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第2章 子どもたちの教育の一層の充実

第2章 総論

 教育は、子どもたち一人一人の人格の完成を目指すものであり、子どもたちが将来にわたって幸福な生活を営んでいく上で不可欠なものです。また、将来この国や社会を担っていく人材を育てていくという使命もあり、このような教育の重要性はどのような時代にあっても変わることはありません。
 特に、昨今では、グローバル化や知的基盤社会の到来、少子高齢化の進展など、社会が急速な変化を遂げており、教育の重要性はますます高まっています。

図表2-2-1 学習指導要領の理念

図表2-2-1 学習指導要領の理念

 このような時代の中で子どもたちへの教育を一層充実していくよう、文部科学省では、教育機会の確保や教育水準の維持向上のため、以下のような様々な政策を実施しています。

○子どもたちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするために、幼稚園から高等学校までの教育課程の大綱的基準として学習指導要領等を定めています。平成20年3月に幼稚園教育要領、及び小学校、中学校の学習指導要領を、21年3月に高等学校と特別支援学校の学習指導要領などを改訂しました。これらの改訂では、知・徳・体のバランスを重視した「生きる力」を育むため、知識や技能の習得とともに、思考力・判断力・表現力などの育成を重視し、教科等の授業時数の増加と教育内容の充実を図っています(参照:第1節)。

○また、学校における教科の主たる教材として、子どもたちが学習を進める上で重要な役割を果たす教科書の質・量の充実を図ることは不可欠であり、新しい学習指導要領に対応した教科書の検定を行っています(参照:第4節)。

○学校における教育活動の成否は、子どもたちに直接向き合う現場の教員の資質、能力に負うところが大きく、教員の資質能力の向上は子どもたちの教育の充実を図る上で重要な政策課題です。このため、教員の資格として教員免許制度を設けており、大学などにおける教員の養成、各都道府県教育委員会などによる採用や研修など、各段階において様々な施策が講じられています。また現在、更なる質の高い教育の実現を目指し、教員の資質能力の総合的な向上方策について検討しています(参照:第16節)。

○また、教育の機会均等とその水準の維持向上を図るため、公立の義務教育諸学校の教職員給与費の全額を国と都道府県の負担により保障する義務教育費国庫負担制度が設けられています。また、新学習指導要領の本格実施や、いじめ等の学校教育上の課題に適切に対応できるよう、平成23年4月には、小学校1年生の学級編制の標準を35人に引き下げるとともに、地域や学校の実情に応じた柔軟な学級編制が可能となる仕組みを構築しました(後者は平成24年4月施行)。さらに、平成24年度予算では、小学校2年生の36人以上学級の解消に必要な加配定数の増(900人)のほか、小学校の専科指導や特別支援教育の充実、東日本大震災への対応等のための加配定数の計3,800人の教職員定数の改善が盛り込まれています(参照:第16節)。

○子どもたちが家庭の経済事情にかかわらず、必要な教育を受けられ、自立を図ることが出来るよう、社会全体で教育費を適切に負担していくことが必要です。文部科学省では、平成22年4月より実施している公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金をはじめとし、学校段階を通じて家庭の教育費負担の軽減に努めています(参照:第15節)。

○次代を担う科学技術系人材の育成や国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上を図るため、理数好きな子どもの裾野の拡大や子どもの才能を見いだし伸ばす施策を充実するなど科学技術・理数教育充実のための施策を総合的に推進する(参照:第2節)とともに、平成23年度から全国の小学校で外国語活動を新たに導入したことをはじめとし、小・中・高等学校を通じた外国語教育の充実に取り組んでいます(参照:第3節)。

○近年、若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ、無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないということや、子どもたちが学校での生活や学び、進路選択に、はっきりとした目的意識を持って取り組めていないということが指摘されています。子どもたちが社会的・職業的自立に必要な態度や能力を身に付け、明確な目的意識を持って人生を切り拓(ひら)くことができるよう、学校教育におけるキャリア教育が重要です。また、将来にわたって職業人として必要とされる専門的な知識・技能の高度化、職業の多様化に対応することや業務を着実に遂行していくことができるよう、学校教育における職業教育が重要です。文部科学省としては、平成23年1月に中央教育審議会において取りまとめられた「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)も踏まえ、その充実を図っていくこととしています(参照:第7・8節)。

○このほか、学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育の推進(参照:第6節)をはじめ、生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期である幼児期の教育の推進(参照:第10節)や、障害のある子どもについて、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うために一人一人の障害の状態などに応じて行う特別支援教育の推進(参照:第11節)、我が国に定住する外国人の子どもたちの就学機会を確保するための支援の充実(参照:第13節)、国際社会で活躍する人材を育成することにつながる、国際理解教育の推進や海外子女教育の充実(参照:第12節)に取り組んでいます。

○学校は、子どもたちの健やかな成長と自己実現を目指して学習活動を行うところであり、子どもの健康と安全を保つことは重要です。文部科学省では、学校における食育の推進、心と体の健康問題への対応、登下校時を含めた学校における子どもの安全確保に向けた施策に取り組んでいます(参照:第9節)。

○現在、高等学校は進学率が約98%に達し、国民的な教育機関となっており、その進学率の上昇に伴い、生徒の能力・適性、興味・関心、進路などが多様化しています。このため、生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育の推進に取り組んでいます。中央教育審議会においても、平成23年9月に中央教育審議会初等中等教育分科会の下に、「高等学校教育部会」が新たに設置され、今後の教育の在り方などについての審議が進められています(参照:第14節)。

○学校における教育環境の改善や教育の質の向上は、学校の取組だけで達成されるものではありません。保護者や地域住民と学校の信頼関係を深め、保護者や地域住民が、学校と共に子どもたちの教育に責任を負うとの意識の下、学校運営に積極的に協力していくことが重要です。このため、学校が地域や子どもたちの実情に応じて主体的に創意工夫のある教育活動を展開し、自主的・自律的な学校運営ができるよう、教育課程、予算などについての学校の裁量を拡大するとともに、地域の人々と目標(子ども像)を共有し、地域の人々と一体となって子どもたちを育んでいく、地域とともにある学校づくりを推進しています(参照:第17節)。

 以上のように、子どもたちの教育を巡る政策課題は数多くあります。第2章では、このような子どもたちの教育の一層の充実を図っていくための取組を詳しく紹介します。

楽しい遊びをつくり出す幼稚園児(上越教育大学附属幼稚園)
楽しい遊びをつくり出す幼稚園児(上越教育大学附属幼稚園)

第1節 新学習指導要領が目指す教育の実現

 学習指導要領とは、全国的に一定の教育水準を確保する観点から、学校が編成する教育課程の大綱的基準として、国が学校教育法に基づいて定めるものです。平成20年3月に改訂した幼稚園教育要領、小学校学習指導要領、中学校学習指導要領、21年3月に改訂した高等学校学習指導要領、特別支援学校学習指導要領では、

○基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力(「確かな学力」)

○自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など(「豊かな心」)

○たくましく生きるための健康や体力(「健やかな体」)

のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指しています。
 新学習指導要領は、平成23年4月より小学校において全面実施されており、24年4月から、中学校においても全面実施されています。高等学校では25年度入学生から年次進行で実施されます(数学、理科は24年度入学生から先行実施)。特別支援学校も小・中・高等学校に準じて実施されます。

図表2-2-2 新学習指導要領実施スケジュール(概要)

図表2-2-2 新学習指導要領実施スケジュール(概要)

1 確かな学力を育む

 学校教育法や新学習指導要領には、1.基礎的・基本的な知識・技能、2.知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力、3.学習に取り組む意欲という「学力」の三つの重要な要素が示されています。これら三つの要素が有機的に結び付いた「確かな学力」を育むため、文部科学省としては、新学習指導要領の円滑な実施のために必要な条件整備を進めるとともに、全国学力・学習状況調査などを通じて子どもたちの学力・学習状況の把握・分析に努めています。

(1)新学習指導要領の基本的な考え方

 「確かな学力」を育むためには、「ゆとり」か「詰め込み」かではなく、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得とこれらを活用する力の育成を言わば車の両輪として伸ばしていくことが必要です。このため、新学習指導要領では、授業時数を増加し、教育内容を改善します。

1.授業時数の増加

 小学校では、週当たりの授業時数が低学年で2コマ、中・高学年で1コマ増加します。特に、国語、社会、算数、理科、体育の授業時数は、6年間で約1割増加します。また、中学校では、週当たりの授業時数が1コマ増加します。特に、国語、社会、数学、理科、外国語、保健体育の授業時数は、3年間で約1割増加します。これは、つまずきやすい内容の確実な習得を図るための繰り返し学習や、知識・技能を活用する観察・実験やレポート作成、論述などの学習活動、課題解決的な学習などを充実したことによるものです。なお、高等学校の卒業までに修得させる単位数は、引き続き74単位以上としています。

2.教育内容の主な改善事項

(ア)言語活動の充実
 言語は、論理や思考などの知的活動、コミュニケーション、感性・情緒の基盤です。このため、国語をはじめ各教科などで記録、説明、批評、論述、討論などの学習を充実しました。例えば、「国語」では、経験したことを記録・報告する活動や、相手を説得するために意見を述べ合う活動、知識や経験を活用して論述する活動を、「算数」・「数学」では、言葉や数、式、図、表、グラフなどを用いて考えたり、説明したり、表現したりする活動を充実することなどにより、思考力・判断力・表現力の育成を図ります。
 また、集団において他者と協力して課題を解決していくことができるように、コミュニケーション能力を育むことも重要です。このため、平成22年度から、芸術家等を学校へ派遣し、芸術表現体験活動を取り入れたワークショップ型の授業の実践を通じて子どもたちのコミュニケーション能力の育成を図る事業を展開しており、これまでに延べ473校で実施しています。あわせて、「コミュニケーション教育推進会議」を開催し、コミュニケーション能力育成のための具体策についての検討を行うなど、子どもたちのコミュニケーション能力の育成を図るための取組を進めています。

(イ)理数教育の充実(参照:第2部第2章第2節)

(ウ)伝統や文化に関する教育の充実
 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、その良さを継承・発展させるための教育を充実することが必要です。このため、各教科などで我が国の伝統や文化についての理解を深める学習を充実しました。例えば、「国語」では、神話・伝承や古文・漢文に関する学習(小学校)を充実するとともに、「美術」では我が国の美術文化に関する学習(中学校)を、「音楽」では我が国の伝統的な歌唱や和楽器に関する学習(中学校)を充実しています。

(エ)体験活動の充実(参照:第2部第2章第1節2(2))

(オ)道徳教育の充実(参照:第2部第2章第1節2(1))

(カ)外国語教育の充実(参照:第2部第2章第3節)

3.学習評価

 小・中・高等学校における学習評価は、学級などにおける順位ではなく、ある課題ができたかできないかなど、一人一人の子どもの達成度に基づく評価(目標に準拠した評価)を中心として行われています。
 各学校は、保護者などに対し、どの程度達成できていればどのような成績とするのかなどを事前に説明するとともに、通信簿などを通じ、子どもたちの成績についてより丁寧に説明することが求められており、実際にそのような取組に努めています。また、日常の子どもたちの学習状況をより丁寧に捉え、授業の改善や個別指導の充実などにも努めています。
 文部科学省では、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会が取りまとめた「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」などを踏まえ、引き続き目標に準拠した評価の普及を進めるとともに、学習評価に関する事例の提示などを通じた各学校における適切かつ効果的な学習評価の推進を図っていきます。

(2)新学習指導要領の円滑な実施に向けた支援策

 新学習指導要領を円滑に実施するためには、指導体制や教材など教育条件の整備が必要です。文部科学省では、このため、

  • 理科の実験用機器などの購入経費の補助
  • 武道場の整備への支援
  • 教職員定数の改善

などを行ってきました。
 また、教材に関しては、平成23年4月に定めた「教材整備指針」に基づく例示教材等の整備を推進するため、「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」を策定し、単年度約800億円、平成24年度から33年度までの10年間で約8,000億円の地方財政措置が講じられることとなりました。このほか、理数教育や外国語教育など各教科等の充実に向けた支援や、教育の情報化など各教科等横断で取り組むべき重要事項の推進も図っていきます。

(3)学習指導要領によらない教育課程編成を認める制度

 文部科学省では、今後の学習指導要領の改訂に役立てるための実証的な資料を得るため、学習指導要領によらない教育課程の編成・実施を認め、新しい教育課程や指導方法について実践研究を行う「研究開発学校」制度(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kenkyu/)を設けています。
 これまでも、例えば平成元年(小学校)の生活科や、10年(小・中学校)及び11年(高等学校)の「総合的な学習の時間」、20年(小学校)の「外国語活動」の導入に向けた検討をする際に、実証的な資料として活用されました。
 また、学校が、地域の実態に照らしたより効果的な教育を実施するため、学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程の編成・実施を認める「教育課程特例校」制度(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokureikou/index.htm)を設けています。具体的には、東京都品川区の「市民科」、世田谷区の「日本語科」など、学校の創意工夫を生かした教育課程が編成・実施されています。

(4)我が国の子どもたちの学力・学習状況

1.全国学力・学習状況調査の実施

 文部科学省では、平成19年度から、全国の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒の学力状況などを把握する「全国学力・学習状況調査」を毎年1回、4月下旬に実施しています。これは、国際学力調査の結果における学力や学習意欲の低下などから、国として学校教育の現状や課題について十分に把握する必要性が増すとともに、義務教育の質を保証する仕組みの構築に対する要請が高まっていることなどを踏まえたものです。教科は国語と算数・数学(平成24年度調査は理科も実施)で、それぞれ「知識」に関する問題(A問題)と知識・技能の「活用」に関する問題(B問題)からなります。学力を問う教科の調査だけでなく、児童生徒の生活習慣や学習環境の調査も行い、学力との関連を分析しています。調査方式は、平成19年度から21年度までは悉(しっ)皆調査で実施しましたが、22年度は、抽出調査(抽出率約30%)に切り替えるとともに、抽出調査の対象外の学校であっても、その設置者が希望すれば、抽出調査と同一の問題の提供を受け、本調査を利用できる希望利用方式を導入しました。これまでの調査の結果、信頼性の高いデータが蓄積され、教育に関する継続的な検証改善サイクルの構築も着実に進んでいます。全国学力・学習状況調査の結果や、各教育委員会や学校独自の調査結果を活用することで自らの教育の成果と課題を検証し、教育施策の改善や児童生徒の教育指導の充実に生かすことができ、各教育委員会や学校の積極的な取組が期待されます。また、これまでの調査結果から、具体的には、知識に関する問題では、1.文の構成に対する理解、2.割合や比例の問題などに継続的な課題があり、知識・技能の活用に関する問題では、1.資料や情報に基づいて自分の考えや感想を明確に記述すること、2.日常的な事象について、筋道を立てて考え、数学的に表現することなどの課題があることが明らかになっています。

2.平成23年度全国学力・学習状況調査の実施見送りと問題冊子等の配布

 平成23年度調査は、23年4月に22年度と同様に抽出調査及び希望利用方式で実施する予定でしたが、東日本大震災の影響等を考慮し、従前の全国学力・学習状況調査としての調査の実施を見送りました。しかし、文部科学省として各教育委員会及び学校等における教育に関する検証改善サイクルの継続を支援するため、希望する各教育委員会及び学校等に対して国が作成した問題冊子等を平成23年9月下旬に配布しました。配布を希望した学校は全小中学校(約3万校)の76.2%であり、問題冊子について11道県、349市区町村が自治体独自の調査として、約8,000の小中学校が学校独自の調査として活用しました。

図表2-2-3 問題例:平成23年度全国学力・学習状況調査より

図表2-2-3 問題例:平成23年度全国学力・学習状況調査より

※平成23年度の全問題については(http://www.nier.go.jp/11chousa/11mondai.htm)を参照。

3.平成24年度全国学力・学習状況調査の概要

 平成24年度調査は、国語、算数・数学に新たに理科を追加して、22年度調査と同様に抽出調査及び希望利用方式で実施します。理科の追加は、1.科学技術人材の育成等のために、理数教育の充実が求められていること、2.科学的な思考力、表現力、科学への関心を高める学習の充実が求められていること、3.児童生徒の「理科離れ現象」の実態把握と課題の改善が必要であること、4.国際的な学習到達度調査においても「理科」や「科学的リテラシー」を調査内容としていることなど、平成23年3月の「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」の検討のまとめを踏まえたものです。

(ア)調査の目的

  • 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る
  • そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する
  • 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる

(イ)調査実施日
 平成24年4月17日(火曜日)

(ウ)調査対象
 小学校第6学年、中学校第3学年

(エ)調査内容
 1.教科に関する調査(国語、算数・数学、理科)

  • 主として「知識」に関する問題
  • 主として「活用」に関する問題

 2.生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査

  • 児童生徒に対する調査
  • 学校に対する調査
4.平成25年度全国学力・学習状況調査における「きめ細かい調査」

 平成25年度調査は前述の、23年3月の専門家会議の検討のまとめを踏まえ、「きめ細かい調査」の実施を予定しています。「きめ細かい調査」は、1.すべての市町村、学校等の状況が把握できるよう、対象学年の全児童生徒を対象に実施し、2.経年変化分析や経済的な面も含めた教育格差等のきめ細かい把握・分析が可能となるような調査を一部追加で実施するなど、従来の調査と異なる新たな調査として実施することを検討しています。文部科学省としては、今後ともより良い調査となるよう、継続して調査を活用し、今後の学校環境改善の検討に役立てるとともに、教育施策の改善や教育指導の充実を図ってまいります。

5.調査結果の活用

 本調査については、文部科学省、教育委員会、学校が、調査結果を把握・分析し、教育施策・指導方法の改善につながるよう活用していくことが重要です。このため、文部科学省では、調査結果について、大学等の研究機関の専門的な知見を活用した高度な分析・検証に関する調査研究を毎年実施しております。平成22年度は、(1)全国的な学力調査の調査手法における技術的課題に関する分析、(2)子どもたちの学力水準を下支えしている教育施策・教育指導等の特徴に関する分析、(3)全国学力・学習状況調査において比較的良好な結果を示した教育委員会・学校等における教育施策・教育指導等の特徴に関する分析を行い、その成果を平成23年12月に公表しました(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/1315088.htm)。また、国立教育政策研究所では、19年度から22年度までの4年間の調査結果から見えてきた成果と課題をまとめるとともに、調査結果を踏まえて授業を改善する際の参考とするための授業アイディア例や過去の調査で特徴ある結果を示した学校における取組をまとめた事例集をHPに掲載しています(http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html)。これらの資料を、各教育委員会における教育施策や各学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てていただいています。

6.OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)

 経済協力開発機構(OECD)では、義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生が相当)が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価するため、「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」を実施しています。調査は、2000年から3年ごとに行われ、2000年及び2009年は読解力(プリント読解力)、2003年は数学的リテラシー、2006年は科学的リテラシーを中心分野とした調査でした。

図表2-2-4 これまでのOECD生徒の学習到達度調査(PISA)の結果

図表2-2-4 これまでのOECD生徒の学習到達度調査(PISA)の結果

 これまでの調査結果からは、我が国は世界トップレベルの国々と比較すると成績下位層が多いことなどの課題が明らかになっており、文部科学省では、1.平成23年度以降全面実施されている新学習指導要領において、知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成バランスを重視し、授業時数を増加するとともに、言語活動・理数教育の充実に努め、2.少人数学級を推進するとともに、様々な児童生徒の実態に対応するため、教職員定数の改善により教育の質の向上を図っています。さらに、3.全国学力・学習状況調査を引き続き実施し、調査結果等を活用した国、教育委員会、学校での取組による検証改善サイクルの構築を進めています。
 また、2009年には紙媒体の問題冊子による調査(プリント読解力調査)と同時に国際オプションとして、コンピュータ画面により調査問題の提示・解答を行うデジタル読解力調査が行われ、その結果が2011年6月に公表されました。
 デジタル読解力調査には、プリント読解力調査に参加した65か国・地域のうち19か国・地域(うちOECD加盟国16か国)から、約3万6千人の生徒が参加し、日本からは全国の高等学校等のうち109学科、約3,400人の生徒が参加しました。
 調査結果によると、我が国の生徒のデジタル読解力は、(1)平均得点は上位(4位)にあり、生徒の学習到達度の特徴をレベル分けした習熟度で見ると、習熟度の下位層(レベル1以下)の割合は参加国中2番目に少なく、(2)プリント読解力の結果と比べると、平均得点に差はないが、習熟度の上位層(レベル5以上)と下位層(レベル1以下)の割合が少ないことなどが明らかになりました。つまり、デジタル読解力は、プリント読解力より高い到達度を示す生徒が少なく、また、極めて低い到達度を示す生徒も少ないと言えます。

図表2-2-5 我が国の「デジタル読解力」と「プリント読解力」の習熟度

図表2-2-5 我が国の「デジタル読解力」と「プリント読解力」の習熟度

 これらの調査結果を踏まえ、文部科学省では、1.情報教育に関する指導内容を充実させた新学習指導要領の着実な実施、2.21世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指した「教育の情報化ビジョン」(平成23年4月)を踏まえた取組など、教育の情報化についても引き続き推進していきたいと考えています。

7.国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)

 国際教育到達度評価学会(IEA)では、小学校4年生、中学校2年生を対象とし、初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学と理科の教育到達度を測定し、学校のカリキュラムで学んだ基本的な知識や技能がどの程度習得されているかを評価するため、「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」を実施しています。平成23年(2011年)2月に調査を実施しており、この2011年調査の結果については、24年末に公表される予定です。

8.教育課程の実施状況を把握するための取組

 学習指導要領に基づく教育課程の状況を不断に評価・検証し、教育課程の基準の改善などに反映させる観点から、文部科学省において各学校の教育課程の編成の状況を把握しているほか、国立教育政策研究所教育課程研究センターなどにおいて、(ア)学習指導要領実施状況調査、(イ)研究指定校・学力把握実践研究協力校・学習指導実践研究協力校による調査、(ウ)特定の課題に関する調査など、児童生徒の学力の状況を総合的に把握する取組を行っています。
 このうち、学習指導要領実施状況調査については、各教科について、改訂の基本方針に係る事項、新設・学年間で移行された事項、課題があると指摘される事項等を検証することを目的として、平成24年度に小学校で調査を実施することを予定しています。
 また、特定の課題に関する調査については、平成22年度に中学校英語「書くこと」についての調査を実施し、24年1月に調査結果を公表しました。さらに、24年2月に高校2年生を対象として、「論理的な思考力」について調査を行い、24年度中に調査結果をまとめる予定です。

2 豊かな心を育む

(1)道徳教育の充実

 学校教育においては、人間として調和のとれた育成を目指して、子どもたちの発達の段階に応じた道徳教育を展開することとしています。
 幼稚園では、各領域を通して総合的な指導を行い、道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では、道徳の時間(週当たり1単位時間)を要として、各教科、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動それぞれの特質に応じて適切な指導を行い、学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では、人間としての在り方生き方に関する教育を、学校の教育活動全体を通じて行うことにより、その充実を図ることとしています。
 我が国の児童生徒については、生命尊重の精神や自尊感情の乏しさ、基本的な生活習慣の未確立、規範意識の低下、人間関係を形成する力の低下など、心の活力が弱っているとの指摘がなされています。このため、生命を尊ぶとともに、いじめを許さないといった規範意識などの確立の根底となる道徳教育の一層の充実が求められています。
 「教育基本法」の改正では、教育の目標として、新たに「豊かな情操と道徳心」を培うことなどが盛り込まれ、さらに、「学校教育法」の改正では義務教育の目標として「規範意識」や「公共の精神」、「生命及び自然を尊重する精神」などを育成することが新たに盛り込まれるなど、道徳教育の充実を図っています。
 教育基本法などの改正を受け、平成20年3月に改訂した小・中学校の新学習指導要領では、次のような改善を図っています。

  1. 小学校では、あいさつなどの基本的な生活習慣、人間としてしてはならないことをしない、法やきまりの意義など、中学校では、主体的に社会の形成に参画するなど、児童生徒の発達の段階を踏まえた指導の重点化を図ること
  2. 先人の伝記、自然、伝統と文化、スポーツなどを題材とした児童生徒が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用の推進
  3. 校長の方針の下に、道徳教育の推進を主に担当する教師(道徳教育推進教師)を中心とした指導体制の充実

 また、平成21年3月に改訂した高等学校の新学習指導要領では、全教師が協力して道徳教育を展開するため、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の全体計画の作成を義務付けるなど、道徳教育の充実を図りました。
 文部科学省においては、新学習指導要領の周知・徹底を図るとともに、学校・地域の実情などに応じた多様な道徳教育を支援するため、「心のノート」を含めた道徳教材の活用をはじめ、道徳教育充実のための外部講師派遣、保護者・地域との連携など自治体による多様な事業への支援を行うことにより、引き続き道徳教育の充実に努めていきます。

(2)体験活動の充実

 近年、都市化や少子化、地域社会における人間関係の希薄化などが進む中で、児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むためには、発達の段階に応じて、自然体験活動をはじめ、様々な体験活動を行うことが大切です。
 平成18年12月に改正された「教育基本法」では、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画する態度(第2条第3号)、生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度(同条第4号)が教育の目標として規定されました。さらに、19年6月には、学校教育法が改正され、同様の趣旨が義務教育の目標として規定され、学校教育において様々な体験活動を充実していくことが必要とされています。
 文部科学省では、「豊かな体験活動推進事業」において、自然の中での宿泊体験活動などの体験活動を推進しています。平成20年度からは、農林水産省・総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、小学生の農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを支援しています。
 これらの取組や「教育基本法」などの趣旨を十分踏まえ、引き続き学校における体験活動の推進に努めていきます。

(3)国旗・国歌の指導

 学校における国旗・国歌の指導は、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために、学習指導要領に基づいて行っているものです。
 平成11年8月には「国旗及び国歌に関する法律」が施行され、国旗・国歌の根拠について慣習として定着していたものが成文法としてより明確に位置付けられ、学校教育における国旗・国歌に対する正しい認識が更に進められました。
 新学習指導要領では、引き続き、小・中学校社会において我が国及び諸外国の国旗と国歌の意義を理解させ、これらを尊重する態度を育てるよう指導することとしており、また、小・中・高等学校特別活動において「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定しています。さらに、小学校音楽において、国歌の指導に関する充実を図っています。
 文部科学省としては、引き続き全ての学校において、学習指導要領に基づいた国旗・国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導することとしています。

3 健やかな体を育む

 これからの社会を生きる児童生徒に、健やかな心身の育成を図ることは極めて重要です。体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わっており、生きる力を支える上で重要な要素です。
 このため、教科としての体育科・保健体育科において、基礎的な身体能力の育成を図るとともに、運動部活動などを相互に連携させながら、学校教育全体として効果的に取り組んでいます(学校体育・運動部活動等については、第2部第6章第3節1(3)参照)。

第2節 科学技術・理数教育の推進

 知識基盤社会の到来とともに、科学技術に関する世界的な競争がこれまで以上に激化しており、我が国においても、次代を担う科学技術系人材の育成が不可欠です。
 それと同時に、科学技術の成果が社会の隅々にまで活用されている今日、国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上が極めて重要です。
 この二つの観点から、科学技術の土台となる理数教育の充実を図ることは喫緊の課題です。
 このような課題も踏まえ、平成20年3月に改訂した小学校学習指導要領、中学校学習指導要領、21年3月に改訂した高等学校学習指導要領では、観察・実験やレポートの作成、論述、自然体験などに必要な時間を十分確保するため、理科や算数・数学の授業時数を増やしました。また、国際的な通用性や小・中・高等学校の学習の円滑な接続などを図る観点から、例えば小学校算数では台形の面積(第5学年)や反比例(第6学年)、小学校理科では、物と重さ(第3学年)や骨と筋肉の働き(第4学年)、食物連鎖(第6学年)、中学校数学では二次方程式の解の公式(第3学年)、中学校理科ではイオンや遺伝の規則性、放射線の性質と利用(第3学年)などを指導することとしました。
 これらの新学習指導要領は、小学校では平成23年度から、中学校では24年度から全面実施されますが、算数・数学や理科については、21年度から一部を前倒しして先行実施しています。また、高等学校については、小・中学校における学習の成果を生かすため、数学、理科は24年度入学生から順次実施されていきます。
 なお、理科教育振興法に基づき、公・私立の小・中・高等学校等における実験用機器をはじめとした理科、算数・数学教育に使用する設備の計画的な整備を進めています。
 このほか、将来の科学技術人材を育成するため、以下の施策をはじめとする科学技術・理数教育充実のための取組を総合的に推進しています。

1 理数好きな子どもの裾野の拡大

(1)外部人材を活用した体験的な学習機会の充実

 科学技術振興機構では、理科授業における観察・実験活動の充実と、教員の資質向上を図るため、大学(院)生、退職教員などの外部人材を「理科支援員」として小学校に配置する取組を支援しています。また、子どもの科学技術、理科・数学に関する興味・関心と知的探求心を一層高めるため、学校や教育委員会などと大学・科学館などが連携した体験的・問題解決的な取組を支援しています。
 具体的には、第一線の研究者・技術者を講師とする観察、実験などの学習活動(627件)や、最先端の研究現場における合宿型の学習活動(サイエンスキャンプ)(82件)などが行われています。さらに、平成22年度から、高等学校等の科学部活動への支援を実施(187件)しています。

(2)理数教育を担う教員の指導力向上

 科学技術振興機構では、大学・大学院が教育委員会と連携して、理数に優れた指導力を有し各学校や地域の理数指導において中核的な役割を果たす小・中学校教員を養成するための取組を支援する事業を平成21年度から実施しており、24年3月1日現在計14件を採択しています。また、平成23年度から、中学校、高等学校等の理数教育を担当する教員に、合宿形式で最先端の科学技術を体感させ、才能ある生徒を伸ばすための効果的な指導方法を修得させる取組を支援する事業を新たに実施(3件)しています。

(3)デジタル教材の開発

 科学技術振興機構では、児童生徒の知的好奇心、探求心に応じた学習の機会を提供するため、理科教育用デジタル教材等を開発し、インターネットなどを通じて全国の学校などへの提供を行っています(平成24年3月31日時点の登録教員数61,937名)。

2 子どもの才能を見いだし伸ばす取組の充実

(1)先進的な理数教育を実施するスーパーサイエンスハイスクールの充実

 文部科学省では、平成14年度から、先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」として指定し、科学技術振興機構を通じて、観察・実験などを通じた体験的・問題解決的な学習や課題研究の推進、理数に重点を置いたカリキュラムの実施などを支援しています。23年度においては、全国145校の高等学校等が特色ある取組を進めています。
 さらに、平成22年度から、SSH指定校の理数教育における中核としての機能の強化を図るため、「コアSSH」を設け、追加の支援を行っています。

(2)国際科学技術コンテストの支援

 科学技術振興機構では、数学、物理、化学、生物学、情報、地理、地学などの国際科学技術コンテストの国内大会の開催や、国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援を行っています。平成23年度は国際科学オリンピックの日本代表選手が全員メダルを獲得しました(金メダル:11個、銀メダル:13個、銅メダル:3個)。
 また、平成23年度においては、全国の科学好きな生徒等が活躍できる場を構築し、科学好きの生徒の裾野を広げるとともに、トップ層を伸ばすことを目的とした「科学の甲子園」を新たに実施しました。全国大会は24年3月24日(土曜日)~26日(月曜日)に兵庫県立総合体育館にて開催され、埼玉県立浦和高等学校チームが優勝しました。

(3)大学等による発展的な学習環境の提供

 科学技術振興機構では、理数に関して卓越した意欲・能力を有する生徒に対して、学校外で高度で発展的な学習環境を年間通して継続的に提供する大学等の取組を支援することにより、質の高い科学者の卵の育成を図る事業を実施しています。平成23年度は計13の大学の学部等において、講義や実験などを通じ、生徒の育成が行われています。

第3節 外国語教育の充実

1 新学習指導要領について

 平成23年4月より、小学校で新学習指導要領が全面実施され、年間35単位時間(週1コマ)の外国語活動が導入されました。外国語活動では、外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませることにより、中学校以降の外国語学習につながるコミュニケーション能力の素地を育成することを目的としています。文部科学省では、外国語活動の円滑な実施に向け、教育の機会均等及び中学校への円滑な接続などの観点から全国で一定の教育水準の確保を図るため、国としての共通教材「英語ノート」等を配布してきました。24年度以降は、「英語ノート」等の使用実績などを踏まえて作成された新たな教材“Hi,friends!”が使用されます。
 また、平成24年度から全面実施される中学校の新学習指導要領では、指導する語彙数を900語から1,200語に充実させたほか、授業時数を3割程度増加させ、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく指導することとしています。25年度から年次進行で実施される高等学校の新学習指導要領でも、指導する語彙を1,300語から1,800語に充実させ、さらに、「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする」ことを明記しました。
 新学習指導要領を着実に実施するためには、英語担当教員が一定の英語力及び指導力を備え、指導の充実を図ることが重要です。このため、英語教育に関する実践的・効果的な指導力を身に付けることを狙いとして、英語担当教員の米国派遣事業などを実施しています。

2 外国語能力の向上に向けた取組

(1)「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」について

 文部科学省では平成22年11月より、「外国語能力の向上に関する検討会」を開催し、23年6月に「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策~英語を学ぶ意欲と使う機会の充実を通じた確かなコミュニケーション能力の育成に向けて~」を取りまとめました。本提言では、グローバル社会において求められる、異なる国や文化の人々と臆せず積極的にコミュニケーションを図り、物事を論理的に説明したり相手を説得したりすることのできる外国語能力を育成するため、生徒の英語力の達成状況の把握・検証、英語学習のモチベーションの向上、ALT・ICTの効果的な活用、英語教員の英語力・指導力の強化、グローバル社会に対応した大学入試に向けた改善などが盛り込まれています。本提言の実現に向けて、24年度から、各都道府県に拠点校を設け、優れた英語教育の取組を支援したり、外部検定試験を活用して生徒の英語力の把握・分析を行い、指導改善を図るなど、外国語能力向上のための諸施策を推進していくこととしています。

(2)「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」について

 文部科学省は、総務省及び外務省と共に「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を推進しています。本プログラムは、外国語教育の充実や、地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて、諸外国との相互理解を増進するとともに、我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。本プログラム参加者のうち外国語指導助手(ALT)は、生徒が授業で生きた英語に触れたり、実際に英語を使ったりする機会を充実させるために重要な存在です。平成23年度は26か国から招致した3,955人のALTが、学校などで語学指導や国際理解のための活動に従事しています。

第4節 より良い教科書のために

 教科書は、学校における教科の主たる教材として、児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たすものです。教育の機会均等を実質的に保障し、全国的な教育水準の維持向上を図るため、学校教育法により、小・中・高等学校、特別支援学校などにおいては、文部科学大臣の検定を経た教科書又は文部科学省が著作の名義を有する教科書を使用しなければならないとされています。教科書は次のような過程を経て、児童生徒の手に渡り、使用されています(図表2-2-6、図表2-2-7)。

図表2-2-6 教科書が使用されるまで

図表2-2-6 教科書が使用されるまで

図表2-2-7 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

図表2-2-7 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

1 教科書検定

 教科書検定制度は、民間が教科書の著作・編集を行うことにより、著作者の創意工夫に期待するとともに、検定を行うことにより、客観的かつ公正で、適切な教育的配慮がなされた教科書を確保することをねらいとしているものです。
 教科書検定は、学習指導要領や教科用図書検定基準に基づき、各分野の専門的な知見を有する教科用図書検定調査審議会の委員によって、専門的・学術的な審議を経て厳正に行われています。
 平成23年度は、新学習指導要領や21年に改正された教科用図書検定基準に基づき、高等学校の主として低学年用教科書について検定を行いました。
 また、国民の教科書に対する関心に応えるため、検定の結果を公開しています。平成23年度は、22年度に行った中学校並びに新学習指導要領が先行実施された高等学校の数学及び理科の検定の結果を公開しました。(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1304401.htm)

2 教科書の採択

 教科書の採択とは、地域や児童生徒の実情に応じて、学校で使用する教科書を決定することであり、公立学校では設置者である都道府県や市町村の教育委員会、国・私立学校では校長が行っています。公立小・中学校の採択については、都道府県教育委員会が、市町村教育委員会の意見を聞いて市・郡の単位で採択地区を設定します。複数の市町村からなる採択地区では、地区内の市町村の教育委員会が協議をして、種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
 教科書の採択は、採択権者の権限と責任の下、1.教科書の内容に関する十分な調査研究、2.適正かつ公正な採択の確保、3.保護者の参画などの開かれた採択の推進などが求められています。文部科学省では、各教育委員会に対して、調査研究のより一層の充実、採択事務のルール化などの採択手続の明確化、採択地区の適正規模化、静ひつな採択環境の確保など、採択のより一層の改善に努めるように指導しています。

3 教科書の無償給与

 義務教育教科書無償給与制度は、憲法第26条が掲げる義務教育無償の精神をより広く実現する制度として、昭和38年度以来実施されています。この制度は、次代を担う児童生徒に国民的自覚を深めてほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり、同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。教科書無償給与の対象となるのは、全ての義務教育諸学校の児童生徒であり、使用する全教科の教科書です。
 平成23年度には、新学習指導要領の実施などを受け、ページ数が全体で約25%増加した小学校用教科書が発行されており、教科書の無償給与に関する予算額は約406億円となり、約1,056万人の児童生徒に対して、合計約1億冊の教科書が給与されました。

4 教科用特定図書等の普及充実

 平成20年の「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の制定を受け、拡大教科書など障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等(※1)の普及を図っています。
 具体的には、できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるような拡大教科書の標準的な規格を定めるなど、教科書発行者による拡大教科書の発行を促しています。平成23年度に使用される小学校用教科書に対応した標準規格の拡大教科書は、全点発行されています。また、教科書発行者が発行する拡大教科書では対応できない児童生徒のために、一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して、教科書デジタルデータの提供を行っています。このほか、障害により検定済教科書において一般的に使用されている文字や図形などを認識することが困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等の整備充実を図るため、調査研究などを行っています。


※1 教科用特定図書等
 視覚障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため、検定済教科書の文字、図形等を拡大して複製した図書(いわゆる「拡大教科書」)、検定済教科書を点字により複製した図書(いわゆる「点字教科書」)、その他障害のある児童生徒の学習の用に供するために作成した教材であって、検定済教科書に代えて使用し得るものを指す。

図表2-2-8 検定済教科書・拡大教科書の種類・発行点数

図表2-2-8 検定済教科書・拡大教科書の種類・発行点数

第5節 暴力行為、いじめ、不登校等の解決を目指して

1 生徒指導上の諸問題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は、すべての児童生徒を対象として、それぞれの人格の健全な発達・成長、学校におけるあらゆる教育活動の中で、現在及び将来における自己実現を図っていくために児童生徒が自らを導いていく能力を育成すること、そして、学校生活が有意義で興味深く、充実したものになることを目指して、児童生徒に社会的な資質や能力、態度などを修得・発達させるような指導・援助を行うことです。
 一方、いじめの社会問題化や少年による重大事件の続発など、児童生徒の問題行動などは教育上の大きな課題となっています。文部科学省では、毎年度、各都道府県教育委員会などを通じて調査を行い、暴力行為、いじめ、不登校などの児童生徒の問題行動等の実態把握に努めています。平成22年度の調査結果では、暴力行為の発生件数は約6万件、いじめの認知件数は約7万8千件、不登校児童生徒数は約17万6千人と、依然として相当数に上っています。
 学校においては、日常的な指導の中で、教師と児童生徒との信頼関係を築き、全ての教育活動を通じて規範意識や社会性を育むきめ細かな指導を行うとともに、問題行動の未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また、問題行動が起こったときには、粘り強い指導を行い、指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には、出席停止や懲戒などの措置も含めた毅(き)然とした対応をとるとともに、問題を隠すことなく、教職員が一体となって対応する必要があります。さらに、教育委員会は学校を適切にサポートする体制を整備すること、そして、家庭や地域社会、関係機関などの理解と協力を得て地域ぐるみで取り組める体制づくりを進めていくことが重要です。文部科学省では、「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日、初等中等教育局長通知)により、こうした趣旨の徹底に努めています。
 また、小学校段階から高等学校段階までの組織的・体系的な取組を進めるため、平成22年3月、生徒指導の概念・取組の方向性等を整理した学校・教職員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し、各教育委員会及び学校などに配布しています。

(2)暴力行為

 平成22年度、全国の国公私立の小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は、学校内で発生したものが、全学校の約24.5%に当たる9,298校において約5万4千件、学校外で発生したものが、全学校の約9.2%に当たる3,494校において約6千件となっており、18年度調査から、把握の仕方について、軽微な事案も含めて計上するなど調査内容・方法の見直しを行ったことの影響もあるものの、依然として相当数に上っています(図表2-2-9)。
 文部科学省では、平成22年度から「生徒指導・進路指導総合推進事業」において、暴力行為などの未然防止や早期発見・早期対応につながる取組、サポートチームなど関係機関とのネットワークを活用した取組などを実践する調査研究を実施しています。また、22年度に「暴力行為のない学校づくり研究会」を開催し、教育現場における暴力行為への効果的な対応の在り方についての調査研究を行い、23年7月に報告書を取りまとめ、各教育委員会、学校へ配布しました。

図表2-2-9 暴力行為発生件数の推移

図表2-2-9 暴力行為発生件数の推移

(3)いじめ

 平成22年度の全国の国公私立の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約7万8千件、いじめを認知した学校数は約1万6千校で学校総数に占める割合は約41.3%と、依然として相当数に上っています。
 いじめは、どの子どもにも、どの学校においても起こり得るものであり、いじめの認知件数が多いか少ないかの問題以上に、いじめの早期発見に努め、いじめを認知した際には早期に対応することが大切です。
 文部科学省では、「いじめの実態把握及びいじめの問題への取組の徹底について」(平成22年11月9日、文部科学大臣政務官通知)により、いじめの早期発見・早期対応、いじめを許さない学校づくり、教育委員会による支援等について教育委員会や学校に求めています。また、「『平成22年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』結果について」(平成23年8月4日、初等中等教育局児童生徒課長通知)により、各学校において、いじめに関する「アンケート調査」の一層の充実を図るとともに、更に必要な取組を推進すること、各教育委員会において必要な指導・助言に努めること、いじめが生じた際には問題を隠さず、学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していくべきこと、問題行動に対しては、懲戒・出席停止を含め、毅然とした対応をとることなどを求めています。
 また、平成22年4月から、「生徒指導・進路指導総合推進事業」において、学校だけでは解決困難ないじめなどに対応するため、外部の専門家などから成るチーム設置の在り方や、いじめの未然防止に向けて、特に小学生の時期における適切な人間関係の構築方法に関する優れた教育実践などについて調査研究を行っています。
 さらに、インターネット上の掲示板などを利用した特定の児童生徒に対する誹謗(ひぼう)中傷など、「ネット上のいじめ」に対応するため、児童生徒や保護者向けの啓発用リーフレットや、学校・教員向けの「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集を作成し、各教育委員会及び学校などに配布するほか、平成22年度から有識者会議を開催し、学校・教育委員会が実施する学校ネットパトロールの効率的・効果的な実施方法や継続的な実施の在り方について調査研究を実施しました。

(4)不登校

 平成22年度の全国の国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約12万人、高等学校は約5万6千人と、依然として相当数に上っています(図表2-2-10)。
 文部科学省では、平成22年度から「生徒指導・進路指導総合推進事業」において、教育委員会が設置・運営し、不登校児童生徒の指導・支援を行う教育支援センター(適応指導教室)を活用した取組などについて調査研究を実施するとともに、NPO等の学校外の機関などに対して、不登校児童生徒の実態に応じた効果的な活動プログラムの開発などを委託しています。また、23年度から不登校生徒に関する追跡調査を実施しています。

図表2-2-10 不登校児童生徒数の推移

図表2-2-10 不登校児童生徒数の推移

(5)高等学校中途退学

 平成22年度の全国の国公私立の高等学校における中途退学者数は約5万5千人、在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は約1.6%となっています(図表2-2-11)。中途退学の理由は、「学校生活・学業不適応」が約39.0%で最も多く、次いで「進路変更」が約34.0%となっています。
 高等学校中途退学への対応については、各高等学校において、生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに、一層きめ細かな教育相談、ガイダンスを実施することなどが重要です。また、就職や他の学校への転・編入学などの積極的な進路変更について支援していくことも大切です。

図表2-2-11 中途退学者数及び中途退学率の推移

図表2-2-11 中途退学者数及び中途退学率の推移

(6)自殺

 「自殺対策基本法」に基づく「自殺総合対策大綱」(平成19年6月閣議決定)には、児童生徒の自殺予防についての調査研究の推進や自殺予防に資する教育の実施、教職員に対する普及啓発などの実施、学校における心の健康づくり推進体制の整備、いじめを苦にした子どもの自殺予防、自殺が起きたときの学校での事後対応の促進などが盛り込まれています。
 文部科学省では、命の大切さを学ばせる教育などを通じて児童生徒の自殺の防止に取り組むとともに、その特徴や傾向などを考慮した対策を検討するため、有識者会議を開催し、児童生徒の自殺予防や、不幸にして自殺が起きたときの緊急対応に必要な学校・教職員向けの資料を作成し、各教育委員会及び学校に配布してきました。平成23年6月には、児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の指針や米国における児童生徒に対する自殺予防教育の現況に関する報告を含む審議のまとめを取りまとめました。
 また、審議のまとめを踏まえて、平成23年度、各教育委員会及び学校などに対して、通知により、児童生徒の自殺が起きたときの背景調査を行う際の基本的な考え方や留意事項を示すとともに、自殺の背景となった事実関係に関する一定事項の報告を要請しました。さらに、同年度において、全国4か所で、学校・教育委員会の関係者を対象として、これらの資料や通知等を用いた研修を行うとともに、同年度から、我が国における児童生徒に対する自殺予防教育の在り方について検討しています。

(7)体罰・懲戒

 文部科学省の調査では、平成22年度に体罰に関して懲戒処分を受けた教員数は131人(前年度比19人減)となっています。
 体罰は、学校教育法により厳に禁止されており、児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また、教師と児童生徒との信頼関係を損なう原因ともなり、教育的な効果も期待できないと考えられます。
 一方、体罰とはどのような行為であり、児童生徒への懲戒がどの程度まで認められるかについて機械的に判定することは困難であり、このことによって、ややもすると教員などが、自らの指導に自信を持てない状況が生まれ、実際の指導において過度の萎縮を招いているとの指摘もなされています。
 こうしたことから、学校が問題行動に適切に対応し、生徒指導の一層の充実を図ることができるよう、懲戒・体罰に関する裁判例の動向なども考慮し、懲戒・体罰に関する解釈・運用の考え方を「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日、初等中等教育局長通知)により示し、同通知の趣旨について周知に努めています。

2 教育相談体制の充実

 児童生徒の不登校や問題行動などに適切に対処するためには、子どもたちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることが大切です。
 文部科学省では、学校における教育相談体制などの充実を図るため、児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラーの配置(平成23年度は全公立中学校及び小学校1万2千校分)、子どもと親の相談員などとしての、教員OBなど地域の人材の小学校への配置、教育委員会における24時間体制での電話相談事業の実施に必要な経費の補助を行っています。
 また、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉などの専門的な知識・技術を用いて、児童生徒が置かれた様々な環境へ働き掛けたり、関係機関などとのネットワークを活用して支援を行う専門家であるスクールソーシャルワーカーの配置(平成23年度は1,096人分)に必要な経費の補助を各都道府県・指定都市・中核市に対して行っています。
 さらに、平成22年1月に設置された「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」では、22年7月に行動計画を取りまとめ、文部科学省及び関係省庁、民間団体などが連携し、子どもを対象とした相談体制の充実や学校・地域における子どもの居場所づくりなどの取組を推進しています。

第6節 一人一人の人権を尊重した教育

 憲法や教育基本法の精神にのっとり、学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することが重要です。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づき、「人権教育・啓発に関する基本計画」が平成14年に閣議決定されており、政府全体として人権教育・啓発を推進しています。学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じて、その教育活動全体を通じ、人権尊重の意識を高めるための指導を行っており、一人一人を大切にする教育の推進に努めています。
 文部科学省では、学校教育の分野において、学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や学校における指導方法の改善充実について実践的な研究を行う「人権教育研究推進事業」を実施し、人権教育の先進的な取組の普及に努めています。また、人権教育の指導方法などの在り方について、「人権教育の指導方法等に関する調査研究」を平成15年度から実施し、20年3月に「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」をまとめています。
 平成23年度には、前年度に引き続き「人権教育担当指導主事連絡協議会」を開催するとともに、人権教育の全国的な推進を図るため、人権教育の実践事例の公表に向けて、事例の収集を行いました。

第7節 キャリア教育の推進

1 初等中等教育におけるキャリア教育の推進

 今日、日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しており、中でも特に、産業や経済の分野においてその変容の度合いが著しく大きく、雇用形態の多様化・流動化に直結しております。そのような中、現在の子ども、特に若者と呼ばれる世代は、例えば、若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ、無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないという点において大きな困難に直面していると言われています。さらに、中学生や高校生を対象とした最近の調査結果からは、我が国の子どもたちは他国に比べ、将来就きたい仕事や自分の将来のために学習をしようとする意識が低かったり、目的がはっきりしないまま高等学校へ進学したり、「取りあえず」大学へ進学したりする生徒が多くいることが明らかになっており、子どもたちが学校での生活や学び、進路選択に、はっきりとした目的意識を持って取り組めていないという様子が浮かび上がってきています。
 こうした状況にかんがみ、子どもたちが、“働くことの喜び”や“世の中の実態や厳しさ”などを知った上で、将来の生き方や進路に夢や希望を持ち、その実現を目指して、学校での生活や学びに意欲的に取り組めるようになり、また「学校から社会・職業への移行」をスムーズなものとし、社会的・職業的自立に必要な能力や態度を身に付けることができるようにするキャリア教育を推進していくことが重要です。
 文部科学省においては、このようなキャリア教育を推進するため、キャリア教育の実践の普及・促進に向け、様々な施策を展開しています。

〈平成23年度実施施策〉

  1. キャリア教育指導用資料「高等学校キャリア教育の手引き」の作成・配布(平成23年11月)
  2. キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議報告「学校が社会と協働して一日も早くすべての児童生徒に充実したキャリア教育を行うために」(平成23年12月)
  3. キャリア教育の研修用動画の文部科学省HP上での配信(平成24年1月)
  4. キャリア教育推進連携シンポジウムの開催(文部科学省・厚生労働省・経済産業省合同主催/平成24年1月)

※1.~4.についての詳細は、文部科学省・キャリア教育HPを参照(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm)。

2 職場体験、インターンシップ(就業体験)等の体験活動の推進

 職場体験やインターンシップ(就業体験)は、生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり、異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること、生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること、学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し、学習意欲を喚起すること、職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど、極めて高い教育効果が期待され、キャリア教育の中核的な取組の一つとして、文部科学省としても、学校現場における職場体験、インターンシップの普及・促進に努めています。
 公立中学校における職場体験は、平成22年度の実施率が97.1%と、ほとんどの中学校において実施されています。
 また、公立高等学校におけるインターンシップの実施率は74.5%となっていますが、その参加は希望制となっている学校が多いため、在学中にインターンシップを体験した生徒の割合は、全体で29.0%、普通科では16.7%となっており、生徒の参加率の向上が期待されています。

3 高校生の就職問題について

 文部科学省においては、関係省庁と連携し、新卒者等の採用枠の拡大等を主要経済団体へ要請するなど、政府一体となって高校生の就職支援に取り組んでいます。
 高校生の就職については、平成24年3月新規高校卒業者の就職内定率(就職希望者に対する就職内定者の割合)は94.8%(24年3月末現在)となり、前年同期から1.6ポイント上昇しました。就職内定率は前年同期を上回りましたが、卒業までに就職内定に至らなかった生徒が約1万人に上るなど、依然として厳しい状況もみられます。

第8節 職業教育の推進

1 専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の専門高校を中心に、我が国の産業経済や医療・福祉の発展を担う人材を育成する上で、大きな役割を果たしています。平成23年5月現在、専門高校の数は2,083校、生徒数は約65万人であり、高等学校の生徒数全体の約19.4%を占めています。また、生徒の進路状況は、23年3月卒業者のうち、大学などへの進学者約22.3%、専門学校などへの進学者約24.0%、就職者約48.3%であり、生徒の進路は多様な状況にあります。

2 専門高校における教育内容の充実

(1)新高等学校学習指導要領の実施に向けて

 新高等学校学習指導要領(職業に関する教科)は、専門高校を取り巻く社会の状況や生徒の実態等を踏まえて、1.将来のスペシャリストの育成、2.地域産業を担う人材の育成、3.人間性豊かな職業人の育成という三つの観点を基本としており、実施に向けて、改訂の趣旨や内容について、広報・周知活動を図っているところです。

(2)特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及

 先端的な特色ある教育に取り組んでいる専門高校を支援し、カリキュラム開発を行う「目指せスペシャリスト」を平成15年度からこれまでに計77校で実施しました。文部科学省としては、引き続き専門高校の優れた取組を支援し、これらの成果を全国に展開・普及することにより、専門高校における教育内容の充実に努めます。

3 専門高校活性化に資する取組

(1)全国産業教育フェア

 全国産業教育フェアは、専門高校等の生徒の学習成果を全国的な規模で総合的に発表し、全国の専門高校等の生徒の学習意欲や産業界、教育界、国民一般への専門高校等の魅力的な教育内容について理解・関心を高めるとともに、新しい時代に即した専門高校等における産業教育の活性化を図り、その振興に資することを目的として開催されています。平成23年度は鹿児島県において開催され、24年度は岡山県で開催されます。

(2)教員研修の充実

 教員研修センター等では、産業教育担当の教員などを対象として、知識・技術を習得させる研修や、長期間、大学や産業教育に関わる施設に留学させる研修などを行っています。

(3)施設・設備の補助

 産業教育振興のため、産業教育施設・設備基準に基づき、公立及び私立高等学校に必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を支援しています。

第9節 子どもの健康と安全

1 学校における食育の推進

(1)栄養教諭を中心とした指導の充実

 近年の子どもの食を取り巻く環境の変化に対応するためには、学校における指導体制を整備し、学校教育活動全体の中で体系的・継続的に食に関する指導を行うことが重要です。このため、平成17年4月から各都道府県において栄養教諭の配置が開始されており、平成24年4月1日現在で全都道府県に4,262名の栄養教諭が配置されています。また平成24年4月1日現在、国立大学の附属学校に68名の栄養教諭が配置されています。
 小学校においては平成23年度から、中学校においては平成24年度から全面実施される新しい学習指導要領では、その総則に「学校における食育の推進」を明記するとともに、家庭科、体育科など関連する科目等においても、食育の観点からの記述を充実しています。
 文部科学省においては、平成21年度から「栄養教諭を中核とした食育推進事業」を実施し、各地域において教育委員会の指導の下に、栄養教諭を中核として家庭や生産者、PTAなどの地域の団体と連携・協力し、各地域の抱える食育推進上の課題の解決を図る取組を支援しています。平成22年度からは、これに加えて、新卒者など経験の浅い栄養教諭に対し、経験が豊富な退職栄養教諭・学校栄養職員などの食育支援者を派遣し、栄養教諭の業務の補助・助言を行うことで、早期に学校における食育体制が確立されるよう支援するための事業を行っています。

(2)学校給食について

 学校給食は栄養バランスのとれた豊かな食事を子どもに提供することにより、子どもの健康の保持増進を図ることはもちろん、食に関する指導を効果的に進めるため、給食の時間はもとより各教科や特別活動、総合的な学習の時間等において「生きた教材」として活用することができるものであり、大きな教育的意義を有しています。平成22年5月現在、小学校では21,459校(全小学校の99.2%)、中学校では9,182校(全中学校の85.4%)、全体で約32,051校が学校給食を実施しています。

図表2-2-12 学校給食実施状況

図表2-2-12 学校給食実施状況

 各学校では、近年、学校給食の多様化が図られており、例えば学校給食の食材として地域の産物を活用したり、地域の郷土料理・伝統料理などを献立に活用したりする取組が進められています。第2次食育推進基本計画では学校給食における地場産物の活用率を平成27年度までに30%以上(食材数ベース)とすることを目指すとされていますが、平成22年度における活用率は、全国平均で25.0%となっています。
 また、米飯給食は、伝統的な食生活の根幹である米飯に関する望ましい食習慣を児童生徒に身に付けさせることや、地域の食文化を通じて郷土への関心を深めることが期待できるなどの教育的意義を持つものであり、平成22年度の週当たりの米飯給食の実施回数は3.2回となっています。文部科学省では、週3回未満の地域・学校については週3回程度、週3回以上の地域・学校については週4回程度など新たな目標を設定し、実施回数の増加を図ることを促しています。
 また、平成9年以降、学校給食を原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒は発生していませんが、依然としてノロウイルス等による食中毒の発生は続いており、学校給食における衛生管理の徹底が求められています。
 平成20年に「学校給食法」が改正され、文部科学大臣が学校給食の適切な衛生管理を図る上で必要な事項について維持されることが望ましい基準を定めることとされたことを受けて、21年3月に「学校給食衛生管理基準」(平成21年文部科学省告示第64号)を策定し、同年4月より施行しました。その実施に当たっては、文部科学省において作成した「学校給食調理場における手洗いマニュアル」等を参考とするよう施行通知において示しています。また、23年度においては、「学校給食調理従事者研修マニュアル」を作成しました。

2 心と体の健康問題への対応

(1)子どもの健康課題に対する総合的な取組

 現代の多様化・深刻化する子どもの健康課題に対応するため「学校保健法等の一部を改正する法律」(平成20年法律第73号)が平成20年6月に成立し、21年4月から「学校保健安全法」として施行されています。その中では、学校保健に関して、学校の設置者並びに国及び地方公共団体の責務を定めるとともに、文部科学大臣が学校環境衛生基準を定めることや、養護教諭を中心に関係職員等が連携した組織的な保健指導を行うこと、地域の医療機関との連携による保健管理等の充実を図ることなどが規定されました。
 また、小・中・高等学校などにおける学習指導要領が改訂され、総則において、学校における健康に関する指導について、新たに児童生徒の発達の段階を考慮して行うことが明記され、学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとされています。体育科、保健体育科や特別活動などにおいても、指導内容の充実が図られています。

(2)感染症への対応

 学校における感染症(※2)の流行予防は、教育の場・集団生活の場として望ましい学校環境を維持するとともに、児童生徒等が健康な状態で教育を受けるためにも重要です。
 平成19年の高校・大学を中心とする学校等における麻しん流行を踏まえ、政府では麻しん発生及び流行を予防するため、20年4月から5年間に限り、中学校1年生及び高等学校3年生に相当する年齢の者を定期予防接種の対象者とし、文部科学省では、対象の生徒に対して、予防接種の積極的接種勧奨を行うなど、早期の接種が促進されるよう適切な対応をお願いしています。
 また、平成24年には、医学の進展等を踏まえ、学校における感染症予防のより一層の充実を図るため、学校保健安全法施行規則を改正し、髄膜炎菌性髄膜炎を新たに学校において予防すべき感染症に追加するとともに、インフルエンザ等の出席停止の期間の基準を改めることとしました(同年4月1日から施行)。


※2 感染症
 学校において予防すべき感染症は、学校保健安全法施行規則第18条により第一種から第三種に分けられている(第一種:エボラ出血熱、ペスト、鳥インフルエンザ(H5N1)など、第二種:インフルエンザ、百日咳、麻しん、風しん、結核、髄膜炎菌性髄膜炎など、第三種:コレラ、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフスなど)。

(3)学校におけるアレルギー疾患への対応

 近年、アトピー性皮膚炎など児童生徒のアレルギー疾患の問題が指摘されており、学校における対応が重要となっています。文部科学省では、児童生徒の各種アレルギー疾患の実態などについて調査を行い、これを踏まえ、平成19年4月にアレルギー疾患に対する対応などについて解説した「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」及び「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」が文部科学省監修により作成され、20年4月から各学校等に配布されています。また、23年度においては、学校におけるアレルギー疾患の対応の充実を図るため、教職員や指導主事などを対象とする講習会を全国6か所で開催するなど、同ガイドラインなどの普及啓発を推進しています。

(4)心の健康問題への対応

 社会環境や生活環境の急激な変化が、子どもの心身の健康に大きな影響を与えており、学校生活においても生活習慣の乱れ、いじめ、不登校などの心の健康問題が顕在化しています。
 文部科学省では、教職員などの学校関係者が、メンタルヘルスについて正しい知識を持って児童生徒に対応することができるよう、教職員向けの指導参考資料を作成したり、子どもの心のケアシンポジウムを平成19年度から毎年開催したりしています。

(5)薬物乱用防止教育の充実

 近年の青少年の薬物乱用問題については、大麻事犯検挙者数のうち、未成年及び20歳代の若者が全体の半数以上(「平成23年中の薬物・銃器情勢(警察庁)より)となっており、青少年を中心に薬物乱用の状況がうかがえることが指摘されています。
 薬物乱用対策推進本部で決定された「第三次薬物乱用防止五か年戦略(平成20年8月)」において「青少年による薬物乱用の根絶及び薬物乱用を拒絶する規範意識の向上」が目標の一つに掲げられ、学校における薬物乱用防止教育を一層推進することが求められています。
 文部科学省では、薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう、各大学や都道府県教育委員会等を指導するとともに、高等学校学習指導要領「保健体育」において新たに大麻を扱うこととし、大麻の有害性・危険性に関する指導を充実するなど、薬物乱用防止教育の充実に努めています。
 平成22年7月には、政府の薬物乱用対策推進会議において、「薬物乱用防止戦略加速化プラン」が決定され、薬物乱用防止に資する教育・予防啓発の一層の充実・強化を図ることとされており、23年3月には大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレットや薬物乱用防止啓発ポスターを作成・配布しました。

(6)学校における性に関する指導

 学校における性に関する指導は、児童生徒が性に関する知識を理解するとともに、生命の尊重や自己及び他者の個性を尊重し、相手を思いやり、望ましい人間関係を構築するなど、適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており、体育科、保健体育科、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしています。なお、指導に当たっては、児童生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮すること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに配慮することが大切です。

(7)学校保健に関する学校内の体制の充実

 多様化・深刻化している子どもの現代的な健康課題に対応するためには、学校内の組織体制が充実していることが基本となることから、全ての教職員が共通の認識を持ち、校長のリーダーシップの下、学校保健計画に基づき、保健教育と保健管理に取り組むことが必要です。
 養護教諭は、学校保健活動の推進に当たり中核的な役割を果たしています。学級担任や教科担任、保健主事、学校医、学校歯科医、学校薬剤師等、学校内での連携や、学校と地域の医療機関等の関係機関との連携、学校と家庭との連携などに配慮しつつ、全ての教職員で学校保健を推進するように学校における体制を整備し、子どもの心身の健康の保持増進を目指す学校保健を推進する必要があります。
 文部科学省では、これらを支援するため、平成20年度から退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして養護教諭が配置されていない学校や経験の浅い養護教諭が一人配置されている学校に派遣する事業や、専門医等を学校に派遣し、専門医等による教職員への指導助言、講話や講演、児童生徒等の健康相談などを行う事業など、各種施策を実施しています。
 また、学校における子どもたちの環境を整備することの重要性を考慮し、平成21年4月から「学校環境衛生基準」(平成21年文部科学省告示第60号)を施行し、学校における環境衛生管理の徹底を図っています。

3 登下校時を含めた学校における子どもの安全確保(※3)

(1)子どもの安全に関する総合的な取組

 学校は、子どもたちの健やかな成長と自己実現を目指して学習活動を行う場であり、その基盤として安全で安心な環境が確保されている必要があります。しかし、子どもが巻き込まれる事件・事故が発生するなど、通学路を含めた子どもの安全を確保することが大きな課題となっています。
 平成21年4月から施行された「学校保健安全法」では、学校安全を取り巻く今日的な課題に対応できるよう、それらの課題に対して学校全体としての取組体制を整備充実させるとともに、学校のみでは解決が難しい課題については地域の関係機関との連携などを図るという趣旨の下に、学校の施設・設備の安全点検、日常生活における安全に関する指導などを含めた学校安全計画の策定・実施や危険等発生時の対処要領の作成など学校安全に関する規定が充実されました。
 また、同法では、国が、各学校における安全に係る取組を総合的かつ効果的に推進するため、「学校安全の推進に関する計画」を策定することとされており、平成23年度、中央教育審議会において審議・検討を重ね、平成24年3月には「学校安全の推進に関する計画の策定について(答申)」がなされました。これを踏まえ、同年4月、国として「学校安全の推進に関する計画」を策定しました。
 政府全体としても子どもの安全対策を推進するために、犯罪から子どもを守るための対策に関する関係省庁連絡会議において「犯罪から子どもを守るための対策」(平成17年12月策定、22年12月改定)を取りまとめるとともに、「子ども・若者ビジョン」(22年7月子ども・若者育成支援推進本部決定)においても、子どもが犯罪被害、交通事故及び自然災害等の危険から自分や他者の身を守る能力を養うため、安全教育を推進することを盛り込むなど、子どもの安全確保に取り組んでいます。
 さらに「教育振興基本計画」には、地域ぐるみで子どもの安全を守る環境の整備や、子ども自らが安全な行動を取れるようにするための安全教育の取組を推進することが盛り込まれており、小学校におけるスクールガード・リーダー(※4)を5校に一人程度の割合で配置することや、全ての小中学校において教育面と管理面から成る学校安全計画の策定を目指すこととされています。


※3 防災教育については、第1部第4節5(1)、第2部第11章第1節2(1)参照。

※4 スクールガード・リーダー
 学校等を巡回し、学校安全体制及び学校安全ボランティアの活動に対して専門的な指導を行う者を指す。

(2)学校における子どもの安全確保の充実

 学校は児童生徒等が安心して学習を行うことが求められる場所であり、学校においてその安全な環境を整備し、事件・事故を防止するための取組を進める必要があります。
 このため安全対策として実施する防犯カメラや非常通報装置、自動体外式除細動器(AED)の設置などに関する経費について地方交付税による措置が講じられています。また文部科学省では、教職員の校内研修や職員会議などで活用できる教職員向け学校安全資料を作成しています。

(3)通学路における子どもの安全確保の充実

 学校内のみでなく通学路を含めた子どもの安全を確保するためには、地域社会全体で子どもの安全を見守る体制の整備が必要です。文部科学省では、平成17年度から学校安全ボランティアを活用し、地域ぐるみで学校内外における子どもの安全を見守る体制を整備するため、警察官OBなどから成るスクールガード・リーダーの巡回による学校や学校安全ボランティアに対する警備のポイントなどの指導、学校安全ボランティアの養成、各地域における子どもの見守り活動に対する支援などを推進しています。また、都道府県教育委員会などの協力を得てより実効性のある地域ぐるみの学校安全体制の整備を推進するため、23年3月には、先導的な取組を収集した「地域ぐるみの学校安全体制整備実践事例集」を作成しました。

(4)実践的な安全教育の充実

 平成23年度から全面実施されている小学校学習指導要領、24年度から全面実施されている中学校学習指導要領、25年度から年次進行で実施される高等学校学習指導要領では、その総則に安全に関する指導について新たに規定されるとともに、体育科、保健体育科、特別活動など関連する各教科などにおいても安全に関する指導の観点から指導の内容の充実が図られています。
 学校における安全教育においては、児童生徒等が自他の生命を尊重し、日常生活全般における安全のために必要な事柄を実践的に理解し、生涯を通じて安全な生活を送ることができるような態度や能力を養う安全教育を、生活安全・交通安全・災害安全のそれぞれの分野において行うことが重要です。特に子どもの安全を確保するためには、子ども自身に危険を予測し、危険を回避する能力を養成するよう実践的な安全教育を推進する必要があります。このため文部科学省では、学習指導要領の改訂などを踏まえ、学校における安全教育の教職員用の参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」の改訂(平成22年3月)を行いました。このほかにも、安全な通学のための教育教材や防災教育教材を作成するなど、各種の教職員用の参考資料や教材を作成しています。
 また、各都道府県において安全教育の指導的な役割を果たしている教職員や都道府県教育委員会などの指導主事を対象とした学校安全に関する研修会を開催しています。
 さらに、通学路における自らの安全を守る力を子どもに育ませるための防犯教室を推進する目的の下、平成15年度から防犯教室の講師に対する講習会の開催を支援するとともに、都道府県教育委員会などの協力を得て防犯訓練などに関する特色ある取組事例を収集し「学校における防犯教室等実践事例集」(18年3月)を作成しています。また実践的な防犯教材として大声を上げ逃げることや知らない車には乗らないことといった万一の事態が起こった場合の具体的な対処方法などについて、小学校1~2年生向けに分かりやすく教えるリーフレット「大切ないのちとあんぜん」を18年に作成し、それ以降毎年、対象の全児童に配布し、各学校で実践的な安全教育が実施できるよう支援しています。

第10節 幼児期にふさわしい教育の推進

1 幼稚園教育の現状

 幼児期は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期であり、このような時期に行われる幼児教育は非常に重要なものです。
 幼稚園は、満3歳から小学校就学前までの幼児であれば、誰でも入園することができる学校であり、我が国の幼児教育の中核としての役割を担っています。平成23年5月1日現在、全国で1万3,299園の幼稚園があり、約160万人の幼児が在園しています。全国の5歳児のうち、約54%が幼稚園に就園しており、また、3歳児の就園率については増加傾向にあります(図表2-2-13、図表2-2-14)。

図表2-2-13 幼稚園数及び幼稚園児数等

図表2-2-13 幼稚園数及び幼稚園児数等

図表2-2-14 幼稚園就園率の推移

図表2-2-14 幼稚園就園率の推移

2 幼稚園の教育活動・教育環境の充実

 幼児教育の重要性などにかんがみ、平成18年12月に改正された教育基本法では「幼児期の教育」という条項が新設(第11条)されるとともに、19年6月の学校教育法の改正において、学校種の規定順の変更(幼稚園を最初に規定)、幼稚園の目的・目標規定の改正、家庭や地域の幼児教育支援に関する規定の新設、預かり保育の適正な位置付けなどが行われました。
 このような動きを踏まえ、文部科学省では、次のような施策を総合的に展開し、幼児教育の振興を図っています。

(1)幼稚園教育の内容の改善・充実

 平成20年3月に行った幼稚園教育要領の改訂は、近年の子どもの育ちの変化や社会の変化に対応し、1.子どもの発達や学びの連続性の確保(小学校教育との円滑な接続)及び幼稚園での生活と家庭などでの生活の連続性の確保、2.教育課程終了後等に行う預かり保育や子育ての支援の充実を図ることをねらいとして、21年4月から施行されています。
 なお、特に、小学校教育との接続については、有識者による協力者会議を設けて検討を行い、平成22年11月に「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について」報告書を取りまとめ、各幼稚園等における幼小接続の取組の推進を図っています。
 また、地域の実態や保護者の要請に応じて行う預かり保育や子育て支援(子育て相談、子育てに関する情報の提供、未就園児の親子登園、保護者同士の交流の機会の提供など)については財政措置などを通じた支援を行っており、全国の約8割の幼稚園で実施されています。
 さらに、平成23年11月には、22年7月の「学校評価ガイドライン」の改訂を踏まえ、第三者評価に係る内容の追加など「幼稚園における学校評価ガイドライン」を改訂し、幼稚園の特性に応じた学校評価を推進することで、幼稚園教育の質の向上を図っています。
 これらの幼稚園教育に関する様々な課題等について、幼稚園教育に携わる者の理解を深めるため、国及び都道府県において、幼稚園の園長や教諭等を対象とした協議会を開催しています。

(2)幼稚園就園奨励事業の充実

 幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や、公私立幼稚園間における保護者負担の較差の是正を図ることを目的として、入園料や保育料を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して、幼稚園就園奨励費補助金によりその所要経費の一部を国庫補助しています。
 平成23年度は、私立幼稚園における補助単価を引き上げました。例えば、私立幼稚園の平均年間保育料30万3,000円に対して、おおむね年収680万円までの世帯を対象として、保護者の所得状況や同時就園する子どもの数に応じて年額4万6,800~30万3,000円を補助しています。

3 幼児教育、保育の総合的な提供

(1)幼稚園と保育所の連携

 文部科学省は厚生労働省と連携して、幼稚園と保育所との連携を進めています。具体的には、幼稚園と保育所の施設の共用化の推進、教育内容・保育内容の整合性の確保、幼稚園教諭と保育士の合同研修の実施・資格の併有の促進、幼稚園と保育所の連携事例集の作成・提供などの取組を行っています。

(2)認定こども園制度の活用促進等

 上記のような取組に加え、近年の急速な社会の変化に伴い多様化するニーズに柔軟かつ適切に対応するため、平成18年10月から、幼稚園、保育所などのうち、教育・保育を一体的に提供し、地域における子育て支援を実施する施設を、都道府県知事(教育委員会の場合あり)が認定する認定こども園制度が開始されました。
 認定こども園制度は、1.親の就労の有無にかかわらず施設の利用が可能となる、2.適切な規模の子どもの集団を保ち、子どもの育ちの場を確保できる、3.既存の幼稚園の空き教室の活用により保育所の待機児童の解消に資する、4.育児不安の大きい家庭への支援を含む地域の子育て支援が充実するなどの効果が期待されています。平成24年4月1日現在で、認定こども園として認定を受けた施設は全国で911件となっています(図表2-2-15)。

図表2-2-15 認定こども園の認定件数

図表2-2-15 認定こども園の認定件数

 文部科学省・厚生労働省幼保連携推進室では、平成20年度補正予算等において、新たな財政支援策である「安心こども基金」を創設し、取組の普及促進に努めています。

(3)幼保一体化を含む「子ども・子育て新システム」の構築に向けた取組

 幼保一体化を含む新たな子ども・子育て支援のための包括的・一元的な制度である「子ども・子育て新システム」の構築について検討を行うため、平成22年1月に関係閣僚で構成する「子ども・子育て新システム検討会議」が開催され、同年6月には、同検討会議で取りまとめられた「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」が、全閣僚で構成する少子化社会対策会議において決定されました。
 その後、平成22年9月から、子ども・子育て新システムの制度設計について、関係府省の副大臣、政務官から成る「子ども・子育て新システム検討会議作業グループ」の下に置かれたワーキングチームにおいて、有識者、幼稚園・保育関係者、地方団体、労使代表、子育て当事者などの関係者の参画を得て、内閣府を中心とした関係府省が連携し、具体的な制度の検討を進め、平成24年3月に、少子化社会対策会議において、「子ども・子育て新システムに関する基本制度」及び「子ども・子育て新システム法案骨子」を定めました(図表2-2-16)。同法案骨子に基づき、「子ども・子育て支援法案」、「総合こども園法案」及び「子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の3法案を作成し、同年3月末に税制抜本改革とともに国会へ提出しました。
 「子ども・子育て新システム」は、すべての子どもへの良質な成育環境を保障し、子どもと子育て家庭を応援する社会の実現に向け、地域の実情に応じた保育等の量的拡充、幼保一体化などの機能強化を行うものであり、この中で、1.幼児期の学校教育・保育に関する財政措置を一体化した「こども園給付」を創設すること、2.幼児期の学校教育・保育を一体的に提供する「総合こども園」を創設すること、により幼保一体化を推進することとしています(図表2-2-17)。

図表2-2-16 子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ

図表2-2-16 子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ

図表2-2-17 幼保一体化の具体的な仕組みについて

図表2-2-17 幼保一体化の具体的な仕組みについて

第11節 インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進

1 特別支援教育をめぐる現状

 障害のある子どもについては、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うため、一人一人の障害の状態などに応じ、特別な配慮の下に、適切な教育を行う必要があります。このため、障害の状態などに応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級(※5)において、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮を持って作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備などを活用して指導が行われています。また、通常の学級においては、通級による指導(※6)のほか、習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法、特別支援教育支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われています。
 平成23年5月1日現在、特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と、小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒の総数は約34万6,000人です。このうち義務教育段階の児童生徒は約28万5,000人であり、これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約2.7%に当たります。特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と、小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒は、年々増加しています。
 近年、障害のある児童生徒をめぐっては、障害の重度・重複化や多様化、学習障害(LD)(※7)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(※8)、自閉症(※9)などの発達障害のある児童生徒への対応や早期からの教育的対応に関する要望の高まり、高等部への進学率の上昇、卒業後の進路の多様化などの状況も見られます。こうした状況を考慮し、平成18年6月に学校教育法等の改正が行われ、19年4月から従来の盲・聾(ろう)・養護学校の制度は、障害の重複化に対応するため、複数の障害種別を受け入れることができる「特別支援学校」の制度に転換しました。特別支援学校については、これまでに蓄積してきた専門的な知識・技能を生かし、地域における特別支援教育のセンターとしての機能・役割(これを「センター的機能」という)を果たすために、小・中学校などの要請に基づき、これらの学校に在籍する障害のある児童生徒などの教育に関し、助言・援助を行うよう努めることとされました。また、小・中学校などにおいても、発達障害を含む障害のある児童生徒等に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定されました。
 また、平成23年8月に改正障害者基本法が公布され、教育分野では、障害者がその年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするため、可能な限り障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならないことなどが新たに規定されています。


※5 特別支援学級
 障害のある子どものために小・中学校に障害の種別ごとに置かれる少人数の学級。知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の学級がある。

※6 通級による指導
 小・中学校の通常の学級に在籍し、言語障害、弱視、難聴などのある児童生徒を対象として、主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら、障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態であり、平成5年度から行われている。18年度からは、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)の児童生徒についてもその対象に位置付けられた。

※7 学習障害(LD:Learning Disabilities)
 基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。その原因としては、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

※8 注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)
 年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障を来すものである。一般に7歳以前に現れ、その状態が継続するもので、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

※9 自閉症(Autistic Disorder)
 3歳くらいまでに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

図表2-2-18 特別支援教育の対象の概念図(義務教育段階)

図表2-2-18 特別支援教育の対象の概念図(義務教育段階)

2 特別支援教育を推進するための取組

(1)特別支援教育の在り方に関する検討

 障害者の権利に関する条約(「障害者権利条約」)は、平成18年12月に国連総会で採択され、20年5月に発効しました。日本政府は、19年9月に署名を行いましたが、まだ批准に至っておりません。
 政府としては、可能な限り早期の締結を目指し、必要な国内法令の整備等に係る政府としての対応を検討しているところであり、教育関係では、インクルーシブ教育システムへの対応(方策の具体化等)が課題となっています。
 そのため、「中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会」において、専門的な調査審議が行われており、平成22年12月にはインクルーシブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方について、方向性や就学相談・就学先決定の在り方等に関する論点整理が取りまとめられました。また、23年7月には同特別委員会の下に「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ」が開催され、24年2月にはその報告が取りまとめられ、公表されました。同報告においては、合理的配慮の定義や決定方法、そのための基礎的環境整備、学校における合理的配慮の観点などについて提言されています(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/046/houkoku/1316181.htm)。

(2)地域・学校における支援体制の整備-発達障害を含む子どもたちへの支援-

1.「特別支援教育総合推進事業」を通じた支援体制の整備

 文部科学省では、発達障害を含め障害のある幼児児童生徒への学校における支援体制を充実するため、都道府県等を対象に「特別支援教育総合推進事業」を実施しています。
 事業では、学校における「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名、「個別の指導計画」、「個別の教育支援計画*10」の作成を促進する取組のほか、関係機関との連携、学校への巡回相談や専門家チームによる支援、各種研修など学校や地域における支援体制を強化する取組を行います。
 平成23年度特別支援教育体制整備状況調査によると、公立小・中学校においては、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており、「個別の指導計画」の作成、「個別の教育支援計画」の作成についても、着実な取組が進んでいます。また、幼稚園・高等学校における体制整備は、進みつつあるものの、小・中学校に比べ相対的に遅れが見られます(図表2-2-19)。

図表2-2-19 平成23年度特別支援教育体制整備状況調査

図表2-2-19 平成23年度特別支援教育体制整備状況調査

 この事業は、平成17年4月に「発達障害者支援法」が施行されたことを踏まえ、17年度からは、乳幼児期から就労に至るまでの一貫した支援体制の整備を図るため、事業の対象を小・中学校に加え、幼稚園と高等学校へも拡大して実施しています。また、本事業の実施に当たっては、厚生労働省の発達障害者支援関係事業と連携しています。さらに、文部科学省では、19年4月1日の改正学校教育法の施行を踏まえ、体制整備を含む基本的考え方や留意事項などについて同日付けで「特別支援教育の推進について」(初等中等教育局長通知)を出し、学校や教育委員会などの取組を促進しています(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm)。


※10 個別の教育支援計画
 医療、福祉、保健、労働などの関係機関との連携を図りつつ、乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点に立って、一貫して的確な教育的支援を行うために障害のある幼児児童生徒一人一人について作成する支援の内容などを示した計画。

2.発達障害に関する支援事業

 発達障害のある子どもの学校における支援については、これまで小・中学校の義務教育段階を中心に施策が推進されてきましたが、幼稚園や高等学校における支援についても、更に推進していく必要があります。
 文部科学省では、「特別支援教育総合推進事業」において、地域を指定し、発達障害を含む全ての障害のある子どもの乳幼児期から成人期に至るまでの一貫した支援を行うための体制整備を行うとともに、高等学校等を指定し、在籍する発達障害のある生徒に対する支援手法の開発や関係機関との効果的な連携方策等に関する実践研究を実施しています。平成23年度は、公私立高等学校22校をモデル校に指定しました。モデル校の取組成果については、学校や都道府県教育委員会などが適切な支援を行う際の参考となるよう、文部科学省ホームページで広く全国に情報提供しています。
 さらに、平成21年度から、「民間組織・支援技術を活用した特別支援教育研究事業」において、発達障害等のある児童生徒について、障害の状態などに応じた教材等の在り方及びそれらを利用した効果的な指導方法や教育効果などについて調査研究を実施しています。

3.公立幼稚園、小・中・高等学校における特別支援教育支援員の配置

 小・中学校には学校教育法施行令第5条に定める認定就学者をはじめ、発達障害を含む様々な障害のある児童生徒が在学していることを踏まえ、学校において、障害のある児童生徒に対する学校生活上の介助や学習活動上の支援などを行う「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が、各市町村に対して平成19年度から地方財政措置されています。21年度から幼稚園、23年度から高等学校に地方財政措置が拡充されました。文部科学省では、支援員の活用事例などの参考情報をまとめたパンフレットを各教育委員会へ配布するなど情報提供を行い、配置を促進しています。
 この財政措置などを有効に活用し、全国的に支援員の配置数増加が図られています(平成23年5月1日現在、全国で公立幼稚園:約4,300人、公立小・中学校:約3万4,000人、公立高等学校:約500人が配置)。

4.障害の重度・重複化への対応

 近年、特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり、こうした児童生徒に対するより適切な対応が求められています。このような状況を踏まえ、平成18年6月には従来の盲・聾(ろう)・養護学校の制度を特別支援学校の制度とする法改正が行われました(参照:本章第11節1)。また、21年3月に公示した新しい特別支援学校学習指導要領等においても障害の重度・重複化に対応した改善を行いました(参照:本章第11節2(3)1.)。

5.特別支援学校等における「医療的ケア」について

 特別支援学校には、日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており、学習や生活を行う上での適切な対応が求められています。
 平成23年5月1日現在、特別支援学校における医療的ケアが必要な幼児児童生徒数は7,350人であり、年々増加しています。また、小・中学校における医療的ケアが必要な児童生徒数は670人となっています。
 文部科学省では、平成10年度から、厚生労働省との連携の下、盲・聾(ろう)・養護学校(現在の特別支援学校)と医療機関との連携の在り方などについて実践的な研究を行い、体制整備を図ってきました。
 平成23年6月に公布された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第72号)による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正に伴い、24年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになることを受け、これまで実質的違法性阻却の考え方に基づいて医療的ケアを実施してきた特別支援学校等の教員等についても、制度上実施することが可能となります。
 これに関して、文部科学省では、特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため、平成23年10月から「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し、同年12月に報告書が取りまとめられました。これを受け、文部科学省として、特別支援学校などにおいて、新制度を効果的に活用し、医療的ケアを必要とする児童生徒などの健康と安全を確保するに当たり留意すべき点などについて整理し、都道府県・指定都市教育委員会等に通知しました(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1314510.htm)。

6.就学支援

 障害のある児童生徒などに対する就学を支援するため、「特別支援学校への就学奨励に関する法律」などに基づき、特別支援教育就学奨励制度が実施されています。
 この制度は、障害のある児童生徒などの教育の機会を保障するためのものです。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などへの就学に関する特殊事情を考慮して、児童生徒などの就学に関する保護者などの経済的負担を軽減することを目的として、その負担能力の程度に応じ、通学費や教科用図書購入費、寄宿舎費などの就学に必要な経費の全部又は一部を国や地方公共団体が負担しています。

(3)特別支援教育に関する教育課程の改善

 特別支援学校や小・中学校などの特別支援教育に関する教育課程については、平成20年1月の中央教育審議会答申を踏まえた検討を行い、同年3月に小学校及び中学校の学習指導要領を、21年3月に高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等を公示しました。
 特別支援学校については、1.幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善に準じた改善、2.障害の重度・重複化、多様化に対応した一人一人に応じた指導の一層の充実、3.自立と社会参加を推進するための職業教育等の充実という観点から改訂を行いました。
 また、小・中学校などにおける特別支援教育については、必要に応じて個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど生徒の障害の状態等に応じた計画的・組織的な指導を行うことを明記しました。小学校及び特別支援学校小学部においては平成23年度から新学習指導要領が全面実施されています。

1.障害の重度・重複化、多様化への対応

 特別支援学校における指導については、従来個別の指導計画を作成することや知的障害を併せ有する場合の教育課程編成の工夫、障害のため通学して教育を受けることが困難な場合の訪問教育の実施について規定するなど、学校において障害の重度・重複化に対応できるようにしてきたところですが、平成21年3月に公示した新しい特別支援学校学習指導要領等においては、教師間の協力や外部専門家の活用など指導方法の工夫を例示したほか、一人一人に応じた指導を充実する観点から、関係機関と連携した支援を行うための個別の教育支援計画の作成を義務付けるとともに、「自立活動」の内容として「他者とのかかわりの基礎に関すること」などを新たに規定するなどの改善を図りました。

2.関係機関と連携した職業教育・就労支援

 障害者が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業などへの就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要です。しかしながら、近年、特別支援学校高等部卒業者のうち、福祉施設入所者の割合が約6割に達する一方で、就職者の割合は約2割にとどまっているなど、職業自立を図る上で厳しい状況が続いています(図表2-2-20)。この理由としては、特別支援学校高等部の整備が進んできたことや、障害の重度・重複化に伴う訪問教育対象者の増加などによる高等部在籍者数の増加の割合に比して、就職者数はほぼ横ばいであることなどが考えられます。

図表2-2-20 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

図表2-2-20 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

 新しい学習指導要領では、職業教育・就労支援の充実に向けて、1.産業現場等における長期間の実習を取り入れるなどの就業体験の機会の充実、2.校内の組織体制の整備や労働・福祉等の関係機関との連携、地域や産業界等の人々の積極的な協力を得るなどの進路指導の充実、3.知的障害者を教育する特別支援学校高等部に専門教科「福祉」を新設するなどの改善を行っています。現在、文部科学省では、新しい学習指導要領の趣旨を踏まえた職業教育の改善に関する研究に取り組んでいます。
 障害者の就労を促進するためには、福祉から雇用に向けた施策を進めると同時に、学校から雇用に向けた施策を進めるなど、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を行う必要があります。
 このため、文部科学省では、平成22年6月に厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対して文書を発出し、特別支援学校就労支援セミナー等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用するなど障害のある生徒の就労を支援するための効果的な取組を促しました。

3.交流及び共同学習の充実

 障害のある子どもと、障害のない子どもや地域の人々が活動を共にすることは、全ての子どもの社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく、地域の人々が障害のある子どもに対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっています。
 このため、文部科学省では、従来、学習指導要領等において障害のある子どもとない子どもが活動を共にする機会を設けることを規定し、各学校において取組が進められてきました。また、新学習指導要領等においては、障害者基本法も踏まえ、障害のある子どもとない子どもとの交流及び共同学習の機会を設けることなどを規定しました。加えて、平成22年度から特別支援学校と在籍する児童生徒が居住する地域の小・中学校との交流及び共同学習の推進に関する実践研究に取り組んでいます。なお、国立特別支援教育総合研究所においては、教員や指導主事を対象とした、交流及び共同学習推進指導者研究協議会を実施し、各都道府県において指導者となる人材を育成しています。

(4)教員の専門性向上

 平成23年8月に公布された改正障害者基本法において、「国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、(中略)人材の確保及び資質の向上、(中略)その他の環境の整備を促進しなければならない」と明記されるなど、特別支援教育に係る教員の専門性の向上が一層求められています。
 また、平成23年5月1日現在、特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状等の保有率は全体で70.3%であり、その保有率の向上が喫緊の課題となっています。
 このため、文部科学省では、各都道府県教育委員会等に対して、特別支援学校教諭免許状等の保有率向上に向けた目標及び計画を策定するとともに、採用、研修、配置等に当たって教員の免許状保有状況を考慮するなどの措置を総合的に講じるよう依頼しています。また、特別支援学校教員の専門性を向上させることを目的として、平成18年度から、各都道府県における指導者を対象とした指導者養成講習会を実施するなどの取組を行っています。さらに国立特別支援教育総合研究所においても、各都道府県において指導者となる人材を育成するための様々な研修を実施しています。

(5)国立特別支援教育総合研究所における取組

 国立特別支援教育総合研究所(NISE)においては、我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、発達障害を含め様々な障害のある幼児児童生徒に対する指導法等についての専門的な研究や研修が進められています(参照:http://www.nise.go.jp)。また、「発達障害教育情報センター」を設置し、教育関係者や保護者等に対し、インターネットを通じて、発達障害に関する各種教育情報の提供や、教員研修用講座の配信を行っています(参照:http://icedd.nise.go.jp)。

第12節 国際社会で活躍する人材の育成

1 国際理解教育の推進

 国際社会においては、子どもたちが日本人としての自覚を持ち、主体的に生きていく上で必要な資質や能力を育成することが大切です。また、我が国の歴史や文化、伝統などに対する理解を深めるとともに、広い視野を持って異文化を理解し、異なる習慣や文化を持った人々と共に生きていくための資質や能力を育成することも重要です。こうした観点から、現在、各学校において、社会科などの各教科、道徳、特別活動や総合的な学習の時間を通じて国際理解教育が行われています。
 文部科学省では、平成18年度から21年度まで「国際教育推進プラン」を実施して、授業開発やワークショップ(参加型集団研修)の実践などを通じた、国際社会で主体的に活躍できる人材を育成する市町村や学校等の取組を支援してきました。
 このプランの実践校や取組が進んでいる他の学校などから得られた実践事例などについては、毎年、全国の都道府県・指定都市教育委員会の指導主事等を対象に開催している連絡協議会で紹介するなど、国際理解教育の推進に努めています。

2 海外子女教育の充実

(1)海外子女教育の現状

 我が国の国際化の進展に伴い、多くの日本人が子どもを海外へ同伴しており、平成23年4月現在、海外に在留している義務教育段階の子どもの数は6万4,950人となっています(図表2-2-21、図表2-2-22)。
 文部科学省では、海外子女教育の重要性を考慮し、日本人学校や補習授業校(参照:コラム24)の教育の充実・向上を図るため、日本国内の義務教育諸学校の教員を派遣するとともに、過去に在外教育施設に派遣された経験がある退職教員をシニア派遣教員として派遣するなど、高い資質・能力を有する派遣教員の一層の確保に努めています(平成23年度は派遣教員1,288人、シニア派遣教員49人)。
 さらに、教育環境の整備として、義務教育教科書の無償給与、教材の整備、通信教育などを行っています。
 特に、補習授業校において子どもたちの教育に携わる教員の多くは、日本国内での教育経験がない現地採用の講師であり、当該教育施設における教育水準の向上を図るため、学習指導要領及び教科書の改訂に合わせ、平成22年度に作成した小学部「補習授業校のための指導資料集(小学校国語・算数)」に引き続き、「補習授業校中学部のための指導資料作成に関する検討会」(平成23年7月より開催)における検討を踏まえ、「補習授業校のための指導資料集(中学校国語・数学)」を作成・配布しました。
 このほか、外国における災害、テロ、感染症などに対応するため、在外教育施設派遣教員安全対策資料の作成などを行うほか、有事の際には、関係省庁や現地の在外教育施設などと緊密な連携を図り、教職員や児童生徒の安全確保に努めるとともに、臨時休校等のため一時帰国した児童生徒の就学機会が確保されるよう、都道府県教育委員会等に周知を図るなどの対応をしています。
 なお、海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する総合ホームページの開設(通称「CLARINET(クラリネット)」。参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm)なども行っています。

図表2-2-21 海外子女就学形態別数

図表2-2-21 海外子女就学形態別数

図表2-2-22 地域別海外子女数

図表2-2-22 地域別海外子女数

コラムNo.24 海外にいる日本の子どもたちの学び舎

 海外に在留する日本人の子どものために、日本国内(以下「国内」という。)の学校教育に準じた教育を実施することを主な目的として海外に設置された在外教育施設には、「日本人学校」、「補習授業校」、「私立在外教育施設」の三つがあります。なお、日本人学校、私立在外教育施設は、文部科学大臣から、国内の小学校、中学校、若しくは高等学校と同等の教育課程を有する旨の認定又は指定を受けており、中学部卒業者には、国内の高等学校の入学資格が、高等部卒業者には、国内の大学の入学資格がそれぞれ認められます。

〈日本人学校〉
 日本人学校とは、国内の小学校、中学校又は高等学校(平成23年度、上海日本人学校に世界で初めてとなる高等部が開設)における教育と同等の教育を行うことを目的とする全日制の教育施設です。一般に、現地の日本人会などが設置主体となって設立され、日本人会や保護者の代表などからなる学校運営委員会によって運営されています(平成23年4月15日現在88校(休校中の1校を除く))。

〈補習授業校〉
 補習授業校とは、現地校、国際学校などに通学している日本人の子どもに対し、土曜日や放課後などを利用して国内の小・中学校の一部の教科について授業を行う教育施設です(平成23年4月15日現在203校)。日本人学校と同様、現地の日本人会などが設置運営主体となっています。

〈私立在外教育施設〉
 私立在外教育施設とは、国内の学校法人などが母体となり、国内の学校教育と同等の教育を行うことを目的として設置する全日制の教育施設です。小学校段階から高等学校段階までの課程を置くものから、高等学校段階の課程のみを置くものなど、その形態は様々ですが、一般に国内の学校と連携を図りつつ、教育を行っています(平成23年4月15日現在9校(休校中の1校を除く))。

「現地校との交流学習の様子」(モスクワ日本人学校)
「現地校との交流学習の様子」(モスクワ日本人学校)

「校外学習(奇岩群見学)での様子」(ドーハ日本人学校)
「校外学習(奇岩群見学)での様子」(ドーハ日本人学校)

(2)豊かな国際性を培う教育活動の推進

 在外教育施設においては、海外に設置されているという特性を十分に生かし、現地社会との交流などを通じて、異文化への理解を深め、国際性豊かな日本人の育成を図っていくことが期待されています。このため、特に、多くの日本人学校などでは、現地の言語や歴史・地理など現地事情に関する指導を取り入れるほか、現地校との交流活動を教育課程の中に位置付け、現地の子どもたちとの交流を積極的に推進しています。また、国際学級や日本語講座を設けるなどにより、外国人の子どもを受け入れているところもあります。
 なお、文部科学省では、平成2年度から在外教育施設における現地理解教育や、交流活動などを一層推進するため、在外教育施設国際交流ディレクター(※11)を派遣していましたが、23年度をもって終了しました(23年度は4人)。


※11 在外教育施設国際交流ディレクター
 在外教育施設を拠点とした国際交流活動を積極的に推進することを任務とする。所属する在外教育施設の実情に応じて、現地関係諸機関などとの連携を図りながら、教育、文化、スポーツを通じた国際交流に関する事業の企画・実施について総合調整を行う。

3 海外から帰国した児童生徒に対する教育の充実

 平成22年4月1日から23年3月31日までの1年間で、海外に1年以上在留した後に帰国し、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校に在籍する児童生徒は、1万589人います。文部科学省では、このような帰国児童生徒について、国内の学校生活への円滑な適応を図るだけでなく、帰国児童生徒の特性の伸長・活用など、海外における学習・生活体験を尊重した教育を推進するため、以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 帰国児童生徒に対する日本語指導の充実を図るため、教員定数の加配措置を実施(公立小中学校の教員の給与費の3分の1を国庫負担)
  2. 帰国児童生徒の日本語指導に携わる支援員を学校へ配置するなど、個に応じた指導のための事業を実施
  3. 各教育委員会・学校に対して、高校や大学の入試において、特別枠の設定や試験の実施回数の増、

 入試手続の簡素化、入試情報の提供のための特別な配慮を行うよう要請現在、15の都道府県の一部又は全ての高校において、帰国生徒のための特別定員枠が設定されているほか、5割以上の大学・学部において、入学者選抜に当たって帰国生徒を対象とした特別選抜が実施されています。

第13節 外国人の子どもたちに対する教育の充実

1 外国人児童生徒の教育に対する支援

 平成23年5月現在、我が国の公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在籍する外国人児童生徒の数は7万2,512人となっています。また、これらの公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒の数は、22年9月現在で2万8,511人となっており、20年度より64人(約0.2%)減少しているものの、ほぼ横ばいとなっています。
 我が国では、外国人については就学義務は課されていませんが、その保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には、無償で受け入れており、教科書の無償給与や就学援助を含め、日本人と同一の教育を受ける機会を保障しています。外国人の子どもの公立学校での受入れに当たっては、適切な日本語指導や適応指導を行うための体制を整備する必要があり、文部科学省では、以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 外国人児童生徒に対する日本語指導の充実を図るため、教員定数の加配措置を実施(公立小中学校の教員の給与費の3分の1を国庫負担)
  2. 独立行政法人教員研修センターにおいて、外国人児童生徒に対する教育に携わる教員や校長、副校長、教頭などの管理職及び指導主事を対象として、日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を実施
  3. 日本の教育制度や就学の手続などをまとめた就学ガイドブック及び概要版をポルトガル語、中国語など7言語で作成し、教育委員会など関係機関に配布
  4. 入学・編入学前後の外国人の子どもへの初期指導教室(プレクラス)、学校での日本語指導の補助や学校と保護者との連絡調整などを行う際に必要な外国語の分かる支援員の配置などを行う事業を実施

2 定住外国人の子どもの教育環境の整備

 昭和63年以降、日系ブラジル人等の入国が急増する中、平成2年に出入国に関する法令改正が行われ、日系人等は活動内容に制限がなく、自由に就労できる「定住者」などの在留資格で日本に居住することとなりました。経済情勢が悪化する中で、不安定な雇用形態で就労する定住外国人の課題が顕在化したことを受け、21年12月に「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」を開催して有識者に意見を伺い、22年5月に外国人の子どもの就学や日本語教育等に焦点を絞って、政策のポイントを取りまとめました。本政策のポイントでは、1.日本語指導の充実を図るとともに、2.公立学校に入りやすい環境を整備すること、3.外国人学校における各種学校・準学校法人化を促進することなどを定住外国人の子どもの教育等に関する基本方針とし、外国人の子どもの教育環境整備の拡充に努めています。
 特に、不就学・自宅待機等になっている定住外国人の子どもに対して、平成21年度から、日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための教室を設置し、公立学校等への円滑な転入が出来るようにする「定住外国人の子どもの就学支援事業」を国際移住機関において実施しています。23年度においては39教室が開校しています。本事業により、21年10月から23年12月までに約900人が公立学校へ、約1,000人がブラジル人学校等への就学を果たしました。また、本事業は、子どもを学校へとつなげるだけでなく、地域の行事への参加や社会見学を通じて、子どもたちやその保護者に日本社会と接する機会を提供し、日本社会への受入れにも大きく寄与しています。

第14節 魅力ある高等学校づくり

1 高等学校教育の個性化・多様化を進めるために

(1)高等学校教育の現状

 新制高等学校発足当初(昭和23年)約42%であった高等学校進学率は、現在では約98%に達しており、高等学校は国民的な教育機関となっています(図表2-2-23)。高等学校進学率の上昇に伴い、生徒の能力・適性、興味・関心、進路などが多様化しており、生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育が求められています。
 その一方で、高等学校の生徒数は、最も多かった平成元年の約560万人から23年には約330万人に減少しており、高等学校の適正配置・適正規模の在り方が課題となっています。
 このため、各都道府県では、高等学校の適正配置・適正規模に留意しつつ、生徒一人一人の個性を伸ばし、知・徳・体の調和のとれた充実した高等学校教育を実現するため、各学校においてそれぞれの特色を生かし創意工夫に富んだ魅力ある学校づくりが進められています。

図表2-2-23 高校への進学率と生徒数の推移

図表2-2-23 高校への進学率と生徒数の推移

(2)特色ある高等学校づくりの推進

 文部科学省は、生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりが可能となるよう、中高一貫教育、総合学科や単位制高等学校をはじめとする新しいタイプの高等学校や特色ある学科・コースの設置などを推進するとともに、自校以外での学修成果の単位認定の幅の拡大などを通じて、多様なカリキュラムづくりが可能となるよう、高等学校教育改革を推進しています。

1.中高一貫教育

 中高一貫教育は、中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育を実現するため、平成11年度から導入されており、23年度までに420校が設置されています(図表2-2-24)。中高一貫教育校には、修業年限6年の学校として一体的に中高一貫教育を行う中等教育学校、高等学校入学者選抜を行わず同一の設置者による中学校と高等学校を接続する併設型中高一貫教育校、市町村立中学校と都道府県立高等学校など、異なる設置者間でも実施可能な形態であり、中学校と高等学校が、教育課程の編成や教員・生徒間交流等の連携を深める形で中高一貫教育を実施する連携型中高一貫教育校の三つの形態があります。
 また、中高一貫教育校として特色ある教育課程を編成することができるよう、指導内容の移行など、実施形態に応じて、教育課程の基準に関する特例を設けています。
 なお、中高一貫教育については、制度創設後10年が経過したこと等を踏まえ、中央教育審議会初等中等教育分科会「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」において、その成果と課題についての検証と改善方策に関する審議が行われ、平成23年7月に「中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理」が取りまとめられました。この「中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理」において、教育課程の基準に関する特例の拡充が提言されたことを踏まえ、中学校段階内における指導内容の学年間の移行など、特例を定めた告示の改正を行いました。

図表2-2-24 中高一貫教育校の推移

図表2-2-24 中高一貫教育校の推移

2.総合学科

 総合学科は、普通科と専門学科に並ぶ新しい学科として、平成6年度から導入されており、23年度までに351校が設置されています(図表2-2-25)。
 総合学科の教育の特色は、幅広い選択科目の中から自分で科目を選択し学ぶ点にあり、生徒がそれぞれの個性に応じて達成感を得ることができる学習や、将来の職業選択など自己の進路への自覚を深めるための学習が重視されています。

3.単位制高等学校

 単位制高等学校は、学年による教育課程の区分を設けず、決められた単位を修得すれば卒業が認められる学校です。昭和63年度から定時制・通信制課程において導入され、平成5年度からは全日制課程においても設置が可能となっています。23年度までに952校(うち全日制課程は551校)が設置されています(図表2-2-26)。
 単位制高等学校の特色としては、自分の学習計画に基づき、興味、関心などに応じた科目を選択して学習できることや、学年の区分がなく、自分のペースで学習に取り組むことができることなどが挙げられます。

図表2-2-25 総合学科数の推移

図表2-2-25 総合学科数の推移

図表2-2-26 単位制高等学校の推移

図表2-2-26 単位制高等学校の推移

4.自校以外での学修成果の単位認定

 生徒の多様な学習意欲に応えて選択学習の機会を拡大するため、生徒の在学する高等学校での学習の成果に加えて、1.他の高等学校において修得した単位、2.大学、高等専門学校、専修学校等における学修、3.知識・技能審査の成果に係る学修、4.ボランティア活動、就業体験活動(インターンシップ)、スポーツ又は文化に関する分野における活動に係る学修など、在学する高等学校以外の場における学修の成果について、各学校長の判断により、36単位を上限として、学校の単位として認定することが可能になっています。
 また、高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修について、各学校長の判断により、単位を与えることが可能になっています。

5.今後の高等学校教育の充実に向けて

 高等学校等への進学率が約98%に達した現在、多様化した生徒の実態に対応し、生徒の個性を最大限に伸ばすためには、特色ある学校づくりを行うとともに、高等学校教育改革を推進することが重要です。
 文部科学省では、平成22年度から、有識者に対するヒアリングや各都道府県の教育委員の方々に対する書面による意見聴取、各学校の校長等を対象とした文部科学省職員によるインタビュー等、様々な形で多数の方々から御意見を伺ってきました。
 これらを踏まえ、平成23年9月に中央教育審議会初等中等教育分科会に審議要請を行い、同分科会の下に、「高等学校教育部会」が新たに設置され、現在、高等学校教育の現状と高校生を取り巻く環境、これまでの取組の成果と課題、今後の教育の在り方などについての審議が進められています。

第15節 幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実

 教育は、国民一人一人が社会生活を送る上で必要な知識・能力を身に付けるための重要な営みであり、また国民主権に基づく社会の存立と発展に必要不可欠な基盤でもあります。加えて昨今では、経済雇用情勢の悪化等により、社会のセーフティーネットとしての教育の重要性がますます高まっています。
 このため、家庭の経済事情にかかわらず、誰もが充実した教育を受けられるようにすることは大変重要であり、その経済的負担は本人や家庭だけではなく社会全体として担っていくことが必要です。
 文部科学省では、各学校段階を通じて、家庭の教育費負担を軽減する施策に取り組んでいます。

1 小学校就学前教育段階における経済的支援

 幼児期は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期であり、このような時期に行われる幼児教育は非常に重要なものです。幼稚園は、我が国の幼児教育の中核的役割を担っています。
 文部科学省では、幼稚園の入園料や保育料に係る経済的負担を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して、幼稚園就園奨励費補助金によりその所要経費の一部を補助しています(参照:第2部第2章第10節「幼児期にふさわしい教育の推進」)。

2 義務教育段階における経済的支援

 義務教育は、国民一人一人の幸せな人生を実現するための根幹であるとともに、国や社会の発展の基礎になるものです。義務教育段階では、国公立学校の授業料や教科書が無償となっていますが(参照:第2部第2章第4節「より良い教科書のために」)、それ以外にも学校生活を送るためには多くの費用が必要です。例えば、「平成22年度子どもの学習費調査」によると、学用品費・遠足費・修学旅行費などの学校教育費や給食費は、公立小学校で年間約10万円、公立中学校で年間約17万円となっています。
 このような費用を負担することが困難な児童生徒の保護者を経済的に支援するために、市町村が行う就学援助制度があります。就学援助制度とは、学校教育法上の実施義務に基づき、各市町村が、経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、学用品費の給与などの援助を行う制度です。就学援助制度の対象者は、生活保護法に規定する要保護者と、それに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者となっています。
 昨今の不況の影響により、就学援助の対象者が増加する傾向にあり、就学援助制度の重要性はますます高まっています。文部科学省では、各市町村が実施する就学援助に対して、補助金の交付及び地方財政措置により支援を行っています。

図表2-2-27 就学援助をうける児童生徒数の推移

図表2-2-27 就学援助をうける児童生徒数の推移

3 高校段階における修学支援

(1)公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金について

 今日、高等学校等の進学率は約98%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果が広く社会に還元されていることから、高等学校等の教育に係る費用について社会全体で負担していくことが求められています。
 さらに、諸外国では多くの国で後期中等教育を無償としており、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(※12)においても、中等教育における「無償教育の漸進的な導入」について規定されるなど、高等学校等の無償化は、国際的な状況に照らして一般的なものと考えられます。
 このような観点を踏まえ、家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」が平成22年3月31日に成立し、同年4月1日から施行されています。これにより、公立高等学校については授業料を無償とするとともに、私立高等学校等の生徒については高等学校等就学支援金を支給し、家庭の教育費負担を軽減する新たな制度が創設されました。
 本制度については、高校生やその保護者等を対象とした「高校就学支援ホットライン」の開設、ホームページやリーフレットの作成・配布なども実施しており、本制度の趣旨や内容などについて広く周知を図っています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm)。
 今後とも本制度を引き続き着実に実施していくことにより、高等学校等で勉強される一人一人が、自らの学びが社会全体により支えられていることを自覚しながら、安心して勉学に打ち込み、自らの無限の可能性を開花させ、将来、我が国社会の担い手として広く活躍されることが期待されます。
 また、保護者や教職員の方々にも、高等学校等で学ぶ者が、勤労観や職業観を身に付け、公共の精神に基づき社会の一員として主体的に社会の形成に参画していくことなどを、家庭や学校における様々な機会を通じて指導していただくことが重要です。

【制度の概要】

〈制度の対象〉
 本制度の対象となる学校は、国公私立の高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、高等専門学校の1年生から3年生、専修学校高等課程、各種学校である外国人学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として文部科学大臣の指定を受けたもの(※13)となっています。

〈公立高等学校について〉
 公立高等学校(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部を含む。)については、授業料を原則不徴収としており、これまでの授業料に相当する経費を地方公共団体に対して、国費により負担しています。

〈私立高等学校等について〉
 一方、私立高等学校等の生徒については、高等学校等就学支援金として、授業料について一定額(年額11万8,800円)を支給していますが、簡便かつ確実に授業料負担を軽減できるように、学校が生徒本人や保護者に代わって高等学校等就学支援金を受け取り、授業料の一部と相殺する仕組みになっています。
 なお、私立高等学校等における授業料等の経済的負担が重いことを踏まえ、特に低所得世帯の生徒に対しては、家庭の状況に応じて、就学支援金を増額して支給することとしています。具体的には、生徒の保護者の年収が250万円未満程度(※14)の場合には2倍額、350万円未満程度(※15)の場合には1.5倍額を上限として支給することになります。
 さらに、本制度に加えて、これまで都道府県で行われてきた授業料減免などの取組がより充実されるよう、例えば、

○授業料減免補助に係る地方交付税措置を拡充(平成23年度予算約70億円(対前年度約20億円増))

○私学助成に係る生徒等一人当たり単価を充実(308,805円=国庫補助金と地方交付税の合計単価(対前年度2,662円(0.9%)増)

○経済情勢の悪化を踏まえ、都道府県が行う経済的理由により修学困難な高校生への奨学金事業や私立高校生に対する授業料減免補助に対して緊急的な支援を行うため、高校生修学支援基金(平成21年度第1次補正予算約486億円、平成23年度第3次補正予算約189億円、21年度~26年度の6か年分)を措置(※16)などの支援措置を講じています。

〈制度開始後の状況について〉
 制度の導入や、都道府県の授業料減免等の取組によって、高等学校等の生徒の就学に以下のような変化が見られています。


※12 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)
 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)とは、人権に関する規約の一つ。世界人権宣言の内容を基礎として、市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)とともに条約化、昭和46年(1971年)に国連総会で採択され、昭和51年(1976年)に発効した。我が国は昭和54年(1979年)に批准。締約国は160か国(平成24(2012)年3月現在)。
条文〔第13条2(b)〕
2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(b)種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。

※13 高等学校等就学支援金制度における外国人学校の指定対象となる教育施設については、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号イ~ハの規定に基づき、文部科学大臣が指定を行い、告示で定めることとしており、平成24年2月1日現在で37校を指定している。

※14、15 両親と子ども二人の世帯の場合を想定

※16 平成22年度から、入学料減免補助事業を対象に追加。

1.平成22年度の経済的理由による高等学校等中途退学者数は、前年度に比べて減少。
(高等学校:約37%減少、私立高等専修学校:約31%減少)
〔高等学校:2,600人(H19)⇒2,208人(H20)⇒1,647人(H21)⇒1,043人(H22)〕
〔私立高等専修学校:255人(H19)⇒243人(H20)⇒253人(H21)⇒174人(H22)〕
(「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」及び「文部科学省調べ」)

2.平成22年度の高校中退者のうち再入学・編入学した者の数は、これまで減少傾向にある中、前年度に比べて増加(約15%増加)。
〔8,155人(H19)⇒7,266人(H20)⇒6,921人(H21)⇒7,960人(H22)〕
(「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)

3.制度導入前に比べ、希望に応じた進路を中学生が選択できるようになったとする市町村が、約70%。
(青森県、愛媛県、大分県内の市町村へのアンケート結果による)

4.低所得世帯の私立高校生に対する就学支援金と授業料減免補助を合わせた支援については、いずれの都道府県においても本制度の実施とあいまって、従来と同水準か更に手厚い支援。

  • 年収250万円未満程度の世帯に対しての授業料全額免除相当の支援:13自治体→43自治体
  • 年収350万円未満程度の世帯に対しての授業料全額免除相当の支援:4自治体→14自治体
    (平成23年7月1日現在における、各都道府県への聞き取り調査による)
図表2-2-28 公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金

図表2-2-28 公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金

(2)高校生等に対する奨学金事業について

 高等学校及び専修学校高等課程の生徒に対する奨学金事業については、平成17年度の入学者から、日本学生支援機構から都道府県に移管されており、各都道府県において確実に事業が実施できるよう、平成23年度予算では高等学校等奨学金事業交付金約240億円を措置しています。加えて、高校生修学支援基金においても、都道府県が行う奨学金事業を支援しており、平成24年度以降は、当該基金を利用する全ての都道府県において、大学生等と同様の所得連動返済型の奨学金制度を整備されるよう制度改正を行っています。

4 障害のある児童生徒などに対する就学支援

 近年、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級等に在籍する児童生徒などの数が増加しており、その就学を経済的に支援することは重要になっています。
 文部科学省では、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級等に就学する障害のある児童生徒などの保護者の経済的負担を軽減することを目的として、「特別支援教育就学奨励制度」を実施している地方公共団体に対して、所要経費の一部を補助しています(参照:第2部第2章第11節2(2)6)

第16節 魅力ある優れた教員の確保

1 教員の資質能力の向上

(1)教員の資質能力の総合的な向上方策について

 学校教育の充実は、その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが極めて大きく、そのため、教職に対する責任感、探究力、教職生活全体を通じて学び続ける力、専門職としての高度な知識・技能、総合的な人間力を備えた魅力ある教員を確保していくことが重要です。
 特に、グローバル化など社会が急激に変化する中、いじめ・不登校等への対応、特別支援教育の充実、ICTの活用等、教員に求められる役割は多様化・高度化しています。
 こうした課題に対応するため、中央教育審議会教員の資質能力向上特別部会において、教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策に関し、審議を行っており(平成22年6月に諮問)、平成23年1月に、「審議経過報告」が取りまとめられました。また、23年6月には審議経過報告に基づくより専門的な調査審議を行うための「基本制度ワーキンググループ」が設置され、24年4月には、教職生活全体を通じた一体的な改革、学び続ける教員を支援する仕組みの構築が必要であるとの考えの下に、「基本制度ワーキンググループ報告」が取りまとめられました。
 この報告は、将来的な改革の方向性として、教員の高度専門職業人としての位置付けを明確にするため、教員養成を修士レベル化することが必要であるとし、修士レベルの「一般免許状(仮称)」、学士レベルの「基礎免許状(仮称)」、特定分野に関し、より高い専門性を身に付けたことを証明する「専門免許状(仮称)」をそれぞれ創設することなどを示し、これらを実現するための当面の改善方策として、修士レベル化に向け、修士レベルの課程の質と量の充実、教育委員会と大学との連携・協働による研修の充実等ステップを踏みながら段階的に取組を推進するとしています。具体的には、教職大学院制度の発展・拡充、専修免許状の在り方の見直し、教育委員会と大学との連携・協働による現職研修のプログラム化・単位化、管理職の育成システムの構築等を盛り込んでおり、中央教育審議会においては、この報告を踏まえた審議が引き続き行われています。

(2)教員の養成・採用・研修における取組

 教員の養成・採用・研修の各段階における施策としては、以下のような取組が行われています。

1.教員養成

 平成20年11月に教育職員免許法施行規則を改正し、「教職実践演習」の導入、教職課程認定大学への是正勧告や認定取消しの仕組みの整備、教職指導や教育実習の円滑な実施の努力義務化など、教員養成課程の充実を図りました(平成21年4月より施行)。
 教職実践演習は、教員として最低限必要な知識技能を修得したことを最終的に確認するための科目として導入され、原則として大学の4年次(短期大学の場合には2年次)後期に実施することとなっており、平成22年度入学生から教職実践演習を含んだカリキュラムが適用されています。
 また、平成20年4月から、学校現場の課題に対応できる新人教員や、学校や地域において指導的役割を果たし得る教員の養成を目指し、より実践的な教員養成を大学院レベルで行う場として「教職大学院」が設置されています。教員養成の中核的な機関として、学部と大学院を通じた教員養成のモデルを示す役割が期待されています。平成23年4月1日現在、全国に25校設置されています。

2.教員採用

 採用の段階で、教員にふさわしい、個性豊かで多様な人材を幅広く確保していく観点から、各都道府県教育委員会等における採用選考の改善を促しており、学力試験の成績のみならず、面接試験や実技試験の実施、受験年齢制限の緩和、様々な社会経験を適切に評価する特別選考などを通じて、人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されています。
 また、小学校教諭の採用選考において外国語活動に関する内容を取り入れる教育委員会が増えるとともに、採用選考の透明性や不正防止の取組が大きく改善されています。
 なお、条件附採用期間制度(※17)を適正に運用し、新規採用者の教員としての適格性を見極めるよう、各教育委員会の取組を促進しています。


※17 条件附採用期間制度
 採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり、児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・講師については、その職務の専門性等から特に、条件附採用期間が1年間とされ、かつ、その間に初任者研修を受けることとなっている。

図表2-2-29 平成24年度公立学校教員採用選考試験実施方法等について

図表2-2-29 平成24年度公立学校教員採用選考試験実施方法等について

3.教員研修

 教員には、その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており、各種研修が実施されています。
 国では、独立行政法人教員研修センターにおいて、各地域で学校教育において中心的な役割を担う校長・副校長・教頭などの教職員に対する学校経営研修や、喫緊の重要課題について地方公共団体が行う研修などの講師や企画・立案などを担う指導者を養成するための研修などにより、地域の中核となるリーダーを育成しています。
 また、都道府県教育委員会などにおいては、教員がその経験、能力、専門分野などに応じて必要な研修を受けることができるよう、以下の取組がなされています。

(ア)初任者研修
 新たに採用された教員に対して、実践的指導力と使命感を養うとともに幅広い知見を得させるため、1年間、学校内外で行う研修です。

(イ)10年経験者研修
 在職期間が10年程度に達した教員に対して、得意分野を伸ばすなど教員としての資質能力の向上を図ることを目的として、個々の能力・適性などの評価を行い、学校内外で行う研修です。

(ウ)長期社会体験研修
 社会の構成員としての視野を拡大する観点から、教員を民間企業、社会福祉施設などの学校以外の施設へおおむね1か月から1年程度の長期にわたり派遣して行う研修です。

(エ)大学院修学休業制度
 公立学校の教員が、その身分を保有したまま、一定の期間休業し、専修免許状の取得をするため大学院で修学することを可能とする制度です(平成13年度創設)。平成23年4月1日までに、1,564人がこの制度を利用しています。

(オ)日本人若手英語教員米国派遣事業
 若手英語教員をアメリカ合衆国の大学に派遣し、英語教育の教授法を学ぶとともに、アメリカ合衆国での人的交流やホームステイを通じてアメリカ合衆国の理解を深め、英語教員の英語指導力、英語によるコミュニケーション能力の充実を図ることを目的としたプログラムを実施しています。

4.教員免許更新制

 教員が定期的に最新の知識技能を身に付けることで、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊厳と信頼を得ることを目的として、平成21年4月から教員免許更新制が実施されています。
 更新制導入後(平成21年4月1日以降)に授与される免許状(新免許状)には、10年間の有効期間が定められます。有効期間の更新は、都道府県教育委員会(免許管理者)が行い、1.大学等が行う免許状更新講習(※18)を30時間以上受講・修了した者、2.免許管理者が最新の知識技能を十分に有しており、免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者に対して認められています。
 更新制導入前(平成21年3月31日まで)に授与された免許状(旧免許状)については、更新制の導入後も有効期間は定められませんが、現職教員については、10年ごとの修了確認期限(※19)までに30時間以上の免許状更新講習を受講・修了することが義務付けられています。また、現職教員が、修了確認期限までに免許状更新講習を受講・修了しなかった場合は、その者が有する免許状は効力を失うこととされています。ただし、新免許状の場合と同様、免許管理者が最新の知識技能を十分に有しており、免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者は、免許状更新講習の受講義務が免除されます。なお、現職教員以外については、免許状更新講習の受講は義務付けられていません。


※18 免許状更新講習
 免許状更新講習の内容は以下の二つの事項となっている。

  1. 教職についての省察並びに子どもの変化、教育政策の動向及び学校内外における連携協力についての理解に関する事項(12時間)
  2. 教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項(18時間)

※19 修了確認期限
 旧免許状所持者である現職教員等が免許状更新講習の課程を修了したことについての都道府県教育委員会の確認を受けなければならない期限。

(3)教員評価と優秀教員表彰

 学校教育の成果は教員の資質に負うところが極めて大きいことから、教員の能力や実績を正確に評価し、その結果を給与や人事などに適切に反映することが大切です。
 平成23年4月現在、全ての都道府県・指定都市教育委員会が教員評価システムの運用・充実に取り組んでいる状況であり、文部科学省としては、引き続き、教員評価の結果を給与や人事などに反映させることも含め、各教育委員会の取組の一層の充実を促していきます。
 また、高い指導力や優れた実績のある教員を評価することは、教員の意欲を高め、資質能力の向上に資するものであり、平成22年度には、66都道府県・指定都市のうち58の教育委員会が優秀教員表彰の取組を実施しています。文部科学省においても、18年度から文部科学大臣優秀教員表彰を実施しており、全国の国公私立学校の現職の教育職員のうち、学校教育における実践などに顕著な成果を挙げた者の中から、都道府県・指定都市教育委員会などが候補者を推薦し、23年度は847名を表彰しました。

(4)指導上の問題がある教員への対応

1.指導が不適切な教員への対応

 教員の指導は、心身ともに発達段階にある児童生徒に対して大きな影響を及ぼすものであり、指導が不適切な教員が児童生徒の指導に当たることがないようにしなければなりません。
 各都道府県・指定都市教育委員会において、指導が不適切な教員に対し継続的な指導・研修を行う体制を整えるとともに、必要に応じて免職するなどの分限制度を的確に運用することが必要です。
 また、教員全体への信頼性を向上させ、全国的な教育水準の維持を図るためには、指導が不適切な教員に対する人事管理システムが公正かつ適正に運用されることが重要であることから、平成19年6月に教育公務員特例法を改正し、指導が不適切であると認定した教員に対して指導改善研修を実施することや、研修終了時の認定において指導が不適切であると認定した者には免職その他必要な措置をすることなどを法律に規定し、20年4月から施行されています。さらに、文部科学省では、各教育委員会が20年度から法律に基づく制度の運用を適切に行うことができるよう指導が不適切な教員の人事管理システムのガイドラインを作成しており、引き続き、各教育委員会がガイドラインを踏まえ、適切に人事管理システムを運用するよう促していきます。

図表2-2-30 平成22年度における指導が不適切な教員の認定者数等

図表2-2-30 平成22年度における指導が不適切な教員の認定者数等

2.非違行為を行う教員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰などの非違行為はそれ自体許されないものであるのみならず、教員に対する信頼、ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
 特に児童生徒に対するわいせつ行為などについては、教員として絶対に許されないものであることから、原則として懲戒免職とするなど、厳正に対応するよう各教育委員会を指導しています。
 また、文部科学省では、各教育委員会に対して、懲戒処分全般の基準を作成することや、処分事案について、児童生徒などのプライバシー保護に十分配慮しつつ、できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し、教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2-2-31)。

図表2-2-31 教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成22年度)

図表2-2-31 教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成22年度)

(5)教員のメンタルヘルスの保持

 公立学校の教員の精神疾患による病気休職者数は、ここ十数年にわたって増加傾向であり、平成22年度においては5,407人となっており、前年より減少したものの、依然として深刻な問題であると考えています(図表2-2-32)。
 学校教育は教員と児童生徒との人格的なふれあいを通じて行われるものであり、教員が心身共に健康を維持して教育に携わることが重要であるため、文部科学省では、メンタルヘルスの保持にかかる方策について各教育委員会に対して、会議や行事の見直し等による校務の効率化や事務負担の軽減、教員が気軽に周囲に相談しやすい職場環境づくり、カウンセリング体制の整備、心の不健康状態に陥った教員の早期発見・早期治療等の指導・助言を行っています。
 また、平成23年度からは、有識者で構成される「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」を開催し、専門的見地から今後の取組を検討し、教職員のメンタルヘルス対策を推進することとしています。

図表2-2-32 公立学校教員の病気休職者数の推移

図表2-2-32 公立学校教員の病気休職者数の推移

(6)学校教育における外部人材の活用

1.特別非常勤講師制度等の活用

 幅広い経験を持ち、優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が、様々な形で学校教育に参加することは、学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。現在、教員免許状を取得していなくとも、各教科や総合的な学習の時間の一部などを担当することができる特別非常勤講師制度の活用が広がっており、平成21年度の活用件数は、全国で2万298件となっています。
 さらに、優れた社会経験のある者を学校現場に迎え入れるため、特別免許状を授与し、教諭の職に就くことができる制度が整備されており、都道府県教育委員会などが行う採用選考において、特別免許状の授与を前提とした社会人選考も行われています。

2.民間人校長、民間人副校長・教頭制度の活用

 今日、学校現場では様々な課題が急増しているとともに、学力の向上や家庭・地域との連携協力の必要性も指摘されており、これまで以上に組織的で計画的な教育活動、学校経営が不可欠となっています。このため、校長等の管理職に対しては、リーダーシップとマネジメント能力がこれまで以上に求められており、外部人材を含め、マネジメントに長けた管理職を幅広く登用することが必要です。
 このような中、文部科学省では、地域や学校の実情に応じ、学校の内外から幅広く優秀な管理職を登用することでがきるよう、平成12年に校長の資格要件を緩和し、教員免許を持たず、教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとしています(副校長については20年の設置時から可能、教頭については18年から)。
 これらの資格要件の緩和により、平成23年4月1日現在、全国の公立学校における民間人校長の在職者数は125人、民間人副校長・教頭の在職者数は53人となっています。

2 学級編制・教職員定数・義務教育費国庫負担制度

(1)学級編制と教職員定数

1.制度の概要

 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図ることを目的として、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校における一学級の児童生徒の数(学級編制)や教職員の配置(教職員定数)の「標準」を定めています。
 公立の小・中学校等の学級編制の標準は、現在、1クラス40人(平成23年度から、小学校第1学年は35人)となっており、各都道府県教育委員会は、これを標準として、学級編制の基準を定めることになっています。
 なお、平成13年度には、地域の実情や児童生徒の実態に応じた柔軟な対応が可能となるよう、法律の改正等を行い、各都道府県教育委員会の判断で、国の標準よりも少人数の学級編制基準を定めることを可能としており、22年度以降は、全ての都道府県において国の標準を下回る学級編制の取組が実施されています(図表2-2-33)。

図表2-2-33 平成23年度において学級編制の弾力化を実施する都道府県の状況について

図表2-2-33 平成23年度において学級編制の弾力化を実施する都道府県の状況について

2.これまでの学級編制及び教職員定数改善の経緯

 少子高齢化やグローバル化が急速に進展する中、学校教育に託された国民の期待は、ますます高くなっています。新学習指導要領の円滑な実施や、いじめ等の教育上の課題に的確に対応し、教員が子どもと向き合う時間の確保を図ることにより質の高い義務教育を実現するためには、より適切な教育環境を整備することが不可欠です。
 中でも、学校における最も基礎的な学習・生活上の単位である学級の規模の縮小や、個別の教育課題への対応のための教職員配置の適正化は、教育環境整備の中心的な課題であり、これまでに様々な取組が進められてきました(図表2-2-34)。

図表2-2-34 公立学校の学級編制と教職員定数の改善状況

図表2-2-34 公立学校の学級編制と教職員定数の改善状況

 中央教育審議会初等中等教育分科会においては、平成22年3月から、今後の学級編制及び教職員定数の改善について検討を開始し、同年7月に少人数学級の推進等を求める提言(「今後の学級編制及び教職員定数の改善について(提言)」)を取りまとめました。
 その後、平成23年度予算案編成過程における議論を経て、政府は、平成23年2月に、小学校第1学年の学級編制の標準を35人に引き下げること等を内容とする「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。
 国会審議の過程では、新たな加配事由の創設のほか、教職員定数配分に当たり都道府県教育委員会に市町村教育委員会の意見を十分に尊重することを義務付けることなどについて追加的な議員修正が行われた上で、平成23年4月に「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」として成立・公布されました。
 改正法の附則において、政府は、学級規模及び教職員の配置の適正化に関し、学級編制の標準を順次に改定することその他の措置を講ずることについて検討を行い、その結果に基づいて法制上その他の必要な措置を講ずることとされました。さらに、国会審議においては、少人数学級の教育効果や、加配定数の十分な確保の重要性などについて様々な指摘がなされました。
 平成23年度予算においては、小学校1年生について35人以下学級を実現するため、2,300人の教職員定数の増が盛り込まれました。

3.地域や学校の実情に応じ、柔軟に学級を編制できる仕組みの構築

 平成23年の法改正では、学校の設置者である市町村の教育委員会が自らの判断と責任で学級編制を行うことにより、地域や学校の実情に応じて、最も効果的な学習・生活指導を行うための適切な学級編制を、より一層実施できるようにするため、以下のような改正が行われました(施行は平成24年4月1日)(図表2-2-35)。

(ア)市町村教育委員会が地域や学校の実情に応じ、学級を編制する際、

  • 都道府県教育委員会が定める学級規模の「基準」について、市町村教育委員会が「従うべき」とされている拘束性を緩め、「標準」としての基準とするとともに、学級編制を行うに当たり、当該学校の児童又は生徒の実態を考慮することを明記。[義務標準法第4条関係]
  • 市町村教育委員会が都道府県教育委員会に協議し、その同意が必要な仕組みを改め、事後届出制とする。[義務標準法第5条関係]

(イ)学級編制に関する市町村教育委員会の主体性を教職員定数配分の観点からも担保

  • 都道府県教育委員会が県費負担教職員の市町村別の学校の種類ごとの定数を定める場合の勘案事項として、「当該市町村における児童又は生徒の実態、当該市町村が設置する学校の学級編制に係る事情等」を明記[地教行法第41条関係]
  • 都道府県教育委員会に対し、市町村教育委員会の意見を十分に尊重することを義務付け[地教行法第41条関係]
図表2-2-35 学級編制の権限に係る見直しのイメージ

図表2-2-35 学級編制の権限に係る見直しのイメージ

 この法改正により、例えば、小学校1年生の児童数が少ない学校で、児童の実態に応じた教育的配慮が必要である場合、例外的に35人の標準を超える人数で学級を編制し、担任とTT(ティームティーチング担当教員)で授業を実施することなどが考えられます(図表2-2-36)。

図表2-2-36 学級編制の弾力化の具体例

図表2-2-36 学級編制の弾力化の具体例

4.「公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議」の開催、平成24年度予算における対応

 平成23年の法改正の経緯などを踏まえ、文部科学省として、少人数学級の推進や教職員定数の改善について今後の方針を検討するため、平成23年6月より「公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議」を開催し、議論を開始しました。
 平成23年9月には、「中間とりまとめ」がまとめられ、小学校1年生に引き続き切れ目なく小学校2年生においても35人以下学級を実現することや、現場ニーズの高い加配措置を充実すること等が提言されました。
 文部科学省においては、小学校2年生の35人以下学級について、平成24年度概算要求では、法改正による制度化を念頭に4,100人の定数措置を要求しました。しかし、厳しい財政状況の中で政府として震災復興に最優先で取り組む必要があること、施策の効果検証や地方での取組の進展なども十分に踏まえた対応が必要であることなどを踏まえ、24年度予算では、法改正による制度化ではなく、現に小学校2年生で36人以上となっている学級を解消するために必要な加配定数の増(900人)により対応することとなりました。このほか、24年度予算では、小学校の専科指導や特別支援教育の充実等のための加配定数(1,900人)、東日本大震災への対応のための加配定数(1,000人)の合わせて3,800人の教職員定数の改善が盛り込まれています。
 また、平成24年2月から検討会議における議論を再開し、子どもたちにきめ細やかで質の高い教育を行っていくための教育環境の整備に向けて、文部科学省として再び検討を開始しています。

○学級規模等の国際比較

 欧米など主要先進国と比べて、一学級当たりの児童生徒数や教員一人当たりの児童生徒数など、我が国の教育環境は依然として低い水準にあります(参考1~3)。

(参考1学級規模の基準[国際比較])

 (参考1学級規模の基準[国際比較])

(参考2一学級当たり児童生徒数[国際比較])

(参考2一学級当たり児童生徒数[国際比較])

(参考3教員一人当たり児童生徒数[国際比較])

(参考3教員一人当たり児童生徒数[国際比較])

(2)義務教育費国庫負担制度

 義務教育費国庫負担制度は、全ての国民が、全国どの地域においても無償で一定水準の義務教育を受けられるようにするため、義務教育費の大半を占める公立の義務教育諸学校の教職員給与費について、国と都道府県の負担によりその全額を保障するものです。この制度は、学級編制や教職員定数の標準を定める法律とあいまって、教育の機会均等とその水準の維持向上のために重要な役割を果たしており、結果として全国約70万人の教職員給与費の総額約5兆円が確保されています。また、教員の給与については、学校現場に優れた人材を確保し、もって学校教育の水準の維持向上に資することを目的として、昭和49年に「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(いわゆる「人材確保法」)が制定され、教員の給与は一般の公務員より優遇することが定められています。
 平成16年度からは、義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で給与額や教職員配置に関する地方の自由度を大幅に拡大する「総額裁量制」が導入されました。
 その後、国庫補助負担金、税源移譲を含む税源配分、地方交付税の在り方を一体的に見直すこととした「三位一体の改革」においては、義務教育費国庫負担制度も検討の対象となり、平成18年度から、国の負担割合が2分の1から3分の1に引き下げられました。
 なお、近年の厳しい地方財政状況の影響もあり、教職員給与費の確保に苦慮している都道府県も見られており、教職員人件費を国が定める基準まで確保できていない県は、平成22年度には16県となっています(図表2-2-37)。

図表2-2-37 教職員人件費を国が定める基準まで確保できていない自治体数(都道府県)

図表2-2-37 教職員人件費を国が定める基準まで確保できていない自治体数(都道府県)

第17節 地域に開かれた信頼される学校づくり

1 より良い学校運営に向けて―地域とともにある学校づくりの推進―

 地域に開かれ信頼される学校づくりを実現するため、学校には、保護者や地域住民の意見や要望を的確に反映させ、家庭や地域社会と連携協力していくことが求められています。同時に、保護者や地域住民が、学校とともに地域の教育に責任を負うとの認識の下、学校運営に積極的に協力していくことも重要です。
 文部科学省が開催した「学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議」(座長:天笠茂千葉大学教育学部教授)では、学校と地域との連携を中心に学校運営の改善方策について議論を重ね、平成23年7月に「子どもの豊かな学びを創造し、地域の絆(きずな)をつなぐ~地域とともにある学校づくりの推進方策~」を取りまとめました。
(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/078/index.htm)
 とりまとめでは、今後、全ての学校が地域の人々と目標(子ども像)を共有し、地域の人々と一体となって子どもたちを育んでいく「地域とともにある学校」を目指すべきであるとし、そのための国の推進目標を提示しています。文部科学省ではこの推進目標に沿って、以下に掲げる取組を進め、地域とともにある学校づくりの推進に取り組んでいきます。

(1)学校の裁量拡大

 地域に開かれた特色ある学校づくりを実現するためには、各学校において、それぞれの教育理念や教育方針に基づき、児童生徒や地域の状況などに応じて、自主的・自律的な学校運営を行うことが必要です。このような観点から、各教育委員会において、学校の裁量を拡大するため、次のような取組が行われています(図表2-2-38)。

○学校管理規則における教育委員会の関与の縮減
 学校と教育委員会の関係を定めている学校管理規則について、これまで教育委員会の許可や承認などが必要であったものを届出に改めるなど、教育委員会の関与を縮減する取組が進められています。

○校長裁量経費を措置するなど、学校予算における学校の裁量を拡大
 従来細かな費目ごとに配当していた学校予算の仕組みを見直し、一定総額の中での学校独自の予算編成を可能とする仕組みを取り入れた教育委員会が増えています。

図表2-2-38 各市町村における学校の裁量拡大の取組状況

図表2-2-38 各市町村における学校の裁量拡大の取組状況

(2)学校評価の推進

 学校評価は、各学校が教育活動等の成果を不断に検証し、1.それに基づき学校運営の組織的・継続的な改善を図ることにより、その教育水準の向上を図るとともに、2.適切に説明責任を果たすことにより、保護者や地域住民等の理解と協力を得て、学校・家庭・地域の連携協力による学校づくりを進めることが期待されています。
 平成19年には、学校教育法・同法施行規則が改正され、自己評価の実施・評価結果公表義務、学校関係者評価の実施・評価結果公表の努力義務、評価結果の設置者への報告義務等が法令上規定されました。これを受け文部科学省では、各学校や設置者における学校評価の取組の参考に資するため、平成20年に「学校評価ガイドライン」を策定し、平成22年には第三者評価の在り方に関する内容を追加しました。
 とりわけ保護者や地域住民等による学校関係者評価については、文部科学省の調査によると平成20年度間は81%の公立学校で実施されていますが、教育振興基本計画においては「できる限りすべての学校において実施されることを目指し、各学校・教育委員会の取組を促す」ことが記され、「学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議」においても「今後の学校運営の必須ツール」として位置付けています。
 文部科学省では、平成23年6月「学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議」の下に「学校評価の在り方に関するワーキンググループ」を立ち上げ、学校評価の取組の現状と課題を踏まえ、実効性の高い学校評価を行うための学校や教育委員会の取組例を整理しました。
 文部科学省ホームページにはこれらのほかにも学校評価に関する調査研究事業の報告書や教育委員会における学校評価の取組事例等を掲載しています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-hyoka/index.htm)。

(3)学校評議員制度

 学校評議員制度は、教育委員会に学校評議員として委嘱された保護者や地域住民などが、校長の求めに応じて学校運営に関する意見を述べるものです。これは、地域住民等が学校運営へ参画するための仕組みとして、平成12年に国として初めて制度化されたものです。
 平成20年度において学校評議員(類似制度を含む)を設置している公立学校は86.5%、国立学校は99.2%となっており、学校関係者評価の評価者に任命するなど、保護者や地域住民の学校への参画を促すために活用している例も多く見られます(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-hyogiin/)。

(4)コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の設置拡大

 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、平成16年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正により導入されました。
 この制度は、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って公立学校の運営に参画することを可能とするものです。
 教育委員会からコミュニティ・スクールに指定された学校には、保護者や地域住民を委員とした「学校運営協議会」が設置されます。学校運営協議会は、校長が作成する学校運営の基本的な方針について承認を行うことや、学校運営全般について教育委員会・校長に意見を述べることなどができます(図表2-2-39)。

図表2-2-39 コミュニティ・スクールのイメージ

図表2-2-39 コミュニティ・スクールのイメージ

 このように、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画することにより、保護者や地域住民の学校に対する意見や要望を、迅速かつ的確に学校運営に反映することができるようになります。

コミュニティ・スクールの導入によって得られた成果として、

◆教員の意識が変わり、それが開かれた学校、授業改善へとつながっていく
◆校長の経営方針が理解され、その実現のためにはどうしたらよいか、地域の「応援体制」が整ってきた
◆課題解決に向けて学校と地域が一体となって取り組めている
◆学校を中心として地域の活性化や結び付きが強くなった
◆多くの方々が学校に来てくれるようになり、学校に活気が出てきた

といった声が挙がっています。
 文部科学省では、「今後5年間で、コミュニティ・スクールの数を全公立小中学校の1割(約3,000校)に拡大」する推進目標としています。その実現に向けて、文部科学省では、コミュニティ・スクールを導入しようとする各学校の実情に応じた制度運用の方策を研究・開発する「コミュニティ・スクール推進事業」(平成23年度は全国212校に委託)や、先進取組の成果発信などを通じて更なる制度普及を図る「地域とともにある学校づくり推進協議会」(同年度は札幌・三重・熊本・広島・新潟・横浜で開催)、コミュニティ・スクール指定校が1校もない地域の保護者、地域住民、学校関係者などを対象とした説明会(同年度は全国28地域)などを実施しています。
 平成23年4月1日現在、コミュニティ・スクールとして指定を受けている学校は、全国で789校となっており、着実に全国に広まりつつあります(図表2-2-40)。
 文部科学省ホームページには、コミュニティ・スクールに関するパンフレットや事例集、推進協議会の実施報告、調査研究事業の報告書を掲載しています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/index.htm)。

図表2-2-40 公立学校における学校運営協議会を置く学校(コミュニティ・スクール)数の推移

図表2-2-40 公立学校における学校運営協議会を置く学校(コミュニティ・スクール)数の推移

(5)副校長等の職の設置

 校長のリーダーシップの下、学校の組織運営体制や指導体制の充実を図るため、平成19年6月に学校教育法を改正し、新たな職として副校長(副園長)、主幹教諭、指導教諭を置くことができることとしました。
 これらの職については、各教育委員会の判断により、平成20年度から設置されており、23年4月1日現在、副校長は37県市で3,517人、主幹教諭は54県市で17,741人、指導教諭は20県市1,219人が置かれています。
 それぞれの職の職務内容は次のとおりです。
 副校長は、校長から命を受けた範囲で校務の一部を自らの権限で処理することができる点で、校長を助けることの一環として校務を整理する教頭と異なります。
 主幹教諭は、校長から命を受けて担当する校務について一定の責任を持って整理し、他の教諭などに対して指示することができる点で、担当する校務について連絡調整や指導、助言を行う主任とは異なります。
 指導教諭は、学校の教員として自ら授業を受け持ちながら、他の教員に対して教育指導に関する指導、助言を行います。指導教諭を設置することによって、個々の教員の授業力が向上し、各学校において優れた教育実践が行われることが期待されます。

(6)教員の勤務負担軽減に関する取組

 平成18年度に行った「教員勤務実態調査」によると、教員の残業時間が増えており、また、授業の準備に十分な時間が取れていない状況が明らかとなりました。こうした状況に対応していくためには、学校が校長のリーダーシップの下、教職員の役割分担の明確化などを通じて業務を効率化するなど、組織的・機動的な学校運営を実践していくことが一層重要となっています。
 文部科学省では、平成23年度には「教員の勤務負担軽減等の取組事業」を実施し、組織的な学校運営、業務の改善、地域人材を含む専門的な外部人材の活用、管理職のマネジメント力向上、教育委員会の学校サポート体制の整備などの研究課題について、教育委員会に委託して調査研究を行い、その研究成果や教育委員会における負担軽減に関する取組の普及を図っています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/1306775.htm)。

2 教育委員会制度について

 教育委員会は、地方教育行政の中心的な担い手であり、地域の学校教育、社会教育、文化、スポーツなどに関する事務を担当する機関として、全ての地方自治体に置かれています。教育委員会は、教育における政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の多様な意向の反映を実現するために、自治体の長から独立した合議制の執行機関として設置されているものです。
 教育委員会は原則5人(都道府県又は市については6人以上、町村については3人以上とすることもできます。)の委員から構成され、その委員は、都道府県知事や市町村長が議会の同意を得て任命します。教育委員会はその地域の教育行政における重要事項や基本方針を決定し、また、教育委員のうちから教育長を任命します。教育長は、教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属する事務を行います(図表2-2-41)(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/01_j.htm)。

図表2-2-41 教育委員会の組織(イメージ図)

図表2-2-41 教育委員会の組織(イメージ図)

図表2-2-42 教育委員会の行う事務の例

図表2-2-42 教育委員会の行う事務の例

 教育委員会に対しては、地域における身近な行政機関として定着し、教育の機会均等・教育水準の向上及び地域の実情に応じた教育の推進に寄与してきたとの評価がある一方で、その役割を十分に果たしていないという指摘もあります。
 このような指摘も踏まえ、文部科学省では、教育行政や学校のガバナンス改革を進めるため、文部科学副大臣のもとに「地方教育行政の在り方に関するタスクフォース」を設置し、地域の意見や力を学校運営に生かすとともに、学校を地域の活性化の拠点にしていくという観点から、地方教育行政の在り方に関する課題の整理と改革方策の検討を行っているところです。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成24年09月 --