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特集1 スポーツ立国の実現

※第1部は、平成22年度までの動き、統計資料に基づき記述しているが、一部についてはおおむね平成23年7月頃までの動き、統計資料に基づき記述している。

第1節 スポーツ基本法の制定 ~50年ぶりの新たな基本法の制定~

 平成23年6月17日、「スポーツ基本法」が参議院で可決、成立し、同年8月24日施行されます。昭和36年6月16日にスポーツ振興法が公布されて以来、50年ぶりに全面改正されました。
 我が国のスポーツの振興は、「スポーツ振興法」に基づき施策を推進してきました。しかし、少子高齢化や情報化の進展に伴う様々な社会問題が顕在化し、スポーツ振興の重要性が増す中にあって、「スポーツ振興法」には、

  • 現在の主要施策である地域のスポーツクラブの育成、ドーピング防止活動支援、競技者育成などに関する規定がない
  • スポーツ権の概念やスポーツ仲裁についての言及がない
  • プロスポーツを対象としていない

など、スポーツの現状や新しい課題に十分に対応しきれなくなっているのではないか、との指摘が近年なされており、スポーツの振興のための新たな法律を制定する必要性がクローズアップされるようになってきました。
 このような中、「スポーツ基本法」の検討は、平成19年頃から、超党派の国会議員で構成される議員連盟において開始され、23年5月に超党派の案として「スポーツ基本法案」がとりまとめられました。同法案は、同月には8会派の共同提案として衆議院に提出され、衆議院(6月9日)、参議院(6月17日)において、いずれも全会一致で可決・成立しました。
 「スポーツ基本法」は、スポーツに関し、基本理念を定め、国・地方公共団体の責務やスポーツ団体等の努力等を明らかにするとともに、スポーツに関する施策の基本となる事項を定め、施策を総合的・計画的に推進し、国民の心身の健全な発達、明るく豊かな国民生活の形成、活力ある社会の実現及び国際社会の調和ある発展に寄与することを目的としています。
 また、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことが人々の権利である」ことや、スポーツ立国戦略で盛り込まれた考え方である地域スポーツと競技スポーツの「好循環」について盛り込まれています。
 さらに、プロスポーツを正面から対象とすること、ドーピングやスポーツに関する紛争処理の規定を盛り込むことなど、「スポーツ振興法」には規定されていなかった内容が新たに盛り込まれています(図表1-1-1)。
 文部科学省においては、今後、スポーツ立国戦略(参照:第3節)に掲げた基本的方向性も踏まえつつ、「スポーツ基本法」に基づき、新たな「スポーツ基本計画」の策定に向けて、検討を進めていくこととしています。
 この特集では、スポーツの価値と社会的意義、「スポーツ基本法」制定に至るまでの我が国のスポーツ行政の歩みを振り返るとともに、平成22年8月に策定した「スポーツ立国戦略」に基づく現在の取組について考察します。

図表1-1-1 スポーツ基本法の概要

図表1-1-1 スポーツ基本法の概要

第2節 我が国のスポーツ行政のこれまでの歩み

 第1節で述べたように、平成23年6月にはスポーツ基本法が成立し、新しい時代に向けたスポーツの推進が始まりました。本節では、まず、スポーツの価値と社会的意義、そしてスポーツ基本法制定に至るまでの我が国のスポーツ行政の歩みについて見ていきます。

1 スポーツの価値と社会的意義

(1)スポーツの価値

 スポーツは、人々に大きな感動や楽しみ、活力をもたらすものであり、言語や生活習慣の違いを超え、人類が共同して発展させてきた世界共通の文化の一つです。
 人間は、人生をより豊かに、充実して生きるため、様々な身体的・精神的な欲求の充足を求め、その中から様々な文化を創造してきました。
 その中でもスポーツは、体を動かすという人間の本源的な欲求に応えるとともに、爽快感、達成感、他者との連帯感などの精神的充足や楽しさ、喜びをもたらすという内在的な価値を有しており、極めて重要なものの一つであるといえます。
 また、スポーツは、人間の可能性の極限を追求する営みの一つであり、この意味で、トップアスリートたちの極限へのひたむきな挑戦は、先端的な学術研究や芸術活動とも共通する高度な文化的行為といえるでしょう。
 社会の複雑化や高度化、少子高齢化、情報化の進展など、社会環境や価値観が急激に変化する中で改めて心身の豊かさや健やかさが問われる今日、心身の両面に影響を与える文化としてのスポーツの重要性はますます高まっています。

(2)スポーツの社会的意義

 スポーツは社会的にも多様な意義を有し、私たちが明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で不可欠な存在です。スポーツ立国戦略では、スポーツの社会的意義として次のようなものを挙げています。

1.青少年の健全育成

 スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、コミュニケーション能力やリーダーシップ、克己心やフェアプレイ精神を培い、実践的な思考力、判断力をはぐくむなど、青少年の心身の健全な発達に資するものです。
 世論調査から見ても、青少年の健全育成の観点からスポーツに注目する割合が比較的高いといえます。例えば、スポーツ活動を行った理由・目的として、健康・体力づくりや楽しみ・気晴らし、運動不足の解消に続いて、「友人・仲間との交流として」という理由を挙げる者も多く(図表1-1-2)、また、母親に対するアンケートでも、スポーツ活動に期待することとして礼儀やマナー、仲間と協力する姿勢など、人との関わりに関する項目が上位に見られます(図表1-1-3)。

図表1-1-2 運動・スポーツを行った理由

図表1-1-2 運動・スポーツを行った理由

図表1-1-3 スポーツ活動に母親が期待すること

図表1-1-3 スポーツ活動に母親が期待すること

2.スポーツ交流による地域社会の再生

 スポーツを通じた交流は、地域の一体感や活力を醸成し、人間関係の希薄化などの問題を抱える地域社会の再生につながります。地域住民が自主的に運営するスポーツクラブが地域コミュニティの担い手として育つこと、すなわちスポーツを通じた「新しい公共」の形成が期待されます。
 世論調査でも、地域におけるスポーツ振興の効果として「地域コミュニティの形成・活性化」を期待する者は4割近くに上り(図表1-1-4)、高い期待がうかがえます。

図表1-1-4 地域におけるスポーツ振興の効果

図表1-1-4 地域におけるスポーツ振興の効果

3.スポーツ産業の広がり等による経済的効果

 スポーツ振興によるスポーツ産業の広がりは、新たな需要と雇用を生み、我が国の経済成長に資するものです。また、スポーツによる国民の心身の健康の保持増進は、医療・介護費抑制などにつながると考えられます(図表1-1-5)。

図表1-1-5 経済的効果の例

図表1-1-5 経済的効果の例

4.スポーツを通じた国際交流や社会活力の喚起

 スポーツは世界共通のルールの下に言語の壁を超えて行われるものであり、諸外国との相互理解や友好親善にも大きな役割を果たします。
 また、オリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会における日本人選手の活躍など、競技者のひたむきな挑戦やその結果として生まれる記録、勝利する姿は、多くの人々に夢と感動を与え、社会全体の活力となります(図表1-1-6)。

図表1-1-6 国民のスポーツに対する関心

図表1-1-6 国民のスポーツに対する関心

2 スポーツ振興法からスポーツ立国戦略策定までの経緯

(1)スポーツ振興法

 昭和36年、オリンピック東京大会を3年後に控え、盛り上がる国民の世論を背景に、我が国におけるスポーツの振興に関する施策の基本を明らかにする「スポーツ振興法」が制定されました。
 同法は、スポーツの定義、国や地方公共団体における計画の策定、指導者の充実や施設の整備などのスポーツの振興のための措置、国の補助などを網羅的に定めており、我が国におけるスポーツ振興の基本となってきました。

(2)スポーツ振興基本計画

 「スポーツ振興法」の制定後、文部省(当時)では、スポーツ振興施策について、数次にわたり保健体育審議会に諮問を行い、その答申を受けて施策を展開してきました。
 平成12年には、スポーツ振興投票制度(「スポーツ振興くじ」)の開始などといった新たな状況の下、青少年の体力・運動能力の低下傾向、身近なスポーツ環境の整備充実の必要性の高まり、国際競技力の長期的・相対的低下傾向などのスポーツをとりまく諸課題に、中長期的な視点に立って対応するため、「スポーツ振興法」に基づく「スポーツ振興基本計画」が策定され(18年改定)、施策の推進の上で大きな役割を果たしました。

(3)スポーツ立国戦略の策定

 上記(1)(2)で見てきたように、文部科学省では、これまで「スポーツ振興法」に基づき「スポーツ振興基本計画」を策定し、施策を推進してきました。

「スポーツ振興基本計画」では、実現すべき政策目標として

  1. スポーツの振興を通じ、子どもの体力の低下傾向に歯止めをかけ、上昇傾向に転ずること。
  2. 生涯スポーツ社会実現のため、できるかぎり早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が50パーセントとなること。
  3. オリンピックにおけるメダルの獲得率が、夏季・冬季合わせて3.5パーセントとなること。

を掲げており、その達成に向けて多様な施策が推進されてきました。
 文部科学省をはじめ関係者による多面的な取組を通して、子どもの体力の低下傾向に歯止めがかかり、成人のスポーツ実施率やオリンピックにおけるメダル獲得率が上昇するなど、一定の成果を得てきましたが、いずれも現時点では「スポーツ振興基本計画」の掲げる目標値には達していません。
 また、一方で、少子高齢化や情報化の進展に伴う様々な社会問題が顕在化し、スポーツ振興の重要性が増す中、制定から半世紀を経過した「スポーツ振興法」は、

  • 現在の主要施策である地域のスポーツクラブ育成、ドーピング防止活動支援、競技者育成などに関する規定がない
  • スポーツ権の概念やスポーツ仲裁についての言及がない
  • プロスポーツを対象としていない

など、スポーツの現状や新しい課題に十分に対応し切れなくなっているのではないか、との指摘も近年なされており、スポーツ振興のための新たな法律を制定する必要性がクローズアップされるようになってきました。
 このため、文部科学省では、「スポーツ振興法」の見直しと新たな「スポーツ基本法」の制定を視野に入れながら、今後のスポーツ政策の基本的な方向性を示すスポーツ立国戦略を平成22年8月26日に策定しました。(参照:第3節)

3 予算面から見たスポーツ施策の状況

 最後に、スポーツ振興施策を推進するために必要な我が国のスポーツ関係予算について見てみましょう。我が国のスポーツ予算は、平成23年度で約228億円であり、増加の幅に差はあるものの、近年では増加傾向にあります。
 その内訳を見てみると、国の予算においては、競技スポーツが大きな比重を占めていることが分かります。また、学校体育は、平成24年度から中学校で必修となる武道の実施に向け、中学校武道場の整備について重点的に取り組んだことから、予算が増加しています(図表1-1-7)。
 それでは、国際的に見た場合に、我が国のスポーツ関係予算はどう捉えられるでしょうか。図表1-1-8は、各国のスポーツ関係予算(学校体育を除く。)をGDPとの対比で見たものです。連邦政府がスポーツ関係予算を持たず、団体や州政府が対応しているアメリカ合衆国の場合を除いて、各国ともGDP比で我が国の2倍から3倍の比率でスポーツ関係予算を支出している状況となっています。
 次に国の予算ではなく、地方におけるスポーツ関係の歳出はどうなっているでしょうか。図表1-1-9を見ると、地方におけるスポーツ関係歳出は、額・歳出合計中の割合ともに平成7年度をピークに半減しております。

図表1-1-7 我が国におけるスポーツ関係予算の推移

図表1-1-7 我が国におけるスポーツ関係予算の推移

図表1-1-8 各国のスポーツ関係予算(学校体育を除く)

図表1-1-8 各国のスポーツ関係予算(学校体育を除く)

図表1-1-9 地方におけるスポーツ関係歳出

図表1-1-9 地方におけるスポーツ関係歳出

Column No.11 スポーツ振興基金とスポーツ振興くじ

 国費では行き届き難いスポーツ振興活動への助成を行い、スポーツ振興の補完的財源としての役割を果たしているのがスポーツ振興くじとスポーツ振興基金です。

スポーツ振興くじ助成を受けて整備された芝生
スポーツ振興くじ助成を受けて整備された芝生

地域スポーツ活動の様子
地域スポーツ活動の様子

(1)スポーツ振興くじ

 スポーツ振興くじは、Jリーグの試合の結果(勝敗・得点)を対象とするくじの収益により、地方公共団体・スポーツ団体が行う地域スポーツの振興や環境整備などの事業に助成する制度です。豊かなスポーツ環境づくりのための財源確保を目的として「スポーツ議員連盟」により提案され、平成10年5月に議員立法として成立した「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」により創設されました。
 スポーツ振興くじの収益は、3分の1が地方公共団体などへ、3分の1がスポーツ団体へ助成金として支給され、グラウンドの芝生化や地域のスポーツ施設整備、地域でのスポーツ教室の開催など、主として誰もが身近にスポーツに親しむことのできる環境を整備するための事業に充てられています。残りの3分の1は国庫に納付され、教育・文化の振興等に充てられます。
 スポーツ振興くじの全国販売は平成13年3月から始まり、平成14年度からその収益を活用して様々なスポーツ活動への助成が開始されました。その後、売上げが落ち込んだ時期もありましたが、高額当せん金くじ「BIG」発売などの取組により、平成20年度には過去最高の897億円を売り上げるなど回復を見せています。
 平成22年度は、以下の事業に対し、約103億円の助成を行いました。

平成22年度スポーツ振興くじ助成金配分額
助成区分 件数(件) 配分額
地域スポーツ施設整備助成 224 49億7,290万円
総合型地域スポーツクラブ活動助成 843 22億734万円
地方公共団体スポーツ活動助成 59 1億8,793万円
スポーツ団体が行う将来性を有する選手の発掘及び育成強化助成 47 5億2,689万円
スポーツ団体スポーツ活動助成 438 23億3,265万円
国際競技大会開催助成 1 7,346万円
合計 1,612 103億116万円

(2)スポーツ振興基金

 スポーツ振興基金は、平成2年に開催されたアジア競技大会における不振などを受け、我が国の競技水準の向上に向けた機運が高まる中、スポーツ関係者、経済界など民間各界からの要請と資金拠出の表明を受けて設立されました。
 政府出資金250億円と、民間からの寄附金約44億円の合計約294億円を原資に、その運用益等を財源として、トップアスリートの強化事業などに対する助成が行われています。
 平成22年度は、以下の事業に対し、約13.7億円の助成を行いました。

平成22年度スポーツ振興基金助成金配分額
助成活動名 件数(件) 配分額
スポーツ団体選手強化活動助成 122 3億3,299万円
スポーツ団体大会開催助成 136 3億9,472万円
選手・指導者スポーツ活動助成 (※) 588 6億4,016万円
合   計 846 13億6,786万円

※スポーツ振興くじの収益から充当。

第3節 スポーツ立国戦略について

 文部科学省は、平成22年8月、今後おおむね10年を見据え、スポーツ立国の実現に向けて必要となる施策の全体像を示すスポーツ立国戦略を策定しました。
 本節では、我が国のスポーツを取り巻く状況に触れつつ、スポーツ立国戦略の全体像、そしてスポーツ立国戦略が目指すスポーツ立国の将来像を明らかにしていきます。

1 スポーツ立国戦略の全体像

(1)スポーツ立国戦略の目指す姿~新たなスポーツ文化の確立~

 スポーツを通じて幸福で豊かな生活を実現することは、全ての人々に保障されるべき権利の一つであり、各々がその興味・関心、適性などに応じて、スポーツを「する」ことはもちろん、「観る」「支える(育てる)」といった様々な形でスポーツに親しむことのできる社会の形成は、幅広い世代の人々にとって大きな意義を有しています。
 こうした観点から、スポーツ立国戦略では、トップスポーツと地域スポーツが互いに支え合う「好循環」を実現することなどを通じ、「新しい公共」の理念の下、現状よりさらに多くの人々がスポーツに親しみ、スポーツの意義や価値、楽しさや感動を広く分かち、支え合う社会を築き、「新たなスポーツ文化」を確立することを目指しています。

(2)基本的な考え方と5つの重点戦略

 スポーツ立国戦略は、こうした「新たなスポーツ文化の確立」に向けて、2つの「基本的な考え方」を掲げています。
 第1に、「人(する人、観る人、支える(育てる)人)の重視」です。スポーツを実際に「する人」だけではなく、トップレベルの競技大会やプロスポーツの観戦など、スポーツを「観る人」、そしてスポーツボランティアや指導者といったスポーツを「支える(育てる)人」にも着目し、人々が生涯にわたってスポーツに親しむことのできる環境をハード(施設など)、ソフト(プログラム・指導者など)の両面から整備することを念頭に置いたものです。
 第2に、「連携・協働の推進」です。スポーツを人々にとって身近なものとするため、例えば地域スポーツクラブ・学校・スポーツ団体など、スポーツ界全体が連携・協働することにより、トップスポーツと地域スポーツの垣根をなくし、人材の好循環を生み出すことや、スポーツを通じた「新しい公共」の形成を推進し、社会全体でスポーツを支える基盤を整備することを掲げています。
 スポーツ立国戦略では、これらの「基本的な考え方」のもと、今後概ね10年間で実施すべき5つの重点戦略を掲げ、政策目標と実施すべき施策などを示しています(図表1-1-10・図表1-1-11)(参照:スポーツ立国戦略)。

図表1-1-10 スポーツ立国戦略の概要

図表1-1-10 スポーツ立国戦略の概要

図表1-1-11 スポーツ立国戦略(平成22年8月26日文部科学大臣決定)重点戦略と政策目標

図表1-1-11 スポーツ立国戦略(平成22年8月26日文部科学大臣決定)重点戦略と政策目標

2 スポーツ立国戦略推進のための施策

 それでは、スポーツ立国の実現に向けてスポーツ立国戦略を推進するためのスポーツ振興方策について、具体的に見ていきましょう。

(1)「新しい公共」を担う地域のスポーツコミュニティの形成

 スポーツ立国戦略が目指す「新たなスポーツ文化」(多くの人々がスポーツの楽しさや感動を分かち合う社会)を実現するためには、「新しい公共」の理念の下、人々が多様な形でスポーツに参画できる環境を実現する必要があります。
 また、スポーツは、地域住民の結びつきを強め、地域の一体感を生み、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の形成に大きく貢献する存在です。
 こうした観点から、スポーツ立国戦略では、互いに顔の見える家族や社会とのつながりの中で、住民同士が連携・協働することによりスポーツを主体的に楽しむことができる環境の整備に向けた取組を進め、スポーツを通じた「新しい公共」を担う地域のスポーツコミュニティの形成を促すこととしています。

1.スポーツ界の連携・協働による「好循環」の創出

 我が国では、地域において住民が楽しみや健康の保持増進などのために行うスポーツ(いわゆる地域スポーツ)、学校における体育、世界の頂点を目指すトップスポーツは、それぞれが別の目的をもった活動としてとらえられ、今まで連携が十分とはいえませんでした。
 スポーツを普及・定着させ、人々にとってより身近なものとするためには、トップスポーツと地域スポーツの垣根をなくし、両方を総合的に推進することにより、トップの伸長とすそ野の拡大を一体として進めることが必要です。
 現在活躍するトップアスリートは、地域や学校の中で育まれ、長期間にわたるたゆまぬ努力により、その才能を開花させたものです。また、トップスポーツにより培われるアスリートの技術や経験、人間的な魅力は社会的な財産であり、それらを地域や学校の場に還元することは、スポーツの活性化と裾野の拡大につながるとともに、新たな才能の発掘によるトップの伸長にも寄与することにつながります。
 このようなスポーツの人材の好循環を実現するためには、地域スポーツクラブ、学校、地方公共団体、スポーツ団体、企業などの組織が、自らの組織にのみ目を向けるのではなく、優れた技術・能力・施設を他者に開放し、互いに共有・活用し合う姿勢が必要です。
 文部科学省では、スポーツ界の連携・協働を強化し、人材の好循環を実現するため、主に次の施策を重点的に進めることとしています。

(ア)拠点クラブにおけるトップアスリートの配置

 文部科学省が、地域のスポーツ環境の整備のために推進してきた「総合型地域スポーツクラブ」は、平成22年7月現在、全国に約3,000か所設立されています(参照:本節(1)2.(イ))。
 文部科学省では、平成23年度から、トップアスリートの育成・強化を進めると同時に、この総合型地域スポーツクラブのうち、充実した活動基盤を持つ拠点となるクラブ、いわゆる「拠点クラブ」に、引退後のトップアスリートなどを配置し、周辺の複数のクラブや学校の体育・運動部活動に巡回指導を実施する体制を整備することとしています(図表1-1-12)。
 競技により培われたトップアスリートの技術や経験、人間的な魅力は、人々のスポーツへの関心や意欲を高め、地域スポーツの活性化や学校体育の充実、次世代アスリートの発掘や育成などにつながるとともに、地域での活躍は、引退したトップアスリートの能力や経験を発揮する場の確保にもつながります。
 また、これを起爆剤として、会員や指導者、財源の確保などの課題を抱える総合型地域スポーツクラブの自立を促すとともに、周辺のクラブや学校体育・運動部活動の支援を行うことにより、拠点クラブが、スポーツにおける「新しい公共」を担うコミュニティの拠点として発展することをねらいとしています。
 スポーツ立国戦略では、住民が身近にスポーツを行うことができる地理的な距離を考慮し、この拠点クラブを、広域市町村圏を目安として全国に300か所程度整備することを目標としています。文部科学省では、今後、この拠点クラブを中心として、地域のスポーツコミュニティの形成を進めていくこととしています。

図表1-1-12 平成23年度事業「元気な日本スポーツ立国プロジェクト」

図表1-1-12 平成23年度事業「元気な日本スポーツ立国プロジェクト」

Column No.12 トップアスリートが地域のスポーツ指導で活躍

 トップアスリートと身近に接することは、多くの人々がスポーツの楽しさを実感し、スポーツをするきっかけになるものと考えられます。
 また、運動をする子どもとしない子どもの二極化傾向に歯止めをかけ、子どもの体力向上にもつながることが期待されます。
 このため、文部科学省では競技団体の協力を得て、全国の小・中学校に様々なスポーツ選手を派遣する取組を行っています。
 トップアスリートが自らの豊かな経験や卓越した技術を基に、講話や実技指導等を行うことにより、参加した子どもからは、「運動は全部苦手だと思っていたけど、この授業を受けたらちょっとは出来ることがわかりました」(小学5年生・男子)、「運動が苦手な私にとって貴重な体験でした。今日の体験で少しは運動ができるようになったと思います」(中学3年生・女子)等の声が寄せられるとともに、スポーツをすることが楽しいと感じる比率や、今後スポーツをしたいと思う比率が増加するなどの成果が見られています。
 今後は、様々な世代の人々がスポーツに親しむきっかけとなるよう、総合型地域スポーツクラブにも引退後のトップアスリートを派遣することとしています。

サッカー
サッカー

体操
体操

(イ)大学を活用した分散型強化・研究拠点ネットワークの構築

 トップアスリートの育成は日本オリンピック委員会、中央競技団体が中心に実施し、国や日本スポーツ振興センターが支援していますが、大学や実業団(企業)が強化活動に多大な貢献をしている競技も少なくありません。
 今後、国際競技力のさらなる向上を図るためには、こうした競技も含め、先端的な研究や強化を行っている大学などとの連携による国全体としての強化・研究体制の構築など、ジュニア期からトップレベルに至る戦略的・体系的な強化体制を構築することが必要と考えられます。
 このため、文部科学省では、国全体で戦略的にトップアスリートの強化や競技力向上に向けた研究活動を促進するため、高度なトレーニング施設や研究活動を通じてトップアスリートの競技力向上に貢献している大学を「分散型強化・研究活動拠点」と位置づけ、ナショナルトレーニングセンター、国立スポーツ科学センター、中央競技団体などとのネットワーク化を図ることとしています。
 また、大学が有するソフト・ハードの資源(トレーニング環境、コーチやトレーナーなどの指導者、研究者等)は、地域のスポーツ活動にとっても貴重な社会的財産です。このため、競技力の向上はもとより、大学を拠点とした総合型地域スポーツクラブの運営や大学による地元のジュニアアスリートに対する育成活動などの地域貢献活動も支援することとしています。

2.ライフステージに応じたスポーツ機会の創造

 人々が多様な形でスポーツに参画できる環境を実現するためには、国民の誰もが、それぞれの体力や年齢、興味、関心などに応じて日常的にスポーツに親しむことのできる機会が確保される必要があります。
 このため、スポーツ立国戦略では、国民のスポーツ活動の現状と課題を考慮し、総合型地域スポーツクラブを中心とした地域スポーツ環境の整備やライフステージに応じたスポーツ活動の推進、そして学校における体育・運動部活動の充実などの取組を進めることとしています。

(ア)国民のスポーツ活動の現状と課題
(1)子どもの体力の現状と課題

 人間が発達・成長し、創造的な活動を行っていくために体力は必要不可欠なものであり、子どもの体力は「人間力」の重要な要素です。
 しかしながら、文部科学省が昭和39年から行っている「体力・運動能力調査」によると、60年ごろをピークに子どもの走る力、投げる力、握力などは、全年代において長期的に低下傾向にありました。
 こうした状況を受け、文部科学省では、「スポーツ振興基本計画」において「子どもの体力向上」を政策課題に掲げ、子どもの体力の重要性に関する普及啓発や、運動やスポーツに親しむ機会の提供などの取組を行ってきました。
 これまでの多様な取組により、我が国の子どもの体力は、最近10年間では、小学校低学年では横ばい、小学校高学年以上では緩やかな向上傾向を示し、昭和60年頃からの長期的低下傾向に歯止めがかかっており、一定の成果が見られました。
 しかし、体力水準の高かった昭和60年頃に比べると、依然として低い水準にとどまっています(図表1-1-13)。

図表1-1-13 子どもの体力・運動能力の年次推移

図表1-1-13 子どもの体力・運動能力の年次推移

 また、近年では、子どもの体力低下とともに、運動をする子どもとそうでない子どもの二極化傾向が見られます。特に中学校女子では、体育の授業を除く1週間の総運動時間が60分未満の生徒が3割を超えるなど、運動をほとんどしない子どもも多く、運動やスポーツへの関心や自ら運動する意欲、運動の楽しさや喜び、その基礎となる運動の技能や知識など、生涯にわたって運動やスポーツに親しむ資質や能力の育成が十分に図られていないことが懸念されます(図表1-1-14)。こうした状況の下、子どもが生涯にわたって運動やスポーツに親しむ基礎をつくる学校体育・運動部活動の重要性が一層高まっています。

図表1-1-14 1週間の総運動時間の分布

図表1-1-14 1週間の総運動時間の分布

(2)成人のスポーツ活動の現状と課題

 成人の週1回以上のスポーツ実施率は、平成21年度時点で45.3パーセントまで上昇しています(図表1-1-15)。
 スポーツ日数の年次推移(図表1-1-16)を見ると、スポーツを「年に1~3日」「3か月に1~2日」とまれにしか行わなかった層の減少傾向は緩やかである一方で、「月に1~3日」が大きく減少し、「週に1~2日」「週に3日以上」が大きく増加していることが分かります。このことから、成人の週1回以上のスポーツ実施率の上昇には、これまで一定程度スポーツを行っていた層が、健康やスポーツへの関心の高まりからさらに実施頻度を上げたことが影響していると推測されます。
 成人の週1回以上のスポーツ実施率を世代別に見ると、特に20代男性や30代女性で低くなっていることが分かります(図表1-1-17)。また、70歳以上の者については、実施率が5割を超える一方で、1年間に「運動・スポーツはしなかった」とする者が39.9パーセントと、加齢とともに二極化が進む傾向が見られます。

図表1-1-15 週1回以上運動・スポーツを行った者の割合の推移

図表1-1-15 週1回以上運動・スポーツを行った者の割合の推移

図表1-1-16 スポーツ実施日数の年次推移

図表1-1-16 スポーツ実施日数の年次推移

図表1-1-17 世代別の週1回以上のスポーツ実施率

図表1-1-17 世代別の週1回以上のスポーツ実施率

 なお、世論調査から「運動・スポーツを行わなかった理由」を見ると、「仕事(家事・育児)が忙しくて時間がない」が45.9パーセントと最も高く、特に20代~50代では6割を超えていますが、70歳以上では「体が弱いから」・「年をとったから」が大きな割合を占めており(図表1-1-18・図表1-1-19)、こうした世代間の違いを考慮した対応が成人の週1回以上のスポーツ実施率向上の鍵ともいえます。
 一方で、同調査において、今後スポーツを「行ってみたい」とする者の割合は86.5パーセントと高く、スポーツの実施意向自体が低下しているわけではありません。スポーツ立国戦略に掲げる目標の達成に向けて、成人の週1回以上のスポーツ実施率をさらに上昇させるためには、例えば30代女性が参加しやすい子育て支援とスポーツ活動の融合や、体力が低下している高齢者の取り組みやすい運動・スポーツの普及など、現代人のライフスタイルやニーズに対応したスポーツ振興方策により、人々のスポーツへの関心や実施意向を活かしていくことが必要です。

図表1-1-18 運動・スポーツを行わなかった理由

図表1-1-18 運動・スポーツを行わなかった理由

図表1-1-19 (世代別)運動・スポーツを行わなかった理由

図表1-1-19 (世代別)運動・スポーツを行わなかった理由

(イ)総合型地域スポーツクラブを中心とした地域スポーツ環境の整備
(1)総合型地域スポーツクラブの拠点化に向けた体制整備

 総合型地域スポーツクラブは、地域住民が自主的・主体的に運営し、身近な学校・公共施設などで日常的に活動する地域密着型のスポーツ拠点であり、生涯スポーツ社会の実現に寄与するほか、地域の子どものスポーツ活動の場の提供、家族のふれあい、世代間交流による青少年の健全育成、地域住民の健康維持・増進などの効果も期待されています。
 文部科学省では、クラブ育成アドバイザーの巡回指導や設立事例の情報提供などにより総合型地域スポーツクラブの設置を支援し、その全国展開を推進してきました。
 こうした取組の成果もあり、総合型地域スポーツクラブの数は平成14年度から22年度の過去8年間で5.8倍に、総合型地域スポーツクラブが設置されている市町村の数は2.9倍に増加しています。
 また、クラブ設置率(全市区町村数に対する総合型地域スポーツクラブが設置されている市区町村数の割合)は、22年度には71.4パーセントに達しています(図表1-1-20)。

図表1-1-20 総合型地域スポーツクラブの設置状況

図表1-1-20 総合型地域スポーツクラブの設置状況

 一方で、「平成22年度総合型地域スポーツクラブに関する実態調査結果」によれば、総合型クラブの現在の課題として、「会員の確保」が第一に挙げられています(図表1-1-21)。
 会員の確保や定着を図るためには、総合型地域スポーツクラブにおいて、地域住民のニーズを踏まえた魅力あるプログラムを提供していくことが鍵となると考えられます。このため、文部科学省では、平成23年度から拠点クラブに引退後のトップアスリートなどの優れた指導者を配置するとともに、周辺の複数の総合型地域スポーツクラブなどを対象に巡回指導を実施するなど、総合型地域スポーツクラブにおいて魅力あるスポーツサービスを提供するための体制を整備することとしています(参照:本節3(1)1.(ア))。

図表1-1-21 総合型地域スポーツクラブの現在の課題

図表1-1-21 総合型地域スポーツクラブの現在の課題

 また、総合型地域スポーツクラブの自己財源率を見てみると、自己財源率が50パーセント以下のクラブが全体の約半分を占めています(図表1-1-22)。
 「平成22年度総合型地域スポーツクラブに関する実態調査結果」において、「財源の確保」も大きな課題の一つに挙げられているように、総合型地域スポーツクラブが持続的に運営されるためには、少なくとも活動に見合った財源を確保することが必要です。
 そのためには、会員の確保を通じた会費収入の拡充はもとより、地域の企業や商店などからの寄附金を受け入れることも重要です。
 このため、文部科学省では、多くの総合型地域スポーツクラブが寄附税制(認定特定非営利活動法人制度)を有効に活用し、幅広い寄附金を受け入れるための取組を推進していきます。

図表1-1-22 総合型地域スポーツクラブの自己財源率

図表1-1-22 総合型地域スポーツクラブの自己財源率

 文部科学省では、こうした取組を通じ、会員や指導者、そして財源の確保といった課題を抱える総合型地域スポーツクラブの自立を支援し、総合型地域スポーツクラブが、「新しい公共」宣言(平成22年6月4日「新しい公共」円卓会議)にも記載されているように「地域住民が出し合う会費や寄附により自主的に運営するNPO 型のコミュニティスポーツクラブ」として、地域の課題(学校・地域連携や子育て支援など)の解決も視野に入れて主体的に地域のスポーツ環境を形成していくことを支援することとしています。

(2)身近なスポーツ活動の場の確保・充実

 総合型地域スポーツクラブの活動場所をはじめ、地域住民が身近にスポーツに親しみ、交流する場を確保するため、スポーツ立国戦略では、「身近なスポーツ活動の場の確保」に取り組むこととしています。
 我が国の体育・スポーツ施設数は、ピークであった昭和60年度に比べ、平成20年度には約7万か所減少しています。
 他方で、スポーツ活動を行わなかった理由として、場所や施設の不足を挙げる割合を見てみると、昭和60年度から平成21年度の間に2倍以上に増加しており、身近なスポーツ活動の場である体育・スポーツ施設の減少が、国民のスポーツ活動にマイナスの影響を与えている様子がうかがえます(図表1-1-23)。

図表1-1-23 我が国の体育・スポーツ施設数の推移と国民の意識

図表1-1-23 我が国の体育・スポーツ施設数の推移と国民の意識

 我が国では、学校体育・スポーツ施設と公共スポーツ施設が全体の8割以上を占めています(図表1-1-24)。これらの施設数の推移を見ると、いずれも減少傾向にあり、特に学校体育・スポーツ施設については、ピークであった平成2年度から20年度までの間に2万か所を超える大幅な減少となっています(図表1-1-25・図表1-1-26)。
 施設数が減少した背景には、1.少子化に伴う学校の統廃合などによる学校数の減少、2.地方公共団体の厳しい財政状況の下、既存の施設が閉鎖されたり、新たなスポーツ施設の整備が抑制されたことなどがあると考えられます。
 こうした体育・スポーツ施設の減少への対応としては、最も身近なスポーツ施設である学校体育・スポーツ施設を、地域住民にこれまで以上に有効に活用してもらうことが方策の一つと考えられます。
 現在、屋外運動場の約80パーセント、体育館の約87パーセント、水泳プールの約27パーセントが地域住民に開放されています。しかしながら、施設開放は行っているものの定期的ではない、利用手続が煩雑である、利用方法などの情報が不足しているなど、地域住民のニーズに十分対応しきれていない面も見られます。
 このため、今後、学校体育・スポーツ施設はこれまでの単に場を提供するという「開放型」から、学校と地域社会の「共同利用型」へと移行し、地域住民の立場に立った積極的な利用の促進を図っていくことが重要です。
 文部科学省では、地域のスポーツ施設整備を支援するとともに、学校体育・スポーツ施設の地域との共同利用を促進するため、地域住民が利用しやすい施設づくりの取組の推進や、更衣室を備えたクラブハウス・温水シャワーなどの整備の支援、また、休・廃校となった学校体育・スポーツ施設を有効活用するために必要な施設設備の整備の支援などに取り組むこととしています。

図表1-1-24 設置者別施設数(平成20年度)

図表1-1-24 設置者別施設数(平成20年度)

図表1-1-25 学校体育・スポーツ施設数の推移

図表1-1-25 学校体育・スポーツ施設数の推移

図表1-1-26 公共スポーツ施設数の推移

図表1-1-26 公共スポーツ施設数の推移

(ウ)ライフステージに応じたスポーツ活動の推進

 成人の週1回以上のスポーツ実施率の向上に向けて、本節2.(ア)で述べたような世代間の違いを考慮した上でスポーツ活動を推進する観点から、スポーツ立国戦略では、子どもに目安を持って運動やスポーツに取り組む習慣を身に付けさせるための指針の策定や、成人のスポーツ参加機会の拡充、高齢者の体力つくり支援など、ライフステージに応じたスポーツ振興策を掲げています。
 このため、文部科学省では、平成23年度から、幼児期の運動指針を作成し、具体的な運動例を示すなどの取組や、成人の週1回以上のスポーツ実施率の低い20代男性・30代女性や高齢者など各世代のスポーツ実態を調査分析し、スポーツ参加を促進するなどの取組を行うこととしています。
 また、文部科学省では、国民が各自の興味・関心に応じてスポーツに親しみ、日常生活の中にスポーツが定着することを目的として、全国スポーツ・レクリエーション祭(第23回大会は平成22年10月に富山県内各地で開催)や、「体育の日」を中心とした体力テストや各種スポーツ行事の実施、また、毎年10月を「体力つくり強調月間」として、広く国民に健康・体力つくりの重要性を呼び掛けるなどの運動を展開しています。
 さらに、多年にわたり地域や職場において、スポーツの振興に功績のあった人や団体に対し、その功績をたたえるため、生涯スポーツ功労者及び生涯スポーツ優良団体として文部科学大臣が表彰を行っています。

(エ)学校における体育・運動部活動の充実
(1)新学習指導要領の完全実施

 本節2.(ア)(1)で見てきたように、子どもの体力の低下や、運動をする子どもとそうでない子どもとの二極化傾向が続く中、学校体育の重要性は一層高まっています。
 学習指導要領においては、体育・保健体育は、心と体を一体としてとらえ、運動についての理解と合理的な実践を通して、生涯にわたって運動に親しむ資質・能力を育てることや体力の向上を図ることをねらいとしています。
 文部科学省では、平成20年1月の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」を受け、20年3月に小・中学校の学習指導要領を、21年3月に高等学校学習指導要領を改訂しました。併せて、小・中学校の体育科・保健体育科の年間標準授業時数は90時間から105時間に増加することとしました(小学校高学年は90 時間のまま。)。
 新学習指導要領には、小学校低学年からの体つくり運動の実施や中学校における武道・ダンスの必修化などが盛り込まれています(図表1-1-27)。この新学習指導要領は、小学校は平成23年度から、中学校は24年度から完全実施される予定です。また、高等学校は25年度から年次進行で実施される予定です。
 文部科学省では、新学習指導要領の円滑な実施に向けて、中学校で必修となる武道を安全かつ円滑に実施できるよう、中学校武道場の整備について重点的に取り組むなど、必要となる施設・用具・指導者の充実を図ることとしています。

図表1-1-27 学校段階ごとの体育の分野における改訂のポイント

図表1-1-27 学校段階ごとの体育の分野における改訂のポイント

(2)小学校体育活動コーディネーターの配置

 小学校では、体育の専科教員を置いている学校は少なく、指導体制の充実が求められています。
 また、体育の専門性を重視した指導の取組をしていない学校が、約半数近くあることも課題です(図表1-1-28)。

図表1-1-28 体力の専門性を重視した取組

図表1-1-28 体力の専門性を重視した取組

 このため、文部科学省では、小学校全体の体育授業や体育的活動を計画したり、担任とティーム・ティーチングで体育授業に取り組む「小学校体育活動コーディネーター」の配置や、体育授業・運動部活動における外部指導者の充実など、地域との連携による指導体制の充実のための取組を行うこととしています。

(3)運動部活動の支援

 運動部の活動は、スポーツに興味と関心をもつ同好の生徒が、より高い水準の技能や記録に挑戦する中で、スポーツの楽しさや喜びを味わい、豊かな学校生活を経験する活動であるとともに、体力の向上や健康の増進にも極めて効果的です。平成22年度においては、中学生の64.1パーセント、高校生の40.9パーセントが運動部活動に参加しています(図表1-1-29)。
 今回の中学校・高等学校の学習指導要領の改訂では、部活動を新たに総則に規定するとともに、その意義、教育課程との関連、運営上の工夫を行うなどの配慮事項について記載しました。

図表1-1-29 平成22年度運動部所属生徒数
区分 運動部所属生徒数(人)  生徒数(人)  所属率(パーセント)
男子 女子 男子 女子 男子 女子
中学校 1,359,597 921,646 2,281,243 1,817,273 1,740,893 3,558,166 74.8 52.9 64.1
高等学校 936,204 441,208 1,377,412 1,703,397 1,665,296 3,368,693 55.0 26.5 40.9

(出典)
 生徒数は文部科学省「学校基本調査報告書」、
 運動部所属生徒数は中学校:日本中学校体育連盟調べ、
 高等学校:全国高等学校体育連盟及び日本高等学校野球連盟調べ

 しかし、近年の児童生徒数の減少などにより学校の運動部活動に参加する児童生徒数が減少していることに伴って、単独校によるチーム編成ができないなど、競技種目によっては、その活動を継続することが困難な状況が生じています(図表1-1-30・図表1-1-31)。
 このため、文部科学省では、運動部活動などの指導における外部指導者の活用や複数の学校でチームを編成する複数校合同の運動部活動等を促進するための事業を実施しています。
 また、文部科学省では、運動部活動の在り方に関し、生徒のスポーツ機会を充実する観点から、全国中学校体育大会や全国高等学校総合体育大会(インターハイ)などの大会について、地域のスポーツクラブで活動する生徒や複数校で組織するチームなどに参加資格を認めたり、地域のクラブの大会との交流を実施することについて、主催する団体における検討を促すこととしています。

図表1-1-30 中学校における主な競技別運動部数の推移
  競技名 平成12年 平成22年 増△減数 増△減率(パーセント)
男子 軟式野球 8,992 8,919 △ 73 △ 0.8
バスケットボール 7,511 7,176 △ 335 △ 4.5
卓球 7,212 6,903 △ 309 △ 4.3
サッカー 7,085 6,909 △ 176 △ 2.5
陸上競技 7,250 6,336 △ 914 △ 12.6
女子 バレーボール 9,087 8,962 △ 125 △ 1.4
バスケットボール 7,765 7,456 △ 309 △ 4.0
ソフトテニス 7,696 7,252 △ 444 △ 5.8
陸上競技 7,138 6,242 △ 896 △ 12.6
卓球 6,270 5,928 △ 342 △ 5.5

(出典)日本中学校体育連盟調べ

図表1-1-31 高等学校における主な競技別運動部数の推移
  競技名 平成12年 平成22年 増△減数 増△減率(パーセント)
男子 硬式野球 4,183 4,115 △ 68 △ 1.6
バスケットボール 4,406 4,553 147 3.3
サッカー 4,267 4,185 △ 82 △ 1.9
陸上競技 4,337 4,377 40 0.9
卓球 3,864 4,265 401 10.4
女子 バレーボール 4,347 4,159 △ 188 △ 4.3
バスケットボール 3,976 4,064 88 2.2
陸上競技 4,040 3,961 △ 79 △ 2.0
バドミントン 3,386 3,845 459 13.6
剣道 3,320 3,043 △ 277 △ 8.3

(出典)全国高等学校体育連盟及び日本高等学校野球連盟調べ

(2)世界で競い合うトップアスリートの育成・強化

1.我が国の国際競技力の現状と課題

 平成23年は日本体育協会及び日本オリンピック委員会の創立100周年、平成24年は我が国がオリンピック競技大会に初めて参加してから100周年に当たります。過去のオリンピック競技大会における我が国のメダル獲得状況を見ると、1964(昭和39)年の東京オリンピック以降徐々に低下しはじめ、1996(平成8)年のアトランタオリンピックではメダル獲得率(オリンピック競技大会におけるメダル獲得数/当該大会における総メダル数)・数ともに低調な結果に終わるなど、主要各国と比較して、我が国の国際競技力は長期的・相対的に低下傾向にありました。
 一方、近年に目を移すと、2004(平成16)年のアテネオリンピックでは過去最多のメダル37個を獲得し、2008(平成20)年の北京オリンピックでは、過去5回の夏季大会でアテネオリンピックに次ぐメダルを獲得するなど、一時期の低迷状態を脱しつつある傾向がうかがえます(図表1-1-32(1)~図表1-1-33(2))。
 しかしながら、平成22年現在、「スポーツ振興基本計画」において目標としているメダル獲得率(直近に開催された夏季及び冬季オリンピック競技大会におけるメダル獲得数/それらの大会における総メダル数の合計数)3.5パーセントに達しておらず、また、メダル獲得数では、アジアにおけるライバル国である中国、韓国の後塵じんを拝している状況です(図表1-1-34)。

図表1-1-32(1) オリンピック競技大会におけるメダル獲得率の推移(夏季)

 図表1-1-32(1) オリンピック競技大会におけるメダル獲得率の推移(夏季)

図表1-1-32(2) オリンピック競技大会におけるメダル獲得率の推移(冬季)

図表1-1-32(2) オリンピック競技大会におけるメダル獲得率の推移(冬季)

図表1-1-33(1) オリンピック競技大会におけるメダル獲得状況(夏季)
開催年 開催都市(国)  メダル獲得数
1976 モントリオール(カナダ) 9 6 10 25
1988 ソウル(韓国) 4 3 7 14
1992 バルセロナ(スペイン) 3 8 11 22
1996 アトランタ(米国) 3 6 5 14
2000 シドニー(オーストラリア) 5 8 5 18
2004 アテネ(ギリシャ) 16 9 12 37
2008 北京(中国) 9 6 10 25
図表1-1-33(2) オリンピック競技大会におけるメダル獲得状況
開催年 開催都市(国)  メダル獲得数
1972 札幌(日本) 1 1 1 3
1988 カルガリー(カナダ) 0 0 1 1
1992 アルベールビル(フランス) 1 2 4 7
1994 リレハンメル(アメリカ) 1 2 2 5
1998 長野(日本) 5 1 4 10
2002 ソルトレークシティ(米国) 0 1 1 2
2006 トリノ(イタリア) 1 0 0 1
2010 バンクーバー(カナダ) 0 3 2 5
図表1-1-34 オリンピック競技大会における日本・中国・韓国のメダル獲得状況

 図表1-1-34 オリンピック競技大会における日本・中国・韓国のメダル獲得状況

2.トップアスリートの強化活動の充実
(ア)一貫指導システムの構築

 文部科学省では、これまで日本オリンピック委員会や国立スポーツ科学センター、中央競技団体などと連携しながら、「地域におけるタレント発掘・育成事業」を行ってきました。
 本事業は、小・中学生のように比較的早い段階において、運動やスポーツを実施していない子どもも含めた幅広い中から、特定のスポーツ種目に必要な素質を持つ人を選抜し、最適な競技の選択や指導を行うことを支援するものです。
 文部科学省では、ジュニア期から個人の持つ特性や発達段階に応じて一貫した指導理念や指針に基づく指導を行うことで、世界で活躍できるトップアスリートへと組織的・計画的に育成していく体制の整備を推進しています(図表1-1-35)。

図表1-1-35 地域におけるタレント発掘・育成事業一覧

地域におけるタレント発掘・育成事業一覧

(イ)トップアスリートに対する多方面からの高度な支援の実施

 英国やオーストラリアなど世界のスポーツ強豪国では、国家戦略として競技種目のターゲットをしぼり、トップアスリートに対して疲労回復方策や最高品質の競技用具の開発など強化・サポート戦略の総合展開を既に行っており、このような方策は今や世界の標準になりつつあるといえます。
 我が国においても、メダル獲得の可能性が高い種目にターゲットを設定し、トップアスリートに対するスポーツ医・科学・情報などを活用したトータルサポートや、日本の科学技術を活かした最先端の競技用具・トレーニング機器などの開発を行い、多方面からの専門的かつ高度な支援を戦略的・包括的に実施しています(図表1-1-12)。

(ウ)女性アスリートの支援

 スポーツ立国戦略では、女性アスリート特有のニーズを考慮した支援方策を打ち出しています。
 図表1-1-36に示されているとおり、1996(平成8)年以降、各オリンピック競技大会では、男子の競技種目数が頭打ちである一方で、女子の競技種目数は拡大し、メダル(種目)数が増加しています。
 この期間に開催されたオリンピック競技大会における日本人選手の参加率を見ると、女子が男子より高い状況となっており、メダル獲得率についても女子が男子を上回っています(図表1-1-37)。

図表1-1-36 オリンピック競技大会における女子メダル(種目)数の増加

図表1-1-36 オリンピック競技大会における女子メダル(種目)数の増加

図表1-1-37 オリンピック競技大会における日本人選手のメダル獲得率(性別)

 図表1-1-37 オリンピック競技大会における日本人選手のメダル獲得率(性別)

 また、オリンピック競技大会以外でも、2011(平成23)年の女子ワールドカップサッカー大会で女子サッカー日本代表チーム(なでしこジャパン)が優勝し、同年8月には、内閣総理大臣から国民栄誉賞が贈られるなど、女性トップアスリートが活躍しています。
 こうしたことから、メダル獲得数のさらなる増加のためには、近年、その活躍が目覚ましい女性トップアスリートの能力開発に注力することが効果的と考えられます。
 このため、文部科学省では、女性のライフサイクルに着目し、男女の性差を考慮した研究開発などの取組を重点的に実施していくこととしています。

Column No.13 2012ロンドンオリンピック強化支援の検討に関する懇談会(2012ロンドンオリンピック強化タスクフォース)

 文部科学省では、「スポーツ立国戦略」で、オリンピック競技大会の新たな目標として「過去最多を越えるメダル数」の獲得を掲げているところですが、2012ロンドンオリンピックに向けた対策については、早急な対応が求められています。
 このため、我が国のトップアスリートが世界の強豪国のアスリートに伍し、メダルを獲得できるように支援するための具体的な改善方策について、「プレイヤーズ・ファースト」の観点から、現場のニーズに即した迅速な検討を行う、「2012ロンドンオリンピック強化支援の検討に関する懇談会(2012ロンドンオリンピック強化タスクフォース)」(鈴木寛文部科学副大臣主催、実行委員長:岡田武史文部科学省参与)を平成23年3月15日に設置しました。
 4月11日には第1回の会議を開催し、現場のニーズに即した迅速な強化支援の改善方策や、女性アスリートの戦略的な強化支援方策などについて検討を行っています。

Column No.14 オリンピアンを支える「マルチサポート」

 トップアスリートに対して、スポーツ科学、医学、栄養学、心理学、生理学、情報戦略などあらゆる分野の専門スタッフがサポートする「アスリート支援」に加え、日本が得意としている科学技術を活かした最先端の競技用具やトレーニング機器などの「研究開発」を行う、こうした包括的・戦略的なサポートにより国際競技力を向上させるための仕組みが「マルチサポートシステム」です。

Column No.14 オリンピアンを支える「マルチサポート」

〈「アスリート支援」の例〉
○強化合宿での映像分析サポートや栄養サポート
○競技大会でのリカバリー・コンディショニングサポートやメンタルサポート
○トーナメント方式の競技大会での対戦相手の試合映像の撮影・分析・即時フィードバック
○強豪国の選手や戦略の情報収集・分析・フィードバック

〈「研究開発」の例〉
○競技特性にあった革新的ウェアの開発
○日本人の体格・パワーにあった自転車の開発
○体幹部を効果的・効率的に鍛えることができるトレーニング・マシンの開発

 また、競技大会では、選手がその時点で持っている能力をどこまで発揮できるかが重要なポイントとなるため、競技者のパフォーマンスの最大限の発揮に焦点を当てた、選手村外のサポート拠点である「マルチサポート・ハウス」を設置します。
 こうした「国際競技力の向上」と「最大限化」を支援することにより、オリンピック競技大会でのメダル獲得を目指しています。

医科学サポートスタッフによるコンディショニングチェック
医科学サポートスタッフによるコンディショニングチェック

情報戦略スタッフによる情報分析
情報戦略スタッフによる情報分析

3.トップアスリートのための強化・研究活動等の拠点構築
(ア)国立スポーツ科学センター

 日本と同様に、メダル獲得数が低迷していたオーストラリアが1981(昭和56)年にAIS(Australian Institute of Sports)を設立し、メダル獲得数を伸ばしたことや、1982(昭和57)年アジア競技大会(ニューデリー)で中国に、1998(平成10)年アジア競技大会(バンコク)で韓国にもメダル獲得数で抜かれたことなどがきっかけとなり、平成13年10 月に国立スポーツ科学センター(JISS)が設立されました。
 JISSは、科学的な分析に基づく効果的なトレーニング方法の開発やスポーツ障害などに対する医学的なサポート、スポーツに関する各種情報の収集・分析・蓄積・提供などを一体として行い、オリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会における我が国のメダル獲得率の向上に寄与しています。

フェンシングにおけるJISSのサポート
フェンシングにおけるJISSのサポート

(イ)ナショナルトレーニングセンターの整備

 トップレベル競技者の強化に当たっては、競技ごとの専用練習場や宿泊施設などを備え、集中的・継続的にトレーニングを行うことができる拠点の整備が不可欠となっています。米国、ロシア、中国、オーストラリア、ドイツ、フランス、韓国など、オリンピックのメダル獲得上位国のほとんどで、既にこうした機能を持つナショナルトレーニングセンター(NTC)が整備されており、競技力の向上に大きく貢献しています。こうした状況の下、我が国においてもNTC の整備が強く求められてきました。
 このため、文部科学省では、JISSが所在する東京都北区西が丘地区にNTCを整備し、平成20年1 月から供用を開始するとともに、NTC(西が丘)では対応できない冬季競技などについては既存の施設を競技別強化拠点として指定し、NTC(西が丘)とのネットワーク化を図っていくことにしました。(図表1-1-38)。

(1)NTC(西が丘)

 文部科学省では、平成16年度からトップアスリートが同一の活動拠点で集中的・継続的にトレーニングを行うためのNTC の整備を進めてきました。本施設は、屋内トレーニングセンター、陸上トレーニング場、屋内テニスコート、宿泊施設(アスリートヴィレッジ)から成り、20年1月から全面的に供用を開始しました。平成23年3月末日には宿泊施設の増築棟が竣工し、ロンドンオリンピックに向けてさらに充実した環境が整備されました。

(2)競技別強化拠点

 冬季、海洋・水辺系、屋外系のオリンピック競技、高地トレーニングについては、既存のトレーニング施設を競技別強化拠点に指定し、医・科学サポートや連携機関とのネットワーク化を図るなど、強化拠点として高機能化を図るための事業を実施しています。
 平成19年度から冬季競技など20競技等について、「NTC競技別強化拠点施設」に指定して、積極的に活用しています。

図表1-1-38 我が国のトレーニング拠点の状況

図表1-1-38 我が国のトレーニング拠点の状況

4.企業スポーツへの支援

 我が国のトップアスリートには、企業のスポーツチームに所属しながら競技活動を行っている者も多く、企業はこうしたトップアスリートの生活全般を支援するとともに、安定した練習環境を与えるなど、我が国の競技力の向上について重要な役割を担ってきました。
 しかし、近年の厳しい経済状況の影響などにより、企業が所有するスポーツチームが休廃部に追い込まれる事例が多くなっており、企業所属のトップアスリートの活動基盤に深刻な問題が生じています。
 こうした状況を受けて、文部科学省では、日本スポーツ振興センターを通じ、国内トップレベルのリーグを運営する組織に対して、マネジメント(運営管理)能力のある人材を配置するなど、リーグ運営の安定化や活性化を図ることを目指したトップリーグ運営助成を実施しています。
 また、平成22年度に、オリンピックメダリストの輩出などに貢献した企業などの団体を表彰する「スポーツ団体表彰」を創設し、第1回目の表彰を行いました(写真)。

第1回目の表彰

○受賞企業と所属選手(敬称略)
学校法人関西大学(高橋大輔)、学校法人梅村学園(浅田真央)、ダイチ株式会社(田畑真紀、穂積雅子)、日本電産サンキョー株式会社(長島圭一郎、加藤条治)、財団法人上月スポーツ・教育財団(長島圭一郎、加藤条治、高橋大輔)、綜合警備保障株式会社(吉田沙保里)、学校法人天理学園(穴井隆将)、学校法人山梨学園(浅見八瑠奈)、三井住友海上火災保険株式会社(上野順恵)

5.国際・国内競技大会の支援
(ア)オリンピックなどの国際競技大会の開催

 2010(平成22)年ワールドカップサッカー大会での男子サッカー日本代表チームの活躍など、国際競技大会における日本人選手の活躍は、国民に夢や感動を与え、国際社会における我が国の存在感を高めるものです。
 このような中で、我が国でのオリンピックをはじめとする国際競技大会の開催は、日本のトップアスリート強化につながることはもとより、世界のトップアスリートの競技を目の当たりにすることにより多くの国民に夢や感動を与えるなど、スポーツの振興や国際親善などに大きく寄与します。また、観光立国の推進・地域活性化にも資するなど、大きな意義や様々な波及効果を有するものです。
 文部科学省では、国際競技大会の招致・開催が円滑に行われるよう、準備運営団体や関係省庁との連絡調整を行い、必要な協力・支援を行っています。
 平成22年度においては、2022(平成34)年ワールドカップサッカー大会の日本招致への支援を行いましたが、開催地はカタールに決定しました。また、ラグビーワールドカップの日本招致にも協力し、2019(平成31)年には日本で開催されることが決定しています。

(イ)国民体育大会の開催

 国民体育大会は、広くスポーツを普及し国民の体力向上を図るとともに、地域のスポーツと文化の振興を図ることを目的として、文部科学省、日本体育協会、開催地都道府県が共同して主催し、都道府県対抗方式により毎年開催されている我が国最大の総合スポーツ大会です。
 平成22年の第65回大会では、冬季大会・本大会合わせて40競技が実施され、約2万4,000名の都道府県代表選手が天皇杯・皇后杯を目指し競い合いました(図表1-1-39)。

図表1-1-39 第65回国民体育大会(平成22年) 競技種目及び選手・監督数
季別(開催地) 正式競技 公開競技
冬季大会
(北海道)
3競技 スケート・アイスホッケー・スキー
2,937名
なし
本大会
(千葉県)
37競技 陸上競技・水泳等
20,973名
2競技 高等学校野球・トライアスロン
467名
40競技
23,913名
2競技
467名

(出典)文部科学省調べ

 国民体育大会の充実・活性化と大会運営の簡素・効率化を図るため、現在までに、既存施設や近接県の施設の活用、トップレベル競技者の参加促進、卒業した中学校又は高等学校の所在地からの出場が可能となる「ふるさと選手制度」の導入、夏・秋大会の一本化、大会規模の適正化(参加者の15パーセント削減)などの改革が進められてきました。また、冬季大会の安定した開催を図るため、開催地のローテーション化の実現にも取り組んでいます。
 さらなる改革を目指し、日本体育協会は、平成22年6月に「国民体育大会活性化プロジェクト」を設置し、現状の国体が抱える課題や問題点を整理し、より魅力ある国民体育大会の在り方について検討を行っています。

6.トップアスリートが安心して競技に専念できる環境の整備

 アスリートの引退後のキャリアパスが確立していることは、アスリートが安心して競技に打ち込めるだけではなく、才能あるより多くの青少年がスポーツの世界へ進むことを後押しすることとなり、我が国の国際競技力の向上にとって大きな意義を有しています。
 平成22年3月現在、日本オリンピック委員会強化指定選手及び日本トップリーグ機構加盟リーグに所属するチームのアスリートの平均年齢は男子25.4歳、女子22.4歳であり、20代が男子72.6パーセント、女子64.8パーセントとその多くを占めています。こうした若いアスリートにとって、引退後のセカンドキャリアをどのように築くのかということは、各々の人生設計における重要な課題です。
 また、昨今の我が国の経済低迷を受け、企業チームの多くが活動を休止しており、企業チームに所属するアスリートのセカンドキャリア支援については社会的な関心も高まってきています。
 企業チームにおけるセカンドキャリアに関する支援を行っている割合について見てみると、平成13年度と比較して平成20年度では増加しており、支援を行う企業が増えている一方で、半数の企業が支援を行っていないことが分かります(図表1-1-40)。
 また、「セカンドキャリアに関する意識調査」(複数回答)では、日本オリンピック委員会強化指定選手などの約半数が引退後の就職先に不安を抱えており、その他、「ビジネス社会で、自分の能力が通用するのか」、「職場に復帰して、自分の能力がついていけるのか」、「引退後も競技にコーチやスタッフとして関わっていけるのか」などの不安を感じていることが分かります(図表1-1-41)。
 このように、アスリートの引退後のキャリア形成支援については、依然として厳しい状況にあり、日本オリンピック委員会の「キャリアアカデミー事業 ※1」など各団体が進めるキャリア形成支援のための取組を今後更に進めていくことも必要です。
 一方で、「セカンドキャリアに関する意識調査(平成22年日本オリンピック委員会)」(複数回答)によると現役中にセカンドキャリアについてかなり具体的に考えていると答えたアスリートが30.7パーセントにとどまっており、キャリアデザインの重要性がまだまだ現役アスリートに浸透していないことも事実です。したがって、現役中からキャリアデザインの重要性に関する啓発を進めていくことも必要です。
 このため、文部科学省では、キャリアデザインの重要性などについての啓発活動や大学院を活用したキャリア形成のためのプログラム開発に対する支援、修学資金の援助などを行い、トップアスリートが安心してスポーツに取り組める環境の整備を進めています。

図表1-1-40 企業チームにおけるセカンドキャリア支援の有無

 図表1-1-40 企業チームにおけるセカンドキャリア支援の有無

※1 キャリアアカデミー事業
 トップ選手の将来の生活設計をサポートするとともに、そのキャリアの社会還元を進めるため、選手のためのキャリア研修や、競技を通じて培った経験が社会に活かされるようなプログラムの企画・運営を実施。

図表1-1-41 引退後の不安

図表1-1-41 引退後の不安

(3)スポーツ界における透明性や公平・公正性の向上

1.スポーツ団体のガバナンスについて

 近年、一部のスポーツ団体における理事間対立、指導者による競技者に対する暴力事件、競技者の薬物犯罪などがメディアに取り上げられています。
 こうした一部のスポーツ団体における不祥事は、スポーツに対する国民の信頼を失わせる可能性があり、スポーツ団体の判断や対外的説明には、非常に大きな社会的責任が伴うようになっています。
 例えば、日本相撲協会における野球賭博問題や八百長問題といった不祥事は、日本相撲協会だけにとどまらず、社会的な問題と捉えられるに至っています。繰り返される不祥事の背景には、日本相撲協会の組織改革が不十分であることが指摘されています。
 また、代表選手選考やドーピング違反による資格停止処分などをめぐる日本スポーツ仲裁機構における紛争処理も存在しています。
 こうしたことから、近年のスポーツ界においては、社会から信頼されるスポーツ団体の運営の在り方、すなわち「ガバナンス」強化の必要性が高くなってきています。
 このため、文部科学省では、スポーツ団体のガバナンス強化に対する取組を支援するとともに、スポーツ団体の組織運営体制の在り方についての指針となるガイドラインを策定することとしています。

2.スポーツ紛争の迅速・円滑な解決支援

 スポーツ団体の決定は、全ての競技者の活動に関わるものであることから、広く公共性が求められ、その決定の際には全ての競技者にとって適正かつ公平な措置が求められます。
 このため、文部科学省では、日本オリンピック委員会、日本体育協会に加盟しているスポーツ団体などに対し、スポーツ仲裁自動受託条項の採択をはじめとしたスポーツ紛争の迅速・円滑な解決のための取組を求めるとともに、スポーツ紛争の迅速・円滑な解決支援のための体制整備を図るため、紛争解決手続に関する団体・アスリートなどの理解増進、仲裁人・調停人の人材育成など、日本スポーツ仲裁機構の機能強化を支援しています。

3.ドーピング問題について

 ドーピングとは、競技者の競技能力を向上させるため、禁止されている薬物などを使用することを言います。ドーピングは、1.競技者に重大な健康被害を及ぼす、2.フェアプレーの精神に反し、人々に夢や感動を与えるスポーツの価値を損ねる、3.優れた競技者によるドーピングが青少年に悪影響を与える、などの問題があり、世界的規模での幅広い防止活動が求められています。
 1999(平成11)年にドーピングの撲滅に向けて世界ドーピング防止機構が設立され、国際的な活動の推進体制が整備されたことに続き、我が国では、平成13年にドーピング検査を中立的に行う国内機関として日本アンチ・ドーピング機構が設立されました。
 2005(平成17)年には、世界ドーピング防止機構を中心としたドーピング防止活動を強化するため、「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」(国際規約)がユネスコ総会で採択され、我が国は平成18年に同規約を締結し、19年には「スポーツにおけるドーピングの防止に関するガイドライン」を策定して日本アンチ・ドーピング機構を国内ドーピング防止機関に指定するなどの体制強化を行ってきました。
 ドーピング検査活動については、日本アンチ・ドーピング機構や中央競技団体で行われています。我が国におけるドーピング検査数は日本アンチ・ドーピング機構設立後の平成14年時点における2,829件から22年時点では5,514件に増加し、英国や米国などオリンピックメダル獲得上位国の水準(19年時点で平均約7,500 件)に近づきつつあり、検査実施体制の整備は着実に進んできています(図表1-1-42)。

図表1-1-42 ドーピング検査件数の推移

図表1-1-42 ドーピング検査件数の推移

 一方で、依然として風邪薬の服用などによる、意図しないと思われるドーピング違反が多いなど、競技者・指導者などにドーピングに関する知識が十分に普及していないことや国際的にも平成21年から世界ドーピング防止規程で教育の推進が義務化されるなどドーピング防止に関する教育や啓発活動の重要性が増しています。また、日々新たに出現するドーピング手法に対処するための分析技術の開発や分析機器の更新なども必要となっています。
 このため、文部科学省では、日本アンチ・ドーピング機構との連携を図りつつ、国際的な水準のドーピングに関する検査・調査体制の充実を図るとともに、近年の巧妙化するドーピングに対する検査技術や機器の研究開発を促進しています。
 また、ユネスコの国際規約で国の役割とされているドーピング防止に関する教育などの事業を行い、教育・研修、普及啓発などのドーピング防止活動も推進しています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課政策審議第二係

-- 登録:平成23年11月 --