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第3章 大学等の多様な発展

Topic グローバル化社会の大学院教育(中央教育審議会答申)

 大学院教育の充実については、これまで、「新時代の大学院教育」(平成17年9月5日中央教育審議会答申)を踏まえた、「大学院教育振興施策要綱」(18年3月30日文部科学省)に基づき、研究科・専攻ごとの人材養成の目的等の公表を課す大学院設置基準の改正や、グローバルCOEプログラム、組織的な大学院教育改革推進プログラム等による支援を行ってまいりました。
 その後、約5年が経過することから、中央教育審議会では、大学院教育の実質化等の進捗状況や課題を検証し、今後の大学院教育の改善方策について審議を重ね、平成23年1月31日に答申「グローバル化社会の大学院教育-世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために-」を取りまとめました。
 本答申では、全体として、大学院教育の実質化に向けた取組が着実に進展しているものの、特に博士課程教育は指導教員の研究室への依存傾向が強く、産業界等との期待とのミスマッチやキャリアパスの問題から優秀な学生の後期課程への進学が減る傾向があり、国内外の社会の様々な分野で、質の保証された大学院修了者が活躍できるためには、大学院教育の強化、とりわけ博士課程教育の飛躍的な充実が急務であると提言されています。

図1 自然科学系の博士号取得者数の推移

図1 自然科学系の博士号取得者数の推移

図2 人口100万人当たりの博士号取得者(2005)

図2 人口100万人当たりの博士号取得者(2005)

図3 企業研究者に占める博士号取得者の割合(2006)

図3 企業研究者に占める博士号取得者の割合(2006)

 具体的には、

  1. コースワークから研究指導へ有機的につながる体系的な大学院教育の確立、学生の質を保証する組織的な教育・研究指導体制の確立、教育情報の公表による大学院教育の「可視化」、優れた学生が見通しを持って大学院で学ぶ環境の整備、産業界等との連携の強化と多様なキャリアパスの確立により、修得すべき知識・能力が明確な学位プログラムとしての大学院教育を確立していくこと
  2. コースワークや研究室ローテーション等を経て、独創的な研究活動を遂行する一貫した博士課程教育の確立、広く産学官にわたって国際社会で活躍し世界を牽けん引するリーダーを養成する「リーディング大学院」の形成、日本人・外国人学生の垣根を越えた交流を通じた協働教育等の推進により、課程を通じ一貫した博士課程教育を確立し、グローバルに活躍する高度な人材を養成していくこと

を求めています。
 国、大学、産業界等の関係者が本答申を踏まえつつ、大学院教育改革に一層積極的に取り組んでいくことが期待されます。

第3章 総論

 大学や短大、高等専門学校などの高等教育機関は、我が国の高度な教育と研究の中核を担っており、幅広い教養と、各学問分野の専門的知識・技能を有する人材の育成や高度な研究を通じて、広く社会経済の発展に貢献しています。

 文部科学省では、「事前審査」に相当する大学の設置認可制度と、「事後評価」に相当する認証評価制度により、大学の質の保証と教育力の向上を図るとともに、個性や特色に応じた大学づくりや国際競争力の強化などに取り組む各大学の改革を支援しています。また、大学が公的な機関としての責任を果たし、外部からの評価を通じて教育研究水準の向上を図ることができるよう、教育情報の積極的な公表を推進しています。

 大学院についても、日本の社会・経済・文化を牽けん引し、国際社会に通用する人材を育成する「知の拠点」として、研究者養成を中心とした研究指導に偏ることのない組織的・体系的な教育の充実を図るとともに、世界的な教育研究拠点の形成などに取り組んでいます。

 グローバル化が急速に進み世界規模で人材の流動が加速する中、我が国の大学においては、質保証を伴う大学間交流・連携や学生交流を促進するとともに、国際的に活躍できる人材の育成が急務となっています。文部科学省では、大学の国際化の取組と交流拠点の形成を支援し、また、「キャンパス・アジア」構想など相互単位認定の拡大等の質の高い交流の取組を進めています。このような取組の他、大学院については、特に成長分野等で世界を牽けん引する博士人材を養成する「リーディング大学院」構築の支援に取り組んでいきます。

 一方、我が国の様々な社会的課題に対応するための取組も進めています。現下の厳しい経済情勢を踏まえ、学ぶ意欲と能力のある学生が経済的理由によって学業を断念することがないよう、各大学が行う授業料減免措置を支援したり、奨学金事業を一層拡充したりしています。奨学金事業については、経済状況の変化等により奨学金の返還が困難な方々に対して返還の負担を軽減する減額返還や、返還期限を猶予する制度を設けるなど、適切な運用を図っています。

 また、大学による就職支援や、教育課程内外にわたり学生自身の就業力を強化する取組などを総合的に支援することとしています。経済団体・業界団体などに対して、採用活動の早期化・長期化に歯止めをかけるよう要請を行うなど、関係府省と連携しつつ大学等卒業予定者の支援に取り組んでいます。

 この他にも、医療人や法曹などの養成や、地域医療の中核としての大学病院の機能強化、大学入学者選抜の改善、高等専門学校の充実など、高等教育の多様な発展のための様々な取組を推進しています。

第1節 個性が輝く大学を目指して

1 高等教育改革の状況

 国際化・情報化などが著しく進展する知識基盤社会において、高等教育機関、とりわけ大学については、人材育成、学術・文化の継承と発展、地域の社会・産業への貢献など、その果たす役割がますます重要になっています。
 我が国の大学・短大への戦後の進学率は、昭和50年代から平成2年頃までほぼ横ばいだった期間を除くと上昇を続け、現在は大学・短大あわせて56.8パーセント、高等専門学校、専門学校を含めれば79.7パーセントに達しています(図表2-3-1)。このような中、社会人や留学生も含めて、様々な背景を持つ学生がともに学ぶ環境を整備することは、一人ひとりの者が、生涯を通じて学修を継続する力を身につけるためにも重要な課題です。

図表2-3-1 18歳人口、進学率等の推移

図表2-3-1 18歳人口、進学率等の推移

 今日の大学は、学生や社会から期待されるニーズの多様化に積極的に対応しつつ、教育の質を確実に保証・向上させていくことが求められています。また、グローバル化が進展する中で、諸外国の大学や大学団体において教育の質の保証・向上に関する取組が進展しています。我が国においても、そうした流れを踏まえながら、大学の教育と制度を不断に検証していくことが求められています。
 これまで大学審議会(昭和62年~平成12年)、とそれに続く大学分科会(平成13年~)は、大学設置基準の大綱化、自己点検評価の導入、専門職大学院制度の創設、設置認可の弾力化と認証評価制度の導入などを提言してきており、各大学で、教育の充実やそれを支える組織運営のための改革が進展しています。大学が、教育の質の保証の観点から、社会の要請に十分に応えていくとともに、そうした取組を積極的に発信していくことが重要です。
 現在、中央教育審議会の大学分科会では、平成20年9月に「中長期的な大学教育の在り方について」の諮問を受けて、多岐にわたる事項に関し総合的な審議を行っています。大学設置基準等の改正に関し、具体的な提言等に至ったものについては、大学を取り巻く状況等に速やかに対応するため、以下のとおり、その改正を随時答申しています。

  • 22年5月教育情報の公表の促進のため大学設置基準等の改正を答申
  • 22年6月国際連合大学が大学院の課程を開設することを受けて、我が国の大学院入学資格との接続や、大学院との単位互換を可能とする大学院設置基準等の改正を答申

 23年1月には、大学院教育に関して、17年の答申「新時代の大学院教育」後の状況を踏まえた検討を行い、その結果を答申「グローバル化社会の大学院教育」として取りまとめています。また、大学分科会での審議状況を「第5期・中央教育審議会大学分科会の審議経過と更に検討すべき(参照:トピック)課題について」として整理しており、その中では今後検討すべき課題として

(1)教育の質の保証と向上
(2)機能別分化と大学間連携の促進
(3)教育研究機能の充実のための組織・経営の基盤強化

を掲げているところです(図表2-3-2)。

 これらの課題については、本年2月に発足した第6期の大学分科会で震災後の人材育成を踏まえ、検討が行われています。文部科学省では上記の答申や提言を踏まえて、制度改正や予算措置などを講じています。

図表2-3-2 審議経過と更に検討すべき課題

図表2-3-2 審議経過と更に検討すべき課題

2 大学の国際化と国際競争力の向上

(1)卓越した教育研究拠点の形成

 グローバル化が一層進展し、国際競争が激化する今後の社会においては、国際競争力のある大学づくりをさらに推進し、世界に伍ごする教育研究を積極的に展開することが求められています。
 このため、文部科学省では、「新時代の大学院教育」(平成17年9月中央教育審議会答申)や「21世紀COEプログラム」の成果などを踏まえ、我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化するため、平成19年度より、若手研究者の育成機能の強化や拠点の国際性をより重視した「グローバルCOEプログラム」を実施しており、平成21年度までに41大学140拠点を採択し、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援しています。
 また、平成22年度には、平成20年度採択68拠点の中間評価を実施しました。

(2)国公私立大学を通じた大学教育改革の支援

 個性輝く大学づくり、国際競争力の強化などが求められる中、大学における教育の質の充実や世界で活躍し得る人材の養成は、極めて重要な課題であり、各大学における大学教育改革の取組を一層促進していく必要があります。
 このため、文部科学省では、以下のプログラムを実施し、国公私立大学を通じた競争的環境の下で、個性・特色ある優れた取組を選定し、重点的な支援を行うとともに、社会に広く情報提供することにより、大学教育改革の促進を図っています。

1.大学教育の質保証のための主体的な取組への支援

 大学教育・学生支援推進事業(平成21年度から実施)
 大学等における学士力の確保や教育力向上、就職支援態勢の強化を図るのための取組の中から、達成目標を明確にした効果が見込まれる取組を支援しています(22年度実績:(大学教育推進プログラム)申請298件、選定38件/(学生支援推進プログラム)申請450件、選定400件/(就職支援推進プログラム)申請100件、選定65件。

2.社会的ニーズに対応する人材養成と大学の多様な機能の展開

 社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム(平成19年度から22年度まで実施)
 大学、短期大学、高等専門学校において、社会人の再就職やキャリアアップ等に資する短期間の実践的教育プログラムの開発・普及を行う優れた取組を支援しました(22年度実績:継続31件)。

3.大学院教育の抜本的強化

 組織的な大学院教育改革推進プログラム(平成19年度から実施)
 産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を養成するため、明確な人材養成目的に沿った組織的・体系的なカリキュラムの構築や、コースワークの改善など大学院教育の充実・強化を図るための優れた取組を支援しており、平成21年度までに91大学、221件を採択しました。
 また、平成22年度には、19年度採択125件の事後評価を実施しました。

4.大学間のコンソーシアムによる優れた教育の実現

 大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(平成20年度から実施)
 国公私立大学間の連携を推進し、教育研究資源を有効活用することにより、教育研究水準の高度化、教育活動の質保証、個性・特色の明確化に伴う機能別分化の促進と相互補完等とともに、地域と一体となった人材育成の推進を図る取組を支援しています(22年度実績:継続92件)。

5.医師不足対策と地域医療を支える大学病院の機能強化

(ア)大学病院間の相互連携による優れた専門医等の養成(平成20年度から実施)
 複数の大学病院がそれぞれの得意分野による相互補完を図りつつ緊密に連携し、質の高い専門医及び臨床研究者を養成するための優れた取組を支援しています(22年度実績:継続21件)。

(イ)がんプロフェッショナル養成プラン(平成19年度から実施)
 がん医療の担い手となる高度な知識・技術を持つがん専門医師など、がんに特化した医療人を養成する優れた取組を支援しています(19年度実績:申請22件、選定18件)(平成23年度まで継続支援)。

(ウ)周産期医療に関わる専門的スタッフの養成(平成21年度から実施)及び周産期対策のための医療環境の整備(平成21年度から実施)
 大学病院における周産期医療体制の強化を図るため、若手医師の教育環境整備や女性医師の勤務継続・復帰支援(22年度実績:継続15件、新規3件)、助産師養成環境の整備(22年度実績:新規4件)、併せてNICU(新生児集中治療室)などの医療環境整備(22年度実績:新規3件(補正予算))を支援しています。

(エ)看護師の人材養成システムの確立(平成21年度から実施)
 大学病院と自大学看護学部が連携し、体系立てられた看護職の教育体制を構築させるための優れた取組を支援しています(22年度実績:継続8件、新規4件)。

(オ)大学病院における医師等の勤務環境の改善のための人員の雇用(平成22年度から実施)
 医師の業務負担を軽減し、医師が本来の診療業務に専念できる環境を整えるため、医師事務作業補助者(医療クラーク)等を雇用し、関係職種間の役割分担を推進する取組を支援しています。(22年度実績:新規79件)。

6.産学連携による高度人材育成の充実

(ア)産学連携による実践型人材育成事業(平成17年度から22年度まで実施)
 多様な社会の要請に対応できる人材や、新たな産業を創出する創造性豊かな人材など、実践的な人材を育成するため、産学連携による実践的な環境下での教育プログラムの開発・実施を支援しました(22年度実績:新規57件、継続22件)。

(イ)先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム(平成18年度から22年度まで実施)
 大学間及び産学の壁を越えて潜在力を結集し、教育内容・体制を強化することにより、世界一安心できるIT社会の実現を担う、情報セキュリティ分野における世界最高水準の人材を育成する教育拠点の形成を支援しました(22年度:継続支援2件)。

(3)大学の国際化

 社会のグローバル化が急速に進む中、アジア地域を中心として我が国と海外との経済の一体化が進むとともに、世界規模で人材の流動性が高まっています。このような状況下で、我が国が社会・経済を発展させていくため、人材の育成に注力していくことは不可欠です。国際的には、高等教育の質保証を図るとともに、欧州における「欧州高等教育圏」構築の取組に見られるように、国境を越えた学生交流を活発化させ、域内の連携強化を図る取組も進んでいます。
 大学の国際化を通じて、異なる文化的背景を持つ学生、教員が共に学び教えることにより、例えば日本人学生の学習意欲の向上など、教育研究の活性化が期待されます。また、キャンパス内で多様な文化的背景を持つ学生と交流することは、国際理解の推進にもつながります。こうした環境を通じて、国際的に通用する専門知識とグローバルなコミュニケーション・スキルを持つ人材の育成が今求められています。
 中央教育審議会大学分科会大学グローバル化検討ワーキンググループにおいては、大学の国際化の推進に向け、特に我が国との結び付きの強い東アジア地域を見据えた今後の人材育成の在り方について、「東アジア地域を見据えたグローバル人材育成の考え方-質の保証を伴った大学間交流推進の重要性-」を取りまとめました。また、ダブル・ディグリー等の国際的な教育連携の推進に関する課題については、引き続き議論が行われています。
 最近の取組として、東アジア地域では、第2回日中韓サミット(平成21年10月)での合意に基づき、地理的に近く制度面で比較的共通性のある日中韓の3国で質の保証を伴った大学間交流の枠組みを形成することについて議論しています。22年4月に東京で開催された第1回日中韓大学間交流・連携推進会議において、交流促進に係る構想を「キャンパス・アジア」と名づけるとともに、同年12月に中国・北京で開催された第2回会議においては、日中韓での大学間交流を促進するための単位互換や成績評価等に関する3か国間のガイドラインの大筋合意、及び、交流パイロットプログラムの23年中の出来る限り早期の開始について合意を得ました。23年9月には、東アジア地域の政府・質保証機関などの代表者の参加を得て、「東アジア高等教育質保証国際シンポジウム」を開催し、アジアにおける質の保証を伴った大学間交流の推進について議論を深める予定です。今後も、日中韓でのパイロットプログラムを実施するとともに、広くアジア地域とも交流を促進する取組を進めていくこととしています。
 また、米国との交流については、最近、日本から米国への留学生が減少傾向にある中、平成22年11月の日米首脳会談において、日本側よりファクト・シート「日米同盟深化のための日米交流強化」を発出し、菅総理から日米を含む大学間連携や学生の双方向交流を推進する旨を表明しました。こうした状況も踏まえ、文部科学省としては、国際的な大学連携等に取り組んでいくこととしています。
 文部科学省においては、国際化に取り組む大学への重点的な支援を行うため、平成23年度の新たな事業として、「キャンパス・アジア」構想の牽けん引役となる交流拠点の形成や米国等の大学との協働教育プログラム開発等を支援する「大学の世界展開力強化事業」を開始することとしています。また、22年度まで実施された旧国際化拠点整備事業については、事業仕分けの結果を踏まえ、「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業」として組み立て直されており、国際化の拠点としての総合的な体制整備、大学間のネットワーク化、産業界との連携を通じて、我が国の大学の国際化を推進することとしています。
 このほか、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)及び経済協力開発機構(OECD)においては、各国の質保証制度を前提としながら、高等教育と国際的な流動性の向上を図るためのガイドラインが策定されており、各国において認定された高等教育機関についての情報提供を図るため、ユネスコによるポータルサイトの運用等の取組が行われています。我が国は国際的な質保証の動きに積極的に参画する中で、国際的な枠組みづくりを主導するとともに、国内の大学の国際化を進め、質の保証を伴った大学間交流・連携や学生交流を促進していくこととしています。

3 教育内容・方法の改善・充実

 平成20年12月にとりまとめられた中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」では、各大学が教学経営において「学位授与の方針」「教育課程編成・実施の方針」「入学者受入れの方針」を明確に示し、学士課程教育を組織的・総合的に運用するとともに、教職員の職能開発や質保証システムを強化することで、学士課程教育の全体の質を保証する仕組みを実質化することを提言しています。現在中央教育審議会では、中長期的な大学教育の在り方についての審議の中で、大学教育の質保証システムに関する議論が引き続き行われています。
 これらを踏まえ、各大学における教育内容・方法の改善・充実に当たっては、学位授与の方針や教育研究上の目的を定め、それらと整合性・一貫性をもった、教育課程編成・実施の方針を明確化する必要があります。
 具体的には、以下のような取組が重要です。

  1. 体系的な教育課程の編成
  2. 単位制度の実質化
  3. 教育方法の改善
  4. 厳格な成績評価
  5. 教員の職能開発
  6. 大学関係団体による自主的・自律的な質保証

 また、平成22年6月には学校教育法施行規則等を改正し、大学等が公的な教育機関として社会に対する説明責任を果たすという観点から、公表すべき必要な教育情報を法令上明確化するとともに、学位を与える課程に関する教育情報の積極的な公表を促進しました。このことを通じ、各大学が自らのミッション(使命)を明らかにし、特色ある教育活動を展開していくよう、取組を促していきます。

(公表項目例)

  • 大学の教育研究上の目的
  • 教員組織、教員数、各教員が有する学位及び業績
  • 入学者数、学生数、卒業者数、進学者数、就職者数等
  • 授業科目や年間授業計画、成績評価・修了認定基準
  • 学生の教育研究環境(キャンパス)
  • 授業料・入学料、修学支援等

4 社会に開かれた高等教育

(1)社会人受入れへの対応

 「教育振興基本計画」(平成20年7月閣議決定)においては、誰もが生涯のいつでも必要な時に学び、また、何度でも新たな挑戦を行うことができる社会の実現に向けて、大学等において社会人をはじめとする幅広い学習者の要請に対応するための取組が求められています。このため、文部科学省では、社会人の受入れを一層促進できるよう以下のように制度の弾力化などに取り組んできており、職業を有しながら大学で学ぶことを希望する人々の学習機会が拡大しています。

図表2-3-3 社会人受入れの推進に関する制度等の概要と実績(主なもの)
制度等の名称 制度等の概要 実績
長期履修生制度 職業を有しているなどの事情に応じ、修業年限を超えて計画的に教育課程を履修し卒業できる制度 256大学が導入(平成20年)
科目等履修生制度 正規の学生でなくても、大学等の授業科目を履修して単位を修得することができる制度 718大学が導入(平成20年)
夜間大学院 夜間において教育を行う大学院 26大学が設置(平成21年)
通信制大学院 通信教育を行う大学院 26大学が設置
サテライトキャンパス 大学の本校に継続的に通うことが困難な者が教育を受けることができる本校以外のキャンパス 173大学、25短大が設置

(出典)文部科学省調べ

 また、平成19年度には学校教育法を改正し、大学の学生以外の者に大学等で高度かつ専門的な内容を体系的に学べる機会を提供するとともに大学等の積極的な社会貢献を促進するため、大学等が社会人など学生以外の者を対象とした一定のまとまりのある学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し、その修了者に対して履修証明書(サーティフィケート)を交付できる制度(履修証明制度)を創設しました。現在、離職中の保育士らが新しい能力を身につけて現場に復帰できるよう支援する「HPSJapan養成教育プロジェクト」を開設した静岡県立短期大学や、国際ビジネス法務に関し、最新の海外の判例の購読や国際ビジネス紛争を法的に解決する知見の修得を目指す「国際ビジネス法務塾―国際ビジネス法・ビジネス英語・交渉力のスキルアップのために―」を開設した帝塚山大学などをはじめ、様々な大学等が積極的に履修証明プログラムの開設・実施に取り組んでおり、平成20年度末現在、39大学で48プログラムが実施されています。
 さらに、文部科学省では、平成19年度から「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」を実施しており、例えば、出産や育児等の理由により離職している女性医師の再就業を支援する取組や、定年退職を迎える大量の団塊世代や子育てを終えた主婦のコミュニティ・ビジネスへの参画の場を創造する取組などを実施しました。

(2)産業界との連携

 社会、経済が高度化、複雑化し、グローバル化が一層進展する中で、人材の育成・活用のために産業界と大学等の連携・協力が求められています。しかし、人材育成に関する産学のミスマッチが指摘されており、産学双方における人材育成に関する課題を共有化し、その解決に向けた取組が求められています。
 このため、文部科学省と経済産業省では、平成19年10月に大学界と産業界の人材育成における対話と行動を行う場として「産学人材育成パートナーシップ」を設置し、これまで4回の全体会議を開催しています。平成20年7月には中間とりまとめを公表し、その中で15の課題を整理し、各分科会において産学連携による教育カリキュラム改革やインターンシップの充実等を推進しています。また、平成22年4月には、グローバル人材に求められる能力や育成への課題等を提言する報告書を取りまとめました。
 また、文部科学省では、産学連携による実践的な環境下で、1.大学院における質の高い長期インターンシップの実施による知識基盤社会を多様に支える高度専門人材の育成、2.ものづくり過程の全体を見渡し技術の目利きをすることのできる技術者の育成、3.サービスにおいて生産性の向上やイノベーション創出に寄与し得る資質をもった人材の育成、4.成長分野等で求められる中堅技術者等の専門人材の育成などの教育プログラム開発等をする「産学連携による実践型人材育成事業」を実施したところです。

第2節 高等教育の更なる発展に向けて

1 大学の質の保証と向上のための制度改革の取組

(1)設置認可制度の的確な運用

 大学の設置や組織改編は、大学の質の国際的な通用性の確保や学生保護のため、設置審査などの所定の手続を経て行われます。
 文部科学大臣は大学の設置などの申請を受けると、申請内容が大学設置基準などの法令に適合しているかどうかについて、学識経験者などからなる大学設置・学校法人審議会に諮問し、教学面や財政計画・管理運営面を審査します。審議会による審査を経た後、各種法令などの基準に適合していると認めたものについて、文部科学大臣が認可を行います。
 他方、大学の組織改編を機動的に行うことができるよう、文部科学省では、平成15年度から、授与する学位の種類や分野を変更しない学部・学科などについて、原則として届出による設置を可能とするなど、設置認可制度の大幅な弾力化を進めました。その結果、多くの大学が各大学の理念や目的に応じ、様々な学部等を設置するなど、魅力ある大学づくりを積極的に行っています(参照:本章第4節1(1))。
 こうした組織改編が容易になった一方で、一部の大学から準備が不足していたり、大学の設置に関する基本的理解を欠いたりする設置申請や届出がなされた結果、設置認可申請の取下げや審査の継続(保留)、不認可となった件数が以前と比べ増加するとともに、当初の計画策定が甘かったため、開設後数年も経たないうちに再び届出により新たな学部などに転換するなど、安易な組織改編と言わざるを得ない事例も出てきています。
 文部科学省では、新しく設置された大学などが最初に卒業生を送り出す年度(完成年度)まで、設置計画履行状況調査(アフターケア)として、毎年授業科目の開設状況や教員組織の整備状況などの報告を求め、書面、面接又は実地により調査を行っています。その結果、特に課題が見られる大学に対しては、各大学の教育水準の維持・向上に資するよう、留意事項を付したり、助言を行ったりして、大学に対して主体的な改善を促しています。
 各大学においては、入学する学生のことを第一に考え、十分に将来の見通しが立てられた大学などの設置の認可申請や届出をすることが求められています。

(2)認証評価制度

 平成16年度に始まった第三者評価制度により、学校教育法第109条に基づいて、国公私の全ての大学、短期大学、高等専門学校は、7年以内に1回(専門職大学院は5年以内に1回)、文部科学大臣の認証を受けた評価機関(認証評価機関)による第三者評価(認証評価)を受けることが義務付けられています。これは、国による事前規制を最小限のものとし、設置後の大学等の組織運営や教育研究活動等の状況を定期的に事後確認する体制を整備する観点から導入されたものです。
 また、認証評価制度は、1.各認証評価機関が定める評価基準に従って評価を実施すること、2.大学が自ら認証評価機関を選択して評価を受けることから、大学等の自主性・自律性に配慮しつつ、各大学等の教育研究の特性に応じて適切に評価される仕組みになっています。
 評価機関を認証する場合には、教育に関する有識者の意見を踏まえつつ適切に認証を行うことが必要であることから、文部科学大臣は、学校教育法第112条第1号の規定に基づき、中央教育審議会へ諮問することとされており、平成23年2月までに11機関が認証されています。
 これらの機関は平成21年度末までに、大学548大学、短期大学263大学、高等専門学校58校、法科大学院74専攻、会計専門職大学院7専攻、経営系専門職大学院25専攻、助産専門職大学院1専攻、臨床心理専門職大学院1専攻の認証評価を行い、その結果を公表しています。

(3)教育の高度化に向けた大学間連携

 平成21年8月に学校教育法施行規則を改正し、「教育関係共同利用拠点制度」を創設しました。この制度は、大学が連携して行う共同利用の取組のうち特に優れたものを文部科学大臣が認定することにより、拠点大学が有する人的・物的資源を大学等が共同で利用することを促し、大学教育全体として多様かつ高度な教育を展開していくことを可能とするものです。平成22年度は、日本語教育センター、練習船、教職員の組織的な研修等の実施機関(FD・SDセンター)、農場の21拠点を「教育関係共同利用拠点」として認定しました。
 これらの施策によって、大学は「知の拠点」として、各地域の活性化へのより一層の貢献や、国際的な大学間競争の中で新たな学際的・先端的領域への先導的な対応が可能となります。また、教育研究資源を有効に活用することで、更に質の高い教育研究が提供されることが期待されています。

2 理工系人材の養成

 社会の発展には技術創造・技術革新をもたらす人材が必要とされており、近年では、伝統的な技術分野から例えば、ハードとソフトが融合したメカトロニクスや機能材料、感性価値創造などの新しい技術分野の需要が生まれています。このように、新しい社会の変化に対応できる能力を持った質の高い実践的技術者の育成が強く求められているため、文部科学省では、平成21年6月から「大学における実践的な技術者教育のあり方に関する協力者会議」を開催し、22年6月には実践的な技術者教育の在り方について、学士課程段階における学修成果指標や分野別到達目標の策定等を提言する報告書を取りまとめるなど、大学における実践的な技術者教育の推進に取り組んでいます。また、この提言における「求められる技術者像」に至る技術者のキャリアパスを踏まえた学習成果評価基準、大学における技術者教育の「分野別の到達目標」の設定に関する調査研究を行っているところです。

3 医療人の養成

 医師不足による地域医療の崩壊、高齢化による疾病構造の変化、患者ニーズの多様化、生命科学や医療技術の急速な進歩などを背景として、国民の期待に応える「良き医療人」の養成が一層重要となっています。文部科学省としても、医療人の養成を担う各大学と協力しながら、様々な取組を進めています。

(1)医学教育の改善・充実

1.医師不足への対応

 医師不足の解消が喫緊の課題であることから、平成20年度より医学部入学定員の増員を行い、23年度は、前年度と同様の枠組みにより、ア)都道府県が地域医療に将来従事することを返還免除の条件とする奨学金を活用し、地域医療を担う医師の養成・確保に一貫して取組む定員増、イ)複数の大学と連携し研究医養成の拠点を形成し、優れた研究医養成・確保に取組む定員増、ウ)歯学部入学定員の削減を行う大学の特例による定員増により、8,923人まで増員を行いました(19年度比で1,298人増)。

図表2-3-4 医学部医学科における入学定員(募集人員)の推移

図表2-3-4 医学部医学科における入学定員(募集人員)の推移

 また、これまでの増員について検証・評価を行うとともに、今後の医学部入学定員の在り方等について検討するため、22年12月から「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」を開催し、議論しています。

2.医学教育の質的改善

 医師については、人間性豊かで高度な臨床能力を持ち、患者中心の医療を実践できる医療人として、その養成に大きな期待が寄せられています。各大学においては、医学生が卒業までに最低限学ぶべき教育内容を精選して作成された「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づきカリキュラム改革を行うなど、個々の教育理念に応じた特色ある取組が進められています。
 医学教育の更なる改善に向けては、卒後臨床研修制度の見直しを踏まえ、平成21年5月に取りまとめられた「医学教育カリキュラム検討会」の提言を踏まえ、22年6月より、基本的診療能力の確実な習得、地域の医療を担う意欲・使命感の向上、基礎と臨床の有機的連携による研究マインドの涵養などの観点から、大学の関係者等からなる専門の委員会においてモデル・コア・カリキュラムの改訂に向けた検討が行われ、23年3月末に改訂版のモデル・コア・カリキュラムを公表しました。

(2)歯学教育の改善・充実

 歯学教育に関しては、確かな臨床能力を備えた歯科医師を養成するため、平成20年7月から「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」を開催し、21年1月には、ア)歯科医師として必要な臨床能力の確保、イ)優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施、ウ)歯科医師の社会的需要を見据えた優れた入学者の確保、エ)未来の歯科医療を拓ひらく研究者の養成の観点からなる第1次報告がとりまとめられました。第1次報告を踏まえ、22年6月より、大学の関係者等からなる専門の委員会において「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に向けた検討が行われ、23年3月末に改訂版のモデル・コア・カリキュラムを公表しました。また、第1次報告のフォローアップを実施するため、22年9月に「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議フォローアップ小委員会」を設置し、各大学の歯学教育改善方針等を把握するとともに、それを踏まえた具体的な改善を促進しています。

(3)薬学教育の改善・充実

 医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴い、医療の担い手として活躍する薬剤師や薬学の研究者など、多様な分野に進む人材の育成が求められています。こうした中、薬学教育においては、平成18年から6年制の教育が始まり、22年度からは、社会のニーズに応える薬剤師を育成するために必須の内容について作成された「薬学教育モデル・コアカリキュラム」に基づく5年次からの実務実習(病院・薬局それぞれにおいて約11週間)が開始されました。実務実習の円滑な実施に向けては、各大学において、実務実習事前学習や薬学共用試験の実施、実習施設との緊密な連携による実習指導体制の構築などの取組が行われています。また、薬学教育の更なる改革を推進するため、「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」を開催し、21年3月には、薬学教育における大学院教育の在り方に関する第1次報告が取りまとめられました。今後は、社会的要請を踏まえた教育内容や質保証を図るため、学士課程における薬学教育の在り方等について、引き続き議論を行います。

(4)看護師等医療技術者教育の改善・充実

 看護師など医療技術者の養成に関しては、質の高い医療技術者、教育者、研究者の養成を目的とした大学・大学院が増えています。
 良質な看護等を国民に提供することの必要性に鑑み、保健師・助産師の国家試験受験資格取得の要件について、修業年限を6ヶ月以上から1年以上にすることなどを内容とする改正保健師助産師看護師法が平成22年4月から施行されました。法改正を踏まえ、保健師・助産師の実践能力の強化に向けて教育内容の充実を図るための検討を行い、23年1月には「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」を改正しました。
 また、大学が養成する医療人材に大きな期待が寄せられる一方で、保健師・助産師・看護師を養成する大学数の急激な増加により実習場所の確保が困難になることなどが懸念されています。このため、21年3月から大学における看護系人材養成の在り方について有識者による検討を行い、23年3月には、学士課程修了時の到達目標の策定などを内容とする最終報告が取りまとめられました。今後も、看護学教育の質保証体制の改善に向けて、引き続き検討を行います。

(5)がん医療への取組

 がんは、我が国の死亡率第1位の疾患である一方、放射線療法及び化学療法など複数の治療法を組み合わせたがん治療ができる専門家が全国的に少なく、その育成が急務とされています。また、近年の高度化したがん医療の推進は、医師のみにより可能なものではなく、高度ながん医療に習熟した看護師、薬剤師、その他の医療技術者などが参画し、チームとして機能することが何より重要です。
 そのため、平成19年度から、大学と大学病院が連携して、優れたがん専門家を養成するための横断的な教育プログラムを構築する「がんプロフェッショナル養成プラン」を実施しており、22年度現在、継続18件(94大学参画)の取組を支援しています。

(6)大学病院の充実

 大学附属病院は、学生・研修医等の教育や先端的な臨床研究を行うとともに、高度医療や採算性が低い医療など、診療面でも重要な役割を果たしています。
 平成16年度から国立大学は法人化され、その附属病院に対して、自主・自律的な運営による効率的な経営を求めるとともに、教育・研究・診療機能の維持・充実の観点から運営費交付金等の財政措置を行っています。23年度予算においては、地域医療における高度医療拠点としての教育・研究・診療機能の強化を図るため、国立大学附属病院の債務負担軽減策を拡充するとともに、医療イノベーションの中心的役割を担う国立大学附属病院が行う取組を支援する経費を措置しています。
 また、この他にも、国公私立大学を通じて、以下のような課題に対しても重点的に取り組んでいます。

1.高度医療人材養成機能の充実

 深刻な医師不足問題や周産期等の医療提供体制の構築は喫緊の課題となっています。そこで、国民が安心・安全な医療を享受できる環境を確保し、医療の高度化等に対応していくために、我が国全体の医療専門職(優れた専門医・看護師等)を養成する教育体制の充実に取り組んでいます。

2.大学病院の機能強化

 大学病院における医師等の厳しい勤務環境が深刻な問題となっています。そこで、医師以外の医療補助者等の補充による関係職種間の役割分担の促進、看護師の技術向上を図り、医師等の業務軽減を含む勤務環境の改善に取り組んでいます。

第3節 大学入試の改善

 各大学では、大学進学希望者の能力・適性などの多様化や高校教育にも配慮しつつ、大学入試の改善に取り組むことが求められています。
 これまでにも中央教育審議会などにおいて大学入試の改善に関する様々な提言が行われてきました。これらの提言を踏まえ、文部科学省では大学入試の改善に向けた様々な施策に取り組んでいます。

1 各大学の入学者選抜

 これまで各大学では、過度の受験競争の緩和のため、中央教育審議会の提言などを踏まえ、面接・小論文などの活用による評価尺度の多元化や、アドミッション・オフィス(AO)入試や推薦入試の導入・拡大といった入試方法の多様化が進められてきました。この結果、各大学において入試方法の多様化が進み、推薦・AO入試など必ずしも学力試験を課さない入試方法で入学する学生の割合が上昇しました(全体の約44パーセント)。一方、少子化の進展とも相まって、基礎学力の担保に課題が生じてきていることから、いずれの入試方法でも学力検査や調査書の利用など学力把握措置を講ずることとするなど、入試方法の改善を進めています(副大臣通知を平成22年5月21日に発出)。

2 大学入試センター試験

 大学入試センター試験は、大学入学志願者の高等学校段階における基礎的な学習の達成度を判定するため、各大学が大学入試センターと共同して平成2年度入試より実施している試験です。各大学は、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)と創意工夫に基づき、利用する教科・科目を自由に定めることができます。(2011(平成23)年は665大学、163短期大学が利用)
 2012(平成24)年1月に実施される試験からは「地理歴史・公民」、「理科」における科目選択の弾力化などが行われる予定です。

3 高大接続の改善

 いわゆる大学全入時代を迎え、入試の選抜機能が従来ほどは期待できなくなっている中、大学では、入学者の学力水準の担保が、高等学校でも、大学入試による大学進学希望者の学習意欲の喚起が課題になってきています。
 このため、高校・大学の関係者の間で、高校段階の学力を客観的に把握し、高等学校の指導改善や大学の初年次教育、大学入試などに活用可能な「高大接続テスト(仮称)」に関する協議・研究が行われ、平成22年9月に報告書がとりまとめられました。

第4節 高等教育機関の多様な展開

1 国公私立大学の充実

(1)国公私立大の整備充実

【国立大学】

 国立大学は、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、重要な役割を果たしています。
 平成16年には、大学の自主性・自律性を向上させ、教育研究活動を活性化する観点から、従前は国の組織の一部であった国立大学が法人化されました。これは国立大学を国の人事や予算等の枠組みから外し、大学自らの責任と判断で運営できるよう、その裁量を大幅に拡大するためのものです。

1.法人化後の国立大学法人の取組について

 法人化後、各国立大学法人は、その個性や特色を生かした取組を積極的に展開しています。
 学長のリーダーシップによる戦略的・重点的な資源配分を実施するため、全ての法人で学長裁量経費が設定されるとともに、教員の任期制も平成12年度では44大学516人であったのが、平成20年度では83大学14,287人と約28倍に拡大しています。
 教育の質の向上や開かれた大学に向けた取組も進んでおり、学部における厳格な成績評価(GPA制度)の実施を進めている国立大学の割合は平成12年度から平成20年度にかけて7パーセントから62パーセントに増加しており、また、教員の教育面の業績評価を実施している国立大学の割合も平成12年度から平成20年度にかけて28パーセントから90パーセントへと増加しています。大学院における社会人入学者数も平成12年度には4,641人であったのが、平成20年度には8,016人まで増加しています。
 産学連携も積極的に推進しており、共同研究は平成13年度から21年度にかけて、5,264件(112億円)から1万4,098件(347億円)に、受託研究は13年度から21年度にかけて5,701件(351億円)から1万1,736件(1,320億円)に増加しています。また、特許についても、13年度から21年度で、発明届出は2.3倍、実施料収入は3.1倍に増加しています。
 また、経営改革の取組例として、山梨大学では、教育・研究を推進するための総合的な情報戦略の立案・実施のため、教務情報部門や医療情報部門を含む情報関連組織を一元化して総合情報戦略機構を新設するとともに、機構を総括する部長に民間経験を有する専任の特任教授を登用しています。また、北海道大学では、運営費交付金の一定割合並びに間接経費の50パーセント及び寄附金の5パーセントを全学資金(重点配分経費)として留保し、奨学金等の配分や大学の重点事業等に配分しています。また、博士号学位授与率等を評価基準とする傾斜配分を実施し、研究科等における教育研究の活性度や改善のための取組の進捗状況に関する評価を予算配分に反映するなど、各法人で様々な経営改革に向けた取組がなされています。

2.大学・大学院の整備充実

 平成22年度では、筑波技術大学において、聴覚・視覚障害者のための大学院として、産業技術や医療技術に関するより高度で専門的な知識・技術等を備えた専門技術者・研究者・指導者を養成するとともに、地域社会や職場において聴覚・視覚障害者のリーダーとして活躍できる人材を育成するため、新たに技術科学研究科(産業技術学専攻、保健科学専攻)を設置しました。他、4大学において5研究科等(医学獣医学総合など)を新設し、23大学において63専攻(創薬科学など)を設置するなど、大学院の組織整備が行われました。
 また、大学学部では、電気通信大学において、電気通信学部から情報理工学部へ改組が行われた他、5大学において27学科等を22学科等に改組するなどの組織整備が行われました。

3.国立大学法人化の検証

 平成22年度より、第二期中期目標期間が開始しましたが、国立大学の法人化以降約6年を経ていること等から、各国立大学法人が引き続き、社会・地域の期待に応えつつ、継続的・安定的に教育研究を実施し、充実した学生支援を行っていくことができるよう、22年1月より、国立大学法人化後の現状と課題について国立大学法人化の検証を行いました。国立大学法人に関する様々なデータ等を収集・分析するとともに、国立大学を取り巻く各方面から意見聴取を実施し、同年7月に「国立大学法人化後の現状と課題について(中間まとめ)」を策定しました。

【公私立大学】

 公私立大学においては、15年度(16年度開設)4月から学部・研究科などの設置について広く届出制を導入しており、16年度(17年度開設)以降、活発な組織改編が行われています(図表2-3-5)。また、構造改革特別区域制度により、16年度から株式会社による大学などの設置も行われていますが、22年度は新たな設置はありませんでした。

図表2-3-5 設置認可・届出の総件数の推移
開設年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度
認可
届出
277
1
196
276
127
265
126
356
110
243
87
258
78
235
66
223
52
155
設置認可・届出総数 278 472 392 482 353 345 313 289 207
総数の事項別内訳 大学・短大
大学院
155(1)
123 -
249 (194)
223 (82)
213 (165)
179 (100)
315 (260)
167 (96)
224 (175)
129 (68)
218 (174)
127 (84)
196 (146)
124 (89)
164 (133)
118 (89)
124 (102)
73 (52)
公立 大学・短大
大学院
7(1)
24 -
6 (82)
26 (11)
12 (5)
15 (5)
21 (18)
26 (19)
15 (14)
15 (6)
19 (18)
22 (13)
10 (7)
22 (13)
7 (7)
14 (9)
3 (1)
4 (6)
小計 31(1) 32 (12) 27 (10) 47 37) 30 (20) 41 (31) 32 (20) 21 (16) 7 (7)
私立 大学・短大
大学院
148 -
99 -
243 (193)
197 (71)
201 (160)
164 (95)
294 (242)
141 (77)
209 (161)
114 (62)
199 (156)
105 (71)
179 (139)
102 (76)
157 (127)
104 (80)
121 (101)
69 (46)
小計 247 - 440 (264) 365 (255) 435( 319) 323 (223) 304 (227) 281 (215) 261 (207) 190 (147)

(注1)件数は、設置組織数ベース。
(注2)事項別内訳の括弧内は、届出による内数。
(注3)平成18年度開設の薬学関係学科については、形式的な組織改編を伴わない修業年限変更も含む。
(出典)文部科学省調べ

1.学部の整備充実

 22年度に設置認可された大学(23年度開設)は8校(大学6校、短期大学1校、大学院大学1校)でした。設置形態としては既設の短期大学を廃止したり定員を減らしたりして大学を新設するものが3校で、4年制大学志向の高まりから、短期大学から4年制大学への転換が進んでいます。
 そのほか、看護師を養成する看護学科や、教員免許の取得が可能な児童教育学科など将来の職業を見通した学部・学科が多く設置されているのが22年度の特徴です。

2.大学院の整備充実

 22年度に設置認可された大学院(23年度開設)は7校でした。また、研究科・専攻を設置するもののうち、専門職大学院は2校でした。
 その他についても、看護学研究科、生活科学研究科、映像研究科といった多様な研究科などが設置されています。

3.公立大学を取り巻く動き

 公立大学は、地方公共団体が設置・管理するという性格から、地域における高等教育機会の提供と、地域社会での知的・文化的拠点として中心的役割を担っています。その数は、看護・保健系など地域に密着した分野を中心に大学数、学生数ともに増加傾向にあり、平成元年度は39大学6万人であったものが、22年度は80大学14.3万人と倍増しています。
 近年は、再編統合や私立大学から公立大学への移管など、公立大学を取り巻く高等教育再編の動きも活発化しているほか、平成16年度の公立大学法人制度の導入により、22年度現在で53法人54大学と、自主自律的な環境の下、魅力ある教育研究を積極的に展開しています。
 公立大学の財源は、寄附金や委託金等の小規模なものを除くと、授業料などの学生からの納付金と、その設置者である地方公共団体からの拠出に大別されます。文部科学省としては、地方公共団体に対する地方交付税交付金の算定の際に考慮されている公立大学分について、地方財政措置に係る拡充要望を毎年実施しています。

(2)専門職大学院の新たな展開

 社会が多様に発展し、国際的競争も激しくなる中で、多様な経験や国際的視野を持ち、高度で専門的な職業能力を持つ人材が多く必要とされるようになってきています。このような社会のニーズに対応するため、高度専門職業人の養成に目的を特化し、理論と実務を架橋する実践的な教育を展開する専門職大学院を平成15年に創設しました。
 平成22年5月現在、法曹養成(法科大学院)、教員養成(教職大学院)、会計、経営管理、MOT(技術経営)、公共政策などの多様な分野で計184専攻が開設され、それぞれの個性・特色に応じた教育を実施しています。

(3)短期大学教育の充実

 短期大学は、学校教育法において4年制大学と目的や修業年限を異にする大学として位置付けられており、制度創設以来、特に女子の高等教育の普及や実践的職業教育の場として大きな役割を果たしてきました。
 短期大学の個性・特色は、地域の身近な高等教育機関として、短期間で、大学としての教養教育やその基礎の上に立った専門教育を提供する点にあります。このような特徴を明確化するよう、平成17年に短期大学卒業者に対する「短期大学士」の学位制度が創設され、諸外国と同様に学位が授与されることになり、短期大学卒業という学歴や知識・能力が適切に評価され、学生の国際交流にも資するものとなっています。
 また、短期大学は様々な方面の人材を養成してきていますが、とりわけ、幼稚園教諭や保育士などの教育に携わる人材、栄養士や介護福祉士などの健康や保健に携わる人材などについて、有為な専門的職業人を養成する機関として、大きな役割を担っています。

2 高等専門学校の充実

 高等専門学校は、中学校卒業後という早い年齢段階からの、実験・実習を重視した、5年間一貫の専門的・実践的な技術教育を特徴とする高等教育機関です。
 高等専門学校の卒業生は特に専門知識やコンピューターの活用能力、誠実さなど、現場技術者としての資質について、産業界から高い評価を受けており、最近の平均求人倍率は20倍前後に達し、例年100パーセント近い就職率となっています(図表2-3-6、図表2-3-7、図表2-3-8)。
 卒業後には、大学3年次への編入学制度等による進学の道が開かれており、平成22年3月の高等専門学校卒業者のうち約44.5パーセントに当たる4,506人が、専攻科や長岡、豊橋の技術科学大学をはじめとする国・公・私立大学等に進学しています。
 ほとんどの高等専門学校には専攻科が設置されています。大学評価・学位授与機構が認定した専攻科の修了者は、一定要件を満たせば、同機構から学士の学位を授与されることとなっており、高等専門学校の専攻科はすべて同機構の認定を受けています。また、専攻科修了後の大学院進学率も最近では約30パーセントとなっています(図表2-3-9)。

図表2-3-6 設置者別学校・学科・学級数及び入学定員(平成22年度)
区分 学校数 学科数 入学定員
58校(57校) 250学科 10,620人
国立 51校(51校) 235学科 9,400人
公立 4校(4校) 7学科 760人
私立 3校(2校) 8学科 460人

(注1)( )は、専攻科を設置する学校数で内数。
(注2)学科数・学級数・入学定員について、募集停止中のものは含まない。
(出典)文部科学省調べ

図表2-3-7 分野別学科数・入学定員(平成22年度)
区分 工業 商船 工業商船以外 合 計
機械系 電気・電子系 情報系 化学系 土木・建築系 その他 商船系
学科数 53 74 43 31 37 4 5 3 250
入学定員 2,160人 2,970人 1,725人 1,240人 1,480人 725人 200人 120人 10,620人

(注1)「その他」とは、デザイン学科、総合工学システム学科、総合システム工学科、ものづくり工学科である。
(注2)「工業・商船以外」とは、経営情報学科、コミュニケーション情報学科及び国際ビジネス学科である。
(注3)学科数・入学定員について、募集停止中のものは含まない。
(出典)文部科学省調べ

図表2-3-8 卒業者の進路状況の推移
区分 16年度
(平成17年3月卒)
17年度
(平成18年3月卒)
18年度
(平成19年3月卒)
19年度
(平成20年3月卒)
20年度
(平成21年3月卒)
21年度
(平成22年3月卒)
卒業者数 10,061 10,140 10,207 10,160 10,474 10,126
就職者数 5,413
(53.8パーセント)
5,455
(53.8パーセント)
5,546
(54.3パーセント)
5,501
(54.1パーセント)
5,610
(53.6パーセント)
5,219
(51.5パーセント)
求人倍率 12.5倍 15.6倍 20.1倍 23.8倍 24.1倍 18.4倍
進学者数 4,113 4,201 4,252 4,316 4,504 4,506
進学率 40.9パーセント 41.4パーセント 41.7パーセント 42.5パーセント 43.0パーセント 44.5パーセント

(出典)文部科学省「学校基本調査」(求人倍率は文部科学省調べ)

図表2-3-9 高等専門学校専攻科修了生の大学院進学状況
区分 16年度
(17年3月修了)
17年度
(18年3月修了)
18年度
(19年3月修了)
19年度
(20年3月修了)
20年度
(21年3月修了)
21年度
(22年3月修了)
修了者数 1,117人 1,206人 1,352人 1,400人 1,458人 1,595人
大学院進学者数 384人 370人 439人 496人 477人 547人
大学院進学率 34.4パーセント 30.7パーセント 32.5パーセント 35.4パーセント 32.7パーセント 34.3パーセント

(出典)文部科学省調べ

 独立行政法人国立高等専門学校機構においては、国際的に活躍できる実践的技術者を育成する観点から、民間企業と協力し、企業の海外事務所において就業体験等を行っています。加えて、教室の学習と企業でのインターンシップとを繰り返し行うコーオプ教育によってキャリア教育・職業教育・国際交流を実践しています。

3 専門学校の現状と最近の施策

(1)専門学校の現状

 専修学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育、専門的な技術教育等を行う教育機関として発展してきました。特に、高等学校卒業程度を入学対象とする専門課程(専門学校)の生徒数は、平成22年5月現在約56万人となり、新規高等学校卒業者の約15.9パーセントが進学しており、大学への進学(約47.8パーセント)に次ぐ割合となっています。専門学校は、我が国の高等教育の多様化・個性化を図る上でも重要な役割を果たしています。

(2)最近の施策

 専修学校教育の振興方策として、多様な学習ニーズへの対応を充実させるよう、社会人等の多様なライフスタイルに即した学習機会の提供を可能とする単位制・通信制の導入に向けた検討を行っています。また、留学生の受入れ促進に向けて、留学生の受入れ数に係る取扱いの見直しを平成22年9月に行うとともに、留学生の日本での就職・生活支援を行う事業を実施しています。さらに、専修学校教育の質の向上及び社会の理解増進を図るため、学校評価や情報公開などへの対応の在り方について検討を行いました。

第5節 学生に対する経済的支援の充実と学生の就業力の向上

1 学生に対する経済的支援の充実

(1)日本学生支援機構の奨学金事業

1.奨学金事業の現状

 日本学生支援機構は、経済的理由により修学に困難がある優れた学生に奨学金を貸与するとともに、卒業後の返還金の回収を行っています。
 この奨学金事業は、昭和18年度に創設され、平成21年度までの67年間に奨学金の貸与を受けた奨学生の総数は約936万人、貸与総額は約10兆9,703億円に達しています。日本学生支援機構の奨学金には、無利子奨学金(第一種奨学金)と有利子奨学金(第二種奨学金)の2種類があり、有利子奨学金は、在学中は無利子で、卒業後は年利3パーセントを上限とした利子が課されるものです。

2.学生の学ぶ意欲にこたえる事業の充実

 学ぶ意欲と能力のある学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるよう、平成22年度においては、無利子奨学金と有利子奨学金の事業全体で約118万人(対前年度3万5千人増)の学生に、約1兆55億円(対前年度580億円増)の奨学金を貸与しています(図表2-3-10、図表2-3-11)。
 また、家計支持者の失業や被災などによって家計が急変し、緊急に奨学金を必要とする学生に対応するため、「緊急採用奨学金制度(無利子奨学金)」「応急採用奨学金制度(有利子奨学金)」を年間を通じて随時受け付けており、これまでは希望者の全員を採用してきています。
 なお、高等学校及び専修学校高等課程の生徒への奨学金事業については、平成17年度の入学者より、都道府県に移管されており、各都道府県において確実な事業が実施されるよう、高等学校等奨学金事業交付金(平成22年度約270億円)を措置しています。

図表2-3-10 奨学金事業規模の推移

図表2-3-10 奨学金事業規模の推移

図表2-3-11 奨学金事業費総額

(平成22年度)

区分 貸与人員 事業費総額

無利子奨学金
大学
大学院
高等専門学校
専修学校専門課程
有利子奨学金
大学
大学院
高等専門学校
専修学校専門課程
海外留学分
入学時増額分
(人)
348,924
255,188
58,534
12,158
23,044
834,543
677,155
28,168
412
125,536
3,272
(54,813)
(百万円)
254,910
167,392
67,763
4,859
14,895
750,570
579,773
32,495
318
116,195
3,680
18,108
合計 1,183,467 1,005,479

(注)
1.入学時増額分の貸与人員については内数である。
2.計数は四捨五入の関係で一致しないことがある。
(出典)文部科学省調べ

3.返還金回収業務の充実

 日本学生支援機構の奨学金事業は、卒業した奨学生からの返還金を奨学金の原資として活用する貸与制により実施しており、現在、事業費総額の約4割が返還金で賄われている(他に、無利子奨学金については政府貸付金、有利子奨学金については財政融資資金及び財投機関債が財源となっている)ため、返還金の確実な回収が、奨学金事業を実施する上でますます重要となっています。
 このため、日本学生支援機構では、平成21年度からの第2期中期目標・中期計画において、25年度までに総回収率を82パーセント以上にすることや23年度までに大学・大学院等に係る19年度末の3ヶ月以上の延滞額の半減を目指すことを明記し、各学校の協力を得て、学生等の返還意識を高めるとともに、回収業務の民間委託、延滞者に対する法的措置や住所不明者に対する住所調査の徹底、個人信用情報機関の活用などにより、返還金の適切な回収に取り組んでいます。
 一方、経済状況の変化等により返還が困難な方々に対しては、返還の負担を軽減する減額返還や、返還期限を猶予する制度を設けており、また、コールセンターを設置して返還相談体制を充実することなど、その適確な運用を図っています。

(2)大学等における授業料減免事業の支援

 文部科学省では、経済的理由などにより、授業料等の納付が困難である者などを対象に、修学継続を容易にし、教育を受ける機会を確保するため、国立大学や私立大学等が実施する授業料減免措置に対し、国立大学法人運営費交付金の算定や、私立大学等経常費補助金の特別補助を通じて支援しています。また、公立大学については、地方財政措置を通じて支援しています。
 現在、全ての国立大学において授業料減免制度を設けており、平成21年度の授業料免除実施額は約195億円、免除人数は約11万1千人(延べ数)となっています。公立大学では、現在、全ての大学が授業料減免制度を設けており、平成21年度実績で約9,500人に対して28億円の減免措置がなされています。
 また、私立大学等が実施している授業料減免事業に対しては、平成21年度に29億円、約2.7万人分を補助しています。

(3)奨学団体等の奨学金事業

 我が国の奨学金事業は、日本学生支援機構のほかに特例民法法人や地方公共団体、大学や民間会社などによって、多様な形態で幅広く実施されています。平成19年度の日本学生支援機構の調査によると、約2、800の奨学団体等が、約13万4千人の奨学生に対し、総額で約548億円を支給しています。
 これらの奨学団体等は、それぞれの設立目的に基づいて特色ある事業を行っており、教育の機会均等と優れた人材の育成の観点から一層の充実が図られることが期待されます。このような奨学団体に対する寄附金については、現在、一定の税制上の優遇措置が講じられています。

(4)大学院生の経済的支援の拡充

 大学院生に対する経済的支援として、文部科学省では、グローバルCOEプログラム等を通じて支援することにより、TA※1(ティーチング・アシスタント)やRA※2(リサーチ・アシスタント)の充実を図る取組を行っています。


※1 TA
 優秀な大学院学生に対し、教育的配慮の下に、学部学生等に対するチュータリング(助言)や実験・実習・演習等の教育補助業務を行わせ、大学院学生への教育訓練の機会を提供するとともに、これに対する手当の支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。

※2 RA
 大学等が行う研究プロジェクト等に、教育的配慮の下に、大学院学生等を研究補助者として参画させ、研究遂行能力の育成、研究体制の充実を図るとともに、これに対する手当の支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。

2 学生の就業力の向上

(1)学生の就職活動

1.就職率の動向

 文部科学省と厚生労働省が共同で実施した就職状況調査によると、平成22年度大学等卒業者の就職率は次表のとおりです(図表2-3-12)。昨今の雇用情勢を反映して、20年以降、3年続けて下落しています(図表2-3-13)。23年3月大学等卒業者の就職率(4月1日現在)も91.0パーセント(昨年同期比1.2ポイント減)と、学生の就職活動は厳しい状況です。

図表2-3-12 平成22年度大学等卒業者の就職状況(平成23年4月1日現在)

 図表2-3-12 平成22年度大学等卒業者の就職状況(平成23年4月1日現在)

図表2-3-13 就職率の推移

図表2-3-13 就職率の推移

2.秩序ある就職・採用活動への取組

 平成23年度(24年3月)卒業予定の学生の就職・採用活動については、22年度と同様に、大学側(国公私立大学などの代表者で構成される「就職問題懇談会」)が「平成23年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について」の申合せを行い、企業側(日本経済団体連合会)が「大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」を定め、双方がそれぞれを尊重する形で行われています(図表2-3-14)。
 あわせて、大学側から企業側に対し、「倫理憲章」の趣旨に即した採用活動を別途要請し、企業側では、会員企業の賛同を得て、秩序ある就職・採用活動の実現に向けた「倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」を公表しました。
 また、大学側、企業側団体、労働団体と関係府省が参加する、就職採用活動の長期化・早期化や雇用のミスマッチなどの問題について意見交換を行う場として「新卒者等の就職採用活動に関する懇話会」を設け、平成22年11月22日に第1回、23年2月16日に第2回を開催しました。

図表2-3-14 「申合せ」及び「倫理憲章」
大学側の「申合せ」 企業側の「倫理憲章」
○ 卒業学年当初及びそれ以前は、企業説明会(名称に関わらず、実質的に採用選考のための説明会を指す。)に対して会場提供や協力を行わないこと
 一方で、企業が実施する企業情報等の発信を目的とした採用広報のための説明会等を大学等の協力の下に実施する場合は、その後の選考に影響しないことを学生に対して明示すること
○ 学校推薦は、原則として7月1日以降とすること
○ 正式内定日は、10月1日以降である旨学生に徹底すること
○ 企業に対して、就職差別につながる恐れのある項目を含む会社指定書類、戸籍謄本等の提出を求めないよう要請すること
○ 採用活動は、男女雇用機会均等法の趣旨に則って行われるべきであり、その旨、企業側に徹底するよう要請すること
○ 各大学等は、学内の教職員はもとより、学生への周知徹底を図るとともに、企業に対して、「申合せ」の趣旨の理解を図ること
など
○ 在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重すること
○ 卒業・修了学年の学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業・修了学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎むこと
○ 公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法に沿った採用選考活動を行うことはもちろんのこと、学生の自由な就職活動を妨げる行為は一切しない。また、大学所在地による不利が生じぬよう留意すること
○ 企業情報、採用情報等の発信を目的とした広報活動は、その後の選考に影響しないものであることを学生に明示するよう努めること
○ 正式な内定日は、10月1日以降とすること
など

(2)学生の就職支援と就業力向上

 学生の厳しい雇用情勢を受け、文部科学省では、キャリアカウンセラーなどの配置や企業の求人に関する情報検索システムなど、大学等における就職支援体制の強化を図る取組に対して支援しています。
 さらに、政府全体としては、平成22年10月8日と23年2月16日に、日本経済団体連合会などの経済団体・業界団体などに対して、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省の大臣の連名で、新規学校卒業者等の採用に関する要請を行うなど、新卒者雇用・特命チーム関係府省が連携しつつ、大学等卒業予定者の支援に取り組んでいます。
 また、学生の資質能力に対する社会からの要請や、学生の多様化に伴う卒業後の職業生活などへの移行支援の必要性が高まっていることから、大学等が教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に関する指導等に取り組む体制を整えることについて、平成22年2月に大学設置基準等が改正され、23年4月から全ての大学で取り組まれることとなりました。これを踏まえ、文部科学省では、各大学が教育課程内外にわたり就業力の育成等を目指す取組などを総合的に支援することとしています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課政策審議第二係

-- 登録:平成23年11月 --