年度著作権セミナー(新潟県)会場風景

4 電子書籍の流通と利用の円滑化

 我が国における電子書籍の利活用の推進に向けた検討を行うため、平成22年3月から「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」(総務省、文部科学省、経済産業省の3省合同開催)が開催され、同年6月に報告が取りまとめられました。同報告においては、「デジタル・ネットワーク社会における出版物の円滑かつ安定的な生産と流通による知の拡大再生産の実現」「オープン型電子出版環境の実現」「『知のインフラ』へのアクセス環境の整備」「利用者の安心・安全の確保」に向けた提言が行われました。
 同報告を受け、文化庁においては、「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」(詳細は章末のコラム参照。)を開催し平成23年12月に報告を取りまとめるなど検討を進めています。

5 国際的課題への対応

(1)海外における海賊版対策

 アジア地域を中心に、近年、我が国のアニメ、音楽、映画、ゲームソフトなどの著作物に対する関心が高まる一方で、それらを違法に複製した海賊版の製造・流通やインターネット上の著作権侵害が深刻な問題になっています。
 海外における侵害海賊版の製造・流通を防ぐためには、我が国の権利者が自ら侵害発生地において迅速に対抗措置をとることができることが不可欠であり、文化庁では、その環境を整備するための施策を積極的に実施しています。
 具体的には、1.二国間協議などの場を通じた侵害発生国・地域への取締強化の要請、2.著作権侵害対策ハンドブックの作成・セミナーの開催など、我が国権利者の諸外国における権利行使の支援3.侵害発生国・地域の取締機関職員を対象としたトレーニングセミナーなど、侵害発生国・地域を中心とした能力構築支援を実施しています。

(2)国際ルールづくりへの参画

 著作物は、貿易やインターネットを通じた送信などにより国境を越えて利用されるものであるため、多くの国において条約に基づく国際的な保護が行われています。我が国は、「文化的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(ベルヌ条約)」「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(ローマ条約)」「デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」「実演家及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」などの著作権関連条約の締結に加え、世界貿易機関(WTO)加盟国として「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の履行義務を負っています。
 現在、世界知的所有権機関(WIPO)で検討が進められている「放送機関」や「視聴覚実演」の保護に関する新条約の議論にも積極的に参画しています。知的財産権の執行を強化するための新しい枠組みである「偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)」については、我が国主導で策定が進められ、平成23年10月には署名式が行われました。また、自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)交渉や二国間協議の場において国際的な著作権保護の強化を働きかけています。

コラムNo.35 電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議について

 平成22年6月に取りまとめられた『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告』を受けて、文部科学省において「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」が同年11月から開催されました。本検討会議では著作者、図書館関係者、出版関係者、配信事業者、有識者などの関係者が集まり、1.デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項、2.出版物の権利処理の円滑化に関する事項、3.出版者への権利付与に関する事項、の3点について検討が行われ、23年12月に報告が取りまとめられました。
 同報告においては、検討事項1.「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項」については、国立国会図書館のデジタル化された所蔵資料(以下、「デジタル化資料」)の利活用方策の一環として一定の条件の下で、デジタル化資料を国立国会図書館から地域の公立図書館、大学図書館などまで送信するサービスを行うことが適当であるとの方向性が示されました。当該サービスの実施は、国民の「知のアクセス」の向上、情報アクセスの地域間格差の解消に資するものと考えられ、制度面の整備を含めた環境整備が図られることによる早期の実施が期待されます。
 検討事項2.「出版物の権利処理の円滑化に関する事項」については、今後の更なる出版物の利活用のためには出版物に関する権利処理の円滑化が必要であることから、このための仕組みを整備することが必要であるとされています。当該仕組みは、中小出版者や配信事業者など多様な主体による積極的なビジネス展開の実現や、「孤児作品(権利者不明作品)」などの権利処理の円滑化に資するものであり、早急に整備することが求められています。
 また、検討事項3.「出版者への権利付与」についても、平成22年度に文化庁において実施した「諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連した契約規定に関する調査研究」の結果などを考慮した上で、出版関係者からのヒアリングを行うなど精力的に検討が進められました。その結果、今後は「出版者への権利付与」について出版者などが中心となり、当該権利付与が電子書籍市場に与える全般的な影響について検証を行うとともに、法制面における課題の整理などについて文化庁において専門的な検討を実施することが必要とされました。その上で「出版者への権利付与」の具体的な在り方について、電子書籍市場の動向を注視しつつ、国民各層の幅広い立場からの意見を考慮し、制度的対応を含めて官民一体となった早急な検討を行うことが適当であるとされています。文化庁としては、本検討会議の報告を考慮しつつ、デジタル・ネットワーク社会における知の資産の有効活用と電子書籍流通の基盤整備を目指し、他府省などとの連携の下で、積極的な対応を図ってまいります。

第9節 宗教法人制度と宗務行政

1 宗教法人制度の概要

 現在、我が国には、教派、宗派、教団といった大規模な宗教団体や、神社、寺院、教会などの大小様々な宗教団体が存在し、多様な宗教活動を行っています。そのうち、約18万3,000の宗教団体が「宗教法人法」に基づく宗教法人となっています。
 宗教法人制度を定める宗教法人法の目的は、宗教団体に法人格を与え、宗教団体が自由で自主的な活動を行うための財産や団体組織の管理の基礎を確保することにあります。宗教法人制度は、憲法の保障する信教の自由、政教分離の原則の下で、宗教法人の宗教活動の自由を最大限に保障するため、所轄庁の関与をできるだけ少なくし、各宗教法人の自主的・自律的な運営に委ねています。その一方で、宗教法人の責任を明確にし、その公共性を骨子として全体系が組み立てられています。

図表2-7-31 宗教法人数

図表2-7-31 宗教法人数

図表2-7-32 系統別信者数

図表2-7-32 系統別信者数

2 宗務行政の推進

(1)宗教法人の管理運営の推進等

 文化庁では、都道府県の宗務行政に対する指導・助言、都道府県事務担当者の研修会、宗教法人のための実務研修会などの実施、手引書や映像教材の作成などを行っています。
 また、我が国における宗教の動向を把握するため、毎年度、宗教界の協力を得て宗教法人に関する宗教統計調査を実施し、その結果を「宗教年鑑」としてまとめ、発行するほか、宗教に関する資料の収集や海外の宗教事情の調査などを行っています。

宗教法人実務研修会
宗教法人実務研修会

宗教年鑑など
宗教年鑑など

(2)不活動宗教法人対策の推進

 宗教法人の中には、設立後、何らかの事情により活動を停止してしまった、いわゆる「不活動宗教法人」が存在します。不活動宗教法人は、その法人格が売買の対象となり、第三者が法人格を悪用して事業を行うなど社会的な問題を引き起こすおそれがあり、ひいては宗教法人制度全体に対する社会的信頼を損なうことにもなりかねません。
 このため、文化庁と都道府県においては、不活動状態に陥った法人について、活動再開ができない場合には、吸収合併や任意解散の認証により、また、これらの方法で対応できない場合には、裁判所に対して解散命令の申立てを行うことにより、不活動宗教法人の整理を進めています。

(3)宗教法人審議会

 宗教法人の信教の自由を保障し、宗教上の特性などに配慮するため、文部科学大臣の諮問機関として宗教法人審議会が設置されています。

第10節 アイヌ文化の振興

 国では、以前から、文化財保護の観点によるアイヌ関係の文化財の指定などを行い、北海道教育委員会が行う事業への支援を行ってきました。平成9年5月、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統等が置かれている状況を考慮し、アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、併せて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的として、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」が成立しました。
 文部科学大臣と国土交通大臣は、同法の規定に基づく業務などを行う団体として財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構を指定し、同法人の行う事業に対して支援しています。同法人は、アイヌに関する研究等への助成、アイヌ語の振興、アイヌ文化の伝承再生や文化交流、普及事業、優れたアイヌ文化活動の表彰や、アイヌの伝統的生活空間(イオル)の再生事業などを行っています。

図表2-7-33 アイヌ文化振興財団事業体系図(平成23年度)

図表2-7-33 アイヌ文化振興財団事業体系図(平成23年度)

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生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成24年09月 --