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第1章 生涯学習社会の実現と教育政策の総合的推進

※ 第2部は、平成22年度における文部科学行政の動きについて記述しているが、一部についてはおおむね平成23年7月頃までの動き、統計資料に基づき記述している。

Topic 熟議~現場の課題解決と教育政策形成の好循環へ~

 文部科学省では平成22年4月より、熟議を通じた教育政策・現場づくりを推進しています。熟議とは、多くの当事者による「熟慮」と「議論」を重ねながら課題解決・政策形成をしていくことであり、具体的には、1.多くの当事者(保護者、教員、地域住民等)が集まる、2.課題について学習・熟慮し議論をする、3.互いの立場や果たすべき役割への理解が深まる、4.解決策が洗練される、5.個々人が納得して自分の役割を果たすようになる、というプロセスのことをいいます。
 熟議の取組は、「文科省政策創造エンジン熟議カケアイ」(http://jukugi.mext.go.jp/)サイト上で行う熟議(「ネット熟議」)と、関係当事者が集い対面で行う熟議(「リアル熟議」)を組み合わせて展開しています。

ネット熟議の展開

ネット熟議の展開

 平成22年度末までに約20テーマ実施され、全国47都道府県・海外から2,400人超が参加し、1万4,000件超の対話・意見表明がなされてきました。「教員の資質向上」に関する熟議では、「文部科学省への提案書」がサイト参加者により主体的に取りまとめられ、文部科学副大臣に対して直接手交されたとともに、中央教育審議会にも報告され、審議の材料として活用されています。(写真中・右参照)

リアル熟議の展開

リアル熟議の展開

 平成22年度末までに北海道から沖縄まで全国各地で約100回開催されており、教育委員会や学校運営協議会の運営の仕組として取り入れられる事例のほか、政令指定都市の中期計画に組み込まれる施策、地域を巻き込んだ市民自らの手による学校づくり・まちづくり等に繋がる事例も生まれています。文部科学省では、全国にリアル熟議の実施を呼びかけ、「熟議カケアイ」サイトへの告知掲載や参考資料の提供等、積極的に支援しています。
 また、新学習指導要領のもと、特別活動で子どもたちが話合いと実践を通してよりよい学級や学校生活を創る取組を、「子ども熟議」として事例とともに紹介するパンフレットも作成しました。(写真右)

第1章 総論

 生涯学習とは、家庭教育や学校教育、社会教育、個人の自学自習など、人々が生涯にわたって取り組む学習のことを指します。生涯学習の理念については、「教育基本法」第3条においても、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」と明記されています。文部科学省では、“誰もがいつでもどこでも”学習することができ、また、学習成果を生かすことのできる社会である、「生涯学習社会」の実現を目指し、生涯学習の振興のための施策に取り組んでいます。
 特に近年、産業・雇用構造の変化やグローバル化・情報化などが急速に進む中で、国民一人一人が、自ら課題を見つけて考える力や柔軟な思考力、身に付けた知識や技能を活用して課題を解決する力や他者との関係を築く力といった、“総合的な「知」”を育み、社会の変化に対応していくことが求められています。
 また、平成22年は、「無縁社会」が流行語トップテンに選ばれ、高齢者の「孤独死」問題が顕在化するなど、地域の「絆」の再構築が日本社会の大きな課題として改めて認識された年でもありました。地域の「絆」の再構築のためには、行政だけでなく、地域住民や企業、NPOなど多様な主体が協力し合うことが不可欠であり、そうした観点からも、前述のような、総合的な「知」の充実が必要とされています。
 このような“総合的な「知」”は、学校だけでなく、生涯を通じて様々な場面で学ぶ中で育まれるものです。“学び”は、一人一人が充実した人生を切り拓く源泉であるとともに、社会の変化や課題に対応し、活力ある社会経済を築く鍵であり、「生涯学習社会」の実現の必要性はますます高まっていると言えます。
 本章では、このような生涯学習社会の実現に向けて、文部科学省が講じた諸施策についてご紹介します。

第1節 教育政策の総合的推進

1 教育基本法と教育振興基本計画

 「教育基本法」は、我が国の教育の根本的な理念や原則を定めるもので、全ての教育関係法令の根本法ともいうべき法律です。平成18年の改正では、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化、家族形態の変容などの今日的な課題を踏まえて、教育の基本理念が明示されました。
 この理念の実現に向けて、同法第17条第1項に基づき、政府の教育に関する総合的な計画として策定されたものが「教育振興基本計画」です。策定後10年間を通じて目指すべき教育の姿を明らかにするとともに、策定後5年間(平成20年度~24年度)に取り組むべき施策を総合的・計画的に推進するための具体的施策が示されています。
 地方においても国の計画を参考にして、それぞれの地域の実情に応じた計画の策定に努めることになっています。平成23年4月1日現在、54の都道府県・政令指定都市で計画が策定されています。
 なお、現行計画は、おおむね3年を経過しており、現在、第2期計画の策定に向けて中央教育審議会教育振興基本計画部会において審議が行われています。

2 教育政策の今後の展開

 資源の乏しい我が国においては、人材こそが成長を牽けん引いんする貴重な資源であり、持続可能な社会を築き上げていくためには、その土台となる厚い人材層を形成していくことが必要です。少子高齢社会が進展し、活力が失われつつあるのではないかとの懸念も指摘されるなか、我が国が自信と活力を取り戻すためには、一人一人が生涯を通じて自己を磨き、高め、そして、社会に貢献していくことが重要です。そのため、文部科学省では、以下のような施策に取り組みます。

(1)教育費負担の軽減

 厳しい経済状況が続く中、経済格差が教育格差につながることや、その教育格差が学力や進路に影響し、更なる経済格差を再生産するといった、格差の固定化が起こることが懸念されます。全ての意志ある者が安心して希望する教育を受け、自らの能力を高める機会を確保することは社会全体の責務であり、その経済的負担は本人や家庭だけではなく社会全体として支え合うことが必要です。
 このような考えの下、公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金を今後も引き続き実施するとともに、大学の授業料等減免や奨学金の充実などを行っていきます。

(2)学校の教育力の向上

 平成23年4月より小学校の新学習指導要領が全面実施された中で、教員が子ども一人一人に向き合う時間を確保し、子どもたちの個性に応じたきめ細かで質の高い教育を行うことができるよう、公立の小学校1年生で35人以下学級を実現するなどの少人数学級の推進、教員の資質能力の総合的な向上方策に関する検討を進めています。
 また、情報通信技術を効果的に活用した指導方法・学習方法の発展・改善やそれを支える学習環境づくりなど教育の情報化の推進、自然体験学習や社会体験学習、読書活動、地域に根ざした道徳教育、外国語教育等の充実、コミュニケーション能力の育成に取り組んでいます。
 さらに、学校施設の安全性を確保するため、積極的に耐震化に取り組んでいます。

(3)世界をリードする大学の実現

 大学が我が国の将来や世界、そして地域に貢献する機能を充実していくため、学生の学力や就業力の育成など社会の期待に応える大学教育の推進やイノベーションの創造に貢献し世界をリードする大学院の形成・強化などに取り組みます。また、社会人がいつでも大学で学び、その成果を社会で活いかせる環境づくりや、大学の人材育成や研究成果の活用による地域産業の活性化についても支援するとともに、喫緊の課題である医師不足解消のための医学部の入学定員の増員や優れた医療人の養成、地域医療に貢献する大学病院の充実を行います。さらに、大学間の国際交流や留学生の受入れ・派遣の拡充などに取り組み、今後の東アジア交流やアジア太平洋協力を支える人材の育成と域内の共通課題の解決に長期的視野を持って貢献していきます。

(4)若者の就職支援とキャリア教育・職業教育の充実

 厳しい経済状況の中で、新卒者の就職状況は極めて深刻となっています。雇用の問題は、経済界、労働界、教育界が一体となって取り組むことが重要であり、関係省庁と連携しながら新卒者等の就職支援に取り組んでいます。
 一方、若者の早期離職や若年無業者の存在など、学校から社会・職業への移行に課題があります。このため幼児期から高等教育に至るまで体系的なキャリア教育・職業教育を推進し、社会人・職業人として必要な能力を身につけ、勤労観・職業観を確立した人材の育成に取り組んでいます。

(5)新しい公共の実現

 「新しい公共」とは「支え合いと活気のある社会」をつくるため、国民、企業やNPO等の事業体など、様々な当事者たちが自発的に協働する場です。特に学校・家庭・地域の連携による学校づくりやスポーツ、文化分野は、「新しい公共」が発展する重要な活動の場となります。文部科学省では、学校教育・社会教育を通じた担い手の育成や、学習・活動の場の確保、学校・地域等の関係者・機関間のネットワーク化など、各分野において「新しい公共」による活動を支えるための取組を推進します。

第2節 地域の教育力の向上と社会教育の振興

1 地域の教育力の向上に向けた取組

(1)地域の教育力の向上

 人々の学習に対する需要が高まり、その内容がますます多様化・高度化する中で、社会教育は、その重要性を一層増しています。教育基本法の改正を受け、平成20年6月に社会教育法等の一部改正が行われ、社会教育施設の運営能力の向上や、専門職員の資質向上を図るための規定などが定められました。
 また、平成18年12月22日に公布・施行された教育基本法第13条において、「学校・家庭・地域住民等の相互の連携協力」が新たに規定されました。近年、社会がますます複雑化・多様化し、子どもを取り巻く環境も大きく変化する中で、子どもたちを健やかに育むためには、学校・家庭・地域が連携協力して、社会全体で教育に取り組むことが一層重要となっています。

(2)地域全体で子どもを育む環境づくりの支援

 文部科学省では、地域ぐるみで子どもを育てる体制を整えていくため、平成19年度より、保護者や地域住民の皆さんなどの協力を得て、放課後や週末などに子どもたちに学習や様々な体験・交流活動等の機会を提供する「放課後子ども教室」を、留守家庭児童を対象とする厚生労働省の「放課後児童クラブ」と連携した総合的な放課後対策「放課後子どもプラン」として推進しています。さらに、平成20年度からは地域住民がボランティアとして、授業や部活動の支援、環境整備、安全パトロール、学校行事の支援など学校の教育活動を支援する仕組みである「学校支援地域本部」の設置を推進するなど、様々な取組を進めています。
 平成22年度現在、「放課後子ども教室」は全国9,280ヵ所、「学校支援地域本部」は全国2,540本部で実施されています。
 これらの活動は、地域の様々な方々の参画・協力を得て実施されており、学校と地域との連絡・調整や活動の企画などを行うコーディネーターや、授業や教員の補助、学校環境の整備など学校が必要とする支援を行う学校支援ボランティア、放課後などに子どもたちの見守りや安全管理を行う安全管理員、宿題や学習をサポートする学習アドバイザーなどとして、保護者を含む地域住民やPTA関係者、退職教員、大学生、青少年・社会教育団体関係者、NPO、企業関係者など、地域社会全体の協働・連携により地域の実情に応じた様々な取組が進められています。
 「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」などの活動を通じて、授業時間や放課後、週末等に地域の方々が子どもたちとふれあうことは、子どもたちを健やかに育むための教育活動の場を提供するだけでなく、地域の方々にとっても、活動に参加することで新たに学び、これまでの知見や経験したことを活用、実践する機会にもなり、これらの活動は、地域の方々の生涯学習の場、成果の活用の場としての効果も期待されます。
 平成21年度より、「放課後子ども教室」や「学校支援地域本部」の取組については、地方自治体が選択して実施する取組を支援する、統合補助事業「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」の中のメニューの一つとして推進してきました。
 平成23年度からは、学校の授業や放課後といった時間や活動別の取組を個別に支援するだけではなく、子どもたちの教育をトータルに支援していくため、「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」、「家庭教育支援」などの取組を統合した「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」を創設し、これらの取組を一体的に実施することも可能とすることとしています。これは、これまでの「放課後子ども教室」や「学校支援地域本部」などの活動を、広く子どもの教育を支援する教育支援活動として捉えて、更に総合的に推進していくというものです。
 これらの取組における活動を継続的に実施し、地域に根付いたものとして更なる充実を図るためには、これまで以上に多くの地域の方々の参画・協力が不可欠です。
 地域の方々の更なる参画と、充実した教育支援活動体制の構築により、広く全国で地域ぐるみによる子どもたちの教育支援活動の取組が実施されるよう、これからも支援を行っていきます。

Column No.23 学校・家庭・地域の連携協力の推進について
~より一層の連携協力を深めるために~(青森県七戸町)

 青森県七戸町では、「学校は地域に支えられている」という視点、さらに「学校は地域の方々にどんな貢献ができるか?」という視点に立って「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」などの取組を推進しています。
 「学校支援地域本部」の具体的な活動としては、地域の図書ボランティアの方々が中心となり、保護者と一緒に本の整理や修理、図書室の飾り付け等の環境整備活動を自主的に行ったり、ミシンや水泳、スキーの学習の際に地域の方が支援したりしています。
 それらの活動を通して、参加した地域住民の方は、自分の技能や技術を生かす機会が増えるとともに、子どもたちは、よりきめ細やかな指導を受けられるようになりました。さらに、保護者の方にとっては地域によって自分の子どもが育てられていると実感し、自分自身が地域住民の一員として果たすべき役割について考えるきっかけになっているようです。
 また、校内の草取りや樹木の剪定などの環境整備や、「放課後子ども教室」における子どもたちへのグラウンド・ゴルフの指導などには、地域の婦人会や老人クラブなどに協力してもらい、子どもたちの学習環境・体験活動を豊かなものとすると同時に、地域の方々の生きがいづくりにつながっています。
 孫や子どもたちの姿が見え、ふれあえる学校での活動は、地域住民の社会参加の動機付けとなり、「地域で子どもたちを育んでいこう」とする気運も高めています。

中学校図書室での図書の修理の様子
中学校図書室での図書の修理の様子

怪我の手当てなど水泳学習のサポートの様子
怪我の手当てなど水泳学習のサポートの様子

連合婦人会の方々による校内の除草作業の様子
連合婦人会の方々による校内の除草作業の様子

2 社会教育の充実・活性化

(1)人々の学習活動を支援する専門的職員の充実

1.専門的職員の現状

 社会教育における専門的職員として、教育委員会に置かれている社会教育主事や、各社会教育施設に置かれている公民館主事、司書(図書館)、学芸員(博物館)、更には社会教育委員、社会教育指導員などが挙げられます。特に、社会教育主事は、都道府県および市町村の社会教育行政の中核として、地域の社会教育行政の企画・実施や専門的技術的な助言と指導に当たることを通じて、人々の自発的な学習活動を援助する役割を果たしています。また、近年では、社会教育関係者や地域の人材などの連携の調整を行うコーディネーターとしての役割も求められています。

2.専門的職員の養成と研修など

 文部科学省では、現職の社会教育主事、司書、学芸員などに対して、地域における社会教育に関する課題や地域のニーズに対応した実践的な研修を実施することにより、専門的職員としての資質の向上に努めています。また、社会の要請や、地域住民の高度化・多様化する学習ニーズに対応できる社会教育主事や司書を養成するため、大学などに委嘱し、資格を付与する社会教育主事講習や司書講習を実施しています。
 平成20年6月の社会教育法等の改正において、地方公共団体が社会教育関係団体に補助金を交付する際に事前に意見を聴取すべき機関について、社会教育委員を置いていない場合は、社会教育に関する補助金の交付について調査審議する審議会などに代えることができることとする改正が行われました。しかし、本条の改正後も社会教育委員の役割の重要性は変わりません。文部科学省では、引き続き各地方公共団体において、社会教育に関する諸計画の立案や青少年教育に関する助言、指導など社会教育委員の積極的な活動が展開されるよう、必要な情報提供等に努めていきます。

(2)地域の学習拠点の整備・形成・運営

1.公民館

 公民館は、地域住民にとって最も身近な学習拠点であるだけでなく、交流の場として重要な役割を果たしています。平成20年10月現在、公民館は全国に1万5,943館設置され、住民の学習ニーズや地域の実情に応じた学級・講座の開設など様々な学習機会の提供を行っています(図表2-1-1、図表2-1-2)。
 また、平成20年7月に策定された「教育振興基本計画」では、公民館をはじめとする社会教育施設について「地域が抱える様々な教育課題への対応や社会の要請が高い分野の学習など地域における学習の拠点、さらには人づくり・まちづくりの拠点として機能するよう促す」こととされており、関係機関や団体とのネットワークを構築しながら、新たな課題やニーズに応じた活動を展開し、地域の拠点としての役割をより一層果たすことが公民館に期待されています。
 文部科学省では、関係省庁と連携した講師派遣の取組や社会の要請が高い学習機会の提供の推進、公民館職員の資質向上を図るための研修の実施などに取り組むことを通じ、公民館活動の充実に努めています。

図表2-1-1 公民館数等の推移
図表2-1-1 公民館数等の推移
図表2-1-2 学級・講座数の実施状況

図表2-1-2 学級・講座数の実施状況

Column No.24 公民館と学校が協働した「里山づくり」(愛媛県松山市久米公民館)

 地域課題となっていた放置みかん園を、公民館が借り受けて、自然との触れ合いや農業体験の場、自然と人が共生する場にするため「里山づくり」に挑んでいます。その里山で実施する小学4年生の「里山キャンプ」は、当初20名から始まりましたが、今では200名以上も参加しています。大人だけでなく中学生・大学生もボランティアとして参画する地域教育力の集大成事業となりました。また、小学6年生は卒業記念品として「埴輪」をつくり、里山を飾り付けています。現在600体です。今後も毎年100体ずつ増やしていく予定です。
 さらに、小学校の各学年の授業カリキュラムに、里山が組み込まれました。「かぶとむし」、「さつまいも」、「みかん」等々、発信される自然の言霊に、子どもたちの心が躍り、笑い声が響いています。それが公民館と学校の協働を支えており、持続性のある実践活動となっています。

里山でしいたけの植菌をする様子
里山でしいたけの植菌をする様子

2.図書館

 図書館は、住民の身近にあって人々の学習に必要な図書や様々な情報を収集・整理・提供する社会教育施設です。平成20年10月現在の図書館数は、公立図書館が3,140館、私立図書館が25館となっており、図書館数、図書の貸出冊数、利用者数は、近年着実な伸びを示しています(図表2-1-3)

図表2-1-3 図書館数と貸出冊数などの推移

図表2-1-3 図書館数と貸出冊数などの推移

 平成20年6月の図書館法改正を受けて、文部科学省では、司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目について図書館法施行規則の改正を行い、24年4月に施行されることとなっています。この改正では、図書館を支える司書が、地域社会の課題や人々の情報要求に対して的確に対応し、より実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう、大学などにおける司書養成課程及び司書講習における養成課程の改善・充実を図ることとしています。また、図書館職員の資質向上に向けて、新任の図書館長を対象とした研修や中堅の司書を対象とした研修の充実に努めています。
 さらに、図書館法改正により、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年告示第132号)(現行基準)の対象が私立図書館に拡大されたほか、図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供に努めることが新たに盛り込まれました。また、現行基準の施行から9年が経過し、その間の社会の変化に対応する必要があることから、協力者会議での議論を踏まえ、図書館の設置及び運営上の望ましい基準の改正作業を進めるなど、図書館振興施策の充実に取り組んでいます。

Column No.25 サッカーと読書 ~「川崎フロンターレと本を読もう!」事業から~

 川崎市では平成12年より「読書のまち・かわさき」を掲げ、様々な事業を行ってきました。その一つとして平成21年度よりサッカーJ1チーム川崎フロンターレや市のシティセールス、スポーツ、学校教育、社会教育の担当部署と協働し「川崎フロンターレと本を読もう!」事業を進めてきました。
22年度は前年に引き続き、

  • 選手の推薦本の冊子『キックオフ!“読書のまち・かわさき”vol.2』(B6版8ページ)
  • ポスター・しおりの発行と配布
  • 選手が絵本や紙芝居の読み聞かせをするおはなし会を学校や図書館で開催
  • フロンターレの試合に合わせ、競技場で冊子・しおりの配布
  • 図書館のリサイクル本の無料配布
  • 紙芝居「フロンタくんとワルンタくん対決!闘将カーン」の上演

などを行いました。紙芝居は、この事業のワーキングメンバー達が脚本から考えたオリジナル作品で、内容はフロンターレのマスコット達が図書館の楽しさや決まりをクイズを交えて紹介するというものです。これは図書館で借りることができ利用されています。初年度の冊子と平成22年度の紙芝居は市のイメージアップ認定事業にもなりました。
 サッカーと読書という組み合わせは、読書にあまり関心のなかった中高生へのアピールにもなりました。またサッカーをキーワードに他都市の図書館と交流し相互の地域情報発信のきっかけともなっています。

フロンターレブックリスト表紙
フロンターレブックリスト表紙

小学校での選手による読み聞かせ
小学校での選手による読み聞かせ

3.博物館

 博物館は、資料収集・保存、調査研究、展示、教育普及などの活動を一体的に行う施設であり、平成20年10月現在、登録博物館が907館、博物館相当施設341館、博物館と類似の事業を行う施設が4,527館設置されています。
 文部科学省では、博物館職員の意識向上を図るための倫理規程に関する調査研究や登録博物館の現状についての調査研究を実施しています。地域の教育力の向上や、博物館職員の資質向上を目的として、博物館長や中堅の学芸員を対象とした専門的な研修を実施するとともに、学芸員を外国の博物館に派遣し、その成果を全国に普及することなどにより、博物館振興施策の充実に取り組んでいます。
 また、現行の「公立博物館の望ましい基準」の施行以降、博物館を取り巻く環境が大きく変化したことや平成20年6月に博物館法が改正されたことから、平成22年度に、関係者からの意見も聞きつつ「公立博物館の望ましい基準」の報告書を取りまとめ、これを受けて基準の改正を検討しました。
 さらに、博物館を支える学芸員が、質の高い人材として育成されるよう、大学などにおける学芸員養成課程などの改善・充実を図るとともに、研修の充実に努めています。
 博物館を支える学芸員が人々の生涯学習の支援を含め博物館に期待されている諸機能を強化し、国際的にも遜色ない高い専門性と実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう、大学等における学芸員養成課程における養成科目の改善・充実を図るため平成21年4月に博物館施行規則の一部を改正したところであり、平成24年4月に施行されることとなっています。

Column No.26 岐阜県「地域発!ふるさと学習」研究協議会について

 岐阜県博物館は、「県民がふるさとの自然を愛し、文化の継承と発展に寄与できるように支援する」という使命を果たそうと、「ふるさとの担い手」意識が無理なく高まる社会教育のモデルづくりに努めてきました。そして試行錯誤の結果、学校教育の技法を社会教育に応用し、様々な学習素材を効果的に構成・配列して、活動にストーリー性をもたせると良いことが分かりました。やがて「このような仕組みを広く普及するには、身近な地域の未来を担う次世代の育成に対する大人の参画意識を向上することが必要であり、それは地域の教育力強化にもつながる」と気付きました。そこで、22年度、県内3地区の団体と研究協議会を組織して「大人の参画意識は何が効き目となって変容するのか?」を探る実践研究を行い、「地域の宝を活かす」「地域の人や主催者の深い思いが伝わる」「活動が楽しい」ことが重要だと明らかにしました。今後この研究成果をふまえ、新しい仕組みを全県的に拡大していきたいと考えています。

多様な関係者が「熟議」をして開発した社会教育プログラムに参加し、地元の阿寺断層をガイドできるようになった中学生(岐阜県中津川市)
多様な関係者が「熟議」をして開発した社会教育プログラムに参加し、地元の阿寺断層をガイドできるようになった中学生(岐阜県中津川市)

 国立科学博物館では、自然史、科学技術史に関する調査研究、標本資料の収集・保管とその継承を進めるとともに、調査研究の成果や標本資料を生かして展示や学習支援活動を実施しています。
 展示活動においては、平成22年は国連が定める国際生物多様性年であることを踏まえ、生物多様性の意義や重要性について理解を図るため「かはく生物多様性シリーズ2010」として、5回に分けて関連する特別展や企画展などを開催しました。また、学習支援活動においては、様々な講座・観察会を実施するとともに、小・中・高等学校・大学等との連携・協力にも力を入れており、博物館と学校の特色を生かした体験学習プログラムの開発・普及などや学生のサイエンスコミュニケーション能力の育成に努めています。

(3)PTA及び青少年教育団体の実施する共済事業

 PTAや青少年教育団体は、従来、その主催する活動中のけがや、学校管理下におけるけがなどについて、見舞金を支給する事業を行っていましたが、平成17年に保険業法が改正され、従来の事業の実施方法では、その継続が困難となっていました。このような状況を踏まえ、22年の第174回国会において、議員立法としてPTA・青少年教育団体共済法が成立し、23年1月1日にPTA・青少年教育団体共済法施行令及びPTA・青少年教育団体共済法施行規則等とともに施行されました。
 これにより、PTAや青少年教育団体が、行政庁の認可を受け、本法に基づいて共済事業を行うことができるようになりました。
 今後、文部科学省では、本制度に基づいて、各関係団体が円滑に共済事業を実施することができるよう、行政庁である都道府県教育委員会及び各関係団体へ必要な支援などを行っていきます。

第3節 家庭の教育力の向上と青少年の健やかな成長

1 家庭の教育力の向上に向けた取組

(1)家庭教育の現状と課題

 家庭教育は、全ての教育の出発点であり、子どもが基本的な生活習慣・生活能力、豊かな情操、他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的倫理観、自立心や自制心、社会的なマナーなどを身に付ける上で重要な役割を果たすものです。しかしながら、近年の都市化や核家族化、少子化、地域における地縁的なつながりの希薄化など、家庭や家族を取り巻く社会状況の変化の中で、家庭の教育力の低下が指摘されています。平成20年度に文部科学省が行った「家庭教育の活性化支援等に関する特別調査研究」においても、約8割の親が家庭の教育力が低下していると実感するなどの結果が出ています。
 このような状況の中で、平成19年に改正された「教育基本法」において、新たに家庭教育に関する規定(第10条)が設けられました。さらに、「教育振興基本計画」においても、国が行う重点施策として、身近な地域においてきめ細かな家庭教育支援が実施されるよう促すことが盛り込まれました。
 今後、家庭教育支援の充実を進める上で、地域コミュニティや企業を含む社会全体で家庭教育を支えていくためのより良い環境を作っていくことが重要であり、孤立しがちな親や子育てに関心のない親を含む様々な状況にある子育て中の親たちに対しても、きめ細かな家庭教育支援を積極的に進めていくことが課題となっています。

(2)家庭教育を支援するための取組

1.家庭教育支援基盤の形成

 平成22年度は、これまで実施してきた家庭教育支援の成果を活かし、「家庭教育支援チーム」の設置・活用や、地域人材の養成・活用、学校をはじめとした多くの親が集まる様々な場を活用した学習機会の提供など、社会全体の協働による地域の主体的かつ持続可能な取組への支援を実施しました。

2.家庭教育に関する情報の提供・啓発

 家庭教育に関する情報の提供として、親が家庭を見つめ直し、自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう作成した「家庭教育手帳」を文部科学省ホームページに掲載し、全国の教育委員会やPTA、子育て支援団体などにおける家庭教育に関する学習機会などで活用を促しています。また、全ての親が安心して家庭教育を行うことが出来るよう、地域住民、学校、行政、NPO、企業などとの協働による、地域における家庭教育支援の活性化を図るため、地域や企業などが実践する効果的な取組事例などを活用した研究協議を行い、全国的な啓発を行いました。

3.家庭におけるルールづくりの推進等

 平成22年度は、全ての教育の出発点である家庭において、家庭で話し合うことの大切さを呼びかける「親子でつくろう我が家のルール」運動を推進するため、標語を募集し、5万6,225件の応募の中から、優れた30作品について表彰を行いました。23年度も改めて家族の絆きずなの大切さや家庭でのルールづくりの大切さなどを呼びかける取組を日本PTA全国協議会と連携して実施していきます。
 加えて、家庭・学校・地域社会において、児童生徒の健やかな成長と教育の充実のために重要な役割を担うPTAについて、子どもの生活実態調査や保護者の意識調査の実施、子どもを取り巻く様々な課題をテーマにしたシンポジウムの開催を支援することにより、PTAの活性化や保護者同士のネットワークの強化を図っています。

Column No.27 「つながろう湯浅!」~人と人とがつながる家庭教育支援~
(和歌山県湯浅町家庭教育支援チーム「トライアングル」の取組)

 湯浅町では、身近な地域において子育て経験者や専門家で構成する「家庭教育支援チーム『トライアングル』」を設置し、情報や学習機会の提供、相談体制の充実をはじめとするきめ細かな家庭教育支援を行うことにより、地域全体で家庭教育を支えていく基盤の形成を促進しています。
 主な活動内容として、家庭教育に関する情報を収集し、幼・保・小・中学校保護者向けと、町内全戸家庭用情報誌『すまいる』を作成・配布しています。また、保護者や学校からの相談に対しては、学校や教育委員会、支援員、各関係機関と連携してケース会議を行い、どのような支援を行っていくのが効果的かを検討し、具体的な支援を行っています。

子育て情報誌「すまいる」
子育て情報誌「すまいる」

 子育て情報誌『すまいる』は、町内小・中学校の全家庭を訪問して配布しています。出来るだけ同じ支援員が訪問を行うことで、継続的なつながりができ、安心感や親近感から早期相談や「少し気になる」という早い段階で問題の発見につながっています。また、訪問時の相談や苦情の多くは、聞くことによって不安が軽減されたり、学校との関係を取り持つことで、保護者の不信感をやわらげ、学校・担任と保護者の関係がスムーズになったケースも多く、学校関係者でない第三者による家庭教育支援は、子育て環境の改善等のメリットが大きいと考えています。
 掲載内容も、写真や漫画を中心にしたり、料理レシピや行事予定などを掲載するなど読みやすくする工夫を行っており、「次回が楽しみ」、「子育てアドバイスで助けられた」などの感想が寄せられています。
 全家庭を訪問することで、自分の家の子どもの事だけでなく、他の家の子どものことで「最近心配なので」という情報も入り、「うちの子」意識から「他人も我が子」という意識が一部の保護者ではあるが出始め、地域とのつながりがきめ細かくなりつつあります。
 (参考:湯浅町家庭教育支援チームホームページ(家庭教育支援チームとらいあんぐる(※湯浅町教育委員会ウェブサイトへリンク)))

(3)子どもの基本的な生活習慣の育成に向けた取組

1.子どもの基本的な生活習慣の現状

 子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠が大切です。しかしながら、最近の子どもたちを見ると、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠である基本的な生活習慣が大きく乱れています。こうした今日の子どもの基本的な生活習慣の乱れが、学習意欲や体力、気力の低下の要因の一つとして指摘されています。
 また、子どもの基本的な生活習慣は家庭だけでなく、親の長時間労働といった社会環境の影響を受けやすいことから、家庭における食事や睡眠などの乱れを個々の家庭や子どもの問題として見過ごすことなく、社会全体の問題として地域が一丸となり、子どもの健やかな成長を期して学習意欲や体力の向上を図るための取組を推進することが必要です。

(1)子どもの就寝時間

 平日23時以降に就寝する小学生の割合は約16パーセント、平日24時以降に就寝する中学生の割合は約28パーセントとなっています(図表2-1-4)。

図表2-1-4 小・中学生における就寝時間

図表2-1-4 小・中学生における就寝時間

(2)子どもの朝食摂取

 最近の調査によれば、朝食を食べないことがある小・中学生の割合は、小学生で約11パーセント、中学生で約16パーセントに達しています(図表2-1-5)。また、毎日朝食を食べる子どもの方が、平成22年度「全国学力・学習状況調査」の平均正答率や、平成22年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の体力合計点が高い傾向にあることが分かっています(図表2-1-6、図表2-1-7)。
 こうした状況を考慮し、子どもの就寝時間や朝食摂取の状況を改善することについて、家庭だけでなく、国民全体で考え行動する社会的気運を高めていくこととしています。

図表2-1-5 朝ごはんを食べないことがある小・中学生の割合

図表2-1-5 朝ごはんを食べないことがある小・中学生の割合

図表2-1-6 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係

図表2-1-6 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係

図表2-1-7 朝食の摂取と体力合計点との関係

図表2-1-7 朝食の摂取と体力合計点との関係

2.「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進

(1)「早寝早起き朝ごはん」全国協議会による運動の推進
 平成18年4月に、「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が発足しました。これは、PTAをはじめ、経済界、メディア、有識者、市民活動団体、教育・スポーツ・文化関係団体、読書・食育推進団体、行政など、幅広い関係団体の参加を得て、「早寝早起き朝ごはん」運動を民間主導の国民運動として推進することを目的としています。23年1月現在、全国協議会の会員団体数は236です。
 設立以来、本運動に賛同する方々や、本全国協議会に参加する様々な団体などとともに、子どもの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動を展開しています。また、本全国協議会ではコミュニティサイトにより、紙芝居や楽曲などの無料ダウンロードコンテンツなどを提供しています(早寝早起き朝ごはんコミュニティサイトについては参照:早ね早おき朝ごはん コミュニティサイト - みんなでいっしょに 「はやね はやおき あさごはん!」(※早ね早おき朝ごはんウェブサイトへリンク))。

(2)子どもの生活習慣づくり支援事業
 平成18年度から実施した「子どもの生活リズム向上プロジェクト」の成果をもとに、子どもたちの基本的な生活習慣の定着に向けた普及啓発を実施しています。
 平成22年度は生活習慣の夜型化といった社会の影響を受けやすい子どもたちの睡眠(就寝)時間の改善を中心に、子どもの基本的な生活習慣の定着に向けて、家庭や企業への更なる理解を求めるため、認識度や課題などについての調査研究などを行うとともに、地域貢献活動を行っているJリーグとも新たに連携し、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進しました。
 また、地域における研究成果の普及啓発では、これまで各地域で実践された取組をもとに、全国5箇所で「子どもの生活習慣づくりフォーラム」を開催し、基調講演やパネルディスカッションなどを実施しました。親子や学校関係者、民間団体などの参加があり、子どもの基本的な生活習慣の大切さについて啓発を図りました。

2 青少年の健全育成の推進

 平成22年4月に、子ども・若者育成支援施策の総合的な推進のための枠組みの整備及び社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を地域において支援するためのネットワークの整備を目的に「子ども・若者育成支援推進法」が施行されました。この法律に基づく大綱として、同年7月に、「子ども・若者ビジョン」が作成され、施策の基本的な方針等が定められています。
 子ども・若者育成支援に関する施策は、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用を始めとし、社会のほぼあらゆる分野にわたることから、関係する国・地方公共団体の機関、民間団体等の間で緊密な連携を図りながら推進していきます。

(1)青少年の体験活動の推進

 国立青少年教育振興機構の調査によると、子どもの頃の「自然体験」や「友だちとの遊び」、「地域活動」などの体験活動が豊富な人ほど、「経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい」といった「意欲・関心」や、「電車やバスに乗ったとき、お年寄りや身体の不自由な人には席をゆずろうと思う」といった「規範意識」、「友だちに相談されることがよくある」といった「人間関係能力」が高い傾向にあることが明らかになっています。
 「教育振興基本計画」では、特に重点的に取り組むべき事項の一つとして、豊かな心と健やかな体の育成のために、この「体験活動等の推進」を掲げています。
 文部科学省では、児童の豊かな人間性を育むため、「豊かな体験活動推進事業」において、自然の中での宿泊体験活動など体験活動の推進を図っています。
 平成20年度からは農林水産省、総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、小学生の農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを推進しています。
 さらに自然体験活動の教育効果を高め、青少年が安全で安心な体験活動を行うための指導者を養成するとともに、ニート、ひきこもりなどの青少年を対象にした社会性や就労意欲の向上のための体験活動、発達段階に応じた体験活動など、青少年の様々な課題に対応した体験活動を推進しています。

(2)国立青少年教育振興機構を中心とした体験活動の振興

1.青少年教育施設における体験活動の推進

 青少年教育施設は、体験活動を中心とする様々な教育プログラムの実施や、青少年が行う自主的な活動の支援などにより、健全な青少年の育成や青少年教育の振興を図ることを主たる目的として設置された施設です。
 国立青少年教育振興機構は、傘下の国立青少年教育施設(国立オリンピック記念青少年総合センターを含む全国28施設)を通じて青少年を対象とした総合的・体系的な体験活動などの機会を提供しており、平成22年度は約500万人の方に利用されています。また、利用団体の研修に対する教育的な指導・助言や青少年教育に関する調査研究などを実施し、それらの成果を全国約500の公立青少年教育施設や関係団体などへ普及しています。(参照:独立行政法人 国立青少年教育振興機構(※独立行政法人国立青少年教育振興機構ウェブサイトへリンク)
 また、同機構が全国27カ所に設置している国立青少年交流の家及び青少年自然の家については、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月7日閣議決定)等を踏まえ、文部科学省では、「国立青少年教育施設の在り方に関する検討会」を開催し、平成23年2月に同検討会の報告書「今後の国立青少年教育施設の在り方について~新たな視点に立った体験活動の推進について~」が取りまとめられました。報告書では、自治体・民間への移管については、自治体・民間団体ともに資金面・人材面において厳しい状況にあることや、自治体・民間団体に対して文部科学省が行った意向調査において、いずれも移管の受け入れは困難であるとの回答を踏まえ、現時点では極めて困難であるとしています。その上で、引き続き移管に向けた調整を行いつつ、調査研究機能など青少年教育のナショナルセンターとしての機能の強化や、効果的・効率的な施設配置及び「新しい公共」の概念を踏まえた管理運営の導入などについて提言がなされています。文部科学省では、本提言を踏まえ、さらに中央教育審議会において検討を行うこととしています。
(参照:国立青少年教育施設の在り方に関する検討会

沢活動の様子(国立花山青少年自然の家)
沢活動の様子(国立花山青少年自然の家)

図表2-1-8 国立青少年教育施設(28施設)

図表2-1-8 国立青少年教育施設(28施設)

2.子どもゆめ基金

 未来を担う夢を持った子どもの健全育成を進めるため、国立青少年教育振興機構に設置されている「子どもゆめ基金」により民間団体への助成を行っています。具体的には民間の団体が行う青少年教育に関する活動のうち、(ア)子どもの体験活動の振興を図る活動、(イ)子どもの読書活動の振興を図る活動、(ウ)子ども向けソフト教材を開発・普及する活動を助成の対象としています。「子どもゆめ基金」は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月7日閣議決定)等を踏まえ、基金原資の政府出資分100億円を国庫返納しましたが、民間団体による草の根レベルでの活動を支援していくことは重要であることから、引き続き、同機構の運営費交付金の中から助成を行っています。平成22年度は2,068団体に助成を行いました。
(参照:子どもゆめ基金(※子どもゆめ基金ウェブサイトへリンク)

(3)非行防止活動の推進

 平成22年度は、社会や家庭の変化に伴い、青少年に関わる問題も多様化・複雑化する中で、問題行動などの未然防止や解決と青少年の健全育成を図るために、一人一人の規範意識を醸成し、社会的自立を進めていくことについて、青少年育成指導者向けの研修会を開催しました。

(4)青少年を有害環境から守るための取組の推進

 青少年を取り巻く社会環境は、発達途上にある青少年の人格形成に様々な影響を及ぼします。とりわけ書籍、雑誌、テレビ、インターネットなどの各種メディア上の性的な内容や、非常に暴力的な表現などが、青少年に悪影響を及ぼすことが憂慮されています。
 特に近年、子どもたちの携帯電話利用が進展するなか、携帯電話依存による生活習慣の乱れや、インターネット上の違法・有害情報サイトのトラブルに子どもたちが巻き込まれるケースが多発しており、深刻な問題となっています。
 文部科学省では、青少年を有害環境から守るための各種取組を推進しています(参照:第2部第8章第2節)。

第4節 国民一人一人の生涯を通じた学習の支援

 「生涯学習」とは、一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。また、人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択し学ぶことができ、その成果が適切に評価される社会として「生涯学習社会」という言葉も用いられます。
 近年、人々の学習需要が高まり、またその内容が多様化・高度化するのに伴い、生涯学習社会実現への期待は、ますます高まっていると言えます。文部科学省では、国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなど、「生涯学習社会」の実現のための取組を進めています。

1 多様な学習機会の提供

(1)放送大学の充実・整備

 放送大学は、大学教育の機会を幅広く国民に提供することを目的として昭和58年に創設された通信制の大学です。テレビ・ラジオの放送を利用して、いつでも誰でも学ぶことができます。また全都道府県に「学習センター」や「サテライトスペース」を設置し、学生の学習を支援するとともに、公開講演会の開催などを通じて地域の生涯学習の振興にも寄与しています。
 平成22年度第2学期現在約8万5千人が学んでおり、これまでに120万人以上の学生が学び、6万人を超える卒業生を送り出しています。放送大学の学生は、職業、年齢、地域を問わず多様であり、学生の有職率は約6割、学生の半数以上が40歳以上で、身体に障害を有する方も約500名在籍しております。このように、我が国の生涯学習の中核的機関として大きな役割を果たしています。
 放送大学では、豊かな教養を培うとともに実生活に則した専門的学習を深められるよう、学部・大学院をあわせて約330科目が開設されています。既存の学問分野に捕らわれず、学習者の目的に合わせて自由に選択することが可能となっています。また、教員の専修免許をはじめとした各種資格の取得や、特定分野の授業科目群を設定し学位以外の履修証明を与える「放送大学エキスパート(科目群履修認証制度)」などの実施により、国民の多様化・高度化する学習需要に応えています。
 放送大学では、大学教育における学習環境の充実を図るため、平成23年10月からはBSデジタル放送による授業番組の提供を開始する予定です。これにより、高画質な放送授業やデータ放送による学習関連情報の提供など、放送のデジタル化を活かした質の高い授業番組を全国に提供することとしています。さらに、一部の放送授業番組についてはインターネットによる配信も行っており、順次提供科目数の拡大を進めています。このほか、開かれた大学として、22年10月には一部の授業科目をオープンコースウェア(OCW)*1として一般公開しています。このような取組を通じて、大学教育へのユニバーサルアクセスを推進します。

(2)大学における生涯学習機会の提供

 生涯学習社会の実現に向け、各大学(短期大学を含む)においては、地域・社会における「知の拠点」として、社会人特別入学者選抜、夜間・昼夜開講制、科目等履修生、通信教育、履修証明制度、公開講座などを実施しています。このうち、公開講座は多くの大学で開講され、大学における教育・研究の成果を直接、地域住民などに学習機会として提供する役割を担っています(平成20年度は、少なくとも992大学で3万1,544講座が開講され、129万7,792人が受講)。

(3)専修学校教育の振興

 専修学校は、学校教育法において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことを目的とする学校であるとされ、実践的な職業教育、専門的な技術教育などを行う教育機関として、大きな役割を果たしています(平成22年5月現在、学校数3,311校、生徒数63万7,897人)。専修学校は、入学資格の違いにより、高等学校卒業程度を入学資格とする「専門課程」(専門学校)、中学校卒業程度を入学資格とする「高等課程」(高等専修学校)、入学資格を問わない「一般課程」の三つの課程に分かれています。なお、高等学校等における教育費負担の軽減を目的とした高等学校等就学支援金の制度に伴い、その支給対象に専修学校高等課程が含まれています。
 文部科学省では、専修学校教育の振興方策として、多様な学習ニーズへの対応を充実させるよう、社会人等の多様なライフスタイルに即した学習機会の提供を可能とする単位制・通信制の導入に向けた検討を行っています。また、留学生の受入れ促進に向けて、留学生の受入れ数に関する取扱いの見直しを平成22年9月に行うとともに、留学生の日本での就職・生活支援を行う事業を実施しています。
 さらに、専修学校教育の質の向上及び社会の理解増進を図るため、学校評価や情報公開等への対応の在り方について検討を行いました。23年3月には、「高等専修学校における情報提供等への取組に関するガイドライン」を策定し、各都道府県及び学校に対してこのガイドラインの周知を行い、高等専修学校における、より積極的な情報提供等の取組を促しました。


※1 オープンコースウェア(Open Course Ware)
大学や大学院の講義を録画し、インターネットなどを利用して無償で公開すること。

(4)文部科学省認定社会通信教育

 文部科学省では、学校法人や公益法人の行う通信教育のうち、社会教育上奨励すべきものについて認定を行い、その普及・奨励を図っています。平成23年2月末現在、文部科学省認定社会通信教育は、27団体113課程であり、21年における1年間の延べ受講者数は約7万5千人となっています。

(5)民間教育事業者、NPOとの連携等

 民間教育事業者や教育分野で活動を行うNPOなどの民間団体は、「新しい公共」の担い手として、国民の多様な活動を支える上で大きな役割を果たしており、今後その役割はますます重要なものになると考えられます。
 文部科学省では、民間団体と行政の協働による取組の充実を図るため、民間のノウハウを活いかした各種のモデル事業や調査研究などを実施しているほか、NPO活動の実態把握や、事業実施上の課題や解決方法、うまく取組が進んだポイントなどの分析を行った実践的な事例集を作成するなど、民間団体の取組の活性化や官民のネットワーク形成を支援しています。

2 学習成果の評価・活用

(1)高等学校卒業程度認定試験

 高等学校卒業程度認定試験は、高等学校を卒業していないなどの者に対し、高等学校卒業者と同程度以上の学力があることを認定する試験です。この試験の合格者には、大学などへの入学資格が付与されます。
 平成22年度における延べ出願者数は3万1,902人、受験者数は2万8,399人、合格者数は1万1,437人となっています(図表2-1-9)。また、出願者のうち約半数となる51.3パーセントを高等学校中途退学者が占めていることから、この試験が、中途退学者などの再チャレンジの場となっていることが分かります。
 試験合格者のおよそ半数は大学などへ進学していますが、この試験は、就職などの機会に学力を証明する手段としても活用されています。文部科学省では、就職などの際にこの試験を活用した場合に、採用試験や採用後の処遇において高等学校の卒業者と同等に扱われるように、パンフレットやポスターの配布などにより、制度の周知に努めています。

図表2-1-9 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

図表2-1-9 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

(2)学校における単位認定

 高等学校においては、生徒の能力・適性、興味・関心などが多様化している実態を考慮し、選択の幅を広げるという観点から、生徒の在学する高等学校での学習の成果に加えて、1.大学、高等専門学校、専修学校などにおける学修、2.知識・技能審査の成果に係る学修、3.ボランティア活動、就業体験活動(インターンシップ)、4.高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修など、在学する高等学校以外の場における学修の成果について、各高等学校の判断により、学校の単位として認定することが可能になっています。
 大学などにおいては、教育内容の充実に資するため、専門学校における大学教育相当の学修など大学以外の教育施設などにおける学修について、当該大学などにおける単位として認定できることとしており、297大学(全体の41.1パーセント(平成20年度))において活用されています。

(3)大学評価・学位授与機構による学位授与

 大学・大学院の正規の課程を修了してはいないものの、大学・大学院を卒業又は修了した者と同等以上の学力を有すると認められる者に対して、高等教育段階の様々な学習成果を評価し、学位を授与しています。平成22年度においては、1.短期大学、高等専門学校卒業者などが大学、専攻科において更に一定の学習を行った場合に当たる者として2,778人に、2.同機構の認定する教育施設の課程の修了者に当たる者として1,112人に同機構から学位が授与されています。

(4)準学士・短期大学士・専門士・高度専門士

1.準学士・短期大学士

 高等専門学校卒業者には「準学士」の称号が付与されています。また、以前は短期大学卒業者には、「準学士」の称号が付与されていましたが、平成17年7月の「学校教育法」の改正により、17年10月以降の短期大学卒業者には、「短期大学士」の学位が授与されています。

2.専門士・高度専門士

 専門学校修了者のうち、修業年限2年以上、総授業時数1,700時間以上などの要件を満たすと文部科学大臣が認めた課程の修了者に対しては、「専門士」の称号が付与されます。平成22年度では、7,213学科の修了者に対し、専門士の称号が付与されています。
 また、修業年限4年以上で、総授業時数3,400時間以上などの要件を満たすと文部科学大臣が認めた課程の修了者に対しては、「高度専門士」の称号が付与されます。平成22年度では、503学科の修了者に対し、高度専門士の称号が付与されています。「高度専門士」の称号を付与できる課程の修了者には、同時に大学院への入学資格も与えられることになっています。

(5)検定試験の質の確保

 現在、民間の検定試験には、全国規模で実施され年間の受検者数が100万人を超える検定や、専門的な知識・技能を測るために特定の受検者を対象に実施される検定、各地域における文化活動や観光産業などの活性化を目的とした検定など、その実施主体や目的、内容などにおいて多種多様なものが存在しています。こうした検定試験によって測られる学習成果が適切に評価され、学校や職場、地域社会などで活いかされるためには、検定試験の質の向上と信頼性の確保が必要です。
 文部科学省では、民間事業者などが行う検定試験の評価に向けた主体的な取組を支援する方策について検討するため、「検定試験の評価の在り方に関する有識者会議」を開催し、平成22年6月に「『検定試験の評価ガイドライン(試案)』について(検討のまとめ)」を取りまとめ、検定試験の評価手法、評価の視点や内容、情報公開が望まれる項目などを公表するとともに、その周知・普及に努めるなど、民間事業者などが行う検定試験の評価や情報公開の取組を促進することにより、検定試験の質の確保や向上を図っています。

Column No.28 『学習サービスの質の向上等に向けた国際標準化民間団体の取組~ISO29990の発行~』

 日本国内には、非公式の教育・訓練サービス(例えば、民間事業者による学習塾や語学教室、大学などが行う正規の学生でない一般市民を対象にした講座など)が多くありますが、その質を国際レベルで横断的に比較・評価する仕組みがこれまでありませんでした。そうした中、「国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)」において、平成22年9月、「非公式教育・訓練のための学習サービス」に関する国際規格として、ISO29990が発行されました。現在、各国で、本基準を用いて個々の教育事業者などを認証するための取組が進められているところです。こうした国際的な動きが、日本国内の非公式の教育・訓練サービスの質を保証する仕組みづくりのきっかけとなり、学習者が安心して学習できる環境づくりが進むことが期待されます。

~ISO29990について~
 この規格では、非公式教育・訓練のための学習サービスを提供する事業者が、良質なサービス提供を行うために備えるべき事項を定めています。具体的には、学習サービスの提供プロセスに関して、学習サービスの計画や学習者の習熟状況のモニタリングを適切に行うことなどが求められています。また、学習サービス事業者のマネジメントに関しては、財務管理やリスク管理、内部監査を適切に行うことなどが求められています。

3 国際成人力調査の実施

 国際成人力調査(PIAAC=ピアック)は、経済協力開発機構(OECD)が進める新しい国際比較調査で、欧米諸国や日本を含む26か国が参加します。この調査は、全国の16歳から65歳までの男女個人を対象に、「成人が日常生活や職場で必要とされる技能(成人力)」をどの程度持っているかを調べることを目的としています。平成22年度には、設問内容、回答方法などを検証するため、予備調査を実施しました。今後は、23年度内に本調査を実施し、25年度に国際報告書が公表されます。この調査結果は、我が国の生涯学習や学校教育に関する施策立案に活用されることが期待されます。

4 生涯学習に関する普及・啓発から学習成果の活用へ

 生涯学習の振興を図るためには、生涯を通じて学習することの意義について国民の理解を深め、自ら学ぶ意欲を喚起するための普及・啓発が重要です。こうした普及・啓発の一環として、文部科学省は、地方公共団体との共催により、広く国民一般に対し、生涯学習に関する活動を実施する場を全国的な規模で提供する「全国生涯学習フェスティバル」を平成元年から毎年開催しています。平成22年度は、官民協働の生涯学習を通じて、地域をどう変革していくかということをテーマに掲げ、課題ごとに実践、研究協議を行い、その取組のきっかけづくり、あるいは経過報告の場として、平成22年11月20日から22日までの3日間にわたり、「全国生涯学習フォーラム高知大会(まなびピア高知2010)」を開催しました。全国から特色ある取組を行う参加者などが集い研究協議などを行うテーマ別フォーラムを実施する本事業は、アンケートにおいて92パーセント余りの方が、「地域や社会的課題を解決するための活動を行うに当たって参考になった」と答えるなど、生涯学習活動の成果を社会的課題の解決に生かす取組を全国各地に拡大する機会として大きな成果を上げています。

第5節 現代的課題への対応

1 教育分野における子ども・子育て支援施策

 平成22年1月、新たな「少子化社会対策大綱」として「子ども・子育てビジョン」が閣議決定されました。
 子どもは社会の希望であり、未来の力であるからこそ、社会全体で子どもと子育てを応援していくことが求められています。
 これまで「少子化対策」として、様々な計画の策定や対策が講じられてきました。厚生労働省の平成22年人口動態統計月報年計(概数)によると、出生数は約107万1千人で前年より増加し、合計特殊出生率は1.39で前年より上昇しています。各種の調査によれば、多くの若者が将来家庭を持つことを望み、希望する子どもの数は平均2人以上となっており、家庭を築き、子どもを産み育てるという個々人の選択が尊重され、それが実現される社会を築くことが大切です。
 このため、「子ども・子育てビジョン」においては、子どもを大切にする(チルドレン・ファースト)とともに、全ての子どもの育ちと子育てを切れ目なく包括的に地域のネットワークで支えること、また、個人の希望する結婚、出産、子育てを実現するという観点から、子どもを生み育てることに夢を持てる社会を目指すことを基本的な考え方として、各種施策を講じていくこととしています。
 また、個人が希望を普通にかなえられるような教育の環境を社会全体で整備していかなくてはなりません。子どもと子育てを応援することは、「未来への投資」であるという考え方に基づき、次代を担うすべての子どもの教育機会を保障するなど、社会全体で子どもを育てる環境づくりに取り組む必要があります。
 こうしたことから、文部科学省においては、

  1. 教育にかかる保護者の経済的負担の軽減
  2. 認定こども園の設置促進や幼稚園における預かり保育・子育て支援の充実
  3. 家庭教育に関する情報や学習機会の提供、相談体制の充実など、社会全体の協働による家庭教育支援
  4. 「放課後子ども教室推進事業」(放課後子どもプラン)などによる子どもの安全・安心な居場所の確保と様々な体験・交流活動の機会の提供

などに取り組んでいます。

2 高齢社会への対応

 急速に進展する高齢化に対応し、今後、我が国が活力ある豊かな高齢社会へ円滑に移行していくためには、高齢者に適切な学習機会を提供するとともに、ボランティア活動など社会参加活動を促進することが重要です。
 このため、高齢者が生きがいのある充実した生活を実現することができるよう、公民館をはじめとする社会教育施設などを拠点として、高齢者の学習要求に応じた各種の学級・講座の開設や世代間交流などの事業が実施されています。

3 人権教育の推進

 文部科学省では、憲法及び教育基本法の精神にのっとり、学校教育及び社会教育を通じて、人権尊重の意識を高める教育の推進に努めています。平成12年12月に施行された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づき、人権教育及び人権啓発に関する施策を総合的かつ計画的に進めるため、14年3月に「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定されました。基本計画においては、人権の大切さを教育する取組や、重要な人権課題(女性、子ども、障害者、高齢者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、犯罪被害者等、インターネットによる人権侵害など)に対する教育の取組について盛り込んでいます。なお、平成23年4月1日に同基本計画の一部変更の閣議決定がなされ、第4章の2各人権課題に「北朝鮮当局による拉致問題等」が加えられました。社会教育分野では、「社会教育による地域の教育力強化プロジェクト」の中で、人権教育など、行政だけではなく、市民やNPOなどの民間が主体となって課題に取り組むことが期待されるテーマを具体的に指定して、地域の課題解決に役立つ仕組みづくりのための実証的共同研究などを行い、地域が課題を解決する力の強化を図っています。

4 男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興

(1)男女共同参画社会の形成

 男女共同参画社会の実現は、21世紀の我が国の最重要課題であり、「男女共同参画社会基本法(平成11年6月公布・施行)」や同法に基づき策定された「男女共同参画基本計画」により、各府省において総合的かつ計画的な取組が進められています。
 平成22年12月17日には「第3次男女共同参画基本計画」が閣議決定され、本計画では32年までを見通した長期的な施策の方向性と、今後5年間に男女共同参画社会の実現に向けて政府一体に取り組む課題や具体的施策が記述されています。特に、第11分野では、「男女平等を推進する教育・学習」、「多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実」、「学校教育の分野における政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」において取組を一層充実させることとされています。
 また、科学技術分野において国際競争力を維持・強化し、多様な視点・発想を取り入れた研究活動を活性化させる上でも、女性研究者の活躍促進は重要です。このため、今回新たに第12分野「科学技術・学術分野における男女共同参画」が独立の分野とされました。
 文部科学省では、本計画を踏まえ、引き続き男女平等を推進する教育・学習の充実などを図っていきます。

(2)教育・研究分野における男女共同参画に関する取組

 文部科学省では、男女共同参画社会の形成に向けて、学校・家庭・地域等あらゆる分野において男女平等を推進する教育・学習の充実などを図っています。
 学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じて、男女の平等や相互の理解・協力について適切に指導するとともに、男女が共に各人の生き方、能力、適性を考え、主体的に進路を選択する能力・態度を身に付けられるよう、進路指導や就職指導に努めています。
 また、社会教育においては、男女が各人の個性と能力を十分に発揮し、社会のあらゆる分野に参画していくための学習機会の充実を図っています。女性が主体的に働き方・生き方を選択できるよう、結婚、妊娠、出産といったライフイベントを視野に入れ、長期的な視点で自らの人生設計を行うことを支援するため、「女性のライフプランニング支援総合推進事業」を実施しています。

(3)国立女性教育会館における活動

 我が国唯一の女性教育のナショナルセンターである国立女性教育会館(NWEC(ヌエック))は、男女共同参画社会の形成の促進に資する女性教育の振興を担っています。
 事業としては、1.基幹的な女性教育指導者等に対する研修、2.喫緊の課題に係る調査研究、3.女性教育に関する情報の収集・提供、4.国内外の女性教育関係者のネットワーク形成などのための交流の4つの機能を柱として、全国の女性教育施設などと連携しながら活動しています。平成22年度は、大学における男女共同参画を推進するため、新たな取組として「大学・研究機関のための男女共同参画推進研修」を実施したほか、大学との連携による学習プログラムの開発等を実施しました。交流事業においては「男女共同参画交流特別週間(らんざん交流ウィーク)」、「交流学習会議」、「男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム」をそれぞれ特徴を持たせて行い、三大交流事業として拡充しました。このほか、国際的事業として米国国立科学財団との共催により「女性研究者のエンパワーメントと新領域創成に向けた日米シンポジウム」を開催したほか、新たにカンボジア王国女性省と協定を結びました。情報事業においては、館内から利用できる海外女性情報専門のデータベースの追加など、女性情報ポータルWinet(ウィネット)の充実に取り組みました。

5 児童虐待の防止

 近年、児童虐待の防止については、さまざまな施策の推進が図られていますが、痛ましい児童虐待は後を絶たず、児童相談所への相談対応件数も平成22年度には5万件(平成23年度7月公表速報値)を超えるなど、児童虐待は依然として、早急に取り組むべき社会全体の課題となっています。
 このような状況の中、児童虐待の定義の拡大・明確化や早期発見を図るための通告義務の範囲の拡大などを内容として、平成16年に「児童虐待の防止等に関する法律」が改正されました。さらに、19年5月には、児童の安全確認などのための立入調査などの強化、保護者に対する面会、通信の制限の強化などを内容とした改正が行われました。
 児童虐待は、その未然防止、早期発見・早期対応や虐待を受けた児童生徒の支援について、家庭・学校・地域社会・関係機関が密接に連携する必要があります。そのため、文部科学省では、従前から都道府県などを通じて、学校教育関係者や社会教育関係者に対して児童相談所への通告義務などについて周知するほか、家庭教育支援などを行っています。
 平成17年度から18年度にかけては、「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を実施しました。具体的には、学校・教育委員会における全国的な児童虐待防止に関する実践事例の収集・分析や、海外の児童虐待防止に向けた先進的取組に関する調査・分析を行い、18年5月にその成果を取りまとめました(参照:「学校等における児童虐待防止に向けた取組について(報告書)」(学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究会議)(概要))。この調査研究の成果を考慮し、教職員向けの研修モデル・プログラムの検討を行い、虐待を受けた子どもへの支援などについて教職員の対応スキルの向上を図るよう、研修教材を作成し、21年1月に配布しました。この研修教材については、学校現場においてより幅広い活用が図られるよう21年5月にCD-ROM化し、教育委員会に配布しています。
 また、養護教諭の児童虐待への対応の充実を図る一助とするため作成した「養護教諭のための児童虐待対応の手引」を平成19年12月に配布し、学校現場で活用されています。
 さらに、平成22年3月には、学校と市町村、児童相談所などの関係機関の連携が十分でないとの指摘を踏まえ、虐待が疑われる児童の出欠状況などについて学校などから市町村や児童相談所に情報提供する指針を策定し、それを周知するとともに、学校・教育委員会などに対し、児童虐待の早期発見・早期対応、通告後の関係機関との連携などを進める上での留意点について、改めて周知しました。また、平成16年度より11月が「児童虐待防止推進月間」と定められたことを受け、22年度においても厚生労働省をはじめとした関係機関と協力し、集中的な広報・啓発活動を実施しました。
 このほかにも、児童虐待の防止などのために必要な体制の整備に資するものとして、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの外部の専門家を活用した学校の教育相談体制の充実に努めています。

6 消費者教育の推進

 昨今、高齢者の消費者トラブルや、食の安全に関する問題など、国民の消費者問題への関心が高まっており、平成21年9月には消費者庁及び消費者委員会が設置されるなど、消費者の利益の擁護及び増進を図る上で必要な環境の整備が進んでいます。
 その中でも、国民一人一人が自立した消費者として、安心して安全で豊かな消費生活を営むために、消費者教育は重要な役割を担うものです。
 「消費者庁及び消費者委員会設置法」、「消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」及び「消費者安全法」の審議においては、消費者教育の重要性が指摘され、消費者安全法に、国及び地方公共団体は、消費生活に関する教育活動に努めなければならないことが規定されました。また、衆・参両議院の付帯決議においても、学校教育、社会教育における施策をはじめとしたあらゆる機会を活用しながら、全国における一層の推進体制の強化を図ることが決議されました。
 さらに、22年3月には新たな「消費者基本計画」が閣議決定され、消費者政策の基本的方向において、消費者に対する啓発活動の推進と消費生活に関する教育の充実に関する必要な施策が盛り込まれるなど、引き続き消費者教育が重要な施策として位置付けられています。
 文部科学省では、20年3月に小・中学校学習指導要領、21年3月に高等学校学習指導要領を改訂し、例えば、中学校の技術・家庭科において、消費者の基本的な権利と責任について指導することとするなど、消費者教育に関する内容の充実を図りました。
 また、平成22年度は、関係機関と協力し、教員の消費者教育に関する指導力向上のための講座や、大学や地域の関係団体等と連携し、習得した知識が具体的な行動に結びつくような消費者教育の内容及び方法についての実証的な調査研究を実施したほか、近年消費者被害が多発している若者と高齢者を対象とした「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」をとりまとめ、消費者教育を推進する際の参考となるよう、大学及び教育委員会に対し周知を行うなど、消費者教育の推進に取り組みました。
 今後とも、新たな消費者基本計画や改訂した学習指導要領などを踏まえ、学校教育及び社会教育における消費者教育を推進していきます。

7 環境教育・環境学習の推進

(1)環境教育の意義

 現在、温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化し、環境問題への対応が人類の生存と繁栄にとって緊急かつ重要な課題となっています。豊かな自然環境を守り、私たちの子孫に引き継いでいくためには、エネルギーの効率的な利用など環境への負荷が少なく持続可能な社会を構築することが大切です。そのためには、国民が様々な機会を通じて環境問題について学習し、自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが重要であり、特に、21世紀を担う子どもたちへの環境教育は極めて重要な意義を有しています。
 平成18年12月に改正した「教育基本法」では、教育の目標として、「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと」(第2条第4号)が新たに規定されています。文部科学省では、国民がその発達段階に応じて、あらゆる機会に環境の保全についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育や社会教育において環境教育の推進のために必要な施策に取り組んでいます。
 平成20年7月29日に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」には、生涯を通してあらゆるレベル、あらゆる場面の教育において低炭素社会や持続可能な社会について教え、学ぶ仕組みを取り入れていくことの必要性が盛り込まれており、文部科学省では同計画を考慮した環境教育を推進していきます。

(2)環境教育・環境学習推進のための施策

 「教育基本法」の改正などを受けて、平成20年3月に小・中学校、21年3月に高等学校の学習指導要領を改訂し、社会科や理科、技術・家庭科など関連の深い教科を中心に環境教育に関する内容の充実を図りました。例えば、小学校の社会科では「節水や節電などの資源の有効な利用」(3・4学年)、中学校の理科では、「自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察」(第1分野、第2分野)、また、高等学校の家庭科では、「環境負荷の少ない生活、持続可能な社会を目指したライフスタイルを工夫し、主体的に行動する」(家庭基礎)と記述されています。
 また、文部科学省では、環境教育を一層推進するための施策を実施しています。まず、米国の提唱による「環境のための地球規模の学習や観測(GLOBE)計画」に参加する協力校の指定、環境教育の実践発表大会(全国環境学習フェア)の開催、環境省と連携・協力し、教員などを対象とした研修などを実施しています。
 さらに、「豊かな体験活動推進事業」において、児童生徒の豊かな人間性や社会性をはぐくむため、体験活動を推進しています。特に、平成20年度からは全国の小学校において、農山漁村における宿泊体験活動を推進するため、農林水産省・総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを支援しています(参照:第2部第2章第1節2(2))。
 学校施設においても、環境への負荷の低減を図るとともに、施設を教材として環境教育に活用して太陽光発電や断熱化の仕組み・効果を学習するなど、学校を地域への環境教育の発信拠点とするため、農林水産省、経済産業省及び環境省と連携して、エコスクール(環境を考慮した学校施設)の整備を推進しています(参照:第2部第9章第2節3(1))。
 社会教育においては、公民館などの社会教育施設を中心として、地域における社会教育関係団体などが連携し、環境保全などの地域の課題を解決していくための取組を支援し、地域の教育力の向上を図っています。
 また、次代を担う青少年の育成を図るため、自然体験活動の指導者養成に取り組むとともに、青少年をめぐる様々な課題に対応した体験活動を推進しています。さらに、国立青少年教育振興機構において、国立青少年教育施設の立地条件や特色を活かした自然体験活動などの機会と場の提供、民間団体が実施する体験活動などに対する「子どもゆめ基金」による助成などを通して、青少年に対する環境教育を推進しています(参照:第2部第1章第3節2)。

8 読書活動の推進

(1)読書活動の意義

 読書は、我々の人生をより豊かなものにするだけでなく、特に子どもにとっては、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことができないものです。
 このため文部科学省では、子どもの読書活動を推進するとともに、学校図書館の充実や生涯学習の拠点である公立図書館の機能の向上に取り組んでいます。

(2)政府全体の取組

 子どもの読書活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、平成13年12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」(「子どもの読書活動推進法」)が公布・施行され、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、4月23日を「子ども読書の日」とすること等を定めています。
 また、この法律に基づき、20年3月に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第二次)」(子どもの読書活動基本計画)が閣議決定されました。本計画は、おおむね5年間にわたる施策の基本的方針と具体的な方策を明らかにしたものです。
 また、平成17年7月には「文字・活字文化振興法」が成立し、国民の間に広く文字・活字文化についての関心と理解を深めるようにするため、毎年読書週間(10月27日~11月9日(文化の日を中心にした2週間))の初日である10月27日が「文字・活字文化の日」として制定されました。さらに、20年6月には、「文字・活字文化振興法」の制定から5年目の22年(西暦2010年)を「国民読書年」とすることが国会で決議されるとともに、新しい時代における図書館制度の一層の整備・充実を図るため図書館法が改正されました。

(3)読書活動推進のための施策

 文部科学省では、国民の間に広く子どもの読書活動についての関心と理解を深めるため、各種施策を実施しています。

1.地域における読書活動の推進

 「子どもの読書活動基本計画」では、国は、本計画期間中に50パーセント以上の市町村において「子ども読書活動推進基本計画」(市町村推進計画)が策定されるよう、都道府県及び市町村の相談に応じることなどにより取組を促していくこととされており、文部科学省の調べでは、平成22年度末時点で、全都道府県と810市町村(全市町村の約46パーセント)において市町村推進計画が策定され、引き続き、地域の実情を踏まえつつ、市町村推進計画の策定が求められています。
 また、文部科学省では、「子どもの読書活動推進法」に基づき、子ども読書の日を記念して“子ども読書活動推進フォーラム”を開催し、文部科学大臣表彰の授与などを行うとともに、子どもの読書に関する情報をホームページなどにより提供しています。
 さらに、住民にとって「地域の知の拠点」としての図書館が、誰もが利用しやすく、身近なところで読書ができる施設となるための環境整備を支援しています。そして、読書活動をはじめとする図書館の機能やサービスを充実するため、図書館の設置及び運営上の望ましい基準の改正作業を進めています(参照:第2部第1章第2節2(2))。
 なお、平成22年は国民読書年でもあり、政府広報や民間団体の行う国民読書年記念イベントを通じた広報、「国民読書年に関するホームページ」の開設(平成23年3月まで)等により、読書活動の気運の醸成に努めてきました。また、今日の国民の読書や読書環境の現状や課題を把握・分析し、読書根の意識を高める効果的かつ効率的な取組の検討を行う「国民の読書推進に関する協力者会議」(座長:福原義春株式会社資生堂名誉会長)を開催し、議論を行っています。

子ども読書の情報館HP
子ども読書の情報館HP

2.学校における読書活動の推進

(1)学校における読書活動の推進
 「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(第2次)では、学校における学習活動を通じた読書習慣の確立とともに、学校図書館が、児童生徒の自由な読書活動や読書指導の場としての「読書センター」の機能と、教育課程の展開に寄与する「学習情報センター」の機能を果たし、学校教育の中核的な役割を担うことが掲げられています。
 また、平成17年7月の「文字・活字文化振興法」には、学校の教育課程全体を通じて、読む力や書く力などを涵かん養することを定めています。
 さらに、平成19年6月の学校教育法改正により、義務教育の目標として新たに「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基本的な能力を養うこと」が規定されました。また、先般改訂された新学習指導要領では、「児童(生徒)の言語活動を充実すること」が新たに盛り込まれるとともに、引き続き「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り」、児童生徒の「主体的、意欲的な学習活動や読書活動を充実すること」が明記されています。
 文部科学省の調べでは、平成20年5月現在、朝の読書活動を実施している公立学校の割合は、小学校で89.9パーセント(19年87.2パーセント)、中学校で81.9パーセント(19年77.5パーセント)、高等学校で29.8パーセント(18年30.8パーセント)となっています。また、ボランティアなどの協力を得ている学校や公共図書館との連携を実施している学校も増加しており、各学校において積極的な取組がなされています。

(2)学校図書館の充実
 子どもの豊かな読書経験の機会を充実させていくためには、子どもの知的活動を推進し、多様な興味・関心に応える魅力的な図書資料を整備・充実させていくことが重要です。また、各教科などにおいて多様な教育活動を展開していくために、学校図書館を充実させていくことが求められています。
 公立義務教育諸学校における学校図書館の図書については、学校の規模に応じて整備するべき蔵書数の目標を定めた「学校図書館図書標準」(平成5年3月)があります。「学校図書館図書標準」の達成に向けた図書整備の経費として、19年度から23年度までの「新学校図書館図書整備5か年計画」により、5年間で毎年約200億円、総額約1,000億円の地方財政措置が講じられることとされています。
 文部科学省の調べでは、「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は、平成19年度末において、小学校で45.2パーセント、中学校で39.4パーセントであり、学校図書館図書の整備は必ずしも十分に進んでいるとは言えない状況であり、各教育委員会や学校において「学校図書館図書標準」の達成に向けた蔵書の計画的な整備が引き続き求められます。
 平成22年度において、「確かな学力の育成に係る実践的調査研究」のメニューの一つとして、児童生徒の自発的・主体的な学習活動の促進、教員のサポート機能の強化等を図るため、学校図書館の有効な活用方法に関する調査研究を実施しました。事業の成果は各都道府県に情報提供し、学校図書館の一層の充実に努めていきます。

(3)司書教諭の計画的養成・配置の促進
 学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導を行うなど、司書教諭は、学校図書館を活用した教育活動や読書活動の中心的な役割を担います。司書教諭は、学校図書館法上、平成15年4月以降12学級以上の学校には必ず置かなければならないこととされています。司書教諭が各学校でその役割を十分に果たしていくためには、校長のリーダーシップの下、司書教諭が中心となって教員、学校図書館担当事務職員、ボランティアなどと連携・協力し、それぞれの立場から学校図書館の機能の充実を図っていくことが必要です。
 文部科学省では、引き続き司書教諭の養成のための講習会を実施し、有資格者の養成に努めるとともに、司書教諭の配置が促進されるよう周知を図っていきます。

第6節 国立教育政策研究所における研究・事業活動

 国立教育政策研究所は、教育政策に関する総合的な国立の研究機関として、初等中等教育から高等教育、生涯学習、文教施設までの教育行政全般にわたって、政策に関する基礎的事項の調査研究を進めています。また、国際的な共同研究への我が国の代表としての参画、児童生徒の学力の全国的な実態把握、教育委員会や学校と連携した調査研究、国内の教育関係者への情報提供など、幅広い活動を展開しています。
 平成23年3月には、平成27年度までの5年間を対象とする新たな中期目標を定め、様々な調査研究などの成果を通じて教育政策の形成に寄与していくこととしています。

1 国立教育政策研究所における研究・事業活動の内容

 本研究所は、調査研究活動から得た成果を教育政策の企画・立案に有意義な知見として集約・提示することを主要な役割としています。そのため、広く所内外の研究者が参画するプロジェクトチームを組織し、大学への投資効果などを研究する「教育財政及び教育費負担の在り方等に関する基礎的研究」、教員養成や教員研修の実態について把握・分析を行う「教員の質の向上に関する研究」、今後求められる資質・能力の効果的な育成の在り方を探る「教育課程の編成に関する基礎的研究」などの調査研究を行っています。
 また、OECDが実施している「生徒の学習到達度調査(PISA)」や「国際成人力調査(PIAAC)」、国際教育到達度評価学会(IEA)が進めている「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」などの国際的な比較研究に我が国を代表して参画し、問題作成、調査実施、結果の分析などを担当しています。平成22年12月には21年に実施したPISAの第4回調査の結果が公表されました(参照:第2部第2章第1節1(4))。
 さらに、児童生徒の学力の実態などを把握するための「全国学力・学習状況調査」(参照:第2部第2章第1節1(4))において調査問題の作成や結果の分析、解説資料の作成を行っているほか、学習指導要領改訂に必要な資料を得るとともに各学校における教育課程編成及び指導方法等の改善充実を図るため、特に重要な課題について研究テーマを示し、指定校や指定地域で実践的な研究を推進する研究指定校事業を行っています。このほか各種の指導資料を作成・配布しています。

2 研究活動等の成果の公表など

 本研究所は、研究所の研究・事業活動に関する報告書や指導資料、事例集などについては、研究所のホームページや研究所内の教育図書館で広く公開しています。
 また、全国各地の教育研究所などから構成される全国教育研究所連盟において中心的な役割を果たすとともに、シンポジウムの開催や、研究成果に基づく援助・助言などを行っています。

平成22年度教育改革国際シンポジウム
平成22年度教育改革国際シンポジウム

お問合せ先

生涯学習政策局政策課政策審議第二係

-- 登録:平成23年11月 --