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第1章 生涯学習社会の実現と教育政策の総合的推進

第1章 総論

 平成18年に教育基本法が改正され、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化などの今日的な課題を踏まえて、教育の基本理念が示されました。この理念の実現に向けて、同法第17条第1項の規定に基づき、政府の教育に関する総合的な計画として策定されたものが「教育振興基本計画」です。様々な社会情勢の変化や、東日本大震災の発生などを踏まえ、平成23年6月に第2期計画の策定について中央教育審議会に諮問が行われ、現在、審議が進められています。
 文部科学省では、教育基本法に示される理念や教育振興基本計画を踏まえ、教育費負担の軽減、学校の教育力の向上、世界をリードする大学の実現などの諸施策に取り組んでいます。また、国立教育政策研究所では、教育政策を企画・立案するために有意義な知見を集約・提示することを役割として、初等中等教育から高等教育、生涯学習、文教施設までの教育行政全般にわたって、様々な調査研究を行っています。
 生涯学習とは、家庭教育や学校教育、社会教育、個人の自学自習など、人々が生涯にわたって取り組む学習のことを指します。生涯学習の理念については、教育基本法第3条で、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」と規定されています。
 文部科学省では、教育基本法の規定を踏まえ、“誰もがいつでもどこでも”学習することができ、また、学習成果を生かすことのできる『生涯学習社会』の実現を目指し、以下のような生涯学習振興施策を進めています。

  • 「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」など地域ぐるみの子どもたちの教育支援活動の取組の支援や、地域の学習拠点である公民館や図書館の充実など社会教育の振興。
  • 家庭教育支援チームの組織化など家庭教育を支援するための取組や、青少年の健全育成のための取組の推進。
  • 大学における公開講座の実施や、放送大学の充実・整備、専修学校の振興など、多様な学習機会の提供。
  • 高等学校卒業程度認定試験の実施や、民間教育事業の質の向上など、学習した成果の適切な評価とその活用の促進。
  • 高齢社会への対応や人権教育の推進、男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興など、現代的な課題への対応。

第1章では、これらの取組の内容について御紹介します。

第1節 教育政策の総合的推進

1 教育基本法と教育振興基本計画

 「教育基本法」は、我が国の教育の根本的な理念や原則を定めるもので、すべての教育関係法令の根本法とも言うべき法律です。平成18年の改正では、様々な今日的課題を考慮して、教育の基本理念が明示されました。
 この理念の実現に向けて、同法第17条第1項に基づき、政府の教育に関する総合的な計画として策定されたものが「教育振興基本計画」です(第1期計画期間:平成20年度~24年度)。様々な社会情勢の変化や、東日本大震災の発生などを踏まえ、平成23年6月6日に第2期計画の策定について中央教育審議会に諮問し、同年12月9日には、「第2期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方」を取りまとめました。
 第2期計画においては、教育成果の保証に向け、それを実現するための具体的かつ体系的な方策を明記することを基本的なコンセプトとし、我が国が直面する危機や東日本大震災などを乗り越え、持続可能で活力ある社会を構築していくための社会の方向性として、「自立、協働、創造」の三つの理念が重要であるとしています。その上で、これらの理念や現在の教育行政の評価を考慮した今後の教育行政の方向性について、「社会を生き抜く力の養成」「未来への飛躍を実現する人材の養成」「学びのセーフティネットの構築」「絆(きずな)づくりと活力あるコミュニティの形成」の四つに整理しています。
 平成24年度内には、中央教育審議会からの答申をいただいたうえで、政府による閣議決定を行う予定です。

2 教育政策の今後の展開

 資源の乏しい我が国においては、人材こそが成長を牽(けん)引する貴重な資源であり、持続可能な社会を築き上げていくためには、その土台となる厚い人材層を形成していくことが必要です。少子高齢社会が進展し、活力が失われつつあるのではないかとの懸念も指摘される中、我が国が自信と活力を取り戻すためには、一人一人が生涯を通じて自己を磨き、高め、そして、社会に貢献していくことが重要です。そのため、文部科学省では、以下のような施策に取り組みます。

(1)学校の教育力の向上

 新学習指導要領が全面実施される中で、教員が子ども一人一人に向き合う時間を確保し、子どもたちの個性に応じたきめ細かで質の高い教育を行うことができるよう、公立の小学校1年生で35人以下学級を制度化するなどの少人数学級の推進、教員の資質能力向上方策に関する検討を進めています。
 また、情報通信技術を効果的に活用した指導方法・学習方法の発展・改善やそれを支える学習環境づくりなど教育の情報化の推進、自然体験学習や社会体験学習、読書活動、地域に根ざした道徳教育、コミュニケーション教育、外国語教育、特別支援教育などの充実に取り組んでいます。
 さらに、学校施設の安全性を確保するため、非構造部材を含めた耐震化に積極的に取り組んでいます。

(2)世界をリードする大学の実現

 大学が我が国の将来や世界、そして地域に貢献する機能を充実していくため、学生の学力や就業力の育成など社会の期待に応える大学教育の推進やイノベーションの創造に貢献し世界をリードする大学院の形成・強化などに取り組みます。また、社会人がいつでも大学で学び、その成果を社会で活かせる環境づくりや、大学の人材育成や研究成果の活用による地域産業の活性化についても支援するとともに、喫緊の課題である医師不足解消のための医学部の入学定員の増員や優れた医療人の養成、地域医療に貢献する大学病院の充実を行います。さらに、大学間の国際交流や留学生の受入れ・派遣の拡充などに取り組み、今後の東アジア交流やアジア太平洋協力を支える人材の育成と域内の共通課題の解決に長期的視野を持って貢献していきます。

(3)若者の就職支援とキャリア教育・職業教育の充実

 厳しい経済状況の中で、新卒者の就職状況は極めて深刻となっています。雇用の問題は、経済界、労働界、教育界が一体となって取り組むことが重要であり、関係省庁と連携しながら新卒者などの就職支援に取り組んでいます。
 一方、若者の早期離職や若年無業者が存在するなど、学校から社会・職業への移行に課題が見られることや、進路意識や目的意識が希薄なまま進学する者の増加など、「社会的・職業的自立」に向けて課題が見られることも指摘されています。このため、幼児期から高等教育に至るまで、一人一人の社会的・職業的自立に向けた体系的なキャリア教育を推進するとともに、専門高校・大学・専修学校等においては、産業界などと連携した専門人材養成など実践的な職業教育を推進しています。

(4)教育費負担の軽減

 厳しい経済状況が続く中、経済格差が教育格差につながることや、その教育格差が学力や進路に影響し、更なる経済格差を再生産するといった、格差の固定化が起こることが懸念されます。全ての意志ある者が安心して希望する教育を受け、自らの能力を高める機会を確保することは社会全体の責務であり、その経済的負担は本人や家庭だけではなく社会全体として分かち合うことが必要です。
 このような考えの下、公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金制度を引き続き実施するとともに、大学の授業料減免や奨学金の充実、幼稚園就園奨励費補助の充実などを行っていきます。

(5)新しい公共の実現

 「新しい公共」とは「支え合いと活気のある社会」をつくるため、国民、企業やNPO等の事業体など、様々な当事者たちが自発的に協働する場です。特に学校・家庭・地域の連携による学校づくりやスポーツ、文化分野は、「新しい公共」が発展する重要な活動の場となります。文部科学省では、学校教育・社会教育を通じた、担い手の育成や、学習・活動の場の確保、学校・地域等の関係者・機関間のネットワーク化など、各分野において「新しい公共」による活動を支えるための取組を推進します。

(6)熟議の取組

 平成22年4月から、多くの当事者による「熟慮」と「議論」を重ねながら課題解決・政策形成をしていく「熟議」を通じた教育政策・現場づくりを推進しています。現場の課題解決と教育政策形成の好循環を生み出すため、関係当事者が集い対面で行う熟議(「リアル熟議」)と、「文科省政策創造エンジン熟議カケアイ」(http://jukugi.mext.go.jp/)サイト上で行う熟議(「ネット熟議」)を組み合わせて展開しています。

第2節 国立教育政策研究所における研究・事業活動

 国立教育政策研究所は、教育政策に関する総合的な国立の研究機関として、初等中等教育から高等教育、生涯学習、文教施設までの教育行政全般にわたって、政策に関する基礎的事項の調査研究を進めています。また、国際的な共同研究への我が国の代表としての参画、児童生徒の学力の全国的な実態把握、教育委員会や学校と連携した調査研究、国内の教育関係者への情報提供など、幅広い活動を展開しています。

1 国立教育政策研究所における研究・事業活動の内容

 本研究所は、調査研究活動から得た成果を教育政策の企画・立案に有意義な知見として集約・提示することを主要な役割としています。そのため、広く所内外の研究者が参画するプロジェクトチームを組織し、教育への資源投入の配分とそれによる成果などを研究する「初等中等教育における教育財政に関する基礎的研究」、教員養成の実態把握や好事例についての調査研究を行う「教員養成等の在り方に関する調査研究」など様々な調査研究を行っています。
 また、経済協力開発機構(OECD)が実施している「生徒の学習到達度調査(PISA)」や「国際成人力調査(PIAAC)」などの国際的な比較研究に我が国を代表して参画し、問題作成、調査実施、結果の分析などを担当しています。平成23年6月には21年に実施したPISA2009年デジタル読解力調査の結果を公表しました(参照:第2部第2章第1節1(4))。
 さらに、児童生徒の学力の実態などを把握するための「全国学力・学習状況調査」(参照:第2部第2章第1節1(4))において調査問題の作成や結果の分析、解説資料の作成を行っています。また、学習指導要領改訂に必要な資料を得るとともに各学校における教育課程編成及び指導方法等の改善充実を図るため、特に重要な課題について研究テーマを示し、指定校や指定地域で実践的な研究を推進する研究指定校事業を行っています。このほか各種の指導資料を作成・配布しています。

2 研究活動等の成果の公表など

 本研究所は、研究所の研究・事業活動に関する報告書や指導資料、事例集などについては、研究所のウェブサイトや研究所内の教育図書館で広く公開しています。
 また、シンポジウムや全国の教育研究所から成る全国教育研究所連盟の大会などを通じ、広く教育関係者に対する研究活動などの成果の普及に努めています。

3 日中韓国立教育政策研究所長会議の開催

 平成23年11月、本研究所内において「第一回日中韓国立教育政策研究所長会議」を開催しました。この会議の開催は、同年5月の日中韓サミットにおいて、日本国、中華人民共和国及び大韓民国の三国間の人的・文化交流を活発化させることが重要であるとされたことを受けてのものです。この会議においては、教育研究分野においても三国間の交流・協力を推進すべきであることなどについて合意しました。次回は24年8月下旬に大韓民国で開催する予定です。

第一回日中韓国立教育政策研究所長会議
第一回日中韓国立教育政策研究所長会議

第3節 地域の教育力の向上と社会教育の振興

1 地域の教育力の向上に向けた取組

(1)地域の教育力の向上

 人々の学習に対する需要が高まり、その内容が多様化・高度化する中で、社会教育はその重要性を増しています。教育基本法の改正を受け、平成20年6月に社会教育法などの一部改正が行われ、社会教育施設の運営能力の向上や、専門職員の資質の向上を図るための規定などが定められました。
 また、平成18年12月に公布・施行された教育基本法第13条において、「学校・家庭・地域住民などの相互の連携協力」が新たに規定されました。近年、社会がますます複雑化・多様化し、子どもを取り巻く環境も大きく変化する中で、子どもたちを健やかに育むためには、学校・家庭・地域が連携協力し、社会全体で教育に取り組むことが一層重要となっています。
 このため、文部科学省では平成21年度に「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」を創設し、「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」など地方自治体が地域の実情に応じて行う学校・家庭・地域の連携協力のための様々な取組を支援しています。

(2)地域全体で子どもを育む環境づくりの支援

 文部科学省では、平成19年度から、保護者や地域住民の協力を得て、放課後や週末などに子どもたちに学習や様々な体験・交流活動などの機会を提供する「放課後子ども教室」(平成23年度9,733教室)を、厚生労働省が留守家庭児童を対象として実施している「放課後児童クラブ」と連携した総合的な放課後対策「放課後子どもプラン」として推進しています。
 また、平成20年度からは、地域住民がボランティアとして、授業や部活動、学校行事の支援、登下校の見守りなど、学校の様々な教育活動を支援する仕組みである「学校支援地域本部」の取組も推進しています(平成23年度2,659本部)。
 さらに、平成23年度には、「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」「家庭教育支援」などの取組を統合した「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」を創設し、子どもたちの教育を総合的に支援しています。
 これらの活動は、地域の様々な方々の参画・協力により実施されており、学校と地域との連絡・調整や活動の企画などを行うコーディネーター、授業や教員の補助、学校環境の整備など学校が必要とする支援を行う学校支援ボランティア、放課後などに子どもたちの見守りや安全管理を行う安全管理員、宿題や学習をサポートする学習アドバイザーなどとして、保護者を含む地域住民やPTA関係者、退職教員、大学生、青少年・社会教育団体関係者、NPO、企業関係者などが協働・連携することにより、地域の実情に応じた様々な取組が進められています。
 「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」などの活動を通じて、授業時間や放課後、週末などに地域の方々が子どもたちとふれあうことは、子どもたちを健やかに育むための教育活動の場を提供するだけでなく、地域の方々にとっても、活動に参加することで新たに学び、これまでの知見や経験したことを活用、実践する機会にもなり、これらの活動は、地域の方々の生涯学習の場、その成果の活用の場としての効果も期待されます。
 これらの活動を継続的に実施し、地域に根付いたものとして更なる充実を図るためには、これまで以上に多くの地域の方々の参画・協力が不可欠です。地域の方々の更なる参画と、充実した教育支援活動体制の構築により、地域ぐるみの子どもたちの教育支援活動の取組が広く全国で実施されるよう、これからも支援を行っていきます。

コラムNo.17 教育支援活動の拡充(岡山県教育庁生涯学習課)

 岡山県においては、「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」を27市町村全てで実施しています。しかし、市町村単位、中学校区単位で見ると、学校教育支援のみ、放課後支援のみなど、取組が一部にとどまる地域が多いのが現状です。
 一方、例えば学校教育支援の取組を核にして、子どもに体験活動などを提供する放課後支援活動を行ったり、放課後子ども教室で保護者への学習会を開催するなど家庭教育支援活動を行ったりして、取組を広げている事例もあります。美咲町立旭小学校学校支援地域本部では、学校における学習支援活動の取組のほか、土曜体験活動塾を開き、昔遊び、キャンプ、スキー教室などを実施しており、学校教育支援活動の中で、放課後支援の活動を行っています。また、早島放課後子ども教室では、教室に通う子どもの保護者を対象にコーディネーターが個別懇談を実施し、子育てについての不安や悩みを聞いたり、アドバイスを行ったりするなど、家庭教育への支援を充実させています。
 岡山県では、こうした拡充の取組を一層広げ、子どもの生活全体や豊かな育ちを地域ぐるみで支える仕組みをつくっていくことが重要であると考えています。

美咲町立旭小学校学校支援地域本部夏休み宿題作戦(本立てづくり)
美咲町立旭小学校学校支援地域本部夏休み宿題作戦(本立てづくり)

早島放課後子ども教室保護者を対象にした個別懇談
早島放課後子ども教室保護者を対象にした個別懇談

2 社会教育の充実・活性化

(1)人々の学習活動を支援する専門的職員の充実

1.専門的職員の現状

 社会教育における専門的職員として、教育委員会に置かれている社会教育主事や、各社会教育施設に置かれている公民館主事、司書(図書館)、学芸員(博物館)、社会教育委員、社会教育指導員などが挙げられます。特に、社会教育主事は、都道府県および市町村の社会教育行政の中核として、地域の社会教育行政の企画・実施や専門的技術的な助言と指導に当たることを通し、人々の自発的な学習活動を援助する役割を果たしています。また、近年では、社会教育関係者や地域の人材などの連携の調整を行うコーディネーターとしての役割も求められています。

2.専門的職員の養成と研修など

 文部科学省では、現職の社会教育主事、司書、学芸員などに対して、地域における社会教育に関する課題や地域のニーズに対応した実践的な研修を実施することにより、専門的職員としての資質の向上に努めるほか、社会の状況に対応し、地域住民の高度化・多様化する学習ニーズに対応できる社会教育主事や司書を養成するため、大学などに委嘱し、資格を付与する社会教育主事講習や司書講習を実施しています。また、地域における社会教育委員の役割の重要性を考慮し、社会教育に関する諸計画の立案や青少年教育に関する助言、指導など社会教育委員の積極的な活動が各地方自治体で展開されるよう、必要な情報提供などに努めていきます。

(2)地域の学習拠点の整備・形成・運営

1.公民館

 公民館は、地域住民にとって最も身近な学習拠点であるだけでなく、交流の場として重要な役割を果たしています。平成20年10月現在、公民館は全国に1万5,943館設置され、住民の学習ニーズや地域の実情に応じた学級・講座の開設など様々な学習機会の提供を行っています(図表2-1-1、図表2-1-2)。
 また、平成20年7月に策定された「教育振興基本計画」では、公民館をはじめとする社会教育施設について「地域が抱える様々な教育課題への対応や社会の要請が高い分野の学習など地域における学習の拠点、さらには人づくり・まちづくりの拠点として機能するよう促す」こととされており、関係機関や団体とのネットワークを構築しながら、新たな課題やニーズに応じた活動を展開し、地域の拠点としての役割をより一層果たすことが公民館に期待されています。
 文部科学省では、関係省庁と連携した講師派遣の取組や社会の要請が高い学習機会の提供の推進、公民館職員の資質向上を図るための研修の実施などに取り組むことを通じ、公民館活動の充実に努めています。

図表2-1-1 公民館数等の推移

図表2-1-1 公民館数等の推移

図表2-1-2 学級・講座数の実施状況

図表2-1-2 学級・講座数の実施状況

コラムNo.18 親の輪、親子の輪、地域の輪づくり~公民館を中心として~(島根県益田市都茂公民館)

 社会情勢の変化に伴い、子育て環境が厳しくなる中、地域の若いお父さんから、「このままで良いのか」「まず、親同士が一緒に活動し、家族がつながるきっかけをつくろう」という声が上がりました。この自発的な声を大切にした公民館が核となり、保育所の協力を得ながら親育ち・子育ち・地域育ちを目的に委員会が立ち上がりました。そして、地域グループ「(遊限会社)子育て建設」が誕生しました。親と公民館が互いに知恵を出し合い、昔の生活体験学習などの体験活動を通じて、親の輪、親子の輪、地域の輪づくりを目指した事業を展開しています。大切なことは公民館が前に出ないことで、飽くまでも公民館は縁の下の力持ちに徹しています。これまでの取組により、親、親子、地域の重なりが大きくなり、地域の子育て支援体制が整いました。そして、公民館を中心に人づくり、地域づくりが進んでいます。

昔の生活体験学習
昔の生活体験学習

2.図書館

 図書館は、人々の学習に必要な図書や様々な情報を収集・整理・提供する身近な社会教育施設です。平成20年10月現在の図書館数は、公立図書館が3,140館、私立図書館が25館となっており、図書館数、図書の貸出冊数、利用者数は、近年着実な伸びを示しています(図表2-1-3)。

図表2-1-3 図書館数と貸出冊数などの推移

図表2-1-3 図書館数と貸出冊数などの推移

 平成20年6月の図書館法改正を受けて、文部科学省では、司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目について図書館法施行規則の改正を行い、24年4月に施行されました。この改正では、図書館を支える司書が、地域社会の課題や人々の情報要求に対して的確に対応し、より実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう、大学などにおける司書養成課程や司書講習における養成課程の改善・充実を図ることとしています。また、図書館職員の資質向上に向けて、新任の図書館長を対象とした研修や中堅の司書を対象とした研修の充実に努めています。
 さらに、図書館法改正により、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年告示第132号)(現行基準)の対象が私立図書館に拡大されたほか、図書館の運営状況に関する評価や改善並びに地域住民などに対する情報提供に努めることが新たに盛り込まれました。現行基準の施行から9年が経過し、その間の社会の変化に対応する必要があることから、協力者会議での議論を考慮し、図書館の設置や運営上の望ましい基準の改正を進めるなど、図書館振興施策の充実に取り組んでいます。

コラムNo.19 「Help-Toshokan図書館支援隊」の取組~被災地におけるボランティア活動報告~

避難所(気仙沼市立小原木中学校体育館)でのお話し会の様子〔平成23年4月〕 
避難所(気仙沼市立小原木中学校体育館)でのお話し会の様子〔平成23年4月〕

 東日本大震災は図書館にも甚大な被害をもたらしました。地震による被害はもちろんのこと、特に岩手県や宮城県の沿岸地域にある図書館は、津波による壊滅的な被害を受けました。
 そんな中、社団法人日本図書館協会では、被災した方々に本を読む機会や情報に触れる機会を提供するため、全国の図書館職員などのボランティアを募り、図書館が甚大な被害を受けた地域や避難所を中心に、様々な支援活動を実施しています。
 具体的には、気仙沼市などにおいて、ボランティアの図書館職員が自動車に絵本や紙芝居を搭載し、避難所の子どもたちに絵本の読み聞かせやお話会を実施しました。また、壊れた本の修理ボランティアの養成講座の開催や、図書館資料のクリーニング支援など、被災図書館の復興に向け、今もなお、様々な活動を行っています。
 これらの活動は、被災地の状況やニーズを考慮しながら試行錯誤を重ねて実施してきました。震災から1年たった今、ようやく被災図書館の復興が始まりつつありますが、これからも息の長い支援活動が必要と考えています。

3.博物館

 博物館は、資料収集・保存、調査研究、展示、教育普及などの活動を一体的に行う施設であり、平成20年10月現在、登録博物館が907館、博物館相当施設341館、博物館と類似の事業を行う施設が4,527館設置されています。
 文部科学省では、地域の教育力の向上や、博物館職員の資質向上を目的として、博物館長や中堅の学芸員を対象とした専門的な研修を実施するとともに、学芸員を外国の博物館に派遣し、その成果を全国に普及することなどにより、博物館振興施策の充実に取り組んでいます。
 平成20年度の博物館法改正や、博物館を取り巻く環境が大きく変化したことを受け、平成23年度に「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」の改正を行いました。主な改正内容としては、基準の対象として私立博物館を追加したほか、運営の状況に関する評価を実施し、その結果を積極的に公表するよう努めることなどを定めております。
 また、博物館を支える学芸員が、質の高い人材として育成されるよう、大学などにおける学芸員養成課程などの改善・充実を図っています。
 博物館を支える学芸員が、人々の生涯学習の支援を含め、博物館に期待されている諸機能を強化し、国際的にも遜色ない高い専門性と実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう、大学などにおける学芸員養成課程における養成科目の改善・充実を図るため、「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」において学芸員の養成に関する検討を進め、平成21年2月に「学芸員養成の充実方策について(第2次報告書)」を取りまとめました。文部科学省では同報告書の提言などを考慮し、平成21年4月に博物館法施行規則の一部改正を行い、平成24年4月に施行されました。

コラムNo.20 静岡県立美術館の評価システムについて

連携しているSPAC(静岡県舞台芸術センター)による詩の朗読
連携しているSPAC(静岡県舞台芸術センター)による詩の朗読

 静岡県立美術館では、平成13年より、館内に検討チームを設けて、自己評価指標の策定に取り組みました。当初は、館の業務を100程度の指標で数値化し、業務改善を図りました。ここで得られたデータを基に、平成15年度・16年度の2年間、「静岡県立美術館評価委員会」を設置して、当館の経営の在り方や評価システムの設計について検討しました。
 平成17年度から評価システムを本格運用し、翌18年度には「静岡県立美術館第三者評価委員会」を設置して、美術館業務の自己評価に対する二次評価と行政の支援体制に対する評価を実施し、このシステムは現在でも継続しています。
 その後、自己評価については、平成20年度に、評価指標の整理を含めた評価システムの改善を行い、現在は、34の評価指標によって、美術館経営についての自己評価を行っています。評価の成果は、レストランの改善やカフェの新設、また県立6施設による連携「ムセイオン静岡」をはじめ、地域との積極的な連携などの具体的な経営改善につながっています。

 国立科学博物館では、自然史、科学技術史に関する調査研究、標本資料の収集・保管とその継承を進めるとともに、調査研究の成果や標本資料を活(い)かして展示や学習支援活動を実施しています。
 平成23年度は、展示活動においては、「恐竜博2011」などの特別展や、世界化学年関連企画として、企画展「化学者展」や「世界化学年クイズ&スタンプラリー」のイベントやノーベル賞創設110周年を記念した企画展「ノーベル賞110周年記念展」などを実施しました。また、学習支援活動においては、高度な専門性を生かした独自性のある講座・観察会などを実施するとともに、地域の博物館・教育委員会と協働した「教員のための博物館の日」の実施や、学生のサイエンスコミュニケーション能力の育成に努めています。

(3)PTA及び青少年教育団体の実施する共済事業

 PTAや青少年教育団体は、従来、その主催する活動中のけがや、学校管理下におけるけがなどについて、見舞金を支給する事業を行っていましたが、平成17年に保険業法が改正され、従来の事業の実施方法では、その継続が困難となっていました。このような状況を考慮し、平成22年の第174回国会において、議員立法としてPTA・青少年教育団体共済法が成立し、平成23年1月1日にPTA・青少年教育団体共済法施行令及びPTA・青少年教育団体共済法施行規則などとともに施行されました。
 これにより、PTAや青少年教育団体が、行政庁の認可を受け、本法に基づいて共済事業を行うことができるようになりました。
 文部科学省では、共済事業の認可申請のあった社団法人全国子ども会連合会に対して平成23年12月27日に認可を行いました。引き続き、本制度に基づいて、各関係団体が円滑に共済事業を実施することができるよう、行政庁である都道府県教育委員会や各関係団体へ必要な支援などを行っていきます。

第4節 家庭の教育力の向上と青少年の健やかな成長

1 家庭の教育力の向上に向けた取組

(1)家庭教育の現状と課題

 家庭教育は、全ての教育の出発点であり、子どもが基本的な生活習慣・生活能力、豊かな情操、他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的倫理観、自立心や自制心、社会的なマナーなどを身に付ける上で重要な役割を果たすものです。しかしながら、近年の都市化や核家族化、少子化などによる、親が身近な人から子育てを学ぶ機会の減少や、地縁的なつながりの希薄化など、家庭教育を支える環境が大きく変化する中、社会全体で家庭教育を支援する必要性が高まっています。
 このような状況の中で、平成18年に改正された「教育基本法」において、新たに家庭教育に関する規定(第10条)が設けられました。さらに、「教育振興基本計画」においても、国が行う重点施策として、身近な地域においてきめ細かな家庭教育支援が実施されるよう促すことが盛り込まれました。また、近年、児童虐待相談対応件数の増加や、ひとり親家庭の増加、子育て家庭の孤立化など、家庭が抱える課題は多様化してきており、様々な状況にある子育て中の親たちに対しても、きめ細かな家庭教育支援を積極的に進めていくことが課題となっています。
 これらの喫緊の社会的課題を踏まえた家庭教育支援の在り方を国として示すことや、各自治体による主体的な取組の活性化等を目的として、平成23年度には「家庭教育支援の推進に関する検討委員会」を開催し検討を重ね、報告書「つながりが創る豊かな家庭教育」を取りまとめました。
 本報告書では、現代の社会を「家庭教育が困難になっている社会」と分析し、その支援の在り方について、家庭教育が家庭内だけでなく、地域や学校をはじめとする他者とのつながりの中で行われることの重要性に鑑み、基本的な方向性を1.親の育ちを応援する、2.家庭のネットワークを広げる、3.支援のネットワークを広げるの三つに整理した上で、そのための四つの方策を提案しています。
 文部科学省では、本報告書の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携を図りながら、家庭教育支援のより一層の充実に取り組んでいきます(参照:報告書「つながりが創る豊かな家庭教育」http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/1306958.htm)。

(2)家庭教育を支援するための取組

 平成23年度は、「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」により、身近な地域において、全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう、家庭教育支援チームの組織化などによる相談対応、保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供などの家庭教育を支援する活動を実施しました(平成23年度実施箇所数:2,512箇所)。
 また、地域住民、学校、行政、NPO、企業などの協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため、効果的な取組事例などを活用した、全国的な研究協議を行っています。平成23年度は、宮城県において、「震災を越えて-今、みんなでできること、あなたにできること~社会全体で子どもたちを育むために~」をテーマに、滋賀県において、「共に育み、共に育つ。そして、学びを支え合う。~学校・家庭・地域において我々は何ができるか~」をテーマに研究協議会を開催し、全国的な啓発を行いました。

コラムNo.21 泉大津市における家庭教育支援活動~訪問型家庭教育支援活動について~泉大津市(呼称:スマイル・サポートチーム)

 泉大津市の教育支援センターでは、従来の来所型相談支援に加え、家庭教育への関心が低い保護者や、子育てやしつけに悩みや不安を抱えながらも、相談に訪れる時間のない保護者への対応のため、保護者の心のサポート、子育ての支援をより直接的・機動的に、訪問型支援として行う「家庭教育支援チーム」を創設し活動しています。
 「家庭教育支援チーム」の支援の展開に当たっては、学校園はもとより、教育支援センターの専門相談員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門家や元教育関係職員、学生ボランティアとも連携し、ケース会議による情報の共有とアセスメントに基づいた個別の支援プログラムを作成し、役割の分担を行っています。また、ケースによっては、子ども家庭センターや泉大津市要保護児童対策地域協議会などの関係機関とも連携を図っています。
 学校園の教職員とは異なる立場にある「家庭教育支援サポーター」による支援活動は、課題のある家庭の訪問活動を行い、寄り添いながら、様々な悩みを聞くところから始まります。訪問活動を継続していくと、やがて保護者は本音を出せるようになり、ストレスが軽減され、サポーターとの信頼関係が生まれ、現実の問題と向き合うことができるようになります。
 さらに、保護者にとっては、家庭生活や子どもの状況の良い変化をサポーターや学校園の教職員に認められることにより、子育てに対する自信・喜びを感じることにつながる効果も期待できます。
 このように、家庭教育支援の取組では、保護者や子どものエンパワメントによる成果が見られています。また、「家庭教育支援チーム」による支援の中には、兄弟姉妹が多校種にまたがるケースも多くみられます。このようなケースでは、サポーター同士の会議(サポーターサポート会議)や関係機関を含めたケース会議により、連携が強化され、支援の効果が校種をまたいで波及したケースもあり、校種間、関係諸機関の支援連携もモデルとなるような成果が見られています。
 平成23年度は、チームのこうした活動が、内閣府が行う「子ども若者育成・子育て支援活動事例紹介事業」に選定され、チャイルド・ユースサポート章を受章しました。

泉大津市の訪問型家庭教育支援

コラムNo.22 平成23年度「楽しい子育て全国キャンペーン」~親子で話そう!家族のきずな・我が家のルール~三行詩募集について

 都市化、核家族化、少子化など子育てや家庭教育を支える地域の環境が変化する中、改めて、親子のコミュニケーションなどによって育まれる家族のきずなや、家庭でのルールづくり、「早寝早起き朝ごはん」といった子どもたちの基本的な生活習慣づくりなど、親子で話し合ったり、一緒に取り組むことの大切さを社会全体で呼び掛けていくため、文部科学省と社団法人日本PTA全国協議会との共催により、「親子で話そう!家族のきずな・我が家のルール」三行詩募集を実施しました。
 今年度は、震災をきっかけに家族のきずなの大切さが再確認される中、被災された地域を含め、全国から60,272作品の応募があり、選定された優秀作品12作品及び佳作18作品について、平成23年12月26日に文部科学省において表彰式を行いました。

優秀作品(12作品)

(文部科学大臣賞)

◆小学生の部
 大津波 父さんの店をのみこんだ 父さん負けるな私がつぐその日まで
 西村 沙弥(宮城県宮城郡松島町/4年生)

◆中学生の部
 そっと頭をなでる母の手が やさしくて 寝たふりをする
 秋山 椎名(愛媛県今治市/1年生)

◆一般の部
 家庭菜園 似てます なぜか うちの子に 不揃いだけど 味がある
 小寺 優子(愛知県名古屋市)

(厚生労働大臣賞)

◆小学生の部
 ちょっとのがまんは?「幸せの素」 みんなの笑顔は?「元気の素」 あいさつは?「仲良しの素」
 鍜治 美里(長崎県佐世保市/4年生)

◆中学生の部
 母の作るお弁当 残さず食べるが私のルール 苦手な野菜が必ず一つ 母の想いにごちそうさま
 三浦 未久(埼玉県北葛飾郡杉戸町/1年生)

◆一般の部
 「迎えに行って」と妻が言う 面倒臭いと思いつつ 来て良かったと思う 夜の駅
 板坂 剛(石川県羽咋市)

(社団法人日本PTA全国協議会会長賞)

◆小学生の部
 いつも口うるさいお母さん だけど内緒で数えてたら 優しい方が多かった。
 渡辺 美優(宮城県気仙沼市/6年生)

◆中学生の部
 地震おき 着信りれきに 「父」いっぱい
 坂井 珠理(神奈川県横浜市/1年生)

◆一般の部
 父さんは、しかる役 母さんは、なだめ役 そして、おまえは、のびる役
 真下 秀生(富山県魚津市)

(「早寝早起き朝ごはん」全国協議会会長賞)

◆小学生の部
 トントントン台所から聞こえる 母の包丁の音 わたしの大事な目覚まし時計
 堤 理子(鹿児島県阿久根市/5年生)

◆中学生の部
 電気を消して早寝をしよう! 僕でもできる節電対策。 勉強したのと母の声。
 柏木 優輝(三重県亀山市/3年生)

◆一般の部
 夜の九時 布団の上はにぎやかな 我が家の ふれあい動物園
 田近 京子(神奈川県横浜市)

(3)子どもの基本的な生活習慣の育成に向けた取組

1.子どもの基本的な生活習慣の現状

 子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠が大切です。しかしながら、最近の子どもたちを見ると、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠である基本的な生活習慣が大きく乱れています。こうした今日の子どもの基本的な生活習慣の乱れが、学習意欲や体力、気力の低下の要因の一つとして指摘されています。
 また、子どもの基本的な生活習慣は家庭だけでなく、親の長時間労働といった社会環境の影響を受けやすいことから、家庭における食事や睡眠などの乱れを個々の家庭や子どもの問題として見過ごすことなく、社会全体の問題として地域が一丸となり、子どもの健やかな成長を期して学習意欲や体力の向上を図るための取組を推進することが必要です。

(1)子どもの就寝時間
 平日23時以降に就寝する小学生の割合は約16%、平日24時以降に就寝する中学生の割合は約28%となっています(図表2-1-4)。

図表2-1-4 小・中学生における就寝時間

図表2-1-4 小・中学生における就寝時間

(2)子どもの朝食摂取
 最近の調査によれば、朝食を食べないことがある小・中学生の割合は、小学生で約11%、中学生で約16%に達しています(図表2-1-5)。また、毎日朝食を食べる子どもの方が、平成22年度「全国学力・学習状況調査」の平均正答率や、平成22年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の体力合計点が高い傾向にあることが分かっています(図表2-1-6、図表2-1-7)。
 こうした状況を考慮し、子どもの就寝時間や朝食摂取の状況を改善することについて、家庭だけでなく、国民全体で考え行動する社会的気運を高めていくこととしています。

図表2-1-5 朝ごはんを食べないことがある小・中学生の割合

図表2-1-5 朝ごはんを食べないことがある小・中学生の割合

図表2-1-6 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係

図表2-1-6 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係

図表2-1-7 朝食の摂取と体力合計点との関係

図表2-1-7 朝食の摂取と体力合計点との関係

2.「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進

(1)「早寝早起き朝ごはん」全国協議会による運動の推進
 平成18年4月に、「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が発足しました。これは、PTAをはじめ、経済界、メディア、有識者、市民活動団体、教育・スポーツ・文化関係団体、読書・食育推進団体、行政など、幅広い関係団体の参加を得て、「早寝早起き朝ごはん」運動を民間主導の国民運動として推進することを目的としています。24年1月現在、全国協議会の会員団体数は267です。
 設立以来、本運動に賛同する方々や、本全国協議会に参加する様々な団体などとともに、子どもの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動、コミュニティサイトによる情報提供などを展開しています(参照:早寝早起き朝ごはんコミュニティサイトについてhttp://www.hayanehayaoki.jp)。

(2)子どもの生活習慣づくり支援
 生活習慣の夜型化といった社会の影響を受けやすい子どもたちの睡眠(就寝)時間の改善を中心に、子どもの基本的な生活習慣の定着に向けて、平成23年度は、企業や働く親向けの啓発資料を作成し、家庭や学校、地域にとどまらず、社会全体での問題としての取組の促進を図っています。
 また、東日本大震災後、節電などにより生活習慣や生活の在り方を見直す機運が高まっていることから、『「早寝早起き朝ごはん」でエコ生活!』のキャッチフレーズで普及啓発を行いました。

2 青少年の健全育成の推進

 平成22年4月に、子ども・若者育成支援施策の総合的な推進のための枠組みの整備及び社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を地域において支援するためのネットワークの整備を目的に「子ども・若者育成支援推進法」が施行されました。この法律に基づく大綱として、同年7月に、「子ども・若者ビジョン」が作成され、施策の基本的な方針などが定められています。子ども・若者育成支援に関する施策は、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用をはじめとして、社会のあらゆる分野にわたることから、関係行政機関、民間団体等の緊密な連携の下、施策の推進を図ります。

(1)青少年の体験活動の推進

1.体験活動の推進

 現在、「大きな木に登ったことがない」、「キャンプをしたことがない」青少年が5割を超えるなど、自然体験活動を行う青少年が年々減少しており、さらには、地域における様々な体験活動の中心的な場である公立青少年教育施設の数も近年、大幅に減少しています。一方で、国立青少年教育振興機構の調査により、子どもの頃に「自然体験」などの体験活動が豊富な人ほど、「規範意識」や「意欲・関心」が高い傾向にあることが明らかになっています。新しい学習指導要領や「教育振興基本計画」においても、体験活動の充実が求められており、これらを踏まえ、青少年の体験活動の推進を更に図っていく必要があります。
 そこで、文部科学省では、児童の豊かな人間性や社会性を育むため、「豊かな体験活動推進事業」において、自然の中における宿泊体験活動等の推進を図るとともに、平成20年度から、農林水産省、総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、小学生の農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを推進しています。
 また、「体験活動推進プロジェクト」において、家庭や企業などへ体験活動に対する理解を求める普及啓発を実施するとともに、自然体験活動の教育効果を高め、青少年が安全・安心に自然体験活動を行えるよう、その指導者の養成を推進しています。

2.青少年の国際交流の推進

 文部科学省では、国内外の様々な人々との交流体験を通じて、青少年の国際的視野の醸成を図るため、諸外国の青少年との相互交流や自然体験活動等を通じた国際交流を推進しています(参照:第8章第1節2(2))。

(2)国立青少年教育振興機構を中心とした体験活動の振興

1.青少年教育施設における体験活動の推進

 国立青少年教育振興機構は、全国に28施設ある傘下の国立青少年教育施設を通じて、その立地条件と特性を活(い)かし、青少年を対象とした総合的・体系的な体験活動などの機会を提供しており、平成23年度は約500万人の方に利用されています。また、平成23年4月に、同機構内に青少年教育研究センターを創設し、青少年教育のナショナルセンターとして、調査研究体制を強化しました。さらには、社会全体で体験活動を推進する機運を高めるため、「体験の風をおこそう運動」として、青少年団体などと連携し、体験活動の重要性を広く家庭や社会に伝えていくための活動を進めています(参照:http://www.niye.go.jp/)。
 なお、平成24年1月に、「独立行政法人の制度・組織の見直しに関する基本方針」が閣議決定され、国立青少年教育振興機構は、国立青少年交流の家等の自治体・民間への移管等に向けた取組を進めること等が求められています。文部科学省では、中央教育審議会において、今後の国立青少年教育施設の在り方も含め、青少年の体験活動の推進の在り方について審議を行っています。

2.「子どもゆめ基金」事業

 同機構では、「子どもゆめ基金」事業により、未来を担う夢を持った子どもの健全育成を進めるため、民間団体が実施する様々な体験活動や読書活動などに対して支援を行っています。行政刷新会議による事業仕分けの結果などを考慮し、基金原資の政府出資分100億円を国庫納付しましたが、民間団体による草の根レベルでの活動を支援していくことは重要ですので、引き続き、同機構の運営費交付金の中から助成を行っています。平成23年度は4,189件の応募に対し、3,378件の活動を採択し助成を行いました(参照:http://yumekikin.niye.go.jp/)。

自然観察活動の様子(国立信州高遠青少年自然の家)
自然観察活動の様子(国立信州高遠青少年自然の家)

図表2-1-8 国立青少年教育施設(28施設)

図表2-1-8 国立青少年教育施設(28施設) 

(3)青少年を有害環境から守るための取組の推進

 近年、子どもたちが携帯電話やパソコンを利用する機会が増加する中、携帯電話依存による生活習慣の乱れや、インターネット上の違法・有害情報サイトのトラブルに子どもたちが巻き込まれるケースが多発するなど、様々な問題が深刻化しています。
 そこで、文部科学省では、インターネットの適切な利用に関する普及啓発活動など、青少年をインターネット上の有害環境から守るための取組を実施しています(参照:第2部第9章第1節4)。

(4)子どもの読書活動の推進

 読書は、子どもにとって、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付ける上で欠かせないものです。しかし、テレビ、インターネットなどの様々なメディアの発達・普及などにより、子どもたちの「読書離れ」が指摘されているところです。
 文部科学省では、子どもが自主的に読書活動を行うことができるよう、毎年4月23日の「子ども読書の日」の周知をはじめとした環境の整備を図るとともに、総合的かつ計画的に施策を推進しています(参照:第2部第1章第6節8)。

第5節 国民一人一人の生涯を通じた学習の支援

 「生涯学習」とは、一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。また、人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択し学ぶことができ、その成果が適切に評価される社会として「生涯学習社会」という言葉も用いられます。
 近年、人々の学習需要が高まり、またその内容が多様化・高度化するのに伴い、生涯学習社会実現への期待は、ますます高まっていると言えます。文部科学省では、国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなど、「生涯学習社会」の実現のための取組を進めています。

1 多様な学習機会の提供

(1)放送大学の充実・整備

 放送大学は、大学教育の機会を幅広く国民に提供することを目的として昭和58年に創設された通信制の大学です。テレビ・ラジオの放送を利用して、いつでも誰でも学ぶことができます。また全都道府県に「学習センター」等を設置し、学生の学習を支援するとともに、公開講演会の開催などを通じて地域の生涯学習の振興にも寄与しています。
 平成23年度第2学期現在で約8万6千人が学んでおり、これまでに125万人以上の学生が学び、7万人を超える卒業生を送り出しています。放送大学の学生は、職業、年齢、地域を問わず多様であり、学生の有職率は約6割、身体に障害を有する方も610名在籍しています。このように、我が国の生涯学習の中核的機関として大きな役割を果たしています。
 放送大学では、豊かな教養を培うとともに実生活に則した専門的学習を深められるよう、学部・大学院を合わせて333科目が開設されています。既存の学問分野にとらわれず、学習者の目的に合わせて自由に選択することが可能となっています。また、教員の専修免許をはじめとした各種資格の取得や、特定分野の授業科目群を設定し学位以外の履修証明を与える「放送大学エキスパート(科目群履修認証制度)」などの実施により、国民の多様化・高度化する学習需要に応えています。
 放送大学では、大学教育における学習環境の充実を図るため、平成23年10月からはCS放送に代えてBSデジタル放送による授業番組の提供を開始し、放送のデジタル化を活(い)かしたより質の高い番組を全国に提供しています。さらに、一部の放送授業番組についてはインターネットによる配信も行っており、順次提供科目数の拡大を進めています。このほか、開かれた大学として一部の授業科目をオープンコースウェア(OCW)(※1)として一般公開し、大学教育へのユニバーサルアクセスを推進しています。


※1 オープンコースウェア(Open Course Ware)
 大学や大学院の講義を録画し、インターネットなどを利用して無償で公開すること。

(2)大学における生涯学習機会の提供

 生涯学習社会の実現に向け、各大学(短期大学を含む)においては、地域・社会における「知の拠点」として、社会人入試、夜間・昼夜開講制、科目等履修生、通信教育、履修証明制度、公開講座などを実施しています。このうち、公開講座は多くの大学で開講され、大学における教育・研究の成果を直接、地域住民などに学習機会として提供する役割を担っています(平成20年度は、少なくとも992大学で3万1,544講座が開講され、129万7,792人が受講)。

(3)専修学校教育の振興

 専修学校は、学校教育法において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことを目的とする学校であるとされ、実践的な職業教育、専門的な技術教育などを行う教育機関として、大きな役割を果たしています(平成23年5月現在、学校数3,266校、生徒数64万5,834人)。専修学校は、入学資格の違いにより、高等学校卒業程度を入学資格とする「専門課程」(専門学校)、中学校卒業程度を入学資格とする「高等課程」(高等専修学校)、入学資格を問わない「一般課程」の三つの課程に分かれています。なお、高等学校などにおける教育費負担の軽減を目的とした高等学校等就学支援金の制度に伴い、その支給対象に専修学校高等課程が含まれています。
 文部科学省では、専修学校教育の振興方策として、働きながら学ぶ社会人などの多様な学習ニーズに対応し、ライフスタイルに即した学習機会の提供を可能とする単位制・通信制の導入のための制度改正を行いました。単位制学科においては、学年の枠に縛られることなく、自己のペースで長期にわたる計画的な履修が可能となり修業年限を超えて専修学校の正規課程を修了できる学習スタイルが構築され、通信制学科においては学習の時間や場所に制約を受けることのない印刷教材などによる授業の実施が可能となります。
 また、我が国の経済社会を支える厚みのある中間層として、産業構造の変化やグローバル化などに対応した新たな知識・技術・技能を備え中核的な役割を果たす専門人材を質的・量的に確保するため、専修学校などを中心とした産学官コンソーシアムを整備し、1.産業界などのニーズを考慮した人材養成策の策定、2.社会人などが実践的な職業能力を向上するための新たな学習システムの開発(モデル・カリキュラム基準や達成度評価の実証など)、3.各分野における専門的・実践的な教育の質の保証・向上のための仕組みづくりなどを実施しています。
 このため、産学官の連携を強化し、ITや観光、環境・エネルギー、食・農林水産などの成長分野において具体的な取組として、学習者のキャリアパスが描けるような「学習ユニット積み上げ方式」の在り方などの基本方針を取りまとめました。

(4)文部科学省認定社会通信教育

 文部科学省では、学校法人や公益法人の行う通信教育のうち、社会教育上奨励すべきものについて認定を行い、その普及・奨励を図っています。平成24年2月末現在、文部科学省認定社会通信教育は、27団体112課程であり、22年における1年間の延べ受講者数は約6万8千人となっています。

(5)民間教育事業者、NPOとの連携等

 民間教育事業者や教育分野で活動を行うNPOなどの民間団体は、「新しい公共」の担い手として、国民の多様な活動を支える上で大きな役割を果たしており、今後その役割はますます重要なものになると考えられます。
 文部科学省では、民間団体と行政の協働による取組の充実を図るため、民間のノウハウを活(い)かした各種のモデル事業や調査研究などを実施しているほか、教育関係NPO法人の先進的な取組を紹介するなど、民間団体の取組の活性化や官民のネットワーク形成を支援しています。

2 学習成果の評価・活用

(1)高等学校卒業程度認定試験

 高等学校卒業程度認定試験は、高等学校を卒業していないなどの者に対し、高等学校卒業者と同程度以上の学力があることを認定する試験です。この試験の合格者には、大学などへの入学資格が付与されます。
 平成23年度における延べ出願者数は2万9,763人、受験者数は2万6,410人、合格者数は9,659人となっています(図表2-1-9)。また、出願者のうち約半数となる50.2%を高等学校中途退学者が占めていることから、この試験が、中途退学者などの再チャレンジの場となっていることが分かります。
 試験合格者のおよそ半数は大学などへ進学していますが、この試験は、就職などの機会に学力を証明する手段としても活用されています。文部科学省では、就職などの際にこの試験を活用した場合に、採用試験や採用後の処遇において高等学校の卒業者と同等に扱われるように、パンフレットやポスターの配布などにより、制度の周知に努めています。

図表2-1-9 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

図表2-1-9 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

(2)学校における単位認定

 高等学校においては、生徒の能力・適性、興味・関心などが多様化している実態を考慮し、選択の幅を広げるという観点から、生徒の在学する高等学校での学習の成果に加えて、1.大学、高等専門学校、専修学校などにおける学修、2.知識・技能審査の成果に係る学修、3.ボランティア活動、就業体験活動(インターンシップ)、4.高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修など、在学する高等学校以外の場における学修の成果について、各高等学校の判断により、学校の単位として認定することが可能になっています。
 大学などにおいては、教育内容の充実に資するため、専門学校における大学教育相当の学修など大学以外の教育施設などにおける学修について、当該大学などにおける単位として認定できることとしており、299大学(全体の40.9%(平成20年度))において活用されています。

(3)大学評価・学位授与機構による学位授与

 大学・大学院の正規の課程を修了してはいないものの、大学・大学院を卒業又は修了した者と同等以上の学力を有すると認められる者に対して、高等教育段階の様々な学習成果を評価し、学位を授与しています。平成22年度においては、1.短期大学、高等専門学校卒業者などが大学、専攻科において更に一定の学習を行った場合に当たる者として2,778人に、2.同機構の認定する教育施設の課程の修了者に当たる者として1,112人に同機構から学位が授与されています。

(4)準学士・短期大学士・専門士・高度専門士の称号の付与等

 高等専門学校卒業者には「準学士」の称号が付与されています。また、現在、短期大学卒業者には、「短期大学士」の学位が授与されています。
 専門学校修了者のうち、修業年限2年以上、総授業時数1,700時間以上などの要件を満たすと文部科学大臣が認めた課程の修了者に対しては、「専門士」の称号が付与されます。平成23年度では、7,089学科の修了者に対し、専門士の称号が付与されています。
 また、修業年限4年以上で、総授業時数3,400時間以上などの要件を満たすと文部科学大臣が認めた課程の修了者に対しては、「高度専門士」の称号が付与されます。平成23年度では、503学科の修了者に対し、高度専門士の称号が付与されています。「高度専門士」の称号を付与できる課程の修了者には、同時に大学院への入学資格も与えられることになっています。

(5)民間教育事業の質の向上

 現在、民間の検定試験には、全国規模で実施され年間の受検者数が100万人を超える検定や、専門的な知識・技能を測るために特定の受検者を対象に実施される検定、各地域における文化活動や観光産業などの活性化を目的とした検定など、その実施主体や目的、内容などにおいて多種多様なものが存在しています。こうした検定試験によって測られる学習成果が適切に評価され、学校や職場、地域社会などで活(い)かされるためには、検定試験の質の向上と信頼性の確保が必要です。
 文部科学省では、民間事業者などが行う検定試験の評価に向けた主体的な取組を支援する方策について検討するため、「検定試験の評価の在り方に関する有識者会議」を開催し、平成22年6月に「『検定試験の評価ガイドライン(試案)』について(検討のまとめ)」を取りまとめ、検定試験の評価手法、評価の視点や内容、情報公開が望まれる項目などを公表するとともに、民間事業者などが行う検定試験の評価や情報公開の取組を促進することにより、検定試験の質の確保や向上を図っています。

コラムNo.23 学習サービスの質の向上などに向けた国際標準化民間団体の取組~ISO29990の発行~

 日本国内には、学校教育以外の教育・訓練サービス(例えば、民間事業者による学習塾や語学教室、大学などが行う一般市民を対象にした講座など)が多くありますが、その質を国際レベルで横断的に比較・評価する仕組みがこれまでありませんでした。そうした中、「国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)」において、平成22年に「非公式教育・訓練のための学習サービス」に関する国際規格として、ISO29990が発行され、平成23年には、日本国内の民間事業者がこの規格の認証を取得したところです。こうした国際的な動きが、日本国内の非公式の教育・訓練サービスの質を保証する仕組みづくりのきっかけとなり、学習者が安心して学習できる環境づくりが進むことが期待されます。

~ISO29990について~
 この規格では、非公式教育・訓練のための学習サービスを提供する事業者が、良質なサービス提供を行うために備えるべき事項を定めています。具体的には、学習サービスの提供プロセスに関して、学習サービスの計画や学習者の習熟状況のモニタリングを適切に行うことなど、学習サービス事業者のマネジメントに関しては、財務管理やリスク管理、内部監査を適切に行うことなどが求められています。

(6)地域や大学における人材認証制度の状況

 一定の学習や活動を経た人材の能力、経験などを客観的に認証する仕組み(いわゆる人材認証制度)は、自治体や大学、NPOなどにより、様々な分野で実施されています。平成22年度に実施した調査では、学習成果の活用を意識して、座学と実践を組み合わせたプログラムを編成する制度が多く見られた一方、認証後の活躍の場とのマッチングに課題があることも分かりました。学習した成果が地域や社会で生かされるためには、今後もこうした人材認証制度の一層の普及・発展が望まれます。

3 国際成人力調査の実施

 国際成人力調査(PIAAC=ピアック)の国内調査を平成23年度に実施しました。この調査は、経済協力開発機構(OECD)が進める新しい国際比較調査で、欧米諸国や日本を含む25か国が参加しています(24年2月現在)。16歳から65歳までの男女個人を対象に、「各国の成人が日常生活や職場で必要とされる技能(成人力)」をどの程度持っているかを調べることを目的としており、25年度にはOECDから国際報告書が公表されます。この調査結果は、我が国の生涯学習や学校教育に関する施策立案に活用されることが期待されます。

4 生涯学習に関する普及・啓発から学習成果の活用へ

 生涯学習の振興を図るためには、人々の学習機会を広く提供するとともに、学習の成果が地域の活性化に生かされることが重要です。「全国生涯学習ネットワークフォーラム」は、生涯学習活動の成果を生かして社会的な課題の解決を図る取組を全国的に推進するため、行政、NPOなどの団体、企業、大学などの関係者が一堂に集い、生涯学習を通じた新しい地域づくり・社会づくりについて研究協議などを行うことにより関係者などのネットワーク化を図るとともに、その成果を全国に情報発信しました。
 平成23年度は、東日本大震災の経験から見えてきた成果や課題を考慮し、「学びを力とする3.11以降の地域づくり、社会づくり」を開催テーマに掲げ、11月5日と6日に東京都において開催し、「地域の絆づくり」、「防災教育」、「高齢社会」、「ICT教育」、「震災ボランティア」をテーマとした5つの分科会において、講演、事例発表、ポスターセッション、熟議などを実施しました。本事業は、アンケートにおいて92%余りの方が、「地域や社会的な課題を解決するための活動に参加したいと思った」と答えるなど、大きな成果を上げています。

第6節 生涯学習・社会教育における現代的課題への対応

1 教育分野における子ども・子育て支援施策

 平成22年1月、新たな「少子化社会対策大綱」として「子ども・子育てビジョン」が閣議決定されました。
 子どもは社会の希望であり、未来の力であるからこそ、社会全体で子どもと子育てを応援していくことが求められています。
 これまで「少子化対策」として、様々な計画の策定や対策が講じられてきました。厚生労働省の平成22年人口動態統計によると、出生数は約107万1千人で前年より増加し、合計特殊出生率は1.39で前年より上昇しています。各種の調査によれば、多くの若者が将来家庭を持つことを望み、希望する子どもの数は平均2人以上となっており、家庭を築き、子どもを産み育てるという個々人の選択が尊重され、それが実現される社会を築くことが大切です。
 このため、「子ども・子育てビジョン」においては、子どもを大切にする(チルドレン・ファースト)とともに、全ての子どもの育ちと子育てを切れ目なく包括的に地域のネットワークで支えること、また、個人の希望する結婚、出産、子育てを実現するという観点から、子どもを生み育てることに夢を持てる社会を目指すことを基本的な考え方として、各種施策をしていくこととしています。
 また、個人が希望を普通にかなえられるような教育の環境を社会全体で整備していかなくてはなりません。子どもと子育てを応援することは、「未来への投資」であるという考え方に基づき、次代を担う全ての子どもの教育機会を保障するなど、社会全体で子どもを育てる環境づくりに取り組む必要があります。
 こうしたことから、文部科学省においては、

  1. 教育にかかる保護者の経済的負担の軽減
  2. 幼保一体化を含む「子ども・子育て新システム」の構築に向けた検討及び法案の提出
  3. 認定こども園の設置促進や幼稚園における預かり保育・子育て支援の充実
  4. 家庭教育に関する情報や学習機会の提供、相談体制の充実など、社会全体の協働による家庭教育支援
  5. 「放課後子ども教室」などによる子どもの安全・安心な居場所の確保と様々な体験・交流活動の機会の提供

などに取り組んでいます。

2 高齢社会への対応

 急速な高齢化により、社会保障給付の増大、地域社会の活力の低下、単身老人世帯の増加等の問題が顕在化しつつあります。
 他方で、65歳以降の平均寿命は非常に長いものとなり、退職後の人生を自ら設計し、生きがいをもって主体的に生きるとともに、自ら有する能力を活(い)かし地域における様々な活動において、重要な担い手として活躍していくことは、本人のみならず、地域社会の活性化という観点からも重要です。
 このためには、多様な学習の機会を提供するとともに、学習の成果を適切に活用し、社会参画につながる仕組みづくりが求められています。
 このような背景を踏まえ、平成23年度に文部科学省で開催された「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」において、24年3月に、報告書「長寿社会における生涯学習の在り方について~人生100年いくつになっても学ぶ幸せ「幸齢社会」~」が取りまとめられました。本報告書では、高齢者の学習活動及び社会参画の現状と課題や意義・役割について整理するとともに、高齢者を含む全ての人々が健康で生きがいを持って豊かな人生を送ることができるよう長寿社会における生涯学習政策の基本的方向性と具体的方策について提言しています。

3 人権教育の推進

 文部科学省では、憲法及び教育基本法の精神にのっとり、学校教育及び社会教育を通じて、人権尊重の意識を高める教育の推進に努めています。平成12年12月に施行された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づき、人権教育や人権啓発に関する施策を総合的かつ計画的に進めるため、14年3月に「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定されました。基本計画においては、人権の大切さを教育する取組や、重要な人権課題(女性、子ども、障害者、高齢者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、犯罪被害者等、インターネットによる人権侵害など)に対する教育の取組について盛り込んでいます。なお、平成23年4月1日に同基本計画の一部変更の閣議決定がなされ、第4章の2各人権課題に「北朝鮮当局による拉致問題等」が加えられました。また、これを受け、平成23年5月に、拉致問題担当、総務、法務、文部科学の4大臣連名で、都道府県知事、都道府県教育委員会教育長に対して、拉致問題に関する理解促進及び人権教育・啓発の推進について協力依頼を通知しました。
 また、拉致問題対策本部が行っている、映画「めぐみ」及びアニメ「めぐみ」の上映会の学校における開催等について、文部科学省としてもこれらの機会の活用を促す通知を発出し、学校現場への周知に必要な協力を行いました。
 社会教育分野では、「社会教育による地域の教育力強化プロジェクト」の中で、人権教育など、行政だけではなく、市民やNPOなどの民間が主体となって課題に取り組むことが期待されるテーマを具体的に指定して、地域の課題解決に役立つ仕組みづくりのための実証的共同研究などを行い、地域が課題を解決する力の強化を図っています。

4 男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興

(1)男女共同参画社会の形成

 男女共同参画社会の実現は、21世紀の我が国の最重要課題であり、「男女共同参画社会基本法(平成11年6月公布・施行)」や同法に基づき策定された「男女共同参画基本計画」により、各府省において総合的かつ計画的な取組が進められています。
 平成22年12月17日には「第3次男女共同参画基本計画」が閣議決定され、本計画では32年までを見通した長期的な施策の方向性と、今後5年間に男女共同参画社会の実現に向けて政府一体に取り組む課題や具体的施策が記述されています。特に、第11分野では、「男女平等を推進する教育・学習」、「多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実」、「学校教育の分野における政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」において取組を一層充実させることとされています。
 また、科学技術分野において国際競争力を維持・強化し、多様な視点・発想を取り入れた研究活動を活性化させる上でも、女性研究者の活躍促進は重要です。このため、今回新たに第12分野「科学技術・学術分野における男女共同参画」が独立の分野とされました。
 文部科学省では、本計画により、引き続き男女平等を推進する教育・学習の充実などを図っていきます。

(2)教育・研究分野における男女共同参画に関する取組

 文部科学省では、男女共同参画社会の形成に向けて、学校・家庭・地域などあらゆる分野において男女平等を推進する教育・学習の充実などを図っています。
 学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じて、男女の平等や相互の理解・協力について適切に指導するとともに、男女が共に各人の生き方、能力、適性を考え、主体的に進路を選択する能力・態度を身に付けられるよう、進路指導に努めています。
 また、社会教育においては、男女が各人の個性と能力を十分に発揮し、社会のあらゆる分野に参画していくための学習機会の充実を図っています。女性が主体的に働き方・生き方を選択できるよう、結婚、妊娠、出産といったライフイベントを視野に入れ、長期的な視点で自らの人生設計を行うことを支援するため、「女性のライフプランニング支援総合推進事業」を実施するとともに、成果の普及を図りました(参照:男女共同参画社会の推進のためにhttp://danjogaku.mext.go.jp/)。

(3)国立女性教育会館における活動

 我が国唯一の女性教育のナショナルセンターである国立女性教育会館(NWEC(ヌエック))は、男女共同参画社会の形成の促進に資する女性教育の振興を担っており、「研修」「交流」「情報」「調査研究」の四つの機能を有機的に連携させながら事業を実施しています。
 平成23年度からは、男女共同参画・女性教育・家庭教育に関する、1.基幹的な指導者などの資質・能力の向上、2.喫緊の課題に関する学習プログラムなどの開発・普及、3.調査研究の成果や資料・情報の提供など、4.国内の関係機関・団体などとの連携協力の推進、5.国際貢献、連携協力の推進、6.多様な利用者への理解の促進、の6つの柱を掲げ事業を展開しています。
 また、平成23年度は、女性関連施設・地方公共団体・大学職員・女性団体のリーダーなどを対象とした研修・交流事業のほか、新規事業として女性アーカイブの具体的な保存技術や整理方法を学ぶ「女性情報アーキビスト養成研修(入門)」や災害復興とジェンダーをテーマに、アジア・太平洋地域における男女平等政策の現状を学び、男女共同参画の視点に基づいた災害復興の在り方について議論する「NWEC国際シンポジウム」を実施しました。その他、大学等との連携授業として、埼玉大学のテーマ教育プログラムや青森中央学院大学の公開講座、埼玉県私立短期大学協会との共催で「女子学生のためのキャリア形成講座」を実施しました。

5 児童虐待の防止

 近年、児童虐待の防止については、様々な施策の推進が図られていますが、痛ましい児童虐待は後を絶たず、児童相談所の相談対応件数も平成22年度には5万6千件(平成24年3月公表値)を超えるなど、児童虐待は依然として、早急に取り組むべき社会全体の課題となっています。
 このような状況の中、児童虐待の定義の拡大・明確化や早期発見を図るための通告義務の範囲の拡大などを内容として、平成16年に「児童虐待の防止等に関する法律」が改正されました。さらに、19年5月には、児童の安全確認などのための立入調査などの強化、保護者に対する面会、通信の制限の強化などを内容とした改正が行われました。
 児童虐待は、その未然防止、早期発見・早期対応や虐待を受けた児童生徒の支援について、家庭・学校・地域社会・関係機関が密接に連携する必要があります。そのため、文部科学省では、以前から都道府県などを通じて、学校教育関係者や社会教育関係者に対して児童相談所への通告義務などについて周知するほか、家庭教育支援チームの組織化などによる相談対応、保護者への学習機会の提供などの家庭教育支援などを行っています。
 平成17年度から18年度にかけては、「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を実施し、成果を取りまとめました(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06060513.htm)。この調査研究の成果を考慮し、教職員向けの研修モデル・プログラムの検討を行い、虐待を受けた子どもへの支援などについて教職員の対応スキルの向上を図るよう、研修教材を作成し、平成21年1月に配布しました。この研修教材については、学校現場においてより幅広い活用が図られるよう同年5月にCD-ROM化し、教育委員会に配布しています。
 また、養護教諭の児童虐待への対応の充実を図る一助とするため作成した「養護教諭のための児童虐待対応の手引」を平成19年12月に配布し、学校現場で活用されています。
 さらに、平成22年3月から、学校・教育委員会などに対し、学校から児童相談所等に情報提供する際の指針や、教職員に対する研修の充実などを含めた児童虐待の早期発見・早期対応、通告後の関係機関との連携等を図る上での留意点について周知を図っており、平成24年3月には、児童虐待の速やかな通告を一層推進するための留意事項を、都道府県等を通じて、学校教育関係者に周知しました。
 このほかにも、児童虐待の防止などのために必要な体制の整備に資するものとして、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの外部の専門家を活用した学校の教育相談体制の充実に努めています。

6 消費者教育の推進

 昨今、食の安全・安心を揺るがす事件や高齢者を狙った悪質商法、インターネットなどを通じた若い世代における消費者トラブルなどが増加しており、消費者教育は幅広い世代を対象に、様々な機会を捉えて実施することが必要になっています。
 さらに、これまでの消費者被害の現状にどのように対処するかという観点による教育のみならず、必要な情報を取捨選択し、適切な意思決定や消費行動を選択し、意見を表明し行動できる、自立した消費者を育成する教育が求められています。このような一連の教育は、新たな消費者被害の防止にとどまらず、他の教育分野や地域社会の基盤強化などにもつながることが期待されます。
 文部科学省では、平成22年3月に閣議決定された「消費者基本計画」を基本とし、学校教育や大学・社会教育の分野において消費者教育を推進しています。
 学校教育の分野においては、平成20年3月に小・中学校学習指導要領、21年3月に高等学校学習指導要領を改訂し、例えば、中学校の技術・家庭科において、消費者の基本的な権利と責任について指導することとするなど、消費者教育に関する内容の充実を図りました。また、23年度は、都道府県教育委員会などと協力し、教員の消費者教育に関する指導力向上のための講座を実施しました。
 大学・社会教育の分野においては、平成23年3月に策定した「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」の普及・啓発を図るため、指針のポイントを整理したパンフレットを作成し周知を図りました。また、家庭における消費者教育の推進を図るため、親子が参加するワークショップによる検証や教材作成などを実施しました。
 さらに、文部科学省の消費者教育に関する事業の成果を広く還元するとともに、消費者教育を実践する多様な主体が連携・協働して普及・啓発を図る場として、「消費者教育フェスタ」を平成24年1月に東京、2月に岐阜において開催し、特に、岐阜県での開催は小・中学校などを会場とし、保護者も参加する授業や企業、消費者団体などと連携した授業の実施、さらに地元関係者による連携・協働に関するシンポジウムの実施などを通じ、各地域での今後の消費者教育の実践に資する内容となりました。
 今後とも、消費者基本計画や改訂した学習指導要領などを考慮し、学校教育や社会教育における消費者教育を推進していきます。

7 環境教育・環境学習の推進

(1)環境教育の意義

 現在、温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化し、環境問題への対応が人類の生存と繁栄にとって緊急かつ重要な課題となっています。豊かな自然環境を守り、私たちの子孫に引き継いでいくためには、エネルギーの効率的な利用など環境への負荷が少なく持続可能な社会を構築することが大切です。そのためには、国民が様々な機会を通じて環境問題について学習し、自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが重要であり、特に、21世紀を担う子どもたちへの環境教育は極めて重要な意義を有しています。
 平成18年12月に改正した「教育基本法」では、教育の目標として、「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと」(第2条第4号)が新たに規定されています。文部科学省では、国民がその発達段階に応じて、あらゆる機会に環境の保全についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育や社会教育において環境教育の推進のために必要な施策に取り組んでいます。
 また、近年、環境保全活動や行政・企業・民間団体などの協働がますます重要になっていること、国連「持続可能な開発のための10年(ESD)」の動きなどを考慮し、平成23年6月に法改正が行われ、「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」が成立しており、文部科学省では同法による環境教育を推進していきます。

(2)環境教育・環境学習推進のための施策

 「教育基本法」の改正などを受けて、平成20年3月に小・中学校、21年3月に高等学校の学習指導要領を改訂し、社会科や理科、技術・家庭科など関連の深い教科を中心に環境教育に関する内容の充実を図りました。例えば、小学校の社会科では「節水や節電などの資源の有効な利用」(3・4学年)、中学校の理科では、「自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察」(第1分野、第2分野)、また、高等学校の家庭科では、「環境負荷の少ない生活、持続可能な社会を目指したライフスタイルを工夫し、主体的に行動する」(家庭基礎)と記述されています。
 また、文部科学省では、環境教育を一層推進するための施策を実施しています。まず、アメリカ合衆国の提唱による「環境のための地球規模の学習及び観測(GLOBE)計画」に参加する協力校の指定、環境教育の実践発表大会(全国環境学習フェア)の開催、環境省と連携・協力し、教員などを対象とした研修(環境教育リーダー研修)などを実施しています。
 さらに、「豊かな体験活動推進事業」において、児童の豊かな人間性や社会性を育むため、体験活動を推進しています。特に、平成20年度からは全国の小学校において、農山漁村における宿泊体験活動を推進するため、農林水産省・総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを支援しています(参照:第2部第2章第1節2(2))。
 学校施設においても、環境への負荷の低減を図るとともに、施設を教材として環境教育に活用して太陽光発電をはじめとする新エネルギー設備や断熱化の仕組み・効果を学習するなど、学校を地域への環境教育の発信拠点とするため、農林水産省、経済産業省及び環境省と連携して、エコスクール(環境を考慮した学校施設)の整備を推進しています(参照:第2部第10章第2節3(1))。
 社会教育においては、公民館などの社会教育施設を中心として、地域における社会教育関係団体などが連携し、環境保全などの地域の課題を解決していくための取組を支援し、地域の教育力の向上を図っています。
 また、次代を担う青少年の自然体験活動などを一層推進するため、関係団体の連携の下、その必要性・重要性を広く家庭や社会に発信するとともに、自然体験活動の指導者養成に取り組んでいます。さらに、国立青少年教育振興機構では、全国各地に所在する国立青少年教育施設の立地条件や特色を活(い)かした自然体験活動などの機会と場を年間約500万人に提供しているほか、民間団体が実施する自然体験活動などに対して「子どもゆめ基金」による助成を行い、青少年に対する環境教育を推進しています(参照:第2部第1章第4節2)。

8 読書活動の推進

 読書は、我々の人生をより豊かなものにするだけでなく、特に子どもにとっては、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことができないものです。
 文部科学省では、国民の間に広く読書活動についての関心と理解を深めるため、様々な施策を実施しています。

(1)地域における読書活動の推進

 「子どもの読書活動の推進に関する法律」(子どもの読書活動推進法)に基づき、平成20年に閣議決定された「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第2次)」(子どもの読書活動基本計画)では、国は、本計画期間(策定からおおむね5年間)中に50%以上の市町村において「子ども読書活動推進基本計画」(市町村推進計画)が策定されるよう、都道府県及び市町村の相談に応じることなどにより取組を促していくこととされています。文部科学省の調べでは、平成23年度末時点で、全都道府県と938市町村(全市町村の約54%)において市町村推進計画が策定されており、「子どもの読書活動基本計画」の目標は達成されたものの、より一層、子どもの読書活動を推進していくため、引き続き、地域の実情を踏まえつつ、市町村推進計画の策定を促していくこととしています。
 また、文部科学省では、「子どもの読書活動推進法」に基づき、子ども読書の日(4月23日)を記念して「子ども読書活動推進フォーラム」を開催(平成23年度は東日本大震災の影響により延期となり、10月に仙台において開催)し、文部科学大臣表彰の授与などを行うとともに、子どもの読書に関する情報をホームページなどにより提供しています。
 さらに、「地域の知の拠点」としての図書館が、住民にとってより利用しやすく、身近な施設となるための環境の整備を進めるほか、読書活動をはじめとする図書館の機能やサービスをより一層充実させるため、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の改正を進めています(参照:第2部第1章第3節2(2))。
 また、今日の国民の読書や読書環境の現状や課題を把握・分析し、読書への意識を高める効果的かつ効率的な取組の検討を行う「国民の読書推進に関する協力者会議」(座長:福原義春株式会社資生堂名誉会長)の報告書が平成23年9月に取りまとめられました。

4月23日は「子ども読書の日」

(2)学校における読書活動の推進

1.学校における読書活動の推進

 「子どもの読書活動基本計画(第2次)」では、学校における学習活動を通じた読書習慣の確立とともに、学校図書館が、児童生徒の自由な読書活動や読書指導の場としての「読書センター」の機能と、教育課程の展開に寄与する「学習情報センター」の機能を果たし、学校教育の中核的な役割を担うことが掲げられています。文部科学省の調べでは、平成22年5月現在、朝の読書活動を実施している公立学校の割合は、小学校で87.4%(20年88.7%)、中学校で81.9%(20年80.6%)、高等学校で32.7%(20年31.2%)となっています。また、ボランティアなどの協力を得ている学校や公共図書館との連携を実施している学校も増加しており、各学校において積極的な取組がなされています。

2.学校図書館の充実

 子どもの読書経験を充実させるためには、子どもの知的活動を推進し、多様な興味・関心に応える魅力的な学校図書館の環境整備が重要です。また、多様な教育活動を展開していくためにも、学校図書館を充実させていくことが求められています。
 公立義務教育諸学校における学校図書館の図書については、学校の規模に応じて整備すべき蔵書数の目標を定めた「学校図書館図書標準」の達成に向けた図書整備の経費として、平成19年度から23年度までの「学校図書館図書整備5か年計画」により、5年間で毎年約200億円、総額約1,000億円の地方財政措置が講じられました。文部科学省の調べでは、「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は、21年度末において、小学校で50.6%、中学校で42.7%であり、学校図書館図書の整備は必ずしも十分に進んでいるとは言えない状況であり、各教育委員会や学校において「学校図書館図書標準」の達成に向けた蔵書の計画的な整備が引き続き求められます。
 平成23年度には、「確かな学力の育成に係る実践的調査研究」のメニューの一つとして、児童生徒の自発的・主体的な学習活動の促進、教員のサポート機能の強化等を図るため、学校図書館の有効な活用方法に関する調査研究を実施しました。事業の成果は、文部科学省ホームページにて公開し、学校図書館の一層の充実を促していきます。

3.司書教諭の計画的養成・配置の促進

 学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導を行うなど、学校図書館を活用した教育活動や読書活動の中心的な役割を担う司書教諭は、学校図書館法上、12学級以上の学校には必ず置かなければならないこととされています。司書教諭が各学校でその役割を十分に果たしていくためには、校長のリーダーシップの下、司書教諭が中心となって教員、学校図書館担当職員、ボランティアなどと連携・協力し、それぞれの立場から学校図書館の機能の充実を図っていくことが必要です。
 文部科学省では、引き続き司書教諭の養成のための講習会を実施し、有資格者の養成に努めるとともに、司書教諭の配置が促進されるよう周知を図っていきます。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成24年09月 --