ここからサイトの主なメニューです

第10章 安全で質の高い学校施設の整備

第10章 総論

新たな時代に応じた学校施設への取組

 学校施設は基本的な教育条件の一つであり,発達段階に応じ,教育水準の維持向上の観点から安全で質の高い学校施設を整備する必要があります。
 このため,文部科学省では学校施設の整備に役立てるための指針や事例集などを作成し,学校関係者に周知しています。また,耐震性不足や老朽化し危険となった建物に対して国庫補助などを行っています。さらに世界共通の課題である地球温暖化対策として環境負荷の少ない学校施設の整備を推進しています。
 また,国立大学法人等施設について重点的・計画的整備を支援するとともに,施設マネジメント(※1)の促進など,大学等の教育研究活動を支えるキャンパス環境の整備充実を推進しています。


※1 施設マネジメント
 施設の効率的管理と戦略的活用を図るためのトップマネジメントで,キャンパス全体について総合的かつ長期的視点から,施設を確保し活用するために行う一連の取組。

教育振興基本計画における学校施設整備の位置づけ

〈基本的方向3 教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し,社会の発展を支える〉

◇大学等の教育研究施設・設備の整備・高度化
 優れた人材の育成や創造的・先端的な研究開発を推進するため,大学等の施設・設備について,安全性の確保だけでなく,現代の教育研究ニーズを満たす機能を備えるよう,重点的・計画的な整備を支援する。このため,「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(平成18~22年度)を着実に実施する。

〈基本的方向4 子どもたちの安全・安心を確保するとともに,質の高い教育環境を整備する〉

◇学校等の教育施設の耐震化等の安全・安心な施設環境の構築
 基本的な教育条件を全国を通じて確保するため,学校施設の整備を支援する。また,児童生徒等が安心して学び,生活する場であるとともに,応急避難場所としての役割も果たす小中学校等の教育施設の耐震化等の安全・安心な施設環境の整備を支援する。特に,大規模な地震が発生した際に倒壊又は崩壊の危険性の高い小・中学校等施設について,優先的に耐震化を支援する。地方公共団体等に対し,今回の計画期間中のできる限り早期にこれらの耐震化が図られるよう要請する。あわせて,バリアフリー化,アスベスト対策等の施設環境の整備を支援する。

図表2‐10‐1 安全で質の高い学校施設

図表2‐10‐1 安全で質の高い学校施設

学校施設を取り巻く現状や課題と取組

安心して学べる学校

・耐震化の推進
 子どもたちが一日の大半を過ごす活動の場であるとともに,非常災害時には地域住民の応急避難場所ともなる学校施設の安全確保は極めて重要です。文部科学省では,国庫補助を行うなど,地方自治体の取組を支援し,耐震化の推進に積極的に取り組んでいます。

・老朽化対策
 現在,建築後30年以上を経過した公立学校施設が約5割あるなど,児童生徒急増期に建設された施設の老朽化が深刻な状況にあります。地震発生時や日常の安全安心を確保し,施設の長寿命化を図るため,老朽化した学校施設の戦略的な再生整備を推進していくことが必要です。

・室内環境対策
 児童生徒が健康で快適な学校生活を送れるよう,室内空気汚染対策やアスベスト対策などの学校施設における室内環境対策を推進しています。

・事故防止・防犯対策
 学校が十分な防災性,防犯性など安全性を備えた安心感のある施設環境となるよう,学校施設における事故防止・防犯対策を推進しています。

新たな時代に応じた学校

・学校施設整備指針
 学校種ごとに施設の計画・設計上の留意事項をまとめた「学校施設整備指針」を策定しており,学習内容や方法,社会状況の変化などに対応するため継続的に見直しを行っています。また,事例集やアイディア集等により,普及啓発に努めています。

地域の拠点となる学校

・地域との交流・連携
 生涯学習活動や,高齢者をはじめとする地域住民の交流など多様な活動の拠点としての学校施設の充実に取り組んでいます。

・余裕教室の活用
 近年,少子化に伴う児童生徒数の減少等により余裕教室が発生しており,その有効活用が求められています。文部科学省では,活用事例の紹介や,財産処分手続の弾力化等により,地方自治体が余裕教室を有効に活用していく際の支援を行っています。

・バリアフリー化の推進
 障害の有無に関わらず,児童生徒が支障なく学校生活を送ることができ,また,災害発生時の地域住民の応急的な避難場所等としての役割を果たすことができるよう,事例集を作成するなど,学校設置者等における取組を支援しています。

地球にやさしい学校

・エコスクール
 環境負荷の低減や自然との共生を考慮した施設を整備するとともに,教材として活用し,地域の環境・エネルギー教育の発信拠点とするため,環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しています。

・木材利用
 学校施設における木材活用は,温かみと潤いのある教育環境づくりを進める上での効果や環境負荷低減の効果が期待できます。文部科学省では,国庫補助や木材利用の手引書の作成等により,地方自治体の取組を支援しています。

大学等の活動を支えるキャンパス環境の充実

・第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画
 国立大学法人等施設について,耐震化等の老朽施設の再生を最重要課題として重点的・計画的整備を支援するとともに,施設マネジメントや多様な財源を活用した整備の促進など,大学等の教育研究活動を支えるキャンパス環境の整備充実を推進しています。また,現在,今後の施設整備の在り方について,中長期的な対応方策を含む基本的な考え方を取りまとめています。

第1節 安全・安心な学校施設の整備

1 公立学校施設の安全・安心の確保対策

(1)耐震化の推進

 公立学校施設は,児童生徒などが一日の大半を過ごす活動の場であり,児童生徒の生きる力をはぐくむための教育環境として重要な意義を持っています。さらに,地震などの災害発生時には地域住民の応急避難場所としての役割をも果たすことから,その安全性の確保は特に重要であり,公立学校施設の耐震化の推進は喫緊の課題です。
 平成20年5月に発生した中華人民共和国の四川省における大震災では,学校施設の倒壊・崩壊によって,多数の児童生徒などが犠牲になり,日本においても改めて耐震化の重要性が認識されました。
 同年6月に「地震防災対策特別措置法」が改正され,大規模な地震により倒壊等の危険性が高い(Is値0.3未満の)公立小中学校等の施設の耐震化事業について国庫補助率が引き上げられました。あわせて,地方財政措置も拡充され,地方公共団体の実質的な財政負担が大幅に軽減されました。
 また,この法改正により,地方公共団体に対し,その設置する公立学校施設の耐震診断の実施と耐震診断を行った建物(棟)ごとの結果の公表が義務づけられました。
 その上で,公立学校施設の耐震化が適切に進むよう,平成21年度1次補正予算まで,地方公共団体の耐震化事業の要望に対応できる予算額を切れ目なく確保しました。
 こうした取組により,耐震化の取組が加速しており,平成21年4月1日現在,67.0%である公立小中学校の耐震化率は,21年度1次補正予算までを執行後,約78%になる見込みです。しかしその上で,今後耐震化が必要な建物は,約2万5000棟あると推計されます。22年1月にはハイチ,2月にはチリにおいて大地震が発生し,壊滅的な被害をもたらしました。大規模な地震はいつどこで発生するか分からないことから,引き続き早急に耐震化を進めていく必要があります。
 平成22年度においては,地震により倒壊の危険性があるもののうち,耐震性の低い施設の耐震化を優先的に実施していきます。
 建物の構造体(※2)の被害以外に,昨今の大規模地震では,天井材,窓ガラス及び家具などの非構造部材(※3)の落下・転倒などの被害が数多く発生しています。これらの被害は,人的被害だけではなく,地域住民の応急避難場所としての機能を損なう可能性もあるため,構造体の耐震化とともに非構造部材の適切な耐震対策を行うことが重要です。
 このような状況を踏まえ,文部科学省では,非構造部材の耐震化の手順,要点などをわかりやすく解説した「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック」を作成・配布するなど非構造部材の耐震化を推進しています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/1291462.htm)。

(2)老朽化した学校施設の戦略的な再生整備やその他教育環境の充実

 現在,建築後30年以上を経過した公立学校施設が約5割であるなど,児童生徒急増期(第2次ベビーブーム期)に建設された施設の老朽化が深刻な状況です。地震発生時や日常の安全安心を確保し,施設の長寿命化を図るため,老朽化した学校施設の計画的な再生整備などを推進する必要があります。
 また,学校の設置者である地方公共団体は,エコスクールの整備や地域材などの木材利用の推進,バリアフリー化,アスベスト対策,特別支援学校の教室不足の解消,学校統合への対応,廃校や余裕教室※4の有効活用などをも考慮し,施設整備を円滑で計画的に進める必要があります。
 文部科学省では,地方公共団体の施設整備が円滑に進むよう,今後とも必要な施策を進め,安全・安心な学校づくりの実現に努めたいと考えています。


※2 構造体
 構造設計・構造計算の主な対象となる建物の骨組みであり,柱,梁などの躯体のこと。
※3 非構造部材
 天井材,外装材,照明器具などの構造体以外の部材のこと。狭義には天井材をはじめとする建築非構造部材を指すが,広義には設備機器や家具などを含める。
※4 余裕教室
 将来とも恒久的に余裕となると見込まれる普通教室。

2 学校施設の室内環境対策

 文部科学省では,児童生徒が健康で快適に学校生活を送れるよう,室内空気汚染対策などの環境対策を推進しています。具体的には,建築材料などから発散する化学物質による室内空気汚染などによる健康への影響(いわゆる「シックハウス症候群」)が問題となっており,学校においても対策が求められていることから,学校施設を整備する際の室内空気汚染に関する主な対策のポイントをまとめたパンフレットなどを作成し,各都道府県教育委員会などへ配布しています。また,学校施設整備指針の中でも,化学物質濃度が基準値以下であることを確認した上で建物の引渡しを受けるなどの対策を盛り込んでいます。
 さらに,アスベストについては,平成17年の事業所などにおける健康被害の状況発表以来,社会的に深刻な問題となっています。これを受け文部科学省では,子どもたちなどの安全対策に万全を期すために,学校施設などにおける吹き付けアスベストなどの使用実態調査や除去などの対策状況について継続的な調査を実施しています。平成21年10月1日時点の調査を実施した結果では,吹き付けアスベストなどの使用実態調査の完了率は,98.3%となっており,アスベストなどが発見された自治体においては,適切な対応がとられています。(参照:http://www.mext.go.jp/submenu/05101301.htm)。
 この調査結果などを参考にして,文部科学省では,学校施設などの設置者に対し,必要な財政支援を行ったり,具体的な対策方法を示した留意事項を通知することによりアスベスト対策を進めています。

3 学校施設の事故防止・防犯対策

 学校施設は,心身ともに成長過程にある多数の児童生徒などが学習や生活をする場であることから,防災性,防犯性など安全性を確保することが重要です。子どもの安全を守るためには,教職員をはじめとする関係者が危機管理意識を持って緊密に連携し,具体的な安全対策を行う必要があります。また,施設・設備面(ハード面)に関する対応のみならず,管理運営など(ソフト面)の対応も含め,組織的・継続的に実施する必要があります(参照:第2部第2章第8節3)。

(1)学校施設の事故防止対策

 文部科学省では,天窓落下などの事故を防止し,安全で質の高い教育環境を確保するため,学校施設の事故防止対策について検討するとともに,学校施設整備指針における関連規定を見直すことを目的として調査研究を行いました。その結果,学校施設内の様々な場所で起こる事故全般(転落や衝突,転倒,挟まれ,落下物,遊具)を対象に,学校施設を計画・設計する際の事故防止に関する留意事項等について,平成21年3月に報告書「学校施設における事故防止の留意点について」(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/main7_a12.htm)を取りまとめるとともに,学校施設整備指針を改訂し,安全対策関連規定を充実させました。
 また,文部科学省では,児童生徒などが事故に遭う事を防ぐために必要となる施設整備について国庫補助を行っています。

(2)学校施設の防犯対策

 平成14年11月に取りまとめた報告書「学校施設の防犯対策について」では,施設・設備面における防犯対策について,全体的な防犯計画,視認性・領域性の確保,接近・侵入の制御,定期的な点検・評価の実施,防犯設備などの積極的な活用を原則として学校施設の計画・設計を行うことが重要であるとしています。文部科学省では,この報告書などを受けて,15年8月に「学校施設整備指針」を改訂し,学校施設の防犯対策に関する規定を充実させるとともに,その後も学校施設の防犯対策に関する手引書や事例集などを作成しています。また,19年度からは,地域ぐるみでの学校施設の防犯・安全対策に関する地方公共団体等の取組を支援する「地域ぐるみの学校施設防犯・安全点検支援事業」を実施するとともに,その成果を,21年3月に事例集「学校施設における地域ぐるみの防犯対策事例集」として取りまとめました。これらの指針や事例集等(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/main7_a12.htm)は,学校設置者に配布するとともに,研修会などを通じて普及啓発に努めています。
 また,文部科学省では,防犯対策のための施設整備について国庫補助を行っています。

第2節 快適で豊かな施設環境の構築

1 新たな時代に応じた学校施設への取組

(1)学校施設整備指針などの策定

 学校においては,子どもたちが生き生きと学習や生活を行うことのできる安全で豊かな施設環境を確保し,教育内容・方法の多様化へ対応するための施設機能を備えることが必要です。このため,文部科学省では,小学校,中学校などの学校種別ごとに施設の計画・設計上の留意事項をまとめた「学校施設整備指針」を策定しています。この指針では,学校施設整備の基本的方針として,高機能かつ多機能で変化に対応し得る弾力的な施設環境の整備や,健康的かつ安全で豊かな施設環境の確保,地域の生涯学習やまちづくりの核としての施設の整備について示しています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/main7_a12.htm)。
 学校施設整備指針については,学習内容や方法,社会状況の変化などに対応するため継続的に見直しを行っています。これまで,学校施設の防犯対策や耐震化の推進などに対応するためや,特別支援教育を推進するため,さらに,事故防止対策を推進するためなどの改訂を行いました。平成21年度には,幼稚園教育要領,小・中学校学習指導要領の改訂や社会状況の変化などに対応するため,幼稚園,小学校及び中学校の施設整備指針を見直すことを目的として調査研究を実施しました。その検討結果に基づき,22年2月に幼稚園施設整備指針,同年3月に小学校及び中学校施設整備指針を改訂しました。また,これらの改訂内容を踏まえた事例集を取りまとめました。
 また,同調査研究において,学習指導要領の改訂等の趣旨を踏まえ,質の高い教育を実現するために参考になると思われる施設的なアイディアについて収集,検討を行い,平成22年1月に「新たな学校施設づくりのアイディア集」を取りまとめました(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/1289743.htm)。

(2)学校用家具の充実

 学校用家具は,日常の学校生活の中で児童生徒が身近に使用するものです。また,ティーム・ティーチング(※5)やグループ学習,個別学習など,一人一人の個性を生かした多様な学習形態と密接な関係があるとともに,学校施設の使いやすさなどにも関係する学校施設計画上重要な要素の一つです。
 文部科学省では,児童生徒の体格や学習内容などの諸条件に適合する学校用家具の在り方について調査研究を実施しています。その調査結果を参考にして,教室用机・いすの日本工業規格(JIS)(※6)の確認を平成21年6月に行いました。また,学校用家具の導入についての手引き書の作成なども行っています。

木材を活用した机・いす (北海道帯広市立帯広啓西小学校)

木材を活用した机・いす
(北海道帯広市立帯広啓西小学校)


※5 ティーム・ティーチング
 複数の指導者による協同授業のこと。
※6日本工業規格(JIS)
 鉱工業品の品質の改善,生産効率の増進,生産の合理化などを図る目的で制定された企画。

2 地域と連携した学校施設づくり

(1)地域の拠点としての学校施設の充実

 学校は,児童生徒の学習の場であるとともに,生涯学習活動や,高齢者をはじめとする地域住民の交流など多様な活動の拠点ともなっています。
 文部科学省では,地域社会や家庭,学校が連携協力することの重要性を考慮し,コミュニティの拠点としての学校施設整備を進めるための方策を提示するとともに,実証的な研究を実施するなどして地域のコミュニティの拠点としての学校施設の充実に取り組んでいます。また,平成22年1月に取りまとめられた「新たな学校施設づくりのアイディア集」においても,地域の拠点となる施設整備について,いくつかの取組を紹介しています。(参照:本章第2節1)
 さらに,学校施設と他の文教施設(社会教育施設,社会体育施設など)や福祉施設(高齢者福祉施設,児童福祉施設など)などと連携した複合化促進型施設(※7)の整備を国庫補助しています。
 このような施設整備により,地域住民との交流・連携が活性化し,そこでの多様な体験などを通じて児童生徒の「生きる力」がはぐくまれることが期待されます。


※7 複合化促進型施設
 地域の生涯学習活動等の拠点となるよう,他の文教施設や福祉施設等と有機的な連携を図るために必要となる多目的ホールや展示ホールなどの交流スペースなどを持つ施設。

(2)文教施設のバリアフリー化の推進

 学校施設は,障害の有無にかかわらず,児童生徒が支障なく学校生活を送ることができるよう配慮することが必要です。それとともに,地域コミュニティの拠点,災害発生時の地域住民の応急的な避難場所としての役割を果たす上でも,バリアフリー化を進めることは重要です。
 平成14年12月に「障害者基本計画」(閣議決定)が策定され,学校施設などのバリアフリー化の推進が示され,15年4月には「高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律」が施行され,学校施設が新たにバリアフリー化の努力義務の対象となりました。さらに,18年12月に「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が施行され,既存の特別支援学校や博物館などが新たにバリアフリー化の努力義務の対象とされています。
 このため,文部科学省では,平成16年3月に学校施設におけるバリアフリー化などの推進に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定しました。この指針では,既存施設のバリアフリー化に関する整備計画を策定し,計画的に整備を実施することが重要であると示されています。また,17年3月には学校施設のバリアフリー化の具体的な計画・設計手法などに関する事例集,19年6月には各学校設置者における計画的なバリアフリー化の取組を紹介した事例集を作成しました。また,特別支援教育制度の導入を受け,同年7月に学校施設整備指針の改訂を行った際には,バリアフリー化に関する記述について改めて見直しを行い,障害のある児童,教職員等が安全で円滑に学校生活を送ることができるように,障害の状態や特性,ニーズに応じた計画とすることや,高齢者,障害者を含む多様な地域住民が利用することを踏まえて計画することなど,学校施設全体のバリアフリー化に関する記述を充実させました。これらの指針や事例集(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/main7_a12.htm)は,各教育委員会などに配布するとともに,研修会などを通じて普及啓発に努めています。
 さらに,障害のある子どもたちの学習環境を改善することはもちろんのこと,障害のある子どもたちがいない学校についても,地域コミュニティの拠点としての機能を十分に果たすことができるよう,スロープや障害者用トイレ,エレベーターなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行うなど,各地方公共団体などによるバリアフリー化の取組を支援しています。

昇降口の段差を解消するため設置したスロープ (秋田県秋田市立勝平小学校)

昇降口の段差を解消するため設置したスロープ
(秋田県秋田市立勝平小学校)

(3)余裕教室・廃校施設の活用

 近年,少子化による児童生徒数の減少などに伴い,余裕教室や廃校施設が生じています。余裕教室や廃校施設については,各学校・地域の実情やニーズに応じて有効に活用することが重要です。現在,これらは,児童生徒の交流スペースやカウンセリングルームなどとして,また,地域への開放という形で活用されているほか,公民館などの社会教育施設や児童館・保育所など学校教育以外の用途でも活用されています。
 文部科学省では,余裕教室や廃校施設が有効に活用されるよう,活用事例を紹介したパンフレットを作成・配布するほか,保育所や放課後子どもプランのように,社会的に大きなニーズがあり,実施場所の確保が課題となっているような活用方法については,地方公共団体に積極的な活用を呼びかけています。
 また,平成20年6月に,国の補助金を受けて整備された学校施設を学校以外の用途に転用する場合などに必要となる財産処分手続を大幅に弾力化・簡素化し,ほとんどの場合で国庫納付金を不要としました。例えば,次のような場合に国庫納付金を不要としています。

  1. 補助事業完了後10年以上経過している学校施設を,無償により転用・貸与・譲渡・取壊しを行う場合(相手先を問わない)。
  2. 補助事業完了後10年以上経過している学校施設を,国庫納付金相当額以上を学校施設整備のための基金に積み立てることを条件に,有償により貸与・譲渡(売却)する場合。
  3. 耐震補強事業やアスベスト及びPCB(※8)対策工事を実施した学校施設,又は,補助事業完了後10年以上経過した建物に大規模改造事業を実施した学校施設を,無償により転用・貸与・譲渡・取壊しを行う場合(補助事業完了後10年未満でも可)。

(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu.htm

余裕教室を保育所に転用した事例 (東京都世田谷区立駒留中学校内)

余裕教室を保育所に転用した事例
(東京都世田谷区立駒留中学校内)


※8 PCB
 ポリ塩化ビフェニル。学校施設において,照明器具などに広く使用されていたが,昭和43年,PCBの毒性が社会問題化し,昭和47年に製造中止された。

3 環境を考慮した学校施設づくり

(1)エコスクール(環境を考慮した学校施設)の推進

 地球環境問題は,人類の将来の生存と繁栄にとって重要な課題です。中でも地球温暖化対策は喫緊の課題であり,我が国においても,低炭素社会の実現に向け,温室効果ガス削減に関する様々な取組が進められています。
 学校施設は,適切な教育環境の確保を目的とした質的改善や,学校開放などにおける多目的利用への対応にあたり,何も対策をとらなければ学校施設全体におけるエネルギー消費量が増加してしまう可能性があることから,学校施設の整備や維持・管理においては,環境負荷への低減を図るなどの視点が重要となります。また,このような視点で整備された学校施設を,児童生徒の環境・エネルギー教育の教材として活用していくとともに,地域の環境・エネルギー教育の発信拠点とすることも求められています。
 このため,文部科学省では,太陽光発電の導入や校舎などの断熱性の向上などのエコスクールの整備に対して国庫補助を行うとともに,関係省庁と連携して公立学校を対象にエコスクールパイロット・モデル事業(普及・啓発事業)を実施するなどその整備充実に取り組んでいます(図表2‐10‐2)。また,学校への太陽光発電導入や新エネルギー活用に関するガイドブック,事例集の作成,ホームページによる情報発信など,エコスクールの整備による意義や効果についての普及にも努めています。(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/ecoschool/index.htm
 さらに,地球温暖化防止に対して大きな効果が期待される省エネルギー対策に関して,学校施設における省エネルギー化の必要性や対策のポイントをまとめたパンフレットを配布するなど,児童生徒や教職員を含め,学校現場における省エネルギー対策の重要性についての指導や,学校現場での省エネルギー点検の実施を要請しています。

図表2‐10‐2 エコスクール(環境を考慮した学校施設)の推進

 環境を考慮した学校施設とは,次の三つの要素が調和・機能する学校施設のことで,エコスクールと呼んでいます。
1)施設面…やさしく造る
 ・環境への負荷を低減させる設計・建設とする。
2)運営面…賢く・永く使う
 ・自然エネルギーを有効活用するとともに,効率よく使う。
3)教育面…学習に資する
 ・環境教育にも活用する。

図表2‐10‐2 エコスクール(環境を考慮した学校施設)の推進

校舎屋上に太陽光発電パネルを設置 (山梨県甲府市立貢川小学校)

校舎屋上に太陽光発電パネルを設置(山梨県甲府市立貢川小学校)

ビオ トープの設置 (埼玉県戸田市立芦原小学校)

ビオ トープの設置 (埼玉県戸田市立芦原小学校)

H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21
18 20 20 41 58 88 97 98 101 70 79 104 157 951

(出典)文部科学省調べ

(2)屋外教育環境の充実

 たくましく心豊かな子どもたちを育成するために,校庭の芝生化や自然体験広場(学校ビオトープ(※9))など学校の屋外教育環境施設の整備充実が求められています。校庭の芝生化などにより,スポーツ活動の活性化や環境教育の充実など教育上の効果や環境保全上の効果などが期待されます。
 文部科学省では,公立学校における校庭の芝生化などを国庫補助の対象としています。

(3)学校施設における木材活用

 我が国の伝統的な建築材料である木材の活用は,温かみと潤いのある教育環境づくりを進める上で効果的であり,たくましく心豊かな児童生徒の育成に寄与しています。また,地域の木材を利用することにより,校舎への愛着,地域文化の理解促進などの効果も期待されます。
 文部科学省では,公立学校の木造校舎の新増改築事業や既存建物の床や壁などの内装に木材を使用した改造事業などについて国庫補助を行っているほか,木材を活用した学校施設の整備に関する手引書を作成するなど,学校施設における木材利用の取組を支援しています。平成22年5月には,林野庁と連携して,地方公共団体が特に課題と考えている,事業の進め方やコストの抑制に関して,工夫した取組を紹介する事例集を作成しました。


※9 学校ビオトープ
 環境教育の教材として学校の敷地内に設けられた,地域在来の昆虫や動物などの生き物が暮らすことのできる草地や池などの空間のこと。

第3節 未来を拓く教育研究環境の創造

 我が国の国立大学法人などの施設は,これまで高等教育や学術研究の進展に対応し,様々な時代の要請にこたえながら,教育研究と一体として整備が進められ,教育研究活動を支える基盤を形成してきました。
 文部科学省は,国立大学法人などが創造的・先端的な学術研究,世界一流の優れた人材の養成,高度先端医療などを推進するための知的創造活動,知的資産継承の場であることから,施設の整備充実が我が国の未来を拓くものであるとの認識に立ち,積極的な整備充実に取り組んでいます。

1 国立大学法人等の施設の現状

 国立大学法人等が保有する約2,600万m2の施設のうち,建築後25年以上経過し,一般的に大規模な改修が必要とされる施設は約733万m2(平成21年5月1日現在)と保有面積の約3割に上っています。これらの老朽施設は,多様な教育研究ニーズへの対応が困難なだけでなく,耐震性などの安全面,設備の老朽化や陳腐化といった機能面,非効率なエネルギー消費などの環境面において早急に改善すべき様々な問題を抱えています。
 また,施設の狭あい化については,その解消のために必要な整備量が約250万m2(平成21年5月1日現在)となっており,大学の特色ある取組や若手研究者の研究活動などへの対応が困難となっています。

2 「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」の推進

 文部科学省では,国立大学法人等の施設が抱える様々な問題に対応するため,平成18年3月に閣議決定された第3期科学技術基本計画を受け,同年4月に「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(「第2次5か年計画」)を策定しました(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/kokuritu/06041802.htm)。

(1)整備目標

 本計画では,老朽施設の再生を最重要課題とし,この整備とあわせて施設の狭あい化の解消を図ることで,優れた人材の養成の基盤となる施設や,世界水準の先端的な研究などを行う卓越した研究拠点などの再生を目指すこととしています。また,大学附属病院が先端医療の先駆的役割などを果たすことができるよう,引き続き,計画的に整備を図ることとしています。このため,国立大学法人等において整備が必要な面積約1,000万m2(平成17年度末時点)のうち,緊急に整備すべき対象として約540万m2を整備目標としています。
 整備の進捗については,平成22年度予算までを見込むと施設整備費などにより約386万m2の施設が整備される予定です。さらに,国立大学法人等における多様な財源の活用により,平成18年度から平成21年度までに約78万m2の施設が整備されました。これらの取組により,平成22年度までに整備目標に対する進捗率は約86%に達する見込みです(図表2‐10‐3)。

図表2‐10‐3 (再掲)「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」の進捗状況

図表2‐10‐3 (再掲)「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」の進捗状況

※[]内の数字は整備目標,()内の数字は目標に対する整備実績の割合を示す
(出典)文部科学省調べ:平成22年度予算反映後

(2)システム改革の推進

 国立大学法人等は,「知の拠点」として,社会の要請や国民の期待にこたえていくため,自らの理念に基づく教育研究を実践する上で重要な基盤である施設を効率的に整備し,管理運営していく必要があります。
 この観点から,第2次5か年計画においては,国立大学法人等は,施設の効率的・弾力的利用などを目指した施設マネジメント(※10)や,寄附の受入れなどの多様な財源を活用した整備の促進などのシステム改革を推進しています。
 国立大学法人等は全学的な視点に立った施設管理運営システムをつくり,共同利用スペースの確保やスペースチャージ(※11)の導入に取り組んでいます。
 また,国立大学法人等の施設整備では,寄附の受入れや地方公共団体との連携,PFI事業(※12)など,多様な財源を活用した整備について積極的な取組が進められています。具体的には,国立大学法人等に対する地方公共団体の寄附などの取扱いの見直しに伴い,地域産業の振興の観点からの人材育成のため地方公共団体が所有する施設の無償貸与によるスペースの確保が行われたり,ESCO事業(※13)の活用による附属病院設備の改修が行われたりしています。
 文部科学省では,施設整備費補助金の事業採択などにおいて,国立大学法人等におけるシステム改革への取組を積極的に評価しています。加えて,国立大学法人等におけるシステム改革を促進するため,先進的な取組をまとめた事例集の配布やセミナーの開催などの情報提供を行っています。


※10 施設マネジメント
 施設の効率的管理と戦略的活用を図るためのトップマネジメントで,キャンパス全体について総合的かつ長期的視点から,施設を確保し活用するために行う一連の取組。
※11 スペースチャージ
 研究施設などにおいて当該施設の使用者から徴収する施設使用料。
※12 PFI事業
 PrivateFinanceInitiative(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)の略。公共施設などの建設,維持管理,運営等を民間の資金,経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法。
※13 ESCO事業
 省エネルギー診断,改修計画の立案,設計・施工管理といった直接工事にかかわるサービスとともに,改修後の運転管理等を含む包括的な省エネルギーサービスを提供する事業。経費は省エネルギーによる高熱水費の削減分で賄われるため,省エネルギーとコスト削減の両面に効果が期待できる。

3 施設整備の効果

 文部科学省では,国立大学法人等の今後の施設整備に生かすため,第2次5か年計画の成果・効果等の検証の一環として,学長や教員等にアンケート調査を実施し,その結果,安全・安心な教育研究環境の確保,室内環境の改善等による学習意欲や研究意欲の向上,高機能化・効率化による教育研究の進展などについて「効果があった」などとの回答が8割を超え,第2次5か年計画やそれに基づく整備推進について一定の評価を得ています。一方で,現状の施設の満足度については,全体的に「不満である」などとする回答が概ね半数を超えており,引き続き,国立大学法人等施設の老朽対策や狭あい解消が課題となっています。

4 今後の国立大学法人等の施設の整備充実に向けた取組

 平成22年度は第2次5か年計画の最終年度となることを踏まえ,文部科学省では,平成20年12月から有識者による「今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」において,第2次5か年計画後の施設整備のあり方について検討を行っています。
 平成21年8月に本調査研究協力者会議から報告された中間まとめでは,施設整備の現状と課題等を踏まえ,計画的な施設整備を推進するための中長期的な対応方策や重点的な施設整備の推進等について報告がされています。
 その中で,1.耐震化をはじめ安全上著しく支障がある老朽施設や基幹設備の解消(Safety),2.環境負荷が少なく持続的発展が可能なサステイナブル・キャンパスへの転換(Sustainability),3.教育研究環境の高度化・多様化に対応した施設機能の質的向上に向けた戦略的整備(Strategy)を重点的に推進していく必要(図表2‐10‐4)があるとしています。
 また,中間まとめでは,計画的な施設整備の推進のため,長期的視点に立ったキャンパス環境の整備や施設マネジメントの推進等についても報告されています。文部科学省では,戦略的なキャンパスマスタープラン(※14)づくり,施設マネジメントに関するベンチマーキング手法(※15)を検討し,国立大学法人等の取組を支援しています。
 今後も,引き続き,第2次5か年計画の達成状況や効果の検証結果,国立大学法人等施設を取り巻く状況と課題等を踏まえつつ,第2次5か年計画後の施設整備の在り方について取りまとめることとしています。

図表2‐10‐4 重点的な整備が必要な課題のイメージ

図表2‐10‐4 重点的な整備が必要な課題のイメージ


※14 キャンパスマスタープラン
 教育研究の基盤となるキャンパスの整備・活用を図るため,1.キャンパス像に関する長期的ビジョンを確立する,2.キャンパス環境の質の向上を図る,3.あるべき姿を示し,変化の必要性を知らしめる,4.施設の配置とデザイン決定の理論を確立することなどを目的として,策定されるキャンパス環境の基本的な計画。
※15 ベンチマーキング手法
 優れた成果や高い効果を上げている他者の取組と自己の取組とを比較・検証し,自己の目標を達成するに当たって最も優れた取組を研究する自己改善のための手法。

5 大学などの施設づくりへの技術支援

 文部科学省では,大学施設の質的水準の確保・向上を図るとともに,社会の変化に対応した施設づくりを支援するため,技術的な面から,次のような取組を実施しています。

(1)技術的基準などの提供

 大学などの施設整備に当たって一定水準の品質と性能を確保するため,中央省庁共通の「統一基準(※16)」や文部科学省が定める「特記基準(※17)」などの技術的基準を定めています。また,入札や契約の適正化を図るため工事契約に必要な基準を定め,大学などに提供しています。

(2)公共事業コスト構造改善の推進

 平成20年5月に,公共事業のコスト構造の改善を目指して「文部科学省公共事業コスト構造改善プログラム」を定めました。これにより従来からのコスト縮減の取組をさらに進めるとともに,コスト構造改善を推進しています。
 具体的には,従来の工事コスト及び維持管理費の縮減に施設の長寿命化や環境負荷の低減効果などの品質の向上を図る取組を新たに加え,平成20年度から5年間で,19年度に比べて15%の総合コスト改善を目標としています。
 平成20年度については,大学などの総合コスト改善は6.0%となります。また,全体的な物価変動(資材費・労務費の変動)を考慮した場合には3.2%となります。

(3)省エネルギー対策の推進

 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)により,大学などにおいてもきめ細やかなエネルギー管理の徹底によるエネルギー使用の合理化が求められています。
 このため文部科学省では,「大学等における省エネルギー対策の手引き」及び「大学等における省エネルギー対策事例集」を取りまとめるとともに,平成21年9月から10月にかけて「大学等における省エネルギー対策に関する研修会」を開催し,大学などにおける省エネルギー対策を推進しています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/green/index.htm)。
 また,平成17年度から経済産業省と連携して,エネルギー管理指定工場に指定された大学などを対象に現地調査を実施するとともに,20年度からは文部科学省独自でエネルギー管理指定工場を対象とした実地調査を実施し,必要に応じて省エネルギー対策に関する指導・助言を行っています。

(4)実験施設の安全衛生対策の推進

 国立大学法人等では,教育研究活動の高度化や建物の老朽化などに伴い,実験施設における安全衛生の確保が課題となっています。このため,実験施設の施設設備面の安全衛生対策について,有識者による検討を行い,平成22年3月に報告書「実験施設の整備等における安全衛生対策の留意点について」が取りまとめられました(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/main5_a12.htm(※調査報告(出版物案内)へリンク))。


※16 統一基準
 官庁施設整備に関し,各府省庁が定めた基準類のうち,共通化することが合理的な基準類を整理・統合し,中央省庁統一の基準として「官庁営繕関係基準類の統一化に関する関係省庁連絡会議」の決定を受けた基準類。
※17 特記基準
 文教施設の特性などから,統一基準により難い部分がある場合に,統一基準を補完する基準として各府省庁が個別に定めた基準類。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --